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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127020
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】高純度月桃抽出物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/38 20060101AFI20220824BHJP
   A61K 36/9062 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20220824BHJP
   A61K 31/366 20060101ALI20220824BHJP
   B01D 11/02 20060101ALI20220824BHJP
   B01D 9/02 20060101ALI20220824BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALN20220824BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20220824BHJP
   A61K 8/49 20060101ALN20220824BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20220824BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20220824BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20220824BHJP
【FI】
C07D309/38
A61K36/9062
A61K8/9794
A61K31/366
B01D11/02 A
B01D9/02 601K
B01D9/02 606
B01D9/02 619Z
B01D9/02 602E
A61Q19/00
A61P17/00
A61K8/49
A23L33/105
A23L33/10
A61K133:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024930
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】521062240
【氏名又は名称】合同会社天然資源研究開発センター
(71)【出願人】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】禹 済泰
(72)【発明者】
【氏名】山野 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】照屋 俊明
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
4C088
4D056
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF14
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC841
4C083AC842
4C083CC02
4C086AA04
4C086BA17
4C086MA02
4C086MA04
4C086ZA89
4C088AB81
4C088AC03
4C088BA10
4C088BA32
4C088CA08
4C088CA11
4C088CA12
4C088CA16
4C088CA23
4C088ZA89
4D056AB19
4D056AC06
4D056CA01
4D056CA14
4D056CA17
4D056CA18
4D056CA26
4D056CA31
4D056CA39
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、従来技術と比較して、α-ピロン類の純度が高い月桃抽出物の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、月桃乾燥物を、デヒドロカワイン可溶性溶媒を用いた抽出処理に供することにより、月桃粗抽出物を得る工程と、月桃粗抽出物を、加水処理及びアルカリ処理又は加水処理、アルカリ処理及び塩析に供することにより、月桃抽出物を得る工程とを含む、月桃抽出物の製造方法などにより解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
月桃乾燥物を、デヒドロカワイン可溶性溶媒を用いた抽出処理に供することにより、月桃粗抽出物を得る工程と、
月桃粗抽出物を、加水処理及びアルカリ処理に供することにより、月桃抽出物を得る工程と
を含む、月桃抽出物の製造方法。
【請求項2】
月桃乾燥物を、デヒドロカワイン可溶性溶媒を用いた抽出処理に供することにより、月桃粗抽出物を得る工程と、
月桃粗抽出物を、加水処理、アルカリ処理及び塩析に供することにより、月桃抽出物を得る工程と
を含む、月桃抽出物の製造方法。
【請求項3】
前記月桃粗抽出物は、前記抽出処理により得られた抽出液を固液分離処理及び/又は濃縮処理に供して得られる月桃粗抽出物である、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記塩析が、グルコース、スクロース及びマルトースからなる群から選ばれる少なくとも1種の糖類を用いた塩析である、請求項2~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記デヒドロカワイン可溶性溶媒は、30%(v/v)~90%(v/v)の含水エタノールである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ処理は、最終濃度が0.5%(w/v)~6%(w/v)である水酸化ナトリウムを用いたアルカリ処理である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記月桃抽出物は、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン及び5,6-デヒドロカワインの合計含有量が80%(w/w)以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記月桃抽出物は、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワインの含有量が70%(w/w)以上であり、及び/又は5,6-デヒドロカワインの含有量が10%(w/w)以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記月桃抽出物は、固形状の月桃抽出物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン及び5,6-デヒドロカワインの合計含有量が80%(w/w)以上であり、かつジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン及び5,6-デヒドロカワインは月桃に由来する、月桃抽出物。
【請求項11】
前記月桃抽出物は、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワインの含有量が80%(w/w)以上であり、及び/又は5,6-デヒドロカワインの含有量が10%(w/w)以上である、請求項10に記載の月桃抽出物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度月桃抽出物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性表示食品における機能性関与成分の一つとして月桃葉抽出物が知られている。月桃葉抽出物の機能性は、肌が乾燥しがちな者の肌のうるおいに役立つという美肌効果であるとされている。
【0003】
月桃葉抽出物において、指標成分は、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン及び5,6-デヒドロカワインの2種類のα-ピロン類である。月桃葉抽出物は、これらのα-ピロン類を含むことにより、線維芽細胞増殖促進作用、コラーゲン産生促進作用、コラーゲン分解酵素活性阻害作用を通じて、美肌効果を発揮すると考えられている。
【0004】
月桃葉抽出物の製造方法としては、月桃葉を含水エタノールに加えるエタノール抽出処理に供する方法、月桃葉を水に加えて加熱する熱水抽出処理に供する方法などが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-302453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の月桃葉をエタノール抽出処理又は熱水抽出処理に供する方法では、得られる抽出物においてはα-ピロン類の他に糖類、フラボノイドなどが含まれ、α-ピロン類の純度が低いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、特許文献1に記載の方法に比べて、α-ピロン類の純度が高い月桃抽出物の製造方法を提供することを発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、抽出処理に用いる月桃の状態及び抽出処理後のさらなる処理について着眼するに至った。そして、種々の状態の月桃を用いること、抽出処理物に対して種々の工程を適用することなどの試行錯誤を繰り返すことにより、驚くべきことに、月桃の乾燥物を用いて溶媒抽出処理を行った後、得られる溶媒抽出処理物を加水処理及びアルカリ処理に供することにより、α-ピロン類を高純度で含有する月桃抽出物が得られることを見出した。結果として、本発明者らは、月桃から、高純度のα-ピロン類を含有する月桃抽出物を製造する方法を創作することに成功した。本発明はこのような知見や成功例に基づいて完成された発明である。
【0009】
したがって、本発明によれば、以下の各態様の方法及び月桃抽出物が提供される。
[1]月桃乾燥物を、デヒドロカワイン可溶性溶媒を用いた抽出処理に供することにより、月桃粗抽出物を得る工程と、
月桃粗抽出物を、加水処理及びアルカリ処理に供することにより、月桃抽出物を得る工程と
を含む、月桃抽出物の製造方法。
[2]月桃乾燥物を、デヒドロカワイン可溶性溶媒を用いた抽出処理に供することにより、月桃粗抽出物を得る工程と、
月桃粗抽出物を、加水処理、アルカリ処理及び塩析に供することにより、月桃抽出物を得る工程と
を含む、月桃抽出物の製造方法。
[3]前記月桃粗抽出物は、前記抽出処理により得られた抽出液を固液分離処理及び/又は濃縮処理に供して得られる月桃粗抽出物である、[1]~[2]のいずれか1項に記載の方法。
[4]前記塩析が、グルコース、スクロース及びマルトースからなる群から選ばれる少なくとも1種の糖類を用いた塩析である、[2]~[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]前記デヒドロカワイン可溶性溶媒は、30%(v/v)~90%(v/v)の含水エタノールである、[1]~[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6]前記アルカリ処理は、最終濃度が0.5%(w/v)~6%(w/v)である水酸化ナトリウムを用いたアルカリ処理である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7]前記月桃抽出物は、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン及び5,6-デヒドロカワインの合計含有量が80%(w/w)以上である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8]前記月桃抽出物は、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワインの含有量が70%(w/w)以上であり、及び/又は5,6-デヒドロカワインの含有量が10%(w/w)以上である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9]前記月桃抽出物は、固形状の月桃抽出物である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10]ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン及び5,6-デヒドロカワインの合計含有量が80%(w/w)以上であり、かつジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン及び5,6-デヒドロカワインは月桃に由来する、月桃抽出物。
[11]前記月桃抽出物は、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワインの含有量が80%(w/w)以上であり、及び/又は5,6-デヒドロカワインの含有量が10%(w/w)以上である、[10]に記載の月桃抽出物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様の方法によれば、月桃を原料として、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、5,6-デヒドロカワインといったα-ピロン類を高純度で含有する月桃抽出物を製造することができる。また、本発明の方法で採用する処理操作は簡便かつ安全であることから、本発明の一態様の方法によれば、月桃抽出物を工業的規模で大量に製造することが可能である。したがって、本発明の一態様の方法は、工業的実用性、迅速性、安全性かつ経済性に優れた、高純度月桃抽出物を製造する方法である。
【0011】
本発明の一態様の方法によって得られる月桃抽出物は、固形状であり得ることから、多様な剤形に加工することができ、種々の飲食品及び化粧品に添加することができ、さらに保存性に優れたものであることから広く流通することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、後述する実施例に記載されているとおりの、例1に係る月桃花を原料とする高純度月桃抽出物の製造方法の概要を示したフロー図である。
図2図2は、後述する実施例に記載されているとおりの、例2に係る月桃花を原料とする高純度月桃抽出物の製造方法の概要を示したフロー図である。
図3図3は、後述する実施例に記載されているとおりの、例3に係る月桃花を原料とする高純度月桃抽出物の製造方法の概要を示したフロー図である。
図4図4は、後述する実施例に記載されているとおりの、例4に係る月桃葉を原料とする高純度月桃抽出物の製造方法の概要を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各態様について詳細に説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0014】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、食品分野、化粧品分野などの当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
【0015】
「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含有量」は、濃度及び使用量(加えた量)と同義であり、月桃抽出物の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、成分の含有量の総量は、100%を超えることはない。なお、「純度」は含有量と同義で使用される。すなわち、高純度の成分とは、月桃抽出物において高い割合を占める成分を意味する。
単位の「vol%」は「%(v/v)」及び「体積%」と同義である。単位の「wt%」は「%(w/w)」及び「質量%」と同義である。単位の「%(w/v)」は「質量体積%」と同義である。
数値範囲の「~」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0%~100%」は、0%以上であり、かつ、100%以下である範囲を意味する。「超過」及び「未満」は、その前の数値を含まずに、それぞれ下限及び上限を意味し、例えば、「1超過」は1より大きい数値であり、「100未満」は100より小さい数値を意味する。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーター等の制限事項等が挙げられる。
【0016】
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
【0017】
本明細書では、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワインを「DDK」とよび、5,6-デヒドロカワインを「DK」とよぶ場合がある。また、「デヒドロカワイン」は、DDK及びDKのいずれか一方、又はDDK及びDKの組合せの総称である。なお、DDK及びDKは以下の構造からなる化合物である。
【化1】
【0018】
本発明の一態様の方法は、デヒドロカワインを高純度で含有する月桃抽出物を製造する方法である。本発明の一態様の方法は、原料である月桃を、溶媒抽出処理、加水処理及びアルカリ処理又は溶媒抽出処理、加水処理、アルカリ処理及び塩析に供することにより、月桃抽出物として、デヒドロカワイン含有物を得ることを特徴とする。
【0019】
本発明の方法の第1の態様は、以下の工程(1)及び(2)を含む。
(1)月桃乾燥物を、デヒドロカワイン可溶性溶媒を用いた抽出処理に供することにより、月桃粗抽出物を得る工程
(2)月桃粗抽出物を、加水処理及びアルカリ処理に供することにより、月桃抽出物を得る工程
【0020】
本発明の方法の第2の態様は、以下の工程(1)及び(2)’を含む。
(1)月桃乾燥物を、デヒドロカワイン可溶性溶媒を用いた抽出処理に供することにより、月桃粗抽出物を得る工程
(2)’ 月桃粗抽出物を、加水処理、アルカリ処理及び塩析に供することにより、月桃抽出物を得る工程
【0021】
工程(1)では、月桃乾燥物を、デヒドロカワイン可溶性溶媒を用いた抽出処理に供することにより、月桃粗抽出物を得る。
【0022】
月桃(Alpinia zerumbet)は、ゲットウともよばれており、九州南端から沖縄県、台湾から中国南部、東南アジア及びインドにかけて自生することで知られている常緑多年草の植物である。月桃は、線維芽細胞増殖促進作用、コラーゲン産生促進作用、コラーゲン分解酵素活性阻害作用があることが知られており、これらを通じた美肌効果を期待して摂取されている。また、月桃は、長期にわたりヒトに摂取されてきた実績のある天然植物であって安全性が高い。
【0023】
月桃の使用部位は、デヒドロカワインを含む部位であれば特に限定されず、例えば、葉、花、根、茎、果実、種子などが挙げられるが、好ましくはデヒドロカワインを多く含む葉、花及び根である。月桃は、葉、花、根などの1種の単独の部位であってもよいし、これらの2種以上の部位の組み合わせであってもよい。
【0024】
月桃は、採取したままの状態のものである場合、抽出処理の効率が低下する傾向にある。そこで、月桃としては、月桃を乾燥処理に供した月桃乾燥物を用いる。乾燥処理は特に限定されず、例えば、月桃の乾燥後の質量(乾燥質量)が、乾燥前の質量(湿質量)に対して1/100~9/10程度になるように乾燥する処理などが挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、真空乾燥、低温真空乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥、風乾などの当業者に公知の任意の方法により行えばよい。月桃乾燥物の含水率は特に限定されないが、例えば、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0025】
月桃は、溶媒との接触面積を上げて抽出処理を効率的に行うという観点からは、細断、破砕、粉砕又はすり潰した状態のものであることが好ましい。月桃の細断、破砕、粉砕又はすり潰しの方法は特に限定されないが、例えば、カッター、スライサー、裁断機、クラッシャー、ブレンダー、ミキサー、ミル、グラインダー、ニーダー、乳鉢、石臼などを用いる方法などを挙げることができる。
【0026】
工程(1)で用いる月桃乾燥物は、月桃として根、茎、種子などを用いる場合、抽出処理の効率をより良くするために、粉末状の月桃乾燥物であることが好ましい。粉末状の月桃乾燥物を得るに際して、乾燥処理と粉砕処理とは同時に行ってもよく、又はいずれか一方の処理を先に行ってから、他方の処理を行ってもよいが、作業の簡便性から乾燥処理を先に行った後に粉砕処理を行うことが好ましい。
【0027】
デヒドロカワイン可溶性溶媒は、デヒドロカワインを溶解することができる溶媒であれば特に限定されず、例えば、デヒドロカワインに易溶性の溶媒、具体的には水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール;酢酸エチル、酢酸メチルなどの低級エステル;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、ヘキサン、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。デヒドロカワイン可溶性溶媒は、これらの1種の単独であってもよいし、これらの2種以上の組合せであってもよい。
【0028】
デヒドロカワイン可溶性溶媒は、抽出効率、安全性及び工業化の観点から、水及び低級アルコールが好ましく、水、エタノール及びメタノールがより好ましく、水及びエタノールがさらに好ましく、水及びエタノールの混合溶媒である含水エタノールであることがなおさらに好ましい。
【0029】
デヒドロカワイン可溶性溶媒として含水エタノールを用いる場合、エタノールの含有量は20vol%~100vol%が好ましく、良好な抽出効率、安全性及び工業化の観点から、30vol%~90vol%がより好ましく、40vol%~80vol%がさらに好ましく、50vol%~70vol%がなおさらに好ましい。ただし、含水エタノール中におけるエタノールの含有量が20vol%未満の場合、デヒドロカワインを効率的に抽出することが困難になるおそれがある。
【0030】
抽出条件としては、月桃乾燥物中のデヒドロカワインが溶媒に溶解するのに適した条件であれば特に限定されず、月桃乾燥物の状態(例えば、含水率)及び使用量に応じて、デヒドロカワイン可溶性溶媒の種類及び使用量を適宜設定できるが、例えば、月桃乾燥物に対して1倍容量~20倍容量の、好ましくは2倍容量~15倍容量の、より好ましくは3倍容量~10倍容量のデヒドロカワイン可溶性溶媒中に月桃乾燥物を所定時間浸漬させることなどが挙げられる。こうした抽出操作においては、抽出効率を高めるべく、必要に応じて撹拌操作、加温などを行ってもよい。
【0031】
抽出処理の具体的な条件としては、容器内に月桃乾燥物及び月桃乾燥物に対して3倍容量~10倍容量の50vol%~70vol%の含水エタノールを入れて、10℃~40℃、好ましくは室温(20℃~30℃)で、数時間~数日間、好ましくは12時間~10日間の条件で、静置又は撹拌することにより実施できるが、これに限定されない。
【0032】
月桃乾燥物を、上記した抽出処理に供することにより、抽出液及び抽出残渣を得ることができる。抽出処理の後に固液分離処理を行うことで、抽出液と抽出残渣とを効率良く分離することができる。固液分離手段は特に限定されないが、例えば、ろ過、遠心分離などの公知の固液分離手段を利用することができる。
【0033】
デヒドロカワイン可溶性溶媒として有機溶媒を用いた場合は、有機溶媒を揮散することなどを目的として、抽出液を濃縮処理に供することが好ましい。濃縮処理は、有機溶媒を除去し、さらに液体を減容化する通常知られる処理であれば特に限定されず、例えば、減圧下で常温に置くこと、低温真空下におくこと、加熱すること、凍結乾燥することなどが挙げられる。濃縮の程度は特に限定されないが、例えば、1/1,000~1/10程度、好ましくは1/100~1/10にまで減容化すればよく、乾固状態になるまで液体成分を揮散させてもよい。
【0034】
抽出処理は1回であってもよいが、DDK及び/又はDKの回収率を高めるに、抽出処理は2回又はそれ以上であることが好ましく、作業負荷及び経済性の観点から抽出処理は2回であることがより好ましい。例えば、月桃乾燥物を1回目の抽出処理に供して、第1の抽出液及び第1の抽出残渣を得て、次いで得られた第1の抽出残渣を2回目の抽出処理に供して、第2の抽出液及び第2の抽出残渣を得ることを、工程(1)として実施してもよい。
【0035】
抽出処理を2回以上行う場合、各抽出処理は互いに同じ条件で行ってもよいし、違う条件で行ってもよい。各抽出処理で得られた抽出液は、まとめて次の工程に一つの月桃粗抽出物として用いることができる。抽出液を固液分離処理及び/又は濃縮処理に供する場合は、各抽出液を固液分離処理及び/又は濃縮処理に供してもよいし、各抽出液をまとめたものを固液分離処理及び/又は濃縮処理に供してもよい。
【0036】
以上のように、月桃乾燥物を抽出処理に供することにより、好ましくは2回以上の抽出処理に供することにより、より好ましくは2回の抽出処理の後に各抽出液を固液分離処理及び濃縮処理に供してまとめることにより、月桃粗抽出物を得る。
【0037】
月桃粗抽出物におけるデヒドロカワインの含有量は特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、2.0質量%以上であることがなおさらに好ましい。
【0038】
工程(2)では、工程(1)によって得られた月桃粗抽出物を、加水処理及びアルカリ処理に供することにより、月桃抽出物を得る。月桃粗抽出物を加水処理及びアルカリ処理に供することにより、月桃粗抽出物中の水溶性成分及び脂肪酸などの夾雑物成分を除去し、不溶解物(沈殿物)としてデヒドロカワインを高濃度で含有する月桃抽出物を得ることができる。
【0039】
加水処理は、月桃粗抽出物に水を加える条件であれば特に限定されず、例えば、月桃粗抽出物に対して1倍容量~20倍容量の水、好ましくは2倍容量~15倍容量の水、より好ましくは4倍容量~10倍容量の水、さらに好ましくは6倍容量~8倍容量の水と月桃粗抽出物とを接触させることにより実施できる。この際の温度及び時間は特に限定されず、例えば、10℃~30℃で、数秒間~数分間~数時間にて実施すればよい。
【0040】
アルカリ処理は、月桃粗抽出物中の夾雑物を分解し、さらにデヒドロカワインを不溶性成分として析出し得る条件で実施すれば特に限定されず、例えば、月桃粗抽出物とアルカリ成分とを含む水溶液を、10℃~30℃、好ましくは室温で、数時間~数日間、撹拌及び/又は静置することにより実施できる。
【0041】
アルカリ処理で使用するアルカリ成分は、月桃粗抽出物中の夾雑物を分解し、かつ、デヒドロカワインを溶解しないものであれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられるが、強アルカリであり、かつ経済性が良いことから水酸化ナトリウムが好ましい。
【0042】
アルカリ処理によるアルカリ成分の使用量は、デヒドロカワインを析出し得る量であれば特に限定されないが、例えば、アルカリ成分が水酸化ナトリウムであれば、最終濃度が0.1%(w/v)~10%(w/v)、好ましくは0.5%(w/v)~8%(w/v)、より好ましくは0.5%(w/v)~6%(w/v)になるような量である。アルカリ処理によるアルカリ成分の使用量は、pHを指標として、pHがアルカリ側、好ましくは12~14、より好ましくは14付近になるような量であることが好ましい。
【0043】
工程(2)では、加水処理及びアルカリ処理を、アルカリ水溶液を使用することにより、同時的に実施してもよい。例えば、水に水酸化ナトリウムを溶解した水溶液に月桃粗抽出物を加えた後、さらに水の量が月桃粗抽出物に対して5倍容量~10倍容量になるように調整して、10℃~30℃、好ましくは室温で、数時間~数日間撹拌し、好ましくは1時間~24時間撹拌し、次いで数時間~数日間静置し、好ましくは10時間~7日間静置することにより、工程(2)を実施することができる。。
【0044】
工程(2)’では、加水処理及びアルカリ処理に加えて、塩析を実施する。塩析をすることにより、効率的にデヒドロカワインを析出することができる。塩析は、デヒドロカワインを析出し得る条件で実施すれば特に限定されず、例えば、月桃粗抽出物と塩類とを含む水溶液を、10℃~30℃、好ましくは室温で、数時間~数日間、撹拌及び/又は静置することにより実施できる。
【0045】
塩析で使用する塩類は、デヒドロカワインよりも水和力の高い水溶性の物質であれば特に限定されないが、例えば、有機塩及び無機塩などが挙げられ、腐食性及び安全性の観点からグルコース、スクロース、マルトースなどの糖類であることが好ましく、グルコースであることがより好ましい。
【0046】
塩析で使用する塩類の使用量は、デヒドロカワインが固形分として析出し得る量であれば特に限定されないが、例えば、塩類がグルコースであれば、最終濃度が0.1%(w/v)~10%(w/v)、好ましくは0.5%(w/v)~5%(w/v)、より好ましくは0.5%(w/v)~2%(w/v)になるような量である。
【0047】
工程(2)’は、加水処理、アルカリ処理及び塩析を順次実施してもよく、これらの2種又は3種の処理を同時に実施してもよい。例えば、水に水酸化ナトリウム及び塩類を溶解した水溶液に月桃粗抽出物を加えた後、さらに水の量が月桃粗抽出物に対して5倍容量~10倍容量になるように調整して、10℃~30℃、好ましくは室温で、数時間~数日間撹拌し、好ましくは1時間~24時間撹拌し、次いで数時間~数日間静置し、好ましくは10時間~7日間静置することにより、工程(2)’を実施することができる。
【0048】
工程(2)及び工程(2)’は、複数回の実施がなくとも、1回の実施により、高純度のデヒドロカワインを含有する月桃抽出物が得られ得るが、複数回実施してもよい。月桃抽出物は、沈殿物として、固形状で、具体的には粉末状で得られ得る。得られた粉末状の月桃抽出物を含む水溶液を、固液分離処理及び/又は乾燥処理に供することにより、効率良く粉末状の月桃抽出物を回収することができる。月桃抽出物は、例えば、経口用組成物又は外用組成物の原料として使用する場合には、水などで洗浄することが好ましい。
【0049】
本発明の一態様の方法によって得られる月桃抽出物におけるデヒドロカワインの含有量は特に限定されないが、例えば、月桃抽出物の乾燥質量あたり70wt%以上であることが好ましく、80wt%以上であることがより好ましく、90wt%以上であることがさらに好ましく、95wt%以上であることがなおさらに好ましい。また、月桃抽出物におけるデヒドロカワインの回収率は、例えば、月桃粗抽出物中のデヒドロカワインの含有量に対して30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがなおさらに好ましい。なお、これらの上限は特に限定されないが、典型的にはそれぞれ100wt%及び100%である。
【0050】
月桃の部位によってDDK及びDKの含有量は異なる。月桃の花を用いた場合はDDK及びDKの両方を含む月桃抽出物が得られ、月桃の葉を用いた場合はDDKを含む月桃抽出物が得られる傾向にある。
【0051】
月桃の花を用いた場合は、月桃抽出物におけるDDKの含有量は、例えば、月桃抽出物の乾燥質量あたり、60wt%以上であることが好ましく、70wt%以上であることがより好ましく、80wt%以上であることがさらに好ましい。また、この場合の月桃抽出物におけるDDKの回収率は、例えば、月桃粗抽出物中のDDKの含有量に対して30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがなおさらに好ましい。なお、これらの上限は特に限定されないが、典型的にはそれぞれ100wt%及び100%である。
【0052】
月桃の花を用いた場合は、月桃抽出物におけるDKの含有量は、例えば、月桃抽出物の乾燥質量あたり、5wt%以上であることが好ましく、10wt%以上であることがより好ましく、12wt%以上であることがさらに好ましい。また、この場合の月桃抽出物におけるDKの回収率は、例えば、月桃粗抽出物中のDKの含有量に対して10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることがなおさらに好ましい。なお、これらの上限は特に限定されないが、典型的にはそれぞれ100wt%及び100%である。
【0053】
月桃の葉を用いた場合は、月桃抽出物におけるDDKの含有量は、例えば、月桃抽出物の乾燥質量あたり、60wt%以上であることが好ましく、70wt%以上であることがより好ましく、80wt%以上であることがさらに好ましく、90wt%以上であることがなおさらに好ましい。また、この場合の月桃抽出物におけるDDKの回収率は、例えば、月桃粗抽出物中のDDKの含有量に対して30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがなおさらに好ましい。なお、これらの上限は特に限定されないが、典型的にはそれぞれ100wt%及び100%である。また、この場合の月桃抽出物におけるDKの含有量は、1wt%以下である。
【0054】
月桃抽出物中に含まれるデヒドロカワインの確認及び定量は、後述する実施例に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行うことができる。
【0055】
本発明の一態様の方法は、本発明の課題を解決し得る限り、上記した工程の前段若しくは後段又は工程中に、種々の工程や操作を加入することができる。
【0056】
以下に、本発明の具体的態様として、月桃の花の乾燥物を原料として、デヒドロカワインを含有する月桃抽出物を製造する方法を説明するが、本発明の一態様の方法は以下のものに限定されない。
【0057】
開花した頃(5月~7月)に採取した月桃の花を、低温真空乾燥処理に供して含水率が10%以下になるように乾燥させる。月桃花乾燥物の所定量を、月桃花乾燥物に対して3倍容量~10倍容量の50vol%~70vol%の含水エタノールを加えて、室温で12時間~10日間静置して、抽出処理を実施し、得られた抽出液についてろ過して月桃残渣を取り除いた後、得られたろ液を減圧濃縮に供することによって、第1の月桃粗抽出物を得る。また、月桃残渣について同様の抽出処理を実施して、第2の月桃粗抽出物を得る。第1の月桃粗抽出物と第2の月桃粗抽出物とを混合して、以下の工程に用いる。
【0058】
次いで、得られた月桃粗抽出物に、水酸化ナトリウム及びグルコースを溶解した水溶液を加え、さらに月桃粗抽出物に対して5倍容量~10倍容量になるように水を加える。得られた水溶液の水酸化ナトリウムの最終濃度は0.5%(w/v)~6%(w/v)であり、グルコースの最終濃度は0.5%(w/v)~2%(w/v)である。次いで、得られた水溶液を、室温で、1時間~24時間撹拌し、次いで10時間~5日間静置することにより、沈殿物として月桃抽出物を得る。得られた月桃抽出物をろ過処理及び凍結乾燥処理に供することにより、粉末状の月桃抽出物を得る。得られた月桃抽出物のデヒドロカワインの含有量は、月桃抽出物の乾燥質量あたり90wt%以上にすることが可能である。
【0059】
本発明の一態様の方法で製造される月桃抽出物は、別の態様として、本発明に包含され得る。本発明の月桃抽出物は、DDK及び/又はDKの含有量の合計が所定の量であり、かつ、含有するDDK及び/又はDKが原料である月桃に由来することに特徴がある。
【0060】
本発明の一態様の月桃抽出物は、DDK及びDKの含有量の合計は、例えば、80wt%以上であり、好ましくは90wt%以上であり、より好ましくは95wt%以上である。該含有量の上限は特に限定されず、典型的には100wt%である。
【0061】
本発明の一態様の月桃抽出物は、DDKの含有量が、月桃抽出物の乾燥質量あたり、70wt%以上であることが好ましく、80wt%以上であることがより好ましく、90wt%以上であることがさらに好ましい。本発明の一態様の月桃抽出物は、DKの含有量が、月桃抽出物の乾燥質量あたり、5wt%以上であることが好ましく、10wt%以上であることがより好ましく、12wt%以上であることがさらに好ましい。ただし、本発明の一態様の月桃抽出物は、DDK及びDKの両方を含んでいることが好ましいが、DDK及びDKのいずれか一方を含んでいればよい。
【0062】
本発明の一態様の月桃抽出物が含有するDDK及びDKは、その両方が原料である月桃に由来することに特徴がある。換言すれば、本発明の一態様の月桃抽出物は、月桃以外の天然物の抽出又は合成により得られたDDK及びDKを含まないことに特徴がある。
【0063】
本発明の一態様の月桃抽出物の用途は特に限定されず、例えば、デヒドロカワインが有する薬理作用を期待して、飲食品、医薬品といった経口用組成物、化粧品といった外用組成物などの各組成物の原料又は該組成物そのものとして利用され得る。
【0064】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例0065】
[月桃抽出物の定量]
ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン(DDK)及び5,6-デヒドロカワイン(DK)の含有量(mg)は、HPLC法により、カラムとしてCOSMOSIL 5C18-AR-2カラムを用い、及び移動相としてMeOH:HO=60:40~100:0を用いて、流速を1ml/minとし、DDKを測定波長278.0nmに設定して約12分、DKを測定波長318nmに設定して約17分のリテンション・タイムを有するピークとして検量線法により測定した。
【0066】
[例1.月桃花を原料とする高純度月桃抽出物の製造(1)]
例1として、100gスケール、水酸化ナトリウム 4%(w/v)、グルコース 1%(w/v)の系で実施した、月桃花を原料とする高純度月桃抽出物の製造方法の概要を示したフロー図を図1に示す。
【0067】
月桃花を、40℃、5時間の条件にて低温真空乾燥処理に供して、乾燥花(含水率 3%~8%)を得た。乾燥花 100.0gを、60%(v/v)含水エタノール 500mLに入れて、室温で、1日間静置するエタノール抽出処理に供し、次いでフィルター(孔径5μm)を用いたろ過処理に供することにより、ろ液(1) 224.1g及びろ過残渣(1) 325.9gを得た。ろ液(1)の全量を減圧濃縮処理に供して、1回目抽出物として粗抽出物(1) 7gを得た。粗抽出物(1)におけるDDKは448.6mgであり、及びDKは120.3mgであった。
【0068】
また、ろ過残渣(1)を、60%(v/v)含水エタノール 500mLに入れて、室温で、1日間静置するエタノール抽出処理に供し、次いでフィルター(孔径5μm)を用いたろ過処理に供することにより、ろ液(2) 467.1gを得た。ろ液(2)の全量を減圧濃縮処理に供して、2回目抽出物として粗抽出物(2) 6gを得た。粗抽出物(2)におけるDDKは375.5mgであり、及びDKは105.4mgであった。
【0069】
得られた粗抽出物(1)及び粗抽出物(2)を合わせた粗抽出物(1+2)に、水酸化ナトリウム 4.0g及びグルコース 1.0gを加えた水溶液を加え、さらに水を加えて全量を100mLとした水溶液(pH 14)を、室温で、5時間撹拌(150rpm)し、次いで19時間静置するアルカリ処理及び塩析に供し、次いで遠心分離処理(2600×g、4,000rpm、1分間)に供し、得られた沈殿物を凍結乾燥処理に供することにより、粉末状の月桃抽出物 1,012.6mgを得た。
【0070】
得られた月桃抽出物は、DDK 843.5mg(純度83.3%)及びDK 155.3mg(純度15.3%)を含むものであった。また、粗抽出物(1+2)に含まれるDDK及びDKの量を基準にすると、月桃抽出物におけるDDKの回収率は103%であり、DKの回収率は70%であった。
【0071】
[例2.月桃花を原料とする高純度月桃抽出物の製造(2)]
例2として、38.0kgスケール、水酸化ナトリウム 4%(w/v)、グルコース 1%(w/v)の系で実施した、月桃花を原料とする高純度月桃抽出物の製造方法の概要を示したフロー図を図2に示す。
【0072】
月桃花を、40℃、5時間の条件の低温真空乾燥処理に供して、乾燥花(含水率 3%~8%)を得た。乾燥花 38.0kgを、60%(v/v)含水エタノール 180Lに入れて、室温で、7日間静置するエタノール抽出処理に供し、次いでフィルター(孔径20μm)を用いたろ過処理に供することにより、ろ液(1) 約120L及びろ過残渣(1)を得た。ろ液(1)の全量を、40℃、5時間の条件にて低温真空乾燥処理に供して、1回目抽出物として粗抽出物(1)を得た。粗抽出物(1)におけるDDKは200gであり、及びDKは62gであった。
【0073】
また、ろ過残渣(1)を、60%(v/v)含水エタノール 180Lに入れて、室温で、7日間静置するエタノール抽出処理に供し、次いでフィルター(孔径20μm)を用いたろ過処理に供することにより、ろ液(2) 約150Lを得た。ろ液(2)の全量を、40℃、6時間の条件の低温真空乾燥処理に供して、2回目抽出物として粗抽出物(2)を得た。粗抽出物(2)におけるDDKは87gであり、及びDKは27gであった。
【0074】
粗抽出物(1)及び粗抽出物(2)の全量を合わせた粗抽出物(1+2)を低温真空乾燥処理に供した。
【0075】
抽出物(1+2)に、水酸化ナトリウム 1.5kg及びグルコース 350gを入れた水溶液を加え、さらに水を加えて全量を38Lとした水溶液(pH 14)を、室温で、15時間撹拌(150rpm)し、次いで3日間静置するアルカリ処理に供し、次いで遠心分離処理(2600×g、4,000rpm、10分間)に供し、得られた沈殿物を凍結乾燥処理に供することにより、粉末状の月桃抽出物 189.5gを得た。
【0076】
得られた月桃抽出物は、DDK 134.5g(純度71.0%)及びDK 25.9g(純度13.7%)を含むものであった。また、粗抽出物(1+2)に含まれるDDK及びDKの量を基準にすると、月桃抽出物におけるDDKの回収率は47%であり、DKの回収率は29%であった。
【0077】
[例3.月桃花を原料とする高純度月桃抽出物の製造(3)]
例3として、100gスケール、水酸化ナトリウム 1%(w/v)、グルコース未使用の系で実施した、月桃花を原料とする高純度月桃抽出物の製造方法の概要を示したフロー図を図3に示す。
【0078】
月桃花を、40℃、5時間の条件にて低温真空乾燥処理に供して、乾燥花(含水率 3%~8%)を得た。乾燥花 100.0gを、60%(v/v)含水エタノール 500mLに入れて、室温で、1日間静置するエタノール抽出処理に供し、次いでフィルター(孔径5μm)を用いたろ過処理に供することにより、ろ液(1)及びろ過残渣(1)を得た。
【0079】
ろ過残渣(1)を、60%(v/v)含水エタノール 500mLに入れて、室温で、1日間静置するエタノール抽出処理に供し、次いでフィルター(孔径5μm)を用いたろ過処理に供することにより、ろ液(2)を得た。
【0080】
ろ液(1)及びろ液(2)を合わせたろ液(1+2) 714.9gを減圧濃縮処理に供して、粗抽出物(1+2) 13gを得た。粗抽出物(1+2)におけるDDKは838.9mgであり、及びDKは252.3mgであった。
【0081】
得られた粗抽出物(1+2)に、水酸化ナトリウム 1.0gを加えた水溶液を加え、さらに水を加えて全量を100mLとした水溶液(pH 10)を、室温で、5時間撹拌(150rpm)し、次いで19時間静置するアルカリ処理に供し、次いで遠心分離処理(2600×g、4,000rpm、1分間)に供し、得られた沈殿物を凍結乾燥処理に供することにより、粉末状の月桃抽出物 1265.9mgを得た。
【0082】
得られた月桃抽出物は、DDK 939.7mg(純度74.2%)及びDK 190.9mg(純度15.1%)を含むものであった。また、粗抽出物(1+2)に含まれるDDK及びDKの量を基準にすると、月桃抽出物におけるDDKの回収率は112%であり、DKの回収率は76%であった。
【0083】
[例4.月桃葉を原料とする高純度月桃抽出物の製造]
例4として、100gスケール、水酸化ナトリウム 4%(w/v)、グルコース 1%(w/v)の系で実施した、月桃葉を原料とする高純度月桃抽出物の製造方法の概要を示したフロー図を図4に示す。
【0084】
月桃葉を、熱乾燥処理に供して、乾燥葉を得た。乾燥葉 100.0gを、60%(v/v)含水エタノール 600mLに入れて、室温で、4日間静置するエタノール抽出処理に供し、次いでフィルター(孔径5μm)を用いたろ過処理に供することにより、ろ液(1) 282.7g及びろ過残渣(1) 357.3gを得た。ろ液(1)の全量を減圧濃縮処理に供して、1回目抽出物として粗抽出物(1)を得た。粗抽出物(1)におけるDDKは227.5mgであったが、DKは検出下限未満であった。
【0085】
また、ろ過残渣(1)を、60%(v/v)含水エタノール 600mLに入れて、室温で、3日間静置するエタノール抽出処理に供し、次いでフィルター(孔径5μm)を用いたろ過処理に供することにより、ろ液(2) 448.6gを得た。ろ液(2)の全量を減圧濃縮処理に供して、2回目抽出物として粗抽出物(2)を得た。粗抽出物(2)におけるDDKは150.8mgであったが、DKは検出下限未満であった。
【0086】
粗抽出物(1)及び粗抽出物(2)の全量を合わせた抽出物(1+2)に、水酸化ナトリウム 4.0g及びグルコース 1.0gを溶解した水溶液を加え、さらに全量が100mLになるように水を加えて得られた水溶液(pH 14)を、室温で、5時間撹拌(150rpm)し、次いで19時間静置するアルカリ処理に供し、次いで遠心分離処理(2600×g、4,000rpm、1分間)に供し、得られた沈殿物を凍結乾燥処理に供することにより、粉末状の月桃抽出物 352.8mgを得た。
【0087】
得られた月桃抽出物は、DDK 349.3mg(純度99.0%)を含むものであった。また、粗抽出物(1+2)に含まれるDDKの量を基準にすると、月桃抽出物におけるDDKの回収率は82%であった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の一態様の方法によって製造される月桃抽出物は、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン及び5,6-デヒドロカワインを高純度で含有することにより、これらの薬理作用を期待して、飲食品、化粧品、医薬品、医薬部外品などに利用でき、特に経口剤、外用剤、注射剤、化粧水などとして、及びこれらに配合できる点で有用である。
図1
図2
図3
図4