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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127665
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】N-置換アミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 13/02 20060101AFI20220825BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20220825BHJP
   C12N 9/80 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
C12P13/02
C12N15/55 ZNA
C12N9/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025780
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】染矢 稔宗
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美知子
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 典史
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050DD02
4B050LL05
4B064AE02
4B064BJ06
4B064CA02
4B064CA19
4B064CA21
4B064CB05
4B064CD12
4B064DA16
(57)【要約】
【課題】
純度の高いN-置換アミド及びN-置換アミド化合物/アミド化合物共重合体を簡便に製造する方法を提供すること。
【解決手段】
アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒を用いて、アミンとアミド化合物からN-置換アミド化合物を製造する方法において、アミンとアミド化合物が接触するまえに、生体触媒をアミド化合物と接触させない。例えば、(1)アミンと生体触媒とを混合し、次いで、(2)前記アミンと生体触媒との混合物と、アミド化合物とを混合する。あるいは、(1)アミンとアミド化合物とを混合し、次いで、(2)前記アミンとアミド化合物との混合物と、生体触媒とを混合する。
【選択図】
なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒を用いて、アミンとアミド化合物からN-置換アミド化合物を製造する方法であって、
カルボン酸化合物の含有量が、得られるN-置換アミド化合物に対してモル比で1.5以下となる、前記方法。
【請求項2】
アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒を用いて、アミンとアミド化合物からN-置換アミド化合物を製造する方法であって、
アミンとアミド化合物が接触するまえに、生体触媒をアミド化合物と接触させない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(1)アミンと生体触媒とを混合する工程、次いで、(2)前記アミンと生体触媒との混合物と、アミド化合物とを混合し、アミンとアミド化合物とを反応させる工程
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(1)アミンとアミド化合物とを混合する工程、次いで、(2)前記アミンとアミド化合物との混合物と、生体触媒とを混合し、アミンとアミド化合物とを反応させる工程
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
反応開始時のアミド化合物の量に対するアミンの量がモル比で1以上である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒が、アミダーゼ、アミダーゼ活性を有する微生物、及びこれらの処理物から選ばれる少なくとも一種である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アミド化合物が、アクリルアミド又はメタクリルアミドである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
アミンが、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、イソプロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、tert-ブチルアミン、ジメチルアミン及び4-アミノ-4-メチル-2-ペンタノンから選ばれる少なくとも一種である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
N-置換アミド化合物が、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N-[2-ヒドロキシエチル]アクリルアミド、tert-ブチルアクリルアミド、NN-ジメチルアクリルアミド及びダイアセトンアクリルアミドから選ばれる少なくとも一種である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の方法により得られたN-置換アミド化合物とアミド化合物とを反応させる工程を含む、アミド化合物/N―置換アミド化合物重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の方法により得られたN-置換アミド化合物と、得られたN-置換アミド化合物に対してモル比で1.5以下のアミド化合物由来のカルボン酸化合物とを含む、N-置換アミド化合物含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体触媒を用いてアミンとアミド化合物からN-置換アミド化合物を製造する方法に関する。また、本発明は、得られたN-置換アミド化合物とアミド化合物とを反応させてアミド化合物/N-置換アミド化合物共重合体を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルアミド/N-置換アクリルアミドの共重合体は、塗料、粘着剤、接着剤、コーティング剤、紙力増強剤などの製紙用薬剤、産業排水や生活排水の処理に用いる高分子凝集剤、高分子改質剤、分散剤、増粘剤、コンタクトレンズや生体用ゲルなどの原料、UV硬化樹脂用反応性希釈剤など、極めて多様な分野で用いられている機能性ポリマーである。
【0003】
従来のアクリルアミド/N-置換アクリルアミドの共重合体の製造方法では、N-置換アクリルアミドの合成のために高温条件の工程を含む多段階の工程を必要とし、N-置換アクリルアミドを製造するだけでコストがかかる。その結果、得られるアクリルアミド/N-置換アクリルアミドの共重合体も当然高価なものになる(特許文献1及び2)。
【0004】
例えば、特許文献1には、触媒としてアミンのアクリル酸塩を用いて100~250℃で(メタ)アクリルアミドとアミンとのアミド交換反応とマイケル付加反応を行い、さらに160~350℃で液相熱分解によりアミンを除去し、N-置換(メタ)アクリルアミドを取得する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記の方法では高温の反応が必要なため、大掛かりな設備が必要となる。また、化学プロセスによる製造で得られるN-置換アクリルアミド化合物には不純物が多く、純度の高いN-置換アクリルアミドを得ることは非常に困難である。
【0006】
一方、アシル化活性を有するロドコッカス属微生物を用いて生物学的にN-置換アクリルアミドを合成する方法も報告されている(特許文献2)。しかし、この方法では、副生するアクリル酸を大量に含んでしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58-18346号公報
【特許文献2】ロシア登録特許2539033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる課題は、純度の高いN-置換アミド及びN-置換アミド化合物/アミド化合物共重合体を簡便に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、アミダーゼ活性を有する生体触媒を用いてアミンとアミド化合物からN-置換アミド化合物を製造する方法を提供する。また、得られたN-置換アミド化合物とアミド化合物から、N-置換アミド化合物/アミド化合物共重合体を製造する方法を提供する。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕-〔11〕を提供する。
〔1〕アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒を用いて、アミンとアミド化合物からN-置換アミド化合物を製造する方法であって、
カルボン酸化合物の含有量が、得られるN-置換アミド化合物に対してモル比で1.5以下となる、前記方法。
〔2〕アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒を用いて、アミンとアミド化合物からN-置換アミド化合物を製造する方法であって、
アミンとアミド化合物が接触する前に、生体触媒をアミド化合物と接触させない、前記方法。
〔3〕(1)アミンと生体触媒とを混合する工程、次いで、(2)前記アミンと生体触媒との混合物と、アミド化合物とを混合し、アミンとアミド化合物とを反応させる工程
を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕(1)アミンとアミド化合物とを混合する工程、次いで、(2)前記アミンとアミド化合物との混合物と、生体触媒とを混合し、アミンとアミド化合物とを反応させる工程
を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔5〕反応開始時のアミド化合物の量に対するアミンの量がモル比で1以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒が、アミダーゼ、アミダーゼ活性を有する微生物、及びこれらの処理物から選ばれる少なくとも一種である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕アミド化合物が、アクリルアミド又はメタクリルアミドである、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕アミンが、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、イソプロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、tert-ブチルアミン、ジメチルアミン及び4-アミノ-4-メチル-2-ペンタノンから選ばれる少なくとも一種である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕N-置換アミド化合物が、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N-[2-ヒドロキシエチル]アクリルアミド、tert-ブチルアクリルアミド、NN-ジメチルアクリルアミド及びダイアセトンアクリルアミドから選ばれる少なくとも一種である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の方法により得られたN-置換アミド化合物とアミド化合物とを反応させる工程を含む、アミド化合物/N―置換アミド化合物重合体の製造方法。
〔11〕〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の方法により得られたN-置換アミド化合物と、得られたN-置換アミド化合物に対してモル比で1.5以下のアミド化合物由来のカルボン酸化合物とを含む、N-置換アミド化合物含有組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、不純物の含有量が少ない、すなわち、純度が高いN-置換アミド化合物を簡便に得ることができ、これにより、純度が高いN-置換アミド化合物/アミド化合物共重合体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
本発明に係るN-置換アミド化合物の製造方法は、アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒を用いて、アミンとアミド化合物からN-置換アミド化合物を製造する方法であって、アミンとアミド化合物が接触するまえに、生体触媒をアミド化合物と接触させないことを特徴とする。
【0014】
第1の実施形態において、本発明の方法は、(1)アミンと生体触媒とを混合し、次いで、(2)前記アミンと生体触媒との混合物と、アミド化合物とを混合して、アミンとアミダーゼ化合物を反応させ、N-置換アミド化合物を製造する。
【0015】
第2の実施形態において、本発明の方法は、(1)アミンとアミド化合物とを混合し、次いで、(2)前記アミンとアミド化合物との混合物と、生体触媒とを混合して、アミンとアミダーゼ化合物を反応させ、N-置換アミド化合物の製造をしてもよい。
【0016】
このような方法でN-置換アミド化合物を製造することにより、生体触媒の作用によりアミド化合物から生成するアクリル酸等のアミド化合物由来のカルボン酸化合物を抑制することができる。
【0017】
(1)アミン
アミンは、アミド化合物とアミド交換反応が可能な化合物であれば特には限定されない。好ましくは、本発明で用いられるアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、イソプロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、tert-ブチルアミン、ジメチルアミン及び4-アミノ-4-メチル-2-ペンタノンであり、より好ましくはN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミンである。
【0018】
(2)アミド化合物
アミド化合物は、特に限定されないが、アクリルアミド又はメタクリルアミドが好ましい。
【0019】
(3)生体触媒
本発明で使用する生体触媒は、アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒である。アミド交換反応を触媒する酵素は、アミド交換反応を触媒できれば、種類や由来生物種は限定されない。
【0020】
アミド交換反応を触媒する酵素としては、好ましくはアミダーゼである。ただし、上述のとおり、アミダーゼ以外に分類される酵素であっても、アミノ酸配列の改変等によりアミダーゼ活性(アミド交換反応の触媒能)を有する酵素であれば、本発明の生体触媒に包含される。
【0021】
アミダーゼは、野生型を使用することもできるし、アミノ酸配列の改変によりアミド交換反応の触媒能を付与した変異型を使用することもできる。
【0022】
アミダーゼは、市販のものを入手して用いることができる。また、アミダーゼは、公衆に利用可能なデータベースからアミノ酸配列あるいは核酸配列を入手して組換酵素として合成したものを用いてもよい。
【0023】
アミダーゼとしては、酵素活性の観点から、ロドコッカス属、ゴルドニア属、アースロバクター属、又はシュードノカルディア属に属する細菌に由来するものが好ましく、ロドコッカス属に属する細菌に由来するものがより好ましい。
【0024】
例えば、配列番号1~10に示されるアミノ酸配列を有するアミダーゼが好適に用いられる。なかでも、ロドコッカス・エリスロポリスTA37株由来のアミダーゼ(アミノ酸配列を配列番号1に、核酸配列を配列番号11に示す)が好適に用いられる。
【0025】
本発明で使用されるアミダーゼは、アミンとのアミド交換反応を触媒するアミダーゼ活性を有する限り、配列番号1~10のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。
【0026】
ここで、「数個」とは、例えば1~40個、1~20個、好ましくは1~20個、1~10個、より好ましくは1~5個、1~4個、特に好ましくは3個、2個以下をいう。アミノ酸配列に欠失等を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTMSite-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)、TaKaRaSite-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社)等を用いることができる。あるいは、欠失等を含む配列を有する遺伝子全体を人工合成してもよい。
【0027】
また、本発明で使用されるアミダーゼは、アミンとのアミド交換反応を触媒するアミダーゼ活性を有する限り、配列番号1~10のアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは99%、さらに好ましくは99.5%以上、特に好ましくは99.9%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドを用いることもできる。
【0028】
ここで、「配列同一性」とは、比較すべき2つのアミノ酸配列の残基ができるだけ多く一致するように両配列を整列させ、一致した残基数を、全残基数で除したものを百分率で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化は、例えばBLAST、FASTA、CLUSTALW等の周知のプログラムを用いて行なうことができる。ギャップが挿入される場合、上記全残基数は、1つのギャップを1つの残基として数えた残基数となる。このようにして数えた全残基数が比較する2つの配列間で異なる場合には、長い方の配列の全残基数で一致した残基数を除して同一性(%)を算出する。
【0029】
さらに、アミダーゼには、例えば配列番号11~20の塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質を用いることもできる。ここで、同タンパク質は、アミンとのアミド交換反応を触媒するアミダーゼ活性を維持しているものである。
【0030】
ストリンジェントな条件としては、例えば、DNAを固定したナイロン膜を、6×SSC(1×SSCは塩化ナトリウム8.76g、クエン酸ナトリウム4.41gを1リットルの水に溶かしたもの)、1%SDS、100μg/mlサケ精子DNA、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコールを含む溶液中で65℃にて20時間プローブとともに保温してハイブリダイゼーションを行う条件を挙げることができるが、これに限定されるわけではない。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、ハイブリダイゼーションの条件を設定することができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄条件として、例えば、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば、「1×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、50℃」等の条件を挙げることができる。
【0031】
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、MolecularCloning, A Laboratory Manual 2nded.(Cold Spring Harbor LaboratoryPress (1989)))、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons(1987-1997))等を参照することができる。
【0032】
アミダーゼ等の酵素の合成(組換え生産)は、当該分野で周知の手法を用いて行うことができる。
【0033】
酵素は、精製(purified)酵素あるいは粗精製(crude)酵素として用いられる。酵素は、特に制限されないが、例えば以下の方法により精製され得る。菌体を破砕し緩衝液に懸濁して得られる粗酵素液に、(1)沈澱による分画、(2)各種クロマトグラフィー、(3)透析、限外濾過等による低分子物質の除去方法などを単独で又は適宜組み合わせて適用する。
【0034】
アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する生体触媒は酵素タンパク質そのものでもよいが、当該酵素を含んだ動物細胞、植物細胞、細胞小器官、又は微生物の菌体、及びそれらの処理物でもよい。
【0035】
前記処理物としては、動物細胞、植物細胞、細胞小器官又は、微生物の菌体を破砕した破砕物、又は菌体から抽出された酵素(素酵素又は精製酵素);動物細胞、植物細胞、細胞小器官、微生物の菌体又は酵素自体を担体に固定化したもの;等が挙げられる。
【0036】
また、前記処理物には、薬剤処理により増殖能を失わせた、動物細胞、植物細胞、細胞小器官又は、微生物の菌体も含まれる。
【0037】
微生物の菌体は、酵素を発現する微生物(組換菌含む)を菌体そのまま、あるいは、菌体を凍結、乾燥又は粉砕等して用いてもよい。具体的には、微生物を培養して得られる培養液をそのまま用いるか、又は、該培養液から遠心分離等の集菌操作によって得られる菌体又はその処理物等を用いることができる。菌体処理物としては、アセトン及びトルエン等で処理した菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物及び細胞抽出物等が挙げられる。
【0038】
本発明においては、死滅化させた菌体、即ち、増殖能を抑制又はなくした菌体も、アミド交換反応を触媒する酵素活性を有する限り、菌体処理物として使用することができる。
【0039】
固定化の方法としては、酵素を、セルロース、デキストリン、樹脂ビーズ、活性炭、シリカゲル、磁性粒子及び高分子膜等の各種の不溶性担体に結合させ固定化する担体結合法;タンパク質中の官能基とそれに反応する化合物との化学結合を利用する架橋法;高分子ゲルの中に酵素を取り込ませることにより、酵素を直接化学修飾することなくゲルの中に固定化する包括法等を挙げることができる。
【0040】
微生物は、組換菌であってもよい。組換菌の作成は、アミダーゼ等の酵素をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターにより宿主微生物を形質転換することにより行う。宿主微生物としては、細菌では大腸菌、ロドコッカス属、シュードモナス属、コリネバクテリウム属、バチルス属、ストレプトコッカス属、ストレプトマイセス属などが挙げられ、酵母ではサッカロマイセス属、カンジダ属、シゾサッカロマイセス属、ピキア属、糸状菌ではアスペルギルス属などが挙げられる。
【0041】
(4)N-置換アミド化合物の製造方法
本発明にかかるN-置換アミド化合物の製造方法は、アミンとアミド化合物が接触するまえに、生体触媒をアミド化合物と接触させないことを特徴とする。限定されるものではないが、具体的な実施形態としては、以下の2つの実施形態を挙げられる。
【0042】
第1の実施形態
<工程(1)>
工程(1)では、アミンと生体触媒とを混合させるが、アミンに生体触媒を添加しても、生体触媒にアミンを添加してもよい。アミンと生体触媒とを混合させる方法は、特には限定されず、必要に応じて撹拌下に混合させてもよく、混合させてから撹拌してもよい。
【0043】
<工程(2)>
工程(2)では、アミンと生体触媒との混合物と、アミド化合物とを混合する。この時、アミンと生体触媒との混合物にアミド化合物を添加してもよく、アミド化合物にアミンと生体触媒との混合物を混合してもよい。
【0044】
アミンと生体触媒との混合物とアミド化合物とを混合させる方法は、特には限定されず、必要に応じて撹拌下に混合させてもよく、混合させてから撹拌してもよい。
【0045】
工程(2)によって、生体触媒の作用によりアミンとアミド化合物とが反応し、N-置換アミド化合物を得ることができる。
【0046】
第2の実施形態
<工程(1)>
工程(1)では、アミンとアミド化合物とを混合させるが、アミンにアミド化合物を添加しても、アミド化合物にアミンを添加してもよい。アミンとアミド化合物とを混合させる方法は、特には限定されず、必要に応じて撹拌下に混合させてもよく、混合させてから撹拌してもよい。
【0047】
<工程(2)>
工程(2)では、アミンとアミド化合物との混合物と、生体触媒とを混合する。この時、アミンとアミド化合物との混合物に生体触媒を添加してもよく、生体触媒にアミンとアミド化合物との混合物を混合してもよい。
【0048】
工程(2)によって、生体触媒の作用によりアミンとアミド化合物とが反応し、N-置換アミド化合物を得ることができる。
【0049】
<反応条件>
生体触媒の作用によりアミンとアミド化合物と反応させる際の反応液の溶媒は、水溶媒であることが好ましく、必要に応じて水溶媒に緩衝剤を添加して使用することができる。
【0050】
当該反応液のpHは好ましくは7以上、より好ましくは7.5~12、更に好ましくは8~11とすることができる。緩衝剤は、上記pHを維持可能であれば特に限定されず、例えば炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを使用できる。
【0051】
pHを7以上にすることにより、目的物であるN-置換アミド化合物の蓄積量を上昇させることができる。一方で、pHを13以下にすることにより、生体触媒の変性や失活を抑制することができる。
【0052】
生体触媒の作用によりアミンとアミド化合物とが反応し、N-置換アミド化合物を製造する際の反応温度は、好ましくは4~90℃、熱による酵素の失活を抑制するためにより好ましくは5~40℃、さらに好ましくは10~30℃とされる。
【0053】
反応時間は、目的とする濃度のN-置換アミド化合物が生成するのに十分な時間とされ、特に限定されないが、例えば4~96時間である。
【0054】
<使用する基質の量>
本発明では、生体触媒によりアミド化合物とアミンとを反応させる際に、反応液中のアミンの量をアミド化合物の量に対して、モル比で1~20、すなわち、〔反応開始時の反応液中のアミン量(mol)〕/〔反応開始時の反応液中のアミド化合物の量(mol)〕=1~20とすることが好ましく、より好ましくは1~15、更に好ましくは1~10とすればよい。
【0055】
用いるアミンの量をアミド化合物の量に対してモル比で1以上とすることにより、アミダーゼ活性によってアミド化合物が変換されたアミド化合物由来のカルボン酸化合物の量を十分に抑制することができる。用いるアミンの量をアミド化合物の量に対してモル比で20以下とするのは、当該カルボン酸化合物の抑制効果がそれ以上得られにくくなるからである。
【0056】
<使用する触媒の量>
生体触媒によりアミド化合物とアミンとを反応させる際に、反応液中に添加する触媒の量は、当該反応に用いる基質の量(濃度)や反応条件に応じて適宜選択することができる。
【0057】
(5)N-置換アミド化合物
生成するN-置換アミド化合物は、用いるアミド化合物とアミンの選択による。生成するN-置換アミド化合物は、具体的には、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N-[2-ヒドロキシエチル]アクリルアミド、tert-ブチルアクリルアミド、NN-ジメチルアクリルアミド及びジアセトンアクリルアミドから選択されるいずれか一以上である。
【0058】
好ましくは、N-置換アミド化合物は、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドである。この場合、アミド化合物はアクリルアミドであり、アミンはN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミンである。
【0059】
本発明の方法で得られるN-置換アミド化合物は、アミド化合物由来のカルボン酸化合物の含有量が少なく、純度の高いN-置換アミド化合物である。従来の方法で得られるN-置換アミド化合物とは異なり、本発明の方法で得られるN-置換アミド化合物は、そのまま後述する重合反応に供することができる。
【0060】
本発明の方法で得られるN-置換アミド化合物は、アミダーゼ活性によってアミド化合物が変換されたアミド化合物由来のカルボン酸体の量が、得られるN-置換アミド化合物に対してモル比で1.5以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0061】
前記アミド化合物由来のカルボン酸化合物は、アミド化合物としてアクリルアミドを使用する場合はアクリル酸、メタクリルアミドを使用する場合はメタクリル酸である。
【0062】
本発明は、上記のような純度の高いN-置換アミド化合物、すなわち、本発明の方法により得られたN-置換アミド化合物と、得られたN-置換アミド化合物に対してモル比で1.5以下のアミド化合物由来のカルボン酸化合物とを含む、N-置換アミド化合物含有組成物も提供する。
【0063】
(6)アミド化合物/N―置換アミド化合物重合体の製造方法
上記のようにして得られたN-置換アミド化合物は、そのまま(分離・精製せずに)次の反応、例えばアミド化合物や他のモノマーとの重合反応に使用することもできるし、精製してからアミド化合物や他のモノマーとの重合反応に使用することもできる。
【0064】
本発明で得られた重合体においても、アミド交換反応を触媒する酵素活性によってアミド化合物が変換されたアミド化合物由来のカルボン酸化合物の量が抑制された純度が高い重合体を得ることができる。
【0065】
重合方法は、水溶媒中で重合する方法であれば特に制限されることはなく、水溶液重合法、断熱重合法及び連続重合法等を採用できる。さらには、非水溶媒を用いた懸濁重合法や乳化重合法も採用できる。
【0066】
重合は、上記の反応液に重合開始剤を添加し、熱、光又はレドックス反応等によりフリーラジカルを発生させることにより開始される。当該反応液に重合開始剤の溶液を添加することが一般的であるが、重合開始剤の溶液に上記反応液を滴下してもよい。懸濁重合や乳化重合の場合は、当該反応液を非水溶媒に懸濁もしくは乳化して作成した懸濁液に、重合開始剤の溶液を添加してもよく、非水溶媒もしくは非水溶媒と水の懸濁もしくは乳化液に、重合開始剤溶液及び当該反応液を添加して行ってもよい。
【0067】
重合のための反応液の溶媒は、いずれの溶媒を使用しても良いが、水溶媒であることが好ましい。水溶媒中の場合、当該反応液の好ましいpHは2~10である。
【0068】
重合開始剤には、従来汎用のものが使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾインエチルエール等の光分解型の重合開始剤;及び上記過酸化物とレドックス反応により開始剤を形成する亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ハイドロスルファイトナトリウム、トリエタノールアミン、硫酸第1鉄等の還元剤;を使用できる。これらの重合開始剤は1種類を単独であるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0069】
重合開始剤の濃度は、種類と温度によって異なるが、10~50000ppmであることが好ましく、20~40000ppmであることがより好ましい。
【0070】
重合反応の温度は、その触媒の分解温度より正確には10時間半減期によって異なるが、0℃~90℃であることが好ましい。
【0071】
重合反応の時間は、例えば30分~10時間とすることができる。
【0072】
得られたN-置換アミド化合物/アミド化合物共重合体は、目的等に応じて精製して使用することもできるし、そのまま使用することもできる。
【実施例0073】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
<実施例で使用する略語一覧>
「DAN」:N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(東京化成工業社製、純度99%)
「AAM」:アクリルアミド(三菱ケミカル社製)
「AAC」:アクリル酸
「DMAPAA」:N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド

「%」は質量%を示す。
【0075】
[I アミダーゼを発現する組換菌の作製]
1.アミダーゼ遺伝子
アミダーゼとしては、ロドコッカス・エリスロポリスTA37株アミダーゼ(GenBank:JX894244、特開昭58-18346号参照)を用いた。
【0076】
また、ロドコッカス・エリスロポリスTA37株アミダーゼのアミノ酸配列と高い配列同一性を示すアミダーゼを、パブリックデータベース(NCBI)をBlast検索することにより取得して使用した。
【0077】
使用したアミダーゼの由来株、GenBankアクセションナンバー、ロドコッカス・エリスロポリスTA37株アミダーゼに対するアミノ酸配列同一性、アミノ酸配列及び核酸配列の配列番号を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
各アミダーゼの遺伝子配列DNAを合成し、それぞれプラスミドpET-26b(Stratagene社)に挿入した。
【0080】
2.アミダーゼ遺伝子を組み込んだ発現ベクターの作製
上記1のプラスミドを鋳型としたPCRにより得られた増幅産物を制限酵素で切断し、それぞれ発現ベクターpSJ034のマルチクローニングサイトに挿入した。各アミダーゼの発現ベクターを表2のとおり命名した。なお、発現ベクターpSJ034は、形質転換体pSJ023から既報に従って作製した(特開平10-337185号)。形質転換体pSJ023(R.rhodochrous ATCC12674/pSJ023)は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に1997年3月4日付で国際寄託されている(受託番号FERM BP―6232)。
【0081】
【表2】
【0082】
3.アミダーゼを発現する組換菌の作製
上記2の発現ベクターで宿主微生物を形質転換することで、アミダーゼを発現する組換菌を作製した。
【0083】
宿主微生物には、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株のニトリルヒドラターゼ欠損株であるDN1株(特開2011-200132号参照)を用いた。
【0084】
発現ベクターの溶液1μlとDN1株コンピテントセル溶液10μlの混合液を30分間氷冷した。混合液をキュベットに入れ、遺伝子導入装置(Gene Pulser、BIO RAD)により20kV/cm、200Ohmsで電気パルス処理を行った。その後、混合液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショックを行った。混合液をMYK培地(0.5% ポリペプトン、0.3% バクトイーストエキス、0.3% バクトモルトエキス、0.2% K2HPO4、0.2% KH2PO4)500μlを加えて30℃、24時間静置した後、10μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃で3日間培養した。プラスミドの導入が確認されたコロニーを、アミダーゼを発現する組換菌として分離した。
【0085】
4.アミダーゼ活性の確認
上記3の組換菌のアミダーゼ活性を以下の方法で測定した。反応液(100mM AAM、50mM DAN、50mM 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH9))に、組換体を含む培養液を添加し、37℃で一晩反応させた。0.45μmフィルターを用いて菌体を濾別した反応液を50mM 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH10)で希釈してガスクロマトグラフィー分析に供し、AAMとDANとのアミド交換反応によって生成したDMAPAAの濃度を測定した。
【0086】
分析条件
・分析機器:ガスクロマトグラフGC-2014S(島津製作所製)
・検出器:FID(250℃にて検出)
・カラム:Rtx-5Amine(30mm×0.25mmI.D.×1.0μm d.f. Restek社)
・カラム温度:以下の工程により昇温した。
(1)50℃で2分間保持 (2)20℃/分で160℃まで昇温 (3)30℃/分で240℃まで昇温 (4)240℃で5分間保持
【0087】
表3に、組換菌のアミダーゼ活性を、生成したDMAPAA量(発現ベクターpsJTA37による組換菌における生成量を1とした相対値)により示す。全ての組換菌でDMAPAAの生成が確認された。
【0088】
【表3】
【0089】
[II 基質の添加順序による影響]
実施例1:
容量30mLのガラス製バイアルに2M DAN・塩酸水溶液(pH9)を反応開始時の仕込濃度が1.3Mとなるよう、6.5g添加した。次いで、そこに生体触媒を含む培養液(1l中に120gの乾燥菌体を含む懸濁液)を反応開始時の菌体濃度が22g/lとなるよう1.9g添加した。菌体としては、発現ベクターpsJTA37による組換菌を使用した。
【0090】
次いで、DAN、生体触媒混合溶液を10分間15℃でマグネティックスターラーを用いて撹拌した。
【0091】
その後、これにAAM50%水溶液を反応開始時の仕込濃度が1.3Mとなるよう1.8gを添加し、15℃で4時間反応させ、DMAPAAを製造した。反応開始から4時間後に反応液から300μlを採取し0.45μmフィルターを用いて菌体を濾別し反応を停止した。
【0092】
菌体を濾別した反応液より50μlを分取し、1mlの50mM 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH10)で希釈してガスクロマトグラフィー分析に供し、DMAPAA及びAACの濃度を測定した。
【0093】
その結果、0.25MのDMAPAAが得られた。この時、副生したAACの量は0.17Mであった。また、AAC生成量/DMAPAA生成量の値は0.66であった。結果を表4に示す。
【0094】
実施例2:
添加の順序を、AAM、次いでDAN、最後に触媒とした以外は実施例1と同様にして実験を行った。その結果、0.24MのDMAPAAが得られた。この時副生したAACの量は0.12Mであった。この時、AAC生成量/DMAPAA生成量の値は0.52であった。結果を併せて表4に示す。
【0095】
比較例1:
添加の順序を、AAM、触媒、DANとした以外は、実施例1と同様にして実験を行った。その結果、0.23MのDMAPAAが得られた。この時副生したAACの量は0.64Mであった。この時、AAC生成量/DMAPAA生成量の値は2.8であった。結果を併せて表4に示す。
【0096】
【表4】
【0097】
[III 基質濃度比による影響]
実施例3
容量50mlのプラスチック製遠沈管に2M DAN・塩酸水溶液(pH9)を反応開始時の仕込濃度が0.75Mとなるよう、7.5gを添加した。次いで純水を3.6g添加した。
【0098】
次に、そこに生体触媒を含む培養液(1l中に120gの乾燥菌体を含む懸濁液)を反応開始時の菌体濃度が41g/lとなるよう6.8g添加した。
次いで、DAN、組換体混合溶液をバイオシェーカーを用いて10分間、15℃、230rpmで振盪した。
【0099】
その後、これにAAM50%水溶液を反応開始時の仕込濃度が0.75Mとなるよう2.1gを添加し、15℃で96時間反応させ、DMAPAAを製造した。反応開始から96時間後に反応液から300μlを採取し、0.45μmフィルターを用いて菌体を濾別し反応を停止した。
【0100】
菌体を濾別した反応液より50μLを分取し、1mlの50mM 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH10)で希釈してガスクロマトグラフィー分析に供し、
DMAPAA及びAACの濃度を測定した。
【0101】
その結果、0.48MのDMAPAAが得られた。この時、副生したAACの量は0.10Mであった。この時、AAC生成量/DMAPAA生成量の値は0.21であった。結果を表5に示す。
【0102】
実施例4
容量50mlのプラスチック製遠沈管に2M DAN・塩酸水溶液(pH9)を反応開始時の仕込濃度が0.75Mとなるよう、7.5gを添加した。次いで純水を4.4g添加した。
【0103】
次に、そこに組換体を含む培養液(1l中に120gの乾燥菌体を含む懸濁液)を反応開始時の菌体濃度が41g/lとなるよう6.8g添加した。次いで、DAN、組換体混合溶液をバイオシェーカーを用いて10分間、15℃、230rpmで振盪した。
【0104】
その後、これにAAM50%水溶液を反応開始時の仕込濃度が0.45Mとなるよう1.3gを添加し、15℃で96時間反応させ、DMAPAAを製造した。
【0105】
反応開始から96時間後に反応液から300μlを採取し0.45μmフィルターを用いて菌体を濾別し反応を停止した。菌体を濾別した反応液より50μlを分取し、1mlの50mM 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH10)で希釈してガスクロマトグラフィー分析に供し、DMAPAA及びAACの濃度を測定した。
【0106】
その結果、0.17MのDMAPAAが得られた。この時、副生したAACの量は0.018Mであった。 この時、AAC生成量/DMAPAA生成量の値は0.11であった。結果を表5に示す。
【0107】
実施例5
50mLのプラスチック製遠沈管に2M DAN・塩酸水溶液(pH9)を反応開始時の仕込濃度が1.2Mとなるよう、12gを添加した。次いで、そこに組換体を含む培養液(1l中に120gの乾燥菌体を含む懸濁液)を反応開始時の菌体濃度が41g/lとなるよう6.8g添加した。
【0108】
次に、DAN、組換体混合溶液をバイオシェーカーを用いて10分間、15℃、230rpmで振盪した。
【0109】
その後、これにAAM50%水溶液を反応開始時の仕込濃度が0.75Mとなるよう2.1gを添加し、15℃で96時間反応させ、DMAPAAを製造した。
反応開始から96時間後に反応液から300μlを採取し0.45μmフィルターを用いて菌体を濾別し反応を停止した。菌体を濾別した反応液より50μlを分取し、1mlの50mM 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH10)で希釈してガスクロマトグラフィー分析に供し、DMAPAA及びAACの濃度を測定した。
【0110】
その結果、0.20MのDMAPAAが得られた。この時、副生したAACの量は0.012Mであった。この時、AAC生成量/DMAPAA生成量の値は0.06であった。結果を表5に示す。
【0111】
比較例2
50mLのプラスチック製遠沈管に2M DAN・塩酸水溶液(pH9)を反応開始時の仕込濃度が0.75Mとなるよう、7.5gを添加した。次いで純水を1.5g添加した。
【0112】
次に、そこに組換体を含む培養液(1L中に120gの乾燥菌体を含む懸濁液)を反応開始時の菌体濃度が41g/lとなるよう6.8g添加した。次いで、DAN、組換体混合溶液をバイオシェーカーを用いて10分間、15℃、230rpmで振盪した。
【0113】
その後、これにAAM50%水溶液を反応開始時の仕込濃度が1.5Mとなるよう4.2gを添加し、15℃で96時間反応させ、DMAPAAを製造した。
【0114】
反応開始から96時間後に反応液から300μlを採取し0.45μmフィルターを用いて菌体を濾別し反応を停止した。菌体を濾別した反応液より50μlを分取し、1mlの50mM 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH10)で希釈してガスクロマトグラフィー分析に供し、DMAPAA及びAACの濃度を測定した。
【0115】
その結果、0.42MのDMAPAAが得られた。この時、副生したAACの量は0.68Mであった。この時、AAC生成量/DMAPAA生成量の値は1.6であった。結果を表5に示す。
【0116】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、N-置換アクリルアミドや、アクリルアミド/N-置換アクリルアミド共重合体の工業生産に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0118】
配列番号1:Rhodococcus erythropolis strain TA37のアミダーゼのアミノ 酸配列
配列番号2:Rhodococcus erythropolis SK121のアミダーゼのアミノ酸配列
配列番号3:Rhodococcus erythropolis PR4のアミダーゼのアミノ酸配列
配列番号4:Rhodococcus qingshengii CW25のアミダーゼのアミノ酸配列
配列番号5:Gordonia alkanivorans NBRC 16433のアミダーゼのアミノ酸配列
配列番号6:Arthrobacter sp. MWB30のアミダーゼのアミノ酸配列
配列番号7:Pseudonocardia sp. AL041005-10のアミダーゼのアミノ酸配列
配列番号8:Pseudonocardia spinosispora DSM 44797のアミダーゼのアミノ酸配列
配列番号9:Rhodococcus rhodochrous KG-21のアミダーゼのアミノ酸配列
配列番号10:Arthrobacter sp. Leaf145のアミダーゼのアミノ酸配列
配列番号11:erythropolis strain TA37のアミダーゼの核酸配列
配列番号12:Rhodococcus erythropolis SK121のアミダーゼの核酸配列
配列番号13:Rhodococcus erythropolis PR4のアミダーゼの核酸配列
配列番号14:Rhodococcus qingshengii CW25のアミダーゼの核酸配
配列番号15:Gordonia alkanivorans NBRC 16433のアミダーゼの核酸配列
配列番号16:Arthrobacter sp. MWB30のアミダーゼの核酸配列
配列番号17:Pseudonocardia sp. AL041005-10のアミダーゼの核酸配列
配列番号18:Pseudonocardia spinosispora DSM 44797のアミダーゼの核酸配列
配列番号19:Rhodococcus rhodochrous KG-21のアミダーゼの核酸配列
配列番号20:Arthrobacter sp. Leaf145のアミダーゼの核酸配列
【配列表】
2022127665000001.app