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特開2022-129623水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法
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  • 特開-水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129623
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
C02F1/58 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028363
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 重浩
(72)【発明者】
【氏名】服部 正寛
【テーマコード(参考)】
4D038
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB12
4D038BB13
4D038BB17
4D038BB18
4D038BB20
(57)【要約】
【課題】 水溶性有機化合物含有水溶液中の水溶性有機化合物濃度を低減する水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法を提供する。
【解決手段】 水溶性有機化合物含有水溶液に、メタケイ酸塩と、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩を添加した後、pHを8~10に調整して固形物を除去する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機化合物含有水溶液に、メタケイ酸塩と、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩を添加し、pHを8~10に調整した後、固形物を除去することを特徴とする水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法。
【請求項2】
前記メタケイ酸塩中のケイ素に対する前記金属塩中の金属のモル比(金属/Si)が、1未満であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法。
【請求項3】
前記水溶性有機化合物がエチレンアミンであることを特徴とする請求項1または2に記載の水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性有機化合物を含有する水溶液から、水溶性有機化合物を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
めっき工場や金属表面処理工場、製紙工場などの排水には、水溶性有機化合物が含まれており、これらを処理せず、河川や海洋に排出すると環境汚染の原因となる。そのため、工場排水から水溶性有機化合物を除去してから環境中に排出することが必要である。水溶性有機化合物を含有する排水の処理方法としては、排水処理設備による、生物分解による無害物質化や無機化合物による共沈処理によっての水中からの除去が挙げられる。
【0003】
生物分解法は、微生物により水溶性有機化合物を無害物質化する処理方法である。しかし、生分解性が低い水溶性有機化合物を生物分解によって処理する場合、あらかじめ微生物を水溶性有機化合物含有排水に長期間順化させた後、実際の排水処理設備に馴化した微生物を使用して処理する必要がある。このため、生物分解法を利用して、安定的に水溶性有機化合物を処理するためには、長期間を要する。
【0004】
また、水溶性有機化合物の処理方法として、ポリ塩化アルミニウムや硫酸バンド、塩化鉄といった無機凝集剤を添加した後、pHを中性からアルカリ性に調整して共沈させて処理する方法がある。
【0005】
これは、pHを中性からアルカリ性に調整した際に生成する不溶性の金属酸化物が、水溶性の有機化合物を捕捉する作用を利用して、水溶性有機化合物を処理する方法である。この方法は、濁度に影響を及ぼす濁度成分の除去に有効である一方、無機凝集剤を多量に添加しても水溶性有機化合物を除去できないことがある。
【0006】
水溶性有機化合物の処理方法として、ケイ酸塩による処理方法も提案されている。この処理方法としては、例えば、重合ケイ酸塩と多核錯塩の水酸化物を形成しうる金属塩との混合物を添加して化学的酸素要求量(以下、CODという)を低減、すなわち水溶性有機化合物を除去する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、CODの低減(水溶性有機化合物の除去)は十分とは言えず、また、一度重合ケイ酸塩を水ガラスから調製するという工程が必要であり、簡便な処理方法とは言い難い。
【0007】
また、特許文献2には、COD含有排水に低pH領域でシリカ系溶液とともに鉄イオンを添加し、固液分離することで、COD(水溶性有機化合物の除去)を低減できたことが示されている。しかしながら、この方法では、CODの低減は十分とは言えず、また、薬剤の添加ごとにpHを調整するという複数工程が必要なため、簡便な処理方法とは言い難い。
【0008】
ところで、水溶性有機化合物の一種であるエチレンアミンは、エポキシ樹脂硬化剤、紙力増強剤、めっき用の添加剤、潤滑油添加剤、アスファルト添加剤、界面活性剤など広く使用される有用な化学物質である。一方、皮膚腐食性や目に対する重篤な損傷性を有することから2017年に毒物および劇物取締法における劇物に指定されており、有害な一面も有している。そのため、環境中に放出される場合、適切な処理が必要であるが、難分解性に分類される化合物であるため、安定的に生分解することが困難であり、また、無機化合物による共沈処理方法も確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4-250883号公報
【特許文献2】特開平7-185563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、水溶性有機化合物含有水溶液中の水溶性有機化合物濃度を低減する水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明で示す新規な水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法を用いることにより、水溶性有機化合物濃度を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
[1]水溶性有機化合物含有水溶液に、メタケイ酸塩と、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩を添加し、pHを8~10に調整した後、固形物を除去することを特徴とする水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法。
[2]前記メタケイ酸塩中のケイ素に対する前記金属塩中の金属のモル比(金属/Si)が、1未満であることを特徴とする上記[1]に記載の水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法。
[3]前記水溶性有機化合物がエチレンアミンであることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水溶性有機化合物含有水溶液中の水溶性有機化合物の濃度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フローインジェクション分析装置の装置構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法は、水溶性有機化合物含有水溶液に、メタケイ酸塩と、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(以下、単に「金属塩」ともいう)を添加し、pHを8~10に調整した後、固形物を除去することを特徴とする。
【0017】
水溶性有機化合物含有水溶液に添加されるメタケイ酸塩としては、メタケイ酸リチウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、メタケイ酸セシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム等が挙げられ、入手容易な点からメタケイ酸ナトリウムが好ましい。
【0018】
水溶性有機化合物含有水溶液に添加される金属塩のうち、マグネシウムの金属塩としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、水素化マグネシウム、二ホウ化マグネシウム、窒化マグネシウム、硫化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、過マンガン酸マグネシウム等が挙げられる。これらのうち水溶性有機物の処理性能やその水溶性、入手容易な点から塩化マグネシウムが好ましい。
【0019】
なお、本明細書において、水溶性有機化合物の処理性能とは、後述する固形物を介して、水溶性有機化合物含有水溶液から水溶性有機化合物を除去する性能を指す。また、本明細書において、水溶性有機化合物の除去とは、水溶性有機化合物含有水溶液に含まれる少なくとも一部の水溶性有機化合物を除去すること指し、必ずしも、水溶性有機化合物含有水溶液に含まれるすべての水溶性有機化合物を除去することを指すものではない。
【0020】
水溶性有機化合物含有水溶液に添加される金属塩のうち、カルシウムの金属塩としては、特に限定されることはないが、例えば、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、水素化カルシウム、炭化カルシウム、リン化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、臭素酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち水溶性有機物の処理性能やその水溶性、入手容易な点から塩化カルシウムが好ましい。
【0021】
水溶性有機化合物含有水溶液に添加される金属塩のうち、アルミニウムの金属塩としては、特に限定されることはないが、例えば、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、水素化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、炭酸水素アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ピロリン酸アルミニウム、次亜塩素酸アルミニウム、塩素酸アルミニウム、臭素酸アルミニウム、ヨウ素酸アルミニウム等が挙げられる。これらのうち水溶性有機化合物の処理性能やその水溶性、入手容易な点から塩化アルミニウムが好ましい。
【0022】
水溶性有機化合物含有水溶液に添加される金属塩中の金属(マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種)と、水溶性有機化合物含有水溶液に添加されるメタケイ酸塩中のケイ素とのモル比(以下、「金属/Si」ともいう)は、特に限定されるものではないが、1未満であることが好ましく、0.1以上0.5未満であることがさらに好ましい。モル比が1以上の場合、水溶性有機化合物処理能が十分でないことがある。
【0023】
前述した金属塩とメタケイ酸塩が添加される水溶性有機化合物含有水溶液は、水溶性有機化合物を含む水溶液であり、少なくとも、水溶性有機化合物と水を含む液体である。
【0024】
水溶性有機化合物の例としてはエチレンアミンが挙げられ、エチレンアミンの種類として、ジエチルアミン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘプタエチレンオクタミン、N-メチルエチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、N-エチルエチレンジアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、トリス(2-アミノエチル)アミン、2,2’-ジアミノ-N-メチルジエチルアミン、1,4,7-トリアザシクロノナン、1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン、N,N’,N’ ’-トリメチルジエチレントリアミン、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、N,N,N’,N’ ’,N’ ’-ペンタメチルジエチレントリアミン、デカヒドロ-1H,6H-3a,5a,8a,10a-テトラアザピレン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、N,N,N’ ’,N’ ’-テトライソプロピルジエチレントリアミン、N,N,N’ ’,N’ ’-テトラブチルジエチレントリアミン、ジエチレントリアミン五酢酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N’ ’,N’ ’ ’,N’ ’ ’-六酢酸、N,N,N’,N’ ’,N’ ’-ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’ ’,N’ ’-ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸トリ-tert-ブチル、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0025】
水溶性有機化合物含有水溶液は、水溶性有機化合物と水を含んでいればよく、これら以外の他の物質が含まれていてもよい。水溶性有機化合物含有水溶液に含まれ得る他の物質としては、クエン酸、酒石酸、酢酸などを例示することができる。なお、水溶性有機化合物含有水溶液に含まれ得る他の物質は、固形物であってもよい。
【0026】
水溶性有機化合物含有水溶液に含まれる水溶性有機化合物と、水溶性有機化合物含有水溶液に添加されるメタケイ酸塩中のケイ素とのモル比(organic/Si)は、特に限定されるものではないが、水溶性有機化合物の処理性能がさらに向上する観点から、0.001以上0.1以下であることが好ましく、0.008以上0.03以下であることがさらに好ましい。
【0027】
水溶性有機化合物含有水溶液に、メタケイ酸塩、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩を添加する順番としては特に限定されない。例えば、最初にメタケイ酸塩を添加し、次にマグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩を添加する方法、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩を添加し、次にメタケイ酸塩を添加する方法、メタケイ酸塩と、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩とを同時に添加する方法等が挙げられる。
【0028】
メタケイ酸塩と、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩を添加した後、水溶性有機化合物含有水溶液のpHを8~10に調整する。水溶性有機化合物の処理性能がさらに向上する観点からは、pHを8.5~9.5に調整することが好ましい。pHの調整方法は、特に限定されるものではないが、例えば、メタケイ酸塩と金属塩が添加された水溶性有機化合物含有水溶液のpHが10を超える場合には、該水溶液に硫酸や塩酸などの無機酸を添加することで、pHを8~10に調整することができる。また、例えば、メタケイ酸塩と金属塩が添加された水溶性有機化合物含有水溶液のpHが8未満である場合には、該水溶液に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を添加することで、pHを8~10に調整することができる。
【0029】
メタケイ酸塩と、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムの群から選ばれる少なくとも一種の金属塩を添加した水溶性有機化合物含有水溶液のpHを8~10にすることで、固形物が析出する。この固形物には、水溶性有機化合物(又は、その反応生成物)が含まれており、固形物が除去されることで、有機化合物含有水溶液中の水溶性有機化合物の含有量(濃度)を低減することができる。有機化合物含有水溶液から、固形物を除去する方法としては特に限定されず、例えば、ろ過、遠心分離、および固形物を沈降させた後、上澄み液と分離する方法等が挙げられる。
【0030】
以上説明した本発明の処理方法によれば、水溶性有機化合物含有水溶液にメタケイ酸塩と金属塩を添加してpHを8~10に調整するだけで、該水溶液物中の水溶性有機化合物(又は、その反応生成物)を含む固形物が析出する。このため、この固形物をろ過すれば、水溶性有機化合物含有水溶液中の水溶性有機化合物の含有量(濃度)を低減することができる。この方法は、従来の処理方法と比較して、簡便な方法であり、水溶性有機化合物を含む工場排水などの処理方法として有用性がある。
【実施例0031】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0032】
(ケイ酸塩)
ケイ酸塩として、メタケイ酸ナトリウム9水和物(富士フイルム和光純薬製)を使用した。なお、ケイ酸塩は、純水に溶解して水溶液とした上で、後述する実施例及び比較例で使用した。
【0033】
(ケイ酸塩と併用する金属塩)
ケイ酸塩と併用する金属塩として、以下を使用した。なお、下記金属塩は、純水に溶解して水溶液とした上で、後述する実施例及び比較例で使用した。
塩化マグネシウム6水和物(関東化学製)
塩化カルシウム(富士フイルム和光純薬製)
塩化アルミニウム・6水和物(関東化学製)
【0034】
(水溶性有機化合物)
水溶性有機化合物としてジエチレントリアミン(東京化成工業製)(以下、DETAという)を使用した。
【0035】
(分析方法)
分析装置:Gilson製MINIPULS(登録商標) 3 MP-2ペリスタルティックポンプ(図1のPump)、フロム製 VI-11 サンプルインジェクター(不図示)、200μLサンプルループ(図1のSample Loop)、1mリアクションコイル(図1のRaction coil)、及びJASCO製 UV-970型インテリジェントUV/VIS検出器(図1のDetector)を図1に示すように接続したフローインジェクション分析装置を用いた。
【0036】
(分析条件)
Carrierは純水、Reagentは1mmol/L Cu(II)水溶液とし、それぞれ流量0.6mL/minで流した。波長246nmにおける吸光度を測定した。
【0037】
(エチレンアミン分析操作)
2.11gのDETAを200mLメスフラスコに入れ、標線まで純水を加え、DETA=0.1mol/L溶液を調製した。この溶液を純水で100倍希釈し、1mmol/L溶液とした。この溶液を適宜希釈し、1.0mg/L、5.2mg/L、10.3mg/L、20.3mg/LのDETA水溶液を調製し、検量線用のDETA水溶液とした。前述した分析方法及び分析条件によりこれらの水溶液を分析し、検量線を作成した。この検量線を使用して、後述する参考例、実施例、及び比較例のDETA濃度を測定(特定)した。
【0038】
参考例1
遠心分離機用サンプル瓶50mLに、DETAを500mg/L含む水溶液10mLを加えた後、1M硫酸でpH9に調整した後、全量が40mLになるまで純水を加えた(DETA濃度として125mg/L、DETA量として0.0485mmol)。
【0039】
サンプル瓶を遠心分離機にセットし、3000rpmで10minの工程を合計2回実施した。上澄みをメンブレンフィルター(メルクミリポア社製 マイレクス-LG、孔径0.2μm)でろ別し、ろ液のDETA濃度を測定した。
【0040】
DETA濃度は、125mg/Lであり、上記エチレンアミン分析操作を用いれば、DETAを定量できることを確認した。
【0041】
実施例1
遠心分離機用サンプル瓶50mLに、DETAを500mg/L含む水溶液10mLを加えた後、メタケイ酸ナトリウム(Si=40g/L)水溶液4mL(Siとして5.7mmol添加)、塩化マグネシウム(Mg=40g/L)水溶液1.03mL(Mgとして1.7mmol)を加え、1M硫酸でpH9に調整した後、全量が40mLになるまで純水を加えた(DETA濃度として125mg/L、DETA量として0.0485mmol)。
【0042】
サンプル瓶を遠心分離機にセットし、3000rpmで10minの工程を計2回実施した。上澄みをメンブレンフィルター(メルクミリポア社製 マイレクス-LG、孔径0.2μm)でろ別し、適宜純水で希釈してろ液のエチレンアミン濃度(DETA濃度)を測定した。
【0043】
DETA除去率(%)は、下式(1)を用いて計算した。
DETA除去率=(1-処理後のDETA濃度/処理前のDETA濃度)×100(%) (1)
【0044】
結果を以下の表1に示す。
【0045】
実施例2~3、比較例1~4
実施例1で添加したケイ酸塩と金属塩の種類や添加量を変更して表1に示す条件に調整したこと以外、実施例1と同様にして、DETA除去率を評価した。これらの結果を表1に併せて示す。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1~3は、メタケイ酸ナトリウムと金属塩を使用した例であり、DETA除去率94%以上と処理後のエチレンアミン濃度(DETA濃度)を低減することができた。
【0048】
比較例1は、メタケイ酸ナトリウム単独で処理した例である。DETA除去率は、73%であり、実施例1~3と比較して、エチレンアミン濃度(DETA濃度)の低減が不十分であった。
【0049】
比較例2~4は、メタケイ酸ナトリウムを用いず、金属塩単独を加えてアルカリ性で処理(共沈処理)した例である。DETA除去率は、0~26%とDETA除去効果はほとんど確認されなかった。
【0050】
実施例4~5
実施例1で添加した金属塩の添加量を変更して表2に示す条件に調整したこと以外、実施例1と同様にして、DETA除去率を評価した。
【0051】
結果を表2に示す。
【0052】
比較例5
遠心分離機用サンプル瓶50mLに、DETAを500mg/L含む水溶液10mLを加えた後、メタケイ酸ナトリウム(Si=40g/L)溶液4mL(Siとして5.7mmol添加)、塩化マグネシウム(Mg=40g/L)溶液1.03mL(Mgとして1.7mmol)を加え、1M硫酸でpH6に調整した後、全量が40mLになるまで純水を加えた(DETA濃度として125mg/L、DETA量として0.0485mmol)。
【0053】
サンプル瓶を遠心分離機にセットし、3000rpmで10minの工程を計2回実施した。上澄みをメンブレンフィルター(メルクミリポア社製 マイレクス-LG、孔径0.2μm)でろ別し、適宜純水で希釈してろ液のエチレンアミン濃度(DETA濃度)を測定した。
【0054】
比較例6~7
比較例5で添加した1M硫酸の添加量を変更して表2に示すpHに調整したこと以外、比較例5と同様にして、DETA除去率を評価した。
【0055】
結果を表2に併せて示す。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例4、5は、ケイ酸塩と金属塩のモル比を本発明の範囲内で変化させて調製した例である。DETA除去率は、いずれも90%以上と処理後のDETA濃度を低減することができた。
【0058】
比較例5は、ケイ酸塩と金属塩を添加した後、pHを本発明の範囲外の弱酸性領域に変更して処理した例である。DETAの除去率は25%とDETA除去効果はほとんど確認されなかった。また、比較例6は、ケイ酸塩と金属塩を添加した後、pHを本発明の範囲外の酸性領域に変更して処理した例であり、比較例7は、ケイ酸塩と金属塩を添加した後、pHを本発明の範囲外のアルカリ性領域に変更して処理した例である。比較例6、7のDETAの除去率は、それぞれ、15%と66%であり、実施例1~5と比較して、エチレンアミン濃度(DETA濃度)の低減が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の水溶性有機化合物含有水溶液の処理方法によれば、エチレンアミンといった水溶性有機化合物を含有する水溶液であっても、水溶性有機化合物濃度を低減できるため、化学工場、めっき工場、製紙工場などからの水溶性有機化合物含有排水の処理方法として有用性がある。
図1