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  • 特開-吸水性樹脂粒子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129644
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20220830BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20220830BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20220830BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220830BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C08J3/24 CEY
C08J3/12 A
B01J20/26 D
B01J20/28
B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028399
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 志保
【テーマコード(参考)】
4F070
4G066
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AB13
4F070AC12
4F070AC36
4F070AC43
4F070AC66
4F070AE08
4F070AE28
4F070DA48
4F070DB01
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC06
4F070DC15
4F070GA06
4F070GA08
4F070GB09
4G066AA12D
4G066AA13D
4G066AA45D
4G066AB05D
4G066AB06D
4G066AB07D
4G066AB10D
4G066AC11B
4G066AC17B
4G066AC35B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA07
4G066DA12
4G066DA13
4G066EA05
4G066FA03
4G066FA07
4G066FA17
4G066FA25
4G066FA40
4G066GA31
4G066GA32
(57)【要約】
【課題】荷重下での生理食塩水吸水量を高めることができる吸水性樹脂粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】含水ゲル状重合体を用意することと、該含水ゲル状重合体を処理することにより、純水吸水量/CRCが10.0~40.0の範囲であって、かつ、処理を行わずに同様に得た粒子を180℃30分間乾燥して得た基準架橋重合体粒子に対する純水吸水量/CRCの減少率が5~45%の範囲である架橋重合体粒子を得ることと、該架橋重合体粒子に表面架橋を行うことを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水ゲル状重合体を用意することと、
前記含水ゲル状重合体を処理することにより、純水吸水量/CRCが10.0~40.0の範囲であって、かつ、処理を行わずに同様に得た粒子を180℃30分間乾燥して得た基準架橋重合体粒子に対する純水吸水量/CRCの減少率が5~45%の範囲である架橋重合体粒子を得ることと、
前記架橋重合体粒子に表面架橋を行うことを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記処理開始時の前記含水ゲル状重合体の含水率が45~70質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理前に、前記含水ゲル状重合体を粗砕することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂粒子は、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野で用いられている。吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体粒子を得た後、該架橋重合体粒子に表面架橋を施すことにより得ることができる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-359943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸水性樹脂粒子には、優れた吸水量を有することが求められる。特に、おむつ等の吸収性物品に吸水性樹脂粒子が使用される場合、吸収性物品を使用者に装着した状態では、吸水性樹脂粒子に対して荷重が負荷されており、このように荷重が負荷された状態における吸水性樹脂粒子の吸水量を向上させることが求められる。
【0005】
本発明は、荷重下での生理食塩水吸水量を高めることができる吸水性樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法は、含水ゲル状重合体を用意することと、該含水ゲル状重合体を処理することにより、純水吸水量/CRCが10.0~40.0の範囲であって、かつ、処理を行わずに同様に得た粒子を180℃30分間乾燥して得た基準架橋重合体粒子に対する純水吸水量/CRCの減少率が5~45%の範囲である架橋重合体粒子を得ることと、該架橋重合体粒子に表面架橋を行うことを含む。CRCは遠心保持容量の略称である。
【0007】
処理開始時の含水ゲル状重合体の含水率は、45~70質量%であってよい。
【0008】
上記製造方法は、処理前に、含水ゲル状重合体を粗砕することを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、荷重下での生理食塩水吸水量を高めることができる吸水性樹脂粒子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】荷重下での生理食塩水吸水量の測定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの両方を意味する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。他の類似の用語も同様である。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0013】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、含水ゲル状重合体を用意することと、該含水ゲル状重合体を処理することにより、純水吸水量/CRCが10.0~40.0の範囲であって、かつ処理を行わずに同様に得た粒子を180℃30分間乾燥して得た基準架橋重合体粒子に対する純水吸水量/CRCの減少率が5~45%の範囲である架橋重合体粒子を得ることと、該架橋重合体粒子に表面架橋を行うことを含む。
【0014】
[含水ゲル状重合体]
含水ゲル状重合体は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させて得ることができる。含水ゲル状重合体は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された重合体が水を含みゲル状となったものであってよい。該重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。
【0015】
重合は、例えば、水溶液重合法、逆相懸濁重合法等の重合法により行うことができる。以下、水溶液重合法による単量体の重合について説明する。
【0016】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましい。エチレン性不飽和単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及びそれらの塩等のカルボン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体及びその4級化物;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸及びそれらの塩等のスルホン酸系単量体が挙げられる。エチレン性不飽和単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド、並びにN,N-ジメチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸及びその塩と、他のエチレン性不飽和単量体を共重合させてもよい。この場合、エチレン性不飽和単量体の総量のうち、上記(メタ)アクリル酸及びその塩が70~100モル%用いられることが好ましく、80~100モル%用いられることがより好ましく、90~100モル%用いられることが更に好ましい。エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0018】
エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のように酸基を有する場合、必要に応じてその酸基があらかじめアルカリ性中和剤により中和されたものを用いることができる。このようなアルカリ性中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等が挙げられる。これらのアルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態にして用いてもよい。アルカリ性中和剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、酸基の中和は、原料であるエチレン性不飽和単量体の重合前に行ってもよく、重合中又は重合後に行ってもよい。
【0019】
アルカリ性中和剤によるエチレン性不飽和単量体の中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高めることで吸水性能を高め、かつ余剰のアルカリ性中和剤の存在に起因する安全性等に問題が生じないようにする観点から、通常、10~100モル%であることが好ましく、30~90モル%であることがより好ましく、40~85モル%であることが更に好ましく、50~80モル%であることがより更に好ましい。ここで、中和度は、エチレン性不飽和単量体が有する全ての酸基に対する中和度とする。
【0020】
エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液の状態で用いることが好適である。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下とすればよく、25~70質量%、又は30~50質量%であってよい。
【0021】
エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量(吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量。例えば、重合体の構造単位を与える単量体の全量。以下同様。)に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってよい。なかでも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってよい。「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合」は、(メタ)アクリル酸及びその塩の合計量の割合を意味する。
【0022】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体を含み、エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70~100モル%であるものであってよい。
【0023】
単量体水溶液は、重合開始剤を含んでいてよい。単量体水溶液に含まれる単量体の重合は、単量体水溶液に重合開始剤を添加し、必要により加熱、光照射等を行うことで開始される。重合開始剤としては、光重合開始剤又はラジカル重合開始剤が挙げられ、なかでも水溶性ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤は、例えば、アゾ系化合物、過酸化物等であってよい。
【0024】
アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系化合物を挙げることができる。良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られやすいという観点から、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、及び2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物が好ましい。これらのアゾ系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物類;過酸化水素等の過酸化物が挙げられる。これらの過酸化物のなかでも、良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過酸化水素を用いることが好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、又は過硫酸ナトリウムを用いることがより好ましい。これらの過酸化物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
重合開始剤と還元剤とを組み合わせて用いて、レドックス重合開始剤として用いることもできる。還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、及びL-アスコルビン酸が挙げられる。
【0027】
吸水性樹脂粒子におけるCRC、荷重下吸水量等の性能バランスの観点から、重合開始剤の量は、単量体1モルに対して0.05~1ミリモル、0.08~0.8ミリモル、又は0.1~0.7ミリモルであってもよい。
【0028】
単量体水溶液は、内部架橋剤を含むことが好ましい。内部架橋剤を含むことにより、得られる架橋重合体が、その内部架橋構造として、重合反応による自己架橋に加え、内部架橋剤による架橋を有することができる。
【0029】
内部架橋剤は、(メタ)アクリル基、アリル基、エポキシ基、又はアミノ基を有する化合物を含んでもよい。これら反応性官能基を2つ以上有する化合物を内部架橋剤として用いることができる。(メタ)アクリル基を有する化合物の例としては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、及びN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アリル基を有する化合物の例としては、トリアリルアミンが挙げられる。エポキシ基を有する化合物の例としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、及びエピクロロヒドリンが挙げられる。アミノ基を有する化合物の例としては、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンが挙げられる。内部架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
内部架橋剤を使用する場合の使用量は、吸水性樹脂粒子におけるCRC、荷重下吸水量等の性能バランスを調整する観点から、単量体1モルに対して0.02~1.0ミリモル、0.05~0.8ミリモル、又は0.1~0.6ミリモルであってもよい。
【0031】
単量体水溶液には、必要に応じて、連鎖移動剤、増粘剤等の添加剤が含まれていてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、次亜リン酸、亜リン酸等が挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。単量体水溶液には、水溶性有機溶媒等の、水以外の溶媒が適宜配合されてもよい。
【0032】
重合方式としては、例えば、単量体水溶液を撹拌しない状態(例えば、静置状態)で重合する静置重合方式、又は反応装置内で単量体水溶液を撹拌しながら重合する撹拌重合方式であってよい。静置重合方式である水溶液静置重合により含水ゲル状重合体を得ることが好ましい。静置重合方式では、重合完了時、反応容器中に存在した単量体水溶液と略同じ体積を占める単一のブロック状の含水ゲル状重合体を得ることができる。
【0033】
含水ゲル状重合体の製造の形態は、回分、半連続、連続等であってよい。例えば、水溶液静置連続重合においては、ベルトコンベア状の連続重合装置に単量体水溶液を連続的に供給しながら重合反応を行い、例えば帯状等の連続的な形状の含水ゲルを得ることができる。
【0034】
重合温度は、使用する重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより生産性を高める観点から、0~130℃が好ましく、10~110℃がより好ましい。重合時間は、使用する重合開始剤の種類又は量、反応温度等に応じて適宜設定されるが、1~200分が好ましく、5~100分がより好ましい。
【0035】
得られた含水ゲル状重合体は、後述の処理工程(構造適正化工程)を行う前にあらかじめ粗砕してもよい。処理工程前に粗砕しておくと、処理工程を効率的に行うことができるため好ましい。含水ゲル状重合体の粉砕は、処理工程後に行ってもよい。
【0036】
含水ゲル状重合体を粗砕して得られる粗砕物は、粒子状であってよく、粒子が連なったような細長い形状であってもよい。粗砕物の最小辺のサイズは、例えば、0.1~15mm程度、又は1.0~10mm程度であってよい。粗砕物の最大辺のサイズは、0.1~200mm程度、又は1.0~150mm程度であってよい。粗砕装置としては、例えば、ニーダー(例えば、加圧式ニーダー、双腕型ニーダー等)、ミートチョッパー、カッターミル、ファーマミル等を用いることができ、双腕型ニーダー、ミートチョッパー、カッターミルが好ましい。
【0037】
[構造適正化工程]
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法では、含水ゲル状重合体を処理することによって、純水吸水量/CRCが10.0~40.0の範囲であり、かつ純水吸水量/CRCの減少率が5~45%の範囲である架橋重合体粒子を得ることを含む。純水吸水量/CRCの減少率は、処理を行わずに同様に得た粒子を180℃30分間乾燥して得た基準架橋重合体粒子を基準とする減少率である。以下、処理工程を構造適正化工程とも称する。処理対象の含水ゲル状重合体は、例えば、塊状又は粗砕物であってよい。
【0038】
構造適正化工程は、得られる架橋重合体粒子の純水吸水量/CRCが10.0~40.0の範囲であり、かつ純水吸水量/CRCの減少率が5~45%の範囲となるように行えばよい。ここでいう得られる架橋重合体粒子とは、構造適正化工程を経ることによって含水率を0~15質量%の範囲に調整したものであって、かつ後述の表面架橋が行われていない状態のものである。
【0039】
含水ゲル状重合体に構造適正化工程を施して、純水吸水量/CRCが10.0~40.0の範囲であり、かつ純水吸水量/CRCの減少率が5~45%の範囲である架橋重合体粒子を得、該架橋重合体粒子に表面架橋を施すことにより、得られる吸水性樹脂粒子の荷重下での生理食塩水吸水量を、基準架橋重合体粒子と比較して高めることができる。このような効果が得られる機構は定かではないが、本発明者は以下のように推察している。なお、本発明は以下の機構に限定されない。含水ゲル状重合体に適切な処理工程を行うことにより、含水ゲル状重合体の架橋構造及び/又は主鎖構造の一部が切断されて、含水ゲル状重合体の三次元構造が適正化され、その後表面架橋を施すことで、得られる吸水性樹脂粒子の表面近傍の網目構造がより均一になり、荷重下での生理食塩水吸水量が向上すると考えられる。
【0040】
構造適正化工程を行うタイミングは、含水ゲル状重合体が乾燥される前の状態である。構造適正化工程の開始時の含水ゲル状重合体の含水率は、45~70質量%であることが好ましく、50~65質量%であることがより好ましく、50~60質量%であることが更に好ましい。含水ゲル状重合体の含水率が適切な範囲の状態で構造適正化を行うことにより、含水ゲル状重合体の三次元構造がより適正化されやすいと考えられる。
【0041】
構造適正化工程は、例えば、含水ゲル状重合体の加熱乾燥によって行うことができ、加熱乾燥に加えて、含水ゲル状重合体へのマイクロ波照射、及び/又は含水ゲル状重合体への鉄イオンの添加を併用してもよい。
【0042】
構造適正化工程後の重合体の含水率は、例えば0質量%以上、1質量%以上、又は2質量%以上であってよく、15質量%以下、12質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0043】
加熱乾燥時の温度は、例えば100℃以上、120℃以上、150℃以上、180℃以上又は200℃以上であってよく、250℃以下、230℃以下、220℃以下又は210℃以下であってよい。加熱時間は、対象の含水ゲル状重合体のサイズにより調整すればよいが、例えば、10分以上、20分以上、30分以上、1時間以上であってよく、5時間以下、4時間以下、3時間以下、又は2時間以下であってよい。含水ゲル状重合体の水分の少なくとも一部を除去するために、加熱は、開放系で行うことが好ましい。
【0044】
加熱乾燥に加えてマイクロ波照射を併用する場合、例えば、粗砕した含水ゲル状重合体にマイクロ波を5分~1時間程度照射することにより行うことができる。マイクロ波照射は、加熱乾燥前、加熱乾燥中、及び/又は加熱乾燥後の重合体に行うことができる。照射は重合体を撹拌しながら行ってもよい。
【0045】
加熱乾燥に加えて鉄イオン添加を行う場合、添加する鉄イオンは、2価の鉄イオンであってよい。鉄イオンは塩の状態で添加されてもよい。塩としては、例えば、硫酸鉄(II)、塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)であってよい。添加する鉄イオンの濃度は、例えば、含水ゲル状重合体に対して0.1~100ppmであってよく、0.5~50ppmであることが好ましい。鉄イオンは、例えば、塩を水等の溶媒に溶解した液体の状態で含水ゲル状重合体に添加してもよい。鉄イオンを添加する際の温度は特に限定されず、例えば20℃以上、25℃以上であってよく、180℃以下、140℃以下、100℃以下、80℃以下、40℃以下、又は30℃以下であってよい。鉄イオンの添加は、加熱乾燥前、加熱乾燥中、及び/又は加熱乾燥後の重合体に行うことができる。
【0046】
鉄イオンを重合体に添加する際、重合体はあらかじめ粗砕されていてもよく、鉄イオン添加後に粗砕してもよい。鉄イオンを添加後、重合体全体に均一に鉄イオンが行き渡るよう混合することが好ましい。
【0047】
[架橋重合体粒子]
上述の構造適正化工程を経ることにより、含水率0~15質量%の架橋重合体粒子を得ることができる。本実施形態に係る製造方法により得られる架橋重合体粒子の純水吸水量/CRCは、10.0~40.0の範囲である。純水吸水量及びCRCは後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0048】
架橋重合体粒子の純水吸水量/CRCは、10.5以上、11.0以上、12.0以上、13.0以上、13.5以上、14.0以上、14.5以上、15.0以上、15.5以上、16.0以上、18.0以上、20.0以上、22.0以上、24.0以上、26.0以上、28.0以上、29.0以上、31.0以上、32.0以上、33.0以上、34.0以上、35.0以上、36.0以上、37.0以上、38.0以上、39.0以上、40.0以上、41.0以上、42.0以上、43.0以上、又は44.0以上であってよい。架橋重合体粒子の純水吸水量/CRCは、55.0以下、53.0以下、51.0以下、49.0以下、48.0以下、46.0以下、44.0以下、42.0以下、40.0以下、38.0以下、36.0以下、34.0以下、32.0以下、30.0以下、28.0以下、26.0以下、24.0以下、22.0以下、20.0以下、18.0以下、又は16.0以下であってよい。
【0049】
架橋重合体粒子の純水吸水量は、例えば、500g/g以上、600g/g以上、650g/g以上、800g/g以上、900g/g以上、1000g/g以上、1100g/g以上、1200g/g以上、1300g/g以上、1400g/g以上、1500g/g以上、1700g/g以上、1900g/g以上、2000g/g以上、2100g/g以上、2200g/g以上、2400g/g以上、2600、又は2800g/g以上であってよい。架橋重合体粒子の純水吸水量は、3500g/g以下、3400g/g以下、3300g/g以下、3100以下、3000g/g以下、2800g/g以下、2600g/g以下、2400g/g以下、2200g/g以下、2000g/g以下、1800g/g以下、1600g/g以下、1400g/g以下、1200g/g以下、又は1000g/g以下であってよい。
【0050】
架橋重合体粒子のCRCは、例えば、30g/g以上、35g/g以上、38g/g以上、40g/g以上、42g/g以上、44g/g以上、46g/g以上、48g/g以上、50g/g以上、51g/g以上、53g/g以上、55g/g以上、57g/g以上、59g/g以上、61g/g以上、63g/g以上、又は65g/g以上であってよい。架橋重合体粒子のCRCは、例えば、75g/g以下、73g/g以下、71g/g以下、69g/g以下、67g/g以下、65g/g以下、63g/g以下、61g/g以下、59g/g以下、57g/g以下、55g/g以下、53g/g以下、51g/g以下、又は49g/g以下であってよい。
【0051】
架橋重合体粒子のCRC、純水吸水量、純水吸水量/CRCは、構造適正化工程を経て得られた架橋重合体粒子を、更に粉砕及び分級して、180~850μmの粒子径のものを取り出した状態で測定することが好ましい。
【0052】
架橋重合体粒子の中位粒子径は、例えば、200~500μm、又は300~500μmであってよい。
【0053】
架橋重合体粒子は、純水吸水量/CRCの減少率が、5~45%の範囲である。減少率は、構造適正化工程を行わないこと以外は本実施形態に係る吸水性樹脂粒子と同様に含水ゲル状重合体を製造して得た粒子を、180℃で30分間乾燥させて得た基準架橋重合体粒子を基準として算出する。より具体的には、構造適正化工程を行わないこと以外は本実施形態に係る吸水性樹脂粒子と同様に含水ゲル状重合体を製造し、該含水ゲル状重合体を粗砕した後、構造適正化工程を行わずに180℃で30分間、熱風乾燥機(例えばADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて乾燥させ、更に粉砕して分級し、180~850μmの粒子径の粒子を取り出したものを基準架橋重合体粒子とする。
【0054】
純水吸水量/CRCの減少率は、6%以上、8%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、又は40%以上であってよく、43%以下、41%以下、39%以下、37%以下、35%以下、33%以下、31%以下、29%以下、25%以下、20%以下、18%以下、又は16%以下であってよい。
【0055】
基準架橋重合体粒子のCRCは、例えば、40g/g以上、45g/g以上、50g/g以上、又は55g/g以上であってよく、60g/g以下、又は58g/g以下であってよい。基準架橋重合体粒子の純水吸水量は、例えば、800g/g以上、850g/g以上、900g/g以上、1000g/g以上、1500g/g以上、2000g/g以上、2500g/g以上、又は3000g/g以上であってよく、4000g/g以下、3500g/g以下、3000g/g以下、2500g/g以下、2000g/g以下、1500g/g以下、1200g/g以下、又は1100g/g以下であってよい。
【0056】
基準架橋重合体粒子の純水吸水量/CRCは、例えば、15以上、17以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上であってよく、65以下、63以下、61以下、59以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下であってよい。
【0057】
構造適正化工程を経て得られた架橋重合体粒子には、表面架橋を施す。表面架橋を行う前に、架橋重合体粒子を粉砕及び/又は分級してもよい。
【0058】
粉砕には、例えば、ローラーミル(ロールミル)、スタンプミル、ジェットミル、高速回転粉砕機(超遠心粉砕機、ハンマーミル、ピンミル、ロータミル、ロータビータミル等)、容器駆動型ミル(回転ミル、振動ミル、遊星ミル等)等の粉砕機を使用することができる。粉砕機は、出口側に多孔板、スクリーン、グリッド等の、粉砕粒子の最大粒子径を制御する開口部を有していてもよい。開口部の形状は多角形、円形等であってよく、開口部の最大径は、0.1~5mm、0.3~3.0mm、又は0.5~1.5mmであってよい。
【0059】
分級の方法は、公知の分級方法を使用することができ、例えば、スクリーン分級、又は風力分級であってもよい。スクリーン分級は、スクリーンを振動させることによって、スクリーン上の粒子を、スクリーンの網目を通過する粒子と通過しない粒子とに分級する方法である。スクリーン分級は、例えば振動篩、ロータリシフタ、円筒撹拌篩、ブロワシフタ、又はロータップ式振とう器を用いて行うことができる。風力分級は、空気の流れを利用して粒子を分級する方法である。
【0060】
[表面架橋]
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、架橋重合体粒子の表面架橋を行う工程を含む。すなわち本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、表面架橋されたものである。表面架橋は、例えば、表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)を架橋重合体粒子に対して添加して反応させることにより行うことができる。表面架橋剤の添加は、例えば、架橋重合体粒子を粉砕した後に行うことができ、分級の前又は後に行ってもよい。架橋重合体粒子に表面架橋処理を行うことにより、架橋重合体粒子の表面近傍の架橋密度が高まるため、得られる吸水性樹脂粒子の吸水性能を高めることができる。
【0061】
架橋重合体粒子への表面架橋剤の添加は、例えば、表面架橋剤溶液の添加、又は表面架橋剤溶液の噴霧添加により行うことができる。表面架橋剤の添加形態は、表面架橋剤を粒子表面に均一に分散する観点から、表面架橋剤を水及び/又はアルコール等の溶媒に溶解し、表面架橋剤溶液として添加することが好ましい。また、表面架橋工程は、1回又は2回以上の複数回に分割して実施してもよい。
【0062】
表面架橋剤は、例えば、エチレン性不飽和単量体由来の官能基との反応性を有する官能基(反応性官能基)を2個以上含有するものであってよい。表面架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。これらのなかでも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物及び/又はエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリオール類が好ましく、ポリグリシジル化合物がより好ましい。これらの表面架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例えばポリグリシジル化合物とポリオール類とを組み合わせて使用してよい。
【0063】
表面架橋剤の添加量は、吸水性樹脂粒子の表面近傍の架橋密度を適度に高める観点から、通常、重合に使用したエチレン性不飽和単量体の総量100モルに対して、好ましくは0.0001~4.0モル、より好ましくは0.001~2.0モルである。
【0064】
表面架橋工程は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して1~200質量部の範囲の水の存在下で行うことが好ましい。適宜、水及び/又はアルコール等の水溶性有機溶媒を用いることで水分量を調整することができる。表面架橋工程時の水分量を調整することによって、より好適に吸水性樹脂粒子の粒子表面近傍における架橋を施すことができる。
【0065】
表面架橋剤の処理温度は、使用する表面架橋剤に応じて適宜設定され、20~250℃であってよい。表面架橋剤による処理時間は、1~200分又は5~100分であってよい。表面架橋は、一度のみ行ってもよく、複数のタイミングで行ってもよい。
【0066】
[吸水性樹脂粒子]
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、流動性向上剤(滑剤)等の追加成分を更に含んでもよい。追加成分は、吸水性樹脂粒子の内部、表面上又はこれらの両方に配置され得る。
【0067】
吸水性樹脂粒子は、粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を更に含んでいてもよい。本実施形態に係る製造方法は、粒子の表面に無機粒子を付着させる工程を更に含んでもよい。
【0068】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子の形状は、例えば、破砕状、又は破砕状粒子が凝集して形成された形状であってよい。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250μm以上、280μm以上、300μm以上、320μm以上、又は340μm以上であってよく、850μm以下、800μm以下、750μm以下、700μm以下、650μm以下、600μm以下、550μm以下、500μm以下、450μm以下、420μm以下、400μm以下、又は380μm以下であってよい。
【0069】
吸水性樹脂粒子のCRCは、例えば、30g/g以上、32g/g以上、34g/g以上、36g/g以上、38g/g以上、40g/g以上、42g/g以上、44g/g以上、46g/g以上、48g/g以上、又は50g/g以上であってよく、60g/g以下、58g/g以下、56g/g以下、54g/g以下、52g/g以下、50g/g以下、48g/g以下、46g/g以下、44g/g以下、又は42g/g以下であってよい。一般に、吸水性樹脂粒子のCRCが高いほど荷重下吸水量が低下するというトレードオフの関係があるが、本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、荷重下での生理食塩水吸水量に優れ、加えて比較的高いCRCも維持することが可能である。
【0070】
吸水性樹脂粒子の荷重下における生理食塩水吸水量は、例えば、15mL/g以上、17mL/g以上、19mL/g以上、21mL/g以上、23mL/g以上、25mL/g以上、27mL/g以上、又は29mL/g以上であってよく、35mL/g以下、33mL/g以下、31mL/g以下、29mL/g以下、27mL/g以下、25mL/g以下、23mL/g以下、21mL/g以下、又は19mL/g以下であってよい。
【0071】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、基準架橋重合体粒子に対して同条件で表面架橋を行って得られる吸水性樹脂粒子を基準として、荷重下における生理食塩水吸水量の上昇率が、例えば、7%以上、8%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、又は22%以上であってよく、30%以下、28%以下、26%以下、24%以下、22%以下、又は20%以下であってよい。
【0072】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、吸水性に優れ、例えば、紙おむつ、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野において用いることができる。
【実施例0073】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(製造例1)
[重合工程]
内容積2Lのセパラブルフラスコに93.48g(1.30モル)のアクリル酸を入れた。セパラブルフラスコ内のアクリル酸に、撹拌しながらイオン交換水78.32gを加えた。次いで、氷浴下で81.56gの48質量%水酸化ナトリウムを滴下することにより、75mol%のアクリル酸が中和された単量体濃度45質量%のアクリル酸のナトリウム部分中和液を調製した。
【0075】
調製されたアクリル酸のナトリウム部分中和液253.36gと、イオン交換水46.82gと、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.09g(東京化成工業社、ポリエチレングリコールジアクリレート N≒9)とを、フッ素樹脂コーティングされた円形アルミバット(開口部及び底面の直径:150mm、高さ:60mm)内に入れた。1個の撹拌子(直径8mm、長さ30mm、リング無し)を円形バットの中心部に設置し、撹拌することにより、均一な液状の混合物(単量体水溶液)を形成した。
【0076】
混合物の温度を測定するための温度計をアルミバット内の中心部から3cm離れた箇所に設置した。その後、アルミバットの開口をポリエチレンフィルムでカバーした。混合物の温度を25℃に調整した後、混合物に挿入した管から窒素ガスをバブリングすることにより、溶存酸素量が0.1ppm以下になるまで反応系を窒素置換した。次いで、混合物を500rpmで撹拌しながら反応系内より窒素置換用の管を抜き、20質量%の過硫酸ナトリウム水溶液0.15g及び10質量%の2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(V-50)水溶液(和光純薬工業株式会社製)0.64gを反応液に添加した。添加から1分後に、注射器(HENKE SASS WOLF社製3mL容ディスポシリンジ、テルモ株式会社製注射針)を用いて0.50質量%のL-アスコルビン酸水溶液0.26g及び0.35質量%の過酸化水素水溶液1.33gをアルミバット内の混合物に滴下した。
【0077】
過酸化水素水溶液を滴下後、直ちに重合反応が開始した。過酸化水素水溶液の滴下終了から1分後に、撹拌を停止した。重合反応の進行にともなって反応液の粘度が増加していった後、混合物がゲル化した。過酸化水素水溶液の滴下終了から7分後の時点で、混合物の温度を測定する温度計は、最大値の68℃を示した。その後、反応液のゲル化によって形成された、含水ゲル状重合体が入ったアルミバットを75℃の水浴に浸し、その状態で含水ゲル状重合体を20分間熟成させた。
【0078】
[粗砕工程]
含水ゲル状重合体をアルミバットから取り出し、直ちに約5cm幅に裁断した。裁断された含水ゲル状重合体を、ミートチョッパー(喜連ローヤル社製、12VR-750SDX)によって粗砕した。ミートチョッパーの混錬室の端部に装着されたプレートの複数の円形の吐出孔から、含水ゲル状重合体の細長い構造体を含む粗砕物(A)が吐出された。吐出孔の直径は6.4mmであった。含水ゲル状重合体の投入から3分間、ミートチョッパーによる粗砕を継続した。得られた粗砕物は、幅4~6mmの複数の細長い構造体によって形成された集合体であった。粗砕物の含水率は45~70%の範囲であった。
【0079】
(実施例1)
[構造適正化工程]
粗砕物(A)100gを直径7.5cmの一塊の球状に丸め、内径7.5cm高さ2cm目開き0.3mmのステンレス篩上に配置し、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて、200℃で1時間の熱風乾燥により構造適正化工程を行って、乾燥物を得た。
【0080】
[粉砕工程]
乾燥物を約2cm辺に軽く手で解砕し、遠心粉砕機(Retsch社製、ZM200、スクリーン口径1mm、6000rpm)を用いて粉砕した。粉砕により得られた粉体を、目開き850μmの篩及び180μmの篩を用い、1分間の振とうによって篩分けした。分級により、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画として架橋重合体粒子を得た。
【0081】
[表面架橋工程]
エチレンカーボネート0.015g、2-プロパノール0.600g、及び、脱イオン水0.891gを混合して表面架橋剤溶液を調製した。フッ素樹脂製の碇型撹拌翼を備えた内径11cmの丸底円筒型セパラブルフラスコに架橋重合体粒子15gを量りとった。次に、500rpmで撹拌しながら、上記表面架橋剤溶液を3ml注射器で取り、注射器の先にファインアトマイザー(オーラル)[吉川化成株式会社製]をセットしてセパラブルフラスコ内に噴霧し、100秒間攪拌することによって混合物を得た。この混合物を200℃で40分間加熱した。室温まで冷却した後、混合物を目開き850μmの篩を用いて分級した。分級により、目開き850μmの篩を通過した吸水性樹脂粒子(1)を得た。
【0082】
(実施例2)
粗砕物(A)100gを直径7.5cm高さ2cm目開き0.3mmのステンレス篩に隙間なく詰め、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて、200℃で30分間の熱風乾燥に供した。その後、更に手で1.5cm辺に解砕し、内径20cm高さ4.5cm、目開き0.3mmの金網上に広げて配置し、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて、更に200℃で30分間の熱風乾燥に供することにより構造適正化工程を行って、乾燥物を得た。粉砕以降の工程を実施例1と同様に行って吸水性樹脂粒子(2)を得た。
【0083】
(比較例1)
粗砕物(A)80gを、25cm×30cmに切り取ったアルミホイル(抗菌クッキングホイル25cm×8m 東洋アルミエコープロダクツ社)で8cm×14cmの大きさに包み、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて、200℃で1時間の熱風乾燥に供した。得られた加工粗砕物を、大きさ23cm×23cm、目開き0.8cm×0.8cmの金網上に広げて配置し、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて、更に180℃で30分間の熱風乾燥に供することにより乾燥物を得た。粉砕以降の工程を実施例1と同様に行って吸水性樹脂粒子(3)を得た。
【0084】
(比較例2)
粗砕物(A)100gを丸めずに大きさ23cm×23cm、目開き0.3mmの金網上に広げて配置したこと以外は実施例1と同様にして乾燥物を得た。粉砕以降の工程を実施例1と同様に行って吸水性樹脂粒子(4)を得た。
【0085】
(比較例3)
200℃での乾燥時間を2時間に変更したこと以外は実施例1と同様にして乾燥物を得た。粉砕以降の工程を実施例1と同様に行って吸水性樹脂粒子(5)を得た。
【0086】
(参考例1)
粗砕物(A)100gを大きさ23cm×23cm、目開き0.8cm×0.8cmの金網上に粗砕物(A)が重ならないように広げて配置し、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて、180℃で30分間の熱風乾燥に供して乾燥物を得た。実施例1と同様に粉砕工程を行って、基準架橋重合体粒子を得た。基準架橋重合体粒子に対して、実施例1と同様に表面架橋工程を実施して吸水性樹脂粒子(6)を得た。
【0087】
(製造例2)
[重合工程]
内容積2Lのセパラブルフラスコに93.48g(1.30モル)のアクリル酸を入れた。セパラブルフラスコ内のアクリル酸に、撹拌しながらイオン交換水78.32gを加えた。次いで、氷浴下で81.56gの48質量%水酸化ナトリウムを滴下することにより、75mol%のアクリル酸が中和された単量体濃度45質量%のアクリル酸のナトリウム部分中和液を調製した。
【0088】
調製されたアクリル酸のナトリウム部分中和液253.36gと、イオン交換水46.73gと、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.17g(東京化成工業社、ポリエチレングリコールジアクリレート N≒9)とを、フッ素樹脂コーティングされた円形アルミバット(開口部及び底面の直径:150mm、高さ:60mm)内に入れた。1個の撹拌子(直径8mm、長さ30mm、リング無し)を円形バットの中心部に設置し、撹拌することにより、均一な液状の混合物(単量体水溶液)を形成した。
【0089】
混合物の温度を測定するための温度計をアルミバット内の中心部から3cm離れた箇所に設置した。その後、アルミバットの開口をポリエチレンフィルムでカバーした。混合物の温度を25℃に調整した後、混合物に挿入した管から窒素ガスをバブリングすることにより、溶存酸素量が0.1ppm以下になるまで反応系を窒素置換した。次いで、混合物を500rpmで撹拌しながら反応系内より窒素置換用の管を抜き、20質量%の過硫酸ナトリウム水溶液0.15g及び10質量%の(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(V-50)水溶液(和光純薬工業株式会社製)0.64gを反応液に添加した。添加から1分後に、注射器(HENKE SASS WOLF社製3mL容ディスポシリンジ、テルモ株式会社製注射針)を用いて0.50質量%のL-アスコルビン酸水溶液0.26g及び0.35質量%の過酸化水素水溶液1.33gをアルミバット内の混合物に滴下した。
【0090】
過酸化水素水溶液を滴下後、直ちに重合反応が開始した。過酸化水素水溶液の滴下終了から1分後に、撹拌を停止した。重合反応の進行にともなって反応液の粘度が増加していった後、混合物がゲル化した。過酸化水素水溶液の滴下終了から6分後の時点で、混合物の温度を測定する温度計は、最大値の77℃を示した。その後、反応液のゲル化によって形成された、含水ゲル状重合体が入ったアルミバットを75℃の水浴に浸し、その状態で含水ゲル状重合体を20分間熟成させた。
【0091】
[粗砕工程]
含水ゲル状重合体をアルミバットから取り出し、直ちに約5cm幅に裁断した。裁断された含水ゲル状重合体を、ミートチョッパー(喜連ローヤル社製、12VR-750SDX)によって粗砕した。ミートチョッパーの混錬室の端部に装着されたプレートの複数の円形の吐出孔から、含水ゲル状重合体の細長い構造体を含む粗砕物(B)が吐出された。吐出孔の直径は6.4mmであった。含水ゲル状重合体の投入から3分間、ミートチョッパーによる粗砕を継続した。得られた粗砕物は、幅4~6mmの複数の細長い構造体によって形成された集合体であった。粗砕物の含水率は45~70%の範囲であった。
【0092】
(実施例3)
[構造適正化工程]
硫酸鉄七水和物0.038g及び脱イオン水1000gを混合溶解して水溶液を調製した。更に、得られた水溶液1gに、更に脱イオン水49gを混合して硫酸鉄水溶液を調製した。粗砕物(B)100gに対して、上記硫酸鉄水溶液を全量添加し、スパチュラで撹拌して混合物を得た。得られた混合物を大きさ23cm×23cm、目開き0.8cm×0.8cmの金網上に広げて配置し、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて、180℃で30分間の熱風乾燥に供することにより乾燥物を得た。粉砕以降の工程を実施例1と同様に行って吸水性樹脂粒子(7)を得た。
【0093】
(実施例4)
硫酸鉄七水和物0.038g及び脱イオン水1000gを混合溶解して水溶液を調製した。更に、得られた水溶液10gに、更に脱イオン水40gを混合して、硫酸鉄水溶液を調製した。粗砕物(B)に添加する硫酸鉄水溶液を、この硫酸鉄水溶液に変更したこと以外は実施例3と同様にして、乾燥物を得た。粉砕以降の工程を実施例1と同様に行って吸水性樹脂粒子(8)を得た。
【0094】
(実施例5)
粗砕物(B)80gを用いたこと、及び200℃での乾燥時間を2時間に変更したこと以外は比較例1と同様にして乾燥物を得た。粉砕以降の工程を実施例1と同様に行って吸水性樹脂粒子(9)を得た。
【0095】
(参考例2)
粗砕物(B)100gを大きさ23cm×23cm目開き0.8cm×0.8cmの金網上に粗砕物(B)が重ならないように広げて配置し、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて、180℃で30分間の熱風乾燥に供して乾燥物を得た。実施例1と同様に粉砕工程を行って、基準架橋重合体粒子を得た。基準架橋重合体粒子に対して、実施例1と同様に表面架橋工程を実施して吸水性樹脂粒子(10)を得た。
【0096】
(製造例3)
[重合工程]
内容積2Lのセパラブルフラスコに93.48g(1.30モル)のアクリル酸を入れた。セパラブルフラスコ内のアクリル酸に、撹拌しながらイオン交換水78.32gを加えた。次いで、氷浴下で81.56gの48質量%水酸化ナトリウムを滴下することにより、75mol%のアクリル酸が中和された単量体濃度45質量%のアクリル酸のナトリウム部分中和液を調製した。
【0097】
調製されたアクリル酸のナトリウム部分中和液253.36gと、イオン交換水46.77gと、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.14g(東京化成工業社、ポリエチレングリコールジアクリレート N≒9)とを、フッ素樹脂コーティングされた円形アルミバット(開口部及び底面の直径:150mm、高さ:60mm)内に入れた。1個の撹拌子(直径8mm、長さ30mm、リング無し)を円形バットの中心部に設置し、撹拌することにより、均一な液状の混合物(単量体水溶液)を形成した。
【0098】
混合物の温度を測定するための温度計をアルミバット内の中心部から3cm離れた箇所に設置した。その後、アルミバットの開口をポリエチレンフィルムでカバーした。混合物の温度を25℃に調整した後、混合物に挿入した管から窒素ガスをバブリングすることにより、溶存酸素量が0.1ppm以下になるまで反応系を窒素置換した。次いで、混合物を500rpmで撹拌しながら反応系内より窒素置換用の管を抜き、20質量%の過硫酸ナトリウム水溶液0.15g及び10質量%の(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(V-50)水溶液(和光純薬工業株式会社製)0.64gを反応液に添加した。添加から1分後に、注射器(HENKE SASS WOLF社製3mL容ディスポシリンジ、テルモ株式会社製注射針)を用いて、0.50質量%のL-アスコルビン酸水溶液0.26g及び0.35質量%の過酸化水素水溶液1.33gをアルミバット内の混合物に滴下した。
【0099】
過酸化水素水溶液を滴下後、直ちに重合反応が開始した。過酸化水素水溶液の滴下終了から1分後に、撹拌を停止した。重合反応の進行にともなって反応液の粘度が増加していった後、混合物がゲル化した。過酸化水素水溶液の滴下終了から7分後の時点で、混合物の温度を測定する温度計は、最大値の66℃を示した。その後、反応液のゲル化によって形成された、含水ゲル状重合体が入ったアルミバットを75℃の水浴に浸し、その状態で含水ゲル状重合体を20分間熟成させた。
【0100】
[粗砕工程]
含水ゲル状重合体をアルミバットから取り出し、直ちに約5cm幅に裁断した。裁断された含水ゲル状重合体を、ミートチョッパー(喜連ローヤル社製、12VR-750SDX)によって粗砕した。ミートチョッパーの混錬室の端部に装着されたプレートの複数の円形の吐出孔から、含水ゲル状重合体の細長い構造体を含む粗砕物(C)が吐出された。吐出孔の直径は6.4mmであった。含水ゲル状重合体の投入から3分間、ミートチョッパーによる粗砕を継続した。得られた粗砕物は、幅4~6mmの複数の細長い構造体によって形成された集合体であった。粗砕物の含水率は45~70%の範囲であった。
【0101】
(参考例3)
粗砕物(C)100gを大きさ23cm×23cm、目開き0.8cm×0.8cmの金網上に粗砕物(C)が重ならないように広げて配置し、熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)を用いて、180℃で30分間の熱風乾燥に供することにより乾燥物を得た。粉砕以降の工程を実施例1と同様に行って吸水性樹脂粒子(11)を得た。
【0102】
実施例、比較例、及び参考例で得られた架橋重合体粒子又は吸水性樹脂粒子について、以下の方法により、純水吸水量、CRC、純水吸水量/CRC、中位粒子径、荷重下における生理食塩水吸水量(AUL)、及び含水率を測定した。結果を文中又は表1及び表2に示す。
【0103】
<純水吸水量>
純水吸水量は下記手順により25±2℃、湿度50±10%の環境下で測定した。容積1000mLのビーカーにイオン交換水1000gを量り取った。次に、マグネチックスターラーバー(8mmφ×長さ30mm、リング無し)を用いて600rpmで撹拌させながら、ママコが発生しないように架橋重合体粒子0.1gを生理食塩水に分散させた。撹拌させた状態で60分間放置することにより粒子を充分に膨潤させることにより、膨潤ゲルを含む分散液を得た。続いて、目開き75μm標準篩2個の質量総量Wa(g)を測定した後、上述の分散液を2分割し、この標準篩2個に通した。そして、水平に対して約30度の傾斜角に篩を傾けた状態で30分間放置することにより余剰の水分を除去した。膨潤ゲルが残存した篩の質量総量Wb(g)を測定し、下記式により純水吸水量Wd(g/g)を求めた。Wc(g)は、測定に用いた架橋重合体粒子の質量0.1gの精秤値である。
純水吸水量 Wd(g/g)=(Wb-Wa-Wc)/Wc
【0104】
<遠心保持容量(CRC)>
EDANA法(NWSP 241.0.R2(15)、page.769~778)を参考に遠心保持容量(CRC)を下記の手順で測定した。測定は、温度25℃±2℃、湿度50%±10%の環境下で行った。
【0105】
60mm×170mmの大きさの不織布(製品名:ヒートパックMWA-18、日本製紙パピリア株式会社製)を長手方向に半分に折ることで60mm×85mmの大きさに調整した。長手方向に延びる両辺のそれぞれにおいて不織布同士をヒートシールで圧着することにより60mm×85mmの不織布バッグを作製した(幅5mmの圧着部を長手方向に沿って両辺に形成した)。不織布バッグの内部に粒子(吸水性樹脂粒子又は架橋重合体粒子)を0.2g精秤し収容した。その後、短手方向に延びる残りの一辺をヒートシールで圧着することにより不織布バッグを閉じた。
【0106】
不織布バッグが折り重ならない状態で、ステンレス製バット(240mm×320mm×45mm)に収容された生理食塩水1000g上に不織布バッグを浮かべることにより、不織布バッグの全体を完全に湿らせた。不織布バッグを生理食塩水に投入してから1分後にスパチュラにて不織布バッグを生理食塩水に浸漬することにより、ゲルが収容された不織布バッグを得た。
【0107】
不織布バッグを生理食塩水に投入してから30分(浮かべた時間1分、及び、浸漬時間29分の合計)後に生理食塩水の中から不織布バッグを取り出した。そして、遠心分離機(株式会社コクサン製、型番:H-122)に不織布バッグを入れた。遠心分離機における遠心力が250Gに到達した後、3分間不織布バッグの脱水を行った。脱水後、ゲルの質量を含む不織布バッグの質量Ma(g)を秤量した。粒子を収容することなく不織布バッグに対して上述の操作と同様の操作を施し、脱水後の不織布バッグの質量Mb(g)を測定した。下記式に基づきCRC(g/g)を算出した。Mc(g)は、測定に用いた吸水性樹脂粒子又は架橋重合体粒子の質量0.2gの精秤値である。
CRC(g/g)=[(Ma-Mb)-Mc]/Mc
【0108】
<純水吸水量/CRC>
純水吸水量Wd(g/g)をCRC(g/g)で除することにより、純水吸水量/CRCの値を算出した。
【0109】
<純水吸水量/CRCの減少率>
下記式により、基準架橋重合体粒子(構造適正化工程を行わずに180℃30分間乾燥して得た架橋重合体粒子)に対する純水吸水量/CRCの減少率を算出した。
純水吸水量/CRCの減少率(%)={[(基準架橋重合体粒子の純水吸水量/CRC)-(測定対象の純水吸水量/CRC)]/(基準架橋重合体粒子の純水吸水量/CRC)}×100
具体的には、実施例1、2及び比較例1~3においては、参考例1の架橋重合体粒子を基準架橋重合体粒子とし、実施例3~5においては、参考例2の架橋重合体粒子を基準架橋重合体粒子として算出した。
【0110】
<含水率>
試料2.0gを、あらかじめ恒量(W1(g))としたアルミホイルケース(8号)に入れ、アルミホイルケースの口を軽く閉じ、この試料入りアルミホイルケースの合計質量W2(g)を精秤した。上記試料入りアルミホイルケースを、内温を200℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)で2時間乾燥した。乾燥後の試料入りアルミホイルケースをデシケーター中で室温まで放冷した。放冷後の試料入りアルミホイルケースの合計質量W3(g)を測定した。以下の式から、試料の含水率を算出した。実施例、比較例及び参考例で得られた乾燥物の含水率はいずれも0~15質量%の範囲内であった。
含水率[質量%]={[(W2-W1)-(W3-W1)]/(W2-W1)}×100
【0111】
<AUL(4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水量)の測定>
4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水量(荷重下吸水量)は、図1に概略を示す測定装置を用いて測定した。測定装置は、ビュレット部1、クランプ3、導管5、架台11、測定台13、及び測定台13上に置かれた測定部4を備えている。ビュレット部1は、目盛が記載されたビュレット管21と、ビュレット管21の上部の開口を密栓するゴム栓23と、ビュレット管21の下部の先端に連結されたコック22と、ビュレット管21の下部に連結された空気導入管25及びコック24とを有する。ビュレット部1はクランプ3で固定されている。平板状の測定台13は、その中央部に形成された直径2mmの貫通孔13aを有しており、高さが可変の架台11によって支持されている。測定台13の貫通孔13aとビュレット部1のコック22とが導管5によって連結されている。導管5の内径は6mmである。
【0112】
測定部4は、プレキシグラス製の円筒31、円筒31の一方の開口部に接着されたポリアミドメッシュ32、及び円筒31内で上下方向に可動な重り33を有している。円筒31は、ポリアミドメッシュ32を介して、測定台13上に載置されている。円筒31の内径は20mmである。ポリアミドメッシュ32の目開きは、75μm(200メッシュ)である。重り33は、直径19mm、質量119.6gであり、後記するようにポリアミドメッシュ32上に均一に配置された吸水性樹脂粒子10aに対して4.14kPa(0.6psi)の荷重を加えることができる。
【0113】
図1に示す測定装置による4.14kPa荷重下の生理食塩水吸水量の測定は、25℃の室内で行なった。まず、ビュレット部1のコック22及びコック24を閉め、25℃に調節された0.9質量%生理食塩水をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れた。次に、ゴム栓23でビュレット管21の上部開口を密栓した後、コック22及びコック24を開けた。気泡が入らないよう導管5内部を0.9質量%食塩水50で満たした。貫通孔13a内に到達した0.9質量%食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整した。このとき貫通孔13aから吸い出された0.9質量%食塩水50と同じ体積の空気が、速やかに空気導入管25よりビュレット内に供給されることを確認した。調整後、ビュレット管21内の生理食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とした。
【0114】
測定部4では、円筒31内のポリアミドメッシュ32上に0.10gの吸水性樹脂粒子10aを均一に配置し、吸水性樹脂粒子10a上に重り33を配置し、円筒31を、その中心部が測定台13中心部の導管口に一致するように設置した。吸水性樹脂粒子10aが導管5からの生理食塩水を吸水し始めた時から60分後のビュレット管21内の生理食塩水の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸水した生理食塩水量)We(ml)を読み取り、以下の式により吸水性樹脂粒子10aの4.14kPa荷重下の生理食塩水吸水量を算出した。結果を表1に示す。
4.14kPa荷重下の生理食塩水吸水量(ml/g)=We(ml)/吸水性樹脂粒子の質量(g)
【0115】
【表1】
【0116】
実施例1及び実施例2では、得られた架橋重合体粒子における純水吸水量/CRCが10~40の範囲であり、かつ参考例1を基準とした純水吸水量/CRCの減少率が5~45%であり、適切に構造適正化工程が行われたことが確認された。製造例1では、実施例で得られた吸水性樹脂粒子は、構造適正化工程を行わなかった参考例1を基準として、6%を超えるAUL上昇率を達成した。一方、加熱乾燥工程を行ったものであっても、架橋重合体粒子の純水吸水量/CRCが40を超える比較例1、2、及び、架橋重合体粒子の純水吸水量/CRCの減少率が基準架橋重合体粒子に対して45%を超える比較例3の吸水性樹脂粒子は、AULの上昇率が6%以下に留まった。
【0117】
【表2】
【0118】
実施例3~5では、得られた架橋重合体粒子における純水吸水量/CRCが10~40の範囲であり、かつ参考例2を基準とした純水吸水量/CRCの減少率が5~45%であり、適切に構造適正化工程が行われたことが確認された。製造例2においても、製造例1と同様に、実施例で得られた吸水性樹脂粒子は、構造適正化工程を行わなかった参考例2を基準として、6%を超えるAUL上昇率を達成した。また、構造適正化工程を行っていない参考例3では、仕込みの内部架橋剤を調整することで、表面架橋を行う前の架橋重合体粒子の段階では実施例5と同様にCRCは参考例2より高いものが得られているが、純水吸水量/CRCの値を減少させることはできず、同じ表面架橋工程後の実施例5と比較すると、得られる吸水性樹脂粒子におけるAULは著しく低かった。よって、重合条件の調製等により架橋重合体粒子のCRCを向上させることは可能であるものの、純水吸水量/CRCの値を制御し、吸水性樹脂粒子のAULを向上させるには構造適正化工程が有効であることが示された。
【符号の説明】
【0119】
1…ビュレット部、3…クランプ、4…測定部、5…導管、10a…吸水性樹脂粒子、11…架台、13…測定台、13a…貫通孔、21…ビュレット管、22…コック、23…ゴム栓、24…コック、25…空気導入管、31…円筒、32…ポリアミドメッシュ、33…重り、50…生理食塩水。
図1