(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128000
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】帯電防止表面保護フィルムの製造方法、及び帯電防止表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/22 20180101AFI20220825BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20220825BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20220825BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220825BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220825BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220825BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20220825BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/40
C09J133/08
B32B27/00 M
B32B27/18 D
B32B27/30 A
C08G18/62 016
C08G18/08 038
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026276
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB21
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4J040JB09
4J040KA16
4J040KA32
4J040LA09
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】基材の表面に形成された帯電防止層の大気暴露性が優れ、それに伴い長期間の保存に有効であり、且つ、粘着剤層を剥離する時の、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、バランスがとれた粘着力を有すると共に、粘着剤層の帯電防止性能と、耐汚染性能に優れている帯電防止表面保護フィルムの製造方法、及び帯電防止表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】透明性を有する樹脂からなる基材フィルム1の一方の表面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2が形成されてなる帯電防止表面保護フィルム10であって、基材フィルム1の他方の表面に第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層6が形成されてなり、粘着剤層2の表面に、樹脂フィルム3の片面に第2の帯電防止剤(K2)を含有する剥離剤層4が積層された剥離フィルム5が、剥離剤層4を介して貼り合せてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止表面保護フィルムの製造方法であって、次の工程(1)~(4)、
工程(1):アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の合計を100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーであり、
前記粘着剤組成物が、前記架橋剤として(C)3官能以上のイソシアネート化合物と、さらに、(D)架橋遅延剤と、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤とを含有してなる粘着剤組成物を作製する工程と、
工程(2):透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの一方の表面に、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を形成する工程と、
工程(3):前記基材フィルムの、前記一方の表面と反対側の表面である、他方の表面に、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層を形成する工程と、
工程(4):前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に第2の帯電防止剤(K2)を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムを、前記剥離剤層を介して貼り合せ、前記剥離剤層の前記第2の帯電防止剤(K2)を、前記粘着剤層の表面に転写させる工程と、
を工程(1)~(4)の順に経て作製され、
前記剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、前記第2の帯電防止剤(K2)とを含む樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする帯電防止表面保護フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を、厚さ38μmのポリエステルフィルムの片面に、15μmの厚さに積層し、前記粘着剤層の表面に、前記第2の帯電防止剤(K2)を転写させてなる帯電防止表面保護フィルムが、偏光板の表面に貼り合わされた後に、前記偏光板から前記帯電防止表面保護フィルムを剥離する時の、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.01~0.1N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止表面保護フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記基材フィルムの表面の、前記帯電防止層の初期の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□以下であり、23℃×50%RHの雰囲気下で90日間に渡り大気暴露された状態で保管した後における前記帯電防止層の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止表面保護フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記粘着剤組成物又は前記アクリル系ポリマーの少なくとも一方に、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の帯電防止表面保護フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第2の帯電防止剤(K2)が、アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の帯電防止表面保護フィルムの製造方法。
【請求項6】
透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの一方の表面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなる帯電防止表面保護フィルムであって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の合計を100重量部と、
(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、
をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーであり、
前記粘着剤組成物が、前記架橋剤として(C)3官能以上のイソシアネート化合物と、さらに、(D)架橋遅延剤と、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤とを含有してなり、
前記基材フィルムの、前記一方の表面と反対側の表面である、他方の表面に、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層が形成されてなり、
前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に第2の帯電防止剤(K2)を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムが、前記剥離剤層を介して貼り合せてなり、前記剥離剤層の前記第2の帯電防止剤(K2)が、前記粘着剤層の表面に転写されてなり、
前記剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、前記第2の帯電防止剤(K2)とを含む樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする帯電防止表面保護フィルム。
【請求項7】
前記粘着剤組成物又は前記アクリル系ポリマーの少なくとも一方に、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことを特徴とする請求項6に記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項8】
前記第2の帯電防止剤(K2)が、アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項6または7に記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項9】
偏光板用表面保護フィルムとして用いられる、帯電防止表面保護フィルムであり、
前記偏光板の偏光子の保護層が、TAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムよりなる群から選択された1種であり、かつ、前記偏光板の偏光子の保護層の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された1種であることを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項10】
前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項11】
前記(D)架橋遅延剤が、ケトエノール互変異性体の化合物であり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(D)架橋遅延剤を0.1~300重量部の割合で含有してなり、
前記(E)架橋促進剤が、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上の金属キレート化合物であり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(E)架橋促進剤を0.001~0.5重量部の割合で含有してなり、
前記(D)/前記(E)の重量部比率(D)/(E)が、80~1000であることを特徴とする請求項6~10のいずれかに記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項12】
前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、HLB値が6~12で重量平均分子量が10000以下であるポリエーテル変性シロキサン化合物を、0.01~0.5重量部の割合で含有することを特徴とする請求項6~11のいずれかに記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項13】
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中のジエステル分が0.2%以下であり、
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群の中から選択された少なくとも1種以上を、前記アクリル系ポリマーの100重量部のうち、1~50重量部の割合で含有してなることを特徴とする請求項7に記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項14】
前記シリコーン系化合物が、ポリエーテル変性シリコーンであることを特徴とする請求項6~13のいずれかに記載の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項15】
前記第2の帯電防止剤(K2)が、Li塩であり、LiTFSI、LiFSI、LiTFからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項6~14のいずれかに記載の帯電防止表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機EL表示装置などを構成する光学部品の製造工程に使用される表面保護フィルムに関するものである。さらに詳しくは、液晶ディスプレイ等を構成する、例えば、偏光板、位相差板などの光学部品の表面に貼着することにより、偏光板、位相差板などの光学部品の表面を保護するために使用される帯電防止表面保護フィルムの製造方法、及び帯電防止表面保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材フィルムの片面に、粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学用フィルムなどの光学部品に貼合される。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が、被着体である製品の光学用フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
【0003】
また、従来技術として、光学部品用表面保護フィルムの基材(ポリエステルフィルム)の表面に、帯電防止層が積層され、その帯電防止層に含有されている帯電防止剤として導電性高分子を使用する技術が開示されている(例えば、特許文献1~3)。その導電性高分子を使用する技術の一部は、現在においても使用されている。
しかし、帯電防止層に導電性高分子を含有している表面保護フィルムを、大気雰囲気中で長期間に渡り保管していると、経時変化により帯電防止層の表面抵抗率が上昇して帯電防止性能が低下する(いわゆる、大気暴露性が悪い)という問題があった。
【0004】
さらに、近年では、光学部品の一種である偏光板の偏光子の保護層(保護フィルムと呼ばれることもある。)として、従来、用いられているトリアセチルセルロース(TAC)以外に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、環状オレフィン系ポリマー、ポリカーボネートなどの、偏光板の表面保護フィルムを剥がす時に、剥離帯電を起こし易い材料の使用が検討され(例えば、特許文献4)、採用が拡大している。このため、偏光板の表面保護フィルム用の粘着剤層に求められる帯電防止性能が、従来に比べて優れていることが必要とされている。ここで、TACはトリアセチルセルロース、PMMAはポリメチルメタクリレート、PETはポリエチレンテレフタレートの略称である。
また、偏光板用表面保護フィルムの用途において、被着体となる偏光板の偏光子の保護層の表面に施されている表面処理として、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理などの各種の表面処理が施されている。ここで、AGとはアンチグレア(Anti Glare)、LRとはローリフレクション(Low Reflection)、ARとはアンチリフレクション(Anti Reflection)である。
【0005】
このように、近年の偏光板用表面保護フィルムは、被着体となる偏光板の偏光子の保護層に、多種多様な材料が使用されている状況に対処する必要がある。さらに、光学部品用の表面保護フィルムの使用形態としては、光学部品の各種の製造工程で使用される機会が増大していると共に、光学部品に表面保護フィルムを貼り合わせた状態で長期間に渡り保管される工程で使用される割合が増加している。また、光学部品の製造工程が完了した後においても、製造後の光学部品が液晶ディスプレイ(LCD)等の機器に組み込まれるまでの間、光学部品に表面保護フィルムを貼り合わせた状態で長期間に渡り保管される機会が増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-169455号公報
【特許文献2】特開2004-338379号公報
【特許文献3】特開2004-223923号公報
【特許文献4】特開2017-165086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、従来技術においては、帯電防止層に導電性高分子を含有している表面保護フィルムを、大気雰囲気中で長期間に渡り保管すると、経時変化により帯電防止層の帯電防止性能が低下するという問題が顕在化しているが、現在においてもその問題を解決できる技術は見当たらない。
さらに、近年の表面保護フィルムにおいては、各種の材料からなる被着体に貼り合せた後に、それぞれの被着体から剥離する工程における高速の剥離速度での粘着力、及び低速の剥離速度での粘着力が、共に所定の粘着力の範囲内であり、且つ、粘着剤層の帯電防止性能と、被着体に対する耐汚染性能に優れていることが求められている。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、基材の表面に形成された帯電防止層の大気暴露性が優れ、それに伴い長期間の保存に有効であり、且つ、粘着剤層を剥離する時の、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、バランスがとれた粘着力を有すると共に、粘着剤層の帯電防止性能と、耐汚染性能に優れている帯電防止表面保護フィルムの製造方法、及び帯電防止表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、これらの課題を解決するために鋭意検討を行なった。まず、帯電防止層に導電性高分子を含有している表面保護フィルムを、大気雰囲気中で長期間に渡り保管していると、経時変化により帯電防止層の表面抵抗率が上昇して帯電防止性能が低下する(いわゆる大気暴露性が悪い)現象の生じる原因は明確ではないが、導電性高分子が、大気中の水分及び酸素により酸化劣化することが想定された。
そこで、大気中の水分及び酸素により酸化劣化せず、全光線透過率、及び電気導電率の高い物質を探査した結果、最終的に、帯電防止層の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを採用することによりこの課題を解決することができた。
【0010】
さらに、他の課題である、粘着剤層を剥離する時の、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、バランスがとれた粘着力を有すると共に、粘着剤層の帯電防止性能と、耐汚染性能に優れている帯電防止表面保護フィルムを得ることの解決手段は、次のとおりである。
この課題を解決するため、本発明の帯電防止表面保護フィルムの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、その粘着剤組成物に含まれるアクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の合計を100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーとしている。
さらに、粘着剤組成物を塗工・乾燥して粘着剤層を積層した後に、その粘着剤層の表面に、適量の20℃において液体のシリコーン系化合物および帯電防止剤(K2)を付与することにより、被着体に対する汚染性を低く抑えた(耐汚染性能を有する)上、被着体である光学用フィルムから剥離する時の剥離帯電圧を低く抑えられ、この課題を解決することができた。
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、帯電防止表面保護フィルムの製造方法であって、次の工程(1)~(4)、
工程(1):アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の合計を100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーであり、
前記粘着剤組成物が、前記架橋剤として(C)3官能以上のイソシアネート化合物と、さらに、(D)架橋遅延剤と、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤とを含有してなる粘着剤組成物を作製する工程と、
工程(2):透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの一方の表面に、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を形成する工程と、
工程(3):前記基材フィルムの、前記一方の表面と反対側の表面である、他方の表面に、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層を形成する工程と、
工程(4):前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に第2の帯電防止剤(K2)を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムを、前記剥離剤層を介して貼り合せ、前記剥離剤層の前記第2の帯電防止剤(K2)を、前記粘着剤層の表面に転写させる工程と、
を工程(1)~(4)の順に経て作製され、
前記剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、前記第2の帯電防止剤(K2)とを含む樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする帯電防止表面保護フィルムの製造方法を提供する。
【0012】
また、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を、厚さ38μmのポリエステルフィルムの片面に、15μmの厚さに積層し、前記粘着剤層の表面に、前記第2の帯電防止剤(K2)を転写させてなる帯電防止表面保護フィルムが、偏光板の表面に貼り合わされた後に、前記偏光板から前記帯電防止表面保護フィルムを剥離する時の、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.01~0.1N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0013】
前記基材フィルムの表面の、前記帯電防止層の初期の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□以下であり、23℃×50%RHの雰囲気下で90日間に渡り大気暴露された状態で保管した後における前記帯電防止層の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□以下であることが好ましい。
【0014】
前記粘着剤組成物又は前記アクリル系ポリマーの少なくとも一方に、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことが好ましい。
【0015】
前記第2の帯電防止剤(K2)が、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの一方の表面に、アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなる帯電防止表面保護フィルムであって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の合計を100重量部と、
(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、
をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーであり、
前記粘着剤組成物が、前記架橋剤として(C)3官能以上のイソシアネート化合物と、さらに、(D)架橋遅延剤と、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤とを含有してなり、
前記基材フィルムの、前記一方の表面と反対側の表面である、他方の表面に、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層が形成されてなり、
前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に第2の帯電防止剤(K2)を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムが、前記剥離剤層を介して貼り合せてなり、前記剥離剤層の前記第2の帯電防止剤(K2)が、前記粘着剤層の表面に転写されてなり、
前記剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、前記第2の帯電防止剤(K2)とを含む樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする帯電防止表面保護フィルムを提供する。
【0017】
また、前記粘着剤組成物又は前記アクリル系ポリマーの少なくとも一方に、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことが好ましい。
【0018】
前記第2の帯電防止剤(K2)が、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0019】
偏光板用表面保護フィルムとして用いられる、帯電防止表面保護フィルムであり、前記偏光板の偏光子の保護層が、TAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムよりなる群から選択された1種であり、かつ、前記偏光板の偏光子の保護層の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された1種であることが好ましい。
【0020】
前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0021】
前記(D)架橋遅延剤が、ケトエノール互変異性体の化合物であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(D)架橋遅延剤を0.1~300重量部の割合で含有してなり、前記(E)架橋促進剤が、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上の金属キレート化合物であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(E)架橋促進剤を0.001~0.5重量部の割合で含有してなり、前記(D)/前記(E)の重量部比率(D)/(E)が、80~1000であることが好ましい。
【0022】
前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、HLB値が6~12で重量平均分子量が10000以下であるポリエーテル変性シロキサン化合物を、0.01~0.5重量部の割合で含有することが好ましい。
【0023】
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中のジエステル分が0.2%以下であり、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群の中から選択された少なくとも1種以上を、前記アクリル系ポリマーの100重量部のうち、1~50重量部の割合で含有してなることが好ましい。
【0024】
前記シリコーン系化合物が、ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
【0025】
前記第2の帯電防止剤(K2)が、Li塩であり、LiTFSI、LiFSI、LiTFからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルムは、次の(1)~(3)の効果を発揮することができる。
(1)本発明の帯電防止表面保護フィルムは、基材の表面に形成された帯電防止層の大気暴露性が優れ、それに伴い長期間の保存に有効な帯電防止表面保護フィルムを提供できる。
(2)本発明の帯電防止表面保護フィルムは、粘着剤層を剥離する時の、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、バランスがとれた粘着力を有する帯電防止表面保護フィルムを提供できる。
(3)本発明の帯電防止表面保護フィルムは、被着体に対する汚染が少なく、被着体に対する耐汚染性能が経時変化しない。また、本発明によれば、LR偏光板やAG-LR偏光板などの被着体の、帯電防止表面保護フィルムを貼り合せる側の表面が、シリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある光学用フィルムであっても、剥離フィルムを剥がした帯電防止表面保護フィルムを被着体に貼り合せた後、被着体から剥離する時に発生する剥離帯電圧を低く抑えることができ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する帯電防止表面保護フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の帯電防止表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。
【
図2】本発明の帯電防止表面保護フィルムから、剥離フィルムを剥がした状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の光学部品の、実施例の1つを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本実施形態の帯電防止表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。この帯電防止表面保護フィルム10は、透明な基材フィルム1の一方の表面に、粘着剤層2が形成されている。この粘着剤層2の表面には、樹脂フィルム3の表面に剥離剤層4が形成された剥離フィルム5が、貼合されている。
また、透明な基材フィルム1の、前記一方の表面と反対側の表面である、他方の表面には、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層6が形成されている。
また、剥離フィルム5には、第2の帯電防止剤(K2)を含有する剥離剤層4が積層されている。
【0029】
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルムが好適に用いられる。これにより、帯電防止表面保護フィルムを、被着体である光学部品に貼合した状態で、光学部品の外観検査を行うことができる。
基材フィルム1として用いる透明性を有する樹脂からなるフィルムは、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが用いられる。
ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。
基材フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
【0030】
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1の厚さは、特に限定はないが、例えば、12~100μm程度の厚さが好ましく、20~50μm程度の厚さであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の他方の表面には、帯電防止層6以外にも、表面の汚れを防止する防汚層、傷つき防止のハードコート層などを設けることができる。また、基材フィルム1の一方の表面又は他方の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0031】
また、本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に形成された帯電防止層6には、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブが含有されている。
ところで、導電性材料として、カーボンナノファイバーが知られているが、通常のカーボンナノファイバーは可視光領域の光吸収率が高いことから、透過率が低下するという問題がある。一方、本実施形態の帯電防止層6において使用するカーボンナノチューブは、中空形状の分子構造を有することから、帯電防止層6の全光線透過率を高く維持したまま、帯電防止層6に導電性を好適に付与できる。
すなわち、第1の帯電防止剤(K1)であるカーボンナノチューブは、導電性が優れることから、帯電防止層6におけるカーボンナノチューブの含有量を、比較的低濃度にすることができる。これにより、全光線透過率が高く、且つ、帯電防止性能に優れている帯電防止層6が得られること、および帯電防止層6を加熱した時、及び加湿した時の帯電防止性能が安定していることから好ましく使用される。
【0032】
第1の帯電防止剤(K1)として使用されるカーボンナノチューブは、触媒担持気相成長法、気相流動法、アーク放電法などの既に公知の製造方法により製造されたカーボンナノチューブであってもよい。具体例としては、平均直径0.3~100nmの単層カーボンナノチューブや多層カーボンナノチューブが挙げられる。なお、多層カーボンナノチューブは、比較的に量産が容易であることから、単層カーボンナノチューブに比べて安価であるとされている。
【0033】
また、単層カーボンナノチューブの市販品としては、例えば、東レ株式会社製のSWeNTシリーズ、日機装株式会社製のMWNTシリーズ、OCSiAl社製のTUBALL(登録商標)などが挙げられる。また、多層カーボンナノチューブの市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製のVGCF(登録商標)シリーズ、バイエル社製のBaytubes(登録商標)などが挙げられる。
【0034】
前記帯電防止層6は、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有しているが、第1の帯電防止剤(K1)の他に、バインダーとして水酸基含有ポリマー等のポリマーの少なくとも1種を含有させることが好ましい。
前記帯電防止層6に、バインダーとして水酸基含有ポリマー等のポリマーの少なくとも1種を含有させることにより、カーボンナノチューブの分散性が良くなる。
このバインダーとしては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール-ポリエチレン共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール-ポリビニルアセタール共重合体、ポリビニルアルコール-ポリビニルブチラール共重合体などが挙げられる。
帯電防止層6の劣化を抑制するため、帯電防止層6は、導電性高分子を含有しないことが好ましい。バインダーは、電気絶縁性の高分子であってもよい。バインダーが、π共役系を有しない高分子であると、酸化劣化しにくいため、好ましい。
【0035】
前記帯電防止層6におけるカーボンナノチューブの含有量は、前記帯電防止層6の全固形分100重量%に対して0.1~30重量%の割合であることが好ましく、0.3~12重量%であることがより好ましく、0.6~8.0重量%であることが特に好ましい。
なお、カーボンナノチューブの含有量が、0.1重量%未満であると、充分な帯電防止性能が得られない可能性がある。また、カーボンナノチューブの含有量が、30重量%を超えると、製造コストが必要以上に増加することから好ましくない。
【0036】
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に形成された帯電防止層6の厚さは、0.01~0.8μmであることが好ましく、0.03~0.5μmであることがより好ましい。
帯電防止層6の厚さが薄いことにより、帯電防止層6の全光線透過率を高くすることが容易になる。
【0037】
また、本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2は、被着体の表面に接着し、用済み後に簡単に剥がすことができ、かつ、被着体を汚染しにくい粘着剤層であれば良く、特に限定されない。粘着剤層2としては、光学用フィルムに貼合後の耐久性などを考慮すると、アクリル系ポリマーを架橋させたアクリル系の粘着剤層を用いるのが一般的である。
【0038】
前記粘着剤層2を構成する粘着剤組成物としては、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の合計を100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部と、をカルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させた、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体からなるアクリル系ポリマーと、架橋剤として(C)3官能以上のイソシアネート化合物と、(D)架橋遅延剤と、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤とを含有してなる粘着剤組成物が挙げられる。
【0039】
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、非環状(直鎖、分枝状)、環状(単環、多環)のいずれでもよい。
【0040】
前記アクリル系ポリマーは、前記(A)の合計の100重量部のうち、2-エチルヘキシルアクリレートを50重量部以上と、ホモポリマーのTgが0℃以上である単官能のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの1種以上の合計を5~40重量部との割合で含有してなることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
また、2-エチルヘキシルアクリレートは、前記(A)の合計の100重量部のうち、50重量部以上の割合で含有することが好ましく、60重量部以上の割合で含有することがより好ましく、70重量部以上の割合で含有することが特に好ましい。
また、Tgが0℃以上である単官能のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの1種以上の合計は、前記(A)の合計の100重量部のうち、5~40重量部の割合で含有することが好ましく、8~40重量部の割合で含有することがより好ましく、10~35重量部の割合で含有することが特に好ましい。なお、以下の説明において、モノマーについて、単にTgという場合は、ホモポリマーのTgを指す場合がある。
【0041】
前記アクリル系ポリマーに用いられる(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
前記アクリル系ポリマーは、前記(A)の合計の100重量部に対して、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~6.0重量部の割合で含有してなることが好ましく、2.0~6.0重量部の割合で含有してなることがより好ましく、2.5~5.5重量部の割合で含有してなることが特に好ましい。
【0042】
前記アクリル系ポリマーは、さらに、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合させるのが好ましい。さらに、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、前記アクリル系ポリマーとは別の成分として、粘着剤組成物に添加されてもよい。いずれの場合も、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、帯電防止補助剤として機能することができる。
【0043】
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールの有する複数の水酸基のうち、一つの水酸基が(メタ)アクリル酸エステルとしてエステル化された化合物であればよい。(メタ)アクリル酸エステル基が重合性基となるので、前記アクリル系ポリマーに共重合することができる。
他の水酸基がOHのままである、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートであってもよく、他の水酸基がアルキルエーテルに変換されたアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等であってもよい。
なお、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、前記(F)に該当することから、水酸基を含有しても、前記(B)には分類されない。
【0044】
前記ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコールとしては、1種または2種以上のアルキレン基を有するグリコール化合物であればよく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコールなどが挙げられる。
【0045】
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であることが好ましい。
ここで、「アルキレンオキサイドの平均繰り返し数」とは、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子構造に含まれる「ポリアルキレングリコール鎖」の部分において、アルキレンオキサイド単位が繰り返す平均の数である。
【0046】
また、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中のジエステル分は、0.2%以下であることが好ましい。「モノマー中のジエステル分」とは、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中に含まれるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステルの含有率(重量%)である。
【0047】
前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0048】
前記アクリル系ポリマーは、前記ポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群の中から選択された少なくとも1種以上を、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、1~50重量部の割合で含有(共重合)してなることが好ましく、1~35重量部の割合で含有(共重合)してなることがより好ましく、1~25重量部の割合で含有(共重合)してなることが特に好ましい。
【0049】
前記アクリル系ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が30万超過100万以下であることが好ましい。
【0050】
また、前記アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を有する共重合可能なモノマーを含有させないで共重合させたアクリル系ポリマーである。前記アクリル系ポリマーの酸価は、0.1~1.0又はそれ未満であることが好ましく、0.0であることがより好ましい。これにより、耐汚染性能を改善することができる。ここで、「酸価」とは、酸の含有量を表す指標の一つであり、カルボキシル基を含有するポリマー1gを中和するのに要する、水酸化カリウムのmg数で表される。
【0051】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、さらに、架橋剤として、(C)3官能以上のイソシアネート化合物を含有する。(C)3官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などが挙げられる。
(C)3官能以上のイソシアネート化合物の割合としては、例えば、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.1~10重量部の割合で含有するのが好ましく、0.1~6重量部の割合で含有するのがより好ましい。
【0052】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(D)架橋遅延剤を含有する。(D)架橋遅延剤としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらはケトエノール互変異性体の化合物であり、(C)3官能以上のイソシアネート化合物の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
(D)架橋遅延剤は、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
前記粘着剤組成物は、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(D)架橋遅延剤を0.1~300重量部の割合ですることが好ましい。
【0053】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(E)架橋促進剤として錫化合物以外の架橋促進剤を含有する。(E)架橋促進剤は、(C)3官能以上のイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、アクリル系ポリマーと架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよい。(E)架橋促進剤としては、金属キレート化合物が好ましい。
金属キレート化合物は、中心金属原子Mに、1以上の多座配位子Lが結合した化合物である。金属キレート化合物は、金属原子Mに結合する1以上の単座配位子Xを有してもよく、有しなくてもよい。
【0054】
金属キレート化合物の具体例としては、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄トリスアセチルアセトネート、チタニウムトリスアセチルアセトネート、ルテニウムトリスアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)鉄(III)、ビス(2,4-ヘキサンジオナト)亜鉛、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)チタン、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)アルミニウム、テトラキス(2,4-ヘキサンジオナト)ジルコニウム等が挙げられる。
【0055】
(E)架橋促進剤としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上の金属キレート化合物であることが好ましい。
前記粘着剤組成物は、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(E)架橋促進剤を0.001~0.5重量部の割合で含有することが好ましい。
【0056】
(D)架橋遅延剤は、(E)架橋促進剤とは反対に、架橋を抑制する効果を有することから、(D)架橋遅延剤と(E)架橋促進剤との割合を適切に設定することが好ましい。
粘着剤組成物のポットライフを長くし、貯蔵安定性を向上させるには、前記(D)/前記(E)の重量部比率(D)/(E)が80~1000であることが好ましく、80~700であることがより好ましく、80~300であることが特に好ましい。
ここで、(D)/(E)の重量部比率とは、(D)の重量部を(E)の重量部で除算して得られた商の値である。
【0057】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、任意成分として、(G)ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してもよい。前記ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリエーテル基を有するシロキサン化合物であり、通常のシロキサン単位〔-SiR1
2-O-〕の他に、ポリエーテル基を有するシロキサン単位〔-SiR1(R2O(R3O)nR4)-O-〕を有する。
ここで、R1は1種又は2種以上のアルキル基又はアリール基、R2及びR3は1種又は2種以上のアルキレン基、R4は1種又は2種以上のアルキル基やアシル基等(末端基)を示す。ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基〔(C2H4O)n〕やポリオキシプロピレン基〔(C3H6O)n〕等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。ポリエーテル基を有するシロキサン単位において、ポリエーテル基の末端がOH基(上記一般式においてR4=H)であってもよい。
【0058】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物は、HLB値が6~12であるポリエーテル変性シロキサン化合物であることが好ましい。
また、前記粘着剤組成物は、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記ポリエーテル変性シロキサン化合物を0.01~0.5重量部の割合で含有することが好ましく、0.02~0.35重量部の割合で含有することがより好ましく、0.02~0.25重量部の割合で含有することが特に好ましい。
HLB値とは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等に規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
【0059】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物は、例えば、水素化ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物は、具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体等が挙げられる。
【0060】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物を粘着剤組成物に配合することにより、粘着剤層2の粘着力及びリワーク性能を改善することができる。前記ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量は、10000以下であることが好ましい。
また、前記ポリエーテル変性シロキサン化合物は、前記アクリル系ポリマーとの相溶性の観点からは、HLB値が低く、分子量が低い方が相溶性は良好である。
しかし、分子量が低いポリエーテル変性シロキサン化合物であれば、HLB値が比較的高く、前記アクリル系ポリマーとの相溶性がやや低くても、優れた帯電防止性が得られる。
【0061】
本実施形態の粘着剤組成物は、上述の添加剤に限らず、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤などの公知の添加剤が適宜に配合されてもよい。これらは、単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0062】
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2の厚さは、特に限定はないものの、例えば、5~40μm程度の厚さが好ましく、10~30μm程度の厚さがより好ましい。
【0063】
帯電防止表面保護フィルムの被着体の表面に対する剥離強度(粘着力)が、0.01~0.3N/25mm程度の、微粘着力を有する粘着剤層2であることが、被着体から帯電防止表面保護フィルムを剥がす時の操作性に優れることから好ましい。
また、帯電防止表面保護フィルム10から剥離フィルム5を剥がす時の操作性に優れることから、剥離フィルム5の粘着剤層2からの剥離力が、0.2N/50mm以下であることが好ましい。
【0064】
また、本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される剥離フィルム5は、樹脂フィルム3の片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、第2の帯電防止剤(K2)とを含む樹脂組成物により、剥離剤層4が形成されている。
【0065】
樹脂フィルム3としては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられるが、透明性に優れていることや価格が比較的に安価であることから、ポリエステルフィルムが特に好ましい。
樹脂フィルム3は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
樹脂フィルム3の厚さは、特に限定はないが、例えば、12~100μm程度の厚さが好ましく、20~50μm程度の厚さであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、樹脂フィルム3の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0066】
剥離剤層4を構成するジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤には、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型などの、公知のシリコーン系剥離剤が挙げられる。
付加反応型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、KS-776A、KS-847T、KS-779H、KS-837、KS-778、KS-830(信越化学工業(株)製)、SRX-211、SRX-345、SRX-357、SD7333、SD7220、SD7223、LTC-300B、LTC-350G、LTC-310(ダウ・東レ(株)製)などが挙げられる。
縮合反応型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、SRX-290、SYLOFF-23(ダウ・東レ(株)製)などが挙げられる。
カチオン重合型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、TPR-6501、TPR-6500、UV9300、VU9315、UV9430(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)、X62-7622(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
ラジカル重合型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、X62-7205(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0067】
剥離剤層4を構成する20℃において液体のシリコーン系化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、カルビノール高級脂肪酸エステル変性シリコーンなどが挙げられる。
本実施形態では、粘着剤層2の表面の帯電防止性を向上するために、ジメチルポリシロキサンを主成分とした剥離剤の中に、20℃において液体のシリコーン系化合物が相溶している状態の剥離剤層4が、好適に用いられる。
【0068】
本実施形態の用途には、変性シリコーン化合物の中でも、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンにおけるポリエーテル鎖は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどで構成され、例えば、側鎖に用いるポリエチレンオキサイドの分子量を選択することにより、シリコーン剥離剤との相溶性や帯電防止効果などの物性が調整される。
また、ポリエーテル変性シリコーンとして市販されている製品には、例えば、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-642(信越化学工業(株)製)、SH8400、SH8700、SF8410(ダウ・東レ(株)製)、TSF-4440、TSF-4441、TSF-4445、TSF-4446、TSF-4450(モメンティブパーフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK-300、BYK-306、BYK-307、BYK-320、BYK-325、BYK-330(ビックケミー社製)などが挙げられる。
【0069】
剥離剤層4における、前記剥離剤に対する前記シリコーン系化合物の添加量は、前記シリコーン系化合物の種類や、前記剥離剤との相溶性の度合いにより異なる。その添加量は、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する耐汚染性能、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0070】
剥離剤層4を構成する第2の帯電防止剤(K2)としては、前記剥離剤層4を形成する塗布液に対して分散性の良いもので、かつ、前記剥離剤の硬化を阻害しないものが好ましい。
第2の帯電防止剤(K2)としては、アルカリ金属塩が好適である。前記アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩が挙げられる。具体的には、例えば、Li+、Na+、K+よりなるカチオンと、Cl-、Br-、I-、BF4
-、PF6
-、SCN-、ClO4
-、CF3SO3
-、(FSO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(CF3SO2)3C-よりなるアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。
また、第2の帯電防止剤(K2)は、Li塩であり、LiTFSI、LiFSI、LiTFからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが特に好ましい。
ここで、LiTFSIは、Li(CF3SO2)2Nを表す。また、LiFSIは、Li(FSO2)2Nを表す。また、LiTFは、LiCF3SO3を表す。
第2の帯電防止剤(K2)のアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を剥離剤層4に添加しても良い。
【0071】
剥離剤層4における、前記剥離剤に対する第2の帯電防止剤(K2)の添加量は、第2の帯電防止剤(K2)の種類や、前記剥離剤との親和性の度合いにより異なるが、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する耐汚染性能、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0072】
前記剥離剤と、ポリエーテル変性シリコーン及び第2の帯電防止剤(K2)とを混合して剥離剤層4を形成する塗布液を作製する方法には、次のような方法があるが、特に限定はない。
(1)前記剥離剤に、ポリエーテル変性シリコーン及び第2の帯電防止剤(K2)を添加して、混合した後に剥離剤硬化用の触媒を添加・混合する方法。
(2)前記剥離剤を、あらかじめ有機溶剤で希釈したのちにポリエーテル変性シリコーン及び第2の帯電防止剤(K2)と剥離剤硬化用の触媒を添加、混合する方法。
(3)前記剥離剤をあらかじめ有機溶剤に希釈後、触媒を添加・混合し、その後ポリエーテル変性シリコーン及び第2の帯電防止剤(K2)を添加、混合する方法。
また、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着向上剤やポリオキシアルキレン基を含有する化合物などの帯電防止効果を補助する材料を、剥離剤層4を形成する塗布液に添加しても良い。
【0073】
前記剥離剤と、ポリエーテル変性シリコーン及び第2の帯電防止剤(K2)との混合比率は、特に限定はない。
前記剥離剤の固形分100重量部に対して、ポリエーテル変性シリコーン及び第2の帯電防止剤(K2)を固形分として5~100重量部程度の重量比が好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン及び第2の帯電防止剤(K2)の固形分換算の添加量が、前記剥離剤の固形分100重量部に対して5重量部の割合より少ないと、粘着剤層2の表面に第2の帯電防止剤(K2)の転写される量も少なくなり、粘着剤層2に帯電防止の機能が発揮され難くなる。
また、ポリエーテル変性シリコーン及び第2の帯電防止剤(K2)の固形分換算の添加量が、前記剥離剤の固形分100重量部に対して100重量部の割合を越えると好ましくない。この場合、ポリエーテル変性シリコーン及び第2の帯電防止剤(K2)とともに前記剥離剤も、粘着剤層2の表面に転写されてしまうため、粘着剤層2の粘着特性を低下させる可能性がある。
【0074】
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10の基材フィルム1に、粘着剤層2を形成する方法、及び剥離フィルム5を貼合する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されないが、次のような方法が用いられる。
(1)基材フィルム1の片面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布、乾燥し粘着剤層2を形成した後に、剥離フィルム5を貼合する方法。
(2)剥離フィルム5の表面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布・乾燥し粘着剤層2を形成した後に、基材フィルム1を貼合する方法。
【0075】
また、基材フィルム1の表面に、粘着剤層2及び帯電防止層6を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
また、同様に、樹脂フィルム3に、剥離剤層4を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0076】
実施形態の帯電防止表面保護フィルム10の製造方法は、次の工程(1)~(4)を有してもよい。
工程(1):前記粘着剤組成物を作製する工程。
工程(2):基材フィルム1の一方の表面に、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2を形成する工程。
工程(3):基材フィルム1の、前記一方の表面と反対側の表面である、他方の表面に、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層6を形成する工程。
工程(4):粘着剤層2の表面に、剥離フィルム5を、剥離剤層4を介して貼り合せ、剥離剤層4の第2の帯電防止剤(K2)を、粘着剤層2の表面に転写させる工程。
【0077】
帯電防止表面保護フィルム10は、工程(1)~(4)の順に経て作製されることが好ましい。工程(3)は、工程(1)の前に実施してもよく、工程(1)と工程(2)との間で実施してもよく、工程(2)と同時に実施してもよく、工程(4)のうち、粘着剤層2の表面に、剥離フィルム5を、剥離剤層4を介して貼り合せた後に実施してもよい。
また、工程(3)を工程(2)と工程(4)との間で実施する場合に、基材フィルム1の一方の表面に形成された粘着剤層2が表出されていてもよく、基材フィルム1の一方の表面に形成された粘着剤層2が、帯電防止剤を含有しない離型フィルム等で保護されていてもよい。
また、剥離フィルム5を作製する工程は、工程(4)の前であれば、工程(1)~(3)と関係なく、任意の順序で実施してもよい。
【0078】
図2は、帯電防止表面保護フィルム10から、剥離フィルム5を剥がした状態の帯電防止表面保護フィルム11を示す断面図である。
図1に示した帯電防止表面保護フィルム10から、剥離フィルム5を剥がすことにより、剥離フィルム5の剥離剤層4に含まれる第2の帯電防止剤(K2)7の一部が、帯電防止表面保護フィルム11の粘着剤層2の表面に、転写される(付着する)。
そのため、
図2においては、帯電防止表面保護フィルム11の粘着剤層2の表面に転写された第2の帯電防止剤(K2)を、符号7の斑点で模式的に示している。
また、基材フィルム1の粘着剤層2の形成された一方の表面の反対側である他方の表面に、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層6が形成されている。
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10,11では、
図2に示した剥離フィルムを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルム11を、被着体に貼合するに当たり、この粘着剤層2の表面に転写された第2の帯電防止剤(K2)7が、被着体の表面に接触する。
そのことにより、再度、被着体から帯電防止表面保護フィルム11を剥がす時の、剥離帯電圧を低く抑えることができる。なお、第2の帯電防止剤(K2)7に加えて、20℃において液体のシリコーン系化合物が剥離剤層4から粘着剤層2の表面に転写されてもよい。
【0079】
図3は、本実施形態の光学部品の実施例を示した断面図である。
本実施形態に係わる帯電防止表面保護フィルム10から、剥離フィルム5が剥がされて、粘着剤層2が表出した状態の帯電防止表面保護フィルム11は、その粘着剤層2を介して被着体である光学部品8に貼合される。また、基材フィルム1の粘着剤層2の形成された一方の表面の反対側である他方の表面に、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層6が形成されている。
すなわち、
図3には、本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11が貼合された光学部品20を示している。光学部品8としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの光学用フィルムが挙げられる。
このような光学部品8は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の、光学系装置等の構成部材として使用される。また、光学部品8としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。
【0080】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11は、特に、表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある、低反射処理偏光板(LR偏光板)やアンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)などの光学用フィルムの、防汚染処理した面に好適に使用できる。
本実施形態の光学部品20によれば、帯電防止表面保護フィルム10,11を、被着体である光学部品(光学用フィルム)から剥離除去するとき、剥離帯電圧を充分に低く抑制することができるので、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊する恐れがなく、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
【0081】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11は、偏光板用表面保護フィルムとして好適である。帯電防止表面保護フィルム10,11の粘着剤層2が、偏光板の偏光子の保護層に貼合されてもよい。
なお、偏光板用表面保護フィルムの用途において被着体となる偏光板の偏光子の保護層としては、TAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムよりなる群から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。ここで、TACはトリアセチルセルロース、PMMAはポリメチルメタクリレート、PETはポリエチレンテレフタレートの略称である。
また、偏光板用表面保護フィルムの用途において被着体となる偏光板の偏光子の保護層の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された少なくとも1種以上であってもよい。
ここで、AGとはアンチグレア(Anti Glare)、LRとはローリフレクション(Low Reflection)、ARとはアンチリフレクション(Anti Reflection)である。
【0082】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11において、剥離剤層4から第2の帯電防止剤(K2)が転写された粘着剤層2の、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましく、5.0×10+11Ω/□以下であることがより好ましく、1.0×10+11Ω/□以下であることが特に好ましい。
粘着剤層2の表面抵抗率が大きいと、粘着剤層2を被着体から剥離する時に発生した静電気を逃がす性能に劣る。
このため、粘着剤層2の表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層2を被着体から剥離する時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体に影響することを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11において、基材フィルム1の粘着剤層2が形成された一方の表面の反対側である他方の表面には、第1の帯電防止剤(K1)としてカーボンナノチューブを含有する帯電防止層6が形成されている。この帯電防止層6の初期の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□以下であり、23℃×50%RHの雰囲気下で90日間に渡り大気暴露された状態でも1.0×10+10Ω/□以下の値を保持することが好ましい。
大気暴露における従来の帯電防止層の経時変化は、表面抵抗率が徐々に低下する傾向を示す。このため、本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11を、23℃×50%RHの雰囲気下で90日間に渡り大気暴露された状態で保管した後に帯電防止層6の表面抵抗率を少なくとも1回測定し、1.0×10+10Ω/□以下であることが好ましい。
【0084】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11において、剥離剤層4から第2の帯電防止剤(K2)が転写された粘着剤層2は、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層に対する、粘着剤層2の剥離帯電圧が+0.3~-0.3kVの範囲内であることが好ましい。
低屈折率層形成用の組成物に用いられるフッ素化合物としては、フッ素化オレフィン類、フッ素化ビニルエーテル類、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上の重合物である含フッ素共重合体、フッ素化アルキル基含有シラン化合物等の縮合物が挙げられる。含フッ素共重合体は、フッ素化されたモノマーに加えて、オレフィン類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリレート等の、フッ素化されていないモノマーが共重合されていてもよい。低屈折率層は、高屈折率層等と組み合わせて反射防止層を構成してもよい。
【0085】
低屈折率層に対する剥離帯電圧を測定する際に、表面に低屈折率層を形成するための基材としては、PMMA基材およびTAC基材が挙げられる。
また、本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11において、剥離剤層4から第2の帯電防止剤(K2)が転写された粘着剤層2は、PMMA基材およびTAC基材の表面に何も処理されていないプレーン層に対する剥離帯電圧が、+0.3~-0.3kVの範囲内であることが好ましい。
【0086】
粘着剤層2が、偏光板等の被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に2日(48hr)放置し、前記雰囲気下から取り出し後、1日経過した後に剥がした際に汚染が無いことが好ましい。
また、被着体としては、偏光子に保護層を積層し、保護層の表面が、フッ素化合物を含有する組成物で低反射表面処理された偏光板が挙げられる。
低反射表面処理に用いられるフッ素化合物を含有する組成物は、上述のフッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の樹脂組成物と同一でもよく、異なってもよい。保護層及び表面処理としては、上述の偏光子の保護層及びその表面に施されている表面処理が挙げられる。
具体的には、表面基材がTAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムからなる群より選択された1種であり、かつ、前記表面基材の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された1種である偏光板が挙げられる。
【0087】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11において、被着体に対する粘着剤層2の粘着力を評価するには、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層2を、厚さ38μmのポリエステルフィルムの片面に、15μmの厚さに積層した後、粘着剤層2の表面に、剥離剤層4から第2の帯電防止剤(K2)7が転写されてなる帯電防止表面保護フィルム11が、被着体の一例である、偏光板の表面に貼り合わされる方法が挙げられる。
その後、前記偏光板から帯電防止表面保護フィルム11を剥離する時の、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.01~0.1N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることが好ましく、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が0.2~0.8N/25mmであることがより好ましい。
これにより、粘着力が剥離速度によっても変化が少ない性能が得られ、高速剥離によっても、帯電防止表面保護フィルム11を速やかに剥離することが可能になる。また、貼り直しのため、一旦、帯電防止表面保護フィルム11を剥がすときにも、過大な力を必要とせず、被着体から剥がし易い。
【0088】
本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11において、前記粘着剤組成物を架橋させた後、剥離剤層4から第2の帯電防止剤(K2)が転写された粘着剤層2のゲル分率は、95~100%であることが好ましく、97~100%であることがより好ましい。
このように粘着剤層2のゲル分率が高いことにより、低速の剥離速度での粘着力が過大にならず、粘着剤層2からの未重合モノマーあるいはオリゴマーの溶出が低減して、リワーク性や高温・高湿度における耐久性が改善され、被着体の汚染を抑制することができる。
【0089】
本実施形態の粘着フィルムは、本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成してなる。また、本実施形態の表面保護フィルムは、本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面に形成してなる表面保護フィルムである。
本実施形態の表面保護フィルムは、粘着剤層2の表面に剥離剤層4から第2の帯電防止剤(K2)が転写されることで帯電防止表面保護フィルム10,11となり、優れた帯電防止性能を備える。さらに、本実施形態の帯電防止表面保護フィルム10,11は、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、耐汚染性能を有する。このため、偏光板の表面保護フィルムの用途として好適に使用することができる。
【0090】
また、光学用フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤組成物を架橋させた後、剥離剤層4から第2の帯電防止剤(K2)が転写された粘着剤層2を積層することにより、粘着剤層付き光学用フィルムを得ることができる。
光学用フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
光学部品8,20が適用される機器としては、液晶パネル、有機ELパネル、タッチパネル等が挙げられる。
偏光板用の表面保護フィルムなどの光学用の表面保護フィルム及び粘着フィルムの場合、基材フィルム1及び粘着剤層2は、十分な透明性を有することが好ましい。
【実施例0091】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0092】
<帯電防止層を形成する塗布液の製造>
[実施例1~4、比較例4]
第1の帯電防止剤(K1)として、市販されている多層カーボンナノチューブを5重量部と、水酸基含有ポリマーの少なくとも1種を95重量部とを溶媒に溶解した後、超音波による振動を加えながら撹拌して、実施例1~4及び比較例4の帯電防止層を形成する塗布液を得た。
【0093】
[比較例3]
導電性高分子からなる帯電防止剤として、ポリアニリン(株式会社日本触媒製)とポリチオフェン(帝国製薬株式会社製)との固形分の重量比が10:90の混合物を、溶剤にて溶解して、比較例3の帯電防止層を形成する塗布液を得た。
【0094】
<粘着剤組成物の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)80重量部、n-ブチルアクリレート(BA)20重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート(8HOA)4.5重量部、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(n=12)10重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1のアクリル系ポリマー溶液を得た。このアクリル系ポリマー溶液に対して、アセチルアセトン(AA)8.5重量部を加え撹拌したのち、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)を2.0重量部、チタニウムトリスアセチルアセトネート0.1重量部、ポリエーテル変性シロキサン化合物(HLB=7)0.05重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0095】
[実施例2~4及び比較例1~4]
実施例1の粘着剤組成物の組成を各々、表1の記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4及び比較例1~4の粘着剤組成物を得た。比較例1、2の粘着剤組成物の場合は、さらに表2の「帯電防止剤(粘着剤層)」に示す化合物を粘着剤組成物に添加した。なお、実施例1~4及び比較例1~3のアクリル系ポリマーは、重量平均分子量が30万超過100万以下の共重合体であった。比較例4のアクリル系ポリマーは、重量平均分子量が10万の共重合体であった。
【0096】
表1の各欄及び表2の「帯電防止剤(粘着剤層)」において、各成分の重量部は、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの合計を100重量部として求めた。表2の「(D)/(E)」は、重量部比率である。また、表1の(B)~(G)の各欄では、(A)、(B)、(F)の重量部の合計として算出されるアクリル系ポリマーの重量部を100重量部としたときの、各成分の含有割合(重量部)を括弧()内の数値で示した。また、表2の「帯電防止剤(粘着剤層)」において、LiTFSIは、Li(CF3SO2)2Nを表し、LiTFは、LiCF3SO3を表す。
【0097】
【0098】
【0099】
また、表1に用いた(A)~(G)の各成分の略記号の化合物名を、表3に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは東ソー株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-140N、D-110Nは三井化学株式会社の商品名である。
また、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーのうち、F-1~F-3は、ジエステル分が0.2wt%以下のモノマーであり、F-4は、ジエステル分が0.8wt%のモノマーである。nの値は、アルキレンオキサイドの平均繰り返し数を示す。
また、(G)ポリエーテル変性シロキサン化合物のうち、G-1~G-6の重量平均分子量は、10000以下である。
【0100】
【0101】
<帯電防止表面保護フィルムの作製>
[実施例1]
付加反応型のシリコーン(ダウ・東レ(株)製、品名:SRX-345)5重量部、ポリエーテル変性シリコーン(ダウ・東レ(株)製、品名:SH8400)0.15重量部、第2の帯電防止剤(K2)としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(LiTFSI)を0.5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒95重量部、及び白金触媒(ダウ・東レ(株)製、品名:SRX-212キャタリスト)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例1の剥離剤層を形成する塗布液を製造した。
厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、実施例1の剥離剤層を形成する塗布液を、乾燥後の厚さが0.2μmになるようにメイヤーバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、実施例1の剥離フィルムを得た。
実施例1の粘着剤組成物を、基材フィルムとして厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の表面に、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。さらに、前記基材フィルムの粘着剤層が形成された一方の表面の反対側である他方の表面に、実施例1の帯電防止層を形成する塗布液を、乾燥後の厚さが0.05μmとなるように塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて帯電防止層を形成した。
その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、実施例1の剥離フィルムの剥離剤層(シリコーン処理面)を貼合した。得られた粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、実施例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0102】
[実施例2~4]
実施例1の剥離剤層を形成する塗布液の組成を、各々、表4の記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4の剥離剤層を形成する塗布液を製造し、実施例2~4の剥離フィルムを得た。
また、実施例1の粘着剤組成物を、各々、実施例2~4の粘着剤組成物にし、帯電防止層の乾燥後の厚さを、各々、表5の記載のようにし、実施例1の剥離フィルムを、各々、実施例2~4の剥離フィルムとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0103】
[比較例1]
付加反応型のシリコーン(ダウ・東レ(株)製、品名:SRX-345)5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒95重量部、及び白金触媒(ダウ・東レ(株)製、品名:SRX-212キャタリスト)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、比較例1の剥離剤層を形成する塗布液を製造した。
厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、比較例1の剥離剤層を形成する塗布液を、乾燥後の厚さが0.2μmになるようにメイヤーバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、比較例1の剥離フィルムを得た。
比較例1の粘着剤組成物を、基材フィルムとして厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の表面に、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。さらに、前記基材フィルムの粘着剤層が形成された一方の表面の反対側である他方の表面には、帯電防止層を形成しなかった。
その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、比較例1の剥離フィルムの剥離剤層(シリコーン処理面)を貼合した。得られた粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、比較例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0104】
[比較例2]
比較例1の粘着剤組成物を、比較例2の粘着剤組成物にした以外は、比較例1と同様にして、比較例2の帯電防止表面保護フィルムを得た。
[比較例3~4]
実施例1の剥離剤層を形成する塗布液の組成を、各々、表4の記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、比較例3~4の剥離剤層を形成する塗布液を製造し、比較例3~4の剥離フィルムを得た。
また、実施例1の粘着剤組成物、帯電防止層を形成する塗布液、及び剥離フィルムを、各々、比較例3~4の粘着剤組成物、帯電防止層を形成する塗布液、及び剥離フィルムにした以外は、実施例1と同様にして、比較例3~4の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0105】
なお、表4の「第2の帯電防止剤(K2)」において、LiTFSIは、Li(CF3SO2)2Nを表し、LiFSIは、Li(FSO2)2Nを表し、LiTFは、LiCF3SO3を表す。
また、表5の「第1の帯電防止剤(K1)」において、CNTは、多層カーボンナノチューブを表し、PANIは、ポリアニリンを表し、PEDOTは、ポリチオフェンの一種で、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を表す。
【0106】
【0107】
【0108】
<試験方法及び評価>
実施例1~4及び比較例1~4における帯電防止表面保護フィルムを、それぞれ、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、以下の試験方法により評価した。なお、実施例1~4及び比較例3~4の帯電防止表面保護フィルムでは、剥離フィルムを剥がすことにより、剥離剤層から第2の帯電防止剤(K2)を、粘着剤層の表面に転写させることができる。比較例1~2の帯電防止表面保護フィルムでは、粘着剤層の全体に、表2の「帯電防止剤(粘着剤層)」に示す化合物を含有している。
【0109】
<粘着力の試験方法>
剥離フィルムを剥がして、厚さが15μmの粘着剤層を表出させた帯電防止表面保護フィルムを、粘着剤層を介して偏光板の表面に貼合し、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力の測定試料とした。得られた測定試料を、180°方向に引張試験機を用いて低速度(0.3m/min)又は高速度(30m/min)において剥がして測定した剥離強度を粘着力とした。
ここで、前記偏光板の偏光子の保護層は、AG-LR処理層を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)である。
【0110】
<表面抵抗率の試験方法>
帯電防止表面保護フィルムをエージングした後、偏光板に貼合する前に、剥離フィルムを剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタ(登録商標)UP-HT450(三菱ケミカルアナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
また、同様にして、帯電防止層の初期の表面抵抗率を測定した。
また、帯電防止表面保護フィルムを、23℃×50%RHの雰囲気下で90日間に渡り大気暴露された状態で保管した後、帯電防止層の90日後の表面抵抗率を測定した。
【0111】
<剥離帯電圧の試験方法>
剥離フィルムを剥がして、粘着剤層を表出させた帯電防止表面保護フィルムを、被着面にフッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層を有する偏光板に貼合した。帯電防止表面保護フィルムを、30m/minの引張速度で180°剥離した際に、被着体が帯電して発生する電圧(帯電圧)を高精度静電気センサSK-035、SK-200(株式会社キーエンス製)を用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧とした。
【0112】
<耐汚染性能の試験方法>
ガラス板の片面上に、表7に示す表面基材及び表面処理(Plainの場合は未処理)を有する偏光板を、貼合機を用いて、粘着剤層(両面粘着テープ)を介して貼合した。その後、前記偏光板の表面に、剥離フィルムを剥がして、粘着剤層を表出させた帯電防止表面保護フィルムを、貼合機を用いて貼合した。被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に2日(48hr)放置し、前記雰囲気下から取り出した後、1日経過した後に、帯電防止表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察した。耐汚染性能の判断基準は、前記偏光板の表面に対して汚染なしの場合を「○」、わずかに汚染ありの場合を「△」、汚染ありの場合を「×」と評価した。
【0113】
表6~7に、実施例1~4及び比較例1~4の帯電防止表面保護フィルムについての評価結果を示す。表6の「表面抵抗率」は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0114】
【0115】
【0116】
実施例1~4の帯電防止表面保護フィルムは、基材フィルムの表面に形成された帯電防止層の初期の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□以下であり、帯電防止層が23℃×50%RHの雰囲気下で90日間に渡り大気暴露された状態でも1.0×10+10Ω/□以下の値が保持されている。
また、実施例1~4の帯電防止表面保護フィルムは、被着体である偏光板に対する、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.01~0.1N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることから、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ることによる粘着性能が優れていた。
また、実施例1~4の帯電防止表面保護フィルムは、剥離剤層の帯電防止剤を、粘着剤層の表面に転写させているため、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層に対する、粘着剤層の剥離帯電圧が+0.3~-0.3kVの範囲内であり、帯電防止性能が優れていた。
さらに、実施例1~4の帯電防止表面保護フィルムは、被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に48hr放置し、前記雰囲気下から取り出して1日経過した後にも被着体である各種の偏光板に対する汚染がなく、耐汚染性能にも優れていた。
すなわち、表6~7に示された評価結果によれば、実施例1~4の帯電防止表面保護フィルムが、本発明の課題を全て解決できたことが実証されている。
【0117】
比較例1、2の帯電防止表面保護フィルムは、基材フィルムの表面に他方の帯電防止剤を含有する帯電防止層が形成されておらず、基材フィルムの他方の表面の表面抵抗率が極めて高い。
また、比較例1の帯電防止表面保護フィルム(アクリル系ポリマーに共重合させた単官能のアルキル(メタ)アクリレートモノマーであるn-ブチルアクリレート(BA)のTgが0℃未満で、粘着剤層の全体に帯電防止剤を含有し、剥離剤層が、20℃において液体のシリコーン系化合物と、帯電防止剤とを含有しない)では、耐汚染性能がやや悪かった。
また、比較例2の帯電防止表面保護フィルム(アクリル系ポリマーに共重合させた単官能のアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び水酸基含有モノマーが過多で、アクリル系ポリマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有せず、粘着剤層の全体に帯電防止剤を含有し、剥離剤層が、20℃において液体のシリコーン系化合物と、帯電防止剤とを含有しない)では、粘着力が大きく、剥離帯電圧が高く、耐汚染性能が悪かった。
また、比較例3の帯電防止表面保護フィルムは、基材フィルムの表面に、帯電防止剤として導電性高分子を含有する帯電防止層が形成されている。そのため、基材フィルムの表面に形成された帯電防止層の初期の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□以下であるが、23℃×50%RHの雰囲気下で90日間に渡り大気暴露された状態では、帯電防止層の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□の値を越えている。
また、比較例3の帯電防止表面保護フィルム(アクリル系ポリマーが、Tgが0℃以上であるアルキル(メタ)アクリレートモノマー及びポリアルキレングリコール鎖を構成するポリアルキレングリコール鎖含有モノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有せず、カルボキシル基含有モノマーを含有する)では、粘着力が大きく、粘着剤層の表面抵抗率が大きく、剥離帯電圧が高く、耐汚染性能が悪かった。
また、比較例4の帯電防止表面保護フィルム(アクリル系ポリマーの重量平均分子量が小さい)では、耐汚染性能が悪かった。
このように、比較例1~4の帯電防止表面保護フィルムでは、本発明の課題を解決することができなかった。
1…基材フィルム、2…粘着剤層、3…樹脂フィルム、4…剥離剤層、5…剥離フィルム、6…第1の帯電防止剤(K1)を含有する帯電防止層、7…第2の帯電防止剤(K2)、8…被着体(光学部品)、10…帯電防止表面保護フィルム、11…剥離フィルムを剥がした帯電防止表面保護フィルム、20…帯電防止表面保護フィルムを貼合した光学部品。