(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129316
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20220829BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20220829BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20220829BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20220829BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
F16L5/02 A
B60R16/02 622
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028011
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】古田 高之
【テーマコード(参考)】
5G333
5G363
【Fターム(参考)】
5G333AA09
5G333AB16
5G333CB19
5G333EA02
5G333EB06
5G363AA01
5G363AA16
5G363BA01
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、孔から外す際の作業性が向上するグロメットを提供する。
【解決手段】グロメットは、貫通孔に取り付けられる。グロメットは、グロメット本体と、グロメットインナ13と、を備える。グロメットインナ13は、筒状のインナ本体51と、複数のフランジ部53と、ロック部55と、を有する。複数のフランジ部53は、インナ本体51の周方向に間隔をあけて配置される。ロック部55は、貫通孔に引っ掛かるためにインナ本体51の外側に配置され、弾性変形することでインナ本体51の内部空間に近づく方向に変位して貫通孔への引っ掛かりを解除することが可能である。ロック部55は、インナ本体51の軸方向に沿って延びる部分を有する。インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、ロック部55の一部である突出部89が、複数のフランジ部53のうち、インナ本体51の筒壁が延びる方向で隣り合うフランジ部53の間に配置される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔に取り付けられるグロメットにおいて、
中空状のグロメット本体と、
前記グロメット本体に取り付けられ、前記孔に固定可能なグロメットインナと、
を備え、
前記グロメットインナは、
筒状のインナ本体と、
前記インナ本体の軸方向一端部に設けられ、このインナ本体の軸方向一端部から前記インナ本体の外側へ延びており、前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記インナ本体の筒壁が延びる方向に間隔をあけて配置される複数のフランジ部と、
前記孔に引っ掛かるために前記インナ本体に配置され、弾性変形することで前記インナ本体の内部空間に近づく方向に変位して前記孔への引っ掛かりを解除することが可能なロック部と、
を有し、
前記ロック部は、前記インナ本体の軸方向に沿って延びる部分を有し、
前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記ロック部の一部が、前記複数のフランジ部のうち、前記インナ本体の筒壁が延びる方向で隣り合うフランジ部の間に配置されることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
請求項1に記載のグロメットであって、
前記ロック部は、前記インナ本体の外側へ延びる突出部を備え、
前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記突出部は、前記インナ本体の筒壁が延びる方向で前記フランジ部と並べて配置されることを特徴とするグロメット。
【請求項3】
請求項2に記載のグロメットであって、
前記ロック部が前記孔に引っ掛けられた状態で、前記突出部の外側端部は、前記フランジ部の外側端部よりも、前記インナ本体に近いことを特徴とするグロメット。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のグロメットであって、
前記フランジ部に対して、前記孔への前記インナ本体の差込方向の奥側に、前記インナ本体の筒状部分が配置され、
前記突出部はフランジ状に形成され、
前記突出部において前記差込方向の奥側を向く面は、前記フランジ部において前記差込方向の奥側を向く面と、同一平面上に配置されることを特徴とするグロメット。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記ロック部と、前記インナ本体の筒壁が延びる方向で前記ロック部に対して隣り合う前記フランジ部と、の間に、隙間が形成されることを特徴とするグロメット。
【請求項6】
請求項5に記載のグロメットであって、
前記ロック部を挟んで位置する2つの前記フランジ部の間の間隔は、前記インナ本体に近い側よりも前記インナ本体から遠い側の方が大きくなるように形成されることを特徴とするグロメット。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のグロメットであって、
前記ロック部を挟んで位置する2つの前記フランジ部の間の間隔は、前記インナ本体から離れるに従って広がるように形成されることを特徴とするグロメット。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記ロック部は、前記インナ本体に対して複数設けられることを特徴とするグロメット。
【請求項9】
請求項8に記載のグロメットであって、
前記インナ本体を軸方向に垂直な面で切った断面は、長手方向と短手方向を有する形状であり、
前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記長手方向に押されることで前記孔への引っ掛かりを解除する前記ロック部は、前記短手方向に押されることで前記孔への引っ掛かりを解除する前記ロック部に比べて、前記インナ本体の筒壁が延びる方向での寸法が小さいことを特徴とするグロメット。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記ロック部とは別のロック部を備え、
前記別のロック部は、前記孔に引っ掛かるために前記インナ本体に配置され、弾性変形することで前記インナ本体の内部空間に近づく方向に変位して前記孔への引っ掛かりを解除することが可能であり、
前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記フランジ部の外端が、前記別のロック部の外側で連結することを特徴とするグロメット。
【請求項11】
請求項10に記載のグロメットであって、
前記グロメット本体の内部空間は、一側に曲がる部分を有し、
前記別のロック部は、前記インナ本体に対して、前記グロメット本体の内部空間が曲げられている側と同じ側に配置されることを特徴とするグロメット。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記複数のフランジ部のうち少なくとも1つには、前記インナ本体から遠い側に開口する凹部が形成されることを特徴とするグロメット。
【請求項13】
請求項12に記載のグロメットであって
前記グロメット本体は、前記凹部に嵌まる突起を有することを特徴とするグロメット。
【請求項14】
請求項1から13までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記グロメット本体は、外部から視認可能に設けられた目印を有し、
前記目印は、前記ロック部を挟んで位置する2つの前記フランジ部の間の間隔に対応する位置を示すことを特徴とするグロメット。
【請求項15】
請求項1から14までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記ロック部の基端部は、前記インナ本体の軸方向において、前記フランジ部が配置される側と反対側の端部に配置されることを特徴とするグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のパネル等に設けられた孔に電線等が挿入される場合、グロメットが用いられることがある。グロメットは、孔に嵌めることができ、かつ、電線等を通すことができる。グロメットが用いられることで、孔の縁部によって電線等が損傷することを防止することができる。このようなグロメットは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のグロメットは、グロメット本体と、グロメット本体に組み付けられたロック部材と、から構成されている。グロメット本体は、ゴム等の弾性軟質材から構成されている。ロック部材は、合成樹脂等の弾性硬質材から形成されている。ロック部材は、係止爪を有する係止部を備える。グロメットがパネルに取り付けられるとき、係止爪は、パネルの取付穴に撓みながら挿入された後、元の状態に復帰してパネル裏面側に係止される。
【0004】
パネルに取り付けられているグロメットを取り外すときには、グロメット本体に設けられた解除穴内にマイナスドライバー等の工具の先端が挿入される。係止部に設けられたレバー部の先端が工具の先端により内側方向に撓ませられることで、取付穴に係止されている係止爪の係止が解除される。そして、グロメット本体が引き抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成は、グロメットをパネルから取り外す作業を行うために、マイナスドライバー等の工具が必要であった。しかも、グロメットの取外しのため、工具に対応する部分(解除穴)が備えられるように、グロメットを構成する必要もあった。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、簡単な構造で、孔から外す際の作業性が向上するグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成のグロメットが提供される。即ち、このグロメットは、孔に取り付けられる。前記グロメットは、グロメット本体と、グロメットインナと、を備える。前記グロメット本体は、中空状である。前記グロメットインナは、前記グロメット本体に取り付けられ、前記孔に固定可能である。前記グロメットインナは、インナ本体と、複数のフランジ部と、ロック部と、を有する。前記インナ本体は、筒状である。前記複数のフランジ部は、前記インナ本体の軸方向一端部に設けられ、このインナ本体の軸方向一端部から前記インナ本体の外側へ延びている。前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記複数のフランジ部は、前記インナ本体の筒壁が延びる方向に間隔をあけて配置される。前記ロック部は、前記孔に引っ掛かるために前記インナ本体に配置される。前記ロック部は、弾性変形することで前記インナ本体の内部空間に近づく方向に変位して前記孔への引っ掛かりを解除することが可能である。前記ロック部は、前記インナ本体の軸方向に沿って延びる部分を有する。前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記ロック部の一部が、前記複数のフランジ部のうち、前記インナ本体の筒壁が延びる方向で隣り合うフランジ部の間に配置される。
【0010】
これにより、ロック部を、隣り合って配置されるフランジ部に対して独立して、インナ本体に近づく方向に変位させることができる。従って、孔に対してインナ本体がロック部のロックにより固定されている状態を、フランジ部の間のロック部を押して弾性変形させることで、解除することができる。この結果、グロメットを簡単な構造で実現しつつ、グロメットインナを孔から外す際の作業性を向上させることができる。
【0011】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ロック部は、前記インナ本体の外側へ延びる突出部を備える。前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記突出部は、前記インナ本体の筒壁が延びる方向で前記フランジ部と並べて配置される。
【0012】
これにより、フランジ部の間に位置する突出部を押すことで、ロック部を容易に弾性変形させることができる。
【0013】
前記のグロメットにおいては、前記ロック部が前記孔に引っ掛けられた状態で、前記突出部の外側端部は、前記フランジ部の外側端部よりも、前記インナ本体に近いことが好ましい。
【0014】
これにより、突出部をフランジ部と識別し易くなる。また、突出部が意図せず押されにくくなる。
【0015】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記フランジ部に対して、前記孔への前記インナ本体の差込方向の奥側に、前記インナ本体の筒状部分が配置される。前記突出部はフランジ状に形成される。前記突出部において前記差込方向の奥側を向く面は、前記フランジ部において前記差込方向の奥側を向く面と、同一平面上に配置される。
【0016】
これにより、突出部及びフランジ部を簡単に構成することができる。
【0017】
前記のグロメットにおいては、前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記ロック部と、前記インナ本体の筒壁が延びる方向で前記ロック部に対して隣り合う前記フランジ部と、の間に、隙間が形成されることが好ましい。
【0018】
これにより、ロック部をフランジ部と独立して変位させるための簡素な構成を実現できる。
【0019】
前記のグロメットにおいては、前記ロック部を挟んで位置する2つの前記フランジ部の間の間隔は、前記インナ本体に近い側よりも前記インナ本体から遠い側の方が大きくなるように形成されることが好ましい。
【0020】
これにより、フランジ部及びロック部の外周側がグロメット本体で覆われた状態でも、作業者が、グロメット本体の外側から指でロック部を間接的に押し易くなる。従って、孔からグロメットを取り外す作業が容易になる。
【0021】
前記のグロメットにおいては、前記ロック部を挟んで位置する2つの前記フランジ部の間の間隔は、前記インナ本体から離れるに従って広がるように形成されることが好ましい。
【0022】
これにより、作業者がグロメット本体の外側から指で押す位置及び方向が、間隔の部分の形状によって適切に案内される。従って、ロック部のロック解除が容易である。
【0023】
前記のグロメットにおいては、前記ロック部は、前記インナ本体に対して複数設けられることが好ましい。
【0024】
これにより、複数のロック部を用いて、グロメットインナを孔に安定して固定することができる。
【0025】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記インナ本体を軸方向に垂直な面で切った断面は、長手方向と短手方向を有する形状である。前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記長手方向に押されることで前記孔への引っ掛かりを解除する前記ロック部は、前記短手方向に押されることで前記孔への引っ掛かりを解除する前記ロック部に比べて、前記インナ本体の筒壁が延びる方向での寸法が小さい。
【0026】
これにより、複数のロック部の合理的な配置を実現できる。
【0027】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このグロメットは、前記ロック部とは別のロック部を備える。前記別のロック部は、前記孔に引っ掛かるために前記インナ本体に配置される。前記別のロック部は、弾性変形することで前記インナ本体の内部空間に近づく方向に変位して前記孔への引っ掛かりを解除することが可能である。前記インナ本体の軸心に沿って見たときに、前記フランジ部の外端が、前記別のロック部の外側で連結する。
【0028】
これにより、グロメット本体を外側から押しても、フランジ部があるため、別のロック部によるロックは解除できない。このような別のロック部を有することにより、グロメットインナが孔から必要以上に外れ易くなるのを防止できる。
【0029】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記グロメット本体の内部空間は、一側に曲がる部分を有する。前記別のロック部は、前記インナ本体に対して、前記グロメット本体の前記内部空間が曲げられている側と同じ側に配置される。
【0030】
これにより、前記グロメット本体の一部が邪魔になって作業者の指が届きにくい部分に、別のロック部を配置することができる。従って、全体として合理的な配置を実現できる。
【0031】
前記のグロメットにおいては、前記複数のフランジ部のうち少なくとも1つには、前記インナ本体から遠い側に開口する凹部が形成されることが好ましい。
【0032】
これにより、グロメットインナをグロメット本体に取り付けるとき、凹部を用いて、グロメット本体に対するグロメットインナの位置決めを行うことができる。
【0033】
前記のグロメットにおいては、前記グロメット本体は、前記凹部に嵌まる突起を有することが好ましい。
【0034】
これにより、グロメットインナをグロメット本体に取り付けるとき、凹部に突起を嵌めることで、グロメット本体に対するグロメットインナの保持力を高めることができる。また、凹部と突起を非対称的に配置することにより、組付ミスの防止を実現することができる。
【0035】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記グロメット本体は、外部から視認可能に設けられた目印を有する。前記目印は、前記ロック部を挟んで位置する2つの前記フランジ部の間の間隔に対応する位置を示す。
【0036】
これにより、作業者は、ロック部を間接的に押すことができる場所を、グロメット本体の目印によって容易に理解することができる。
【0037】
前記のグロメットにおいては、前記ロック部の基端部は、前記インナ本体の軸方向において、前記フランジ部が配置される側と反対側の端部に配置されることが好ましい。
【0038】
これにより、インナ本体の軸方向で、ロック部の長さを十分に確保することができる。従って、円滑に弾性変形させることが可能なロック部を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の一実施形態に係るグロメットの斜視図。
【
図8】(a)グロメットがパネルに取り付けられる途中の様子を示す一部断面図。(b)グロメットがパネルに取り付けられた様子を示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、図面を参照して本発明の一実施形態に係るグロメット1について説明する。本実施形態に係るグロメット1は、いわゆるインナ付きグロメットである。ここでのインナとは、グロメット1におけるインナ部材を指し、後述のグロメットインナ13に相当する。
【0041】
グロメット1は、
図2に示すように、車両のパネル等のパネル5に設けられた貫通孔(孔)7に電線等の線状部材W1を通す際に用いられる。グロメット1により、貫通孔7の縁部によって線状部材W1が傷つくことを防止することができ、また、貫通孔7を介した浸水を防止することができる。
【0042】
パネル5は、例えば、車両のエンジンルーム側の空間と車室側の空間とを仕切るように配置される。貫通孔7が、仕切られた2つの空間を繋ぐようにパネル5に設けられる。そして、貫通孔7に対してグロメットインナ13が固定されて、グロメット1がパネル5に着脱可能に取り付けられる。
【0043】
パネル5にグロメット1が取り付けられた場合、グロメットインナ13は、エンジンルーム側の空間と車室側の空間とにまたがって配置される。線状部材W1は、グロメット本体11及びグロメットインナ13のそれぞれの内部空間を通過する。
【0044】
以下、グロメット1について詳細に説明する。以下の説明では、各構成の相対的な位置関係等を説明するために、
図1から
図4までに示す矢印に従ってグロメット1の前後方向、左右方向、及び上下方向を定義する。ただし、これらの方向の定義は便宜的なものであり、グロメット1が使用される向き等を限定するものではない。
【0045】
本実施形態では、上下方向は、グロメット本体11が備える第1取付部23の軸方向に相当するとともに、グロメットインナ13の軸方向に相当する。第1取付部23の内部空間の開口、及び、グロメットインナ13の内部空間の開口は、何れも長円状に形成される。前後方向は、この長円の長軸方向に相当する。左右方向は、長円の短軸方向に相当する。
【0046】
図1に示すように、グロメット1は、グロメット本体11と、グロメットインナ13と、を備えている。グロメットインナ13は、グロメット本体11に取り付けられている。グロメットインナ13の一部は、グロメット本体11の内側に配置されている。
【0047】
最初に、グロメット本体11について説明する。
【0048】
グロメット本体11は、弾性変形が容易な材料、例えば軟質ゴムにより構成される。グロメット本体11は、中空状に構成されている。
【0049】
具体的には、グロメット本体11は、細長い筒状体として構成されている。グロメット本体11は、その長手方向が前後方向に沿うように延びつつ、一部が長手方向に対して交差する方向に曲がるように設けられている。グロメット本体11は、その内部空間に線状部材W1を通すことができる。
【0050】
図1に示すように、グロメット本体11は、延長部21と、第1取付部23と、第1曲げ部25と、第2取付部27と、第2曲げ部29と、を有する。延長部21、第1取付部23、第1曲げ部25、第2取付部27、第2曲げ部29は、それぞれ中空状に構成されている。
【0051】
延長部21は、円筒状に形成されている。延長部21は、前後方向に延びるように設けられている。延長部21が延びる方向が、グロメット本体11の長手方向に相当する。延長部21には、蛇腹状部分31が形成されている。この蛇腹状部分31により、延長部21は容易に曲がることができる。
【0052】
第1取付部23は、グロメット本体11の端部に配置されている。第1取付部23には、グロメットインナ13を取り付けることができる。第1取付部23は、第1曲げ部25を介して、延長部21の長手方向一端部と接続されている。第1取付部23は、延長部21の長手方向と交差する方向を向く。
【0053】
第1取付部23は、筒状に形成されている。また、第1取付部23は、その軸方向に沿って見たとき(グロメット1の上方から見たとき)、長円状に形成されている。詳細は後述するが、第1取付部23の内部空間は、長円状の開口を形成している。第1取付部23の軸方向に沿って見たとき、この長円の長軸方向は、延長部21(グロメット本体11)の長手方向である前後方向に概ね沿うように配置されている。
【0054】
図3には、グロメットインナ13が取り外された状態のグロメット本体11が示されている。
図2及び
図3に示すように、第1取付部23は、第1開口部33と、第2開口部35と、を有する。第1開口部33及び第2開口部35は、何れも長円状に形成されている。第1開口部33は、第2開口部35よりも第1曲げ部25に近い側に配置されている。第1開口部33の長円形状と第2開口部35の長円形状は、実質的に相似となっており、長軸同士が同じ向きとなるように配置されている。第2開口部35は、第1開口部33よりも外周側に位置する。
【0055】
第1取付部23において、第2開口部35よりも外周側には、第1リップ部37と、第2リップ部39と、が設けられている。第1リップ部37及び第2リップ部39は、それぞれ第1曲げ部25から離れる方向(上方)に突出している。第1リップ部37及び第2リップ部39は、何れも、第2開口部35に沿うように長円状に形成されている。第1リップ部37は、第2リップ部39よりも外周側に位置する。第1リップ部37及び第2リップ部39は、パネル5のうち貫通孔7の縁部近傍に密着することができる。
【0056】
第1取付部23には、内部空間に向かって開口する環状の凹状溝部41が形成されている。凹状溝部41の開口は、第2開口部35に沿う長円状に形成されている。
【0057】
凹状溝部41には、
図3に示すように、突起43が設けられている。
図2には突起43は2つしか現れていないが、本実施形態では、突起43は複数(4つ)設けられている。複数の突起43は、凹状溝部41内で第1取付部23の周方向に適宜の間隔をあけて並べて配置されている。詳細は後述するが、複数の突起43は、それぞれ、グロメットインナ13のフランジ部53に形成されている凹部77に嵌まることができる。
【0058】
第1曲げ部25は、グロメット本体11の内部空間が一側に曲がる部分を構成している。第1曲げ部25は、延長部21と第1取付部23との間に配置されている。第1曲げ部25は、延長部21の延長方向に対して交差する方向に曲がっている。第1曲げ部25を経由させることで、線状部材W1を延長部21と第1取付部23とで異なる方向に通過させることができる。
【0059】
図1に示すように、第2取付部27は、第2曲げ部29を介して延長部21の長手方向他端部と接続されている。第2取付部27は、延長部21の長手方向と交差する方向を向く。第2曲げ部29を経由させることで、線状部材W1を延長部21と第2取付部27とで異なる方向に通過させることができる。
【0060】
次に、グロメットインナ13について説明する。
【0061】
グロメットインナ13は、グロメット本体11よりも剛性のある材料、例えば合成樹脂により構成されている。
図4、
図5及び
図6に示すように、グロメットインナ13は、インナ本体51と、複数のフランジ部53と、ロック部55と、を有する。グロメットインナ13は、型を用いて一体的に製造することができる。
【0062】
インナ本体51は、中空の筒状に形成されている。詳細には、インナ本体51は2重筒状に形成されている。内側の筒壁と外側の筒壁は、筒軸の一端側に配置された壁部によって一体的に接続される。インナ本体51の筒状部分を筒軸に垂直な面で切った断面は長円状である。この断面は、長手方向(長軸方向)と短手方向(短軸方向)を有する。
図4等では、インナ本体51の筒軸方向を上下方向とし、上記の断面の長軸方向を前後方向とし、短軸方向を左右方向とした状態が描かれている。筒軸は、インナ本体51の軸心に相当する。
【0063】
インナ本体51は、グロメットインナ13がグロメット本体に取り付けられたとき、
図1に示すように一部がグロメット本体11の第1取付部23に挿入された状態となる。この状態では、インナ本体51の筒軸方向が、グロメット本体11の第1取付部23の軸方向と一致する。インナ本体51がグロメット本体11に取り付けられた状態では、インナ本体51の内部空間が第1取付部23の内部空間と繋がる。これらの内部空間を、
図2に示すように、電線等の線状部材W1が通過することができる。
【0064】
インナ本体51は、筒軸に沿って見たときに、
図6に示すように長円状に形成されている。この長円は、パネル5の貫通孔7の形状に対して実質的に相似する。筒状に形成されたインナ本体51の外周面を筒軸に垂直な平面で切った断面において、長軸方向及び短軸方向のそれぞれの寸法は、対応する貫通孔7のものと比べて実質的に少し小さい。インナ本体51は、互いに対向する2つの第1部分61と、互いに対向する2つの第2部分63と、を有する。
【0065】
第1部分61は、長軸方向に延びる直線状に形成されている。第2部分63は、半円状に形成されている。2つの第2部分63のうち一方の第2部分63は、2つの第1部分61のそれぞれの長手方向一端部を繋ぎ、他方の第2部分63は、2つの第1部分61のそれぞれの長手方向他端部を繋ぐ。
【0066】
インナ本体51の外周面において、それぞれの第1部分61の長手方向中央に、1対の第1スリット65が形成されている。2つの第1スリット65のそれぞれは、インナ本体51の筒軸と平行に延びている。それぞれの第1スリット65は、インナ本体51の筒軸方向の全体にわたって形成されている。
【0067】
第1スリット65は、2重筒状に形成されるインナ本体51の外側の筒壁にのみ形成されている。第1スリット65は、この外側の筒壁を厚み方向に貫通するように形成されている。インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、2つの第1スリット65は、筒壁が延びる方向で適宜の間隔をあけて並んで配置されている。インナ本体51の外側の筒壁のうち、1対の第1スリット65の間の部分に、後述のロック部55が構成される。
【0068】
インナ本体51の外周面において、それぞれの第2部分63の長手方向中央に、1対の第2スリット71が形成されている。2つの第2スリット71の構成は、第1スリット65と実質的に同じである。インナ本体51の外側の筒壁のうち、1対の第2スリット71の間の部分に、ロック部55が構成される。
【0069】
複数のフランジ部53は、それぞれ、インナ本体51の筒軸方向の一端部に設けられている。フランジ部53は、インナ本体51の筒軸方向で、2重の筒壁が連結される側と反対側の端部に配置されている。複数のフランジ部53のそれぞれは、インナ本体51の外側の筒壁から、筒軸と垂直な向きで外側へ突出する板状に形成されている。インナ本体51の筒軸に沿って見たとき、
図6のように、各フランジ部53の突出端部(外側端部)は、インナ本体51の外周面とほぼ平行となっている。インナ本体51の筒軸に沿って見たとき、複数のフランジ部53のそれぞれは、インナ本体51の筒壁が延びる方向(言い換えれば、長円の周方向)に間隔をあけて配置されている。この間隔の部分に、後述の凹部77及び隙間107等が配置されている。
【0070】
インナ本体51の筒軸に沿って見たとき、凹部77は、インナ本体51の筒壁が延びる方向でフランジ部53とフランジ部53の間に挟まれるように配置されている。インナ本体51の筒軸に沿って見たとき、凹部77は、インナ本体51から遠い側を開放させている。
【0071】
グロメットインナ13がグロメット本体11に取り付けられるとき、凹部77は、前述の突起43に略隙間なく嵌まる。凹部77及び突起43は、インナ本体51の長軸方向で一側に偏った位置、言い換えれば非対称な位置に形成されている。これにより、グロメットインナ13をグロメット本体11に対して本来とは逆の向きに取り付ける組立ミスを防止することができる。
【0072】
ロック部55は、インナ本体51に対して複数(4つ)設けられている。それぞれのロック部55は、インナ本体51の外周面に配置されている。ロック部55は、
図8(b)に示すようにパネル5の貫通孔7に引っ掛かり、貫通孔7に対してグロメットインナ13が固定された状態をロックする。ロック部55は、弾性変形することでインナ本体51に近づく方向に変位して貫通孔7への引っ掛かりを解除する。このように、ロック部55は、ロック状態とロック解除状態とを切り換えることができる。
【0073】
それぞれのロック部55は、基端と、自由端と、を有する。基端は、インナ本体51のうち、2重の筒壁が連結される部分に配置されている。ロック部55は、この基端から、フランジ部53が形成されている側に近づくように、インナ本体51の筒軸方向に概ね沿って延びている。ロック部55の先端部は、自由端とされている。
【0074】
インナ本体51の筒軸方向に沿って
図6のように見たときに、複数のロック部55は、インナ本体51の筒壁が延びる方向で適宜の間隔をあけて配置されている。各ロック部55は、インナ本体51の筒壁が延びる方向でフランジ部53とフランジ部53の間に挟まれるように配置されている。
【0075】
具体的には、4つのロック部55のうち2つのロック部55は、第1部分61の第1スリット65に挟まれるようにして、インナ本体51の短軸方向の端部に設けられる。残りの2つのロック部55は、第2部分63の第2スリット71に挟まれるようにして、インナ本体51の長軸方向の端部に設けられる。4つのロック部55は実質的に同じ構成を有するので、以下では、第1スリット65の部分に配置されたロック部55を例にして説明する。
【0076】
図7等に示すように、ロック部55は、支持部81と、変形部83と、爪部85と、接続部87と、突出部89と、を有する。変形部83の一部、爪部85、及び接続部87が、ロック部55のうち、インナ本体51の筒軸方向に沿って延びる部分に含まれている。ロック部55の自由端の部分には、突出部89が配置されている。
【0077】
支持部81は、ロック部55の基端に配置されている。支持部81は、インナ本体51の内側の筒壁から、筒軸に垂直な方向に外側へ直線状に突出している。
【0078】
変形部83は、支持部81の先端部であって、ロック部55がほぼ垂直に曲がる部分に配置されている。変形部83は、支持部81の先端部から曲がりながら、爪部85に向かって延びている。変形部83が弾性変形することにより、インナ本体51に対してロック部55を変位させることができる。変形部83は、ロック部55の自由端に外部から力を加えたときに弾性変形する主要部分であるが、ロック部55のうち変形部83以外の部分も弾性変形し得る。
【0079】
爪部85は、インナ本体51の筒軸に対して概ね垂直な方向に外側へ突出するように形成されている。爪部85は、
図8(b)に示すように、パネル5の貫通孔7に引っ掛かることができる。爪部85は、変形部83よりも自由端に近い側に設けられている。爪部85は、インナ本体51の内側の筒壁における軸方向途中部に対して、適宜の隙間を形成するように配置されている。
【0080】
爪部85の外面は、略3角形状に突出している。爪部85の外面は、
図7に示すように、自由端側に近づくに従って外側への突出量が増大する部分と、自由端側に近づくに従って外側への突出量が減少する部分と、を有する。爪部85の最も外側の部分は、変形部83が弾性変形しないとき、インナ本体51の外周面から実質的に突出している。爪部85は、変形部83の弾性変形により、この位置から、インナ本体51の内側の筒壁に近づく方向に変位する。
【0081】
爪部85には、接続部87を介して、突出部89が設けられている。接続部87及び突出部89は、爪部85よりも自由端側に配置されている。
【0082】
突出部89は、フランジ状に形成されている。突出部89は、インナ本体51の筒軸と垂直な向きで外側へ突出する板状に形成されている。インナ本体51の筒軸に沿って見たとき、
図6のように、突出部89の突出端面は、フランジ部53の突出端面とほぼ一致する。
【0083】
突出部89は、インナ本体51の筒軸方向一端部と対応する位置に配置されている。
図5等に示すように、突出部89とフランジ部53は、インナ本体51の筒軸に垂直な共通の平面に沿って配置されている。インナ本体51の筒軸に沿って見たとき、突出部89は、インナ本体51の筒壁が延びる方向でフランジ部53と並べて配置されている。
【0084】
爪部85の内面は、
図7等に示すように、自由端側に近づくに従ってインナ本体51の内側の筒壁との距離を増大させるように緩やかに傾斜している。これにより、ロック部55を内側の筒壁に近づく方向に
図8(a)のように大きく変位させても、インナ本体51の内側の筒壁にロック部55が干渉することを防止できる。
【0085】
パネル5にグロメットインナ13を取り付けたときに、突出部89の厚み方向一側の面は、パネル5に対向する。以下、この面を対向面101と呼ぶ。フランジ部53の厚み方向一側の面もパネル5に対向し、この面を対向面103と呼ぶ。突出部89の対向面101は、各フランジ部53の対向面103と同一平面上に配置されている。これらの対向面101,103は、グロメットインナ13をパネル5の貫通孔7に取り付けるときの差込方向奥側を向く面ということができる。
【0086】
ロック部55が弾性変形していない場合、インナ本体51の筒軸に沿って見たとき、突出部89の突出端面である外側端部109は、フランジ部53の突出端面である外側端部111と一致する。即ち、突出部89の外側端部109は、フランジ部53の外側端部111よりも外側には配置されない。ロック部55がパネル5の貫通孔7に引っ掛けられた状態では、ロック部55は少し弾性変形する。このとき、突出部89の外側端部109は、フランジ部53の外側端部111よりも、僅かにインナ本体51に近い側に配置される。これにより、突出部89が意図せず押されにくくなる。
【0087】
本実施形態では、インナ本体51の筒軸に沿って
図6のように見たときに、ロック部55の一部である突出部89が、複数のフランジ部53のうち、インナ本体51の筒壁が延びる方向で隣り合うフランジ部53の間に配置されている。
【0088】
ロック部55の突出部89と、この突出部89と隣り合うフランジ部53と、の間に、隙間107が形成されている。言い換えれば、ロック部55は、隣り合うフランジ部53に対して分離した状態で設けられる。そのため、ロック部55は、インナ本体51に対して、隣り合うフランジ部53と独立して変位することができる。
【0089】
隙間107は、1つの突出部89を挟むように1対で形成される。これらの隙間107は、インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、インナ本体51の筒壁が延びる方向で突出部89を挟んで位置する2つのフランジ部53の間の距離が、インナ本体51に近い側よりもインナ本体51から遠い側の方が大きくなるように形成されている(
図6において、L1<L2)。
【0090】
本実施形態では、隙間107は、インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、インナ本体51から外側へ離れるに従って徐々に広がる略V字状に形成されている。隙間107は、第1スリット65に連続するように設けられている。
【0091】
次に、グロメット1をパネル5に取り付ける場合に、貫通孔7に対してグロメットインナ13を着脱するための構成について説明する。
【0092】
グロメット1をパネル5に取り付ける前の準備作業として、作業者は、グロメットインナ13を、グロメット本体11の第2開口部35に差し込んで取り付ける。グロメットインナ13のフランジ部53を、グロメット本体11の凹状溝部41に嵌めることで、グロメット本体11に対してグロメットインナ13が
図1のように固定される。
【0093】
その後、作業者は、グロメットインナ13を、パネル5の貫通孔7に差し込む。
図8では、差込方向が下から上である場合が描かれている。
【0094】
前述のように、爪部85の外面は、自由端側(言い換えれば、差込方向の手前側)に近づくに従って外側への突出量が増大する部分を有する。従って、貫通孔7へのグロメットインナ13の差込みに連動して、
図8(a)に示すように、ロック部55の爪部85が貫通孔7の縁部に押されて、変形部83が弾性変形する。これにより、ロック部55がインナ本体51に近づく側に変位する。この状態では、爪部85がインナ本体51に近づくように内側へ退避するため、グロメットインナ13をパネル5の貫通孔7に通すことが可能となる。作業者は、爪部85が貫通孔7を乗り越えるまで、グロメットインナ13(言い換えれば、グロメット1)を下から上へ押し込む。
【0095】
爪部85の最も外側の部分が貫通孔7を通り抜けると、ロック部55に復元力が作用する。よって、ロック部55が変位して、
図8(b)に示すように、グロメットインナ13側の爪部85と、グロメット本体11側の第1リップ部37及び第2リップ部39と、でパネル5が挟まれた状態となる。また、爪部85が貫通孔7の縁部に引っ掛かる。
【0096】
よって、貫通孔7に対してグロメットインナ13をロック部55によりロックして、グロメット1をパネル5に取り付けることができる。このときには、第1リップ部37は、外側に向かって広がるようにパネル5に押し付けられて、パネル5と密着する。そのため、第1リップ部37とパネル5との間の止水性を良好に確保することができる。
【0097】
一方、パネル5の貫通孔7に対して固定されている状態のグロメット1を取り外したい場合には、作業者は、4つのロック部55の突出部89を同時に、グロメット本体11を介して間接的に、外側から内側に向かって指で押す。これにより、爪部85がインナ本体51の内側の筒壁に近づくように退避した、ロック解除状態とすることができる。この状態で、作業者は、グロメットインナ13を貫通孔7から引き抜いて外す。
【0098】
グロメット本体11には、
図1に示すように、目印171を外部から視認可能に設けておくことが好ましい。目印171は、ロック部55を挟んで位置する2つのフランジ部53の間の間隔に対応する位置を示す。この場合、グロメット1をパネル5から外すとき、作業者は、ロック部55を間接的に押すことができる場所を、目印171によって容易に理解することができる。
【0099】
以上に説明したように、本実施形態のグロメット1は、貫通孔7に取り付けられる。グロメット1は、グロメット本体11と、グロメットインナ13と、を備える。グロメット本体11は、中空状である。グロメットインナ13は、グロメット本体11に取り付けられ、貫通孔7に固定可能である。グロメットインナ13は、インナ本体51と、複数のフランジ部53と、ロック部55と、を有する。インナ本体51は、筒状である。複数のフランジ部53は、インナ本体51の軸方向一端部に設けられ、このインナ本体51の軸方向一端部からインナ本体51の外側へ延びている。インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、複数のフランジ部53は、インナ本体51の筒壁が延びる方向に間隔をあけて配置される。ロック部55は、貫通孔7に引っ掛かるためにインナ本体51に配置される。ロック部55は、弾性変形することでインナ本体51の内部空間に近づく方向に変位して貫通孔7への引っ掛かりを解除することが可能である。ロック部55は、インナ本体51の軸方向に沿って延びる部分(爪部85及び接続部87等)を有する。インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、ロック部55の一部である突出部89が、複数のフランジ部53のうち、インナ本体51の筒壁が延びる方向で隣り合うフランジ部53の間に配置される。
【0100】
これにより、ロック部55を、隣り合って配置されるフランジ部53に対して独立して、インナ本体51に近づく方向に変位させることができる。従って、貫通孔7に対してインナ本体51がロック部55のロックにより固定されている状態を、フランジ部53の間のロック部55を押して弾性変形させることで、解除することができる。この結果、グロメット1を簡単な構造で実現しつつ、グロメットインナ13を貫通孔から外す際の作業性を向上させることができる。
【0101】
また、本実施形態のグロメット1において、ロック部55は、インナ本体51の外側へ延びる突出部89を備える。インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、突出部89は、インナ本体51の筒壁が延びる方向でフランジ部53と並べて配置される。
【0102】
これにより、フランジ部53の間に位置する突出部89を押すことで、ロック部55を容易に弾性変形させることができる。
【0103】
また、本実施形態のグロメット1において、ロック部55が貫通孔7に引っ掛けられた状態では、突出部89の外側端部109は、フランジ部53の外側端部111よりも、インナ本体51に近い。
【0104】
これにより、グロメット1がパネルに取り付けられた状態で、突出部89が意図せず押されにくくなる。また、突出部89の外側端部109を、フランジ部53の外側端部111よりもある程度大きく内側に位置させれば、作業者は、グロメット本体11に指で触れた感触によって内側の突出部89を識別し易くなる。
【0105】
また、本実施形態のグロメット1において、フランジ部53に対して、貫通孔7へのインナ本体51の差込方向の奥側に、インナ本体51の筒状部分が配置される。突出部89はフランジ状に形成される。突出部89において差込方向の奥側を向く面である対向面101は、フランジ部53において差込方向の奥側を向く面である対向面103と、同一平面上に配置される。
【0106】
これにより、突出部89及びフランジ部53を簡単に構成することができる。
【0107】
また、本実施形態のグロメット1において、インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、ロック部55と、インナ本体51の筒壁が延びる方向でロック部55に対して隣り合うフランジ部53と、の間に、隙間107が形成される。
【0108】
これにより、ロック部55をフランジ部53と独立して変位させるための簡素な構成を実現できる。
【0109】
また、本実施形態のグロメット1において、ロック部55を挟んで位置する2つのフランジ部53の間の間隔は、インナ本体51に近い側よりもインナ本体51から遠い側の方が大きくなるように形成される(
図6のL1<L2)。
【0110】
これにより、フランジ部53及びロック部55の外側がグロメット本体で覆われた状態でも、作業者が、グロメット本体11の外側から指でロック部55を間接的に押し易くなる。従って、貫通孔7からグロメット1を取り外す作業が容易になる。
【0111】
また、本実施形態のグロメット1において、ロック部55を挟んで位置する2つのフランジ部53の間の間隔は、インナ本体51から離れるに従って滑らかに広がるように形成される。
【0112】
これにより、作業者がグロメット本体11の外側から指で押す位置及び方向が、間隔の部分の形状によって適切に案内される。従って、ロック部55のロック解除が容易である。
【0113】
また、本実施形態のグロメット1において、ロック部55は、インナ本体51に対して複数設けられる。
【0114】
これにより、複数のロック部55を用いて、グロメットインナ13を貫通孔7に安定して固定することができる。
【0115】
また、本実施形態のグロメット1において、複数のフランジ部53のうち少なくとも1つには、インナ本体51から遠い側に開口する凹部77が形成される。
【0116】
これにより、グロメットインナ13をグロメット本体11に取り付けるとき、凹部77を用いて、グロメット本体11に対するグロメットインナ13の位置決めを行うことができる。
【0117】
また、本実施形態のグロメット1において、グロメット本体11は、凹部77に嵌まる突起43を有する。
【0118】
これにより、グロメットインナ13をグロメット本体11に取り付けるとき、凹部77に突起43を嵌めることで、グロメット本体11に対するグロメットインナ13の保持力を高めることができる。また、凹部77と突起43を非対称的に配置することにより、組付ミスの防止を実現することができる。
【0119】
また、本実施形態のグロメット1において、グロメット本体11は、外部から視認可能に設けられた目印171を有する。目印171は、ロック部55を挟んで位置する2つのフランジ部53の間の間隔に対応する位置を示す。
【0120】
これにより、作業者は、ロック部55を間接的に押すことができる場所を、グロメット本体11の目印171によって容易に理解することができる。
【0121】
また、本実施形態のグロメット1において、ロック部55の基端部は、インナ本体51の軸方向において、フランジ部53が配置される側と反対側の端部に配置される。
【0122】
これにより、インナ本体51の軸方向で、ロック部55の長さを十分に確保することができる。従って、円滑に弾性変形させることが可能なロック部55を容易に実現することができる。
【0123】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。本変形例のグロメットでは、上記の実施形態のグロメット1と比べて、グロメットインナ13xが備えるロック部55xの形状が異なる。
【0124】
図9及び
図10に示すように、グロメットインナ13xは、上記の実施形態と比較して幅が広いロック部55xを備えている。ここで、幅とは、インナ本体51の筒軸に沿って見たときに筒壁が延びる方向を意味する。ロック部55xの幅方向中央に、爪部85が形成されている。爪部85の幅は、ロック部55xの幅よりも小さい。
【0125】
突出部89には、孔131が設けられている。孔131は、突出部89をインナ本体51の軸方向に貫通する。孔131の形状は、インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、爪部85と対応している。
【0126】
本変形例の形状は、爪部85を形成するための金型を上記の実施形態よりも簡素化できる点で優れている。
【0127】
グロメットインナ13は、上記実施形態のロック部55又は本変形例のロック部55xを少なくとも1つ備えれば良い。例えば、グロメットインナ13は、上記実施形態のロック部55又は本変形例のロック部55xのみを備えるものであっても良いし、これら両者を組み合わせたロック部を備えるものであっても良い。
【0128】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0129】
4つのロック部55のうち、第2スリット71の部分に形成されるロック部55は、インナ本体51の長軸方向に押されることで貫通孔7への引っ掛かりを解除する。以下、このロック部55を第1ロック部と呼ぶ。第1スリット65の部分に形成されるロック部55は、インナ本体51の短軸方向に押されることで貫通孔7への引っ掛かりを解除する。以下、このロック部55を第2ロック部と呼ぶ。
図6において、第2部分63に配置されているのが第1ロック部であり、第1部分61に配置されているのが第2ロック部である。
図6に示すように、インナ本体51の筒軸方向で見たときに、第1ロック部と第2ロック部とで、インナ本体51の筒壁が延びる方向での寸法は略同じである。しかし、第1ロック部が、第2ロック部に比べて、インナ本体51の筒壁が延びる方向での寸法が小さくても良い。この場合、押すために必要な力を考慮して、複数のロック部55の合理的な配置を実現できる。変形例のロック部55xにおいても同様である。
【0130】
グロメット1には、
図11に示すような、ロック部55,55xとは別のロック部155を備えても良い。別のロック部155は、貫通孔7に引っ掛かるためにインナ本体51の外側に配置される。ロック部155は、弾性変形することでインナ本体51の内部空間に近づく方向に変位して、貫通孔7への引っ掛かりを解除することが可能である。インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、フランジ部153の外端159が、別のロック部155の外側で連結する。上記の実施形態とは異なり、別のロック部155では、フランジ部153を完全に分断するような隙間は形成されない。この構成では、グロメット本体11を外側から押しても、フランジ部153の外端159があるため、別のロック部155によるロックは解除できない。例えば、4つのロック部55,55xのうち1つだけを、
図11に示す別のロック部155に変更することができる。これにより、グロメットインナ13が貫通孔7から必要以上に外れ易くなるのを防止できる。
【0131】
別のロック部155を備える場合、当該別のロック部155は、
図11に示すように、インナ本体51に対して、グロメット本体11の内部空間が曲げられている側に配置することが好ましい。具体的には、インナ本体51の筒軸に沿って見たときに、グロメット本体11の延長部21と同じ側に、別のロック部155を配置することが好ましい。この場合、グロメット本体11の一部(具体的には、延長部21)が邪魔になって作業者の指が届きにくい部分に、別のロック部155を配置することができる。従って、全体として合理的な配置を実現できる。
【0132】
ロック部55,55xの自由端に突出部89を備えなくても良い。この場合、グロメット本体11の凹状溝部41において、ロック部55,55xの自由端に対面する位置に、凹状溝部41を埋めるように凸部を配置することができる。この凸部は、突起43と同様の構成とすることができる。フランジ部53とフランジ部53の間に配置されているロック部55,55xの自由端を、作業者が凸部を介して押すことで、ロック解除状態とすることができる。
【0133】
グロメットインナ13,13xが貫通孔7に取り付けられた状態で、突出部89の外側端部109は、フランジ部53の外側端部111と比較して外側に突出しても良い。
【0134】
突出部89と、フランジ部53とが、共通の平面に沿って配置されなくても良い。
【0135】
インナ本体51の筒壁が延びる方向で突出部89を挟んで位置する2つのフランジ部53の間の距離が、インナ本体51に近い側と、インナ本体51から遠い側とで、等しくなるように形成されても良い。
【0136】
隙間107は、外に近づくにつれてV字状に広がる構成に代えて、例えば段状に広がる構成としても良い。隙間107が、外に近づくに従って広がらない形状に構成されても良い。
【0137】
凹部77及び突起43は、省略することができる。
【0138】
例えば、インナ本体51が筒軸方向に長い形状である場合、ロック部55の基端部を、インナ本体51の筒軸方向端部に代えて、中途部に配置することもできる。
【0139】
インナ本体51に形成されるロック部55,55xの数は、4つに限定されず、3つ以下又は5つ以上に変更することもできる。
【0140】
インナ本体51は、長円状の筒に形成されることに代えて、例えば円筒状、4角筒状等に形成することができる。
【0141】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0142】
1 グロメット
7 貫通孔(孔)
11 グロメット本体
13,13x グロメットインナ
43 突起
51 インナ本体
53 フランジ部
55 ロック部
77 凹部
89 突出部
101 突出部の対向面(差込方向の奥側を向く面)
103 フランジ部の対向面(差込方向の奥側を向く面)
107 隙間
109 突出部の外側端部
111 フランジ部の外側端部
171 目印