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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129984
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】発電体
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/04 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
H02N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028897
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森田 陽明
(72)【発明者】
【氏名】谷 弘詞
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制するとともに発電量を増加させることのできる発電体を提供する。
【解決手段】第1帯電フィルム12で覆われた第1面11aを有する第1部材10と、第2帯電フィルム22で覆われた第2面21aを有する第2部材20と、を備え、第1面11aと第2面21aとの互いの接触状態の変化によって発電する発電体1であって、第1面11aおよび第2面21aには、全面にわたって凹凸構造11a1,21a1が形成され、第2帯電フィルム22は、多孔質構造を有する部材からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1帯電フィルムで覆われた第1面を有する第1部材と、第2帯電フィルムで覆われた第2面を有する第2部材と、を備え、前記第1面と前記第2面との互いの接触状態の変化によって発電する発電体であって、
前記第1面および前記第2面の少なくとも一方には、全面にわたって凹凸構造が形成され、
前記第1帯電フィルムおよび前記第2帯電フィルムの少なくとも一方は、多孔質構造を有する部材からなる
発電体。
【請求項2】
前記第1面および前記第2面の一方にのみ前記凹凸構造が形成されている場合には、前記凹凸構造の底部から頂部までの高さが0.3mm以上であり、
前記第1面および前記第2面の両方に前記凹凸構造が形成されている場合には、前記第1面に形成された前記凹凸構造の底部から頂部までの高さと、前記第2面に形成された前記凹凸構造の底部から頂部までの高さと、の合計が0.3mm以上である
請求項1に記載の発電体。
【請求項3】
前記第1帯電フィルムおよび前記第2帯電フィルムの一方が多孔質構造を有するポリイミドからなり、他方がポリアミドからなる
請求項1または2に記載の発電体。
【請求項4】
前記多孔質構造を有する部材は、空孔の平均孔径が200nm以上400nm以下である
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦帯電を利用して発電する発電体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発電体としては、第1帯電フィルムで覆われた第1面を有する第1部材と、第2帯電フィルムで覆われた第2面を有する第2部材と、を備え、前記第1面と前記第2面との互いの接触状態の変化によって発電するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-191454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記発電体は、消費電力が大きい電気機器に対する電力の供給を可能とするために、発電量を大きくしようとする場合に、第1部材の第1面と第2部材の第2面との互いの接触面積を大きくすることが考えられる。この場合には、前記発電体が大型化することになって、発電体を設置可能な場所が限られることになり、汎用性の低下を招く可能性がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、大型化を抑制するとともに発電量を増加させることのできる発電体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発電体は、第1帯電フィルムで覆われた第1面を有する第1部材と、第2帯電フィルムで覆われた第2面を有する第2部材と、を備え、前記第1面と前記第2面との互いの接触状態の変化によって発電する発電体であって、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方には、全面にわたって凹凸構造が形成され、前記第1帯電フィルムおよび前記第2帯電フィルムの少なくとも一方は、多孔質構造を有する部材によって形成されている。
【0007】
また、本発明に係る発電体は、好ましくは、前記第1面および前記第2面の一方にのみ前記凹凸構造が形成されている場合には、前記凹凸構造の底部から頂部までの高さが0.3mm以上であり、前記第1面および前記第2面の両方に前記凹凸構造が形成されている場合には、前記第1面に形成された前記凹凸構造の底部から頂部までの高さと、前記第2面に形成された前記凹凸構造の底部から頂部までの高さと、の合計が0.3mm以上である。
【0008】
また、本発明に係る発電体は、好ましくは、前記第1帯電フィルムおよび前記第2帯電フィルムの一方が多孔質構造を有するポリイミドからなり、他方がポリアミドからなる。
【0009】
また、本発明に係る発電体は、好ましくは、前記多孔質構造を有する部材は、空孔の平均孔径が200nm以上400nm以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多孔質構造を有する帯電フィルムを用いることによって帯電フィルムが帯びる電気量を増加させることが可能となるので、大型化を抑制するととともに発電量を増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る発電体の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る第1部材および第2部材に対して外側から力を作用させた状態を示す発電体の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る第2帯電フィルムの要部の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る凹凸構造を有しない比較例の発電体の発電電圧に関する試験の結果を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態に係る凹凸構造を有する実施例および比較例の発電体の発電電圧に関する試験の結果を示すグラフである。
図6】本発明の一実施形態に係る発電回数と発電量との関係を示すグラフである。
図7】本発明の一実施形態に係る凹凸構造の高さの和と出力変動率との関係を示すグラフである。
図8】本発明の一実施形態に係る第2帯電フィルムの空孔径と発電電圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図8は、本発明の一実施形態を示すものである。図1は発電体の断面図であり、図2は外側から力を作用させた状態を示す発電体の断面図であり、図3は第2帯電フィルムの要部の断面図であり、図4は凹凸構造を有しない比較例の発電体の発電電圧に関する試験の結果を示すグラフであり、図5は凹凸構造を有する実施例および比較例の発電体の発電電圧に関する試験の結果を示すグラフであり、図6は発電回数と発電量との関係を示すグラフであり、図7は凹凸構造の高さの和と出力変動率との関係を示すグラフであり、図8は第2帯電フィルムの空孔径と発電電圧との関係を示すグラフである。
【0013】
本実施形態の発電体1は、例えば、車両のタイヤに設けられ、車両の走行時にタイヤに作用する力を受けて発電するものである。
【0014】
発電体1は、摩擦帯電を利用して発電するものであり、互いの接触状態の変化によって互いに逆の電荷を帯びる第1部材10および第2部材20と、第1部材10と第2部材20とを一体に保持するための保持部材30と、を備えている。
【0015】
第1部材10は、第1電極部11と、第1電極部11の第2部材20側に位置する第1面11aを覆う第1帯電フィルム12と、を有している。
【0016】
第1電極部11は、導電性を有するとともに、弾性を有する部材からなる。第1電極部11は、導電性を有するエラストマー、または、ニトリルゴム、シリコンゴム等の絶縁性を有するエラストマーの表面を銀、銅等の導電膜で被覆することによって構成される。導電膜は、例えば、導電性不織布によって形成される。
【0017】
第1電極部11の第1面11aには、全面にわたって波型形状が連続する凹凸構造11a1が形成されている。凹凸構造11a1は、底部から頂部までの高さH1が所定の大きさに形成されている。
【0018】
第1帯電フィルム12は、絶縁性を有し、後述する第2帯電フィルムと逆の極性に帯電する軟質の部材からなる。第1帯電フィルム12は、例えば、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリイソブチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、天然ゴム、ポリアクリロニトリル、ポリジフェノールカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる群から選択される。第1帯電フィルム12は、厚さ寸法T1に形成され、凹凸構造11a1に沿うように第1面11aを覆っている。
【0019】
第2部材20は、第2電極部21と、第2電極部21の第1部材10側に位置する第2面21aを覆う第2帯電フィルム22と、を有している。
【0020】
第2電極部21は、導電性を有するとともに、弾性を有する部材からなる。第2電極部21は、導電性を有するエラストマー、または、ニトリルゴム、シリコンゴム等の絶縁性を有するエラストマーの表面を銀、銅等の導電膜で被覆することによって構成される。導電膜は、例えば、導電性不織布によって形成される。
【0021】
第2電極部21の第2面21aには、全面にわたって波型形状が連続する凹凸構造21a1が形成されている。凹凸構造21a1は、底部から頂部までの高さH2が所定の大きさに形成されている。
【0022】
第2帯電フィルム22は、絶縁性を有するとともに、第1帯電フィルム12と逆の極性に帯電する軟質の部材からなる。第2帯電フィルム22は、例えば、ポリイミドから形成されている。第2帯電フィルム22は、厚さ寸法T2に形成され、凹凸構造21a1に沿うように第2面21aを覆っている。また、第2帯電フィルム22は、図3に示すように、多数の空孔22aと、隣接する空孔22a同士を連通する連通孔22bと、を有する多孔質構造を有している。第2帯電フィルム22の空孔22aの平均孔径Dは、200nm以上400nm以下の範囲内の大きさであることが好ましく、連通孔22bの平均孔径dは、平均孔径Dの3分の1以下の大きさであることが好ましい。また、第2帯電フィルム22は、空隙率が50%以上であることが好ましく、帯電性の向上を目的として比表面積を増大させる観点から、表面に孔が開いていることが望ましい。空隙率の上限は、特に限定されないが、例えば、85%以下であり、膜強度等の点で80%以下が好ましい。
【0023】
第2帯電フィルム22は、例えば、基材となる樹脂又は基材となる樹脂の前駆体樹脂と、微粒子とを含む複合膜から、空孔22aを形成するために、微粒子を除去することで製造することができる。基材となる樹脂又はその前駆体樹脂としてはポリイミド系樹脂またはポリイミド系樹脂の前駆体樹脂が挙げられる。第2帯電フィルム22を構成する多孔質膜は公知の方法により作製することができ、例えば、特許第5745195号公報、又は特許第6147069号公報に記載の製造方法により製造できる。第2帯電フィルム22がポリイミド多孔質膜である場合には、ポリイミドのイミド結合の一部が開環したアミド結合を含んでいてもよいが、本発明に係る発電体の加工性の点でアミド結合を含まないポリイミドであることが好ましく、FT-IR装置により確認することができる。
【0024】
ここで、第1面11aの凹凸構造11a1の高さH1と第2面21aの凹凸構造21a1の高さH2の合計は、0.3mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましい。凹凸構造11a1の高さH1と凹凸構造21a1の高さH2の合計には、第1面11aおよび第2面21aの一方にのみ凹凸構造が形成され、他方が平面状に形成されている場合も含まれる。例えば、第1面11aが凹凸構造11a1を有し、第2面21aが平面状である場合には、凹凸構造11a1の高さH1が、0.3mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましい。また、第1面11aが平面状であり、第2面21aが凹凸構造21a1を有する場合には、凹凸構造21a1の高さH2が、0.3mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましい。
【0025】
第1帯電フィルム12の厚さ寸法T1、または、第2帯電フィルム22の厚さ寸法T2は、80μm以下であることが好ましい。さらに、第1帯電フィルム12の厚さ寸法T1、および、第2帯電フィルム22の厚さ寸法T2は、それぞれ80μm以下であることがより好ましい。
【0026】
また、第1電極部11と第2電極部21とは、発電された電力が供給される外部負荷を介して互いに電気的に接続され、第1電極部11と第2電極部21との間に電位差が生じると第1電極部11と第2電極部21との間を電子が流れるようになっている。
【0027】
保持部材30は、図1に示すように、第1部材10の第1面11aと第2部材20の第2面21aを互いに対向させた状態で、第1部材10及び第2部材20を一体に保持する部材である。
【0028】
以上のように構成された発電体1は、第1部材10及び第2部材20に対して、第1帯電フィルム12と第2帯電フィルム22とを互いに押し付けあう方向に外側から力が作用していない第1状態と、第1帯電フィルム12と第2帯電フィルム22とを互いに押し付けあう方向に外側から力が作用した第2状態と、が切り替わることによって発電する。
【0029】
第1状態では、第1帯電フィルム12と第2帯電フィルム22とが互いに接触しているが、凹凸構造11a1に沿って形成された第1帯電フィルム12と凹凸構造21a1沿って形成された第2帯電フィルム22とが互いに対向しているため、第1帯電フィルム12と第2帯電フィルム22との接触面積は小さい。
【0030】
一方、第2状態では、第1帯電フィルム12と第2帯電フィルム22とを互いに押し付けあう方向に力を作用させることによって、図2に示すように、弾性を有する第1電極部11の凹凸構造11a1及び第2電極部21の凹凸構造21a1がそれぞれ変形し、第1帯電フィルム12と第2帯電フィルム22との接触面積が第1状態における接触面積よりも大きくなる。このとき、第1帯電フィルム12と第2帯電フィルム22とが互いに擦れることによって、第1部材10では、正電荷を帯び、第2部材20側では、負電荷を帯びる。
【0031】
また、第2状態から第1面11aと第2面21aとを互いに押し付けあう方向に作用させた力を解放すると、第1電極部11及び第2電極部21のそれぞれの弾性力によって第1状態となる。このとき、第1電極部11と第2電極部21との間では、電位が等しくなる方向に電気が流れる。
【実施例0032】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0033】
表1に示すように、第1部材10の第1帯電フィルム12の材質および凹凸構造11a1の高さH1、第2部材20の第2帯電フィルム22の材質および凹凸構造21a1の高さH2をそれぞれ変更した比較例1-7、実施例1-5の発電体を構成し、それぞれの発電体の性能を評価するための試験を行った。
【0034】
【表1】
【0035】
<比較例1>
比較例1は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1が形成されておらず、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリウレタンであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1が形成されておらず、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有さないポリイミドである。
【0036】
<比較例2>
比較例2は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1の高さH1が0.2mmであり、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリウレタンであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1が形成されておらず、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有さないポリイミドである。
【0037】
<比較例3>
比較例3は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1が形成されておらず、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリウレタンであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1が形成されておらず、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有さないテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体である。
【0038】
<比較例4>
比較例4は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1の高さH1が0.5mmであり、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリウレタンであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1の高さH2が0.2mmであり、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有さないテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体である。
【0039】
<比較例5>
比較例5は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1の高さH1が0.5mmであり、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリウレタンであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1の高さH2が0.5mmであり、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有さないテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体である。
【0040】
<比較例6>
比較例6は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1が形成されておらず、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリウレタンであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1が形成されておらず、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有するポリイミドである。
【0041】
<実施例1>
実施例1は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1の高さH1が0.5mmであり、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリウレタンであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1の高さH2が0.2mmであり、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有するポリイミドである。
【0042】
<実施例2>
実施例2は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1の高さH1が0.5mmであり、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリウレタンであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1の高さH2が0.5mmであり、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有するポリイミドである。
【0043】
<実施例3>
実施例3は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1の高さH1が0.2mmであり、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリアミドであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1の高さH2が0.2mmであり、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有するポリイミドである。
【0044】
<実施例4>
実施例4は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1の高さH1が0.2mmであり、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリアミドであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1の高さH2が0.5mmであり、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有するポリイミドである。
【0045】
<実施例5>
実施例5は、第1部材10の第1面11aに凹凸構造11a1の高さH1が0.5mmであり、第1帯電フィルム12が多孔質構造を有さないポリアミドであり、第2部材20の第2面21aの凹凸構造21a1の高さH2が0.5mmであり、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有するポリイミドである。
【0046】
図4は、比較例1,3および6の発電体1について、発電電圧に関する試験の結果を示すグラフである。比較例1,3および6は、第1電極部11の第1面11aに凹凸構造11a1が形成されておらず、第2電極部21の第2面21aについても凹凸構造21a1が形成されていない。このため、比較例1,3および6では、いずれにおいても発電電圧が20ボルト未満であることを示している。
【0047】
図5は、比較例2,4および5、実施例1,2,3および4について、発電電圧に関する試験の結果を示すグラフである。比較例2,4および5、実施例1,2,3および4は、第1面11aおよび第2面21aの少なくとも一方に凹凸構造が形成されている。このため、比較例2,4および5、実施例1,2,3および4では、発電電圧が低いものでも50ボルト以上であることを示している。また、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有するポリイミドである実施例1,2,3および4については、第2帯電フィルム22の表面積が大きくなることによって帯びる電気量が多くなるため、発電電圧が少なくとも200ボルト以上となり、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有さない材料である比較例2,4および5と比較して発電電圧が高くなる。
【0048】
図6は、比較例5、実施例3,4および5について、第1状態と第2状態との切り替えを繰り返す発電回数と、発電量と、の関係を測定する試験の結果を示すグラフである。実施例3,4および5は、第2帯電フィルム22が多孔質構造を有さない比較例5と比べて、発電回数が大きくなっても発電量の低下率が小さいことがわかる。また、実施例3,4および5において、凹凸構造11a1の高さH1と凹凸構造21a1の高さH2との合計が大きくなるにしたがって、第1状態と第2状態とで第1帯電フィルム12と第2帯電フィルム22との接触面積の変化が大きい状態が維持され、相対発電量の低下率が低くなることがわかる。
【0049】
図7は、実施例3,4および5について、凹凸構造11a1の高さH1と凹凸構造21a1の高さH2との合計と、第1状態と第2状態との切り替えを繰り返す際における発電量が相対的に最も小さくなったときの発電量の最大の低下割合を示す出力変動率と、の関係を示すグラフである。図7では、凹凸構造11a1の高さH1と凹凸構造21a1の高さH2との合計が大きくなるにしたがって、出力変動率が小さくなることを示している。
【0050】
図8は、実施例2において、多孔質構造の空孔22aの平均孔径Dの大きさを、100nm、300nm、2500nmとした場合における、発電電圧を示している。平均孔径Dを100nmとした場合には、発電電圧が約170ボルトとなり、平均孔径Dを300nmとした場合には、発電電圧が約370ボルトとなり、平均孔径Dを2500nmとした場合には、発電電圧が約80ボルトとなる。このように、空孔22aの平均孔径Dを300nmとした場合には、平均孔径Dを100nmまたは2500nmとした場合と比べて、発電電圧が高くなる。
【0051】
このように、本実施形態の発電体1によれば、第1帯電フィルム12で覆われた第1面11aを有する第1部材10と、第2帯電フィルム22で覆われた第2面21aを有する第2部材20と、を備え、第1面11aと第2面21aとの互いの接触状態の変化によって発電する発電体1であって、第1面11aおよび第2面21aには、全面にわたって凹凸構造11a1,21a1が形成され、第2帯電フィルム22は、多孔質構造を有する部材からなる。
【0052】
これにより、第2帯電フィルム22として多孔質を有する部材を用いることによって第2帯電フィルムが帯びる電気量を増加させることが可能となるので、大型化を抑制するととともに発電量を増加させることが可能となる。
【0053】
また、第1面11aおよび第2面21aの一方にのみ凹凸構造11a1,21a1が形成されている場合には、凹凸構造11a1,21a1の頂部と底部との距離が0.3mm以上であり、第1面11aおよび第2面21aの両方に凹凸構造11a1,21a1が形成されている場合には、第1面11aに形成された凹凸構造11a1の頂部と底部との距離H1と、第2面21aに形成された凹凸構造21a1の頂部と底部との距離H2と、の合計が0.3mm以上である、ことが好ましい。
【0054】
これにより、発電を繰り返した場合において相対発電量の低下率が低くなるとともに、出力変動率が小さくなり、耐久性の向上を図るとともに、出力の安定性の向上を図ることが可能となる。
【0055】
また、前記第1帯電フィルム12がポリアミドからなり、第2帯電フィルム22が多孔質のポリイミドからなる。
【0056】
これにより、発電電圧を向上させることが可能となり、発電量をより向上させることが可能となる。
【0057】
また、第2帯電フィルム22の空孔の平均孔径Dが200nm以上400nm以下である。
【0058】
これにより、他の平均孔径Dと比べて発電電圧を増大させることが可能となるので、発電量の増大を図ることが可能となる。
【0059】
尚、前記実施形態では、第1帯電フィルム12を、多孔質構造を有さない部材から形成し、第2帯電フィルム22を、多孔質構造を有する部材から形成したものを示したが、これに限られるものではない。例えば、第1帯電フィルム12を、多孔質構造を有する部材から形成し、第2帯電フィルム22を、多孔質構造を有さない部材から形成したり、第1帯電フィルムおよび第2帯電フィルムの両方を、多孔質構造を有する部材から形成したりしてもよく、第1帯電フィルム及び第2帯電フィルムの少なくとも一方が多孔質構造を有する部材から形成されていればよい。
【0060】
また、前記実施形態では、多孔質構造を有する部材としてポリイミドを示したが、これに限られるものではなく、多孔質構造を構成可能な部材であれば、ポリイミド以外の部材であってもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、発電体1が、第1部材10及び第2部材20に対して、第1帯電フィルム12と第2帯電フィルム22とを互いに押し付けあう方向に外側から力を作用させることによって発電するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。体1帯電フィルムと第2帯電フィルムが接触した状態で互いに第1面および第2面に沿って第1部材および第2部材を移動させる方向に外側から力を作用させることによって発電する発電体であっても、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 発電体
10 第1部材
11 第1電極部
11a 第1面
11a1 凹凸構造
12 第1帯電フィルム
20 第2部材
21 第2電極部
21a 第2面
21a1 凹凸構造
22 第2帯電フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8