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特開2022-129625塩素バイパス設備及びその運転方法、セメントクリンカ製造装置、並びにセメントクリンカの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129625
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】塩素バイパス設備及びその運転方法、セメントクリンカ製造装置、並びにセメントクリンカの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/60 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
C04B7/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028365
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】末益 猛
(72)【発明者】
【氏名】藤永 祐太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥介
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩平
(72)【発明者】
【氏名】大場 康太
(57)【要約】
【課題】安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備を提供すること。
【解決手段】塩素バイパス設備90は、セメントキルン50の窯尻52、ライジングダクト42又はこれらの間からキルン排ガスを抽気する抽気口21Aと、抽気口21Aから抽気された抽気ガスと燃焼炉32で生じた排ガスとを合流させて得られる混合ガスから原料ダストの粗粉を分離して原料ダストの微粉を含む導出ガスを得る分級部22と、を備える。混合ガスは、抽気口21Aで抽気されたときよりも低い温度を有する抽気ガスと、当該抽気ガスよりも高い温度を有する排ガスとを合流させて得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントキルンの窯尻、ライジングダクト又はこれらの間からキルン排ガスを抽気する抽気口と、
前記抽気口から抽気された抽気ガスと燃焼炉で生じた排ガスとを合流させて得られる混合ガスから原料ダストの粗粉を分離して前記原料ダストの微粉を含む導出ガスを得る分級部と、を備え、
前記抽気口で抽気されたときよりも低い温度を有する前記抽気ガスと、当該抽気ガスよりも高い温度を有する前記排ガスとを合流させて前記混合ガスを得る、塩素バイパス設備。
【請求項2】
前記分級部から導出される前記導出ガスは770℃以上の温度を有する、請求項1に記載の塩素バイパス設備。
【請求項3】
前記燃焼炉は、プラスチックを熱処理することによって生じた熱分解ガスを燃焼するものであり、
前記排ガスが塩素分を含む、請求項1又は2に記載の塩素バイパス設備。
【請求項4】
前記導出ガスが流通する流路の内壁面に沿って旋回流が生じるように冷却ガスを導入する冷却ガス導入部を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩素バイパス設備。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の塩素バイパス設備を備えるセメントクリンカ製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のセメントクリンカ製造装置を用いてセメントクリンカを製造するセメントクリンカの製造方法。
【請求項7】
セメント原料をセメントキルンで焼成する際に発生するキルン排ガスを抽気して抽気ガスを得る抽気工程と、
前記抽気ガスと燃焼炉で生じた排ガスとを合流させて得られる混合ガスから原料ダストの粗粉を分離して前記原料ダストの微粉を含む導出ガスを得る分級工程と、を有し、
前記抽気工程で抽気されたときよりも低い温度を有する前記抽気ガスと、当該抽気ガスよりも高い温度を有する前記排ガスとを合流させて前記混合ガスを得る、塩素バイパス設備の運転方法。
【請求項8】
前記分級工程を開始する前に、前記混合ガスから前記粗粉を分離して前記微粉を含む前記導出ガスを得る分級部を、前記排ガスを用いて予熱する予熱工程を有する、請求項7に記載の塩素バイパス設備の運転方法。
【請求項9】
前記導出ガスが流通する流路に旋回流が生じるように冷却ガスを導入する冷却ガス導入工程と、
前記導出ガスと前記冷却ガスとを含有するガスに含まれるダストを回収するダスト回収工程と、を有する、請求項7又は8に記載の塩素バイパス設備の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塩素バイパス設備及びその運転方法、セメントクリンカ製造装置、並びにセメントクリンカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントクリンカの製造装置では、各種廃棄物を原料及び燃料として用いることの取り組みが進められている。このような事情から、セメントキルンに持ち込まれる塩素量は増加する傾向にある。多くのセメントクリンカ製造装置にはセメントキルン内の塩素を低減するために塩素バイパス設備が設置されており、この塩素バイパス設備で抽気された抽気ガスから効率的に塩素を除去する技術が検討されている。特許文献1では、キルン排ガス流路から抽気した抽気ガスの温度を770℃以上に維持した状態で抽気ガスから粗粉を分離し、その後、600℃以下に冷却して塩素バイパスダストを分離する技術が提案されている。
【0003】
セメントキルンに持ち込まれる塩素源としては、廃棄物に含まれる廃プラスチックが挙げられる。このような廃プラスチックは、セメントクリンカの製造のみならず、例えば、固形燃料の製造にも用いられている。例えば、特許文献2では、石炭から得られる粉体と、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性プラスチックとを含む混合物を加熱して固形燃料を製造する技術が提案されている。このような技術において、塩素を含むプラスチックを加熱して得られる熱分解ガスを燃焼室で燃焼すると、塩化水素を含む燃焼排ガスが発生する。特許文献2では、このような燃焼排ガスを排ガス洗浄装置で処理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-55900号公報
【特許文献2】特開2011-57750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ダストの粗粉を分離した後の抽気ガスの温度を770℃以上にして、分級装置においてKCl及びNaCl等の揮発した塩素分が単独で析出すること、又はこれらが原料ダストの表面に析出することを抑制している。しかし、抽気口から分級部までを断熱した場合であっても、流路を通過することによる抽気ガスの温度低下は避けられず、上述の温度を維持することが難しくなる場合もある。分級部を通過したガスの温度が770℃未満になった場合は、分級部内でKCl及びNaCl等の揮発した塩素分が単独で析出して、又は原料ダストの表面に析出して塩素バイパスダスト(クリンカダスト)ができる。この塩素分が表面に析出した直後のクリンカダスト、又は塩素分が単独で析出してできた直後のクリンカダストは非常に付着性が高く、分級部内に付着しコーチングが生成されることが懸念される。また、揮発した塩素分が分級部内で析出し、そこに原料ダストが付着してコーチングが生成されることも懸念される。このように、分級部内の温度が低下すると、塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造装置の運転変動の要因となることが懸念される。
【0006】
そこで、本開示では、安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備及びその運転方法を提供する。また、本開示では、そのような塩素バイパス設備を備えることによって、セメントクリンカを安定的に製造することが可能なセメントクリンカ製造装置及びセメントクリンカの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る塩素バイパス設備は、セメントキルンの窯尻、ライジングダクト又はこれらの間からキルン排ガスを抽気する抽気口と、抽気口から抽気された抽気ガスと燃焼炉で生じた排ガスとを合流させて得られる混合ガスから原料ダストの粗粉を分離して原料ダストの微粉を含む導出ガスを得る分級部と、を備え、抽気口で抽気されたときよりも低い温度を有する前記抽気ガスと、当該抽気ガスよりも高い温度を有する前記排ガスとを合流させて前記混合ガスを得る。
【0008】
上記塩素バイパス設備は、抽気口から抽気された抽気ガスと燃焼炉で生じた排ガスを抽気ガスに合流させて混合ガスを得ている。この時、抽気口から抽気された抽気ガスは、例えば流路を通過することで温度が低下する。そこで、このように抽気口で抽気されたときよりも低い温度を有する抽気ガスに、これよりも高い温度を有する燃焼炉の排ガスを合流させて混合ガスを得る。このように、高温の排ガスを合流させることから、混合ガス及び導出ガスの温度を安定的に高くすることができる。このため、分級部では、塩素分が気相に含まれている状態で、抽気ガスに含まれる原料ダストの粗粉を混合ガスから分離して、抽気ガス及び混合ガスよりも原料ダストの粗粉が低減された導出ガスを得ることができる。したがって、クリンカダストの量が増加することを抑制でき、クリンカダスト水洗設備の負荷を低減することができる。さらに、分級部で塩素分が単独で析出して、又は原料ダストの表面に析出してクリンカダストとなり、分級部内部に付着して閉塞することを抑制できる。これによって、上述の塩素バイパス設備を安定的に運転することができる。また、分級部で分離される原料ダストの粗粉は、塩素濃度が十分に低いことから、セメントキルン側に戻してセメントクリンカの原料として有効利用することができる。
【0009】
上記塩素バイパス設備の分級部から導出される導出ガスは770℃以上の温度を有することが好ましい。これによって、KCl及びNaCl等の揮発した塩素分が単独で析出して、又は原料ダストの表面に析出してクリンカダストになることを十分に抑制できる。また、原料ダストの粗粉をセメントキルンに戻す場合でも、セメントキルンへの塩素の持ち込みを低減することができる。
【0010】
燃焼炉は、プラスチックを熱処理することによって生じた熱分解ガスを燃焼するものであり、排ガスは塩素分を含むことが好ましい。上記熱分解ガスには、例えばタールが含まれる。分級部から導出される導出ガスには、分級部で回収されなかった原料ダストの粗粉及び微粉が含まれる。この分級部で回収されなかった原料ダストに含まれるCa分と、熱分解ガスを燃焼し得られる排ガスに含まれるHCl等の塩素分が反応して固体状のCaClとなり、これらもクリンカダストとして回収できるようになる。したがって、塩素分を含む燃焼炉の排ガスを処理する洗浄装置の負荷を低減することができる。また、塩素分を含む燃焼炉の排ガスの全量が抽気ガスに合流するようにすれば、排ガスの洗浄装置をなくすこともできる。
【0011】
上記塩素バイパス設備は、導出ガスが流通する流路の内壁面に沿って旋回流が生じるように冷却ガスを導入する冷却ガス導入部を備えることが好ましい。原料ダストの微粉及び揮発した塩素分を含む導出ガスは、その温度が低下するにつれて塩素分が析出したり、原料ダストの微粉の表面に塩素分が析出したりして、クリンカダストができる。この塩素分が表面に析出した直後のクリンカダストは非常に付着性が高く、流路の内壁面に付着しコーチングが生成されることが懸念される。また、揮発した塩素分が流路の内壁面で析出し、そこに原料ダストが付着してコーチングが生成されることも懸念される。
【0012】
このため、導出ガスの流路の壁面に沿って旋回流が生じるように冷却ガスを導入する冷却ガス導入部を備える。このような冷却ガス導入部は、内壁面に沿って旋回流が生じるように冷却ガスを導入することによって、高温の導出ガスから内壁面を保護することができる。そして、高温の導出ガスは主に流路の中央部を流通することとなる。したがって、流路内で導出ガスと冷却ガスの流通路が異なることとなる。導出ガスの流通路と冷却ガスの流通路の境界では微量のクリンカダストができるものの、流路の内壁面に沿う旋回流がエアーカーテンとして機能し、クリンカダストが流路の内壁面に付着してコーチングとなることを抑制することができる。したがって、塩素バイパス設備を一層安定的に運転することができる。なお、本開示における「導出ガスを含むガス」としては、冷却ガスを混合する前の導出ガス、及び、導出ガスと冷却ガスとを混合して得られるガスが例示される。ただし、これら以外のガスを含んでいてもよい。
【0013】
上述の導出ガスを冷却して得られる導出ガスを含むガスに含まれるクリンカダストを回収する回収部と、回収部の下流側で導出ガスを含むガスを吸引する吸引部と、を備えることが好ましい。回収部では、吸引部による吸引によって、クリンカダストを回収することができる。分級部で原料ダストの粗粉が低減されているため、クリンカダストの量を低減することができ、クリンカダストの水洗処理コストを低減することができる。
【0014】
塩素バイパス設備は、分級部で分離された原料ダストの粗粉をセメントキルン側に戻す循環流路を備えることが好ましい。混合ガスの温度を770℃以上に維持した状態で混合ガスに含まれる原料ダストの粗粉を分離してセメントキルン側に循環流路で戻すため、塩素分は揮発した状態であり、原料ダストをセメントクリンカ原料として有効活用することができる。
【0015】
本開示の一側面に係るセメントクリンカ製造装置は、上述のいずれかの塩素バイパス設備を備える。このため、上記塩素バイパス設備は安定的に運転をすることが可能であることから、これを備えるセメントクリンカ製造装置は、セメントクリンカを安定的に製造することができる。
【0016】
本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造方法は、上記セメントクリンカ製造装置を用いてセメントクリンカを製造する。このため、セメントクリンカを安定的に製造することができる。
【0017】
本開示の一側面に係る塩素バイパス設備の運転方法は、セメント原料をセメントキルンで焼成する際に発生するキルン排ガスを抽気して抽気ガスを得る抽気工程と、抽気ガスと燃焼炉で生じた排ガスとを合流させて得られる混合ガスから原料ダストの粗粉を分離して原料ダストの微粉を含む導出ガスを得る分級工程と、を有し、抽気工程で抽気されたときよりも低い温度を有する抽気ガスと、当該抽気ガスよりも高い温度を有する排ガスとを合流させて前記混合ガスを得る。
【0018】
上記運転方法は、抽気工程で抽気された抽気ガスと燃焼炉で生じた排ガスを合流させて混合ガスを得ている。この時、抽気工程で抽気された抽気ガスは、例えば流路を通過することで温度が低下する。そこで、このように、抽気工程で抽気されたときよりも低い温度を有する抽気ガスにこれよりも高い温度を有する排ガスを合流させることから、混合ガスの温度を安定的に高くすることができる。このため、分級工程では、塩素分が気相に含まれている状態で、原料ダストの粗粉を混合ガスから分離して、抽気ガス及び混合ガスよりも原料ダストの粗粉が低減された導出ガスを得ることができる。これにより、クリンカダストの量が増加することを抑制でき、クリンカダスト水洗設備の負荷を低減することができる。また、分級工程で塩素分が析出することを抑制できるため、設備内でコーチングが発生することを抑制できる。これらの要因によって、上述の運転方法は塩素バイパス設備を安定的に運転することができる。
【0019】
分級工程では混合ガスの温度を770℃以上に維持することが好ましい。これによって、混合ガスに含まれる原料ダストの粗粉を分離してセメントキルン側に循環流路で戻せば、塩素分は揮発した状態であることから、原料ダストをセメントクリンカ原料として有効活用することができる。
【0020】
上記運転方法は、分級工程を開始する前に、混合ガスから原料ダストの粗粉を分離して原料ダストの微粉を含む導出ガスを得る分級部を、上記排ガスを用いて予熱する予熱工程を有することが好ましい。このような予熱工程を有することによって、分級部の使用開始当初から、分級部において、塩素分が単独で析出して、又は原料ダストの表面に析出してクリンカダストが生じることを抑制できる。
【0021】
上記運転方法は、上記混合ガスから原料ダストの粗粉を分離して得られる導出ガスが流通する流路に旋回流が生じるように冷却ガスを導入する冷却ガス導入工程と、導出ガスと冷却ガスとを含有するガスに含まれるクリンカダストを回収するダスト回収工程と、を有することが好ましい。冷却ガス導入工程を有することによって、流路の旋回流がエアーカーテンとなって、クリンカダストが流路の内壁面に付着することを抑制することができる。したがって、ダスト回収工程によって、クリンカダストを安定的に回収することができる。
【発明の効果】
【0022】
安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備及びその運転方法を提供することができる。また、そのような塩素バイパス設備を備えることによって、セメントクリンカを安定的に製造することが可能なセメントクリンカ製造装置及びセメントクリンカの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態に係る塩素バイパス設備とこれを備えるセメントクリンカ製造装置を示す図である。
図2】冷却ガス導入部が接続される導出ガスの流路の径方向断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
図1は、一実施形態に係る塩素バイパス設備とこれを備えるセメントクリンカ製造装置を示す図である。塩素バイパス設備90は、セメントクリンカ製造装置100の予熱仮焼部40のライジングダクト42に接続される。塩素バイパス設備90は、セメントクリンカ製造装置100内の塩素分等の揮発分をクリンカダストとして回収し、セメントクリンカ製造装置100内の塩素分を低減する。
【0026】
塩素バイパス設備90は、ライジングダクト42からガスを抽気する抽気口21Aと、抽気口21Aから抽気された、原料ダストを含む抽気ガスが流通する抽気管21と、抽気ガスと燃焼炉32で生じた排ガスと合流させて混合ガスを得るとともに、混合ガスから原料ダストの粗粉を分離して、当該粗粉よりも小さい原料ダストの微粉を含む導出を得る分級部22と、導出ガスが流通する流路24と、流路24に旋回流が生じるように冷却ガスを導入する冷却ガス導入部10と、を備える。
【0027】
抽気口21Aから抽気された抽気ガスは、原料ダスト及びガス状の塩素分を含む。抽気ガスは抽気管21を流通し分級部22に導入される。抽気管21は、抽気プローブと称されるものであってもよい。分級部22に導入される際の抽気ガスの温度は、KCl及びNaCl等の揮発した塩素分が単独で析出し、又は原料ダストの表面に析出し、クリンカダストとして分級部22に付着することを抑制する観点から、好ましくは770℃を超え、より好ましくは820℃以上であり、さらに好ましくは860℃以上である。
【0028】
分級部22には、抽気ガスと燃焼炉32で生じた排ガスとが導入され、分級部22において両者が混合され抽気ガスと排ガスとを含む混合ガスが得られる。燃焼炉32は、廃プラスチック脱塩設備30における脱塩炉35において廃プラスチックを含む原料を熱処理して生じる熱分解ガスに含まれるタールを燃焼する炉である。燃焼炉32で生じる排ガスは、流路33を流通して分級部22に導入される。この時、抽気管21を流通することによって温度が低下した抽気ガスに、これよりも高い温度を有する燃焼炉の排ガスを導入する。これによって、分級部22における混合ガス(導出ガス)の温度を安定的に高くすることができる。このため、分級部22では、塩素分が気相に含まれている状態で、原料ダストの粗粉を混合ガスから分離することができる。したがって、揮発した塩素分が単独で析出すること、又は原料ダストの表面に析出することによりコーチングが発生し、分級部22が閉塞することを抑制できる。また、塩素が析出した原料ダストがセメントキルン側に循環流路で戻ることを抑制することができる。
【0029】
燃焼炉32からの排ガスと抽気ガスとを合流することによって、分級部22における混合ガスの流速を大きくすることができる。これによって、分級部22における分級性能を向上し、原料ダストの粗粉を、より高い精度で混合ガスから分離することができる。分級部22は例えばサイクロンであってよい。原料ダストの粗粉の粒径は、例えば、18μm以上であってよく、好ましくは16μm以上であってよく、より好ましくは14μm以上であってもよい。原料ダストの粗粉が14μm以上となるように分級を行うことによって、揮発分を十分に低減することができる。
【0030】
分級部22で混合ガスから分離された原料ダストの粗粉は、セメントクリンカの原料となるものであるため、原料ダストの粗粉は循環流路27を流通してセメントキルン50の窯尻52に導入される。このように、抽気口21Aから抽気された原料ダストの粗粉を窯尻52に戻すことによって、原料ダストの粗粉をセメントクリンカの製造に用いることができる。なお、原料ダストの粗粉は窯尻52ではなく、ライジングダクト42、仮焼炉44、又はキルン本体56に戻してもよい。また、循環流路27を複数設けて原料ダストの粗粉を複数箇所に戻してもよい。分級部22で混合ガスから分離される原料ダストの粗粉に塩素分が析出することを抑制する観点から、分級部22において原料ダストの粗粉を分離する際の混合ガスの温度は、好ましくは770℃以上、より好ましくは820℃以上、さらに好ましくは860℃以上であることが好ましい。分級部22から導出される導出ガスの温度も、好ましくは770℃以上、より好ましくは820℃以上、さらに好ましくは860℃以上であることが好ましい。
【0031】
燃焼炉32で生じ、流路33を流通して分級部22又はその入口で抽気ガスと合流する排ガスはHCl等の塩素分を含有してよい。分級部22から導出される導出ガスには、分級部22で回収されなかった原料ダストの粗粉及び微粉が含まれる。この分級部22で回収されなかった原料ダストに含まれるCa分と、燃焼炉32で生じた排ガスに含まれるHCl等の塩素分が反応して固体状のCaClとなり、このような塩素分も、塩素バイパス設備90においてクリンカダストとして回収することができる。このため、廃プラスチック脱塩設備30における洗浄装置の負荷を低減することができる。また、燃焼炉32で発生する塩素分を含む排ガスの全量を、塩素バイパス設備90に導入することによって、廃プラスチック脱塩設備30における洗浄装置の運転を省略することができる。
【0032】
なお、塩素バイパス設備90で抽気ガスに合流する排ガスは廃プラスチック脱塩設備30の燃焼炉32からの排ガスに限定されず、廃プラスチック脱塩設備30の燃焼炉32とは異なる燃焼炉からの排ガスであってもよい。また、塩素分を含まない排ガスであってもよい。例えば、バイオマスペレット炭化設備に備えられる燃焼炉、アンモニアガス化炉、硫黄燃焼炉、或いは、これらとは異なる燃焼炉又は溶融炉からの高温排ガスであってもよい。これらの一種の排ガスを単独で用いてもよいし、複数の排ガスを組み合わせて用いてもよい。
【0033】
抽気ガスに合流する排ガスの流量は、セメントクリンカ製造装置100又は塩素バイパス設備90の運転状況に応じて調節してもよい。排ガスの流量の調節は、例えば、抽気ガスの流路24、分級部22、抽気管21、ライジングダクト42、セメントキルン50(窯尻52)の運転情報を計測する計測部、及び/又は、回収部72で回収されるクリンカダストの塩素濃度に基づいて行ってよい。具体的には、分級部22の運転情報(例:温度)、及び/又は、回収部72で回収されるクリンカダストの塩素濃度に基づいて、オペレータが、排ガスの流量をマニュアルで調節してもよく、制御部を用いて自動で調節してもよい。
【0034】
計測部が計測する運転情報としては、温度、圧力、抽気ガスの成分、抽気ガスの流速、ダスト濃度及び画像等が挙げられる。具体的には、抽気管21、分級部22及び流路24の内部又は表面の温度、ライジングダクト42及び窯尻52におけるキルン排ガスの温度、抽気口21Aから抽気管21内に流入するキルン排ガスの温度、キルン排ガス及び抽気ガスの圧力、キルン排ガス及び抽気ガスのガス成分、キルン排ガス及び抽気ガスに含まれるダスト濃度、並びに、抽気管21及び分級部22内部の画像等が挙げられる。計測部としては、例えば、温度センサ、圧力センサ、ガス成分センサ、流速センサ、及びカメラ等が挙げられる。
【0035】
塩素バイパス設備90は、計測部で計測された運転情報に基づいて、排ガスの流量を調節する制御信号を出力する制御部を備えてもよい。制御部は、通常のコンピュータシステムであってよく、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェイスなどを備えてよい。
【0036】
制御部を備えることによって、燃焼炉32からの排ガスの流量を自動で制御することができる。例えば、分級部22から導出される導出ガスの温度T1を計測部で計測し、温度T1が下限を下回った場合には、抽気ガスに合流する排ガスの流量が増加するように制御してもよい。これによって、分級部22の温度が下がり過ぎることを回避できる。
【0037】
分級部22において混合ガスから原料ダストの粗粉を分離することによって得られる、原料ダストの微粉とガス状の塩素分を含む導出ガスは、分級部22に接続された流路24を流通し冷却ガス導入部10で冷却される。冷却ガス導入部10では、円管26で構成される流路24に冷却ガス11の流路が接続され、原料ダストの微粉及び塩素分を含む導出ガスが冷却ガスと混合され冷却される。冷却後、導出ガスを含むガスは、流路24を流通し冷却部70に導入される。
【0038】
冷却ガス導入部10において、冷却ガス11は、原料ダストの微粉及び塩素分を含む導出ガスが流通する流路24の内壁面の周方向に沿うように導入される。これによって、流路24に旋回流が生じ、流路24の内壁面にクリンカダストが付着してコーチングが発生することを抑制することができる。このような旋回流は、流路24の外周部にエアーカーテンを形成し、高温の導出ガスから流路24を構成する円管26の内壁面を保護することができる。
【0039】
冷却ガス導入部10において、導出ガスは冷却ガス11と混合され冷却される。冷却後の導出ガスを含むガス(導出ガスと冷却ガスの混合ガス)の温度は、設備の耐熱性の観点から600℃以下であってよく、500℃以下であってもよい。冷却ガス11は、常温の空気であってよく、工場等で発生する200℃以下、好ましくは100℃以下の排気ガスを含むものであってもよい。排気ガスとしては、例えば、セメント製造工場に持ち込まれた下水汚泥等の含水汚泥の受け入れ、貯蔵及び発酵時に発生する臭気ガス、後述の吸引部74及び他工程の吸引部から排出される排出ガス等が挙げられる。これらの一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
図2は、冷却ガス導入部が接続される導出ガスの流路24の径方向断面を示す断面図である。原料ダストの粗粉が分離され、塩素分及び原料ダストの微粉を含む導出ガスが流通する流路24は円管26によって構成される。図2に示すような流路24(円管26)の径方向断面で見たときに、冷却ガス導入部10の流路壁37は、円管26の接線方向と平行方向に伸びるように、円管26に接続されている。円管26に接続された冷却ガス導入部10は、流路壁37で区画される流路12内を流通する冷却ガス11を流路24内に導入する。導入された冷却ガス11は、流路24において導出ガスと合流しながら旋回流SFを形成する。旋回流SFの旋回軸は、円管26で構成される流路24の中心軸Pと一致する。
【0041】
導出ガスは中心軸Pの軸方向に沿って流路24の中央部を流通し、冷却ガス11は流路24を構成する円管26の内壁面26Wに沿って旋回流SFとして流通する。このように、流路24では導出ガスと冷却ガスの流通路が異なるようにガスを流通させる。導出ガスの流通路と冷却ガスの流通路の境界では微量のクリンカダストができるが、旋回流SFがエアーカーテンとなって、クリンカダストが内壁面26Wに付着しコーチングとなることを抑制することができる。
【0042】
図1に示すように、塩素バイパス設備90は、冷却ガス導入部10の下流に導出ガスを含むガスを冷却する冷却部70と、導出ガスを含むガスに含まれるダスト(クリンカダスト)を導出ガスを含むガスから回収する回収部72と、導出ガスを吸引する吸引部74とを備える。冷却部70は水冷式又は空冷式の熱交換器であってよい。吸引部74としては、シロッコファン及びターボファンなどの通常の吸引ファンが挙げられる。
【0043】
冷却部70は、冷却ガス11と導出ガスが合流して得られる導出ガスを含むガスを、例えば260℃未満、好ましくは200℃未満に冷却する。この導出ガスを含むガスはクリンカダストを含んでいるため、回収部72に導入される。回収部72は、バグフィルタであってよく、湿式スクラバ等の湿式集塵器であってもよい。回収部72で回収されたクリンカダストは、水洗処理がなされた後、セメント組成物に配合してもよいし、セメント原料として用いてもよい。
【0044】
図1のセメントクリンカ製造装置100は、塩素バイパス設備90と、セメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼部40と、予熱及び仮焼されたセメント原料を焼成してセメントクリンカを得るセメントキルン50と、セメントキルン50で得られたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラ60とを備える。予熱仮焼部40は、4つのサイクロンC1,C2,C3,C4(プレヒータ)と仮焼炉44とを有する。
【0045】
セメントキルン50の窯尻52と予熱仮焼部40の仮焼炉44とは、ライジングダクト42で接続されている。ライジングダクト42と窯尻52の接続部近傍には、セメントキルン50で発生するキルン排ガスを抽気して、キルン排ガスに含まれるダストを回収する塩素バイパス設備90の抽気口21Aが設けられている。抽気口21Aには、抽気管21が接続されている。セメントクリンカ製造装置100は、塩素バイパス設備90を備えることによって、セメントクリンカ製造装置100内の塩素分を低減することができる。
【0046】
サイクロンC1とサイクロンC2との接続部から導入されるセメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、ライジングダクト42、仮焼炉44、及びサイクロンC4を流通してセメントキルン50の窯尻52に導入される。セメントキルン50では、予熱及び仮焼されたセメント原料が、窯尻52とは反対側に設けられたバーナ54の燃焼によって加熱されセメントクリンカとなる。得られたセメントクリンカは、クリンカクーラ60で冷却される。クリンカクーラ60によって冷却された後、セメントクリンカが得られる。
【0047】
セメントクリンカ製造装置100は、塩素バイパス設備90を備えるため、安定的に運転することが可能であり、安定的にセメントクリンカを製造することができる。また、原料ダストを有効利用して、セメントクリンカの収量を増やすことができる。また、クリンカダストが低減され、クリンカダストの処理コストを低減することができる。
【0048】
本実施形態では、抽気口21Aがライジングダクト42に設けられているが、これに限定されない。例えば、変形例では、抽気口21Aは窯尻52に設けられてもよく、窯尻52とライジングダクト42の間(又は境界部)に設けられてもよい。また、本実施形態では、燃焼炉32から生じる排ガスは、分級部22において抽気ガスと合流しているがこれに限定されない。変形例では、分級部22と抽気口21Aの間、例えば、抽気管21内の流路において、抽気ガスと排ガスとが合流して混合ガスとなってもよい。この場合、排ガスの流路33と抽気管21とを接続することによって、抽気ガスと排ガスとの合流部を分級部22よりも上流に設けることができる。なお、ここでいう「上流」とは、抽気ガス(混合ガス)の流通方向を基準とする合流部と分級部22の位置関係を示す。抽気ガスと排ガスとが合流することによって得られる混合ガスは十分に高温であることから、塩素分の析出が抑制され、分級部22におけるコーチングの付着及び閉塞を抑制することができる。別の変形例では、排ガスの流路33を分岐して、排ガスを複数箇所に分けて抽気ガス又は混合ガスと合流するようにしてもよい。この場合、複数の合流部において合流する排ガスの流量を個別に調節するような制御部を設けてもよい。
【0049】
一実施形態に係るセメントクリンカの製造方法は、セメントクリンカ製造装置100を用いて行うことができる。これらの方法は、予熱仮焼部40でセメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼工程と、予熱及び仮焼されたセメント原料を、窯尻52からキルン本体56に導入し、セメントクリンカを製造する焼成工程と、焼成工程で発生するキルン排ガスを抽気して抽気ガスを得る抽気工程と、原料ダストを含む抽気ガスと燃焼炉で生じた排ガスとを合流させる合流工程と、抽気ガスと排ガスとが合流して得られる混合ガスから分級部22で原料ダストの粗粉を分離する分級工程と、分級部22から導出される、原料ダストの粗粉が低減された導出ガスが流通する流路に旋回流が生じるように冷却ガスを導入する冷却ガス導入工程と、導出ガスを含むガスを冷却する冷却工程と、冷却工程で冷却された導出ガスを含むガスに含まれるクリンカダストを回収するダスト回収工程とを有する。また、分級工程で分離された原料ダストの粗粉をセメントキルン50側に戻す循環工程と、を有してもよい。また、焼成工程で得られたセメントクリンカを、クリンカクーラ60で冷却するクリンカ冷却工程を有してもよい。
【0050】
予熱仮焼工程では、セメント原料がサイクロンC1とサイクロンC2の間の流路から導入される。セメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2及びサイクロンC3を流通して予熱される。その後、仮焼炉44に導入され、仮焼される。仮焼炉44には、石炭等の燃料を燃焼するバーナが設けられていてよい。仮焼炉44で仮焼されたセメント原料(仮焼原料)は、サイクロンC4に導入され加熱される。
【0051】
焼成工程では、サイクロンC4で加熱された仮焼原料が窯尻52に導入される。その後、キルン本体56において焼成されセメントクリンカとなる。抽気工程では、焼成工程で発生するキルン排ガスを抽気口21Aから抽気する。合流工程で、抽気口から抽気され流路を通過することで温度が低下した抽気ガスと、これよりも高い温度を有する燃焼炉の排ガスを合流させる。これによって、分級工程における混合ガスの温度を安定的に高くすることができる。したがって、分級工程では、塩素分が混合ガスに気相として含まれている状態で、原料ダストの粗粉を混合ガスから分離することができる。したがって、揮発した塩素分が単独で析出して、又は原料ダストの表面に析出することによりコーチングが発生し、分級部22が閉塞することを抑制できる。また、塩素が析出した原料ダストをセメントキルン側に循環流路で戻すことを抑制することができる。
【0052】
合流工程と分級工程は、分級部22内において併せて行ってもよいし、抽気管21に設けられた合流部において合流工程を行って混合ガスを得た後に、分級部22において当該混合ガスから原料ダストの粗粉を分離する分級工程を行ってもよい。分級工程で得られる原料ダストの粗粉をセメントキルン50の窯尻52に戻す循環工程を行うことによって、セメントクリンカの生産量を効率よく増やすことができる。
【0053】
分級工程を開始する際、暖まっていない抽気管21及び分級部22内を抽気ガスが通過すると流路の内壁面にクリンカダストが付着してしまうことが懸念される。そのため、燃焼炉32から生じる排ガスを利用して抽気管21及び分級部22内を予熱する予熱工程を行ってもよい。予熱箇所としては、耐火物が施工されている抽気口21Aから分級部22までの流路をなす抽気管21、及び分級部22が挙げられる。予熱する際に吸引部74のドラフトを利用する場合は、抽気口21A付近にダンパーを設け、抽気口21Aから抽気される、揮発した塩素分を含むキルン排ガスを吸引しないようにした上で、ダンパーに近い箇所から燃焼炉32で生じる排ガスを導入することが好ましい。予熱する際にSPファンのドラフトを利用する場合は、分級部22のガス導出口にダンパーを設け、分級部22に高温排ガスを導入することが好ましい。また、流路の内壁面に塩素が析出することを抑制する観点から、予熱に使用する高温排ガスは塩素を含まない方が好ましい。
【0054】
冷却ガス導入工程では、分級部22から導出される導出ガスに冷却ガスを合流させて導出ガスを冷却する。このとき、円管26で構成される導出ガスを含むガスの流路24の内壁面の周方向に沿って冷却ガスを導入することによって、旋回流を生じさせる。これによって、流路24にクリンカダストが付着してコーチングが発生することを抑制できる。冷却ガス導入工程で冷却ガス11を混合することによって冷却された導出ガスを含むガスの温度は、設備の耐熱性の観点から600℃以下であってよく、500℃以下であってもよい。導出ガスがこのように冷却されることによって、揮発した塩素分が単独で析出して、又は原料ダストの表面に析出してクリンカダストができる。
【0055】
冷却工程では、例えば熱交換器を備える冷却部70において導出ガスを含むガスを例えば260℃未満、好ましくは200℃未満に冷却する。ダスト回収工程では、回収部72において冷却された導出ガスを含むガスに含まれるダストを回収する。このようにして回収されるダストはクリンカダストと称される。この製造方法によって、塩素バイパス設備90及びセメントクリンカ製造装置100を安定的に運転することができる。また、原料ダストを有効利用して、セメントクリンカを効率よく製造することができる。また、分級工程で原料ダストの粗粉を分離したことでクリンカダストの量が低減され、クリンカダストの処理コストを低減することができる。
【0056】
一実施形態に係る塩素バイパス設備の運転方法は、上述の抽気工程、合流工程、分級工程、冷却工程及びダスト回収工程を有してよい。また、上述の循環工程を有していてもよいし、上述のセメントクリンカの製造方法のいずれかの工程をさらに有していてもよい。この運転方法はセメントクリンカ製造装置100に備えらえる塩素バイパス設備90を用いて行うことができる。したがって、各工程の内容は、上述のセメントクリンカの製造方法における内容と同様であってよい。
【0057】
上述の塩素バイパス設備90及びセメントクリンカ製造装置100に関する説明内容は、上述のセメントクリンカの製造方法及び塩素バイパス設備の運転方法の説明内容にも適用される。また、上記製造方法及び運転方法の説明内容も、上述の塩素バイパス設備90及びセメントクリンカ製造装置100の説明内容に適用される。
【0058】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、分級部22で分離された原料ダストの粗粉は循環流路27を介してセメントキルン50側に戻していたがこれに限定されない。例えば、セメント原料のタンクに入れてセメント原料として予熱仮焼部40に供給されてもよい。また、導出ガスの流路24を構成する円管26は水平に配置されずに、水平方向に対して傾斜して配置されてもよい。塩素バイパス設備は、冷却ガス導入部10と冷却部70の間に混合チャンバを有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示によれば、安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備及びその運転方法が提供される。また、そのような塩素バイパス設備を備えることによって、セメントクリンカを安定的に製造することが可能なセメントクリンカ製造装置及びセメントクリンカの製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0060】
10…冷却ガス導入部、11…冷却ガス、12,24,33…流路、21…抽気管、21A…抽気口、22…分級部、26…円管、26W…内壁面、27…循環流路、30…廃プラスチック脱塩設備、32…燃焼炉、35…脱塩炉、37…流路壁、40…予熱仮焼部、42…ライジングダクト、44…仮焼炉、50…セメントキルン、52…窯尻、54…バーナ、56…キルン本体、60…クリンカクーラ、70…冷却部、72…回収部、74…吸引部、90…塩素バイパス設備、100…セメントクリンカ製造装置、C1,C2,C3,C4…サイクロン、P…中心軸、SF…旋回流。
図1
図2