(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128779
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】光学系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/06 20060101AFI20220829BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
G02B13/06
G02B17/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027189
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】古林 琢
(72)【発明者】
【氏名】大槻 智貴
(72)【発明者】
【氏名】北條 孝樹
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA21
2H087QA01
2H087QA02
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】最も物体側の面が平面乃至ほぼ平面に近い形状で構成され、広い画角を有する光学系及び撮像装置を提供する。
【解決手段】光学系1は、光軸Zに沿って物体側から順に前群G1及び後群G2を有する。前群G1は、光軸に沿って物体側から順に第1レンズL1及び第2レンズL2を有する。第2レンズL2は、物体側の面P2Aが第1反射面P2A1及び第1透過面P2A2を有し、像側の面P2Bが第2透過面P2B1及び第2反射面P2B2を有する。第1レンズL1は、物体側の面P1Aが光軸Zに直交する平面形状を有する。第1レンズL1の像側の面P1Bは、少なくとも第1透過面P2A2に対応する領域において、第1透過面P2A2に対応した形状を有する。第2レンズL2は、少なくとも第1透過面P2A2の領域において、第1レンズL2の像側の面L1Bに接して配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って物体側から順に、前群と、後群と、を有し、
前記前群は、前記光軸に沿って物体側から順に第1レンズと、第2レンズと、を有し、
前記第2レンズは、中央部分に第1反射面を有し、かつ、前記第1反射面の周囲に第1透過面を有する物体側の面と、中央部分に第2透過面を有し、かつ、前記第2透過面の周囲に第2反射面を有する像側の面と、を含み、
前記第1レンズは、前記光軸に直交する平面形状又は前記光軸を中心として外側に凸をなす曲面形状を有する物体側の面と、少なくとも前記第1透過面に対応する領域において、前記第1透過面に対応した形状を有する像側の面と、を含み、
前記第2レンズが、少なくとも前記第1透過面の領域において、前記第1レンズの像側の面に接して配置される、
光学系。
【請求項2】
前記第1レンズは、少なくとも前記第1レンズの直径の10倍以上の曲率半径である像側の面を有する、
請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記第1レンズが、前記光軸に直交する平面である像側の面を有する、
請求項1又は2に記載の光学系。
【請求項4】
前記第1レンズが、前記光軸に直交する平面である物体側の面を有する、
請求項3に記載の光学系。
【請求項5】
前記後群が、前記第1レンズの有効径に対し、0.25倍以下である有効径を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
前記光軸を含む断面内で、110°以上の画角を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項7】
前記第2レンズが、少なくとも前記第1透過面の領域において、前記第1レンズの像側の面に接合されて、前記第1レンズと一体化される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項8】
前記第2レンズが、少なくとも前記第1透過面の領域において、前記第1レンズの像側の面に接着により接合される、
請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記第1レンズ及び前記第2レンズが同じ屈折率を有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項10】
鏡筒に収容された状態において、前記前群が前記後群から独立して着脱可能である、
請求項1から9のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項11】
前記第1レンズの外周と鏡筒の内周との隙間が伸縮性を有するシール部材でシールされる、
請求項1から10のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の光学系と、
前記光学系を通過する光を受光する撮像素子と、
を備えた撮像装置。
【請求項13】
プロセッサを更に有し、
前記プロセッサは、撮像により得られる画像に対し、前記光学系によって生じる歪みを補正する処理を行う、
請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
撮像に関わる少なくとも一部の機器が、前記光学系の鏡筒内に収容される、
請求項12又は13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記光学系が床又は地中に埋設され、前記第1レンズの物体側の面が床面又は地面の一部を構成する、
請求項12から14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記光学系の鏡筒の外周が伸縮性を有するシール部材でシールされる、
請求項12から15のいずれか1項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系及び撮像装置に関し、特に広い画角を有する光学系及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、最も物体側の面が平面乃至ほぼ平面に近い形状で構成された光学系が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-20066号公報
【特許文献2】特開2009-80410号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、最も物体側の面が平面乃至ほぼ平面に近い形状で構成され、広い画角を有する光学系及び撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)光軸に沿って物体側から順に、前群と、後群と、を有し、前群は、光軸に沿って物体側から順に第1レンズと、第2レンズと、を有し、第2レンズは、中央部分に第1反射面を有し、かつ、第1反射面の周囲に第1透過面を有する物体側の面と、中央部分に第2透過面を有し、かつ、第2透過面の周囲に第2反射面を有する像側の面と、を含み、第1レンズは、光軸に直交する平面形状又は光軸を中心として外側に凸をなす曲面形状を有する物体側の面と、少なくとも第1透過面に対応する領域において、第1透過面に対応した形状を有する像側の面と、を含み、第2レンズが、少なくとも第1透過面の領域において、第1レンズの像側の面に接して配置される、光学系。
【0006】
(2)第1レンズは、少なくとも第1レンズの直径の10倍以上の曲率半径である像側の面を有する、(1)の光学系。
【0007】
(3)第1レンズが、光軸に直交する平面である像側の面を有する、(1)又は(2)の光学系。
【0008】
(4)第1レンズが、光軸に直交する平面である物体側の面を有する、(3)の光学系。
【0009】
(5)後群が、第1レンズの有効径に対し、0.25倍以下である有効径を有する、(1)から(4)のいずれか一の光学系。
【0010】
(6)光軸を含む断面内で、110°以上の画角を有する、(1)から(5)のいずれか一の光学系。
【0011】
(7)第2レンズが、少なくとも第1透過面の領域において、第1レンズの像側の面に接合されて、第1レンズと一体化される、(1)から(6)のいずれか一の光学系。
【0012】
(8)第2レンズが、少なくとも第1透過面の領域において、第1レンズの像側の面に接着により接合される、(7)の光学系。
【0013】
(9)第1レンズ及び第2レンズが同じ屈折率を有する、(1)から(8)のいずれか一の光学系。
【0014】
(10)鏡筒に収容された状態において、前群が後群から独立して着脱可能である、(1)から(9)のいずれか一の光学系。
【0015】
(11)第1レンズの外周と鏡筒の内周との隙間が伸縮性を有するシール部材でシールされる、(1)から(10)のいずれか一の光学系。
【0016】
(12)(1)から(11)のいずれか一の光学系と、光学系を通過する光を受光する撮像素子と、を備えた撮像装置。
【0017】
(13)プロセッサを更に有し、プロセッサは、撮像により得られる画像に対し、光学系によって生じる歪みを補正する処理を行う、(12)の撮像装置。
【0018】
(14)撮像に関わる少なくとも一部の機器が、光学系の鏡筒内に収容される、(12)又は(13)の撮像装置。
【0019】
(15)光学系が床又は地中に埋設され、第1レンズの物体側の面が床面又は地面の一部を構成する、(12)から(14)のいずれか一の撮像装置。
【0020】
(16)光学系の鏡筒の外周が伸縮性を有するシール部材でシールされる、(12)から(15)のいずれか一の撮像装置。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明が適用された光学系の一実施形態を示す断面図
【
図11】歪みを補正する処理を施した画像の一例を示す図
【
図12】撮像された画像の一部を切り出して出力する場合の概念図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0023】
[光学系]
[光学系の構成]
図1は、本発明が適用された光学系の一実施形態を示す断面図である。なお、同図において、左側が物体側、右側が像側である。また、同図では、光束として、最大画角の光束FL1と、最小画角の光束FL2と、2つの中間画角の光束FL3、FL4と、を示している。なお、同図において、符号IPは結像面である。
【0024】
本実施の形態の光学系1は、コンパクトで広い画角を実現する光学系であり、かつ、最も物体側の面が平面で構成される光学系である。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態の光学系1は、前群G1及び後群G2からなる2つのレンズ群と、絞りSPと、を有する。2つのレンズ群は、光軸Zに沿って、物体側から像側に向かって前群G1、後群G2の順で配置される。絞りSPは、前群G1及び後群G2の間に配置される。
【0026】
図2は、
図1に示す光学系の前群の構成を示す断面図である。
【0027】
同図に示すように、前群G1は、光軸Zに沿って、物体側から像側へ順に第1レンズL1及び第2レンズL2を有する。第2レンズL2は、物体側の面P2Aが、第1レンズL1の像側の面P1Bに接して配置される。特に、本実施の形態の光学系1では、第2レンズL2の物体側の面P2Aの一部が、第1レンズL1の像側の面P1Bの一部に接合されて、一体化される。この点については、後述する。
【0028】
第1レンズL1は、光学系1において、最も物体側に配置されるレンズである(いわゆる前玉)。第1レンズL1は、物体側の面P1A及び像側の面P1Bが平面形状を有する。すなわち、物体側の面P1A及び像側の面P1Bが、光軸Zと直交する平面で構成される。したがって、本実施の形態の光学系1では、第1レンズL1が平行平板で構成される。
【0029】
第2レンズL2は、物体側の面P2Aの一部及び像側の面P2Bの一部に反射面を有する。
【0030】
第2レンズL2の物体側の面P2Aは、中央領域A1及び周辺領域A2からなる2つの領域を有する。中央領域A1は、光軸Zを中心とする半径r1の円形状の領域で構成される。周辺領域A2は、中央領域A1の周囲の円環状の領域で構成される。第2レンズL2の物体側の面P2Aは、中央領域A1が反射面P2A1で構成され、周辺領域A2が透過面P2A2で構成される。また、第2レンズL2の物体側の面P2Aは、中央領域A1が像側に凹となる凹面で構成され、周辺領域A2が光軸Zと直交する平面で構成される。すなわち、第2レンズL2の物体側の面P2Aは、中央の反射面P2A1が凹面で構成され、その周囲の透過面P2A2が平面で構成される。反射面P2A1は、たとえば、金属膜で構成され、銀、アルミなどの反射率の高い材料を中央領域A1に蒸着させて生成される。
【0031】
第2レンズL2の像側の面P2Bは、中央領域B1及び周辺領域B2からなる2つの領域を有する。中央領域B1は、光軸Zを中心とする半径r2の円形状の領域で構成される。周辺領域B2は、中央領域B1の周囲の円環状の領域で構成される。第2レンズL2の像側の面P2Bは、中央領域B1が透過面P2B1で構成され、周辺領域B2が反射面P2B2で構成される。また、第2レンズL2の像側の面P2Bは、全体として、像側に凸となる凸面で構成される。反射面P2B2は、たとえば、金属膜で構成され、銀、アルミなどの反射率の高い材料を周辺領域B2に蒸着させて生成される。
【0032】
なお、以下においては、第2レンズL2の物体側の面P2Aに備えられた反射面P2A1を第1反射面P2A1、第2レンズL2の像側の面P2Bに備えられた反射面P2B2を第2反射面P2B2として、第2レンズL2に備えられた各反射面を区別する。また、第2レンズL2の物体側の面P2Aに備えられた透過面P2A2を第1透過面P2A2、第2レンズL2の像側の面P2Bに備えられた透過面P2B1を第2透過面P2B1として、第2レンズL2に備えられた各透過面を区別する。
【0033】
上記のように、第1レンズL1は、像側の面P1Bが光軸Zと直交する平面で構成される。したがって、第1レンズL1の像側の面P1Bは、第2レンズL2の第1透過面P2A2の形状に対応した形状を有する。第2レンズL2は、第1透過面P2A2を接合面として、第1レンズL1に接合される。すなわち、第1レンズL1及び第2レンズL2は、第2レンズL2の第1透過面P2A2の領域(周辺領域A2)において、空気間隔を持たずに互いに接して、一体化される。本実施の形態の光学系1では、第2レンズL2の第1透過面P2A2が、第1レンズL1の像側の面P1Bに接着剤で接着されて、第1レンズL1と第2レンズL2とが一体化される。
【0034】
後群G2は、少なくとも1枚のレンズで構成される。後群G2を構成する各レンズは、光軸Zに沿って配置される。後群G2は、諸収差(たとえば、球面収差、コマ収差、非点収差、色収差など)を補正する機能を実現する。また、後群G2は、フォーカシングの機能を実現する。フォーカシングの機能は、たとえば、後群G2を光軸Zに沿って前後移動させることで実現する。
【0035】
[光学系の作用]
以上のように構成される本実施の形態の光学系1によれば、光学系1に入射する光は、前群G1を通過後、絞りSPを経て、後群G2に入射する。
【0036】
前群G1において、光は、まず、第1レンズL1を通過し、その後、第2レンズL2に入射する。第2レンズL2に入射した光は、第2レンズL2内を2回反射して、第2レンズL2から出射する。具体的には、次の経路を経て第2レンズL2から出射する。第1レンズL1を通過した光は、まず、第2レンズL2の物体側の面P2Aに備えられた第1透過面P2A2を介して第2レンズL2に入射する。第2レンズL2に入射した光は、その後、第2レンズL2の像側の面P2Bに備えられた第2反射面P2B2で反射される(1回目の反射)。第2反射面P2B2で反射された光は、次いで、第2レンズL2の物体側の面P2Aに備えられた第1反射面P2A1で反射される(2回目の反射)。そして、第1反射面P2A1で反射された光が、第2レンズL2の像側の面P2Bに備えられた第2透過面P2B1から出射される。
【0037】
本実施の形態の光学系1では、前群G1において、第1レンズL1及び第2レンズL2が、第2レンズL2の第1透過面P2A2の領域(周辺領域A2)において、空気間隔を持たずに互いに接している。このような構成を採用することにより、第1レンズL1の物体側の面P1Aがパワーを持たない場合であっても、非常に広い画角(たとえば、160°以上の画角)を実現できる。たとえば、
図1に示す構成では、半画角が22°から84°となる。
【0038】
また、前群G1の第2レンズL2において、2つの反射面(第1反射面P2A1及び第2反射面P2B2)を使用し、光を2回反射させて出射させる構成としている。このような構成を採用することにより、後群G2をコンパクト化できる。すなわち、後群G2の有効径を小さくできる。また、これにより、全体を軽量化できる。
【0039】
[光学系の変形例等]
[前群の第1レンズの物体側の面の構成]
光学系1の最も物体側の面である前群G1の第1レンズL1の物体側の面P1Aは、光軸Zと直交する平面で構成することが好ましい。これにより、たとえば、光学系1を搭載した撮像装置を床面、地面及び壁面等に設置する場合において、光学系の最も物体側の面を設置面に合わせて設置できる。すなわち、段差なくフラットな状態(いわゆる面一の状態)で設置できる。
【0040】
一方、用途によっては、完全な平面で構成しなくてもよい場合もある。たとえば、上記監視カメラの場合、光学系1の最も物体側の面が曲面で構成されていても支障がない場合もある。したがって、そのような用途に用いる光学系においては、前群G1の第1レンズL1の物体側の面P1Aを曲面で構成することもできる。ただし、この場合もより平面に近い形状であることが好ましい。たとえば、曲面で構成する場合は、緩やかな曲面とすることが好ましい。なお、ここでの曲面には、球面の一部を構成する曲面の他、いわゆる非球面が含まれる。
【0041】
図3は、光学系の変形例を示す断面図である。同図は、最も物体側の面を曲面で構成する場合の一例を示している。
【0042】
同図に示すように、本例の光学系1では、最も物体側の面である前群G1の第1レンズL1の物体側の面P1Aを曲面で構成している。より具体的には、光軸Zを中心として外側(物体側)に凸をなす曲面形状で構成している。
【0043】
このように、第1レンズL1の物体側の面P1Aを曲面、すなわち、パワーを有する面で構成することもできる。これにより、設計の自由度を向上できる。
【0044】
なお、この場合もより平面に近い形状の曲面(ほぼ平面と認められる形状の曲面)であることが好ましい。すなわち、緩やかな曲面であることが好ましい。たとえば、第1レンズL1の直径の10倍以上の曲率半径を有する曲面で構成することが好ましい。これにより、第1レンズL1の物体側の面P1Aを平面に近い状態で構成できる。すなわち、ほぼ出っ張りのない構成を実現できる。
【0045】
また、たとえば、床面に設置される撮像装置等においては、前群G1の第1レンズL1の物体側の面P1Aを凸曲面で構成することが好ましい。これにより、水、塵埃等が第1レンズL1の物体側の面P1Aに溜まるのを防止できる。
【0046】
[前群の第1レンズの像側の面の構成]
上記実施の形態の光学系1では、前群G1の第1レンズL1の像側の面P1Bを光軸Zと直交する平面で構成している。第1レンズL1の像側の面P1Bの形状は、これに限定されるものではない。周辺領域A2において、第2レンズL2と接合できる形状であればよい。すなわち、第1レンズL1の像側の面P1Bは、少なくとも第2レンズL2に接合される領域において、第2レンズL2の接合面の形状に対応する形状であればよい。第2レンズL2の接合面は、第2レンズL2の物体側の面P2Aに備えられた第1透過面P2A2で構成される。したがって、第1レンズL1の像側の面P1Bは、少なくとも第2レンズL2に接合される領域が、第1透過面P2A2に対応する形状を有していればよい。第2レンズL2に接合される領域が、第1透過面P2A2に対応する領域に相当する。
【0047】
なお、第1レンズL1の像側の面P1Bの形状と第2レンズL2の物体側の面P2Aの形状は、完全に対応させてもよい。すなわち、第2レンズL2の物体側の面P2Aの全面が、第1レンズL1の像側の面P1Bに当接するように、第1レンズL1の像側の面P1Bを構成してもよい。この場合、第1レンズL1の像側の面P1Bの中央部分に、第1反射面P2A1の形状に対応した形状の凸曲面部が備えられる。
【0048】
上記実施の形態の光学系1では、第1透過面P2A2を光軸Zと直交する平面で構成しているが、第1透過面P2A2は曲面で構成することもできる。第1透過面P2A2を曲面で構成した場合、第1レンズL1の像側の面P1Bは、少なくとも第2レンズL2に接合される領域が、第1透過面P2A2の曲面と同じ曲率の曲面で構成される。これにより、空気間隔を持たせずに、第1レンズL1と第2レンズL2とを当接させることができる。
【0049】
なお、上記実施の形態の光学系1のように、第1レンズL1の物体側の面P1Bを平面で構成することにより、容易に製造できる。
【0050】
また、上記実施の形態の光学系1では、第1レンズL1及び第2レンズL2を接着剤で接着して一体化する構成としているが、第1レンズL1及び第2レンズL2は、接着剤で接着して一体化する必要はない。第2レンズL2の第1透過面P2A2が、第1レンズL1の像側の面P1Bに空気間隔を持たずに当接される構成であればよい。
【0051】
なお、一体化する場合は、接着剤で接着する他、オプティカルコンタクト等の公知の手法を用いることができる。
【0052】
第1レンズL1及び第2レンズL2を接合により一体化した場合には、第2レンズL2の第1反射面P2A1を保護できる。すなわち、第1反射面P2A1が外気に触れて、腐食等するのを防止できる。
【0053】
[後群]
上記のように、光学系1は、後群G2によって諸収差が補正される。また、後群G2によってフォーカシングが行われる。
【0054】
ところで、光学系1の最も物体側の面を平面乃至平面に近い形状とすると、画角の非常に高い領域での光量を確保するために、前群G1が、像面に比べて非常に大きな径となる。
【0055】
しかし、本実施の形態の光学系1は、前群G1において、反射面を使用することで、後群G2を小型化できる。すなわち、その有効径を小さくできる。この場合、後群の有効径は、前群G1の第1レンズL1の前面の有効径に対し、0.25倍以下とすることが好ましい。これにより、光学系1の全体を小型かつ軽量化できる。また、低コスト化を実現できる。
【0056】
[材質]
光学系1を構成する各レンズの材質については、特に限定されず、公知の素材を用いることができる。たとえば、光学ガラス(たとえば、屈折率1.4~2.0の通常の光学ガラス)を用いることができる。
【0057】
なお、前群G1については、全反射を防止する観点から、第2レンズL2を第1レンズL1と同じ屈折率、若しくは、第1レンズ以上の屈折率とすることが好ましい。
【0058】
[画角]
上記のように、本発明の光学系は、第1レンズの物体側の面が、ほとんどパワーを持たない場合であっても、非常に広い画角を実現できる。実現する画角としては、好ましくは、110°以上、より好ましくは160°以上である。特に、床面又は地面に設置して使用される撮像装置の光学系に適用する場合には、可能な限り広角であることが好ましい。
【0059】
図4は、画角と観察可能な高さとの関係を示す図である。
【0060】
同図において、符号Gで示す直線は、床面を示している。また、符号Oで示す点は、光学系の設置位置を示している。光学系は、最も物体側の面、すなわち、前群の第1レンズの物体側の面を床面の高さに合わせて設置される。また、符号φは、画角(最大画角)を示している。
【0061】
図4において、斜線で示す領域が観察可能な範囲である。
【0062】
光学系の設置位置Oから距離x離れた位置にある点をAとする。点Bは、点Aにおいて、画角の端に位置し、観察可能な範囲の境界を示す点である。
【0063】
図4に示すように、点Aでは、高さy未満の領域は観察できない。線分OA及び線分OBがなす角度をθとする。yは、y=x×tanθにより求められる。また、θは、θ=(180-φ)/2で求められる。
【0064】
図5は、画角と観察可能な高さの関係を示す表である。同図は、距離xを2m及び5mとした場合の例を示している。
【0065】
図5に示すように、画角φ及び距離xによって観察可能な高さyは変わる。観察対象とする高さy、及び、その距離xが定まれば、要求される画角φが定まる。
【0066】
高さ1m以上の範囲を観察する場合を考える。この場合、y<0.9mとなることを条件とすると、x=2mの場合に要求される画角φは、
図5から135°となる。また、x=5mの場合に要求される画角φは、
図5から160°となる。
【0067】
人物を対象とした観察であれば、1mの高さが確保されていれば、十分な観察能力を確保できる。
【0068】
また、通路の中央に撮像装置を設置することを想定すると、160°の画角を備えていれば、幅10mの通路において、端を通行する人物を十分に観察できる。
【0069】
また、人物を対象とする観察以外においても、たとえば、倉庫などで棚に置かれた物品を観察する場合、160°の画角を備えていれば、幅10mの通路において、端にある棚の1m以上の物品を観察できる。また、ロボットによって自動化された倉庫などで、ロボットの高さが1mであれば、そのロボットの観察も可能になる。更に狭い通路であれば、更に低い位置まで観察が可能になる。
【0070】
[撮像装置]
監視、観察を目的とする場合、設置及び点検等の際のアクセスのしやすさを考慮すると、床面又は地面に撮像装置を設置することも視野に入る。この場合、光学系が、広画角であることに加えて、第1面、すなわち、最も物体側の面が平面であることが要求される。最も物体側の面が、大きく突出していると、往来の邪魔となるからである。
【0071】
上記のように、本発明の光学系は、最も物体側の面を平面乃至平面に近い形状としつつ、非常に広い画角(160°以上の画角)を実現できる。したがって、本発明の光学系を使用することで、床面及び地面等に設置して使用するのに好適な撮像装置を提供できる。
【0072】
[撮像装置の構成]
図6は、撮像装置の一実施形態を示す断面図である。
【0073】
本実施の形態の撮像装置10は、主に床面及び地面等に設置して使用することを目的とした撮像装置である。このため、光学系1の第1面が鉛直上方に向けられている。すなわち、光学系1の第1面が、鉛直上方に向く姿勢が、主な設置の際の姿勢となる。
【0074】
図6に示すように、撮像装置10は、光学系1を収容する鏡筒12に撮像素子14等が収容された構成を有する。光学系1の構成は、上記実施の形態で説明したものと同じである。したがって、その詳細についての説明は省略する。
【0075】
上記のように、本実施の形態の撮像装置10では、鏡筒12に撮像素子14等が収容される。したがって、鏡筒12は、撮像装置10のハウジングとしても機能する。鏡筒12は、鏡筒本体16と、裏蓋18と、を有する。鏡筒本体16は、円筒形状を有する。鏡筒本体16は、基端部(
図6において下側の端部)が開口部として構成される。裏蓋18は、鏡筒本体16の基端部に取り付けられて、鏡筒本体16の開口部を閉塞する。裏蓋18は、複数個所を固定用ネジ20でネジ止されて、鏡筒本体16に着脱可能に取り付けられる。
【0076】
光学系1は、前群G1及び後群G2が分離されて鏡筒12内に配置される。前群G1は、前群保持枠22に保持されて、鏡筒12内に配置される。後群G2は、後群保持枠24に保持されて、鏡筒12内に配置される。
【0077】
前群保持枠22は、その基端部側の外周に雄ネジ部26を有する。一方、鏡筒本体16は、先端側(
図6において上端)の内周部に雌ネジ部28を有する。
【0078】
また、前群保持枠22は、その先端の外周にフランジ部30を有する。一方、鏡筒本体16は、先端に嵌合部32を有する。嵌合部32は、フランジ部30に対応した形状を有し、フランジ部30が嵌合可能に構成される。
【0079】
前群保持枠22は、その外周に備えられた雄ネジ部26を鏡筒本体16に備えられた雌ネジ部28に締結させることにより、鏡筒本体16に取り付けられる。取り付けの際、前群保持枠22は、そのフランジ部30の基端部側の端面(
図6において下側の端面)を嵌合部32の底面(
図6において下側の端面)に当接させる。これにより、鏡筒本体16に対し、前群保持枠22が所定位置に位置決めされる。この状態において、
図6に示すように、鏡筒本体16の先端側の端面(
図6において上側の端面)と、第1レンズL1の物体側の面とが、同一面上に位置する。すなわち、いわゆる面一の状態となる。
【0080】
なお、上記のように、前群保持枠22は、ネジを利用して鏡筒本体16に取り付けられるため、鏡筒本体16に対し、着脱可能な構造を有する。
【0081】
前群保持枠22は、更に、フランジ部30の外周に複数の溝部34を有する。各溝部34には、Oリング36が装着される。Oリング36は、シール部材の一例である。前群保持枠22を鏡筒本体16に取り付けると、Oリング36が、潰れながら嵌合部32の内周面に当接する。これにより、鏡筒本体16の内周と前群保持枠22の外周との間に生じる隙間がシールされる。
【0082】
後群保持枠24は、鏡筒内を光軸に沿って移動自在に保持される。鏡筒本体16内には、光軸に沿ってガイドシャフト38及びネジ棒40が配置される。ネジ棒40には、フォーカスモータ42が接続される。ネジ棒40は、フォーカスモータ42に駆動されて回転する。後群保持枠24には、摺動部44及びナット部46が備えられる。後群保持枠24は、摺動部44を介して、ガイドシャフト38に摺動自在に支持される。また、後群保持枠24は、ナット部46を介して、ネジ棒40に接続される。フォーカスモータ42によってネジ棒40を回転させると、ナット部46がネジ棒40に沿って移動する。これにより、後群保持枠24が光軸に沿って移動する。後群保持枠24が光軸に沿って移動することにより、後群G2が光軸に沿って移動する。これにより、焦点調節が行われる。
【0083】
撮像素子14は、光軸上に配置され、光学系1を通過する光を受光する。撮像素子14は、たとえば、所定のカラーフィルタ配列(たとえば、ベイヤ配列等)を有するCMOSイメージセンサ(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCDイメージセンサ(CCD:Charged Coupled Device)等が用いられる。
【0084】
図7は、撮像装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0085】
本実施の形態の撮像装置10は、撮像した画像を外部の画像受信端末100に送信する構成を有する。撮像装置10に対する各種操作も画像受信端末100を介して行われる。
【0086】
図7に示すように、撮像装置10は、主として、撮像部50、フォーカス駆動部52、絞り駆動部54、通信部56、電源部58、制御部60及び記憶部62を備えて構成される。
【0087】
撮像部50は、光学系1を介して、画像を撮像する。撮像部50は、撮像素子14を含む。
【0088】
フォーカス駆動部52は、光学系1の後群G2を駆動する。すなわち、後群G2を光軸に沿って移動させる。フォーカス駆動部52は、フォーカスモータ42及びその駆動回路を含む。
【0089】
絞り駆動部54は、光学系の絞りSPを駆動する。絞りSPは、たとえば、虹彩絞りで構成される。絞り駆動部54は、絞りSPを駆動するモータ及びその駆動回路を含む。
【0090】
通信部56は、外部の画像受信端末100と通信する。本実施の形態では、通信は、無線で行われる。通信規格は、特に限定されない。公知の通信規格が用いられる。また、通信には、公衆回線網、インターネット等を介した通信が含まれる。通信部56は、アンテナ及び通信回路を含む。
【0091】
電源部58は、撮像装置10の各部に電力を供給する。電源部58は、電源及び電源回路を含む。電源は、たとえば、バッテリで構成される。
【0092】
制御部60は、全体の制御及び画像処理等を行う。制御部60が行う制御には、露出制御、フォーカス制御、及び、ホワイトバランス制御等が含まれる。露出制御、フォーカス制御、及び、ホワイトバランス制御等については公知の技術であるので、その詳細についての説明は省略する。また、制御部60が行う画像処理には、出力用の画像データを生成する処理が含まれる。すなわち、画像受信端末100に出力する画像データを生成する処理が含まれる。制御部60は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される。すなわち、制御部60は、プロセッサが、所定の制御プログラムを実行することで実現される。
【0093】
記憶部62は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を含む。RAMは、プロセッサの作業領域等として使用される。ROMには、プロセッサが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ等が記憶される。EEPROMには、各種設定データ等が記憶される。
【0094】
画像受信端末100は、通信装置、入力装置、記憶装置及び出力装置等を備えたコンピュータで構成される。コンピュータには、パーソナルコンピュータ、ワークステーション等の他にタブレットコンピュータ、スマートフォン等が含まれる。出力装置は、たとえば、ディスプレイで構成される。記憶装置は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。撮像装置10から送信された画像データは、通信装置を介して受信され、出力装置に出力される(ディスプレイに表示される。)。また、必要に応じて、記憶装置に記憶される。
【0095】
撮像装置10における電気的構成要素(たとえば、バッテリ、アンテナ、回路基板等)は、鏡筒12内の空きスペースに配置される。本実施の形態の撮像装置10は、
図6に示すように、光学系1の後群G2が前群G1に比して小さいことから、後群G2の周囲に空きスペース48が形成される。したがって、電気的構成要素は、この空きスペース48に配置される。電気的構成要素は、撮像に関わる機器の一例である。
【0096】
【0097】
同図は、床面(又は地面)に設置する場合の例を示している。同図に示すように、撮像装置10は、鏡筒本体16が床(又は地中)に埋設され、光学系1の第1面が、床面200と同一面上(ほぼ同一と認められる範囲を含む)に位置するように設置される。すなわち、前群G1の第1レンズL1の物体側の面P1Aが、床面200と同一面上に位置するように配置される。
【0098】
このように、撮像装置10は、光学系1の第1面が、床面200と同一面上に位置するように設置され、光学系1の第1面が床面200の一部を構成する。第1面は、平面乃至平面に近い形状であるため、往来の障害になることがない。
【0099】
同図において、斜線で示す範囲が、撮像装置10で撮像される範囲である。最小画角φminと最大画角φmaxとの間の範囲が、撮影範囲(視野)として構成される。最小画角φminよりも内側の範囲は、撮像できない範囲である。したがって、本実施の形態の撮像装置10で撮像される画像は、円環状の画像となる(
図10参照)。
【0100】
【0101】
同図は、複数の撮像装置10を用いて倉庫内を監視又は観察する場合の例を示している。同図において、符号210は棚である。また、符号212は通路である。
【0102】
図9に示すように、撮像装置10は、たとえば、通路212の中央に設置され、かつ、通路212に沿って一定の間隔で設置される。設置間隔は、たとえば、通路212の幅と同じである。したがって、たとえば、通路212の幅が3mの場合、3m間隔で撮像装置10が通路212に沿って配置される。
【0103】
上記のように、撮像装置10に要求される画角は、監視又は観察対象とする距離と高さによって定まる。たとえば、幅が3mの通路において、通路の中央に3m間隔で撮像装置10を設置した場合、撮像装置10から最も離れた場所の距離は2.1mである。撮像装置10から最も離れた場所において、必要とする高さ以上の範囲を撮像できる画角を有していればよい。たとえば、1m以上の高さを観察する場合、
図5の表から130°の画角を有していれば、高さ1m以上の領域を満遍なく監視又は観察できる。更に、広い画角を有していれば、更に低い位置の観察も可能になる。たとえば、160°の画角を有していれば、2m離れた場所では、0.35m以上の高さの物を監視又は観察可能となる。また、更に離れた位置においても、1m以上の領域の観察が可能になる。
【0104】
[撮像装置の変形例等]
[撮像画像の補正]
図10は、撮像により得られる画像の一例を示す図である。
【0105】
本実施の形態の撮像装置10では、光軸を中心とした、周囲360°の範囲が円環状に撮像される。したがって、撮像により得られる画像は、
図10に示すように、円環状の画像Im1となる。しかし、円環状の画像は、視認性の面で問題となる。そこで、画像処理を施し、歪みのない画像に補正する。
【0106】
図11は、歪みを補正する処理を施した画像の一例を示す図である。
【0107】
撮像により得られた画像に対し、光学系1によって生じる歪みを補正する処理を行う。補正後に得られる画像Im2は、
図11に示すように、いわゆるパノラマ画像となる。
【0108】
このように、光学系1によって生じる歪みを補正する処理を行うことで、視認性を向上でき、監視及び観察等を目的とした用途での利便性を向上できる。
【0109】
なお、画像処理は、撮像装置側で行う構成としてもよいし、画像の受信先(たとえば、画像受信端末)で行う構成としてもよい。撮像装置側で行う場合は、制御部60が画像処理を行う。この場合、画像処理後の画像、すなわち、歪みが補正された画像が、撮像装置から出力される。
【0110】
[画像の出力]
撮像装置10は、撮像により得られた画像の一部を切り出して出力する構成としてもよい。すなわち、トリミングして出力する構成としてもよい。
【0111】
図12は、撮像された画像の一部を切り出して出力する場合の概念図である。
【0112】
同図は、撮像により得られた画像Im1から2つの領域を切り出して出力する場合の例を示している。符号Im3、Im4は、出力される画像の一例を示している。同図においては、光学系1によって生じる歪みを補正する処理を行って画像Im3、Im4を出力している。切り出しの処理は、制御部60が行う。
【0113】
なお、このように、撮像により得られる画像の一部を切り出して出力する場合は、切り出す範囲を任意に指定できるようにすることが好ましい。切り出す範囲の指定は、たとえば、画像受信端末で行う。この他、画像を周方向に等分割(たとえば、4等分割)し、各々の画像を個別に出力する構成とすることもできる。なお、この場合も必要に応じて歪みを補正して出力することが好ましい。
【0114】
[光学系の保持構造]
上記実施の形態では、光学系1の前群G1及び後群G2を分離し、各々を個別に保持する構成としているが、同一の枠体に対し、一体的に保持する構成としてもよい。
【0115】
上記実施の形態のように、前群G1及び後群G2を各々個別に保持する構成とすることにより、たとえば、一方が破損等した場合に、破損した要素のみを交換できる。これにより、装置の維持及び管理を容易にできる。特に、床面及び地面等に設置される撮像装置においては、前群G1が、傷ついたり、汚れたりしやすくなるため、前群G1のみを独立して着脱できる構成とすることにより、装置の維持及び管理を容易にできる。
【0116】
なお、上記実施の形態では、前群保持枠22に備えられた雄ネジ部26と鏡筒本体16に備えられた雌ネジ部28とを利用して、前群保持枠22を鏡筒本体16に対し着脱自在に保持する構造としている。前群保持枠22を鏡筒本体16に対し、着脱自在に保持する構造は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、前群保持枠22のフランジ部30の複数個所をネジでネジ止め等して、前群保持枠22を鏡筒本体16に着脱可能に取り付ける構成としてもよい。
【0117】
また、上記実施の形態では、前群保持枠22と鏡筒本体16との間をOリング36でシールする構成としているが、前群保持枠22と鏡筒本体16との間をシールする構造は、これに限定されるものではない。ゴム等の伸縮性を有する材料を介在させて、シールする構成とすることができる。
【0118】
また、上記実施の形態では、前群保持枠22と鏡筒本体16との間のみをシールする構成としているが、前群G1と前群保持枠22との間も同様にシールする構成としてもよい。
【0119】
図13は、シール構造の他の一例を示す断面図である。
【0120】
同図に示す例では、前群G1の第1レンズL1の外周と前群保持枠22の内周との間に環状の第1のシール部材72を配置し、かつ、前群保持枠22のフランジ部30の外周と鏡筒本体16の内周との間に環状の第2のシール部材74を配置している。各シール部材は、ゴム等の伸縮する材料で構成される。前群G1の第1レンズL1と前群保持枠22との間の隙間は、第1のシール部材72でシールされる。また、前群保持枠22と鏡筒本体16との間の隙間は、第2のシール部材74でシールされる。これにより、温度変化などによる伸縮によって、鏡筒内に異物が入るのを防止できる。
【0121】
なお、
図13に示す例では、光学系1の最も物体側の面、すなわち、前群G1の第1レンズL1の物体側の面P1Aを物体側に凸となる緩やかな曲面で構成している。同図に示すように、緩やかな曲面であれば、往来に支障をきたすことがないので、光学系1の最も物体側の面を曲面で構成することもできる。往来に支障をきたすことがない曲面の範囲は、たとえば、第1レンズL1の直径の10倍以上の曲率半径となる範囲である。すなわち、ほぼ平面と認められる範囲である。
【0122】
[フォーカス機構]
上記実施の形態の撮像装置では、後群G2をフォーカスモータ42で駆動する構成としているが、手動で焦点合わせする構成としてもよい。また、固定焦点とし、パンフォーカスで撮像する構成としてもよい。
【0123】
[絞り機構]
上記実施の形態の撮像装置では、絞りSPとして、虹彩絞りを採用する場合を例に説明したが、絞りの形式については、特に限定されるものではない。公知の絞りを採用できる。また、絞りSPは、固定絞りで構成することもできる。
【0124】
[画像出力]
上記実施の形態の撮像装置では、撮像された画像を無線で外部に送信する構成としているが、有線で送信する構成とすることもできる。また、撮像装置に記録機能を備えてもよい。この場合、撮像装置に記憶装置(たとえば、HDD、SSD、フラッシュメモリ等)が備えられる。
【0125】
[電源]
上記実施の形態の撮像装置では、撮像装置にバッテリを内蔵する構成としているが、外部電源から電力の供給を受ける構成としてもよい。
【0126】
[撮像装置の構成]
上記実施の形態の撮像装置では、撮像に関わる凡そすべての機器が鏡筒内に収容される構成としているが、一部を鏡筒外に配置する構成としてもよい。たとえば、バッテリを鏡筒外に配置する構成としてもよい。
【0127】
[制御部のハードウェア構成]
制御部60のハードウェア的な構造は、各種のプロセッサ(Processor)で実現される。各種のプロセッサには、プログラムを実行して各種処理を行う汎用的なプロセッサであるCPU及び/又はGPU(Graphic Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device,PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。プログラムは、ソフトウェアと同義である。
【0128】
制御部60は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。たとえば、制御部60は、複数のFPGA、或いは、CPUとFPGAの組み合わせによって構成されてもよい。また、制御部60の複数の機能を1つのプロセッサで実現する構成してもよい。複数の機能を1つのプロセッサで実現する例としては、第1に、クライアントやサーバなどに用いられるコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の機能を実現する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip,SoC)などに代表されるように、システム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、制御部60は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0129】
[撮像装置]
上記実施の形態では、床面及び地面等に設置する撮像装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。ただし、光学系の最も物体側の面が平面又は平面に近い形状であることから、平面(ほぼ平面を含む)に埋設して使用する構成の撮像装置に適用することで、有効に作用する。したがって、たとえば、壁面に埋設して使用される撮像装置に適用した場合も有効に作用する。この他、机等に埋設して使用する撮像装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0130】
1 光学系
10 撮像装置
12 鏡筒
14 撮像素子
16 鏡筒本体
18 裏蓋
20 固定用ネジ
22 前群保持枠
24 後群保持枠
26 雄ネジ部
28 雌ネジ部
30 フランジ部
32 嵌合部
34 溝部
36 Oリング
38 ガイドシャフト
40 ネジ棒
42 フォーカスモータ
44 摺動部
46 ナット部
48 鏡筒内の空きスペース
50 撮像部
52 フォーカス駆動部
54 絞り駆動部
56 通信部
58 電源部
60 制御部
62 記憶部
72 第1のシール部材
74 第2のシール部材
100 画像受信端末
200 床面
212 通路
A1 第2レンズの物体側の面の中央領域
A2 第2レンズの物体側の面の周辺領域
B1 第2レンズの像側の面の中央領域
B2 第2レンズの像側の面の周辺領域
FL1 最大画角の光束光束
FL2 最小画角の光束
FL3 中間画角の光束
FL4 中間画角の光束
G1 前群
G2 後群
Im1 撮像により得られる画像
Im2 補正後の画像
Im3 補正後の画像
Im4 補正後の画像
L1 前群の第1レンズ
L2 前群の第2レンズ
P1A 第1レンズの物体側の面
P1B 第1レンズの像側の面
P2A 第2レンズの物体側の面
P2A1 第1反射面(第2レンズの物体側の面に備えられる反射面)
P2A2 第1透過面(第2レンズの物体側の面に備えられる透過面)
P2B 第2レンズの像側の面
P2B1 第2透過面(第2レンズの像側の面に備えられる透過面)
P2B2 第2反射面(第2レンズの像側の面に備えられる反射面)
SP 絞り
Z 光軸
φ 画角
φmax 最大画角
φmin 最小画角