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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127812
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】膜厚制御機構を備えた凹版印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20220825BHJP
   B41F 31/02 20060101ALI20220825BHJP
   B41F 9/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B41F33/00 234
B41F31/02
B41F9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026004
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】西條 真彩
【テーマコード(参考)】
2C034
2C250
【Fターム(参考)】
2C034AA22
2C034AA30
2C034CA00
2C250DA07
2C250DB04
2C250DC01
2C250DC02
2C250DC05
2C250DC09
2C250EA23
2C250EB18
(57)【要約】
【課題】
磁気特性や光学特性等の機械読取適性を備えた多面印刷物を印刷する凹版印刷機において、凹版インキの膜厚を機能性データから検出し、一定の膜厚に制御することができる凹版印刷機を提供する。
【解決手段】
多面印刷物に含まれる凹版印刷画線の磁気量を検出する磁気測定用パイルを備え、磁気測定用パイルで得られた凹版印刷画線の磁気量から凹版画線の膜厚を算出し、あらかじめ入力された適正膜厚と比較して適正膜厚との差を算出し、複数のインキ壺キーを個別に前進又は後退させて凹版画線の膜厚を制御する膜厚制御機構を備えた凹版印刷機である。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面印刷物上に形成された凹版印刷画線の磁気量から凹版インキの膜厚を制御する膜厚制御機構を備えた凹版印刷機であって、
前記膜厚制御機構は、前記凹版印刷画線の磁気量を検出する磁気センサと前記磁気センサによって検出された磁気量から前記凹版印刷画線の膜厚を算出する変換装置を備えた検出部と、
あらかじめ基準となる適正膜厚を記憶する記憶装置と前記変換装置で算出した前記凹版印刷画線の膜厚と前記記憶装置に記憶された前記適正膜厚を比較する比較装置により前記適正膜厚との差を算出する解析部と、
前記解析部で算出された前記適正膜厚との差に基づき、前記凹版インキの供給量を部分的に調整可能な複数のインキ壺キーの各々に対し、個別に前進又は後退する距離を判断する制御判断装置を備えた制御部と、
前記制御部からの指示に基づき、複数の前記インキ壺キーを作動させるモータ駆動装置を備えた駆動部を少なくとも有することを特徴とする膜厚制御機構を備えた凹版印刷機。
【請求項2】
前記検出部は、前記凹版印刷機において搬送された印刷直後の前記多面印刷物を載置する測定台と、
前記測定台に載置された前記多面印刷物の有無を検出する用紙有無検出センサと、
前記測定台に載置された前記多面印刷物の位置を検出する用紙位置検出センサと、
前記用紙位置検出センサによって前記測定台に載置された前記多面印刷物の位置が正規位置でない場合に前記多面印刷物をエアーによって浮上させるエアー噴射部と、
前記多面印刷物を基準位置へ誘導する誘導部を少なくとも備えたことを特徴とする請求項1記載の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機。
【請求項3】
前記制御部は、繰返し算出された前記適正膜厚との差に基づき、前記インキ壺キーの作動情報を補正する機械学習機能を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機。
【請求項4】
前記検出部は、前記凹版インキを版面に供給するダクトローラ及び/又は着肉ローラの上部に、前記凹版インキの磁気量及び/又は光学特性を検出し、前記ダクトローラ及び/又は前記着肉ローラ上のインキ膜厚を算出する機構を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、有価証券及び各種証明書類等のセキュリティ印刷物を印刷する凹版印刷機に関するものであり、特に、多面印刷方式により複数の券面上に形成された磁気特性等の機能性に関する情報を印刷機上で検出し、検出された情報に基づき、多面印刷物の各券面(特に、搬送方向と直行する幅方向)に対する凹版インキの印刷膜厚を自動で制御する膜厚制御機構を備えた凹版印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、有価証券及び各種証明書類等のセキュリティ印刷物は、カラー複写機等を用いた偽造を防止するため、様々な偽造防止技術が採用されている。中でも、盛り上がりを有する複雑な画線を形成する凹版印刷は、カラー複写機等を利用した複写物では再現できないため、偽造抵抗力の高い技術である。
【0003】
また、凹版印刷物は、一定以上の膜厚を形成できるため、機械読取を目的とした磁性材料を付与することが可能であり、これらの機能性材料によって機械読取による真偽判別を可能としている。しかしながら、凹版印刷画線に含まれる磁性材料によって機械読取を実施する場合、凹版インキの膜厚によって磁気特性が変動するため、印刷物上に形成された凹版インキの膜厚を一定の範囲内に収める必要がある。
【0004】
特に、銀行券や有価証券等の各種セキュリティ印刷物は、多面印刷方式により印刷されたものを正規寸法に断裁することで、単体のセキュリティ印刷物とする方法が広く用いられており、複数の券面上に形成された凹版インキの膜厚を一定の範囲に収めるためには、凹版インキの供給量及び印刷条件等を一定の範囲内に収める必要がある。
【0005】
また、インキの供給量が多すぎる場合には、それに起因するカス落ち等の異常製品が発生する確率が高くなる。そのため、凹版インキの供給量を調整する際には、凹版インキを供給するダクトローラ上に転移したインキ膜厚を測定し、インキの供給量を調整することで印刷物上の膜厚を調整している。インキ膜厚の測定は、対物接触型のシクネスゲージを使用し、印刷オペレータが手作業によりダクトローラに接触させてインキ膜厚を測定することが一般的であるが、ダクトローラにシクネスゲージを接触させる角度や強さによって誤差が生じるため、正確な測定を行うには熟練を要するという課題があった。
【0006】
また、対物接触型のシクネスゲージで凹版インキの膜厚を測定する場合、高速で回転するダクトローラに対して、手作業によりシクネスゲージを接触させるため、作業の安全性面においても課題がある。さらに、多面印刷方式によってセキュリティ印刷物を製造する場合、搬送方向と直行する幅方向の各券面に形成された凹版インキの膜厚を一定に保つ必要があるため、ダクトローラ上の複数個所を頻繁に測定し、その測定データに合わせてインキ供給量を調整する必要があり、作業性が悪いという課題があった。
【0007】
これらの機械読取による真偽判別を目的としたセキュリティ印刷物は、印刷機上におけるインキ供給量等の調整だけでは製品品質を保証することができないため、印刷中の多面印刷物を定期的にサンプリングし、専用の測定装置を用いた測定を実施することで、多面印刷物上に形成された凹版インキの膜厚にバラツキが生じているか否かを確認し、インキ供給量の調整等を実施する必要がある。この方法では、作業負荷が大きい上、サンプリングした印刷物を測定してからインキ供給量を調整するまでに時間を要することから、測定結果を印刷物に反映するまでに時間を要するため、大量の損紙が発生するおそれがある。
【0008】
凹版印刷機におけるインキ供給量を制御し、安定化させる装置として、例えば、凹版印刷機のダクトローラ近傍において、2次元レーザー変位センサによって非接触でインキ膜厚を測定し、測定結果に基づきインキ供給量を自動で制御する凹版印刷機のインキ供給装置について本出願人は提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、その他の印刷機上で印刷物の磁気量を検査する装置として、巻取用紙(以下「ウェブ」という。)に対して磁気インキを含む印刷を行う印刷機において、ウェブにおける主印刷部以外の余白部分に磁気及び光学読取用のパターンを形成し、パターン上においては磁気特性と光学濃度を測定し、主印刷部においては、光学濃度のみを測定し、パターン及び主印刷部で検出された光学濃度情報と、パターン上で得られた光学濃度と磁気量の相関から主印刷部の磁気量を算出する印刷物検査方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013-91247号公報
【特許文献2】特開2002-347220公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のインキ供給装置を用いた場合、ダクトローラ上のインキ膜厚をもとにインキ供給量を制御しているが、ダクトローラ上のインキ膜厚の挙動が印刷物上に形成するインキ膜厚に必ずしも反映されるとは限らず、インキやローラ等の諸材料の状態や作業環境によってもインキの転移性は変化する。そのため、印刷物上のインキ膜厚を正確に制御することは困難である。また、ダクトローラの下部に2次元レーザー変位センサを付帯したインキ膜厚測定装置を設けているため、高品質な凹版印刷を実現するために必要な摺動ローラ及びミストカバーを設置した状態ではインキ膜厚を測定することができない。その上、ダクトローラの下部に設置した場合、膜厚測定に付帯する各種センサ上に大量のインキカスが落下し、正確なインキ膜厚を測定できないという課題が残されている。
【0012】
特許文献2の印刷物検査方法では、一定の張力によって搬送されるウェブの両端部(余白部)に形成されたパターンを利用し、磁気量と光学濃度の相関から主印刷部の磁気量を推測しているため、正確な磁気量を検査しているとはいえない。また、特許文献2の検査装置では、接触型の磁気量検出センサを用いているため、速乾性がないインキや凹版印刷のような一定以上の膜厚を形成する印刷物に連続して使用した場合、センサの接触部分にインキが付着し、正確な測定ができないおそれがある。さらに、枚葉紙を用いた連続印刷を実施する場合、搬送中の用紙にはバタつきが生じるため、余白部に形成されたパターンに対して接触型の磁気量検出センサを用いることはできない。そのため、ウェブを用いた印刷に限定されるという課題が残されていた。
【0013】
本発明は、前述の課題を解決することを目的とした発明であり、印刷直後の印刷物に対して磁気測定用パイルにおいて非接触型の磁気センサを用いて多面印刷物における有効面の磁気量を測定し、あらかじめ入力された基準値と比較することで磁気量が基準値以内であるかを判断し、その結果をもとにインキ壺キーを自動で制御することでインキ膜厚を正確に制御するものである。さらに、ダクトローラ又は着肉ローラ上においても、インキ中に含まれる磁気量を測定するセンサを上部に複数備えることで、センサから検出された磁気量からダクトローラ又は着肉ローラ上に転移したインキ膜厚が上限値を超えていないか判定し、高品質、かつ、目標どおりの磁気量を再現した凹版印刷物を得ることができる膜厚制御機構を備えた凹版印刷機である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機は、多面印刷物上に形成された凹版印刷画線の磁気量から凹版インキの膜厚を制御する膜厚制御機構を備えた凹版印刷機であって、膜厚制御機構は、凹版印刷画線の磁気量を検出する磁気センサと磁気センサによって検出された磁気量から凹版印刷画線の膜厚を算出する変換装置を備えた検出部と、あらかじめ基準となる適正膜厚を記憶する記憶装置と変換装置で算出した凹版印刷画線の膜厚と記憶装置に記憶された適正膜厚を比較する比較装置により適正膜厚との差を算出する解析部と、解析部で算出された適正膜厚との差に基づき、凹版インキの供給量を部分的に調整可能な複数のインキ壺キーの各々に対し、個別に前進又は後退する距離を判断する制御判断装置を備えた制御部と、制御部からの指示に基づき、複数のインキ壺キーを作動させるモータ駆動装置を備えた駆動部を少なくとも有することを特徴とする膜厚制御機構を備えた凹版印刷機である。
【0015】
また、本発明の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機における検出部のうち、磁気量を検出する構成としては、凹版印刷機において搬送された印刷直後の多面印刷物を載置する測定台と、測定台に載置された多面印刷物の有無を検出する用紙有無検出センサと、測定台に載置された多面印刷物の位置を検出する用紙位置検出センサと、用紙位置検出センサによって測定台に載置された多面印刷物の位置が正規位置でない場合に多面印刷物をエアーによって浮上させるエアー噴射部と、多面印刷物を基準位置へ誘導する誘導部を少なくとも備えたことを特徴とする膜厚制御機構を備えた凹版印刷機である。
【0016】
また、本発明の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機における制御部は、繰返し算出された適正膜厚との差に基づき、インキ壺キーの作動情報を補正する機械学習機能を備えたことを特徴とする膜厚制御機構を備えた凹版印刷機である。
【0017】
さらに、本発明の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機における検出部は、凹版インキを版面に供給するダクトローラ及び/又は着肉ローラの上部に、凹版インキの磁気量及び/又は光学特性を検出し、ダクトローラ及び/又は着肉ローラ上のインキ膜厚を算出する機構を更に備えることを特徴とする膜厚制御機構を備えた凹版印刷機。
【発明の効果】
【0018】
本発明の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機は、印刷機上に磁気量検出用のサンプリングパイルを設け、印刷物上の磁気量を正確に検出することで、正確な磁気量の情報からインキ膜厚を制御することができるため、安定した機械読取が可能なセキュリティ印刷物を確実に得ることができる。また、ダクトローラ上のインキ膜厚を接触型のシクネスゲージで測定する必要がないため、作業性及び安全性の向上が図れるとともに、熟練を要する作業をなくすことができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機は、印刷物上の磁気量を測定するだけではなく、着肉ローラ又はダクトローラ上においてもインキ膜厚を測定することで、インキの過供給によって発生するインキの転移不良やワイピング部における品質異常を防ぐことができるという効果を奏する。
【0020】
さらに、本発明の膜厚制御機構を備えた凹版印刷機は、摺動ローラやミストカバー等の印刷物品質向上を目的とした機構を備えた状態でも、着肉ローラ又はダクトローラ上のインキ膜厚を正確に測定できるため、印刷物品質を維持しつつ、インキ膜厚を制御できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】凹版印刷機の一例を示す図
図2】凹版印刷機における凹版印刷部(c)の一例を示す側面図
図3】凹版印刷機における凹版印刷部(c)を上部から見た一例を示す図
図4】膜厚制御機構を備えた凹版印刷機の排紙部の一例を示す図
図5】排紙部における膜厚制御機構の一例を示す図
図6】インキ膜厚測定を開始するまでの工程を示すフローチャート
図7】磁気測定部(B)において多面印刷物に形成された各券面の磁気量を測定する構成の一例を示す図
図8】本発明の膜厚制御機構における指示系統を示すブロック図
図9】本発明の膜厚制御機構の工程を示すフローチャート
図10】着肉ローラ(2)上のインキ膜厚を検出する磁気センサ(1)等を備えた凹版印刷部(c)を側面から見た状態を示す図
図11】着肉ローラ(2)上のインキ膜厚を検出する磁気センサ(1)等を備えた凹版印刷部(c)を上部から見た状態を示す図
図12】着肉ローラ(2)と磁気センサ(1)の位置関係の一例を示す図
図13】ダクトローラ(5)上のインキ膜厚を検出する磁気センサ(1)等を備えた凹版印刷部(c)を側面から見た状態を示す図
図14】ダクトローラ(5)上のインキ膜厚を検出する磁気センサ(1)等を備えた凹版印刷部(c)を上部から見た状態を示す図
図15】磁気測定用パイル(f)において磁気量を測定した結果と、着肉ローラ(2)又はダクトローラ(5)上の磁気量を測定した結果からインキ膜厚を制御する工程を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について図面を用いて説明するが、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0023】
本発明の膜厚測定機構を備えた凹版印刷機の一例について、図1を用いて説明する。図1は、オフセット印刷と凹版印刷をコンビネーションで印刷可能な凹版印刷機(A)を示すものであり、枚葉紙を給紙する給紙部(a)と、オフセット画線を形成するオフセット印刷部(b)と、凹版印刷画線を形成する凹版印刷部(c)と、印刷後の用紙を排紙する主パイル(d)と、印刷物の品質を確認するためのサンプリングパイル(e)と、印刷物上の磁気量を測定する磁気測定用パイル(f)を備えた構成としている。
【0024】
本発明の膜厚制御機構は、図1に示す凹版印刷部(c)と磁気測定用パイル(f)に関するものであり、少なくとも凹版印刷部(c)と磁気測定用パイル(f)を有する印刷機であれば、図1に示す凹版印刷機(A)の構成に限定されるものではない。
【0025】
図2及び図3は、凹版印刷機(A)における凹版印刷部(c)の詳細を示すものである。凹版印刷部(c)は、図2及び図3に示すように、凹版インキ(3)を供給するダクトローラ(5)と、ダクトローラ(5)のインキを凹版版面(7)に着肉する着肉ローラ(2)と、凹版版面(7)を固定する凹版版胴(6)と、凹版版面(7)に転移した凹版インキ(3)のうち、非画線部に存在する凹版インキ(3)を拭き取るワイピングローラ(8)と、搬送される用紙に対して凹版版面(7)から凹版インキ(3)を転移させるための圧力を与える圧胴(9)を少なくとも備えている。
【0026】
凹版インキ(3)を投入するインキ壺(4)は、ダクトローラ(5)と、インキ載置プレート(10)と、インキ載置プレート(10)の両側にダクトローラ(5)に接するように設置された側板(11)から構成される。凹版インキ(3)の膜厚調整(インキ転移量)は、インキ載置プレート(10)下に複数存在するインキ壺キー(12)を前後させることにより、ダクトローラ(5)との間隙を変化させて行う。インキ壺キー(12)には、インキ壺キーストローク用ギヤ(13)が付帯しており、インキ壺キーストローク用ギヤ(13)を時計回りに回すとインキ壺キー(12)が前進し、反時計回りに回すと後退する構成としている。
【0027】
本発明が対象とする凹版印刷機(A)は、画線品質向上のため、ダクトローラ(5)の下部にダクトローラ(5)に転移した凹版インキ(3)を均一に均す摺動ローラ(14)と、印刷中に発生するインキカスを受ける受け皿(15)と、着肉ローラ(2)とダクトローラ(5)の間で発生する凹版インキ(3)のミストや、インキカスが飛散することを防ぐためのミストカバー(16)を設置してもよい。これらの機構をダクトローラ(5)近傍に設置することで、正確な量の凹版インキ(3)を供給できるとともに、ミストカバー(16)に接触した凹版インキ(3)のカスを受け皿(15)で確実に回収できるため、カス落ち等の印刷不良の原因を抑制することができる。
【0028】
また、図3に示すように、凹版印刷部(c)は、凹版印刷機(A)のフレーム(26)に基軸(25)によってダクトローラ(5)及び着肉ローラ(2)が固定されており、ダクトローラ(5)に供給する凹版インキ(3)を、ダクトローラ(5)の基軸(25)方向に対して調整するため、複数のインキ壺キー(12)とインキ壺キーストローク用ギヤ(13)が付帯している。これにより、基軸方向に形成された多面印刷物の各券面におけるインキ膜厚にバラツキが生じた場合に、複数のインキ壺キーを個別に調整することで、インキ供給量を一定に保つことが可能となる。
【0029】
本実施の形態における膜厚制御機構は、磁気測定用パイル(f)において、印刷物上に転移した凹版インキ(3)の磁気量を検出し、検出された磁気量から凹版インキ(3)の膜厚を算出する検出部を備えており、検出部から得た印刷物上のインキ膜厚と記憶装置(22)に記憶された適正インキ膜厚とを比較する解析部と、解析部から得た結果からインキ膜厚を調整するためにインキ壺キー(12)を作動する方向と距離を判断する制御部と、インキ壺キー(12)を駆動する駆動部を少なくとも備えた構成としている。さらに、本発明の膜厚測定機構を備えた凹版印刷機は、印刷トラブルを抑制するために、ダクトローラ(5)又は着肉ローラ(2)上に転移した凹版インキ(3)の磁気量を検出し、過剰なインキ転移による印刷トラブルを抑制する構成としてもよい。その場合、ダクトローラ(5)又は着肉ローラ(2)上の磁気量から前述した解析部によってインキ膜厚を算出し、駆動部及び制御部を併用することができる。
【0030】
図4は、本発明の凹版印刷機(A)における主パイル(d)、サンプリングパイル(e)及び磁気測定用パイル(f)付近の構成を示すものである。デリバリーチェーン(30)の流れに沿って搬送された用紙は、用途によってそれぞれのパイルに分かれて排紙され、印刷物を積み上げる主パイル(d)と、刷色調整や品質の確認に用いるための印刷物を排出するサンプリングパイル(e)と、印刷物上に形成された凹版画線の磁気量を測定するため、一定間隔で1枚ずつの印刷物が排紙され、磁気量測定を行う磁気測定用パイル(f)から構成される。
【0031】
図5は、磁気測定用パイル(f)及び凹版印刷部(c)における膜厚制御機構を示したものである。磁気測定用パイル(f)には、印刷物上に形成された凹版印刷画線から磁気量を検出する磁気測定部(B)と、磁気測定部(B)によって得られた多面印刷物における各々の券面上の磁気量を凹版インキ(3)の膜厚に換算するための変換装置(19)を備えている。磁気測定部(B)は、磁気センサ(1)と、搬送された印刷物を載せるエアー孔付き測定台(31)を備えたエアー噴射部と、エアー孔付き測定台(31)中央に印刷物の有無を検出するための用紙有無検出センサ(32)と、エアー孔付き測定台(31)の端に印刷物の曲がりを検出するための用紙位置検出センサ(33)と、エアー孔付き測定台(31)に用紙を曲がらずに載せるためのガイド(34)から成る誘導部を少なくとも有する構成としている。これらの構成により、多面印刷物の幅方向に対するインキ膜厚情報から、複数設置されたインキ壺キー(12)を調整することで、印刷物上に形成された凹版画線の磁気量を均一に保つことが可能となる。
【0032】
次に、図6のフローチャートを用いて、磁気測定用パイル(f)内における磁気測定部(B)において、測定用のサンプル用紙が搬送されて磁気量を測定するまでの工程について説明する。
【0033】
まず、印刷中の用紙が一定間隔(例えば、1/1,000枚)により磁気測定用パイル(f)に排出され(STEP1)、排出された用紙は、エアー孔付き測定台(31)の上に載置され、用紙有無検出センサ(32)によって用紙が載置されたことを検出する(STEP2)。次に、載置された用紙が正規位置と比較して傾いているか否かを確認する用紙位置検出センサ(33)が作動し、印刷物がエアー孔付き測定台(31)の上に曲がらずに載置しているか確認する(STEP3)。用紙位置検出センサ(33)は、用紙が正規位置に載置された場合の位置における用紙の端部の少なくとも3か所に設置し、用紙位置検出センサ(33)が反応した場合は、用紙が正規位置に載置されていると制御部が判断し、エアー吸引によって用紙を固定し、(STEP4)測定を開始する。
【0034】
用紙位置検出センサ(33)が反応せず、用紙が曲がっていると判断した場合は、エアー孔からエアーを吐出し、用紙をわずかに浮上させる(STEP5)。浮上した用紙は、再度ガイド(34)に沿って落下し、エアー孔付き測定台(31)に載置される(STEP6)。これらの工程について、用紙位置検出センサ(33)が正規位置に用紙が載置されたと判断するまで繰り返し実施する。
【0035】
用紙位置検出センサ(33)が反応し、用紙が正規位置に載置されたと判断した場合は、エアー孔からエアーが吸引され、エアー孔付き測定台(31)に測定対象の用紙が固定される(STEP4)。用紙固定後、磁気センサ(1)が作動し、印刷物上に形成された凹版インキ(3)の磁気量の測定を開始する。以上が、磁気測定用パイル(f)において、印刷物上の磁気量を測定する工程である。
【0036】
次に、磁気測定用パイル(f)内における磁気測定部(B)の動作について、図7を用いて説明する。前述したフローチャートに従い、正規位置に用紙が固定された状態で、印刷物方向に磁気センサ(1)が下降し、印刷物との距離が0.5~1mmの位置まで下降する。下降した磁気センサ(1)は、あらかじめ登録された操作方向(図中、破線の矢印方向)に印刷物との距離を保った状態で移動し、各券面における磁気量を測定する。なお、多面印刷物に対するインキ供給量の調整については、用紙の搬送方向(S1)と直行する幅方向に対して調整するため、全ての券面における磁気量を測定する構成としてもよいが、多面印刷物の幅方向に形成されたいずれかの行(図中の3行のうちのいずれか1行)を測定すれば、軸方向に対するインキ供給量(インキ壺キー)の調整が可能である。
【0037】
磁気センサ(1)の作動原理及び構成(図示せず)については、例えば、特開2011-75439号公報に記載の装置のように、移動方向に対してガイドを設け、磁気センサ(1)をガイドに沿って移動自在な状態とすればよく、磁気センサ(1)の移動を正確に制御することができれば特に限定させるものではない。また、磁気センサ(1)については、多面印刷物の各券面において形成される凹版画線の複数ラインを同じに測定できる構成とすることが好ましく、磁気センサ(1)内に複数の磁気ヘッドを千鳥配置とすることで、各券面上を複数回走査させることなく、短時間で正確な磁気量を測定することが可能となる。
【0038】
磁気センサ(1)の移動については、例えば、図7に示すフレーム(26)と平行方向をX軸、フレーム(26)と直行する幅方向をY軸、印刷物に対する上下方向をZ軸と定義する。磁気測定時においては、多面印刷物における有効面の同一位置に形成された凹版画線から磁気量を測定する必要があるため、磁気センサ(1)をY軸方向設置したガイド(図示せず)に沿って測定位置まで移動させ、Z軸方向のガイド(図示せず)に沿って磁気センサ(1)と印刷物の距離が0.5~1mmの位置まで下降させ、X軸とZ軸方向を固定した状態でY軸方向のガイドに沿って磁気センサ(1)を移動させることで、多面印刷物における有効面の磁気量を正確に測定することができる。
【0039】
図8は、本発明の膜厚制御機構における指示系統を示すブロック図であり、膜厚制御機構は、印刷物上に形成された凹版画線及び/又はダクトローラ(5)、着肉ローラ(2)に付着した凹版インキ(3)の磁気量を検出し検出された磁気量から凹版インキ(3)の膜厚を算出する検出部と、あらかじめ記憶装置(22)に入力された基準値と比較し、適正なインキ膜厚であるかを比較する解析部と、インキ供給量の調整数値等を判断する制御部と、判断結果に基づき幅方向に複数形成されたインキ壺キー(12)の前進又は後退させる駆動部から構成される。以下に、それぞれについて説明する。
【0040】
検出部は、磁気測定用パイル(f)及び後述するダクトローラ(5)又は着肉ローラ(2)近傍に設置された磁気センサ(1)と、得られた磁気量からインキ膜厚を算出するための変換装置(19)を少なくとも有する必要がある。検出部において検出したインキ膜厚は、解析部へと送信される。解析部は、あらかじめ記憶装置(22)に入力された基準膜厚データと検出部によってインキ膜厚に変換されたデータを比較装置(21)によって比較照合し、各インキ壺キー(12)の調整数値を算出するとともに、基準のインキ膜厚を得るための磁気量の上限値及び下限値を設定し、記憶装置(22)に記憶させる。インキ壺キー(12)の前進及び/又は後退については、制御部における制御判断装置(23)を介して、駆動部のモータ駆動装置(24)を制御し、インキ膜厚が安定するまでの間、当該動作を継続する。
【0041】
また、解析部には、繰返し測定及び調整された情報を機械学習させることで、インキ供給量の微調整を実施することが可能である。これらの機械学習機能をさらに設けることで、印刷物上に形成された凹版インキ(3)の磁気量から算出するインキ膜厚及びインキ膜厚を調整するために実施するインキ壺キー(12)の調整精度を向上することができるため、更なる品質の安定化が期待される。
【0042】
次に、図9のフローチャートを用いて、磁気測定用パイル(f)で検出された印刷物上の磁気量に基づき、インキの供給量を制御する工程について説明する。まず、検出部(磁気測定部(B))における磁気センサ(1)によって印刷物上に形成された凹版画線から磁気量を検出し、検出された磁気量に関する情報を変換装置(19)に送信(STEP1)し、変換装置(19)において、磁気センサ(1)より送信された磁気量をインキ膜厚に換算する(STEP2)とともに、表示モニタ(20)にインキ膜厚等の情報を表示する(STEP2´)。解析部では、あらかじめ記憶装置(22)に登録された適正なインキ膜厚情報を取得し(STEP3´)、比較装置(21)において基準となるインキ膜厚との比較を行う(STEP3)。
【0043】
次に、解析部の比較装置(21)によって比較されたインキ膜厚情報を制御部の制御判断装置(23)に送信し、インキ膜厚が適正範囲内か否かを判断する(STEP4)。インキ膜厚が基準範囲内であった場合は、STEP1へ戻り、検出部におけるインキ膜厚測定を継続する。また、インキ膜厚が適正範囲を上回っていた場合、制御判断装置(23)からモータ駆動装置(24)に情報を送信し、インキ膜厚が上回っている部分のインキ壺キー(12)を前進させるよう指示を送る(STEP5)。逆に、適正範囲を下回っていた場合は、制御判断装置(23)からモータ駆動装置(24)へインキ壺キー(12)を後進させるよう指示を送る(STEP5´)。インキ膜厚の調整後は、再びSTEP1へ戻り検出部におけるインキ膜厚測定を継続する。
【0044】
以上が、磁気測定用パイル(f)において検出された印刷物上の凹版印刷画線から磁気量を測定し、インキ膜厚に変換した上で基準膜厚との比較を行い、インキ出し量を自動で調整する膜厚制御機構を備えた凹版印刷機(A)の実施形態である。なお、本発明では、磁気測定パイル(f)において、印刷物上の磁気データを検出し、検出された磁気データから凹版インキ(3)の供給量を制御する構成で説明したが、例えば、光学センサやその他の機能性データを抽出するセンサを用いて印刷物を評価し、評価結果に基づき、凹版インキ又はその他の印刷インキの出し量、あるいは印刷条件を制御する構成として活用することも可能である。
【0045】
次に、凹版インキ(3)の過剰な供給によって発生する印刷トラブルを抑制するため、ダクトローラ(5)又は着肉ローラ(2)上に転移した凹版インキ(3)の磁気量から、ダクトローラ(5)又は着肉ローラ(2)上のインキ膜厚を算出し、インキ供給量の調整に用いる付随の情報として解析部に送信する機構について説明する。
【0046】
図10及び図11は、着肉ローラ(2)上に転移した凹版インキ(3)内に存在する磁気量からインキ膜厚を算出する膜厚制御機構を示すものである。着肉ローラ(2)に転移した凹版インキ(3)の磁気量を把握することで、凹版版面(7)に転移する直前の凹版インキ(3)の磁気量を測定できるため、より正確な情報が得られる。
【0047】
図11に示す磁気センサ(1)は、着肉ローラ(2)の上部の空間に対して、フレーム(26)間に測定装置取り付け軸(17)を設置し、測定装置取り付け軸(17)から着肉ローラ(2)の軸心に対して鉛直に指向させて取り付ける。磁気センサ(1)で得られた磁気量データは、膜厚制御機構に付帯する変換装置(19)によってインキ膜厚に変換され、表示部に表示される。
【0048】
表示部は、検出部において算出したインキ膜厚や、あらかじめ設定された基準データ及び設定条件等を表示する表示モニタ(20)を備え、着肉ローラ(2)に転移した凹版インキ(3)の膜厚を可視化する構成としている。本発明では、検出された磁気量等のデータからインキ膜厚を算出し、基準値と比較することでインキ壺キー(12)を自動で調整し、印刷物上のインキ膜厚を一定に保つ構成としているが、本発明に用いる磁気測定用パイル(f)から検出したインキ膜厚や、着肉ローラ(2)及び/又はダクトローラ(5)上のインキ膜厚を表示モニタ(20)に表示し、その数値から印刷オペレータが手動によりインキ壺キー(12)を調整する際に活用してもよい。また、あらかじめ基準となるインキ膜厚の範囲を外れた場合には、警報を発することでもよく、表示モニタ(20)及び警報の両方としてもよい。
【0049】
図12は、着肉ローラ(2)に磁気センサ(1)を設置した状態を示すものである。図12(a)に示すように磁気センサ(1)は、着肉ローラ(2)に対して鉛直方向に設置し、着肉ローラ(2)との距離を1~2mm程度の位置に設置する。また、使用する磁気センサ(1)によっては、着肉ローラ(2)との距離を変更する必要が生じるため、測定装置取付け軸(17)に長さ調節治具(18)を取り付ける。なお、磁気センサ(1)については、図12に示すように、多面印刷物を印刷する場合、軸方向においてインキ転移量にバラツキが生じるため、複数設置することが好ましく、磁気センサ(1)の個数については、各ローラの熱膨張率、券面数及び印刷画線に応じて設置個数を決定すればよい。
【0050】
また、多面印刷物の印刷に用いる場合には、印刷パターンのみにインキを転移させるパターンローラを用いる場合があるが、その場合については、図12(b)に示すように、凹版画線を形成する画線部(27)及び非画線部(29)以外に膜厚測定部(28)を備えた着肉ローラ(2´)とし、膜厚測定部(28)と対応する位置に磁気センサ(1)を設置することで、凹版インキ(3)の使用量を大幅に低減した状態で着肉ローラ(2)のインキ膜厚を測定できることから、より好ましい。
【0051】
図13及び図14は、ダクトローラ(5)に転移した凹版インキ(3)内に存在する磁気量を測定する構成であり、基本的には前述した着肉ローラ(2)上に磁気センサ(1)を設置する構成と同様であり、ダクトローラ(5)の上部の空間に対して、フレーム(26)間に測定装置取り付け軸(17)を設置し、測定装置取り付け軸(17)からダクトローラ(5)の軸心に対して鉛直に指向させて磁気センサ(1)を取り付けて使用すればよい。
【0052】
なお、本実施の形態においては、着肉ローラ(2)又はダクトローラ(5)上に転移した凹版インキ(3)の膜厚を検出するセンサとして磁気センサ(1)を用いた構成で説明したが、着肉ローラ(2)又はダクトローラ(5)上に転移した凹版インキ(3)の膜厚を非接触で検出できれば如何なるセンサを使用してもよく、例えば、特許文献1に記載されるレーザー変異センサやその他の光学センサ等を用いることができる。
【0053】
次に、磁気測定用パイル(f)において磁気量を測定した結果と、着肉ローラ(2)又はダクトローラ(5)上の磁気量を測定した結果からインキ膜厚を制御する工程について、図15のフローチャートを用いて説明する。なお、磁気測定パイル(f)における詳細な工程については、前述のとおりであるため、詳細な説明は割愛する。
【0054】
まず、磁気測定用パイル(f)において、印刷物上に転移した凹版インキ(3)の磁気量を測定する(STEP1)。適正インキの範囲にそれぞれ上限値と下限値を設け、上限値を上回っていた場合はインキの出し量を減らし(STEP1´)、下限値を下回っていた場合はインキの出し量を増やす(STEP1´´)。
【0055】
次に、STEP1において、インキ膜厚が適正範囲内と判断された場合は、着肉ローラ(2)又はダクトローラ(5)上の磁気量を測定する(STEP2)。これは、印刷物上のインキ膜厚では判断できない、インキの過供給による品質異常発生の防止を目的として行う。着肉ローラ(2)又はダクトローラ(5)近傍における磁気量測定装置については、上限値のみを設け、インキ膜厚が上限値を超えていないかを判断する。STEP1において、印刷物上の凹版インキ(3)の磁気量が適正範囲内であっても、着肉ローラ又はダクトローラ上のインキ膜厚が上限値を超えた場合は、印刷物上のインキ膜厚が適正範囲から外れない範囲内でインキの出し量を減らす(STEP2´)。
【0056】
STEP1、STEP2の測定結果からインキ膜厚を調整した後はSTEP1に戻り、再び磁気測定用パイル内における磁気量測定を行う構成とすることで、凹版インキ(3)の過共有による品質異常の発生を抑制しつつ、印刷物上の凹版インキ膜厚を制御することができるため、より好ましい形態である。
【符号の説明】
【0057】
1 磁気センサ
2、2´ 着肉ローラ
3 凹版インキ
4 インキ壺
5 ダクトローラ
6 凹版版胴
7 凹版版面
8 ワイピングローラ
9 圧胴
10 インキ載置プレート
11 側板
12 インキ壺キー
13 インキ壺キーストローク用ギア
14 摺動ローラ
15 受け皿
16 ミストカバー
17 測定装置取り付け軸
18 長さ調節治具
19 変換装置
20 表示モニタ
21 比較装置
22 記憶装置
23 制御判断装置
24 モータ駆動装置
25 基軸
26 フレーム
27 画線部
28 膜厚測定部
29 非画線部
30 デリバリチェーン
31 エアー孔付き測定台
32 用紙有無検出センサ
33 用紙位置検出センサ
34 ガイド
A 凹版印刷機
B 磁気測定部
a 給紙部
b オフセット印刷部
c 凹版印刷部
d 主パイル
e サンプリングパイル
f 磁気測定用パイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15