(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127259
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】触媒システム、これを用いた脱金属脱硫処理方法及び脱金属脱硫処理装置
(51)【国際特許分類】
C10G 45/08 20060101AFI20220824BHJP
B01J 23/883 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C10G45/08 A
B01J23/883 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025310
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】金子 安延
(72)【発明者】
【氏名】飯田 翔一
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA15
4G169BC50B
4G169BC57A
4G169BC59B
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169CC02
4G169CC03
4G169DA06
4H129AA02
4H129CA08
4H129CA09
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4H129KA07
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4H129KB03
4H129KB04
4H129KC03Y
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4H129KC32X
4H129KC32Y
4H129KD10Y
4H129KD13X
4H129KD15Y
4H129KD21X
4H129KD23X
4H129KD24Y
4H129NA02
4H129NA05
4H129NA37
(57)【要約】
【課題】触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制することで、長期的に優れた脱金属性能及び脱硫性能等の触媒活性を発現し得る触媒システム、さらには当該触媒システムを用いた原料油の脱金属脱硫処理方法及び脱金属脱硫処理装置を提供する。
【解決手段】原料油を脱金属脱硫処理する触媒システムであって、触媒の交換が可能であり、特定の活性金属を含み、かつ特定のアスペクト比を有する触媒層A及び触媒層Bを有し、前記触媒層Aが前記原料油と先に接触するように充填された触媒システム、並びに当該触媒システムを用いた原料油の脱金属脱硫処理方法及び脱金属脱硫処理装置である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料油を脱金属脱硫処理する触媒システムであって、触媒の交換が可能であり、触媒層Aと、触媒層Bとを有し、前記触媒層Aが前記原料油と先に接触するように充填され、
前記触媒層Aを構成する触媒Aが周期表第6族、第9族及び第10族の金属のうち少なくとも一種の金属を活性金属として含み、
前記触媒Aのアスペクト比が0.90以上1.0以下であり、
前記触媒層Bを構成する触媒Bが周期表第6族、第9族及び第10族の金属のうち少なくとも一種の金属を活性金属として含み、
前記触媒Bのアスペクト比が0.70以上0.90未満である、
触媒システム。
【請求項2】
前記触媒層Bの容量100に対する前記触媒層Aの容量が、30以上130以下である、請求項1に記載の触媒システム。
【請求項3】
前記触媒層Aと前記触媒層Bとが、一の反応器に備えられる、請求項1又は2に記載の触媒システム。
【請求項4】
前記触媒の交換が、前記触媒層Aを構成する触媒Aを排出し、前記触媒層Bを構成する触媒Bを補充して行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒システム。
【請求項5】
前記触媒の交換が、前記原料油を供給しながら行われる、請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒システム。
【請求項6】
前記原料油が、常圧蒸留残油(AR)、減圧蒸留残油(VR)、重質サイクル油(HCO)、接触分解残油(CLO)、及び重質軽油留分から選ばれる少なくとも一種の重油留分である請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒システムを用いる、原料油の脱金属脱硫処理方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒システムを備える、原料油の脱金属脱硫処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒システム、これを用いた脱金属脱硫処理方法及び脱金属脱硫処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原油を常圧蒸留、減圧蒸留等をすることにより得られる常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油等の残渣油(重油)は、重油直接脱硫装置(「RH装置」とも称される。)、さらにはRH装置の触媒の劣化を抑制するために、必要に応じて当該RH装置の上流に設けられる脱金属前処理装置(「OCR装置」とも称される。)等において前処理した後、水素化分解等の精製工程を経て、灯油、自動車燃料、潤滑油基油等の各種用途に利用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
既述の重油留分は、水素化分解された後に、灯油、自動車燃料用等の基材(ガソリン基材)、潤滑油基油等の重要な用途に用いられることから、より安価に、安定してこれらの用途に合致する留分を製造し供給することが求められている。他方、上記のような精製処理を行う装置、すなわち水素化分解等の精製を行う装置、またその前処理となる脱金属前処理装置、重油直接脱硫装置等の各装置には触媒が用いられ、触媒は経時的に劣化するためにその劣化を抑制することが検討されている。上記特許文献1では、原料油の種類を調整することにより、触媒の劣化を抑制し、触媒を長寿命化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、原料油の種類を調整できないという制限が課されることがあると、上記特許文献1に記載される技術では対応できない場合がある。
ところで、上記のような精製処理を行う装置において、例えば脱金属前処理装置では、触媒を連続的又は断続的に交換しながら精製処理をすることが行われる場合がある。この際、触媒の交換を円滑に行うことができず、触媒活性が著しく低下するため、長期的に安定した運転ができない、といった問題が生じる場合があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、当該問題の発生の要因について詳細に検討したところ、触媒の交換が円滑に行えないのは、触媒層中において触媒が滞留すること、またホットスポットの形成により触媒層中の触媒の固着が生じること、によるものであり、これらの要因により触媒活性が著しく低下することを見出した。
【0007】
本発明は、触媒の初期充填時に二種類の触媒を充填することにより、触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制することで、長期的に優れた脱金属性能及び脱硫性能等の触媒活性を発現し得る触媒システム、さらには当該触媒システムを用いた原料油の脱金属脱硫処理方法及び脱金属脱硫処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、下記の構成を有する触媒システム、さらには当該触媒システムを用いた原料油の脱金属脱硫処理方法及び脱金属脱硫処理装置を提供するものである。
【0009】
1.原料油を脱金属脱硫処理する触媒システムであって、触媒の交換が可能であり、触媒層Aと、触媒層Bとを有し、前記触媒層Aが前記原料油と先に接触するように充填され、
前記触媒層Aを構成する触媒Aが周期表第6族、第9族及び第10族の金属のうち少なくとも一種の金属を活性金属として含み、
前記触媒Aのアスペクト比が0.90以上1.0以下であり、
前記触媒層Bを構成する触媒Bが周期表第6族、第9族及び第10族の金属のうち少なくとも一種の金属を活性金属として含み、
前記触媒Bのアスペクト比が0.70以上0.90未満である、
触媒システム。
2.上記1に記載の触媒システムを用いる、原料油の脱金属脱硫処理方法。
3.上記1に記載の触媒システムを備える、原料油の脱金属脱硫処理装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制することで、長期的に優れた脱金属性能及び脱硫性能等の触媒活性を発現し得る触媒システム、さらには当該触媒システムを用いた原料油の脱金属脱硫処理方法及び脱金属脱硫処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の脱金属脱硫処理装置の好ましい一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態(以後、単に「本実施形態」と称する場合がある。)に係る触媒システム、原料油の脱金属脱硫処理方法及び脱金属脱硫処理装置について具体的に説明する。なお、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以下」、「以上」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値は上限値又は下限値として用いられ得る数値である。例えば、とある数値範囲について「A~B」及び「C~D」と記載されている場合、「A~D」、「C~B」といった数値範囲も含まれる。「以上」、「以下」と記載されている場合も同様である。
【0013】
[触媒システム]
本実施形態の触媒システムは、原料油を脱金属脱硫処理する触媒システムであって、触媒層Aと、触媒層Bとを有し、前記触媒層Aが前記原料油と先に接触するように充填され、前記触媒層Aを構成する触媒Aが周期表第6族、第9族及び第10族の金属のうち少なくとも一種の金属を活性金属として含み、前記触媒Aのアスペクト比が0.90以上1.0以下であり、前記触媒層Bを構成する触媒Bが周期表第6族、第9族及び第10族の金属のうち少なくとも一種の金属を活性金属として含み、前記触媒Bのアスペクト比が0.70以上0.90未満である、というものである。
【0014】
既述のように、本発明者らは、触媒の交換を円滑に行えないことが、触媒が触媒層中に滞留すること、また触媒層中でホットスポットの形成による触媒の固着が生じること、によるものであることを見出した。さらに詳細に検討した結果、触媒層中における触媒の滞留、ホットスポットの形成及び当該形成による触媒の固着が、主に触媒の形状に起因するものであることを突き止めた。より具体的には、触媒の形状として、より真球に近い形状を採用すると、触媒の交換の際に、触媒層中において触媒が滞留しにくくなり、かつホットスポットの形成による触媒の固着も生じにくくなることを突き止めた。
【0015】
ここで、脱金属性能及び脱硫性能等の触媒活性(以下、単に「触媒活性」とも称する。)の低下につながる、触媒層中における触媒の滞留と、ホットスポットの形成及び当該形成による触媒の固着とは互いに影響しあっていると考えられる。触媒層中において触媒が滞留すると、運転時間の経過とともに滞留した触媒に起因したホットスポットが形成し、触媒の固着が生じやすくなり、触媒の固着が生じると触媒層中における触媒の滞留が更に促進するからである。よって、本発明は、触媒として、従来から使用してきた触媒(触媒B)に比べてより真球に近い形状となる、アスペクト比が0.90以上1.0以下であるという形状の触媒(触媒A)を採用することで、触媒の滞留と、ホットスポットの形成及び当該形成による触媒の固着とを同時に抑制し、結果として触媒活性が長期的に持続することを可能とした。そして、二種の触媒の触媒活性を十分にいかすことにより、優れた触媒活性を維持することが可能となる。
【0016】
また、本発明においては、原料油と先に接触するように、真球に近い形状の触媒(触媒A)により構成される触媒層Aが充填される、という構成を採用する。触媒層Aが原料油と先に接触すると、触媒Aが真球に近い形状を有することから原料油の偏流が生じにくくなり、触媒層A中に均一に広がることとなる。そうすると、原料油は触媒層Bにおいても均一に供給されることとなる。そのため、ホットスポットが形成しにくくなり、触媒の固着を抑制することができ、触媒の滞留も同時に抑制することが可能になるものと考えられる。
【0017】
かくして、本発明の触媒システムは、触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制することで、長期的に優れた脱金属性能及び脱硫性能等の触媒活性を発現し得るシステムになるものと考えられる。
【0018】
(触媒A)
触媒Aは、周期表第6族、第9族及び第10族の金属のうち少なくとも一種の金属を活性金属として含み、アスペクト比が0.90以上1.0以下である、というものである。
既述のように、触媒Aは、アスペクト比が0.90以上1.0以下であり、後述する触媒Bのアスペクト比が0.70以上0.90未満であることから、当該触媒Bに比べて、より真球に近い形状を呈するものである。そのため、触媒の滞留が生じにくく、またホットスポットの形成による触媒の固着が生じにくい、という特長を有するものである。
本明細書において、触媒のアスペクト比は、JIS Z8827-2:2010に規定される「粒子径解析-画像解析法-第2部:動的画像解析法」(ISO13322-2:2006)に準拠して測定されるものであり、当該規定に準拠する、粒子径分布、粒子形状を測定し得る市販の装置を用いて測定することができる測定値である。
【0019】
触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制し、より長期的に優れた触媒活性を得る観点から、触媒Aのアスペクト比は、好ましくは0.91以上、より好ましくは0.93以上、更に好ましくは0.95以上であり、上限としては大きいほど好ましいため特に制限はなく、入手の容易性を考慮すると、好ましくは0.99以下である。
【0020】
触媒Aの細孔容量は、0.50mL/g以上1.25mL/g以下であることが好ましい。既述のように、触媒Aは触媒Bに比べて真球に近い形状を有するものであるが、製造上の都合等の様々な事情により従来から使用してきた触媒Bに比べて、細孔容量が小さくなることが一般的であるため、入手しやすい。他方、細孔容量が小さくなると、触媒活性が低下する傾向にあることから、触媒活性の向上の観点からは細孔容量が大きいほど好ましい。触媒Aの細孔容量が上記範囲であれば、入手しやすく、かつ優れた触媒活性が得られやすい。
より優れた触媒活性を得る観点、また入手のしやすさを考慮すると、細孔容量は好ましくは0.55mL/g以上、より好ましくは0.60mL/g以上、更に好ましくは0.62mL/g以上であり、上限として好ましくは1.25mL/g以下、より好ましくは0.90mL/g以下、更に好ましくは0.80mL/g以下である。
本明細書において、触媒の細孔容量は、JIS Z8831-2:2010に規定される「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性-第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法」に準拠し、窒素吸着測定により測定される値である。
【0021】
また、触媒Aの平均粒径は、好ましくは2.2mm以上、より好ましくは2.4mm以上、更に好ましくは2.6mm以上、より更に好ましくは2.8mm以上であり、上限として好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.8mm以下、更に好ましくは3.6mm以下、より更に好ましくは3.4mm以下である。触媒Aの平均粒径が上記範囲内であると、取扱いやすく、また優れた触媒活性が得られやすい。
本明細書において、触媒の平均粒径は、上記アスペクト比の測定と同様に、動的画像解析法により測定した測定値である。
【0022】
(活性金属)
触媒Aに用いられる活性金属としては、周期表第6族、第9族及び第10族の金属のうち少なくとも一種の金属が採用される。これらの周期表各族に属する金属を採用することで、優れた触媒活性が得られる。
ここで周期表第6族に属する金属としては、モリブデン、タングステンが好ましく挙げられ、また第9及び10族に属する金属としては、ニッケル、コバルトが好ましく挙げられる。これらの金属は、単独でも複数種を組み合わせて用いることができ、触媒活性を向上させる観点から、複数種を組み合わせて用いることが好ましい。
複数種を組み合わせて用いる場合、第6族の金属と、第9及び10族の金属とを組み合わせて用いることが好ましく、具体的には、ニッケル-モリブデン、コバルト-モリブデン、ニッケル-タングステン、コバルト-タングステン等の組合せが好ましく挙げられ、中でもコバルト-モリブデン、ニッケル-モリブデンが好ましく、特にニッケル-モリブデンが好ましい。
【0023】
また、触媒Aに用いられる活性金属としては、上記周期表第6族、第9族及び第10族の金属とともに、これらの金属以外の他の金属を含んでいてもよい。
他の金属としては、周期表第4族の金属、第15族の金属が好ましく挙げられ、第4族の金属としては、チタン、ジルコニウムが好ましく、チタンがより好ましい。また、第15族の金属としては、リン、アンチモン、ビスマスが好ましく、リンがより好ましい。
【0024】
触媒Aの活性金属の担持量は、特に制限はなく、原料油の性状、所望の触媒活性等の各種条件に応じて適宜選定すればよく、第6族の金属を用いる場合、第6族の金属の酸化物として触媒全体の0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、1.0~10質量%であることが更に好ましく、2.0~5.0質量%であることがより更に好ましい。
第9族、第10族の金属を用いる場合、各々単独で用いる場合は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.3~5質量%であることがより好ましく、0.5~3質量%であることが更に好ましく、0.8~1.5質量%であることがより更に好ましい。また、第9族及び第10族の金属を併用する場合、触媒全体に対するこれらの金属の合計の含有量は、これらの金属を単独で用いる場合の含有量と同じである。
【0025】
(担体)
触媒Aの担体としては、上記活性金属を担持させるものであれば特に制限なく採用することができ、例えば、多孔性無機担体が好ましく挙げられる。
多孔性無機担体は、触媒の担体として汎用されるものであり、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、ボリア、マグネシア、ジルコニア、またこれらの複合酸化物である、シリカ-アルミナ、アルミナ-ボリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-チタニア、シリカ-チタニア等が好ましく挙げられる。中でも、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナが好ましく、アルミナがより好ましい。
【0026】
(触媒の調製)
触媒を調製する方法については特に制限はなく、所望の形状に応じて従来法より適宜選択して採用すればよく、例えば、含浸法、混練法、共沈法等の公知の方法を採用することができる。
アスペクト比が0.90以上1.0以下の真球に近い触媒の形状を容易に得る観点から、例えば、球形整粒機(マルメライザー)等の転動式造粒機を用いた転動式造粒法、流動層造粒法等の各種造粒機を用いた方法等を採用することもできる。また、これと同様の観点から、オイルバスにアルミナゲル等の多孔性無機担体の前駆体ゲルを滴下して真球に近い形状に成形するオイルドロップ法等を採用することもできる。
【0027】
含浸法による場合を例にとると、例えばアルミナゲル等の多孔性無機担体の前駆体ゲルを、転動式造粒機、流動層造粒機等の各種造粒機を用いて所定の形状に造粒し、当該造粒した多孔性無機担体に、所望の活性金属、活性金属を含む塩、酸化物等の化合物を溶解した水溶液等を含浸させることで、担体に活性金属を担持させた後、乾燥、焼成等の加熱処理を行うことにより、調製することができる。
【0028】
転動式造粒法による場合を例にとると、前記担体となる多孔性無機担体の前駆体ゲル、例えばアルミナゲルと、所望の活性金属、活性金属を含む塩、酸化物等の化合物と、を混合した混合物を加熱濃縮し、当該加熱濃縮した混合物を押出成形機を用いて成形体を形成した後、これを球形整粒機(マルメライザー)に供給して触媒の形状を整えた後、乾燥、焼成等の加熱処理を行うことで、調製することができる。
【0029】
上記の転動式造粒法及び含浸法における加熱処理について、乾燥は通常30~200℃で、0.1~24時間程度の条件で行えばよく、また焼成は、好ましくは200~700℃、より好ましくは225~650℃、更に好ましくは250~600℃、より更に好ましくは300~550℃の温度条件で、好ましくは1~10時間、より好ましくは2~7時間行うとよい。
【0030】
(触媒B)
触媒Bは、周期表第6族、第9族及び第10族の金属のうち少なくとも一種の金属を活性金属として含み、アスペクト比が0.70以上0.90未満である、というものである。
触媒Bのアスペクト比は、触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制し、より長期的に優れた触媒活性を得る観点から、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.80以上、更に好ましくは0.85以上であり、上限としては大きいほど好ましいため特に制限はなく、入手の容易性を考慮すると、好ましくは0.89以下である。
【0031】
触媒Bの細孔容量は、0.75mL/g以上1.50mL/g以下であることが好ましい。既述のように、触媒Bのアスペクト比は0.70以上0.90未満であることから、触媒Aの方が真球に近い形状を有するものであるが、製造上の都合等の様々な事情により、触媒Bの細孔容量は触媒Aより大きくなることが一般的であり、入手しやすい。他方、細孔容量が大きくなると、触媒活性が向上する傾向にあることから、触媒活性の向上の観点からは細孔容量が大きいほど好ましい。よって、触媒Bの細孔容量が上記範囲であれば、入手しやすく、かつ優れた触媒活性が得られやすくなる。より優れた触媒活性を得る観点から、より好ましくは0.77mL/g以上、更に好ましくは0.80mL/g以上、より更に好ましくは0.83mL/g以上であり、上限としては触媒活性の点では特に制限はないが、入手のしやすさを考慮すると、より好ましくは1.25mL/g以下、更に好ましくは1.10mL/g以下、より更に好ましくは1.00mL/g以下である。
【0032】
触媒Bは、アスペクト比が0.70以上0.90未満であり、既述のように触媒Aの方が真球に近い形状を呈するものとなるため、触媒Aに比べれば触媒の滞留が生じやすく、またホットスポットの形成による触媒の固着が生じやすい傾向を有するものであるといえる。他方、触媒A及び触媒Bの細孔容量を考慮すると、触媒Bの方がより高い触媒活性を呈するものとなりやすい。特定のアスペクト比を有する触媒A及び触媒Bについて、細孔容量を上記好ましい範囲のものを採用することで、触媒Aの触媒活性が劣るという短所を、触媒Bの優れた触媒活性という長所により補完し、また触媒Bの触媒の滞留がしやすいという短所を、触媒Aの触媒が滞留しにくいという長所により補完することができる。
よって、本実施形態の触媒システムは、触媒A及び触媒Bのアスペクト比に加えて、細孔容量を上記範囲のものとすることで、互いの性能を補完し合う補完関係を築くことができ、触媒の滞留及び触媒の固着の進行をより抑制することができ、より長期的に優れた触媒活性を発現し得るものとすることができる。
【0033】
また、触媒Bの平均粒径は、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、より更に好ましくは2.5mm以上であり、上限として好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下、更に好ましくは4.0mm以下、より更に好ましくは3.5mm以下である。触媒Bの平均粒径が上記範囲内であると、取扱いやすく、また優れた触媒活性が得られやすい。
【0034】
触媒Bの活性金属、担体、活性金属の担持量は、上記触媒Aについて説明した内容と同じ内容を適用し得る。
活性金属については、上記周期表第6族、第9族及び第10族の金属とともに、これらの金属以外の他の金属として、周期表第4族及び第15族の金属から選ばれる少なくとも一種の金属を含むことが好ましい。
【0035】
また、触媒Bの調製は、上記触媒Aの調製方法と同様の方法から適宜選択して調製することができ、アスペクト比が0.70以上0.90未満となるように調製すると、他の性状、すなわち細孔容量が0.75mL/g以上1.50mL/g以下の範囲内になりやすく、容易である。
【0036】
(触媒層A及び触媒層Bの容量)
本実施形態の触媒システムにおいて、上記触媒Aにより構成される触媒層A及び上記触媒Bにより構成される触媒層Bの容量について、触媒層Bの容量100に対する前記触媒層Aの容量が、30以上130以下であることが好ましい。触媒層A及び触媒層Bの容量の割合が上記範囲内であると、触媒Aと触媒Bとの上記補完関係により、触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制し、より長期的に優れた触媒活性が得られる。
これと同様の観点から、触媒層Bの容量100に対する触媒層Aの容量は、より好ましくは35以上、更に好ましくは40以上、より更に好ましくは45以上であり、上限としてより好ましくは120以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは90以下、特に好ましくは75以下である。
【0037】
上記触媒層A及び触媒層Bの容量の割合は、初期の触媒A及び触媒Bの充填量の割合である。本実施形態の触媒システムは、触媒の交換が可能であり、供給する触媒の種類に応じて、経時的に触媒A及び触媒Bの充填量の割合はかわることとなる。本実施形態の触媒システムは、触媒の交換によりいかなる触媒を供給しても、初期の充填量が上記触媒層A及び触媒層Bの容量の範囲内であれば、触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制し、より長期的に優れた触媒活性が得られる。
【0038】
(触媒の交換)
本実施形態の触媒システムは、触媒の交換が可能である。本実施形態の触媒システムは触媒の交換に対応し得るため、触媒システムの触媒活性の程度に応じて、新しい触媒を供給することができるため、長期的に優れた触媒活性を発現することができる。
触媒の交換は、具体的には使用済みの触媒を排出し、排出した分を、新触媒を供給して補充することにより行われる。
【0039】
補充する触媒は、所望の性能、すなわち脱金属性能及び脱硫性能等の触媒活性を発現するものであれば特に制限はなく、例えば上記の触媒A、触媒Bを供給することができ、中でも触媒Bを供給することが好ましい。
また、排出する触媒は、触媒A、触媒Bのいずれであってもよいが、好ましくは触媒Aである。
【0040】
触媒Aは、既述のように真球に近い形状を有していることから滞留しにくいという性状を有している。そのため、触媒Aは触媒Bよりも排出しやすく、より円滑な触媒の交換が可能になる。また、後述する
図1に示される脱金属脱硫処理装置の態様では、反応器の下部に触媒Aが充填され、その上に触媒Bが充填されている。この場合、触媒Aを反応器下部から排出すると触媒層全体が下部に移動することになるが、真球に近い形状を有する触媒Aが反応器下部に接していることで、触媒層の移動がより安定するため、触媒層の上部表面の安息角はより緩やかになる。そのため、触媒層がより均一な状態となり、触媒の滞留が生じにくくなるため、継続的により円滑な触媒の交換が可能になると考えられる。
他方、供給する触媒については、触媒活性により優れる触媒Bを供給することが触媒活性の向上の観点から有効である。触媒Bは既述のように触媒Aに比べて滞留しやすいという短所を有しているが、触媒の交換により供給する場合、当該短所による効果の低減は限定的となり、触媒Bの長所となる優れた触媒活性を有効に活かすことができる。
【0041】
本実施形態の触媒システムにおいて、触媒の交換は、原料油を供給しながら行うこともできるし、原料油の供給を一旦停止して行うこともできる。触媒の交換は、原料油を供給しながら行うことが好ましい。継続的に触媒の固着の進行を抑制し、触媒の滞留率を低下させることができ、より長期的に優れた脱触媒活性が得られるからである。
【0042】
触媒の交換にあたり、触媒の交換量については、本実施形態の触媒システムの規模、触媒活性、原料油を供給する期間等に応じて適宜決定すればよく特に制限はないが、触媒A及び触媒Bの合計容量を100とした場合の、触媒の1週間あたりの供給量として、通常0.5~10であり、好ましくは1.0~7.5、より好ましくは1.5~5.0である。
【0043】
触媒の交換は、連続的に同じ供給量で触媒を供給し、使用済みの触媒を排出してもよいし、一定の頻度(例えば一日に一度、一週間に一度等)で断続的に触媒を供給し、使用済みの触媒を排出してよい。
また、触媒の交換は、原料油を供給する全期間にわたって同じ供給量で行ってもよいし、例えば触媒活性に応じて途中で増減させることが可能である。
【0044】
(触媒層A及び触媒層Bの配置)
本実施形態の触媒システムにおいて、触媒層A、触媒層Bは、触媒層Aが原料油と先に接触するように充填されていれば特に制限はない。既述のように、触媒層Aが原料油と先に接触するように充填されることにより、触媒Aが真球に近い形状であることから、原料油の偏流が生じにくく、原料油が均一に触媒層A中に広がることとなる。次いで、原料油は、触媒層B中にも均一に供給されるため、ホットスポットの形成が抑制され、触媒の滞留が抑制されることになる。
また、後述する
図1に示される脱金属脱硫処理装置の、反応器の下部に触媒Aが充填され、その上に触媒Bが充填されている態様の場合、触媒Aを反応器下部から排出すると触媒層全体が下部に移動することになるが、真球に近い形状を有する触媒Aが反応器下部に接していることで、触媒層の移動がより安定するため、触媒層の上部表面の安息角はより緩やかになる。そのため、触媒層がより均一な状態となり、触媒の滞留が生じにくくなるため、継続的により円滑な触媒の交換が可能になると考えられる。
【0045】
触媒A、触媒Bは、別々の反応器に充填することもできるし、一の反応器に充填することもできる。すなわち、触媒層A、触媒層Bは、別々の反応器に備えることもできるし、一の反応器に備えることもできる。触媒システム、さらには後述する脱金属脱硫装置の簡略化の観点から、一の反応器に備えることが好ましい。
【0046】
触媒層A、触媒層Bは、文言通り、各々触媒A、触媒Bが一定の厚さを有するように充填され、これらの触媒A、触媒Bにより一定の層を形成していることを意味する。本実施形態の触媒システムは、このような触媒層Aと、触媒層Bとを有することを要するが、触媒層A及び触媒層Bが一の反応器に備えられる場合、触媒A、触媒Bの充填の際に、触媒Aと触媒Bとが混在することがある。よって、これらの触媒が混在する箇所があってもよい。
【0047】
触媒層A、触媒層Bの態様について、脱金属脱硫処理装置の好ましい態様の一例が示される
図1を用いて説明する。
図1に示される脱金属脱硫処理装置は、後述する本実施形態の脱金属脱硫処理装置の好ましい態様の一例を示す模式図であり、本実施形態の触媒システムの好ましい応用例の一態様を示すものである。
【0048】
図1に示される装置において、触媒層A及び触媒層Bは一の反応器に備えられており、触媒層Aは反応器の下部に充填され、触媒層Bは反応器の上部に充填されている。また、反応器の下部に原料油供給口が設けられ、上部に処理油排出口が設けられている。
反応器がこのような構成を有することで、本実施形態の触媒システムは、触媒層Aが原料油と先に接触するように充填されるものとなる。そして原料油は、反応器の下部の原料油供給口から供給され、触媒層A、触媒層Bの順に通油され、これらの触媒により脱金属脱硫処理がされて、反応器の上部の処理油排出口から処理油として排出されることになる。また、原料油には、反応器に供給する際に、水素を供給してもよい。
【0049】
また、
図1に示される反応器は、その上部に触媒供給手段(触媒供給口)が設けられ、その下部に触媒排出手段(触媒排出口)が設けられている。触媒供給手段(触媒供給口)からは、新触媒として触媒Bを供給し補充することが示されており、触媒排出手段(触媒排出口)からは使用済みの触媒Aが排出されることが示されている。
【0050】
(原料油)
本実施形態の触媒システムに供給される原料油としては、脱金属脱硫処理したいものであれば特に制限なく、好ましくは常圧蒸留残油(AR)、減圧蒸留残油(VR)、重質サイクル油(HCO)、接触分解残油(CLO)、及び重質軽油留分等が挙げられる。本実施形態の触媒システムにおいては、これらの原料油を単独で、又は複数種を組み合わせて供給することができる。
【0051】
また、原料油の性状としては、例えば以下の性状が典型的に挙げられる。
原料油の密度(15℃)は、通常0.9000g/cm3以上1.1000g/cm3以下であり、好ましくは1.0500g/cm3以下である。本明細書において、15℃における密度は、JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準じて測定される値である。
【0052】
硫黄分含有量は、通常2.00質量%以上5.00質量%以下、好ましくは2.50質量%以上4.50質量%以下である。本明細書において、硫黄分含有量は、JIS K 2541-4:2003(原油及び石油製品-硫黄分試験方法- 第4部:放射線式励起法)に準じて測定される値である。
【0053】
ニッケル含有量は、通常5質量ppm以上500質量ppm以下、好ましくは450質量ppm以下であり、バナジウム含有量は通常1質量ppm以上200質量ppm以下であり、好ましくは100質量ppm以下である。本明細書において、ニッケル含有量及びバナジウム含有量は、石油学会法JPI-5S-62-2000に準拠した蛍光X線法により測定される値である。
【0054】
残留炭素分は、通常20.0質量%以下、好ましくは17.5質量%以下である。本明細書において、残留炭素分は、JIS K 2270-1:2009(原油及び石油製品-残留炭素分の求め方- 第1部:コンラドソン法)に準じて測定される値である。
【0055】
また、100℃動粘度は、通常100mm2/s以上300mm2/s以下であり、好ましくは225mm2/s以下である。本明細書において、100℃における動粘度は、JIS K 2283:2000(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定される値である。
【0056】
(触媒システムの用途)
本実施形態の触媒システムは、脱金属処理及び脱硫処理が必要な用途に制限なく採用することができ、例えば重油直接脱硫装置(RH装置)の触媒の劣化を抑制するために設けられる脱金属前処理装置等において好適に採用される。
【0057】
[原料油の脱金属脱硫処理方法]
本実施形態の原料油の脱金属脱硫処理方法は、上記の本実施形態の触媒システムを用いることを特徴とするものである。既述のように、本実施形態の触媒システムは、触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制することで、長期的に優れた触媒活性を発現し得るものである。よって、本実施形態の処理方法は、長期的に優れた脱金属性能及び脱硫性能を発現するものとなる。
本実施形態の処理方法において採用される触媒システムは、上記説明したとおりである。以下、処理条件について説明する。
【0058】
(脱金属脱硫処理条件)
本実施形態の処理方法における諸条件は以下の通りである。以下の諸条件にて原料油を処理することにより、優れた触媒活性が得られる。
反応温度は、通常310℃以上450℃以下、好ましくは330℃以上420℃以下、より好ましくは350℃以上400℃以下である。
原料油の液空間速度(LHSV)は、より効率的にかつ確実に脱金属脱硫処理を行う観点から、好ましくは0.3(h-1)以上、より好ましくは0.5(h-1)以上、更に好ましくは0.8(h-1)以上であり、上限として好ましくは2.0(h-1)以下、より好ましくは1.8(h-1)以下、更に好ましくは1.6(h-1)以下である。
【0059】
水素を供給する場合、水素/原料油比は通常200Nm3/kL以上1000Nm3/kL以下であり、好ましくは250Nm3/kL以上800Nm3/kL以下、より好ましくは275Nm3/kL以上600Nm3/kL以下、更に好ましくは300Nm3/kL以上500Nm3/kL以下である。
【0060】
本実施形態の処理方法において用いられる原料油は、上記の本実施形態の触媒システムに用いられるものとして説明した原料油と同じものである。
また、触媒の交換については、上記触媒システムにおける触媒の交換についての説明の通りである。
【0061】
(脱金属脱硫処理方法の用途)
本実施形態の原料油の脱金属脱硫処理方法は、上記本実施形態の触媒システムと同じく、脱金属処理及び脱硫処理が必要な用途に制限なく採用することができ、例えば重油直接脱硫装置(RH装置)の触媒の劣化を抑制するために設けられる脱金属前処理等において好適に採用される。
【0062】
[原料油の脱金属脱硫処理装置]
本実施形態の原料油の脱金属脱硫処理装置は、上記の本実施形態の触媒システムを備えるものである。既述のように、本実施形態の触媒システムは、触媒の滞留及び触媒の固着の進行を抑制し、より長期的に優れた触媒活性を発現し得るものである。よって、本実施形態の処理装置は、長期的に優れた脱金属性能及び脱硫性能を発現するものとなる。
本実施形態の処理方法において採用される触媒システムは、上記説明したとおりである。
【0063】
本実施形態の処理装置の好ましい態様の一例の模式図を
図1に示す。
図1に示される処理装置は、上記本実施形態の触媒システムの触媒層A及び触媒層Bの配置における説明にて、説明した通りである。
【0064】
図1に示されるように、本実施形態の処理装置は、好ましくは反応器、触媒供給手段、触媒排出手段を有するものである。そして、反応器は、本実施形態の触媒システムを備えており、その下部に原料油を供給する原料油供給口、その上部に原料油が触媒層を通油して処理された処理油を排出する処理油排出口、その上部に触媒を供給し補充する触媒供給手段(触媒供給口)、その下部に触媒を排出する触媒排出手段(触媒排出口)を備えていることが好ましい。
【0065】
また、反応器の原料油供給口には、原料油をより均一に反応器内に供給するためにディストリビュータを有していてもよく、また触媒を充填するためのディストリビュータトレイ、排出しやすくするためのサポートコーン部を有していてもよい。
【0066】
(脱金属脱硫処理装置の用途)
本実施形態の原料油の脱金属脱硫処理装置は、上記本実施形態の触媒システムと同じく、脱金属処理及び脱硫処理が必要な用途に制限なく採用することができ、例えば重油直接脱硫装置(RH装置)の触媒の劣化を抑制するために設けられる脱金属前処理装置等として好適に採用される。
【実施例0067】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0068】
(触媒A及び触媒Bの性状)
実施例及び参考例で用いた触媒A及び触媒Bの性状は、下記の第1表に示される通りである。
【0069】
【0070】
(原料油の性状)
実施例及び参考例で用いた原料油の性状は、下記の第2表に示される通りである。
【0071】
【0072】
(実施例1)
図1に示される脱金属脱硫処理装置を用いた。反応器(直径:4.4m、高さ(TL長さ):11.8m)に、第1表に示される性状を有する触媒A及び触媒Bを、各々40m
3及び90m
3の容量で充填して、触媒層A及び触媒層Bを設けた。第2表に示される性状を有する原料油を、43500BDの流量(288m
3/h、LHSV:0.9h
-1)で375℃の温度で供給し、原料油には1170KNm
3/hの水素を供給しながら、320日の連続運転を行った。
また、触媒供給手段から触媒Bを運転開始から120日目までは2.5m
3/週の供給量で継続的に供給し、触媒排出手段から触媒Aを当該供給量で排出し、また運転開始から121日以降は5.0m
3/週の供給量で継続的に供給し、触媒排出手段から触媒Aを当該供給量で排出した。
【0073】
(実施例2~4)
実施例1において、触媒A及び触媒Bの充填量を第3表に示される容量とした以外は、実施例1と同様にして運転を行った。
【0074】
(参考例)
実施例1において、触媒Aを用いず、全量を触媒Bとした以外は、実施例1と同様にして運転を行った。
【0075】
[評価]
実施例1~4の処理油中の金属(バナジウム及びニッケル)の合計濃度と参考例の処理油中の金属(バナジウム及びニッケル)との320日の運転による積算脱金属濃度差、及び実施例1~4の処理油中の硫黄の濃度と参考例の処理油中の硫黄の濃度との積算脱金属濃度差について、第3表に示すとともに、その経時変化について
図2のグラフに示す。
【0076】
【0077】
実施例の結果(第3表及び
図2)から、本実施形態の触媒システムによれば、優れた脱金属性能及び脱硫性能の触媒活性を長期的に発現し得ることが確認された。また、特に
図2に示されるように、触媒活性は320日という長期間にわたり、継続的に発現することが確認された。
また、参考例については、320日の運転後、反応器内の触媒を確認したところ、触媒の固着が確認された。