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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012962
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】含フッ素重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/04 20060101AFI20220111BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20220111BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20220111BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C08F2/04
C08F4/00
C08F2/38
C08F214/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115164
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 瑞菜
(72)【発明者】
【氏名】福永 晋太郎
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J011HA03
4J011HB02
4J011HB14
4J011HB16
4J011NA12
4J011NA19
4J011NB03
4J015AA01
4J015AA04
4J015BA03
4J015BA07
4J015BA08
4J100AA02Q
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AC22P
4J100AC23P
4J100AC24P
4J100AC25P
4J100AC26P
4J100AC27P
4J100AC31P
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA24
4J100DA36
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100FA30
4J100JA00
4J100JA01
4J100JA28
4J100JA32
4J100JA43
4J100JA44
4J100JA46
4J100JA50
4J100JA58
4J100JA59
4J100JA64
4J100JA67
(57)【要約】      (修正有)
【課題】含フッ素重合体の効率的な製造方法の提供。
【解決手段】重合媒体中、含フッ素モノマーを含むモノマー成分を、重合開始剤の存在下で重合する、含フッ素重合体の製造方法であって、前記重合媒体は式1で表される化合物および式2で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする含フッ素重合体の製造方法。R-O-R・・・式1(式中、RとRは独立に炭素原子数1~4のフルオロアルキル基であって、水素原子を1つ以上含むフルオロアルキル基である。)R-O-R・・・式2(式中、Rは炭素原子数2~6のペルフルオロアルキル基であり、Rは炭素原子数1または2のアルキル基である。)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合媒体中、含フッ素モノマーを含むモノマー成分を、重合開始剤の存在下で重合する、含フッ素重合体の製造方法であって、前記重合媒体は式1で表される化合物および式2で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする含フッ素重合体の製造方法。
-O-R・・・式1
式1中、RとRは独立に炭素原子数1~4のフルオロアルキル基であって、水素原子を1つ以上含むフルオロアルキル基である。
-O-R・・・式2
式2中、Rは炭素原子数2~6のペルフルオロアルキル基であり、Rは炭素原子数1または2のアルキル基である。
【請求項2】
前記式1で表される化合物として、CFCHOCFCFHを含む、請求項1に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項3】
前記式2で表される化合物として、CFCFCFOCH、CF(CFOCH、(CFCFCFOCH、CF(CFOCHCH、(CFCFCFOCFCH、CFCFCF(OCH)CF(CFからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、請求項1または2に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項4】
前記重合媒体が、CFCHOCFCFH、CFCFCFOCH、CF(CFOCHと(CFCFCFOCHの混合溶媒、CF(CFOCHCHと(CFCFCFOCFCHの混合溶媒、CF(CFOCHと(CFCFCFOCHとCF(CFOCHCHと(CFCFCFOCFCHの混合溶媒またはCFCFCF(OCH)CF(CFである、請求項1に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項5】
前記含フッ素モノマーとして、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項6】
前記含フッ素モノマー以外の他のモノマーとして、エチレン、プロピレンおよび1-ブテンからなる群から選ばれる少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項7】
連鎖移動剤として、メタノール、エタノール、n-ペンタンおよびシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項8】
重合温度が、50~80℃である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項9】
前記重合開始剤が、半減期が10時間になる温度が0~100℃のラジカル重合開始剤である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、含フッ素重合体は耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性などに優れた高分子材料であることから、その特徴を生かして種々の用途に利用されている。
【0003】
含フッ素重合体の製造方法としては、溶液重合法や懸濁重合法、乳化重合法が知られており、高分子量の共重合体を与えることや重合速度などの点から、重合媒体としてはクロロフルオロカーボン(CFC)などの不活性溶媒が通常用いられていた。しかし、オゾン層破壊が地球規模の環境破壊問題として国際的に取りあげられ、その原因物質として特定のCFCの使用が禁止されるに至った。そのため、含フッ素重合体を製造する際に用いるCFCの代替品が開発された。
【0004】
CFCの代替品としては、t-ブタノールなどが知られているが(特許文献1)、充分に高い分子量のものを得るためには、高圧で重合する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭52-024073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、含フッ素重合体を効率的に製造できる、含フッ素重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討したところ、重合反応に特定の媒体化合物を含む重合媒体を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]の構成を有する。
【0008】
[1]重合媒体中、含フッ素モノマーを含むモノマー成分を、重合開始剤の存在下で重合する、含フッ素重合体の製造方法であって、前記重合媒体は式1で表される化合物および式2で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする含フッ素重合体の製造方法。
-O-R・・・式1
式1中、RとRは独立に炭素原子数1~4のフルオロアルキル基であって、水素原子を1つ以上含むフルオロアルキル基である。
-O-R・・・式2
式2中、Rは炭素原子数2~6のペルフルオロアルキル基であり、Rは炭素原子数1または2のアルキル基である。
[2]前記式1で表される化合物として、CFCHOCFCFHを含む、[1]に記載の含フッ素重合体の製造方法。
[3]前記式2で表される化合物として、CFCFCFOCH、CF(CFOCH、(CFCFCFOCH、CF(CFOCHCH、(CFCFCFOCFCH、CFCFCF(OCH)CF(CFからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、[1]または[2]に記載の含フッ素重合体の製造方法。
[4]前記重合媒体が、CFCHOCFCFH、CFCFCFOCH、CF(CFOCHと(CFCFCFOCHの混合溶媒、CF(CFOCHCHと(CFCFCFOCFCHの混合溶媒、CF(CFOCHと(CFCFCFOCHとCF(CFOCHCHと(CFCFCFOCFCHの混合溶媒またはCFCFCF(OCH)CF(CFである、[1]に記載の含フッ素重合体の製造方法。
[5]前記含フッ素モノマーとして、テトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンを含む、[1]~[4]に記載の含フッ素重合体の製造方法。
[6]前記含フッ素モノマー以外の他のモノマーとして、エチレン、プロピレンおよび1-ブテンからなる群から選ばれる少なくとも1つのモノマーを含む、[1]~[5]に記載の含フッ素重合体の製造方法。
[7]連鎖移動剤として、メタノール、エタノール、n-ペンタンおよびシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、[1]~[6]に記載の含フッ素重合体の製造方法。
[8]重合温度が、50~80℃である、[1]~[7]に記載の含フッ素重合体の製造方法。
[9]前記重合開始剤が、半減期が10時間になる温度が0~100℃のラジカル重合開始剤である、[1]~[8]に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の含フッ素重合体の製造方法によれば、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性に優れた含フッ素重合体を効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書においては、モノマーが重合することで形成される繰り返し単位を「単位」という。
【0011】
(含フッ素重合体の製造方法)
本発明の含フッ素重合体の製造方法は、重合媒体中、含フッ素モノマーを含むモノマー成分を、重合開始剤の存在下で重合する、含フッ素重合体の製造方法であって、前記重合媒体は後述の式1で表される化合物(以下、「媒体化合物(1)」ともいう。)および後述の式2で表される化合物(以下、「媒体化合物(2)」ともいう。)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする。
以下、本発明の各構成について説明する。
【0012】
(含フッ素重合体の重合方法)
本発明の含フッ素重合体の重合方法としては、懸濁重合、溶液重合、乳化重合等の方法が挙げられ、中でも、懸濁重又または溶液重合が好ましい。
【0013】
(重合媒体)
本発明に用いる重合媒体は、媒体化合物(1)および媒体化合物(2)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む。
媒体化合物(1)および媒体化合物(2)は、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン等のハイドロクロロフルオロカーボン類とは異なり、連鎖移動剤として作用しにくい。そのため、媒体化合物(1)および媒体化合物(2)は重合反応系内の連鎖移動剤濃度に影響を及ぼしにくく、得られる含フッ素重合体の分子量の変動も生じにくくなる。
さらに、媒体化合物(1)および媒体化合物(2)は、水への溶解性が低いため、得られた含フッ素重合体を水中で造粒した場合も、水に取り込まれにくい。
【0014】
媒体化合物(1)は、下記式1で表される化合物である。
-O-R・・・式1
(式中、RおよびRは独立に炭素原子数1~4のフルオロアルキル基であって、水素原子を1つ以上含むフルオロアルキル基である。)
【0015】
式1中のRおよびRは、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。式1中のRおよびRの炭素原子数は、1~4であり、1~2がより好ましい。該炭素原子数が前記下限値より大きいと、媒体化合物(1)の沸点が低すぎず、取扱いやすい。一方、該炭素原子数が前記上限値より小さいと、媒体化合物(1)沸点が高すぎず、重合体との分離が容易になる。
【0016】
媒体化合物(1)としては、CFCHOCFCFH、HCFCFCHOCFCFH、CHOCFCFCFCF、CHOCFCF(CF、CFCFHCFOCFが挙げられる。中でも、連鎖移動しにくい点、沸点が室温より充分に高く100℃以下であるため、取り扱いが容易である点、含フッ素重合体のスラリーを水中で重合媒体を蒸発回収しながら造粒できる点等から、CFCHOCFCFHが特に好ましい。
【0017】
媒体化合物(2)は、下記式2で表される化合物である。
-O-R・・・式2
(式中、Rは炭素原子数2~6のペルフルオロアルキル基であり、Rは炭素原子数1または2のアルキル基である。)
【0018】
式2中のRは、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。式2中のRの炭素原子数は、2~6であり、3~6がより好ましい。該炭素原子数が前記下限値より大きいと、媒体化合物(2)の沸点が低すぎず、取扱いやすい。一方、該炭素原子数が前記上限値より小さいと、媒体化合物(2)の沸点が高すぎず、重合体との分離が容易になる。
式2中のRの炭素原子数は、1または2である。該炭素原子数が1または2であると、媒体化合物(2)の沸点が高すぎず、重合体との分離が容易になる。
【0019】
媒体化合物(2)としては、CF(CFOCH、(CFCFOCH、CF(CFOCH、(CFCFCFOCH、CF(CFOCHCH、(CFCFCFOCFCH、CFCFCF(OCH)CF(CFが挙げられる。中でも、連鎖移動しにくい点、沸点が室温より充分に高く100℃以下であるため、取り扱いが容易である点、含フッ素重合体のスラリーを水中で重合媒体を蒸発回収しながら造粒できる点等から、CFCFCFOCH、CF(CFOCH、(CFCFCFOCH、CF(CFOCHCH、CFCFCFOCFCH、CFCFCF(OCH)CF(CFが特に好ましい。
【0020】
本発明に用いる重合媒体としては、媒体化合物(1)と媒体化合物(2)を併用してもよい。また、本発明に用いる重合媒体は、複数の媒体化合物(1)を含んでもよく、複数の媒体化合物(2)を含んでもよい。
複数の媒体化合物(2)を含む場合の重合媒体の具体例としては、CF(CFOCHと(CFCFCFOCHの混合溶媒、CF(CFOCHCHと(CFCFCFOCFCHの混合溶媒、CF(CFOCHと(CFCFCFOCHとCF(CFOCHCHと(CFCFCFOCFCHの混合溶媒が挙げられる。
【0021】
本発明に用いる重合媒体としては、連鎖移動しにくい点、沸点が室温より充分に高く100℃以下であるため、取り扱いが容易である点、含フッ素重合体のスラリーを水中で重合媒体を蒸発回収しながら造粒できる点等から、CFCHOCFCFH、CFCFCFOCH、CF(CFOCHと(CFCFCFOCHの混合溶媒、CF(CFOCHCHと(CFCFCFOCFCHの混合溶媒、CF(CFOCHと(CFCFCFOCHとCF(CFOCHCHと(CFCFCFOCFCHの混合溶媒またはCFCFCF(OCH)CF(CFが好ましい。
【0022】
重合媒体において、媒体化合物(1)および媒体化合物(2)からなる群から選ばれる1つの化合物を使用する場合、その化合物の体積は、モノマーの溶解性が高く、モノマーの重合槽内での分散性を確保できる点から、重合媒体の合計に対して、50体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが最も好ましく、100体積%であってもよい。
重合媒体において、媒体化合物(1)および媒体化合物(2)からなる群から選ばれる2つ以上の化合物を使用する場合、それらの化合物の合計の体積は、モノマーの溶解性が高く、モノマーの重合槽内での分散性を確保できる点から、重合媒体の合計に対して、50体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが最も好ましく、100体積%であってもよい。
【0023】
媒体化合物(1)および媒体化合物(2)のフッ素原子の合計数は、水素原子とフッ素原子の合計数に対して60%以上が好ましく、65~80%がより好ましい。フッ素原子の割合が前記下限値よりも大きいと、連鎖移動しにくい。フッ素原子の割合が前記上限値より小さいと、地球温暖化係数が低くなるので好ましい。
【0024】
重合媒体の沸点は、20~120℃が好ましく、40~100℃がより好ましく、50~90℃が最も好ましい。特に、重合で得られた含フッ素重合体のスラリーを、水とともに攪拌しながら加熱し、造粒しながら重合媒体等を回収する工程を行う場合、重合媒体の沸点は100℃未満が好ましい。
【0025】
重合媒体中の媒体化合物(1)および媒体化合物(2)以外の他の媒体としては、連鎖移動反応性の低い化合物が好ましい。他の媒体としては、具体的には、n-ペルフルオロヘキサン、n-ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロベンゼン等のペルフルオロカーボン類、1,1,2,2-テトラフルオロシクロブタン、CFCFHCFCFCF、CF(CFH、CFCFCFHCFCF、CFCFHCFHCFCF、CFHCFHCFCFCF、CF(CFCFH、CFCH(CF)CFCFCF、CFCF(CF)CFHCFCF、CFCF(CF)CFHCFHCF、CFCH(CF)CFHCFCF、CFCFCHCH、CF(CFCHCH等のハイドロフルオロカーボン類が挙げられる。
【0026】
本発明における重合媒体の使用量の合計は、重合させるモノマーの種類により変化しうるが、重合開始前に重合槽に添加されるすべてのモノマー成分の合計の質量に対して3~100倍が好ましく、5~30倍がより好ましい。
【0027】
(含フッ素モノマー)
本発明に用いるモノマー成分には、含フッ素モノマーが含まれる。
含フッ素モノマーは、フッ素原子を有していれば、特に限定されない。そのような含フッ素モノマーとしては、以下の(1)~(3)が挙げられる。
(1)テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という。)またはクロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」という。))。
(2)下記式3で表される化合物(以下、「FAE」ともいう。)、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)等の不飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン。
CH=CX(CFY・・・式3
(式中、XおよびYは、独立に水素原子またはフッ素原子、nは2~8の整数である。)
(3)ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」という。)等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFE、CTFEを除く。)。
上記(1)~(3)の中でも、耐熱性、耐薬品性、耐候性等がさらに優れる点から、(1)および(2)からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物が好ましく、(1)の中でもTFEが好ましく、(2)の中でもFAEが好ましい。
含フッ素モノマーは、1つを単独で用いてもよく、2つ以上を組合せて用いてもよい。
【0028】
上記(2)の式3におけるnが2~8であるFAEは、重合反応性に優れる。
【0029】
FAEとしては、具体的には、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。
FAEの中でも、式3のXが水素原子である化合物が好ましい。式3中のnは、2~6が好ましく、2~4がより好ましい。式3中のnが上述の範囲にあれば、FAEと後述するエチレンとTFEの共重合体からなる成形体が耐ストレスクラック性に著しく優れる。
FAEは1つまたは2つ以上を用いることができる。
【0030】
(他のモノマー)
本発明に用いるモノマー成分には、含フッ素モノマー以外の他のモノマーが含まれていてもよい。
他のモノマーとしては、エチレン(以下、「E」ともいう。)の他、プロピレン、ブテン等のα位に不飽和結合を有する炭化水素類、後述する極性官能基含有モノマー等が挙げられる。α位に不飽和結合を有する炭化水素類としては、得られるポリマーの耐熱性、機械特性等の物性に優れる点から、エチレン、プロピレン、1-ブテン等が好ましく、エチレンがより好ましい。
【0031】
極性官能基含有モノマーは、不飽和結合と極性官能基を有し、フッ素原子を有していなければ、特に限定されない。
極性官能基含有モノマー中の極性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、酸無水物残基が挙げられ、中でも、酸無水物残基が好ましい。含フッ素重合体に酸無水物残基が導入されると、ポリアミドとより良好な接着性を発揮する。
具体的な極性官能基含有モノマーとしては、水酸基とエポキシ基を有するビニルエーテル類等;カルボキシ基を有するマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ウンデシレン酸等;酸無水物残基を有する無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ハイミック酸等;が挙げられる。中でも、重合媒体に対して、より溶解しやすく、重合反応系に添加しやすい点から、極性官能基含有モノマーは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ハイミック酸等が好ましく、無水イタコン酸及び/又は無水ハイミック酸であることが好ましい。
【0032】
(重合開始剤)
本発明の含フッ素重合体の製造においては、重合反応を開始させるために重合開始剤が用いられる。
重合開始剤としては、半減期が10時間になる温度が0~100℃のラジカル重合開始剤が好ましく、20~90℃のラジカル重合開始剤がより好ましい。具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート;tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル;ジイソブチリルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド;(Z(CFCOO)(Zは水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、pは1~10の整数である。)等の含フッ素ジアシルペルオキシド;ペルフルオロジtert-ブチルペルオキシド;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;等が挙げられる。
【0033】
重合開始剤の使用量は、種類や重合反応条件などに応じて適宜変更できるが、通常は重合させる単量体全体に対して、0.005~5質量%程度用いられる。
【0034】
(連鎖移動剤)
本発明の含フッ素重合体の製造方法においては、重合反応が連鎖移動剤の存在下で行われることが好ましい。連鎖移動剤を存在させることにより、製造される含フッ素重合体の分子量が調整しやすくなる。
連鎖移動剤は、一般に重合反応に用いられる公知のものでよい。
【0035】
連鎖移動剤は、連鎖移動しやすく、添加量が少なくてすむ点から、メタノール、エタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパノール等のアルコール類;n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン類;CF等のハイドロフルオロカーボン類;アセトン等のケトン類;メチルメルカプタン等のメルカプタン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類;などが好ましい。
【0036】
連鎖移動しやすく、得られるポリマーの末端基の安定性が高い点から、連鎖移動剤はアルコール類、ハイドロカーボン類およびハイドロフルオロカーボン類からなる群から選ばれる1つ以上の化合物であることが好ましく、アルコール類およびハイドロカーボン類からなる群から選ばれる1つ以上の化合物であることがより好ましい。
アルコール類の中でも、水に溶解しやすく、製造後、得られた含フッ素重合体と分離しやすい点から、メタノールまたはエタノールが最も好ましい。
ハイドロカーボン類の中でも、連鎖移動しやすく、得られるポリマーの末端基の安定性が高く、沸点が室温より充分に高く100℃以下である点から、n-ペンタンまたはシクロヘキサンが最も好ましい。
【0037】
連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤として用いる化合物の連鎖移動のしやすさにより変わりうるが、重合媒体に対して0.01~50質量%程度用いられる。
【0038】
(重合条件)
重合条件は、特に限定されない。重合温度は、50~80℃が好ましく、60~75℃がより好ましい。重合中の重合槽の内圧力は、0.1~10MPaGが好ましく、0.5~3MPaGがより好ましい。重合時間は、1~30時間が好ましく、2~20時間がより好ましい。
【0039】
(含フッ素重合体)
本発明により製造される含フッ素重合体は、重合媒体中で含フッ素モノマーを含むモノマー成分を重合して得られるものであり、少なくとも1つ以上の含フッ素モノマーに基づく単位を有する。含フッ素モノマーに基づく単位を形成する含フッ素モノマーは上述したものと同様である。
【0040】
含フッ素重合体としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(i)Eに基づく単位とTFEに基づく単位とを有する共重合体。
(ii)Eに基づく単位とTFEに基づく単位とHFPに基づく単位とを有する共重合体。
(iii)Eに基づく単位とTFEに基づく単位とFAEに基づく単位とを有する共重合体。
以下、上記(i)、(ii)、(iii)等の、Eに基づく単位およびTFEに基づく単位を有する共重合体を、まとめてETFEと称する。
【0041】
ETFEにおける、TFEに基づく単位とEに基づく単位とのモル比(TFE/E比)は、20/80~80/20が好ましく、30/70~70/30がより好ましく、50/50~65/35が最も好ましい。
E/TFE比が上記範囲にあると、ETFEからなる成形体が、耐熱性、耐候性、耐薬品性、薬液透過防止性、機械的強度、溶融成形性等に優れたものとなる。
【0042】
ETFEがFAEに基づく単位を有する場合における、FAEに基づく単位の含有量は、ETFEの全単位に対して、0.01~20モル%が好ましく、0.1~15モル%より好ましく、0.2~5モル%が最も好ましい。FAEに基づく単位の含有量が上記範囲にあると、当該成形体は耐ストレスクラック性、機械的強度等の特性に優れる。
【0043】
含フッ素重合体の容量流速(以下、Q値という。)は、0.1~500mm/秒が好ましく、1~100mm/秒がより好ましく、5~50mm/秒が最も好ましい。Q値は、含フッ素重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。Q値は、島津製作所社製のフローテスターを用いて、樹脂の融点より50℃高い温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの含フッ素重合体の押出し速度である。Q値が上記範囲にあると、含フッ素重合体は、押出し成形性、機械的強度等に優れる。
【0044】
(用途)
本発明によって製造される含フッ素重合体は、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れる。
本発明によって製造される含フッ素重合体は、例えば、チューブ、ホース、タンク、シール、ワイヤー、ケーブル、フィルム、シート、ボトル、繊維等の成形体にすることができる。
【0045】
チューブまたはホース類としては、塗装ライン用チューブまたはホース、薬液チューブまたはホース、農薬用チューブまたはホース、飲料用チューブまたはホース、油圧チューブまたはホース、空圧チューブまたはホース、ガソリンスタンドなどで用いられる地下埋設チューブ、自動車燃料配管用チューブまたはホース、フィラーネックホース、自動車のラジエーターホース、ブレーキホース、エアコンホース、燃料電池用ホース、電気部品用、果汁、ペースト状食品等の輸送用等の工業用ホース、インクチューブ、ガソリン、軽油、アルコール等の燃料輸送用ホース、給湯用ホースが挙げられる。
【0046】
タンク類としては、自動車のラジエータータンク、薬液タンク、薬液バッグ、薬液保存容器向けの多層ボトル、燃料タンク、半導体用薬液等の酸・アルカリ等の腐食性、侵食性の強い薬液の容器や研磨材のスラリー用の容器、ディーゼルエンジン排ガスに尿素水を噴霧してNOXを低減するシステムにおける尿素水用容器等が挙げられる。
【0047】
シール類としては、LIBアルミラミネート用シール層、燃料ポンプのOリング等の各種自動車用シール、化学薬品用ポンプや流量計のシール等の化学関係のシール、油圧機器のシール等の各種機械関係シール等が挙げられる。
【0048】
ワイヤー、ケーブル等の電線被覆材としては、ラッピング電線、自動車用電線、航空機用電線、ロボット用電線、モーターコイルの電線、発泡電線等に好適に使用できる。特に、高周波領域で使用する場合は、高周波伝送用の回線、基地局等といった通信システム用の同軸ケーブル、LANケーブル、フラットケーブル等のケーブル用途、携帯用電話機等の小型電子機器、或いはプリント配線基板等の高周波伝送用に好適に使用できる。
【0049】
フィルム、シート類としては、電子基板用層間絶縁フィルム、建材や溶剤、溶液保管用製罐などに用いられる鋼板ラミネート用フィルム、軟質防湿包装としてアルミニウムなどの金属箔を積層したリチウムイオン電池などの電池包装、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体などと積層した医療または化学薬液軟質包装材、輸液バックおよび血液バック用積層フィルム、農業用ハウスや膜構造物等の工業用フィルム、離型フィルム、具体的にはキャストフィルム製造用の単層または多層離型フィルム、配線基板やICチップ製造用離型フィルム、ポリエチレンテレフタレート等との積層体からなる離型フィルム、発光ダイオード封止材料のモールド成形に用いられる離型フィルム等が挙げられる。食品包装用またはラッピングフィルム、ダイヤフラムポンプのダイヤフラムや各種パッキン等の高度の耐薬品性が要求される摺動部材、ベルトコンベア、電線の絶縁被覆用フィルム、ステンレス鋼シートとの積層体からなる飲料用缶材料、調理器具表面保護板、内外装用の化粧板保護フィルム、加湿器の蒸気出口部品被覆フィルム、ポリカーボネート等との積層板からなる外装材および屋根材、ウレタン樹脂またはガラスクロス等との積層体からなるベルト、アラミド織布等との積層体からなる気球材料、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル樹脂、ゴム等との積層体からなる膜構造物用フィルム、アルミニウムシートとの積層体からなる太陽電池用表面材料、アルミ箔等との積層体からなるヒートシール包装材料、ホワイトボード用多層フィルム、高速道路防音壁用保護フィルム、シャワー遮蔽カーテン用積層フィルム、壁紙用積層フィルム、耐熱パウチ用フィルム、合わせガラス中間膜、農業ハウス用フィルム、接着用フィルム、ゴム栓用耐薬品性被覆フィルム、太陽電池用保護フィルム、モーター絶縁用フィルム、含フッ素重合体フィルムを積層してなるオフィースオートメーション(OA)用ロールやOA用ベルト、含フッ素重合体とポリイミドとの積層体に更に銅箔など金属箔と積層体を用いたプリント配線板、あるいは含フッ素重合体と繊維基材との複合積層体も金属箔と積層体を用いたプリント配線板、高周波特性が必要なレーダー、ネットワークのルーター、バックプレーン、無線インフラ等の工業分野で用いられる。
【0050】
また、本発明で得られる含フッ素重合体をパウダー状にして、コーティング材料として用いてもよい。含フッ素重合体のパウダーでコーティングされた物品の用途としては、フライパン、圧力鍋、鍋、グリル鍋、炊飯釜、オーブン、ホットプレート、パン焼き型、包丁、ガステーブル、電気ポット、製氷トレー、金型、レンジフード等の調理器具;練りロール、圧延ロール、コンベア、ホッパー等の食品工業用部品;オフィースオートメーション(OA)用ロール、OA用ベルト、OA用分離爪、製紙ロール、フィルム製造用カレンダーロール等の工業用品;発泡スチロール成形用等の金型、鋳型、合板・化粧板製造用離型板等の成形金型、工業用コンテナ(特に半導体工業用)等が挙げられる。
本発明で得られる含フッ素重合体の滑り性を利用したものとしては、のこぎり、やすり等の工具;アイロン、鋏、包丁等の家庭用品;金属箔、電線、食品加工機、包装機、紡織機械等のすべり軸受、カメラ・時計の摺動部品、パイプ、バルブ、ベアリング等の自動車部品、雪かきシャベル、すき、シュート、モーター等のコイル用電線、電気・電子部品用封止材料、排気ダクト等が挙げられる。
【0051】
また、本発明で得られる含フッ素重合体は、水栓金具、IHクッキングヒーター、電子レンジ部品、オーブングリル部品、炊飯器内釜等のキッチン・レンジ周りや、排ガス配管、自動車床下金属配管、ダクト、天然ガスやオイルのパイプ、N-メチルピロリドン溶液の配管やタンク、タイゴンチューブ等の各種配管や、釣り糸、漁網、水中ポンプ等の各種海洋関係部材や、剪定鋏、医療用ナイフ、工業用刃、シェービング等の各種刃物への防汚性、防錆性、非接着性付与や、アスファルト、鉄筋、太陽熱発電ミラー、墓石、網戸、養生パネル等屋外部材や、シャワーカーテン、トイレ、浴槽、ウォシュレット(登録商標)の先端、モップ等の水回り部材や、衣服、不織布等の布や、ガラス繊維、内装材(メタル品含む)、医療用品、金属製楽器、食品パッキン、メタル眼鏡フレーム、コピー転写ロール、3Dプリンター成形品、貴金属パネル、メタルスクリーン、ガラスホワイトボード、熱交換器、電線等のコーティングに用いることもできる。またUV硬化によりパターニング材料として用いることもできる。
【0052】
また、本発明で得られる含フッ素重合体は、電子基板の防湿コートや、積層セラミックコンデンサのイオンマイグレーション防止コート、化粧品リフィル容器の口や、インクジェットのヘッドの撥液コート、金型やゴム型の離型コート、レンガやタイルのガム接着防止コート、ミラーの水垢防止コート、炭素繊維強化プラスチックの撥水コート、宝飾品の変色防止コート、外使いの物品の色褪せ防止コート、ギアの摺動改良コート、として用いることもできる。また、リチウムイオンニ次電池用のバインダーやセパレーターコート、キャパシター用セパレーターコート、全固体リチウムイオンニ次電池バインダーとしても用いることができる。
【0053】
より具体的な使用例としては、前記用途と一部重複するが、自動車用等のカーナビゲーション、カーオーディオ、タブレット型コンピュータ、ノートPC、時計型・眼鏡型ウェアラブル端末、携帯電話・スマートフォン等の携帯(通信)情報端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、ゲーム機器、各種操作パネル、デジタルメディアプレイヤー、電子ブックリーダー等人の手で持ち歩く各種機器の筐体、電子公告等に使用される液晶ディスプレイ、陰極線管(CRT:例、TV、パソコンモニター)、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等のディスプレイまたはそれらのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、あるいはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの、携帯電話、携帯情報端末等の機器のタッチパネルシートやタッチパネルディスプレイ等人の指あるいは手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器や、複写機、太陽電池パネル、保護フィルム、ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CDR、MO等の光ディスクのディスク面や磁気ディスク、光ファイバーや時計の表示面、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバーや光カプラー、眼鏡レンズ、反射防止被覆眼科用レンズ、双眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機等の光学物品が挙げられる。特にタッチパネルディスプレイ等人の指あるいは手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器、デジタルフォトフレーム、ゲーム機、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機、デジタルサイネージ(電子看板)、セキュリティーシステム端末、POS端末、リモートコントローラ等各種コントローラ、車載装置用パネルスィッチ等の表示入力装置等の表面保護コートが挙げられる。
【0054】
さらに、自転車、自動車等乗り物の外装、ピアノや家具の光沢表面、大理石や人工大理石等の建築用石材表面、トイレ、風呂、洗面所、キッチン等の水周りの装飾建材、ガラス装飾を施した家電(たとえば冷蔵庫)、美術品展示用保護ガラスショーウインドー、ノョーケ一ス、フォトフレム用カバ一、腕時計、自動車窓用ガラス、列車、航空機等の窓ガラス、自動車ヘッドライト、テールランプ等の透明なガラス製または透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネート等)部材、各種ミラー部材、再帰反射シーティング、建物窓、車両ヘッドランプおよびテールライト、ディスプレイケース、道路舗装マーカー(たとえば隆起)および舗装マーキングテープ、オーバーヘッドプロジェクタ、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、時計力バー、窯業製品、布製品、皮革製品、医療品、医療機器、自動車、航空機、ヘリコプター、航空宇宙機、または船舶の外装および燃料システムに用いられるO-リング、軸封、ガスケット、チューブ、裏地、シート、コンテナ、蓋、ホース、またはこれらの構成要素、膜、および接着されたシール、ベアリング、クランクシャフト、スライドベアリング、ピストン、ガスケット、ギャ、ドアパネル、インストルメントパネル、ドアロック、タイミングベルト、サンルーフ用ボディシール、グラスラン、ウェザーストリップ、回転軸受/滑り軸受、ピボットピン、カム、ガイド、ウェイ、ドライブスクリュー、ギャ、スプライン、チェーン等の保護膜としても使用できる。空気(亜鉛)電池等の電池の撥水コート、電解槽用部材の撥水コート、太陽電池の撥水コート、プリント配線板の防水・撥水コート、電子機器筐体や電子部品用の防水・撥水コート、帯電ロールや定着ロールの防汚コート、基板搬送装置の防汚コート、高周波発熱体の絶縁性向上コート、送電線の絶縁性向上コート、各種フィルターの防水・撥水コート、電波吸収材や吸音材の防水性コート、風呂、厨房機器、トイレタリー用防汚コートとしても使用できる。
【0055】
また、押出成形、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、FRP成形、積層成形、注型、粉末成形、溶液流延法、真空・圧空成形、押出複合成形、延伸成形、発泡成形、各種二次加工、圧縮成形、中空成形、ナノインプリント等の各種金型用離型剤、ウレタンフォーム用離型剤、コンクリート用離型剤、ゴム・プラスチック成型用離型剤、熱交換機の撥水・防水・滑水・防錆コート、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート、機械部品、真空機器部品、ベアリング部品、自動車部品、エ具等の表面保護コートとしても使用できる。
水、温水、酸、アルカリ、有機溶剤、粉体などを取り扱う容器や配管、バルブ等にも用いることができる。具体的には、金属製の容器、ピット、バット、スプーン、スコップ、スパチュラ、管、ホース、チューブ、蛇腹状チューブ、フランジ、エルボー、T型継手、十字継手、ボールバルブ、ニードルバルブ、ベローズバルブ、グローブバルブ、バタフライバルブ、逆止弁、金属製フィルター、ドラム等の防錆・防湿・防汚コートに用いることができる。
【0056】
無機粒子コンポジットによるUVカットコーティング、太陽熱集熱反射板のコーティング、太陽電池用フロントシートおよびバックシート、風力発電機ブレード表面塗布用塗料、トナーのコーティング、光ファイバークラッド材やレンズ材料、鏡、ガラス窓のコーティング、注射器、ピペット、体温計、ビーカー類、シャーレ類、メスシリンダー類、繊維や布への含浸、シーラントの防汚コート剤、IC封止材、防錆塗料、樹脂付着防止塗装、インキ付着防止塗装、層間絶縁膜、半導体製造保護膜などに用いることができる。
駅のホームドア、自動ドア、屋外防犯カメラ、シャッター、自動販売機などの防汚コート、遮音板、コンクリート部材;電柱、道路、壁などの防汚コート、排ガス用防汚・防煤付着コート、建築、自動車、航空機、電車用ガラスの防汚コート、屋根材、建物外装鋼板の防錆・防汚コート、壁紙、フローリング、タイルなどの建物内装材の防汚コート、電磁波シールドシートの耐候性付与コート、屋内外広告の防汚コート、搬送用ロボットアームの耐食コート、カメラ躯体の防汚コート、インクジェットノズルの低摩擦.撥水コート、フォトリソ工程の下地として使用するセラミックの耐薬コート、ナノインプリントモールド用離型コート、タイヤ劣化防止用コート、金属製チェーン、ベルト、ローター、ピストン、搬送ガイド、搬送用フィルムロールの低摩擦コート、ニッケル水素電池電極の耐薬コート、キッチン用品の焼き付き防止コート;鍋、フライパン、炊飯釜、菓子用金型、餅つき器、クレープメーカー、ワッフルメーカー、たこ焼き器、ホットプレートなど、水回り機器の防汚コート;洗濯機、乾燥機、皿洗い機など、碍子の防汚コート、メッキ槽、メッキ治具、洗浄かご、洗浄用バスケット、撹拌機、シャフト、撹拌羽根、投げ込みヒーターなどの防錆、非接着コート、半導体製造用ウェット洗浄装置の金属イオン溶出防止コート、CMP研磨装置の防食コート、プリント基板用CCLの絶縁コート、ガス分離膜、電子回路基板の防湿コート、電子回路基板の電極保護コート、潤滑剤;含フッ素固体潤滑剤、含フッ素オイル潤滑剤、添加剤;撥水性付与添加剤、撥油性付与添加剤、潤滑性付与添加剤、化粧品容器内面コート、薬液バッグ、点滴バッグや薬液シリンジの内面コート、ケッチャップやマヨネーズの容器内面コート、フッ素樹脂の耐薬接着剤、フッ素樹脂と他基材の耐薬接着剤、パターニング材料、フレキシブルディスプレイ基板の防湿コート、3Dプリンター成形品の撥水、耐薬、防湿、離型、防汚コートなどに用いることができる。
【0057】
さらに、本発明で得られる含フッ素重合体は、FRP、特に繊維基材として炭素繊維を用いた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の添加剤としても有用である。FRPおよびCFRPとしては、含フッ素重合体をパウダー、ペレット、フィルムとして樹脂成分における主成分として用いてもよい。
【0058】
(作用効果)
本発明の含フッ素重合体の製造方法によれば、連鎖移動しにくい重合媒体を用いたため、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性に優れた含フッ素重合体を効率的に製造できる。
【実施例0059】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0060】
[評価方法]
(容量流速:Q値(mm/秒))
島津製作所社製のフローテスターを用いて、含フッ素重合体の融点より50℃高い温度で、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィスから含フッ素重合体を押出すときの押出し速度で示す。ただし、本実施例においては、測定温度として220℃、297℃または380℃を用いた。
【0061】
(融点(℃))
走査型示差熱分析器(SII社製、DSC7200)を用いて、空気雰囲気下に300℃まで10℃/分で加熱した際の吸熱ピークから求めた。
【0062】
(含フッ素重合体の組成(モル%))
全フッ素量測定および溶融F-NMR測定の結果から算出した。
【0063】
(実施例1)
内容積2.0L(リットル)の、攪拌機およびジャケットを備えたステンレス製重合槽を真空引きした後、CFCHOCFCFH(媒体化合物(1))の1166g、メタノールの6.75g、CH=CH(CFFの5.5gを仕込み、重合槽内部を攪拌しながら、TFEの145g、Eの8.6gを仕込んだ後、ジャケットに温水を流して重合槽内温を66℃にした。この時の重合槽内圧力は1.54MPaGであった。内温が安定してから、tert-ブチルペルオキシピバレートの2質量%溶液(溶媒:CFCHOCFCFH)を5mL圧入し、重合を開始した。重合前に添加したモノマー成分の合計は、159gであり、重合溶媒であるCF(CFOCの使用量はモノマー成分の合計の質量に対して7.3倍であった。重合中、内圧が1.54MPaGで一定になるよう、TFE/E=54/46モル比の混合ガスを添加した。併せて、重合中に添加されるTFE/E混合ガスが10g消費される毎に、CH=CH(CFFの1.0mLを添加した。反応開始から150分後、TFE/E=54/46モル比の混合ガスの100gを添加したところで重合槽を冷却し、重合を終了した。
その後、重合槽から残モノマーガスを大気圧までパージし、スラリーを内容積2Lの容器に移し、スラリーと同体積の水を加え、加熱(30~90℃)しながら、重合媒体、連鎖移動剤および残モノマーと、ポリマーとを分離した。得られたポリマーを150℃のオーブンで乾燥し、白色粉末状のポリマー1を得た。
ポリマー1の297℃におけるQ値は18mm/秒、組成はTFE/E/CH=CH(CFF=53.5/44.8/1.7モル%、融点は256℃であった。
【0064】
(実施例2)
内容積2.0L(リットル)の、攪拌機およびジャケットを備えたステンレス製重合槽を真空引きした後、CF(CFOC(媒体化合物(2))と(CFCFCFOC(媒体化合物(2))の混合溶媒の1089g、メタノールの3.5g、CH=CH(CFFの7.0gを仕込み、重合槽内部を攪拌しながら、TFEの145g、Eの8.6gを仕込んだ後、ジャケットに温水を流して重合槽内温を66℃にした。この時の重合槽内圧力は1.54MPaGであった。内温が安定してから、tert-ブチルペルオキシピバレートの2質量%溶液(溶媒:CF(CFOCと(CFCFCFOCの混合溶媒)を5mL圧入し、重合を開始した。重合前に添加したモノマー成分の合計は161gであり、重合溶媒であるCF(CFOCと(CFCFCFOCの混合溶媒の使用量はモノマー成分の合計の質量に対して6.8倍であった。重合中、内圧が1.54MPaGで一定になるよう、TFE/E=54/46モル比の混合ガスを添加した。併せて、重合中に添加されるTFE/E混合ガスが10g消費される毎に、CH=CH(CFFの1.0mLを添加した。反応開始から180分後、TFE/E=54/46モル比の混合ガスの100gを添加したところで重合槽を冷却し、重合を終了した。
その後、重合槽から残モノマーガスを大気圧までパージし、スラリーを内容積2Lの容器に移し、スラリーと同体積の水を加え、加熱(30~90℃)しながら、重合媒体、連鎖移動剤および残モノマーと、ポリマーとを分離した。得られたポリマーを150℃のオーブンで乾燥し、白色粉末状のポリマー1を得た。
ポリマー1の297℃におけるQ値は40mm/秒、組成はTFE/E/CH=CH(CFF=53.2/45.3/1.5モル%、融点は260℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の含フッ素重合体の製造方法によれば、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性に優れた含フッ素重合体を効率的に製造できる。