(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128855
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】離型フィルムロール
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220829BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20220829BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B32B27/00 L
C08G18/62
C08L23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027303
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 啓生
(72)【発明者】
【氏名】林崎 恵一
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4F100AH03A
4F100AH04C
4F100AH05C
4F100AK01C
4F100AK21C
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK42B
4F100AK62A
4F100AL05A
4F100AL05C
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
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4F100CA22C
4F100DD07A
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4F100GB41
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4F100JG03C
4F100JL14A
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4F100YY00C
4J002BB151
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4J002GF00
4J034BA03
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4J034HC03
4J034HC22
4J034HC35
4J034JA02
4J034KA01
4J034KB02
4J034KE02
4J034MA22
4J034QB19
4J034QC08
4J034RA05
(57)【要約】
【課題】高平滑でありながら、それでいて、ブロッキングの発生が極力少なく、離型性及び帯電防止性が良好であり、各種粘着層保護用に好適な離型フィルムロールを提供する。
【解決手段】離型層、基材フィルム及び帯電防止層をこの順に有する構成であり、前記離型層が、(A)エチレン単位を50~80質量%含む非反応性ポリオレフィン、(B)反応性ポリオレフィン及び(C)架橋剤を含む離型層組成物の硬化層であり、前記(C)架橋剤が、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する脂肪族イソシアネートであり、前記離型層表面の表面粗さ(Sa)が20nm以下であり、前記帯電防止層が(D)長鎖アルキル基を有する離型剤又はフッ素系離型剤及び(E)帯電防止剤を含む帯電防止層組成物の硬化層である、離型フィルムロール。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型層、基材フィルム及び帯電防止層をこの順に有する構成であり、
前記離型層が、(A)エチレン単位を50~80質量%含む非反応性ポリオレフィン、(B)反応性ポリオレフィン及び(C)架橋剤を含む離型層組成物の硬化層であり、
前記(C)架橋剤が、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する脂肪族イソシアネートであり、
前記離型層表面の表面粗さ(Sa)が20nm以下であり、
前記帯電防止層が(D)長鎖アルキル基を有する離型剤又はフッ素系離型剤及び(E)帯電防止剤を含む帯電防止層組成物の硬化層である、
離型フィルムロール。
【請求項2】
前記(B)反応性ポリオレフィンが、ポリオレフィンポリオールである、請求項1に記載の離型フィルムロール。
【請求項3】
前記(A)非反応性ポリオレフィンが、エチレンとα-オレフィンの共重合体である、請求項1又は2に記載の離型フィルムロール。
【請求項4】
前記(D)長鎖アルキル基を有する離型剤が、炭素数6以上の長鎖アルキル基を有する離型剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【請求項5】
前記(D)長鎖アルキル基を有する離型剤が、炭素数8以上の長鎖アルキル基を有する離型剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【請求項6】
前記(D)長鎖アルキル基を有する離型剤が、炭素数8以上の長鎖アルキル基を有し、かつポリビニルアルコールを共重合成分として有する離型剤である、請求項5に記載の離型フィルムロール。
【請求項7】
前記(E)帯電防止剤が、チオフェン又はチオフェン誘導体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【請求項8】
前記帯電防止層が、更に(F)バインダーを含む帯電防止層組成物の硬化層である、請求項1~7のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【請求項9】
前記基材フィルム表面の表面粗さ(Sa)が20nm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【請求項10】
前記基材フィルムが、ポリエステルフィルムである、請求項1~9のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【請求項11】
前記離型層と前記帯電防止層とを対向するように配置し、圧力10kg/cm2、40℃、80%RHの雰囲気下、20時間加圧後の、引張速度300mm/分、180°剥離の条件下における剥離力が120gf/125mm幅以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【請求項12】
粘着層保護用である、請求項1~11のいずれか1項に記載の離型フィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
工業材料、光学材料、電子部品材料、電池用包装材など様々な分野で、基材フィルムの少なくとも片面に離型層を設けた離型フィルムが使用されている。離型フィルムの基材フィルムとしては、ポリエステルフィルムとして代表的なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、特に2軸延伸PETフィルムが、透明性、機械強度、耐熱性、柔軟性などに優れることから広く使用されている。
【0003】
一方、光学材料等に用いる粘着層においては、反射特性等の光学特性を重視する用途においては、特に高平滑な表面を有する粘着層が必要とされる場合がある。そのような粘着層に対応可能な離型フィルムとして、離型層表面を高平滑にした離型フィルムロールを用いた場合、離型フィルムがブロッキングし易い傾向にあった。
そのため、ブロッキング対策として、離型フィルムの離型層とは反対側の面にブロッキング防止を目的とした機能層を設けるなど、各種提案がなされている。
離型フィルムは、粘着面あるいは接着面を保護するものとして広く使用されている。離型フィルムの離型面を構成する素材として最も一般的に使用されてきたのは、シロキサン単位を含有するシリコーン系ポリマーであった。ところが、シリコーン系ポリマーにはシロキサン系低分子化合物が内在するため、電子部材等の精密用途に適用された場合、これが揮散して空気中で酸化されたものが電子部材等に固着しトラブルを生じる場合があった。このため、シロキサン系低分子化合物を含まず、かつ、シリコーン系ポリマーを離型層に用いた離型フィルムと同等の離型性を有するフィルムが求められていた。例えば、ハードディスク装置は、著しい勢いで高性能化、高密度化が進んでおり、今後もこのような高性能化、高密度化は、更に進行するものと考えられる。そして、ハードディスク装置の高性能化、高密度化が更に進むと、前述したような微小なシロキサン系低分子化合物類の堆積が、ハードディスクの読み込みや書き込みに悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。
【0004】
珪素もハロゲン元素も含まない離型層の例として、ポリオレフィンあるいは長鎖アルキル含有ポリマー等を用いた離型層が以前より知られている。これらの離型層は、粘着剤等の被着体から離型フィルムを剥離させた際に剥離帯電が発生する場合があり、その結果、電子部品等の製造工程において、異物等の付着あるいは巻きこみによる不具合のみならず、静電気障害によって近傍の電子素子が損層を受け製品不良が発生する等の深刻な不具合が発生する場合があった。そのため、製造工程における設備対応による帯電防止対策だけでは必ずしも十分ではなく、離型フィルム自体の帯電防止処理が強く望まれる状況である。
【0005】
ポリオレフィンを用いて軽剥離を達成した例として、特許文献1~5が挙げられる。このうち特許文献1はポリオレフィンと基材フィルムの密着性が十分でなく、粘着剤と離型層を剥離する際に離型層が粘着剤へ脱離する問題があった。また、ポリオレフィンは、剥離性が良好であるものの耐熱性が高くないことから、加熱剥離力が重いという問題があった。特許文献2~5はポリオレフィンを有機溶剤に溶解し、更にポリオレフィンポリオールとイソシアネート系架橋剤を混合して塗布・乾燥することでポリオレフィンと基材との密着性を改良及び耐熱性の改善をしているが、ともに十分とは言えない。
【0006】
また、帯電防止層を設けた例として、特許文献6~9が挙げられる。特許文献6ではポリオレフィンと帯電防止剤を混合した離型層を設けることが提案されているが、帯電防止剤を混合することにより、剥離力が重くなることを避けることができない。特許文献7では基材と離型層の間に帯電防止層を設けることが提案されているが、離型層がポリオレフィンであり、加熱剥離力が大きくなるという問題点があった。特許文献8は特許文献7と同様に、基材と離型層の間に帯電防止層を設け、離型層に酸変性ポリオレフィンを用いており、加熱剥離力や塗膜の密着性の改善が図られているが、剥離力が未変性のポリオレフィンと比較して重くなってしまう問題があった。特許文献9では、基材とシリコーン離型層の間に紫外線照射で硬化させた帯電防止層を設けることでシリコーンの硬化阻害を防止し、剥離力が軽く、帯電防止性のある離型フィルムが提案されているが、帯電防止層が紫外線照射を必要とするため、基材の製膜時にインラインでのコーティングが困難であったり、紫外線照射設備が必要であったりと生産性が良くない。また、離型層がシリコーンであることからハードディスクをはじめとした電子部材用途には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-246697号公報
【特許文献2】特開2011-52207号公報
【特許文献3】特開2011-94096号公報
【特許文献4】特開2012-87210号公報
【特許文献5】特開2012-87211号公報
【特許文献6】特開平10-86289号公報
【特許文献7】国際公開第2009/069445号
【特許文献8】特開2009-101680号公報
【特許文献9】特開2005-153250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、離型フィルムロールにおいて、離型層の反対面側にシリコーン樹脂成分を含む機能層を設けた場合には、ブロッキングの発生が軽減される反面、裏面からのシリコーン成分の転着により、離型層表面の剥離力が低下する場合があった。また、機能層表面を適度に粗面化させた場合、ブロッキングの発生が軽減される反面、機能層表面の凹凸が離型層表面にそのまま形状転写する場合があった。
そのため、離型層表面が高平滑でありながら、それでいて、ブロッキングの発生が極力少なく、離型性、帯電防止性が共に良好であり、各種粘着層保護用に好適な離型フィルムロールが必要とされる状況にあった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に対して、高平滑でありながら、それでいて、ブロッキングの発生が極力少なく、離型性及び帯電防止性が良好であり、各種粘着層保護用に好適な離型フィルムロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定構成の離型フィルムロールを用いることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]を提供するものである。
[1] 離型層、基材フィルム及び帯電防止層をこの順に有する構成であり、前記離型層が、(A)エチレン単位を50~80質量%含む非反応性ポリオレフィン、(B)反応性ポリオレフィン及び(C)架橋剤を含む離型層組成物の硬化層であり、前記(C)架橋剤が、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する脂肪族イソシアネートであり、前記離型層表面の表面粗さ(Sa)が20nm以下であり、前記帯電防止層が(D)長鎖アルキル基を有する離型剤又はフッ素系離型剤及び(E)帯電防止剤を含む帯電防止層組成物の硬化層である、離型フィルムロール。
[2]前記(B)反応性ポリオレフィンが、ポリオレフィンポリオールである、[1]に記載の離型フィルムロール。
[3]前記(A)非反応性ポリオレフィンが、エチレンとα-オレフィンの共重合体である、[1]又は[2]に記載の離型フィルムロール。
[4]前記(D)長鎖アルキル基を有する離型剤が、炭素数6以上の長鎖アルキル基を有する離型剤である、[1]~[3の]いずれか1つに記載の離型フィルムロール。
[5]前記(D)長鎖アルキル基を有する離型剤が、炭素数8以上の長鎖アルキル基を有する離型剤である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の離型フィルムロール。
[6]前記(D)長鎖アルキル基を有する離型剤が、炭素数8以上の長鎖アルキル基を有し、かつポリビニルアルコールを共重合成分として有する離型剤である、[5]に記載の離型フィルムロール。
[7]前記(E)帯電防止剤が、チオフェン又はチオフェン誘導体である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の離型フィルムロール。
[8]前記帯電防止層が、更に(F)バインダーを含む帯電防止層組成物の硬化層である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の離型フィルムロール。
[9]前記基材フィルム表面の表面粗さ(Sa)が20nm以下である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の離型フィルムロール。
[10]前記基材フィルムが、ポリエステルフィルムである、[1]~[9]のいずれか1つに記載の離型フィルムロール。
[11]前記離型層と前記帯電防止層とを対向するように配置し、圧力10kg/cm2、40℃、80%RHの雰囲気下、20時間加圧後の、引張速度300mm/分、180°剥離の条件下における剥離力が120gf/125mm幅以下である、[1]~[10]のいずれか1つに記載の離型フィルムロール。
[12]粘着層保護用である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の離型フィルムロール。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、特定構成の離型層及び帯電防止層を基材フィルムに設けた離型フィルムロールを用いることにより、
離型層表面が高平滑でありながら、それでいて、ブロッキングの発生が極力少なく、離型性及び帯電防止性が良好であり、各種粘着層保護用に好適な離型フィルムロールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明の離型フィルムロールは、離型層、基材フィルム及び帯電防止層をこの順に有する構成であり、前記離型層が、(A)エチレン単位を50~80質量%含む非反応性ポリオレフィン、(B)反応性ポリオレフィン及び(C)架橋剤を含む離型層組成物の硬化層であり、
前記(C)架橋剤が、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する脂肪族イソシアネートであり、前記離型層表面の表面粗さ(Sa)が20nm以下であり、前記帯電防止層が(D)長鎖アルキル基を有する離型剤又はフッ素系離型剤及び(E)帯電防止剤を含む帯電防止層組成物の硬化層であることを特徴としている。
【0014】
以下、本発明の離型フィルムロールの実施形態の一例について説明する。ただし、本発明は次に説明する実施形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【0015】
<離型フィルムロール>
本発明の離型フィルムロールは、基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも一方の面に形成される離型層及び帯電防止層とを備える。以下、各部材についてより詳細に説明するが、まず離型フィルムロールを構成する各部材について、更に詳細に説明する。
【0016】
[基材フィルム]
離型フィルムロールを構成する基材フィルムは、フィルム状を呈するものであれば、その材料を特に限定するものではない。例えば、紙製、樹脂製、金属製などであってもよい。これらの中でも、機械的強度及び柔軟性の観点から、樹脂製であることが好ましい。
【0017】
樹脂製の基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの高分子を膜状に形成した樹脂フィルムを挙げることができる。また、フィルム化が可能であれば、これらの材料を混合したもの(ポリマーブレンド)や構成単位を複合化したもの(共重合体)であっても構わない。
【0018】
上記例示したフィルムの中でも、ポリエステルフィルムは、耐熱性、平面性、光学特性、強度などの物性が優れており、特に好ましい。上記ポリエステルフィルムは単層でも、性質の異なる2以上の層を有する多層フィルム(すなわち、積層フィルム)でもよい。ポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分樹脂とするフィルムである。
また、ポリエステルフィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであるのが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性の観点で、二軸延伸フィルムであるのがより好ましい。したがって、二軸延伸ポリエステルフィルムがより更に好ましい。
【0019】
上記ポリエステルフィルムの主成分樹脂であるポリエステルは、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。なお、主成分樹脂とは、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の中で最も質量割合の大きい樹脂の意味であり、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の50質量%以上、あるいは75質量%以上、あるいは90質量%以上、あるいは100質量%を占めればよい。
【0020】
上記ホモポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、テレフタル酸が好ましい。脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができ、エチレングリコールが好ましい。
代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等を例示することができる。
【0021】
一方、上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の一種又は二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種又は二種以上を挙げることができる。共重合ポリエステルは、ジカルボン酸がテレフタル酸を含み、グリコール成分がエチレングリコールを含み、かつ第三成分がこれら以外であることが好ましい。
中でも、本離型フィルムロールにおける基材としては、60モル%以上、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0022】
本発明の離型フィルムロールにおける基材フィルムには、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。更に、ポリエステルフィルムの場合には、ポリエステルの製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0023】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.1~3μmの範囲である。平均粒径を上記範囲で用いることにより、フィルムに適度な表面粗度を与え、良好な滑り性と平滑性が確保できる。
粒子を配合する場合、例えば、基材フィルムに表面層と、ベース層とを設けて、表面層に粒子を含有させることが好ましい。この場合、より好ましくは、粒子を含有する表面層、ベース層、及び粒子を含有する表面層をこの順に有する多層構造の基材フィルムとするとよい。
【0024】
更に、基材フィルム中の粒子の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.01~3質量%の範囲である。粒子の含有量を上記範囲内とすることで、基材フィルムの透明性を確保しつつ、基材フィルムに滑り性を付与しやすくなる。ただし、基材フィルムは、実質的に粒子を含有しなくてもよい。
なお、本明細書において「実質的に粒子を含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子質量濃度)がその部材や層(ここでは、基材フィルム)に対して、200ppm以下、より好ましくは150ppm以下のことを指す。以下で示す同様の用語も同様の意味である。
なお、基材フィルムに粒子が実質的に含有されない場合、あるいは含有量が少ない場合は、基材フィルムの透明性が高くなり外観が良好なフィルムが得られる。また、離型層に接する側の基材フィルム表面のみを特に高平滑にすることも可能である。一方で、離型フィルムロールの滑り性が不十分となる場合がある。そのため、そのような場合には、離型層あるいは、反対面の帯電防止層中に粒子を配合するなどすることで、滑り性を向上させたりしてもよい。
【0025】
基材フィルムの厚みは、好ましくは12~125μmであり、より好ましくは25~100μm、その中でも特に好ましくは25~75μmである。基材フィルムが上記範囲内であると、光学用途において好適に使用できる。
【0026】
(基材フィルムの積層構造)
基材フィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、ベース層Aと表面層B及び表面層Cから構成されるB/A/C及びベース層Aと表面層Bから構成されるB/A/Bの3層構造を採用することもできる。基材フィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、各層を構成する主成分樹脂は、上記の通りポリエステルが好ましい。
【0027】
上記B/A/C及び上記B/A/Bの3層構造において、表面層B及び表面層Cは、ハンドリング性を確保するために粒子を含有することが好ましい。
【0028】
また、上記B/A/C及びB/A/Bの3層構造において、表面層B及び表面層Cそれぞれは、粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する(いわゆる単分散性を有する)粒子を含有することが特に好ましい。
【0029】
表面層Bは、例えば平均粒径0.1~3μmの粒子を含有し、平均粒径0.1~0.5μmの粒子を含有することが好ましい。前記表面層Cは、例えば平均粒径0.1~3μmの粒子を含有し、また、平均粒径0.05~0.2μmの粒子を含有することが好ましく、0.05~0.1μmの粒子を含有することがより好ましい。
【0030】
なお、粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0031】
また、基材フィルムは、前記粒子を例えば900ppm以上の質量割合で含み、2000~10000ppmの質量割合で含むことが好ましく、中でも2500ppm以上9500ppm以下がより好ましく、その中でも3000ppm以上9000ppm以下の質量割合で含むことが更に好ましい。なお、ここでいう質量割合とは、各表面層における粒子の割合である。
【0032】
また、前記表面層Cは、前記粒子を900ppm以上6000ppm以下の質量割合で含むことがとりわけ好ましい。
前記表面層Cが、係る範囲で粒子を含むことでフィルムの取扱い性を良好とできる。
【0033】
また、前記表面層Bは、前記粒子を5000ppm未満の質量割合で含むことがとりわけ好ましく、前記粒子を2000ppm以上4000ppm以下の質量割合で含むことが最も好ましい。
【0034】
前記ベース層Aは、最も厚みの厚い主層として機能させることが好ましく、コストダウンするために、粒子を実質的に含まないか、あるいは、少なくとも表面層Bよりも低濃度で粒子を含むことが好ましい。
【0035】
(基材フィルムの表面粗さ(Sa))
本発明の基材フィルムの表面の表面粗さ(Sa)は好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、更に好ましくは10nm以下である。基材フィルムの表面粗さ(Sa)が20nm以下であることにより、表面がより平滑な離型層及び帯電防止層を得ることができる。また、基材フィルムの表面の表面粗さ(Sa)の下限については特に制限はされないが、通常は0.1nm以上である。なお、本明細書における表面粗さ(Sa)はISO 25178に準拠して測定される算術平均高さのことを指し、具体的には実施例に記載の方法により、測定することができる。
【0036】
<基材フィルムの製造方法>
(ポリエステルフィルム)
基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合、ポリエステルフィルムの製造方法としては、上述のポリエステル原料を乾燥したペレットを、押出機を用いてダイから溶融シートとして押し出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。このようにして、無延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0037】
(二軸延伸ポリエステルフィルム)
前記方法により得られた未延伸シートは次に二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3.0~6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は通常3.0~7倍、好ましくは3.5~6倍である。そして、引き続き180~270℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0038】
また、ポリエステルフィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向及び幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4~50倍、好ましくは7~35倍、更に好ましくは10~25倍である。そして、引き続き、170~250℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式及びリニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0039】
<離型層組成物>
(A)非反応性ポリオレフィン
非反応性ポリオレフィンとは、実質的に反応性を有さない非反応性ポリオレフィンである。より具体的には、イソシアネート基との反応性を有さない非反応性ポリオレフィンを意味する。非反応性ポリオレフィンは単独で使用しても、2種以上を用いてもよい。離型性と耐熱性の観点からは、ポリエチレン共重合体を用いることが好ましい。
【0040】
ポリエチレン共重合体を用いる場合は、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒等の遷移金属触媒を用いて合成されたものを使用することが好ましい。この中でも、メタロセン触媒を用いて合成されたものを使用すれば、離型性及び耐熱性に優れた離型フィルムロールを得ることができるという利点がある。
ポリエチレン共重合体としては、離型性及び耐熱性に優れた離型フィルムロールを得る観点から、具体的にはエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等のエチレンとα-オレフィンの共重合体を用いることが好ましく、エチレン-プロピレン共重合体を用いることがより好ましい。
【0041】
非反応性ポリオレフィンの密度は、特に限定されないが、0.92g/cm3以下であることが好ましく、0.90g/cm3以下であるのがより好ましい。また、非反応性ポリオレフィンの密度は通常、0.85g/cm3以上である。非反応性ポリオレフィンの密度が上記範囲であることで、離型性が良好となる傾向がある。
【0042】
非反応性ポリオレフィンに含まれるエチレン単位の含有量は50質量%以上、80質量%以下の範囲である。エチレン単位の含有量が80質量%を超えると塗工中にゲルが発生し、フィルターの昇圧、離型フィルムロールの外観の悪化の原因となり、生産性が低下する。またエチレン単位の含有量が50質量%を下回ると、十分な離型性が得られにくくなる。エチレン単位の含有量は、離型性に優れ、かつ、ゲルの発生しない離型層を形成する観点から60質量%以上、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以上、80質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明において、非反応性ポリオレフィンを一種のみ使用する場合、離型層形成時の塗膜強度の観点等から、非反応性ポリオレフィンは、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR(メルトフローレート)が100g/10分以下であるものが好ましく、MFRが70g/10分以下であるものがより好ましく、MFRが50g/10分以下であるものが更に一層好ましく、MFRが10g/10分以下であるものが特に好ましい。下限は特に限定されないが、通常0.2g/10分以上である。
【0044】
また、非反応性ポリオレフィンを2種以上使用する場合、そのうちの少なくとも1種類が230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが100g/10分以下であるものを用いることが好ましく、また、離型層中においてかかるMFRが100g/10分以下の非反応性ポリオレフィンの割合が10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。この条件を満たせば、他の非反応性ポリオレフィンとして230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが100g/10分を超えるものを使用してもよい。
【0045】
離型層中の非反応性ポリオレフィンの含有量は、好ましくは60~80質量%、より好ましくは70~80質量%である。含有量が50質量%未満の場合、剥離性が低下し、所望する軽剥離力が得られない。一方、80質量%を超える場合は、架橋構造をとりにくいことに由来して、十分な塗膜強度が得られない場合がある。
【0046】
(B)反応性ポリオレフィン
本発明において使用する反応性ポリオレフィンは脂肪族イソシアネートと反応して3次元網目を形成する。このような架橋反応を通して、離型層に耐熱性と耐薬品性を付与することができる。
【0047】
反応性ポリオレフィンは、脂肪族イソシアネートと反応し得る非反応性ポリオレフィンであれば限定されないが、具体的な例としては、溶融や溶液状態において官能基を有する化合物を用いて非反応性ポリオレフィンを変性したものや、触媒の存在下にエチレン等と反応性を有する化合物を共重合する等の手法によって得られるもの等を挙げることができる。反応性基としては特に限定されないが、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物等が挙げられるが、ヒドロキシ基を少なくとも分子中に平均して1個以上有する化合物が好ましい。
【0048】
低剥離力と基材に対する密着性を両立するためには、反応性ポリオレフィンに含まれる反応性官能基量は0.01~5質量%であることが好ましく、0.01~1質量%であることがより好ましい。反応性ポリオレフィンに5質量%を超えて反応性官能基が存在すると剥離力が増大する傾向がある。
また、剥離力の観点から、反応性ポリオレフィンの密度は、1.2g/cm3以下が好ましく、特に1.0g/cm3以下が好ましい。下限は特に限定されないが、通常、0.7g/cm3以上である。
【0049】
反応性ポリオレフィンの具体例として、エチレン-α-オレフィン共重合体のヒドロキシ(メタ)アクリレート変性物、ポリエチレンのヒドロキシ(メタ)アクリレート変性物、ポリプロピレンのヒドロキシ(メタ)アクリレート変性物、非反応性ポリオレフィンポリオール、エチレン-α-オレフィン共重合体のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート変性物、ポリエチレンのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート変性物、核水添スチレン-ジエン共重合体のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート変性物、ポリプロピレンのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート変性物、エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性物等が挙げられる。特に市販品を容易に入手できるためポリオレフィンポリオールが好ましい。
【0050】
反応性ポリオレフィンポリオールの具体例としては三菱ケミカル株式会社製「ポリテールH」(末端水酸化水添ポリブタジエン)、出光興産株式会社製「Poly bd R-45HT」(水酸基末端液状ポリブタジエン)、出光興産株式会社製「Poly ip」(水酸基末端液状ポリイソプレン)、出光興産株式会社製「エポール」(水酸基末端液状水添ポリイソプレン)、日本曹達株式会社製「GI-1000」(水酸基含有液状水添ポリブタジエン)、日本曹達株式会社製「GI-2000」(水酸基含有液状水添ポリブタジエン)、日本曹達株式会社製「GI-3000」(水酸基含有液状水添ポリブタジエン)等が挙げられる。
【0051】
反応性ポリオレフィンは分子中に異なる官能基を有していてもよい。また、本発明で用いる反応性ポリオレフィンは、複数の反応性ポリオレフィンからなる組成物であってもよい。
また、離型層中の反応性ポリオレフィンの含有量は、好ましくは0.2~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%である。含有量が0.2質量%以上であることで、耐熱性や耐溶剤性が良好となる。また、20質量%以下であることで剥離性が良好となる。
【0052】
(C)架橋剤
本発明の離型フィルムロールにおける離型層組成物は、架橋剤として、1分子中にイソシアネート基を2つ以上含む脂肪族イソシアネートを用いる。このような脂肪族イソシアネートを用いることにより、離型性と耐熱性及び耐薬品性とを両立した離型層を形成することができる。1分子中のイソシアネート基の数としては、3つ以上であることが好ましく、3つであることがより好ましい。
脂肪族イソシアネートとしては、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環式系ポリイソシアネート等のポリイソシアネート系化合物が挙げられ、これらの中ではジイソシアネート化合物が好ましい。また、イソシアネート系化合物としては、ジイソシアネート化合物をイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物等が挙げられる。
上記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
上記脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
これらの中でも、耐黄変性に優れる点で脂肪族系ジイソシアネートが好ましい。
また、イソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、同様の観点から、脂肪族系ジイソシアネート、又は脂環式ジイソシアネートをイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、これらの中でもイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物がより好ましい。
イソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
離型層組成物には、離型層の反応を促進させるために触媒を加えてもよい。触媒の種類は特に限定されないが、離型層組成物に含まれる反応性ポリオレフィンと脂肪族イソシアネートとの反応を促進させる上で、ウレタン化触媒を用いることが好ましい。ウレタン化触媒としては、3級アミン、3級アミンのカルボン酸塩、カルボン酸金属塩(酢酸カリウム、オクチル酸カリウム及びスタナスオクトエート等)及び有機金属化合物(ジブチルチンジラウレート等)が挙げられ、その中でも特に反応制御がしやすい点で3級アミンが好ましい。
【0054】
3級アミンとしては、例えばトリエチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-メチルピペリジン、ピロリジン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジエチルエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン-7(カルボン酸塩)及びビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(カルボン酸塩)並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0055】
(離型層の厚み)
離型層の厚み(乾燥後)は例えば、0.1~5μm、好ましくは0.1~3μm、更に好ましくは0.1~1μm、その中でも特に好ましくは0.1~0.5μmの範囲がよい。離型層の厚みをこれら下限値以上とすると、良好な離型性を発現することができる。また、離型層の厚みをこれら上限値以下とすると、離型層の硬化性を良好とする。
【0056】
(離型層の表面粗さ(Sa))
本発明の基材フィルムの表面の表面粗さ(Sa)は好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、更に好ましくは10nm以下である。基材フィルムの表面粗さ(Sa)が20nm以下であることにより、離型層の表面をより平滑にすることができため、例えば高平滑な粘着層の表面等に凹凸形状が転写されることを防ぐことができ、好適に用いることができる。また、基材フィルムの表面の表面粗さ(Sa)の下限については特に制限はされないが、通常は0.1nm以上である。なお、本明細書における表面粗さ(Sa)はISO 25178に準拠して測定される算術平均高さのことを指し、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0057】
<離型層の形成方法>
上記のとおり、離型層は、離型層組成物を基材フィルム表面に塗布し、乾燥して離型層を形成し、その離型層を硬化することで得ることができる。
離型層組成物を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレーコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等の従来公知の塗布方法を用いることができる。
乾燥条件は、特に限定されず、室温付近で行ってもよいし、加熱により行ってもよく、例えば25~120℃程度、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃である。また、乾燥時間は、溶媒が十分に揮発できる限り特に限定されず、例えば10秒間~30分間程度、好ましくは15秒間~10分間程度である。
【0058】
<帯電防止層>
本発明の離型フィルムロールは、離型層を設けた面とは反対側のフィルム表面に帯電防止層を設ける必要がある。帯電防止層を設けることで、離型層表面が高平滑な離型フィルムロールからフィルム巻き出し時にスムーズにフィルムを巻き出すことが可能となる。
【0059】
(D)離型剤
(長鎖アルキル化合物)
本発明で用いる長鎖アルキル化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、より好ましくは12以上の直鎖又は分岐のアルキル基を有する化合物のことである。
一方、炭素数の上限は特に限定しないが、60以下が好ましく、50以下がより好ましい。該アルキル基としては、例えばヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等を挙げることができる。前記アルキル基を有する化合物とは、例えば各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等を挙げることができる。中でも、耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物が好ましい。また、離型性を良好にする観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であるのがより好ましい。
【0060】
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、反応性基を有する高分子と、当該反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。上記反応性基としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物等を挙げることができる。これらの反応性基を有する化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等を挙げることができる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮すると、ポリビニルアルコールであるのが特に好ましい。
【0061】
上記の反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とは、例えばヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、デシルクロライド、ラウリルクロライド、オクタデシルクロライド、ベヘニルクロライド等の長鎖アルキル基含有酸クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等を挙げることができる。これらの中でも、離型性や取り扱い易さを考慮すると、長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
【0062】
上記の長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合物や長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとは、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0063】
(フッ素化合物)
フッ素化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。インラインコーティングによる塗布外観の点で有機系フッ素化合物が好適に用いられ、例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。離型性の観点からパーフルオロアルキル基を有する化合物であることが好ましい。更に、フッ素化合物には後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物も使用することができる。
【0064】
パーフルオロアルキル基を有する化合物とは、例えば、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートやその重合物、パーフルオロアルキルメチルビニルエーテル、2-パーフルオロアルキルエチルビニルエーテル、3-パーフルオロプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニルビニルエーテル等のパーフルオロアルキル基含有ビニルエーテルやその重合物などが挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると重合物であることが好ましい。重合物は単一化合物のみでも複数化合物の重合物でもよい。また、離型性の観点からパーフルオロアルキル基は炭素原子数が3~11であることが好ましい。更に、後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物との重合物であってもよい。また、基材との密着性の観点から、塩化ビニルとの重合物であることが好ましい。
【0065】
帯電防止層組成物中の全不揮発成分に占める割合として、(D)離型剤は通常2~30質量%、より好ましくは3~15質量%、更に好ましくは5~12質量%である。離型剤の比率が前記上限値以下であると、耐ブロッキング性が良好である。
一方、離型剤の比率が下限値以上であると、耐ブロッキング性が不十分となる場合がある。
【0066】
(E)帯電防止剤
本発明で用いる帯電防止剤は、チオフェン又はチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、又はチオフェン又はチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体である。これらの物質は、優れた導電性を示し好適である。化合物(E)としては、たとえば下記式(1)もしくは(2)の化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合して得られるものが例示される。
【0067】
【化1】
上記式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~20の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等を表す。
【0068】
【化2】
上記式(2)中、nは1~4の整数を表す。
【0069】
重合時に使用するポリ陰イオンとしては、例えばポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等が例示される。かかる重合体の製造方法としては、例えば特開平7-90060号公報に示されるような方法が採用できる。
【0070】
本発明においては、上記式(2)の化合物においてnが2であり、ポリ陰イオンとしてポリスチレンスルホン酸を用いたものが好適に用いられる。
【0071】
また、これらのポリ陰イオンが酸性である場合、一部又は全てが中和されていてもよい。中和に用いる塩基としてはアンモニア、有機アミン類、アルカリ金属水酸化物が好ましい。
【0072】
帯電防止層組成物中の全不揮発成分に占める割合として、帯電防止剤(E)は通常5~80質量%、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~40質量%の範囲である。帯電防止剤(E)の比率が前記範囲内であると、帯電防止性が良好となる。一方、帯電防止剤(E)の比率が前記下限値を外れる場合、帯電防止剤が不十分となる場合がある。
【0073】
(F)バインダー樹脂
本発明における離型フィルムロールの帯電防止層は、帯電防止層の耐久性向上させる観点から、更にバインダー樹脂を含むことが好ましい。
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等のポリビニル系樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも、硬化樹脂層との密着性向上の観点からは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましく、より好ましくはポリエステル樹脂、アクリル樹脂であり、更に好ましくはポリエステル樹脂である。これらバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。易接着層組成物において、バインダー樹脂の含有量は、固形分基準で、例えば20~90質量%、好ましくは30~80質量%である。
【0074】
(G)その他成分
帯電防止層の形成には、本発明の主旨を損なわない範囲において、耐ブロッキング性や滑り性改良等を目的として粒子を併用することも可能である。
(架橋剤)
本発明に係る帯電防止層組成物には、帯電防止層の耐久性向上、特に帯電防止性能の耐久性を目的として、架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用できるが、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらの中でも帯電防止性を良好とする観点から、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物が好ましい。
【0075】
帯電防止層組成物中の全不揮発成分に占める割合として、架橋剤は通常2~30質量%、より好ましくは3~15質量%、更に好ましくは5~12質量%である。架橋剤の比率が前記範囲を満足する場合、帯電防止層の強度や透明性が良好である。一方、架橋剤の比率が下限値を外れる場合、帯電防止層の塗膜強度が不十分となる場合がある。
【0076】
(帯電防止層の厚み)
帯電防止層の厚み(乾燥後)は、例えば0.01~1μm、好ましくは0.03~0.5μm、より好ましくは0.03~0.3μm、更に好ましくは0.03~0.1μmの範囲である。
【0077】
<帯電防止層の形成方法>
帯電防止層の形成方法としては、上述の基材フィルムの製造工程中にフィルム表面を処理する「インラインコーティング」により形成してもよいし、一旦製造した基材フィルム上に系外で塗布する「オフラインコーティング」を採用して形成してもよい。
【0078】
インラインコーティングは、基材フィルムの製造工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、基材を溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムのいずれかにコーティングする。
【0079】
また、帯電防止層の他の形成方法としては、例えば、粒子と、帯電防止層が更に含み得る帯電防止剤、離型剤、バインダー、架橋剤等を、溶媒に分散ないし溶解して帯電防止層組成物を調製し、基材フィルムの片面に付与することで形成することができる。
【0080】
帯電防止層組成物は、水性塗液(水を媒体とする水溶性樹脂又は水分散性樹脂)として、基材フィルムの片面に塗布して形成することが好ましい。但し、少量の有機溶剤を含有した水性塗液を塗布して形成することも可能である。
有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルエタノールアミン等のアミン類等を例示することができる。これらは単独、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。水性塗液に、必要に応じてこれらの有機溶剤を適宜選択し、含有させることで、塗液の安定性、塗布性あるいは塗膜特性を向上させることができる。
【0081】
基材フィルムへの帯電防止層組成物の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著,「コーティング方式」,槙書店,1979年発行、に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター又はこれら以外のコーティング装置を使用することができる。
【0082】
基材フィルム上に帯電防止層を形成する際の乾燥及び硬化条件に関しては、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。一方、インラインコーティングにより帯電防止層を設ける場合、通常70~270℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0083】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。また、ポリエステルフィルム表面には、あらかじめコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0084】
(離型フィルムの物性)
(離型性)
本発明の離型フィルムロールは、離型層の表面と、アクリル系粘着テープとの間の、引張速度300mm/分、180°剥離の条件下での剥離力が、が好ましくは80mN/cm以下、より好ましくは60mN/cm以下、更に好ましくは40mN/cm以下である。当該剥離力が80mN/cm以下であることにより、粘着テープ等の粘着層との剥離性が良好となり、粘着テープ等の保護層として好適に用いることができる。なお、当該剥離力は、具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0085】
(帯電防止性)
積層フィルムの帯電防止性は、帯電防止層表面を測定した表面抵抗率で評価できる。帯電防止層の表面抵抗率が低いほど、帯電防止性が良好であるといえる。表面抵抗率が1×1012Ω/□以下であれば帯電防止性を持つといえ、1×108Ω/□以下であれば良好な帯電防止性であるといえ、更に1×106Ω/□以下であればきわめて良好な帯電防止性能といえ好ましい。また表面抵抗率の下限は特にないが、導電剤のコストを勘案すると1×104Ω/□以上とするのが好ましい。なお、当該表面抵抗率は、具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0086】
帯電防止層中の各種成分の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
【0087】
(耐ブロッキング性)
本発明の離型フィルムロールは、離型層と帯電防止層とを対向するように配置し圧力10kg/cm2、40℃、80%RHの雰囲気下、20時間処理後の、引張速度300mm/分、180°剥離の条件下での剥離力は、好ましくは120gf/125mm幅以下、より好ましくは100gf/125mm幅以下、更に好ましくは80gf/125mm幅以下である。当該剥離力が120gf/125mm幅以下であることにより、耐ブロッキング性が良好となり、離型フィルムロールからフィルム巻き出し時にスムーズにフィルムを巻き出すことが可能となる。なお、当該剥離力は、具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0088】
本発明の離型フィルムロールは、上述の離型層を有することから、粘着層に優れた離型性を有することから、粘着層から本発明のフィルムロールを剥がした際に、離型フィルムロール側に糊残りもなく剥離することが可能であり、粘着剤の保護層として好適に用いることができる。
また、本発明の離型フィルムロールは、離型層表面の表面粗さ(Sa)が20nm以下であることから、粘着層に凹凸が形成されることを防ぐことができる。
更に、本願の離型フィルムロールは、上述の帯電防止層を有することから、粘着層から離型フィルムを剥離する際の静電気の発生を効果的に抑制することができるため、静電気によって粘着層にゴミが付着する等の汚染を防ぐことができる。
なお、前記粘着層としては、汎用の粘着剤から形成されている粘着層が挙げられ、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びゴム系粘着剤等の公知の粘着剤を挙げることができる。
【実施例0089】
次に、実施例により本発明を更に詳しく説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0090】
<測定及び評価方法>
種々の物性及び特性の測定及び評価方法は、以下の通りである。各測定及び評価結果は表1にまとめた。
【0091】
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度(IV)測定装置(離合社製「VMS-022UPC・F10」)を用いて、30℃で測定した。
【0092】
(2)粒子の平均粒径
走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテク製「S3400N」)を用いて、粉体を観察した。
得られた画像データから粒子1個の大きさを測定し、10点の平均値を平均粒径とした。
【0093】
(3)常態剥離力
実施例及び比較例の離型フィルムの離型層表面に、アクリル系両面粘着テープ(日東電工株式会社製「No.502」)の片面を貼り付け、50mm×300mmのサイズにカットし、次いで23℃、50%RHで1時間静置し、常態剥離力測定用のサンプルとした。その後、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製「EZ Graph」)を使用して、引張速度300mm/分の条件下で180°剥離力を測定し、この時の剥離力を常態剥離力とした。
【0094】
(4)表面粗さ(Sa)
実施例及び比較例の離型フィルムの離型層表面において、非接触表面・層断面形状計測システムVertScan(登録商標)R550GML(株式会社菱化システム製)を使用して、以下の測定条件下で、640μm×480μmの領域を測定し、4次の多項式補正による出力を用いて、離型層表面の算術平均粗さ(Sa)を算出した。
(測定条件)
CCDカメラ:SONY HR-50 1/3’
対物レンズ:20倍
鏡筒:1X Body
ズームレンズ:No Relay
波長フィルター:530 white
測定モード:Waveの条件下
【0095】
(5)耐ブロッキング性評価
実施例及び比較例の離型フィルムの離型層面と帯電防止層面とが対向するように配置し、プレス機で圧力10kg/cm2、40℃、80%RHの雰囲気下、20時間加圧をし、耐ブロッキング性評価用の測定用サンプルとした。その後、剥離装置(株式会社島津製作所製「AGI」)を用いて、引張速度300mm/分の、180°剥離の条件で剥離力を測定し、この時の剥離力を耐ブロッキング性の指標とした。なお、耐ブロッキング性は、当該剥離力が小さいほど良好であると判断される。
【0096】
(6)表面抵抗率
実施例及び比較例の離型フィルムにおいて、低抵抗抵抗率計「ロレスタGP MCP-T600」(日東精工アナリテック株式会社製)を使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後に表面抵抗率を測定した。抵抗値が測定可能な範囲の上限を超えていた場合は測定不可とした。
【0097】
各実施例及び比較例における離型フィルムにおける基材フィルムの原料は、以下のとおりである。
(基材フィルム)
〔ポリエステル(A)〕
ジメチルテレフタレート100質量部及びエチレングリコール55質量部、並びに酢酸カルシウム一水和物0.07質量部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行った。反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次にリン酸0.04質量部及び三酸化アンチモン0.035質量部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化してポリエステル(A)を得た。得られた極限粘度は0.63dL/gであった。
〔ポリエステル(B)〕
上記ポリエステル(A)に平均粒径2μmのシリカ粒子を加え、シリカ粒子を0.2質量%含有するポリエステル(B)を得た。極限粘度は0.65dL/gであった。
【0098】
[実施例1]
ポリエステル(A)を90質量部及び(B)10質量部混合した混合原料を表面層の原料とし、ポリエステル(A)のみをベース層の原料として、2台の押出機に各々を供給し285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表面層/ベース層/表面層=1/8/1の吐出量(質量比))の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記の帯電防止層組成物1の塗布液を塗布し、テンターに導き、横方向に110℃で4.3倍延伸し、235℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、膜厚(乾燥後)が28nmの帯電防止層を有する、厚さ75μmのポリエステルフィルムを基材フィルムとして得た。
【0099】
(帯電防止層組成物1)
下記の(D)、(E1)、(F)及び(G)を、質量比で(D)/(E1)/(F)/(G)=7/10/68/15で混合し、帯電防止層組成物1を得た。
(D)チオフェン系帯電防止剤
導電剤「Orgacon ICP1010」(アグファゲバルト社製、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との水分散体)を濃アンモニア水で中和してpH=9とした。
(E1)長鎖アルキル系離型剤
4つ口フラスコにキシレン200質量部、オクタデシルイソシアネート600質量部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100質量部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、更に2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を、約80℃まで冷却した後、メタノールを加え反応生成物を白色沈殿として析出させ、ろ過で回収した。回収した反応生成物に、キシレン140質量部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、反応生成物をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して、(E1)の長鎖アルキル系離型剤を得た。
(F)バインダー樹脂:下記の組成で共重合した、縮合多環構造を有するポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6-ナフタレンジカルボン酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(モル比)
(G)その他添加剤:平均重合度4のポリグリセリン
【0100】
次に、前記基材フィルムの帯電防止層を設けた面とは反対面側に下記離型層組成物を塗布し、150℃、30秒間、熱処理し、厚み(乾燥後)が0.2μmの非シリコーン離型層を設けた、実施例1の離型フィルムを得た。
(離型層組成物)
(A)非反応性ポリオレフィンとしてエチレン-プロピレン共重合体B1を99.0質量部、(B)応性ポリオレフィンとして「ポリテールH」(三菱ケミカル株式会社製)を1.0質量部及びトルエンを混合し、加熱することによって、2%濃度のトルエン溶液を得た。次いで、(C)架橋剤として「マイテック718A」(三菱ケミカル株式会社製)を、反応性ポリオレフィンに含まれる水酸基量に対して1.1当量のイソシアネート基になるように添加し、また、非反応性ポリオレフィンと反応性ポリオレフィンの合計固形分量100質量部に対して、ウレタン化触媒として、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを1質量部添加して、離型層組成物を得た。
【0101】
・(A):非反応性ポリオレフィン:エチレン-プロピレン共重合体B1
メタロセン触媒によって得られたエチレン-プロピレンランダム共重合体(1H-NMRによる組成質量比:エチレン/プロピレン=74/26、MFR(230℃,荷重2.16kg)2.0g/10分、密度0.86g/cm3)。
・(B):反応性ポリオレフィン:「ポリテールH」(三菱ケミカル株式会社製、OH基を有するポリブタジエンの水素化物、数平均分子量2700、NMRより求めたOH基量1.5質量%、密度0.85g/cm3)
・(C):架橋剤:「マイテック718A」(三菱ケミカル株式会社製、脂肪族3官能イソシアネート・トリオール付加体の76質量%酢酸ブチル溶液)
・ウレタン化触媒:1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0102】
[実施例2]
実施例1の帯電防止層組成物1を下記帯電防止層組成物2に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、実施例2の離型フィルムを得た。
(帯電防止層組成物2)
帯電防止層組成物1において、(E1)を下記の(E2)に変更したこと以外は同様にして、帯電防止層組成物2を得た。
(E2)フッ素系離型剤
ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF3(CF2)nCH2CH2OCOCH=CH2(n=5~11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C16H33N(CH3)3Cl1.0g及びC8H17C6H4O(CH2CH2O)nH(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて、フッ素化合物の共重合体エマルションを得た。
【0103】
[比較例1]
実施例1の帯電防止層組成物1を下記帯電防止層組成物3に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、比較例1の離型フィルムを得た。
(帯電防止層組成物3)
帯電防止層組成物1において、(E1)を下記の(E3)に変更したこと以外は同様にして、帯電防止層組成物3を得た。
(E3)ワックス系離型剤酸化ポリエチレンワックス(融点:129℃)
【0104】
[比較例2]
実施例1の帯電防止層組成物1を下記帯電防止層組成物4に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、比較例2の離型フィルムを得た。
(帯電防止層組成物4)
帯電防止層組成物1において、(E1)を使用せず、上記の(D)、(F)及び(G)を、質量比で(D)/(F)/(G)=7/10/83で混合し、帯電防止層組成物4を得た。
【0105】
[比較例3]
実施例1において、帯電防止層組成物を塗布しない以外は実施例1と同様にして製造し、比較例3の離型フィルムを得た。
【0106】
【0107】
(考察)
実施例及び比較例の結果より、本発明によれば、離型層表面が高平滑なロール状離型フィルムにおいて、耐ブロッキング性と帯電防止性との両立が可能であることがわかった。
特に帯電防止層組成物として、長鎖アルキル系離型剤又はフッ素系離型剤を用い、かつ、帯電防止剤としてチオフェン系帯電防止剤を併用すれば、良好な特性を発現できることがわかった。
その中でも、特に長鎖アルキル系離型剤とチオフェン系帯電防止剤の組み合わせが最も良好である。メカニズムは不明であるが、帯電防止層皮膜を形成した際に、帯電防止層表面に長鎖アルキル基が適度に配向し、それでいながら、離型剤成分が表面に存在するのと同時にチオフェン系帯電防止剤も表面に適度に存在することで、離型性と帯電防止性とのバランスが維持できているものと推察される。
一方、同じ非シリコーン系離型剤の中でもワックス系離型剤とチオフェン系帯電防止剤との組み合わせにおいては、離型性と帯電防止性とのバランス調整が困難であるためか、耐ブロッキング性が低下する傾向にあった。