(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129009
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】拡張装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027530
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】里 百合子
(72)【発明者】
【氏名】服部 篤
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA15
5F063AA31
5F063BA33
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063DD27
5F063DD68
5F063DD93
5F063DG21
5F063EE42
(57)【要約】
【課題】エキスパンドシートの加熱により発生するガスによるデバイスの不良の恐れを低減できる拡張装置を提供すること。
【解決手段】拡張装置1は、フレームユニット110の環状フレーム106を固定するフレーム固定部10と、エキスパンドシート105の環状領域108を拡張するシート拡張ユニット20と、拡張されたエキスパンドシート105の環状領域108を加熱して収縮させる加熱ユニット40と、エキスパンドシート105の拡張後の被加工物100を覆う凹状の空間51を内側に備える蓋体50と、被加工物100を覆う蓋体50の縁52をエキスパンドシート105の環状領域108に接触させ被加工物100を外部空間から遮蔽する遮蔽位置と被加工物100が蓋体50から露出する開放位置とに蓋体50を進退させる進退部30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインを備える被加工物が環状フレームの開口にエキスパンドシートで支持されたフレームユニットの該エキスパンドシートを拡張する拡張装置であって、
該フレームユニットの該環状フレームを固定するフレーム固定部と、
該被加工物の外周と該環状フレームの内周との間の該エキスパンドシートの環状領域を、被加工物と直交する方向に押圧して該エキスパンドシートを拡張するシート拡張ユニットと、
拡張された該エキスパンドシートの該環状領域を加熱して収縮させる加熱ユニットと、
拡張後の該被加工物を覆う凹状の空間を内側に備える蓋体と、
該被加工物を覆う該蓋体の縁を該エキスパンドシートの該環状領域に接触させ該被加工物を外部空間から遮蔽する遮蔽位置と、該被加工物が該蓋体から露出する開放位置とに該蓋体を進退させる進退部と、を備え、
該遮蔽位置に位置付けられた該蓋体で、該エキスパンドシートの加熱で発生するガスから該被加工物を遮蔽することを特徴とする拡張装置。
【請求項2】
該進退部には該加熱ユニットが固定され、該加熱ユニットを該環状領域の周方向に沿って回動するように進退部は回転し、該進退部に固定されている該蓋体は回転する該進退部と独立して停止可能に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の拡張装置。
【請求項3】
該エキスパンドシートから発生したガスを排気する排気ユニットを備える請求項1または2に記載の拡張装置。
【請求項4】
該蓋体の種類を検出するセンサと、
該被加工物のサイズまたは該蓋体の種類を登録する加工条件記憶部と、
該加工条件記憶部に記憶された被加工物のサイズまたは該蓋体の種類と該センサが検出した該蓋体の種類とが対応するか否かを判定する判定部と、
該判定部の判定結果を報知する報知部と、
をさらに備える請求項1、2または3に記載の拡張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デバイスが表面に形成された被加工物(ウエーハ)にレーザー光線を照射し、分割予定ラインに沿って内部に改質層を形成し、被加工物が貼着されたエキスパンドシート(ダイシングテープ)を拡張することで改質層を破断基点に個々のチップに分割する加工方法が知られている。
【0003】
この種の加工方法は、ウエーハの外周のエキスパンドシートを拡張するため、拡張後にエキスパンドシートが弛み、徐々に拡張したチップ間隔が狭くなり、搬送時にエキスパンドシートが揺れチップ同士の擦れによる欠けの原因となる。そこで、拡張して弛んだエキスパンドシートを加熱して収縮させる加工技術と分割装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
拡張して弛んだエキスパンドシートを加熱して収縮させる方法により、エキスパンドシートの弛みは解消されたが、収縮させる程の高温で加熱すると、エキスパンドシートの種類によってはガスが発生し、発生したガスがデバイスに付着すると、異物となってデバイスの不良の原因になる恐れがあった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エキスパンドシートの加熱により発生するガスによるデバイスの不良の恐れを低減できる拡張装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の拡張装置は、分割予定ラインを備える被加工物が環状フレームの開口にエキスパンドシートで支持されたフレームユニットの該エキスパンドシートを拡張する拡張装置であって、該フレームユニットの該環状フレームを固定するフレーム固定部と、該被加工物の外周と該環状フレームの内周との間の該エキスパンドシートの環状領域を、被加工物と直交する方向に押圧して該エキスパンドシートを拡張するシート拡張ユニットと、拡張された該エキスパンドシートの該環状領域を加熱して収縮させる加熱ユニットと、拡張後の該被加工物を覆う凹状の空間を内側に備える蓋体と、該被加工物を覆う該蓋体の縁を該エキスパンドシートの該環状領域に接触させ該被加工物を外部空間から遮蔽する遮蔽位置と、該被加工物が該蓋体から露出する開放位置とに該蓋体を進退させる進退部と、を備え、該遮蔽位置に位置付けられた該蓋体で、該エキスパンドシートの加熱で発生するガスから該被加工物を遮蔽することを特徴とする。
【0008】
該進退部には該加熱ユニットが固定され、該加熱ユニットを該環状領域の周方向に沿って回動するように進退部は回転し、該進退部に固定されている該蓋体は回転する該進退部と独立して停止可能に設定されていてもよい。
【0009】
該エキスパンドシートから発生したガスを排気する排気ユニットを備えてもよい。
【0010】
該蓋体の種類を検出するセンサと、該被加工物のサイズまたは該蓋体の種類を登録する加工条件記憶部と、該加工条件記憶部に記憶された被加工物のサイズまたは該蓋体の種類と該センサが検出した該蓋体の種類とが対応するか否かを判定する判定部と、該判定部の判定結果を報知する報知部と、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、エキスパンドシートの加熱により発生するガスによるデバイスの不良の恐れを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る拡張装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る拡張装置の要部のエキスパンドシートの拡張前の状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る拡張装置の要部のエキスパンドシートの拡張中の状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る拡張装置の要部のエキスパンドシートの加熱中の状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る拡張装置の要部の蓋体の種類の検出中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る拡張装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る拡張装置1の構成例を示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る拡張装置1の要部のエキスパンドシート105の拡張前の状態を示す断面図である。
図3は、実施形態1に係る拡張装置1の要部のエキスパンドシート105の拡張中の状態を示す断面図である。
図4は、実施形態1に係る拡張装置1の要部のエキスパンドシート105の加熱中の状態を示す断面図である。実施形態1に係る拡張装置1は、
図1に示すように、フレーム固定部10と、シート拡張ユニット20と、進退部30と、加熱ユニット40と、蓋体50と、排気ユニット60と、フレームユニット搬送部70と、制御ユニット80と、を備える。
【0015】
実施形態1において、拡張装置1がエキスパンドシート105を拡張することによって分割する被加工物(ウエーハ)100は、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素、ガラスなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどである。被加工物100は、
図1に示すように、表面101の格子状に形成される複数の分割予定ライン102によって区画された領域にチップサイズのデバイス(デバイスチップ)103が形成されている。被加工物100は、表面101の裏側の裏面104にエキスパンドシート(ダイシングテープ)105が貼着され、エキスパンドシート105の外縁部に環状フレーム106が装着されることにより、被加工物100が環状フレーム106の開口107にエキスパンドシート105で支持されたフレームユニット110を構成する。
【0016】
被加工物100は、分割予定ライン102に沿ってレーザー光線が照射されて、分割予定ライン102に沿って内部に分割起点である改質層120(
図2中に破線で示す)が形成されている。改質層120は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。実施形態1では、改質層120は、被加工物100の他の部分よりも機械的な強度が低い。
【0017】
フレーム固定部10は、
図1に示すように、フレームユニット110の環状フレーム106が載置されるフレーム載置部11と、環状フレーム106を上方から押さえるフレーム押さえ部12と、を有する。フレーム載置部11は、正方形状であり、中央に、環状フレーム106の内径程度の円形状の開口13が形成されている。フレーム載置部11は、下方側にエアシリンダ15が接続されており、エアシリンダ15の伸縮により鉛直方向に平行な
図1のZ軸方向に昇降自在である。フレーム押さえ部12は、フレーム載置部11と同様に、正方形状であり、中央に、環状フレーム106の内径程度の円形状の開口14が形成されている。フレーム押さえ部12は、不図示の水平移動ユニットにより水平方向に平行な
図1のY軸方向に移動自在である。
【0018】
フレーム固定部10は、フレーム載置部11の開口13とフレームユニット110の環状フレーム106の開口107とが鉛直方向に重なるようにフレーム載置部11にフレームユニット110の環状フレーム106を載置した後に、フレーム押さえ部12の開口14がフレーム載置部11の開口13及び環状フレーム106の開口107と鉛直方向に重なるように不図示の水平移動ユニットによりフレーム押さえ部12をフレーム載置部11の直上に移動させてから、エアシリンダ15によりフレーム載置部11を上昇させることにより、
図2に示すように、フレーム載置部11とフレーム押さえ部12とで挟み込んでフレームユニット110の環状フレーム106を固定する。
【0019】
シート拡張ユニット20は、
図1に示すように、チャックテーブル21と、突き上げ部材22と、コロ部材23と、昇降機構24と、を有する。チャックテーブル21は、円形状であり、突き上げ部材22の内周かつ同軸に設けられる。チャックテーブル21は、また、フレーム載置部11の開口13の内周かつ同軸に設けられる。チャックテーブル21は、凹部が形成された円盤状の枠体と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部と、を備える。チャックテーブル21の吸着部は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル21の吸着部の上面は、フレーム固定部10に環状フレーム106が固定されたフレームユニット110の被加工物100を裏面104側からエキスパンドシート105を介して吸引保持する保持面25である。保持面25とチャックテーブル21の枠体の上面とは、同一平面上に配置されており、水平面に平行なXY平面に沿って形成される。
【0020】
突き上げ部材22は、円筒形状であり、チャックテーブル21の外周かつ同軸に設けられる。突き上げ部材22は、また、フレーム載置部11の開口13の内周かつ同軸に設けられる。コロ部材23は、チャックテーブル21の保持面25と同一平面上または僅かに上方、かつ突き上げ部材22の上端に、回転自在に設けられる。昇降機構24は、チャックテーブル21及び突き上げ部材22の下方に接続して設けられ、チャックテーブル21及び突き上げ部材22を一体的に上昇させる。
【0021】
シート拡張ユニット20は、フレーム固定部10にフレームユニット110の環状フレーム106が固定された状態で、
図3に示すように、昇降機構24によりチャックテーブル21及び突き上げ部材22をフレーム固定部10に対して相対的に上昇させることで、被加工物100の外周と環状フレーム106の内周との間のエキスパンドシート105の環状領域108を、被加工物100の表面101や裏面104と直交する厚み方向に押圧して、エキスパンドシート105を面方向に拡張する。被加工物100は、シート拡張ユニット20によってエキスパンドシート105が拡張されることにより、改質層120に沿ってデバイス103に分割される。
【0022】
進退部30は、
図1に示すように、円板状の基台であり、チャックテーブル21の上方でかつチャックテーブル21と同軸に配置されている。進退部30は、上方に駆動部31が接続されており、駆動部31により鉛直方向に沿って昇降自在に設けられ、かつ鉛直方向と平行な回転軸32回りに回転自在に設けられている。回転軸32は、円柱状に形成され、進退部30と同軸に配置されている。
【0023】
加熱ユニット40は、
図1に示すように、進退部30の外縁部に周方向に等間隔に配置されて、エキスパンドシート105の環状領域108に対応した領域に配置されている。加熱ユニット40は、フレーム固定部10及びチャックテーブル21に保持されたフレームユニット110のエキスパンドシート105の環状領域108と鉛直方向に対面する位置に配置されている。加熱ユニット40は、進退部30における径方向の位置が調整可能に取り付けられている。加熱ユニット40は、
図1に示す例では、進退部30の周方向に等間隔に4つ設けられているが、本発明では、4つに限定されない。このために、駆動部31は、
図4に示すように、複数の加熱ユニット40をエキスパンドシート105の環状領域108の周方向に沿って回動するように進退部30を回転させるものである。
【0024】
加熱ユニット40は、
図4に示すように、拡張されたエキスパンドシート105の環状領域108を加熱して収縮させる。加熱ユニット40は、赤外線を下方に照射して、エキスパンドシート105の環状領域108を加熱する形式のもの、例えば、電圧が印加されると加熱されて、赤外線を放射する赤外線セラミックヒータである。
【0025】
蓋体50は、
図1に示すように、お椀型であり、エキスパンドシート105の拡張後のフレームユニット110の被加工物100を覆う凹状の空間51を内側に備える。凹状の空間51は、深さが被加工物100の厚みより大きく、かつ、5mm以下である。凹状の空間51の開口縁を形成する蓋体50の縁52は、円形状であり、径方向の長さがエキスパンドシート105の拡張後のフレームユニット110の被加工物100の外周径より大きく、かつ、加熱ユニット40の回転軌道の内周径より小さい。なお、エキスパンドシート105の拡張後のフレームユニット110の被加工物100の外周径は、エキスパンドシート105の拡張前(分割前)のフレームユニット110の被加工物100の外周径よりも大きく、シート拡張ユニット20によるエキスパンドシート105の拡張の度合いに応じて変化する。
【0026】
蓋体50は、エキスパンドシート105の加熱で発生するガスを遮蔽する材料で形成されており、さらに加熱ユニット40による加熱を遮蔽する材料で形成されることが好ましい。蓋体50は、実施形態1では、例えば、加熱ユニット40が放射する赤外線を反射するアルミニウム製である。
【0027】
蓋体50は、
図1から
図4に示すように、装着部材33により、進退部30の下面側に、進退部30と概ね同軸に装着されている。蓋体50は、中央の頂部、すなわち凹状の空間51の中央の最も底の部分に、装着部材33により装着用の円形状の貫通孔53が形成されている。装着部材33は、中央部分が貫通孔53よりも径が小さい円柱状に、かつ、両端部が中央部分よりも径方向に突出して貫通孔53よりも径が大きい円板形状に形成され、両端部をそれぞれ分解可能となっている。このため、装着部材33は、分解された状態で円柱状の中央部分を貫通孔53に挿入して一体に組み立て、進退部30に装着して固定されることで、蓋体50を着脱可能に装着する。蓋体50は、このような装着部材33により装着されているため、進退部30及び装着部材33に対して回転自在に、かつ、進退部30及び装着部材33に対して装着部材33の中央部分の円柱状の軸方向の長さの範囲内でZ軸方向に移動自在に吊り下げられる。なお、装着部材33は、上記した形態に限定されず、進退部30に対して回転自在に、かつ、進退部30に対してZ軸方向に移動自在に吊り下げられる形態であれば、どのような形態であってもよい。
【0028】
蓋体50が装着された進退部30は、駆動部31により鉛直方向に沿って昇降移動することにより、遮蔽位置58と開放位置59とに蓋体50を進退させる。ここで、遮蔽位置58は、
図4に示すように、蓋体50の縁52が、フレームユニット110のエキスパンドシート105の環状領域108上の、加熱ユニット40の回転軌道よりも内側の部分に接触したときの蓋体50の位置である。蓋体50は、このような遮蔽位置58に位置付けられると、
図4に示すように、凹状の空間51内にフレームユニット110の被加工物100を密閉して、加熱ユニット40で加熱されるエキスパンドシート105の環状領域108の部分を含む外部空間から被加工物100を遮蔽し、エキスパンドシート105の加熱で発生するガスから被加工物100を遮蔽する。開放位置59は、
図2及び
図3に示すように、蓋体50の縁52が、フレームユニット110のエキスパンドシート105の環状領域108上から上方に離間して、被加工物100が蓋体50から外部空間に露出したときの蓋体50の位置である。
【0029】
蓋体50は、遮蔽位置58に位置付けられると、縁52でフレームユニット110のエキスパンドシート105の環状領域108により支持され、貫通孔53の部分が装着部材33の下側の端部に対して少し上方に持ち上げられることにより、加熱ユニット40とともに回転する進退部30とは独立して、フレームユニット110のエキスパンドシート105の環状領域108上に停止可能となる。
【0030】
排気ユニット60は、
図4に示すように、排気口が加熱ユニット40で加熱されるエキスパンドシート105の環状領域108の部分に向けられて設置されており、加熱ユニット40で加熱されるエキスパンドシート105の環状領域108の部分から発生したガスを排気する。排気ユニット60は、
図1及び
図4に示す例では2箇所に設置されているが、本発明ではこれに限定されず、何箇所に設置されてもよい。また、排気ユニット60は、加熱ユニット40でエキスパンドシート105の環状領域108の部分を加熱する際に、排気口を加熱ユニット40で加熱されるエキスパンドシート105の環状領域108の部分に近付けるように移動させて使用してもよい。
【0031】
フレームユニット搬送部70は、
図1に示すように、ユニット本体71と、吸引保持部72と、センサ73とを有する。ユニット本体71は、不図示の駆動部と接続されており、駆動部により鉛直方向に沿って昇降自在に設けられ、かつ鉛直方向と平行な回転軸74回りに回動自在に設けられている。ユニット本体71は、この駆動部により、チャックテーブル21の保持面25の直上に移動したり、チャックテーブル21の保持面25の直上から退避したりする。
【0032】
吸引保持部72は、ユニット本体71の下面側に、下方に向けて取り付けられており、フレームユニット110の環状フレーム106を上方側から吸引保持する。フレームユニット搬送部70は、吸引保持部72によりフレームユニット110の環状フレーム106を保持しながら、駆動部によりユニット本体71がチャックテーブル21の保持面25の直上に移動することにより、フレームユニット110をチャックテーブル21の保持面25上に搬送する。センサ73は、ユニット本体71の上面側に、上方に向けて取り付けられている。なお、センサ73は、
図1に図示されているが、以下に説明する実施形態1に係る拡張装置1の動作処理には関与しないので、後述する実施形態2においてその機能及び動作を説明する。
【0033】
制御ユニット80は、拡張装置1の各種構成要素の動作を制御して、フレームユニット110のエキスパンドシート105を拡張することによって被加工物100を分割する一連の処理を拡張装置1に実施させる。制御ユニット80は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット80が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット80の機能は、実施形態1では、制御ユニット80が含むコンピュータシステムの演算処理装置が、制御ユニット80が含むコンピュータシステムの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。制御ユニット80の演算処理装置は、制御ユニット80の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、拡張装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット80の入出力インターフェース装置を介して拡張装置1の各構成要素に出力する。
【0034】
制御ユニット80は、
図1に示すように、加工条件記憶部81と、判定部82と、報知部83と、を備える。なお、加工条件記憶部81、判定部82及び報知部83は、
図1に図示されているが、以下に説明する実施形態1に係る拡張装置1の動作処理には関与しないので、後述する実施形態2においてその機能及び動作を説明する。
【0035】
次に、本明細書は、実施形態1に係る拡張装置1の動作を図面に基づいて説明する。まず、拡張装置1の制御ユニット80は、フレームユニット搬送部70により、フレームユニット110をチャックテーブル21の保持面25上に搬送する。次に、制御ユニット80は、
図2に示すように、フレーム固定部10のフレーム載置部11とフレーム押さえ部12とにより、チャックテーブル21の保持面25上に載置されたフレームユニット110の環状フレーム106を挟み込んで固定する。
【0036】
制御ユニット80は、フレーム固定部10によりフレームユニット110の環状フレーム106を挟み込んで固定した後、
図3に示すように、シート拡張ユニット20の昇降機構24によりチャックテーブル21及び突き上げ部材22をフレーム固定部10に対して相対的に上昇させて、エキスパンドシート105の環状領域108を被加工物100の厚み方向に押圧することにより、エキスパンドシート105を面方向に拡張して、被加工物100を改質層120に沿ってデバイス103に分割する。
【0037】
制御ユニット80は、エキスパンドシート105を拡張した後、真空吸引源からの負圧をチャックテーブル21の保持面25に導入して、保持面25で拡張後のエキスパンドシート105を介して被加工物100を吸引保持することにより、被加工物100の領域においてエキスパンドシート105を拡張した状態を保持してから、昇降機構24によりチャックテーブル21及び突き上げ部材22をフレーム固定部10に対して相対的に下降させる。これにより、チャックテーブル21の保持面25より外周側のエキスパンドシート105の環状領域108の部分が弛む。
【0038】
制御ユニット80は、その後、
図4に示すように、駆動部31により進退部30を下降させることにより、蓋体50を遮蔽位置58に位置付けると同時に、加熱ユニット40を保持面25より外周側のエキスパンドシート105の環状領域108の部分に接近させる。これにより、蓋体50は、凹状の空間51内にフレームユニット110の被加工物100を密閉して、被加工物100を、加熱ユニット40で加熱されるエキスパンドシート105の環状領域108の部分を含む外部空間から遮蔽する。また、蓋体50は、縁52でエキスパンドシート105の環状領域108により支持され、貫通孔53の部分が装着部材33の下側の端部に対して少し上方に持ち上げられる。
【0039】
制御ユニット80は、蓋体50を遮蔽位置58に位置付けた後、加熱ユニット40による加熱及び排気ユニット60による排気を開始し、駆動部31により進退部30を回転させる。これにより、加熱ユニット40は、エキスパンドシート105の環状領域108の周方向に沿って回動しながら、拡張されて弛んだエキスパンドシート105の環状領域108の部分を加熱して収縮させる。一方で、蓋体50は、加熱ユニット40とともに回転する進退部30とは独立して、エキスパンドシート105の環状領域108上に停止して、エキスパンドシート105の加熱で発生するガスから被加工物100を遮蔽する。排気ユニット60は、エキスパンドシート105の環状領域108の加熱により発生したガスを排気する。
【0040】
制御ユニット80は、エキスパンドシート105の環状領域108を加熱して収縮させた後、駆動部31による進退部30の回転、加熱ユニット40による加熱、及び、排気ユニット60による排気を終了し、駆動部31により進退部30を上昇させることにより蓋体50を開放位置59に位置付けて、フレームユニット搬送部70により、被加工物100を分割後のフレームユニット110を取り出す。
【0041】
以上のような構成を有する実施形態1に係る拡張装置1は、蓋体50で被加工物100を覆って密閉し、被加工物100をエキスパンドシート105の環状領域108の加熱により発生するガスから遮蔽するので、エキスパンドシート105の加熱により発生するガスによるデバイス103の不良の恐れを低減できるという作用効果を奏する。
【0042】
また、実施形態1に係る拡張装置1は、進退部30には加熱ユニット40が固定され、加熱ユニット40をエキスパンドシート105の環状領域108の周方向に沿って回動するように進退部30は回転し、進退部30に固定されている蓋体50は回転する進退部30と独立して停止可能に設定されている。このため、実施形態1に係る拡張装置1は、加熱ユニット40によりエキスパンドシート105の環状領域108を満遍なく加熱する際中に、蓋体50により被加工物100を覆って密閉する状態を安定化させるので、エキスパンドシート105の加熱により発生するガスによるデバイス103の不良の恐れをさらに低減できる。
【0043】
また、実施形態1に係る拡張装置1は、エキスパンドシート105から発生したガスを排気する排気ユニット60を備える。このため、実施形態1に係る拡張装置1は、エキスパンドシート105の環状領域108の加熱により発生するガスをより素早く確実にエキスパンドシート105上から除去するので、エキスパンドシート105の加熱により発生するガスによるデバイス103の不良の恐れをさらに低減できる。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る拡張装置1を図面に基づいて説明する。
図5は、実施形態2に係る拡張装置1の要部の蓋体50の種類の検出中の状態を示す断面図である。
図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
センサ73は、蓋体50の下方側から蓋体50の種類を検出する。フレームユニット搬送部70は、実施形態2では、
図5に示すように、駆動部によりユニット本体71を進退部30及び蓋体50の下方側を水平方向に沿って移動させながら、センサ73により光を発射して蓋体50の縁52からの反射光を検出することで、蓋体50の縁52の位置を検出することにより、蓋体50の種類を表す蓋体50の径方向の長さ(蓋体50のサイズ)を検出し、検出した情報を制御ユニット80に出力する。
【0046】
加工条件記憶部81は、拡張装置1で分割する被加工物100のサイズ、または、当該被加工物100のサイズに対応する蓋体50の種類を登録する。ここで、実施形態2では、被加工物100のサイズは径方向の長さであり、蓋体50の種類は蓋体50の縁52の径方向の長さ(蓋体50のサイズ)である。また、被加工物100のサイズに対応する蓋体50の種類とは、当該サイズの被加工物100を好適に密閉可能な蓋体50の種類のことを指し、具体的には、蓋体50のサイズがエキスパンドシート105の拡張後のフレームユニット110の被加工物100の外周径より大きく、かつ、加熱ユニット40の回転軌道の内周径より小さい条件を満たす蓋体50の種類のことである。なお、加工条件記憶部81が登録するこれらの情報は、予め不図示の入力ユニットを介してオペレータに入力される等により、登録される。
【0047】
判定部82は、加工条件記憶部81を参照して、加工条件記憶部81に記憶された被加工物100のサイズまたは蓋体50の種類と、センサ73が検出した蓋体50の種類とが対応するか否かを判定する。すなわち、判定部82は、センサ73が検出した蓋体50の種類が、加工条件記憶部81に記憶された被加工物100のサイズに対応する蓋体50の種類であるか否か、または、加工条件記憶部81に記憶された蓋体50の種類であるか否か、を判定する。判定部82は、この判定による判定結果を、報知部83に出力する。
【0048】
報知部83は、判定部82の判定結果を報知する。報知部83は、例えば、拡張装置1が液晶表示装置などで構成される不図示の表示ユニットを備える場合、表示ユニットに判定部82の判定結果を表示することにより、オペレータに視認可能に報知する。報知部83は、また、拡張装置1が発光ダイオードなどで構成される不図示の発光ユニットを備える場合、発光ユニットの点灯や点滅や光の色彩等により、判定部82の判定結果をオペレータに認識可能に報知してもよい。報知部83は、また、拡張装置1がスピーカなどで構成され音声を発信する不図示の音声ユニットを備える場合、音声ユニットの音声により、判定部82の判定結果をオペレータに認識可能に報知してもよい。報知部83は、また、拡張装置1が、有線または無線で、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス、コンピュータなどの情報機器に接続されている場合、情報機器の表示部に表示して判定部82の判定結果をオペレータに認識可能に報知してもよく、情報機器の発光部や音声発生部により判定部82の判定結果をオペレータに認識可能に報知してもよい。
【0049】
加工条件記憶部81の機能は、制御ユニット80の記憶装置により実現される。判定部82の機能は、制御ユニット80に含まれるコンピュータシステムの演算処理装置が、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施することにより実現される。報知部83の機能は、制御ユニット80の入出力インターフェース装置により実現される。
【0050】
次に、本明細書は、実施形態2に係る拡張装置1の動作を図面に基づいて説明する。実施形態2では、拡張装置1の制御ユニット80は、フレームユニット110をチャックテーブル21の保持面25上に載置して、フレーム固定部10で環状フレーム106を挟み込んで固定した後、
図5に示すように、フレームユニット搬送部70の駆動部によりユニット本体71を進退部30及び蓋体50の下方側を水平方向に沿って移動させながら、センサ73により蓋体50の種類を検出する。実施形態2では、制御ユニット80は、センサ73により蓋体50の種類を検出した後、判定部82により、加工条件記憶部81に記憶された被加工物100のサイズまたは蓋体50の種類と、センサ73が検出した蓋体50の種類とが対応するか否かを判定し、報知部83により、判定部82の判定結果を報知する。
【0051】
実施形態2では、制御ユニット80は、判定部82で、センサ73が検出した蓋体50の種類と、加工条件記憶部81に記憶された被加工物100のサイズまたは蓋体50の種類とが対応すると判定した場合、実施形態1と同様に、シート拡張ユニット20によるエキスパンドシート105の拡張以降の処理を実施する。一方、実施形態2では、制御ユニット80は、判定部82で、センサ73が検出した蓋体50の種類と、加工条件記憶部81に記憶された被加工物100のサイズまたは蓋体50の種類とが対応しないと判定した場合、シート拡張ユニット20によるエキスパンドシート105の拡張以降の処理を中止して、報知部83により、進退部30に装着する蓋体50の種類を、加工条件記憶部81に記憶された被加工物100のサイズまたは蓋体50の種類と対応するものに変更することをオペレータに促す。
【0052】
以上のような構成を有する実施形態2に係る拡張装置1は、実施形態1において、さらに、センサ73により蓋体50の種類を検出し、判定部82により、加工条件記憶部81に記憶された被加工物100のサイズまたは蓋体50の種類と、センサ73が検出した蓋体50の種類とが対応するか否かを判定し、報知部83により、その判定部82による判定結果を報知する。このため、実施形態2に係る拡張装置1は、拡張装置1で分割する被加工物100を、当該被加工物100のサイズに対応する種類の蓋体50で密閉することを促すので、エキスパンドシート105の加熱により発生するガスによるデバイス103の不良の恐れをさらに低減できる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 拡張装置
10 フレーム固定部
20 シート拡張ユニット
30 進退部
40 加熱ユニット
50 蓋体
51 凹状の空間
52 縁
58 遮蔽位置
59 開放位置
60 排気ユニット
73 センサ
81 加工条件記憶部
82 判定部
83 報知部
100 被加工物
102 分割予定ライン
105 エキスパンドシート
106 環状フレーム
107 開口
108 環状領域
110 フレームユニット