(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129385
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】干渉法による間隔測定のための装置
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02002 20220101AFI20220829BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20220829BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
G01B9/02002
G01B11/02 G
G01B11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022025227
(22)【出願日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】10 2021 201 722.3
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・フーバー・レンク
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA04
2F064CC04
2F064EE09
2F064FF03
2F064GG02
2F064GG16
2F064GG22
2F064GG33
2F064GG34
2F064GG38
2F064GG49
2F064GG68
2F064HH06
2F064HH07
2F064JJ01
2F065AA06
2F065AA09
2F065AA22
2F065BB15
2F065DD03
2F065FF52
2F065GG04
2F065GG23
2F065HH13
2F065JJ05
2F065JJ25
2F065LL02
2F065LL33
2F065LL34
2F065LL36
2F065LL42
2F065QQ28
2F065UU05
2F065UU07
(57)【要約】
【課題】干渉法による間隔測定の装置を提示する。
【解決手段】干渉法による間隔測定の装置は少なくとも3つの異なる波長の光線束を供給する多波長光源を含む。光線束を測定光線束と参照光線束とに分割する干渉計ユニットを有し、測定光線束は測定軸に沿って移動可能な測定反射器に伝播し参照光線束は固定の参照反射器に伝播し、後方反射される。後方反射された測定光線束と参照光線束とは干渉しながら干渉光線束内で重なり合う。検出ユニットにより干渉光線束が分割され波長ごとに各々複数の移相された部分干渉信号が生じる。信号処理ユニットは異なる波長の部分干渉信号および追加的な概略位置信号から測定反射器に関する絶対位置情報を決定する。概略位置信号を生成するため本装置は変調ユニットを有し、変調ユニットが、放出された波長に位相変調を印加し、位相変調された光線束が、干渉計ユニットの方向に伝播し部分干渉信号内で間隔依存の変調を引き起こす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも3つの異なる波長をもたらす光線束を供給する多波長光源と、
- 前記光線束を測定光線束と参照光線束とに分割する少なくとも1つの干渉計ユニットであって、前記測定光線束が、測定アーム内で測定軸に沿って移動可能な測定反射器の方向に伝播し、そこで後方反射され、かつ前記参照光線束が、参照アーム内で固定の参照反射器の方向に伝播し、そこで後方反射され、前記測定反射器および前記参照反射器によって後方反射された前記測定光線束と前記参照光線束が干渉しながら干渉光線束内で重なり合う、少なくとも1つの干渉計ユニットと、
- 前記干渉光線束の分割が、波長ごとにそれぞれ複数の移相された部分干渉信号が結果として生じるように行われる少なくとも1つの検出ユニットと、
- 異なる波長の前記部分干渉信号および追加的な概略位置信号から、前記測定反射器に関する絶対位置情報を決定するために形成および適応された少なくとも1つの信号処理ユニットと
を備えた、干渉法による間隔測定のための装置において、
前記概略位置信号(LG)を生成するため、変調ユニット(15)が、少なくとも1つの放出された波長(λi;i=1、2、3)に位相変調を印加し、これにより位相変調された光線束(SPM;SPM_1、SPM_2、...SPM_N)が、前記少なくとも1つの干渉計ユニット(30;30.1、30.2、...30.N)の方向に伝播し、かつ少なくとも1つの部分干渉信号(S90λiPM、S210λiPM、S330λiPM;i=1、2、3;S90λiPM_j、S210λiPM_j、S330λiPM_j;i=1、2、3;j=1、2、...N)内で、間隔依存の変調を引き起こすことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記変調ユニット(15)が電気光学変調器(12)および正弦波発生器(13)を含んでおり、前記正弦波発生器(13)が、前記電気光学変調器(12)を規定の変調周波数(fPM)および規定の電圧振幅(APM)で制御することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記正弦波発生器(13)の前記変調周波数(fPM)が、発生する機械的周波数および音響的周波数より大きいように選択されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記正弦波発生器(13)の前記変調周波数(fPM)が、周波数範囲[100kHz...10MHz]内で選択されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記電気光学変調器(12)が、組み込まれてファイバー結合された変調器として形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの部分干渉信号(S90λiPM、S210λiPM、S330λiPM;i=1、2、3;S90λiPM_j、S210λiPM_j、S330λiPM_j;i=1、2、3;j=1、2、...N)内で、間隔依存の位相変調および振幅変調が結果として生じることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記信号処理ユニット(50)が、前記概略位置信号(LG)を生成するために形成および適応されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記信号処理ユニット(50)が、
- 少なくとも1つの評価された部分干渉信号(S90λiPM、S210λiPM、S330λiPM;i=1、2、3;S90λiPM_j、S210λiPM_j、S330λiPM_j;i=1、2、3;j=1、2、...N)から、変調された位相値(ΦλiPM;i=1、2、3)を決定し、かつ
- 前記変調された位相値(ΦλiPM;i=1、2、3)から、位置位相振幅(Aλi;i=1...3)を決定し、かつ
- 前記位置位相振幅(Aλi;i=1...3)と、前記位相変調された光線束(SPM)に印加された光位相振幅(AλiPM;i=1、2、3)とを使って、前記概略位置信号(LG)を決定するために形成および適応されていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記概略位置信号(L
G)が、次式
【数36】
に基づいて決定され、式中
L
G:=概略位置信号
c:=測定媒質中の光速
f
PM:=変調周波数
A
λi;i=1、2、3:=位置位相振幅
A
λiPM;i=1、2、3:=光位相振幅
であることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
光位相振幅確定ユニット(80)が、前記位相変調された光線束(SPM)に印加された前記光位相振幅(AλiPM;i=1、2、3)を決定するために形成および適応されていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
加えて前記信号処理ユニット(50)が、
- 前記移相された電気的な部分干渉信号(S90λiPM、S210λiPM、S330λiPM;i=1、2、3;S90λiPM_j、S210λiPM_j、S330λiPM_j;i=1、2、3;j=1、2、...N)から、波長(λ1、λ2、λ3)ごとに、変調されていない位相値(Φλi;i=1、2、3)を決定し、かつ
- 前記変調されていない位相値(Φλi;i=1、2、3)から、それぞれ異なる合成波長(Λj;i=1、2、3)に割り当てられた複数の差分位相(ΔΦ12、ΔΦ23、およびΔΦ)を形成し、かつ
- 前記概略位置信号(LG)および前記差分位相(ΔΦ12、ΔΦ23、およびΔΦ)から、前記測定反射器(33)に関する高分解の絶対位置情報(L)を決定する
ために形成および適応されていることを特徴とする、請求項7または8に記載の装置。
【請求項12】
- 前記位相変調された光線束(SPM)を複数の位相変調された部分光線束(SPM_R、SPM_j;j=1、2、...N)に分ける分割素子(90)と、
- それぞれ異なる測定軸に割り当てられており、かつそれぞれ1つの位相変調された部分光線束(SPM_j;j=1、2、...N)を送ることができる多数の干渉計ユニット(30.1、30.2、...30.N)であって、各測定軸に対してそれぞれの前記測定反射器に関する絶対位置情報(L1、L2、...LN)を決定するために、各干渉計ユニット(30.1、30.2、...30.N)にそれぞれ1つの検出ユニット(40.1、40.2、...40.N)および1つの信号処理ユニット(50.1、50.2、...50.N)が後置されている、多数の干渉計ユニット(30.1、30.2、...30.N)と
を特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
部分光線束(SPM_R)から決定された光位相振幅(AλiPM;i=1、2、3)を個々の測定軸内の信号処理ユニット(50.1、50.2、...50.N)にさらなる処理のために送る光位相振幅確定ユニット(80)に送ることができる位相変調された部分光線束(SPM_R)を特徴とする、請求項10または12に記載の装置。
【請求項14】
前記干渉計ユニット(30)が、光線分割ユニット(31)と、少なくとも1つの測定方向(x)に沿って移動可能な前記測定反射器(33)と、前記固定の参照反射器(34)と、光線合流ユニット(31)とを含んでおり、前記光線分割ユニット(31)により、前記位相変調された光線束(SPM)の測定光線束(MPM)と参照光線束(RPM)とへの分割が行われ、かつ前記光線合流ユニット(31)により、前記測定反射器および前記参照反射器(33、34)によって後方反射された前記測定光線束(MPM)と前記参照光線束(RPM)との前記干渉光線束(IFPM)への重ね合わせが行われることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は干渉法による間隔測定のための装置に関する。この装置はとりわけ、2つの互いに移動可能な物体の絶対間隔の決定に適している。
【背景技術】
【0002】
汎用装置は、DE102017213258A1から知られている。2つの互いに移動可能な物体の絶対間隔を干渉法によって決定するためのこの装置は、いわゆる多波長法に基づいている。この場合、異なる波長の干渉位相の差分形成から、1つまたは複数のうなり位相が決定され、このうなり位相が、比較的大きな間隔範囲にわたっての一義的な絶対位置決定を可能にする。
【0003】
これに関し、相応の装置は、カスケード式に形成することもでき、かつ複数の異なる波長から複数のうなり位相を生成することができる。
DE102017213258A1から既知の装置は、少なくとも3つの異なる波長をもたらす光線束を供給する多波長光源を備えている。この多波長光源は、少なくとも3つの異なるブラッグ格子を含むファイバーレーザとして形成されており、これらのブラッグ格子の格子定数は、生成される波長に合わされている。さらに、光線束を測定光線束と参照光線束とに分割する干渉計ユニットが意図されている。測定光線束は、測定アーム内で測定反射器の方向に伝播し、そこで後方反射される。参照光線束は、参照アーム内で固定の参照反射器の方向に伝播し、そこで後方反射される。測定反射器および参照反射器によって後方反射された測定光線束と参照光線束とが干渉しながら干渉光線束内で重なり合う。この干渉光線束の分割が検出ユニットにより、波長ごとにそれぞれ複数の移相された部分干渉信号が結果として生じるように行われる。信号処理ユニットにより、異なる波長の部分干渉信号および追加的な概略位置信号から、測定反射器に関する絶対位置情報が決定される。概略位置信号の生成には飛行時間測定法が提案されており、この場合、光パルスが測定反射器に達して戻ってくる飛行時間が決定され、かつ飛行時間から概略位置信号が導き出される。このような飛行時間測定法には、各測定軸に対し、光生成、カップリングおよびデカップリング、検出、増幅、ならびに時間測定のための追加的な光学的および電子的コンポーネントが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎となる課題は、できるだけ少ない追加コストで概略位置信号を生成可能な、絶対的で干渉法による間隔測定のための装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明により、請求項1の特徴を有する装置によって解決される。
本発明による装置の有利な実施形態は、従属請求項に挙げた措置から明らかである。
本発明による装置は干渉法による間隔測定のために用いられる。この装置は、少なくとも3つの異なる波長をもたらす光線束を供給する多波長光源を含んでいる。さらに、この光線束を測定光線束と参照光線束とに分割する少なくとも1つの干渉計ユニットが意図されている。測定光線束は、測定アーム内で測定軸に沿って移動可能な測定反射器の方向に伝播し、そこで後方反射される。参照光線束は、参照アーム内で固定の参照反射器の方向に伝播し、そこで後方反射される。測定反射器および参照反射器によって後方反射された測定光線束と参照光線束とは干渉しながら干渉光線束内で重なり合う。さらに少なくとも1つの検出ユニットが意図されており、この検出ユニットにより、干渉光線束の分割が、波長ごとにそれぞれ複数の移相された部分干渉信号が結果として生じるように行われる。少なくとも1つの信号処理ユニットは、異なる波長の部分干渉信号および追加的な概略位置信号から、測定反射器に関する絶対位置情報を決定するために形成および適応されている。概略位置信号を生成するため、変調ユニットは、少なくとも1つの放出された波長に位相変調を印加し、これにより位相変調された光線束が、少なくとも1つの干渉計ユニットの方向に伝播し、かつ少なくとも1つの部分干渉信号内で、間隔依存の変調を引き起こす。
【0007】
有利な一実施形態では、変調ユニットが電気光学変調器および正弦波発生器を含んでおり、この正弦波発生器が、電気光学変調器を規定の変調周波数および規定の電圧振幅で制御する。
【0008】
その際、正弦波発生器の変調周波数が、発生する機械的周波数および音響的周波数より大きいように選択されることが好ましい。
例えば、正弦波発生器の変調周波数は、周波数範囲[100kHz...10MHz]内で選択され得る。
【0009】
電気光学変調器は、その際、組み込まれてファイバー結合された変調器として形成され得る。
少なくとも1つの部分干渉信号内で、間隔依存の位相変調および振幅変調が結果として生じることが好ましい。
【0010】
有利な一実施形態では、信号処理ユニットが、概略位置信号(LG)を生成するために形成および適応されている。
この場合、信号処理ユニットは、
- 少なくとも1つの評価された部分干渉信号から、変調された位相値を決定し、かつ
- 変調された位相値から、位置位相振幅を決定し、かつ
- 位置位相振幅と、位相変調された光線束に印加された光位相振幅とを使って、概略位置信号を決定するために形成および適応され得る。
【0011】
概略位置信号が、次式
【0012】
【0013】
に基づいて決定されることが有利であり、式中、
LG:=概略位置信号
c:=測定媒質中の光速
fPM:=変調周波数
Aλi;i=1、2、3:=位置位相振幅
AλiPM;i=1、2、3:=光位相振幅
である。
【0014】
さらに、光位相振幅確定ユニットが、位相変調された光線束に印加された光位相振幅を決定するために形成および適応され得ることが、可能である。
加えて、
- 移相された電気的な部分干渉信号から、波長ごとに、変調されていない位相値を決定し、かつ
- 変調されていない位相値から、それぞれ異なる合成波長に割り当てられた複数の差分位相を形成し、かつ
- 概略位置信号および差分位相から、測定反射器に関する高分解の絶対位置情報を決定する
ために形成および適応されている信号処理ユニットが意図され得る。
【0015】
さらに、
- 位相変調された光線束を複数の位相変調された部分光線束に分ける分割素子と、
- それぞれ1つの位相変調された部分光線束を送ることができる、それぞれ異なる測定軸を割り当てるための多数の干渉計ユニットであって、各測定軸に対してそれぞれの測定反射器に関する絶対位置情報を決定するために、各干渉計ユニットにそれぞれ1つの検出ユニットおよび1つの信号処理ユニットが後置されている、多数の干渉計ユニットと
が、可能である。
【0016】
これに関し、部分光線束から決定された光位相振幅を個々の測定軸内の信号処理ユニットにさらなる処理のために送る光位相振幅確定ユニットに送ることができる位相変調された部分光線束が、意図され得る。
【0017】
好ましい一実施形態では、干渉計ユニットが、光線分割ユニットと、少なくとも1つの測定方向に沿って移動可能な測定反射器と、固定の参照反射器と、光線合流ユニットとを含んでおり、光線分割ユニットにより、位相変調された光線束の測定光線束と参照光線束とへの分割が行われ、かつ光線合流ユニットにより、測定反射器および参照反射器によって後方反射された測定光線束と参照光線束との干渉光線束への重ね合わせが行われる。
【0018】
本発明による装置では、概略位置信号を生成するためのコストがかなり低減され得ることが特に有利と実証されている。とりわけ、光パルスのカップリングおよびデカップリングのための追加的な光学コンポーネントが必要なく、光生成、検出、増幅、および時間測定のための追加的な電子コンポーネントもなくなる。
【0019】
これに加え、概略位置信号が、高分解の干渉計信号と同一のコンポーネントを使って生成されるので、異なる位置情報の時間的整合性が追加措置なしで保証されている。
さらに、この変調される多波長光源により、必要な場合には複数の測定軸をもたらすこともでき、その一方で飛行時間測定を用いて概略位置信号を生成する場合には、このために各測定軸に対して別々の光学的および電子的コンポーネントが必要である。
【0020】
本発明のさらなる詳細および利点を、図と関連させた以下の本発明による装置の例示的実施形態の説明に基づいて解説する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による装置の1つの例示的実施形態の非常に概略化した図である。
【
図2】
図1での例示的実施形態からの検出ユニットの概略図である。
【
図3】
図1での例示的実施形態からの信号処理ユニットの概略図である。
【
図4】
図1の例からの測定反射器の一定速度での移動の際のサンプリングされた位相値を示すグラフである。
【
図5】
図1の例示的実施形態において結果として生じる位相変調および振幅変調の複素振幅を示すグラフである。
【
図6】
図1の例からの光位相振幅確定ユニットの詳細図である。
【
図7】
図6からの光位相振幅確定ユニットの信号処理ユニットの詳細図である。
【
図8】本発明による装置と関連した多軸測定構成の非常に概略化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1では、干渉法による間隔測定のための本発明による装置の1つの例示的実施形態を概略図において示している。この装置は、光源ユニット10、干渉計ユニット30、検出ユニット40、信号処理ユニット50、および光位相振幅確定ユニット80を含んでいる。本発明による装置を用い、この例示的実施形態では、2つの(図では示されていない)互いに相対的に移動可能な物体の間の絶対位置情報Lまたは絶対間隔の高精度の決定が可能である。この例では、2つの物体の一方が、干渉計ユニット30の一部であって測定方向xに沿って移動可能な測定反射器33と結合しており、2つの物体のもう一方は、それに対して固定配置された、干渉計ユニット30のそのほかのコンポーネントと結合している。
【0023】
この両方の物体は、例えば互いに移動可能な機械部分であることができ、これらの機械部分の絶対間隔を本発明による装置を使って決定することができる。本発明による装置によって生成された絶対位置情報Lに関する情報は、上位に置かれた機械制御部によってさらに処理され得る。
【0024】
さらに本発明による装置を、レーザトラッカーまたはレーザトレーサにおいて用いることもできる。この場合には、干渉計ユニット30の固定のコンポーネントと、空間内を移動可能な測定反射器33との絶対間隔が決定される。
【0025】
このようなシステムは、非常に様々な測定課題および/または較正課題と関連して用いられ得る。それだけでなく本発明による装置に関するなおさらなる使用可能性ももちろん存在している。
【0026】
以下に概略位置信号LGの決定および絶対位置情報Lの確定のための本発明による手順を詳細に説明する前に、図に基づいてまずはシステム全体およびその非常に重要なコンポーネントの機能を解説する。
【0027】
本発明による装置の光源ユニット10は多波長光源11を含んでおり、多波長光源11は、少なくとも3つの異なる波長λi(i=1、2、3)をもつ光線束Sを放出し、これらの波長λi(i=1、2、3)はそれぞれ小さなスペクトル線幅を有している。多波長光源11として、ここでは少なくとも3つの異なるブラッグ格子を含むファイバーレーザが意図されており、これらのブラッグ格子の格子定数は、生成される波長λi(i=1、2、3)に合わせられている。多波長光源11のさらなる詳細および適切な波長λi(i=1、2、3)の選択については、既に冒頭で言及した文献DE102017213258A1を参照するよう明示的に指摘しておく。
【0028】
多波長光源11によってもたらされた光線束Sは、変調ユニット15によって位相変調され、これに関しては少なくとも1つの放出された波長λi(i=1、2、3)に位相変調が印加され、ただし図示した例示的実施形態ではそれだけでなく3つすべての放出された波長λ1、λ2、λ3にこのような位相変調が印加されていることが意図されている。変調ユニット15はこのために、電気光学変調器12を規定の変調周波数fPMおよび規定の電圧振幅APMで制御する正弦波発生器13を含んでいる。電気光学変調器12は、この例示的実施形態では、組み込まれてファイバー結合された変調器として形成されている。
【0029】
正弦波発生器13の変調周波数fPMは、周波数範囲[100kHz...10MHz]内で選択されることが好ましく、これに関してはさらに、測定エラーを回避するため、変調周波数fPMが、システム内で発生する機械的周波数(数kHz)および音響的周波数(数百kHz)より大きいことが考慮される。具体的な1つの例示的実施形態では、変調周波数fPM=1.5625MHzが意図されている。
【0030】
したがって光源ユニット10により、位相変調された光線束SPMが放出され、その際、異なる波長λi(i=1、2、3)が、印加された光位相振幅AλiPM(i=1、2、3)を有しており、この光位相振幅AλiPM(i=1、2、3)は、π(=180°)の複数の倍数の範囲内にある。この後の説明の過程で、印加された位相変調が、とりわけ概略位置信号LGを生成するためにどのように利用されるかがさらに詳細に解説される。
【0031】
光源ユニット10に後置されたファイバーオプティクススプリッターの形態での光線分岐器100により、位相変調された光線束SPMの一部分SPM_Rが分岐され、かつ光位相振幅確定ユニット80に送られる。光位相振幅確定ユニット80により、変調ユニット15によって印加された光位相振幅AλiPM(i=1、2、3)が決定され、かつ信号処理ユニット50により利用可能であり、この信号処理ユニット50は概略位置信号LGを生成するために光位相振幅AλiPM(i=1、2、3)を必要とする。この量の決定および処理についての詳細に関しては以下の説明も参照されたい。
【0032】
位相変調された波長λ
iPM(i=1、2、3)をもつ位相変調された光線束S
PMの分岐されなかった部分は干渉計ユニット30に達し、そこで偏光性光線分割器として作製された光線分割ユニット31により測定光線束M
PMと参照光線束R
PMとに分割される。測定光線束M
PMは、分割後に測定アーム内で少なくとも測定方向xに沿って移動可能な測定反射器33の方向に伝播し、そこで入射方向に戻るように後方反射される。参照光線束R
PMは、分割後に参照アーム内で固定の参照反射器34の方向に伝播し、そこで同様に入射方向に戻るように後方反射される。測定反射器33および参照反射器34は、図示した例では再帰反射性三面鏡として形成されている。測定反射器および参照反射器33、34によって後方反射された測定光線束および参照光線束M
PM、R
PMは、その後、偏光性光線分割器として作製された光線合流ユニット31に達し、そこで干渉しながら干渉光線束IF
PM内で重なり合う。
図1の図示した例示的実施形態では、光線分割ユニット31または光線合流ユニット31として、キューブ型光線分割器の形態での1つの部品だけが意図されており、この部品内で両方のユニットが一緒に形成されている。キューブ型光線分割器の光線分割面または光線合流面32では、位相変調された光線束S
PMの測定光線束M
PMと参照光線束R
PMとへの分割または測定光線束M
PMと参照光線束R
PMとの干渉光線束IF
PMへのさらなる処理が行われる。この関連で使用した添え字PMにより、間隔または絶対位置情報Lに依存する、参照光線束R
PMと測定光線束M
PMとの間のインクリメンタル型の位相差に加えて、位相差の間隔依存の変調が存在することが明瞭化されており、この後の説明の過程で、この位相差の間隔依存の変調から概略位置信号L
Gがどのように確定されるかがさらに詳細に解説される。干渉光線束IF
PMは、干渉計ユニット30の出力部でさらにλ/4板35を通過し、このλ/4板35は、干渉光線束IF
PMのs偏光成分とp偏光成分とを1つの回転する電場ベクトルへと重ね合わせ、この電場ベクトルの回転角度が評価のために考慮される。したがってこの例示的実施形態では、干渉計ユニット30が、偏光符号化干渉計として形成されている。
【0033】
干渉計ユニット30に関し、
図1で概略的に描かれたマイケルソン干渉計の形態での形成は、決して本発明の本質ではないことを指摘しておく。それゆえこれに代わる干渉計の変形形態および/またはコンポーネントも、本発明による装置の干渉計ユニット30において用いられ得る。よって例えば、屈折率n=2の球体を、それらの間で絶対間隔が測定される反射器として用いてもよい。さらにもちろん、それ以外の形式で形成された測定反射器および参照反射器、例えば平面鏡などを用いてもよい。同様に、測定光線束と参照光線束との分割および合流のために光線分割ユニットと光線合流ユニットとを別々に備えたマッハツェンダー干渉計を使用してもよいであろう、等。
【0034】
干渉計ユニット30によって生成された干渉光線束IF
PMは、その後、検出ユニット40の方向に伝播する。このユニットにより、出力側では、位相変調された波長λ
iPM(i=1、2、3)ごとにそれぞれ複数の電気的な移相された部分干渉信号S90
λiPM、S210
λiPM、S330
λiPM(i=1、2、3)が、詳しくは、位相変調された波長λ
iPM(i=1、2、3)ごとに3つずつの120°移相された部分干渉信号S90
λiPM、S210
λiPM、S330
λiPM(i=1、2、3)が結果として生じるように、干渉光線束IF
PMの分割またはさらなる処理が行われる。この場合、3つの位相変調された波長λ
iPM(i=1、2、3)を有するこの例では、検出ユニット40の出力部では全部で9つの部分干渉信号S90
λiPM、S210
λiPM、S330
λiPM(i=1、2、3)が存在し、これらの部分干渉信号が続いて位置測定のためにさらに処理される。検出ユニット40の構造可能性に関しては、以下の
図2の説明を参照されたい。
【0035】
図2に示しているように、干渉計ユニットによって生成され、λ/4板35の通過後には回転する直線偏光電場から成っている干渉光線束IF
PMが、検出ユニット40に当たる。そこでは、第1の分割素子41および後置の偏光素子43により、干渉光線束IF
PMの、3つの互いに移相された干渉光線束IF
PM90、IF
PM210、IF
PM330への分割が行われる。この場合、第1の分割素子41は、そこに入射する干渉光線束IF
PMを最初に3つの空間的に分離した干渉光線束に分割する反射性位相格子として形成されている。偏光素子43は、それぞれ60°相互に回転した偏光方向をもつ3つの直線偏光フィルターを含んでおり、かつ分割素子41によって分離された3つの干渉光線束を、それぞれ120°移相された3つの部分干渉光線束IF
PM90、IF
PM210、IF
PM330に変換する。第1の分割素子41および偏光素子43による3つの移相された部分干渉光線束IF
PM90、IF
PM210、IF
PM330への分割は、図平面に垂直に行われており、つまり
図2の表示では、偏光素子43の後に存在している3つの分割され移相された部分干渉光線束IF
PM90、IF
PM210、IF
PM330を個々には認識できない。3つの移相された部分干渉光線束IF
PM90、IF
PM210、IF
PM330はその後、同様に反射性位相格子の形態で形成された第2の分割素子42に当たる。第2の分割素子42により、3つの移相された部分干渉光線束IF
PM90、IF
PM210、IF
PM330の波長依存の分割が生じ、したがってその後は、波長λ
iPM(i=1、2、3)ごとにそれぞれ3つの移相された部分干渉光線束が、つまり
図2で個々には示していない全部で9つの部分干渉光線束が存在している。部分干渉光線束はその後、偏向素子44および結像光学系45を経て検出器アレイ46に達し、検出器アレイ46は、ここでは9つの電気光学検出素子46.1~46.3を含んでおり、これに関し
図2の表示では電気光学検出素子の一部しか認識できない。結像光学系45は、ここでは単レンズとしてまたはレンズアレイとして形成されており、その代わりに偏向素子44と組み合わせて1つだけの部品で形成されていてもよい。検出器アレイ46またはその検出素子46.1~46.9により、9つの部分干渉光線束が捕捉され、かつ9つの電気的な部分干渉信号S90
λiPM、S210
λiPM、S330
λiPM(i=1、2、3)に変換され、これらの部分干渉信号はその後、信号処理ユニット内でさらに処理される。これに関し
図2では、全部で9つの生成された部分干渉信号S90
λiPM、S210
λiPM、S330
λiPM(i=1、2、3)のうち3つの部分干渉信号S
λ1_90、S
λ2_90、S
λ3_90しか示されていない。
【0036】
続いて、部分干渉信号S90
λiPM、S210
λiPM、S330
λiPM(i=1、2、3)のさらなる処理が、
図1では概略的にのみ示唆された信号処理ユニット50内で行われる。信号処理ユニット50は、異なる位相変調された波長λ
iPM(i=1、2、3)の部分干渉信号S90
λiPM、S210
λiPM、S330
λiPM(i=1、2、3)から、移動可能な測定反射器33に関する1つの概略位置信号L
Gを生成するために、および多波長うなり法により、段階的に絶対位置情報Lを確定するために適応されている。
【0037】
以下に、本発明に基づく概略位置信号L
Gを決定するための手順を解説する。これに関して重要なのは、光線束Sに印加された位相変調であり、この位相変調は、評価される干渉計ユニット30の位置信号内で、位相および振幅の間隔依存の変調を引き起こす。つまり、電気光学変調器12の制御信号に関する変調の振幅も位相も、間隔に依存している。この場合、概略位置信号L
Gの決定は、実質的に、干渉計ユニット30、検出ユニット40、および信号処理ユニット50の既存のハードウェアコンポーネントによって行われ得る。
図1の例示的実施形態ではこれに加えて光位相振幅確定ユニット80だけがさらに意図されており、光位相振幅確定ユニット80は、異なる波長λ
i(i=1、2、3)での、変調ユニット15によって印加された光位相振幅A
λiPM(i=1、2、3)を確定するために用いられ、この光位相振幅A
λiPM(i=1、2、3)が、概略位置信号L
Gを決定するために考慮される。
【0038】
概略位置信号LGを決定するための本発明による手順を以下に詳細に解説する。
参照光線束RPM内の波長λi;i=1、2、3の1つの、変調ユニット15によって生成された時間依存の変調された位相成分PλiR(t)を
【0039】
【0040】
と仮定する。
以下では、AλiPM(i=1、2、3)により、変調ユニット15によって印加された光位相振幅を表しており、fPMは、電気光学変調器12の変調周波数を示している。
【0041】
測定光線束MPM内の時間依存の変調された位相成分PλiM(t)は、参照光線束RPM内の位相位置に対し、測定アーム内での通過長さ2×Lに必要な光飛行時間だけ遅れているので、これに関しては
【0042】
【0043】
となる。
この式中では、cにより、測定媒質中での光の速度を表しており、Lは、測定反射器33に関する絶対位置情報または
図1で示唆された測定反射器33と光線分割ユニット31との間の絶対距離を示している。
【0044】
したがって、参照光線束RPMと測定光線束MPMとの間の時間依存の変調された位相差ΔPλi(t)は、
【0045】
【0046】
となる。
三角関数の式
【0047】
【0048】
を使って、およびこの式中のパラメータa、b、α、β、xを以下のように置き換えることにより
【0049】
【0050】
および
【0051】
【0052】
絶対位置情報Lに依存する位置位相振幅Aλiが、
【0053】
【0054】
でもたらされる。
この式は、
【0055】
【0056】
へと簡略化され得る。
次式
【0057】
【0058】
の適用により、最終的に位置位相振幅Aλiに関し
【0059】
【0060】
が導かれる。
したがって、電気光学変調器12の制御信号に関する時間依存の位相差の位相位置δλi(i=1、2、3)は、
【0061】
【0062】
に基づいてもたらされる。
この式はさらに、
【0063】
【0064】
へと簡略化され得る。
この場合、さらなる変形により
【0065】
【0066】
となる。
これにより、干渉計内では、測定光線束MPMと参照光線束RPMとの間のインクリメンタル型の間隔依存の位相差に加えて、正弦状で時間および長さに依存する位相差ΔPλi(t);i=1、2、3が、次式
【0067】
【0068】
に基づいて導かれる。
検出ユニット40では、上で解説したように個々の波長λi(i=1、2、3)が分離され、かつ波長λi(i=1、2、3)ごとに3つの電気的な120°移相された部分干渉信号S90λiPM、S210λiPM、S330λiPM(i=1、2、3)が生成される。これらの信号は信号処理ユニット50により利用可能である。
【0069】
信号処理ユニット50では部分干渉信号S90λiPM、S210λiPM、S330λiPM(i=1、2、3)が最初に増幅器51.1~51.3によって増幅され、かつA/D変換器52.1~52.3によってデジタル化される。その後、各位相変調された波長λiPM(i=1、2、3)に対し、位相計算ユニット53.1~53.3により、変調された位相値ΦλiPM(i=1、2、3)の計算が行われる。位相値ΦλiPM(i=1、2、3)はそれぞれ、光の位相変調により、変調周波数fPMおよび位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)で変調された成分または正弦状で時間および長さに依存する位相差ΔPλi(t);i=1、2、3を有している。復調ユニット53a.1~53a.3では、位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)が決定され、かつ変調されていない位相値Φλi(i=1、2、3)が生じる。その後、概略位置決定ユニット56では、位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)から絶対的な概略位置信号LGが決定され、絶対的な概略位置信号LGが位置決定ユニット55に送られる。
【0070】
続いて、その先の絶対位置情報Lの決定が、変調されていない位相値Φλi(i=1、2、3)および概略位置信号LGから、既にDE102017213258A1で提案された手順に基づいて行われ、この関連ではこの文献を参照するよう明示的に指摘しておく。これについては、変調されていない位相値Φλi(i=1、2、3)から、差分位相計算ユニット54.1~54.3により、様々な合成波長に帰属する差分位相ΔΦ12、ΔΦ23、およびΔΦが確定され、かつ位置決定ユニット55に送られる。
【0071】
その後、位置決定ユニット55では、送られた信号LGならびにΔΦ、ΔΦ23、およびΦλ3に基づいて、カスケード式の形態で絶対位置情報Lの決定が行われる。これについてもDE102017213258A1でのこの手順の詳細な説明を参照するよう明示的に指摘しておく。
【0072】
以下では、復調ユニット53a.1~53a.3内で、変調された位相値ΦλiPM(i=1、2、3)から位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)がどのように決定されるかを解説する。この位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)は概略位置信号LGの決定に使用され、このために概略位置決定ユニット56に送られる。
【0073】
信号処理ユニット50内の各位相計算ユニット53.1~53.3が、各サンプリング時点nに対し、変調された位相値Φ
λiPM(n)(i=1、2、3)をもたらす。
図4では例示的に、測定反射器33が一定速度で移動する際の、サンプリング時点nでの、サンプリングされた変調された位相値Φ
λiPM(n)(i=1、2、3)および変調されていない位相値Φ
λi(n)(i=1、2、3)を示している。サンプリング周波数f
Aは、この例ではf
A=32・f
PMに基づいて選択された。
【0074】
ここで一般的には、
【0075】
【0076】
式中、
【0077】
【0078】
が適用されるべきである。
こうして次式
【0079】
【0080】
を使って、各サンプリング時点nでの複素振幅に関する同相値I
λi(n)(i=1、2、3)および直角位相値Q
λi(n)(i=1、2、3)が計算され得る。この場合、同相値I
λi(n)(i=1、2、3)が複素振幅の実部を、および直角位相値Q
λi(n)(i=1、2、3)が複素振幅の虚部を意味している。
図5では、複素数平面、つまりいわゆるIQ平面において32個のサンプリング値によって一例を示している。したがってサンプリング時点nでの位置位相振幅A
λi(n)(i=1、2、3)は
【0081】
【0082】
である。
同様に、サンプリング時点nでの電気光学変調器12の制御信号に関する変調の位相位置δλi(n)(i=1、2、3)が、
【0083】
【0084】
から計算され得る。
この場合、δ’λi(n)(i=1、2、3)は、サンプリング時点nでのIλi(n)およびQλi(n)から成るフェーザの角度を意味している。
【0085】
Aλi(n)およびδλi(n)を上述の式に基づいて計算し得るためには、追加的な条件が満たされていなければならない。よってサンプリングは、時間的に等距離で、およびすべての信号に同時に行わなければならない。さらに、サンプリング周波数fAおよび変調周波数fPMは互いに位相固定されていなければならず、これは、例えば共通の参照周波数から両方の周波数を導き出すことで保証され得る。
【0086】
これに加え、異なるサンプリング時点での複数の複素振幅値の適切な平均化法により、雑音が低減され得る。
次に、復調ユニット53a.1~53a.3により、差分位相計算ユニット54.1~54.3でのさらなる処理に必要な変調されていない位相値Φλi(n)(i=1、2、3)が、変調された位相値ΦλiPM(n)(i=1、2、3)からどのように得られるかを解説する。
【0087】
例えば、変調されていない位相値Φλif(n)(i=1、2、3)は、各サンプリング時点nに対し、例えば下記の規則
【0088】
【0089】
によって確定され得る。
以下では、今度は、概略位置決定ユニット56に送られる振幅値Aλi(i=1、2、3)またはAλiPM(i=1、2、3)からの、必要な概略位置信号LGの決定を説明する。
【0090】
次式
【0091】
【0092】
をLに基づいて解くことにより、概略位置信号LGに関し、下記の式
【0093】
【0094】
が導かれる。
この式が、概略位置決定ユニット56内で概略位置信号LGを決定するために考慮される。
【0095】
原理的には、概略位置信号LGの確定には1つだけの波長λi(i=1、2、3)の位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)で十分であろう。しかしながら3つすべての波長λi(i=1、2、3)の位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)を評価し、それを基に、得られた概略位置の算術平均値を出すのが有利であることが実証されており、こうすることで概略位置信号LGの雑音が低減され得る。
【0096】
位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)の概略位置信号LGに対する関係性を表す式、つまり
【0097】
【0098】
から明らかなのは、位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)からの概略位置信号LGの一義的な決定は、サインの独立変数が0~π/2の間にある範囲でのみ可能ということである。
【0099】
したがって
【0100】
【0101】
それゆえ
【0102】
【0103】
が適用される。
しかしながら概略位置信号LGを位相角δλiから決定してもよい。次式
【0104】
【0105】
を、測定長さまたは絶対位置情報Lに基づいて解くことにより、
【0106】
【0107】
から概略位置信号LGが計算され得る。
当然のことながら、非常に小さな位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)の場合は位相決定が不可能なので、位相角δλiからの概略位置信号LGの決定は、
LG>0~LG<c/2fPMの値に対してのみ可能である。最も正確な位相決定は、LG=c/fPMの範囲辺りで可能である。なぜならここでは位置位相振幅Aλi(i=1、2、3)が最大になるからである。
【0108】
したがってこの場合、測定長さに応じて、概略位置信号LGが位置位相振幅Aλiまたは位相角δλiのいずれかから決定され得る。
これにより概略位置信号LGに関する一義的な測定範囲が、例えば
【0109】
【0110】
に拡張され得る。
既に上で挙げた式
【0111】
【0112】
から概略位置信号L
Gを決定するには、個々の波長の、変調ユニット15によって印加された光位相振幅A
λiPM(i=1、2、3)を正確に知る必要がある。
図1の例示的実施形態では、これらの量の決定は、光位相振幅確定ユニット80を使った連続測定によって行われる。光位相振幅確定ユニット80は、
図1の表示に対する代替策として、光源ユニットに組み込まれていてもよい。
【0113】
以下に
図6での表示に基づいて、この例示的実施形態で使用される光位相振幅確定ユニット80の構造および機能原理を解説する。
既に言及したように、光線分岐器100により、位相変調された光線束S
PMから光出力の一部分がデカップリングされ、かつ光線束S
PM_Rとして光位相振幅確定ユニット80に送られる。光位相振幅確定ユニット80は、
図6での表示によれば、参照干渉計ユニット60、検出ユニット40.R、および信号処理ユニット70を含んでいる。参照干渉計ユニット60の機能方式は、原理的には
図1からの干渉計ユニット30の機能方式に相応している。ただしここでは測定光線束M
PM_Rが、ファイバーカップラー66により、光路長が2×L
Rの参照ファイバー68にカップリングされ、かつファイバーコリメータ67により再びデカップリングされ、これに関しL
Rは、参照干渉計ユニット60内での測定光線束と参照光線束との光路長差に相当する。その代わりに、参照干渉計ユニット60に必要な、測定光線束M
PM_Rと参照光線束R
PM_Rの間の十分に一定の光路長差が、別のやり方で調整されてもよい。参照干渉計ユニット60には検出ユニット40.Rおよび信号処理ユニット70が後置されており、この検出ユニット40.Rおよび信号処理ユニット70により、個々の波長の位置位相振幅A
λi_R(i=1、2、3)が確定される。これはここでは、信号処理ユニット50内での位置位相振幅A
λi(i=1、2、3)の確定に倣って行われる。このために使用される信号処理ユニット70の構造を
図7に示しており、それに関し意図されているこの信号処理ユニット70によって行われる信号処理は、上で既に信号処理ユニット50と関連して
図3に基づいて解説した手順に実質的に相応している。
【0114】
信号処理ユニット70ではその後、個々の波長λi(i=1、2、3)の、変調ユニット15によって印加された光位相振幅AλiPM(i=1、2、3)が決定され、このために最初に式
【0115】
【0116】
が、AλiPMに基づいて解かれる。
続いて、変調ユニット15によって印加された光位相振幅AλiPM(i=1、2、3)が、次式
【0117】
【0118】
から計算でき、かつ光位相振幅確定ユニット80の出力部で、さらなる処理のために提供され得る。
参照干渉計ユニット60内で、部品公差およびアライメント公差による補間誤差を最小限に抑えるため、信号調整を実施することが有利である。これに関しては、参照干渉計ユニット60内での光路長差LRが、少なくとも半波長分は変えられなければならない。これは、例えば参照ファイバー68にかけられる力の変化によって、または参照ファイバー68の温度の変化によって行われ得る。
【0119】
本発明による装置は、例えば、多数のレーザトラッカーから成る絶対測長のための測定構成において用いられ得る。このような測定構成を用いて、既知のマルチラテレーション法により、空間内の1つの物体の絶対位置または絶対姿勢が決定され得る。相応の測定構成を
図8に非常に概略化した形態で示している。この場合、光源ユニット10によって生成された位相変調された光線束S
PMは、最初にファイバースプリッターの形態での分割素子90に達する。分割素子90により、複数の位相変調された部分光線束S
PM_RおよびS
PM_j(j=1、2、...N)への分割が行われる。その後、部分光線束S
PM_Rは光位相振幅確定ユニット80に送られ、残りの部分光線束S
PM_j(j=1、2、...N)は、それぞれ異なる測定軸またはレーザトラッカーに割り当てられた多数のN個の干渉計ユニット30.1...30.Nに送られる。各干渉計ユニット30.1...30.Nには、上で解説した例示的実施形態に倣ってそれぞれ1つの検出ユニット40.1...40.Nおよび1つの信号処理ユニット50.1...50.Nが後置されており、これにより、各測定軸に対し、それぞれの測定反射器に関する絶対位置情報L
1...L
Nが決定される。
【0120】
本発明による装置の解説した例示的実施形態および変形形態だけでなく、本発明の枠内ではもちろんまだこれ以外の形態可能性が存在している。
すなわち、上で解説した光位相振幅確定ユニットを使った光位相振幅AλiPM(i=1、2、3)の継続的な決定の代わりに、位相変調によって印加された振幅AλiPM(i=1、2、3)を、測定動作前に適切な方法で1回だけ確定し、その後、これらの量を定数として信号処理ユニットにさらなる処理のために利用可能である。このような確定は、例えば製造の際に行うことができ、後に定期的な再較正が行われ得る。
【0121】
さらに、位相変調によって印加された振幅AλiPM(i=1、2、3)を測定動作中に決定することもできる。このためには、少なくとも2つの異なる長さまたは絶対位置L_1およびL_2が調整されなければならない。両方の絶対位置L_1とL_2との間の移動中に干渉計内での光線中断が起こってはならず、したがって、変調されていない位相値Φλiの測定は妨げられないままである。帰属の変調されていない位相値Φλi_1(i=1、2、3)およびΦλi_2(i=1、2、3)ならびに位置位相振幅Aλi_1(i=1、2、3)およびAλi_2(i=1、2、3)が測定および保存される。この場合、下記の連立方程式
【0122】
【0123】
が立てられ得る。
これに加え、
【0124】
【0125】
が設定され得る。
式中、L_0は、インクリメンタル型位置情報と絶対位置情報との間の未知の差である。
【0126】
この場合、連立方程式
【0127】
【0128】
が結果として導かれる。
この連立方程式は、2つの未知数L_0およびAλiPMしか内包しておらず、未知数L_0およびAλiPMに基づいて適切な方法で解かれ得る。測定動作中にこの手順を繰り返し適用でき、したがって光位相振幅AλiPM(i=1、2、3)の緩やかな変化の補正にも適用され得る。
【符号の説明】
【0129】
12 電気光学変調器
13 正弦波発生器
15 変調ユニット
30;30.1、30.2、...30.N 干渉計ユニット
31 光線分割ユニット、光線合流ユニット
33 測定反射器
34 参照反射器
50;50.1、50.2、...50.N 信号処理ユニット
40;40.1、40.2、...40.N 検出ユニット
80 光位相振幅確定ユニット
90 分割素子
APM 電圧振幅
Aλi;i=1...3 位置位相振幅
AλiPM;i=1...3 光位相振幅
fPM 変調周波数
IFPM 干渉光線束
L;L1、L2、...LN 絶対位置情報
LG 概略位置信号
MPM 測定光線束
RPM 参照光線束
SPM 位相変調された光線束
SPM_R、SPM_j;j=1、2、...N 位相変調された部分光線束
S90λiPM、S210λiPM、S330λiPM;i=1、2、3;S90λiPM_j、S210λiPM_j、S330λiPM_j;i=1、2、3;j=1、2、...N 部分干渉信号
x 測定方向
ΔΦ12、ΔΦ23、およびΔΦ 差分位相
λi;i=1、2、3 波長
Λj;i=1、2、3 合成波長
Φλi;i=1、2、3 変調されていない位相値
ΦλiPM;i=1、2、3 変調された位相値
【外国語明細書】