(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130160
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】自動搬送システム、及びマップ情報作成方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220830BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20220830BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G05D1/02 P
G05D1/02 J
B61B13/00 D
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029174
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】萩原 涼太
【テーマコード(参考)】
3D101
5F131
5H301
【Fターム(参考)】
3D101BA02
3D101BB01
5F131AA02
5F131AA21
5F131AA22
5F131AA23
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5F131CA35
5F131CA42
5F131CA43
5F131DA05
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5F131DD16
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5F131DD33
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5F131JA36
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5F131KA43
5F131KA53
5F131KA72
5F131KB06
5F131KB32
5F131KB48
5F131KB49
5F131KB58
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD05
5H301DD15
5H301FF05
5H301FF11
5H301GG06
5H301GG08
5H301HH19
5H301KK03
5H301KK08
5H301KK18
(57)【要約】
【課題】搬送路のマップ情報を自動的に作成する。
【解決手段】自動搬送システムであって、目印が設けられた搬送路と、センサーが固定されたフレームと車輪を回転させるモーターを有する自動搬送車と、該搬送路のマップ情報を記憶できるマップ情報記憶部と該マップ情報に基づいて道順を決定し該道順に従って走行するように該自動搬送車を制御する搬送制御部と、を含む制御ユニットと、を含み、該制御ユニットは、該自動搬送車に該搬送路の探索動作を実施させる探索制御部と該搬送路の該マップ情報を作成するマップ情報作成部を備え、該探索制御部は、該センサーに該目印を検出させながら該搬送路上を該自動搬送車に走行させ、交差点の位置を検出し、行き止まりの位置を検出し、該マップ情報作成部は、該交差点の位置と、該行き止まりの位置と、に基づいて該搬送路の該マップ情報を作成し、該マップ情報を該マップ情報記憶部に記憶させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動搬送システムであって、
目印が設けられた搬送路と、
荷台と、該搬送路の該目印を検出するセンサーと、情報を送受信する第1の送受信器と、が固定されたフレームと、該フレームに接続された車輪を回転させるモーターと、を有する自動搬送車と、
該第1の送受信器との間で情報を送受信する第2の送受信器と、該搬送路のマップ情報を記憶できるマップ情報記憶部と、該マップ情報に基づいて出発地から目的地までの道順を決定し該道順に従って走行するように該自動搬送車を制御する搬送制御部と、を含む制御ユニットと、を含み、
該自動搬送車または該制御ユニットは、該自動搬送車に該搬送路の探索動作を実施させる探索制御部を備え、
該自動搬送車または該制御ユニットは、該搬送路の該マップ情報を作成するマップ情報作成部を備え、
該探索制御部は、
該センサーに該目印を検出させながら該搬送路上を該自動搬送車に走行させ、
該目印により該搬送路の交差点が検出されたときに該自動搬送車の走行距離に基づいて該交差点の位置を検出し、該センサーで該目印を検出することで該交差点から延びる該搬送路の方向を検出し、
該目印により該搬送路の行き止まりが検出されたとき、該自動搬送車の走行距離に基づいて該行き止まりの位置を検出し、
該マップ情報作成部は、該交差点の位置と、該行き止まりの位置と、に基づいて該搬送路の該マップ情報を作成し、該マップ情報を該マップ情報記憶部に記憶させることを特徴とする自動搬送システム。
【請求項2】
該探索制御部は、該モーターの回転数と、該車輪の円周と、該自動搬送車の走行時間と、から該自動搬送車の該走行距離を算出することを特徴とする請求項1に記載の自動搬送システム。
【請求項3】
該探索制御部は、該目印により該搬送路の該交差点が検出されたときに該センサーで該目印を検出させながら該交差点で該自動搬送車を旋回させることで該交差点から延びる該搬送路の方向を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動搬送システム。
【請求項4】
該搬送路は、該交差点を構成する交差点パネルと、該行き止まりを構成する行き止まりパネルと、を含む複数の路面パネルから構成され、
該探索制御部は、
該目印により該交差点パネルを検出することで該交差点の位置を検出し、該交差点パネルの向きを検出することで該交差点から延びる該搬送路の方向を検出し、
該目印により該行き止まりパネルを検出することで該行き止まりの位置を検出できることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動搬送システム。
【請求項5】
該探索制御部は、該交差点から延びる該搬送路の方向が2つ以上検出された場合、該自動搬送車が走行しておらず、かつ、他の方向よりも優先順位が高い方向の進路に向けて該自動搬送車を走行させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自動搬送システム。
【請求項6】
該搬送路は、複数の加工装置の上面に固定されており、該自動搬送車は、被加工物又は工具を該荷台に収容して該加工装置に搬送することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の自動搬送システム。
【請求項7】
目印が設けられた搬送路と、自動搬送車と、該自動搬送車を制御する制御ユニットと、を備える自動搬送システムにおいて、該搬送路のマップ情報を作成するマップ情報作成方法であって、
該自動搬送車は、荷台と、該搬送路の該目印を検出するセンサーと、情報を送受信する第1の送受信器と、が固定されたフレームと、該フレームに接続された車輪を回転させるモーターと、を有し、
該制御ユニットは、該第1の送受信器との間で情報を送受信する第2の送受信器と、該搬送路の該マップ情報を記憶できるマップ情報記憶部と、該マップ情報に基づいて出発地から目的地までの道順を決定し該道順に従って走行するように該自動搬送車を制御する搬送制御部と、を含み、
該マップ情報作成方法は、
該自動搬送車を該搬送路上に配置する配置ステップと、
該自動搬送車が配置された位置に設けられた該目印を該センサーに検出させ、該位置についての情報を取得する初動ステップと、
該センサーに該目印を検出させながら該自動搬送車に該搬送路を走行させ、該自動搬送車の走行距離を記録する走行ステップと、
該センサーで検出された該目印に基づいて、該自動搬送車が走行する領域についての情報を取得する領域識別ステップと、
該搬送路の該マップ情報を作成し、該マップ情報を該マップ情報記憶部に記憶させるマップ情報記録ステップと、を含み、
該領域識別ステップでは、
該目印により該搬送路の交差点が検出されたとき、該自動搬送車の該走行距離に基づいて該交差点の位置を検出し、該センサーで該目印を検出することで該交差点から延びている該搬送路の方向を検出し、
該目印により該搬送路の行き止まりが検出されたとき、該自動搬送車の該走行距離に基づいて該行き止まりの位置を検出し、
該マップ情報記録ステップでは、該交差点の位置と、該行き止まりの位置と、に基づいて該搬送路の該マップ情報を作成することを特徴とするマップ情報作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置で加工される被加工物等の物品を自動搬送車で搬送する自動搬送システムと、該自動搬送システムにおいて該自動搬送車が走行する搬送路のマップ情報を作成するマップ情報作成方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等に組み込まれるデバイスチップの製造工程では、半導体ウェーハや樹脂パッケージ基板に代表される板状の被加工物が様々な加工装置によって加工される。この加工装置に対して被加工物を搬送する際には、通常、複数の被加工物を収容できるカセットが用いられる。加工装置は、複数の被加工物を収容した状態のカセットを受け取ると、このカセットから被加工物を順に取り出して加工する。
【0003】
被加工物の加工にかかる効率を高めるために、複数の加工装置が並行して用いられることもある。この場合には、複数の加工装置のそれぞれに対して適切なタイミングで被加工物を搬送しなくてはならない。そこで、複数の加工装置を搬送用の経路(搬送路)で繋いで、各加工装置への被加工物の搬送を実現した自動搬送システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、搬送路を自動走行する自動搬送車により物品を搬送する自動搬送システムが知られている。この自動搬送システムでは、搬送路の上方にカメラを設置し、このカメラで搬送路を撮影してマップを作成する。そして、搬送路を走行する自動搬送車を該カメラで撮影して該自動搬送車の位置を検出し、目的の位置まで移動するように自動搬送車を制御する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-177244号公報
【特許文献2】特開2018-92393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この自動搬送システムでは、例えば、搬送路や自動搬送車を撮影するためのカメラを建物の天井等に設置する必要がある。その上、加工装置の配置変更により搬送路の構成が変更されたとき、その都度カメラを設置しなおす必要がある。
【0007】
そこで、例えば、自動搬送車の制御システムに搬送路のマップ情報を予め登録し、該搬送路に設けられた目印を自動搬送車が備えるセンサーで読み取ることで該自動搬送車の現在地を特定し、目的の位置まで移動するように自動搬送車を制御することが考えられる。この場合、搬送路の構成を変更するときに新しいマップを制御システムに登録すればよく、カメラの設置や再設置が不要である。
【0008】
しかしながら、この場合、新しいマップ情報を作成するために搬送路の寸法等を測定する必要がある。その上、登録したマップ情報に間違いがある場合、自動搬送車が正常に動かなくなり工程が停止するだけでなく、搬送路の寸法等を測定してマップ情報を作り直す必要がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送路のマップ情報を自動的に生成できる自動搬送システムと、該マップ情報を自動的に作成できるマップ情報作成方法と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、自動搬送システムであって、目印が設けられた搬送路と、荷台と、該搬送路の該目印を検出するセンサーと、情報を送受信する第1の送受信器と、が固定されたフレームと、該フレームに接続された車輪を回転させるモーターと、を有する自動搬送車と、該第1の送受信器との間で情報を送受信する第2の送受信器と、該搬送路のマップ情報を記憶できるマップ情報記憶部と、該マップ情報に基づいて出発地から目的地までの道順を決定し該道順に従って走行するように該自動搬送車を制御する搬送制御部と、を含む制御ユニットと、を含み、該自動搬送車または該制御ユニットは、該自動搬送車に該搬送路の探索動作を実施させる探索制御部を備え、該自動搬送車または該制御ユニットは、該搬送路の該マップ情報を作成するマップ情報作成部を備え、該探索制御部は、該センサーに該目印を検出させながら該搬送路上を該自動搬送車に走行させ、該目印により該搬送路の交差点が検出されたときに該自動搬送車の走行距離に基づいて該交差点の位置を検出し、該センサーで該目印を検出することで該交差点から延びる該搬送路の方向を検出し、該目印により該搬送路の行き止まりが検出されたとき、該自動搬送車の走行距離に基づいて該行き止まりの位置を検出し、該マップ情報作成部は、該交差点の位置と、該行き止まりの位置と、に基づいて該搬送路の該マップ情報を作成し、該マップ情報を該マップ情報記憶部に記憶させることを特徴とする自動搬送システムが提供される。
【0011】
好ましくは、該探索制御部は、該モーターの回転数と、該車輪の円周と、該自動搬送車の走行時間と、から該自動搬送車の該走行距離を算出する。
【0012】
また、好ましくは、該探索制御部は、該目印により該搬送路の該交差点が検出されたときに該センサーで該目印を検出させながら該交差点で該自動搬送車を旋回させることで該交差点から延びる該搬送路の方向を検出する。
【0013】
また、好ましくは、該搬送路は、該交差点を構成する交差点パネルと、該行き止まりを構成する行き止まりパネルと、を含む複数の路面パネルから構成され、該探索制御部は、該目印により該交差点パネルを検出することで該交差点の位置を検出し、該交差点パネルの向きを検出することで該交差点から延びる該搬送路の方向を検出し、該目印により該行き止まりパネルを検出することで該行き止まりの位置を検出できる。
【0014】
また、好ましくは、該探索制御部は、該交差点から延びる該搬送路の方向が2つ以上検出された場合、該自動搬送車が走行しておらず、かつ、他の方向よりも優先順位が高い方向の進路に向けて該自動搬送車を走行させる。
【0015】
また、好ましくは、該搬送路は、複数の加工装置の上面に固定されており、該自動搬送車は、被加工物又は工具を該荷台に収容して該加工装置に搬送する。
【0016】
また、本発明の他の一態様によると、目印が設けられた搬送路と、自動搬送車と、該自動搬送車を制御する制御ユニットと、を備える自動搬送システムにおいて、該搬送路のマップ情報を作成するマップ情報作成方法であって、該自動搬送車は、荷台と、該搬送路の該目印を検出するセンサーと、情報を送受信する第1の送受信器と、が固定されたフレームと、該フレームに接続された車輪を回転させるモーターと、を有し、該制御ユニットは、該第1の送受信器との間で情報を送受信する第2の送受信器と、該搬送路の該マップ情報を記憶できるマップ情報記憶部と、該マップ情報に基づいて出発地から目的地までの道順を決定し該道順に従って走行するように該自動搬送車を制御する搬送制御部と、を含み、該マップ情報作成方法は、該自動搬送車を該搬送路上に配置する配置ステップと、該自動搬送車が配置された位置に設けられた該目印を該センサーに検出させ、該位置についての情報を取得する初動ステップと、該センサーに該目印を検出させながら該自動搬送車に該搬送路を走行させ、該自動搬送車の走行距離を記録する走行ステップと、該センサーで検出された該目印に基づいて、該自動搬送車が走行する領域についての情報を取得する領域識別ステップと、該搬送路の該マップ情報を作成し、該マップ情報を該マップ情報記憶部に記憶させるマップ情報記録ステップと、を含み、該領域識別ステップでは、該目印により該搬送路の交差点が検出されたとき、該自動搬送車の該走行距離に基づいて該交差点の位置を検出し、該センサーで該目印を検出することで該交差点から延びている該搬送路の方向を検出し、該目印により該搬送路の行き止まりが検出されたとき、該自動搬送車の該走行距離に基づいて該行き止まりの位置を検出し、該マップ情報記録ステップでは、該交差点の位置と、該行き止まりの位置と、に基づいて該搬送路の該マップ情報を作成することを特徴とするマップ情報作成方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
自動搬送車が走行する搬送路の上面には、目印が設けられる。自動搬送車は、この目印を検出するセンサーを備える。搬送路は交差点と行き止まり等を含み、自動搬送車は交差点等の間を直進走行し目印を参照して該交差点を検出して進行方向を変更する。
【0018】
本発明の一態様にかかる自動搬送システム及びマップ情報作成方法では、搬送路の構成が変更されたとき等に搬送路のマップ情報を作成する際には、センサーで目印を検出させながら自動搬送車に搬送路を走行させ、搬送路を探索させる。る。そして、目印を検出することで交差点等を検出するとともにその位置を検出する。また、交差点に設けられた目印により、該交差点から延びる搬送路の方向を検出する。
【0019】
そして、自動搬送車に直進走行と、交差点等の検出と、をくり返し実施させることで搬送路を隈なく探索させる。これにより、収集された各交差点等の位置に関する情報から搬送路のマップ情報を作成できる。そのため、管理者等がマップ情報を自身で作成する必要がなく、マップ情報に間違いが生じない。
【0020】
したがって、本発明の一態様によると、搬送路のマップ情報を自動的に生成できる自動搬送システムと、該マップ情報を自動的に作成できるマップ情報作成方法と、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】自動搬送システムの構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】自動搬送システムの接続関係の例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3(A)は、自動搬送車の内部構成の上面側を模式的に示す斜視図であり、
図3(B)は、自動搬送車の内部構成の底面側を模式的に示す斜視図である。
【
図4】荷台が載置領域に載置された状態の自動搬送車の内部構成を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は、T字路パネルを模式的に示す平面図であり、
図5(B)は、十字路パネルを模式的に示す平面図であり、
図5(C)は、開口部パネルを模式的に示す平面図であり、
図5(D)は、待機位置パネルを模式的に示す平面図であり、
図5(E)は、調整パネルを模式的に示す平面図である。
【
図6】搬送路の構成例を模式的に示す平面図である。
【
図7】T字路パネルと、自動搬送車の一部の構成要素と、の位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図8】開口部パネルと、自動搬送車の一部の構成要素と、の位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10(A)は、初動ステップを模式的に示す平面図であり、
図10(B)は、走行ステップを模式的に示す平面図である。
【
図11】マップ情報作成方法の各ステップの流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、被加工物等の物品の搬送先となる複数の加工装置がいずれも切削装置である場合について説明するが、自動搬送システムは、任意の種類の加工装置に対して物品を搬送できるように構成されていれば良い。すなわち、被加工物等の搬送先は、切削装置以外の加工装置でもよく、複数のレーザー加工装置に対して被加工物等を搬送できるように構成されることがある。
【0023】
また、自動搬送システムは、一連の加工に使用される複数の種類の加工装置に対して順に被加工物等を搬送できるように構成されることもある。さらに、自動搬送システムは、被加工物等の加工に付随する任意の処理で使用される様々な装置に被加工物を搬送できるように構成されても良い。つまり、被加工物等の搬送先には、被加工物の加工を目的としないテープ貼付装置、紫外線照射装置、洗浄装置等が含まれ得る。
【0024】
図1は、本実施形態にかかる自動搬送システム2の構成例を示す斜視図であり、
図2は、自動搬送システム2の接続関係の例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる自動搬送システム2は、加工装置(切削装置)4によって加工される板状の被加工物等の物品を搬送するための搬送路6を含んでいる。
【0025】
被加工物は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハである。この被加工物の表面側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)によって複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等のデバイスが形成されている。
【0026】
なお、被加工物の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板等を被加工物として用いることもできる。同様に、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。被加工物には、デバイスが形成されていなくても良い。更に、被加工物がテープを介してフレームに支持された被加工物ユニットを搬送の対象としているが、テープが貼付されていない被加工物や、フレームに支持されていない被加工物等が搬送の対象となることもある。
【0027】
また、本実施形態に係る自動搬送システム2では、被加工物以外の物品が搬送されてもよい。例えば、加工装置4で被加工物を加工する際に使用される工具(例えば、切削ブレード)や、加工装置4で消費される消耗品(例えば、ドレッサーボード)等が搬送されてもよい。以下、自動搬送システム2で搬送される物品が被加工物である場合を中心に本実施形態について説明するが、物品は被加工物に限定されない。
【0028】
また、この被加工物を加工する加工装置4は、被加工物等の物品の搬送先として自動搬送システム2に接続されているが、必ずしも自動搬送システム2の構成要素ではない。よって、加工装置4は、上述のように、自動搬送システム2の使用の態様に合わせて変更、省略されても良い。本実施形態では、被加工物等の物品の搬送先として、2台以上の加工装置4が必要になる。すなわち、自動搬送システム2に接続される加工装置4の数は、2以上である。
【0029】
搬送路6は、複数の加工装置4を連結するように、各加工装置4の上部に設置されている。この搬送路6を通じて、各加工装置4に物品が搬送される。なお、搬送路6は、加工装置4の上方に設置されているので、各加工装置4の側面に接続される配管等に対して搬送路6が干渉することはない。
【0030】
搬送路6の下方には、加工装置4の他に、被加工物が収容されるローダー・アンローダー(搬送装置)8が設けられている。ローダー・アンローダー8に収容されている加工前の被加工物は、任意のタイミングで自動搬送車10へと搬入される。なお、ローダー・アンローダー8には、被加工物の他に切削ブレード等の工具やドレッサーボード等の消耗品が収容されていてもよい。
【0031】
自動搬送車10は、搬送路6上を走行し、ローダー・アンローダー8から受け取った加工前の被加工物、使用前の工具や消耗品等の物品を各加工装置4へと搬送する。また、自動搬送車10は、加工装置4から加工後の被加工物、使用済みの工具、消耗品等の物品を受け取ると、搬送路6上を走行し、物品をローダー・アンローダー8へと搬送する。
【0032】
ただし、自動搬送車10は、ある加工装置4から加工後の被加工物を受け取ると、搬送路6上を走行し、該被加工物を次の工程で使用される装置へと搬送することがある。なお、
図2では、2台の自動搬送車10a,10bを示しているが、自動搬送車10の数に制限はない。
【0033】
図2に示すように、加工装置4、ローダー・アンローダー8、自動搬送車10には、これらの動作を制御する制御ユニット12が無線で接続されている。ただし、制御ユニット12は、加工装置4、ローダー・アンローダー8、自動搬送車10等の動作を制御できるように構成されていれば良く、これらに対して有線で接続されることもある。
【0034】
図1には、搬送路6上を走行して物品を搬送できる自動搬送車10の外観を模式的に示す斜視図が含まれている。また、
図3(A)は、自動搬送車10の内部構成の上面側を示す斜視図であり、
図3(B)は、自動搬送車10の内部構成の底面側を示す斜視図である。
図3(A)及び
図3(B)に示すように、自動搬送車10は、各種の構成要素が搭載される板状のフレーム82を備える。
【0035】
フレーム82の前方側の両側端部には、一対の車軸84が配置されている。車軸84は、一端側がフレーム82の側面から突出するように、フレーム82の下面側に装着される。一対の車軸84の一端側には、それぞれ、車輪(前輪)86が固定されている。また、フレーム82の後端部の幅方向に離れた2つの位置には、一対の車輪(後輪)88が配置されている。車輪88は、例えば、高さ方向に沿う回転軸の周りに360°回転できるキャスターであり、フレーム82の下面側に装着されている。
【0036】
フレーム82の前端部には、一対の車輪86を駆動する駆動ユニット90が搭載されている。駆動ユニット90は、それぞれ、車軸84等を介して車輪86に連結された一対のモーター92を備える。モーター92は、回転軸(出力シャフト)92aを備え、車輪86を回転させる動力を生成する。
【0037】
図3(B)に示すように、車軸84の他端側には、プーリー94が設けられている。モーター92の回転軸92aとプーリー94とには、ベルト、チェーン等の無端の連結部材(不図示)が架けられている。モーター92の回転軸92a、プーリー94、及び連結部材によって動力伝達機構が構成され、車軸84とモーター92とが連結される。これにより、モーター92によって生成された動力(回転力)が車輪86に伝達され、車輪86が回転する。
【0038】
駆動ユニット90は、一対のモーター92によって一対の車輪86の回転する方向を独立に制御する。一対の車輪86を同方向に回転させることにより、自動搬送車10が前進又は後退する。また、一対の車輪86を互いに逆方向に回転させることにより、高さ方向に沿う回転軸の周りに自動搬送車10を旋回させて、自動搬送車10の進行する方向を制御できる。なお、車輪86及び車輪88の構造に制限はない。例えば、車輪86及び車輪88として、傾斜した樽状(筒状)の複数の回転体が搬送路6と接触する外周面に取り付けられた、いわゆる、メカナムホイールを用いることもできる。
【0039】
駆動ユニット90には、モーター92等に電力を供給するバッテリー(二次電池)96が接続される。バッテリー96は、例えば、フレーム82の前端部に装着され、車輪86を回転させるための電力をモーター92に供給する。バッテリー96としては、リチウムイオン電池等が用いられる。
【0040】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、フレーム82の下側には、被加工物ユニット等の物品を収容する荷台(カセット)102が格納される格納領域104が設けられている。格納領域104は、一対の車輪86と一対の車輪88とによって周りを囲まれており、且つ、車輪86及び車輪88の下端よりも上方に位置する。この格納領域104には、1又は複数の被加工物ユニット等の物品を収容できる荷台102が配置される。
【0041】
図4には、荷台102を示す斜視図が含まれている。荷台102は、例えば、平面視で六角柱状に形成され、その内部に物品を収容可能な収容部(収容空間)102aを備える。荷台102の一側面側には、開口102bが設けられている。物品は、開口102bを通過して収容部102aに搬出入される。
【0042】
荷台102は、例えば、大きさの異なる2種類の被加工物ユニット等を収容できるように構成されていても良い。荷台102の収容部102aには、一対の第1ガイドレール106と、一対の第2ガイドレール108とが設けられている。また、荷台102の収容部102aは、切削ブレード等の工具や、ドレッサーボード等の消耗品等の物品を収容する場合に、該物品の形状に対応した構造を有する支持機構が設けられるとよい。
【0043】
自動搬送車10は、荷台102で物品を支持して搬送路6を走行することで該物品を搬送する。被加工物ユニット等の物品を自動搬送車10によって搬送する際には、
図3(A)に示すように、荷台102が格納領域104に格納される。このとき、荷台102の下面は、車輪86の下端や車輪88の下端よりも上方に位置付けられる。そのため、自動搬送車10の走行中に荷台102が搬送路6と接触することはない。
【0044】
格納領域104の上方に位置するフレーム82の上面側の領域には、荷台102を吊り下げて昇降させる昇降ユニット(昇降機構)110が設けられている。昇降ユニット110は、格納領域104に格納された荷台102を降下させて、所定の載置領域に載置する。また、昇降ユニット110は、所定の載置領域に載置された荷台102を上昇させて、荷台102を格納領域104に格納する。
【0045】
図4は、荷台102が載置領域Aに載置された状態の自動搬送車10を示す斜視図である。昇降ユニット110は、一端側(下端側)が荷台102に接続された吊り下げ部材112と、吊り下げ部材112の巻き取り及び送り出しを行う駆動機構114とを備える。なお、載置領域Aは、例えば、ローダー・アンローダー8の載置台、または、加工装置4の昇降台の上面である。
【0046】
図4に示すように、昇降ユニット110は、4本の吊り下げ部材112を備える。吊り下げ部材112としては、例えば、所定の幅を有するベルトが用いられる。4本の吊り下げ部材112の先端部(下端部)は、それぞれ、荷台102の上面側の4つの位置に接続されている。なお、吊り下げ部材112としては、ワイヤロープ等のベルト以外の部材を用いても良い。
【0047】
フレーム82の後端部の下側には、カバー120が設けられている。カバー120は、荷台102が格納領域104に格納される際に、荷台102の開口102bを覆う。開口102bがカバー120によって覆われると、自動搬送車10の走行中に荷台102の収容部102aに異物が入り込むことを防止でき、搬送されている物品への異物の付着が防止される。また、自動搬送車10の走行中に荷台102が傾いたり振動したりしても、物品の開口102bからの飛び出しがカバー120によって防止される。
【0048】
フレーム82の前端部及び後端部には、一対の第1センサー122が設けられている。すなわち、一対の第1センサー122は、フレーム82の長さ方向(車長方向)に離れた2つの位置に設けられている。また、フレーム82の両側端部には、一対の第2センサー124が設けられている。すなわち、一対の第2センサー124は、フレーム82の幅方向(車幅方向)に離れた2つの位置に配置されている。
【0049】
第1センサー122と第2センサー124とは、それぞれ、自動搬送車10が走行する搬送路6と対向するようにフレーム82に固定され、搬送路6に設けられた目印を検出する。第1センサー122及び第2センサー124による目印の検出結果に基づいて、自動搬送車10の走行、旋回、停車等が制御される。第1センサー122及び第2センサー124を用いた自動搬送車10の制御の詳細については後述する。
【0050】
さらに、
図3(A)等に示すように、フレーム82の前端部には、自動搬送車10が障害物に衝突したことを検知する第3センサー126が設けられている。例えば、フレーム82の前端部の両端側に、一対の第3センサー126が装着される。第3センサー126としては、例えば、押しボタン式のスイッチが用いられる。
【0051】
自動搬送車10の前端部が障害物に衝突すると、第3センサー126が作動して自動搬送車10の衝突が検知される。そして、第3センサー126により自動搬送車10の衝突が検知されると、自動搬送車10は動作を停止する。自動搬送車10は、衝突等に起因する衝撃を弱めることのできる柔軟な外装カバー10c(
図1参照)によって覆われる。そして、自動搬送車10を覆う外装カバー10cが障害物に衝突すると、外装カバー10cが変形して第3センサー126に接触し、自動搬送車10の衝突が検知される。
【0052】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、昇降ユニット110の上側には、フレーム82に固定された板状の支持台128が設けられている。この支持台128の上面には、自動搬送車10の動作を制御する制御部130が固定されている。制御部130は、自動搬送車10の各構成要素(駆動ユニット90、昇降ユニット110、第1センサー122、第2センサー124、第3センサー126等)に接続されており、各構成要素の動作を制御する。
【0053】
制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部130の機能が実現される。
【0054】
また、支持台128上には、外部からの制御信号(情報)を受信して制御部130に送る受信器132aと、制御部130から受け取った通知信号(情報)を外部に送信する送信器132bと、が固定されている。受信器132aと送信器132bとは、それぞれ、制御部130に接続されている。そして、受信器132aと送信器132bとは、第1の送受信器134として機能する。
【0055】
受信器132aは、例えば、自動搬送システム2の制御ユニット12(
図2参照)から送信される制御信号を受信して制御部130に送る。制御部130は、例えば、受信器132aから受け取った制御信号に基づき、自動搬送車10の動作を制御する。また、制御部130は、例えば、通知用の信号(通知信号)を生成して送信器132bに送る。送信器132bは、例えば、制御部130から受け取った通知信号を自動搬送システム2の制御ユニット12に送信する。
【0056】
なお、自動搬送車10の各構成要素(昇降ユニット110、第1センサー122、第2センサー124、第3センサー126、制御部130、受信器132a、送信器132b等)は、給電用の配線を介してバッテリー96に接続されており、このバッテリー96から供給される電力によって動作する。
【0057】
制御ユニット12からの制御信号を自動搬送車10の受信器132aが受信し、この信号に基づく指示を制御部130が受けると、制御部130は、目的地に向けて自動搬送車10を走行させる。自動搬送システム2を利用することで、加工装置は、加工前の被加工物ユニットを適時に受け取り、加工後の被加工物ユニットを適時に回収させることができる。
【0058】
加工装置(切削装置)4は、被加工物を加工する工具である切削ブレードを加工ユニットに着脱するオートブレードチェンジャー(不図示)と呼ばれる機構を備えても良い。オートブレードチェンジャーは、加工ユニットに装着された古い切削ブレードを取り外し、新しい切削ブレードを加工ユニットに装着する機能を有する。
【0059】
本実施形態に係る自動搬送システム2は、工具として切削ブレードを自動搬送車10で加工装置4に搬送してもよい。この場合、加工装置4は、新しい切削ブレードを載置領域Aに置かれた荷台102から取り出してブレードホルダーに搬入し、古い切削ブレードをブレードホルダーから取り出して荷台102に搬送するブレード搬送機構をさらに備える。
【0060】
さらに、本実施形態に係る自動搬送システム2は、消耗品として切削ブレードの真円出しやドレッシングに使用されるドレッサーボードを加工装置4に搬送してもよい。また、加工装置4において切削ブレードを切り込ませることで切削溝の太さや長さ、形状を確認できるテストボードが搬送されてもよい。これら場合、加工装置4は、載置領域Aに置かれた荷台102からドレッサーボード等を搬送するための搬送機構をさらに備える。
【0061】
自動搬送システム2を構成する搬送路6は、例えば、各加工装置4の上面や、ローダー・アンローダー8の上面等に直接設置される。すなわち、搬送路6は、複数の加工装置4やローダー・アンローダー8等の間を接続するように、加工装置4やローダー・アンローダー8等の真上に配置されている。
【0062】
そのため、加工装置4の側面に設けられている配管接続部や扉等の構造に対して、搬送路6が干渉することはない。つまり、搬送路6を設計する際に、加工装置4の側面の構造を考慮する必要がなくなる。これにより、自動搬送システム2を容易に構築できる。また、工場の天井等に比べて低い場所に搬送路6が配置されるので、搬送路6の設置にかかる作業も容易になる。
【0063】
そして、例えば、複数の加工装置4等が既に設置されている環境で搬送路6を構築する場合には、工場の天井等に搬送路を設ける場合のように、加工装置4等を移動させて作業スペースを確保する必要がない。更に、既に設置されている加工装置4等が搬送路6の土台になるので、新たに土台を設ける場合等に比べて作業の工数も少なくなる。ただし、搬送路6は、加工装置4等の上方に設けられる場合に限定されず、加工装置4等の側方に設けられてもよい。
【0064】
搬送路6は、例えば、平板状の複数の路面パネル138を水平な方向に並べることによって形成される。例えば、搬送路6を形成する際には、加工装置4の上面等に組まれたフレーム構造(不図示)に各路面パネル138を固定する。複数の路面パネル138を組み合わせて搬送路6を形成するこの方法によると、複数の加工装置4やローダー・アンローダー8の配置に合う搬送路6を容易かつ迅速に構築できる。ただし、搬送路6は、複数の路面パネル138により構成されていなくてもよい。
【0065】
路面パネル138は、例えば、ポリアミドやポリカーボネート、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:炭素繊維強化プラスチック)等の軽量で強度の高い材料を用いて平面視で矩形状に形成され、自動搬送車10の走行に適した平坦な上面を有している。
【0066】
搬送路6を自動搬送車10が走行すると、例えば、自動搬送車10の車輪86等と、搬送路6と、の摩擦により静電気が生じ、自動搬送車10の荷台102に収容された物品に悪影響が及ぶことがある。例えば、搬送される物品である被加工物に半導体デバイスが形成されている場合には、この半導体デバイスが静電気によって破壊されるおそれがある。そこで、搬送路6となる路面パネル138の上面の車輪86等が接触する部分には、導電性部材を露出させておくことが好ましい。
【0067】
導電性部材としては、例えば、アルミニウムや銅等の金属の他に、CFRP等が用いられる。なお、路面パネル138がCFRPで構成されている場合には、その上面にもCFRPが露出する。路面パネル138の上面に導電性部材を露出させておくことで、摩擦による静電気の発生と、その蓄積と、を抑制して、被加工物等に悪影響が及ぶのを防ぐことができる。
【0068】
なお、路面パネル138の上面に露出した導電性部材は、導線(不図示)等を介して接地されても良い。この場合には、車輪86等と路面パネル138との接触により生じた静電気が導線を通じて放電するので、路面パネル138に蓄積しない。よって、被加工物等は、自動搬送車10によって、より安全に搬送される。
【0069】
図6は、複数の路面パネル138を並べて構成される搬送路6を模式的に示す平面図である。また、
図5(A)乃至
図5(E)に路面パネル138の種別の例を示す。
図5(A)は、T字路パネル140を模式的に示す平面図であり、
図5(B)は、十字路パネル142を模式的に示す平面図であり、
図5(C)は、開口部パネル144を模式的に示す平面図であり、
図5(D)は、待機位置パネル146を模式的に示す平面図であり、
図5(E)は、調整パネル148を模式的に示す平面図である。
【0070】
各路面パネル138には、複数の種類の目印150が設けられる。自動搬送車10は、第1センサー122と、第2センサー124と、で検出される各種の目印150に基づいて、走行、旋回、停車等の動作を行う。目印150は、例えば、路面パネル138の上面の他の領域とは異なる色彩を持つ直線状に構成された領域である。
【0071】
ただし、目印150の態様に制限はない。目印150は、例えば、曲線状の領域を含んでも良いし、破線状に構成されても良い。また、目印150として、文字、数字、図柄等を用いることもできる。更に、目印150の色彩等にも制限はない。例えば、異なる色彩の複数の目印150を用いるとともに、この目印150の色彩に基づき各種の制御を行うように自動搬送車10を構成しても良い。
【0072】
また、路面パネル138には、上下に貫通する開口部が設けられる。各開口部の用途については、後述する。そして、路面パネル138に設けられた各開口部は、自動搬送車10の第1センサー122と、第2センサー124と、により検出可能であり、各開口部は目印150としても機能できる。
【0073】
各種の路面パネル138について詳述する。
図5(A)に示すT字路パネル140は、自動搬送車10の3つの進路が設定された正方形状のパネルである。自動搬送車10は、T字路パネル140の第1の辺152a、第3の辺156a、及び第4の辺158a側から該T字路パネル140に進退可能である一方で、第2の辺154a側から進退できない。T字路パネル140の第2の辺154aには、自動搬送車10の進退を防止し搬送路6からの脱落を防止する壁状のガード部160が設けられる。
【0074】
T字路パネル140の上面には、該上面の中心付近で互いに直交する2つの直線状の進路目印150aが設けられている。より詳細には、第1の辺152aから第3の辺156aに至る進路目印150aと、第2の辺154aから第4の辺158aに至る進路目印150aと、が設けられている。
【0075】
進路目印150aは、主に自動搬送車10の第1センサー122により検出され、直進走行する自動搬送車10に進行方向を示す。そして、2つの進路目印150aの交点は、自動搬送車10の進行方向の切り替えが可能な交差点162となる。T字路パネル140は交差点162を含むため、交差点162を構成する交差点パネルに分類できる。
【0076】
なお、自動搬送車10が交差点162に進入すると、それまでに自動搬送車10の第1センサー122により検出されていた進路目印150aに交差する進路目印150aが第1センサー122及び第2センサー124により検出される。そして、第1センサー122及び第2センサー124によりこの交差する進路目印150aが検出されることにより交差点162の存在とその位置が検出される。ただし、交差点162は、第1センサー122及び第2センサー124の一方のみで検出されてもよい。
【0077】
また、T字路パネル140の上面には、進路目印150aに直交する3つの短い線状の参照目印150bが設けられている。より詳細には、交差点162及び第1の辺152aの間に2つの参照目印150bが設けられており、交差点162及び第4の辺158aの間に1つの参照目印150bが設けられている。参照目印150bは、自動搬送車10の第1センサー122及び第2センサー124により検出される。
【0078】
参照目印150bは、T字路パネル140の交差点162の位置、後述する開口部164の位置、その他の特徴点の位置等を示す。また、参照目印150bは、後述の通り、自動搬送車10が走行する路面パネル138の種別がT字路パネル140であることが判別される際に利用される。参照目印150bは、その用途に応じて定められた位置でT字路パネル140の上面に設けられる。
【0079】
また、T字路パネル140には、進路目印150aを跨ぐように設けられた比較的小さな2つの開口部164が設けられている。より詳細には、交差点162及び第1の辺152aの間に開口部164が設けられており、交差点162及び第4の辺158aの間に開口部164が設けられている。
【0080】
この比較的小さな開口部164は、主に、自動搬送車10で搬送される小型の工具類等の昇降経路として機能する。例えば、T字路パネル140と重なるように下方に加工装置4が設置されている場合、該開口部164を通して工具類が該加工装置4に搬出入されてもよい。ただし、すべての開口部164で工具類が搬出入される必要はなく、使用されない開口部164が存在してもよい。開口部164は、第1センサー122及び第2センサー124により検出可能であり、目印150の一種として機能できる。
【0081】
なお、T字路パネル140の上面には、固有の配置で各種の目印150が設けられており、他の種別の路面パネル138にはこの配置では目印150が設けられていない。自動搬送車10のセンサー122,124でT字路パネル140の目印150を検出すると、自動搬送車10が走行する領域がT字路パネル140であること及び交差点162の位置等が検出される。
【0082】
ここで、自動搬送車10の第1センサー122及び第2センサー124の位置と、T字路パネル140の各参照目印150bと、の位置関係について詳述する。
図7は、T字路パネル140に載る自動搬送車10の一部の構成要素と、該T字路パネル140の各構成要素と、の位置関係を模式的に示す平面図である。説明の便宜のために、
図7では、自動搬送車10の車輪86,88と、第1センサー122a,122bと、第2センサー124a,124bと、をハッチングラインを付した四角形により表示している。
【0083】
後述するように、T字路パネル140の中央付近では、自動搬送車10が第1センサー122a,122bと、第2センサー124a,124bと、を作動させながらその場で旋回する。T字路パネル140の参照目印150bは、このときに第1センサー122a,122bと、第2センサー124a,124bと、により検出可能な位置に設けられる。
【0084】
図7に示す例では、前側の第1センサー122aで第1の辺152aに近い参照目印150bが検出されると同時に左翼側の第2センサー124aで第3の辺156aに近い参照目印150bが検出される。このとき、後ろ側の第1センサー122bと、右翼側の第2センサー124bは参照目印150bを検出せず、進路目印150aだけを検出する。
【0085】
さらに、自動搬送車10をその場で時計回りに90度回転させたとき、左翼側の第2センサー124aで第1の辺152aに近い参照目印150bが検出されると同時に後ろ側の第1センサー122bで第3の辺156aに近い参照目印150bが検出される。このとき、前側の第1センサー122a及び右翼側の第2センサー124bは、参照目印150bを検出せず進路目印150aだけを検出する。
【0086】
自動搬送車10が載る路面パネル138(T字路パネル140)の向きと、自動搬送車10の向きと、により参照目印150bを検出するセンサー122,124が変化する。そのため、センサー122,124に参照目印150bを検出させることにより、自動搬送車10及び路面パネル138の相対的な向きの検出が可能である。
【0087】
次に、路面パネル138の一種である十字路パネル142について詳述する。
図5(B)に示す十字路パネル142は、自動搬送車10の4つの進路が設定された正方形状のパネルである。すなわち、自動搬送車10は、十字路パネル142の第1の辺152b、第2の辺154b、第3の辺156b、及び第4の辺158b側から該十字路パネル142に進退可能である。ここで、十字路パネル142の各構成要素についてT字路パネル140と共通するものについては、機能等について適宜説明を参酌できる。
【0088】
十字路パネル142の上面には、該上面の中心付近で互いに直交する2つの直線状の進路目印150aが設けられている。より詳細には、第1の辺152bから第3の辺156bに至る進路目印150aと、第2の辺154bから第4の辺158bに至る進路目印150aと、が設けられている。2つの進路目印150aの交点は、交差点162となる。十字路パネル142は交差点162を含むため、交差点162を構成する交差点パネルに分類できる。
【0089】
十字路パネル142の上面には、進路目印150aに直交する2つの短い線状の参照目印150bが設けられている。より詳細には、該上面の交差点162及び第3の辺156bの間に2つの参照目印150bが設けられている。また、十字路パネル142には、進路目印150aを跨ぐように設けられた比較的小さな1つの開口部164が設けられている。より詳細には、2つの参照目印150bの間に開口部164が設けられている。
【0090】
十字路パネル142の上面には、固有の配置で参照目印150b及び開口部164が設けられており、他の種別の路面パネル138にはこの配置では参照目印150b及び開口部164が設けられていない。自動搬送車10のセンサー122,124で十字路パネル142の進路目印150a及び参照目印150bを検出すると、自動搬送車10が走行する領域が十字路パネル142であること及び交差点162の位置等が検出される。
【0091】
図5(C)に示す開口部パネル144は、加工装置4等の上方に設けられる正方形状の路面パネル138である。開口部パネル144の中央には、比較的大きな開口部166が形成されている。この比較的大きな開口部166は、主に、自動搬送車10の荷台102の昇降経路として機能する。開口部パネル144は、該開口部166と、加工装置4の載置領域Aと、が重なるように該加工装置4の上方に設けられる。
【0092】
開口部166は、該開口部166の上方に到達した自動搬送車10の荷台102が載置領域Aに載る際の経路となる。そのため、開口部166は、荷台102が支障なく通過できる大きさ及び形状である必要がある。かつ、自動搬送車10が開口部166の上方に進出したときに前側の車輪86が脱落しないように、開口部166は一対の車輪86の間隔よりも狭い幅に形成される必要がある。
【0093】
一方で、自動搬送車10の後ろ側の車輪88が開口部166に脱落しないように、自動搬送車10が停止するべき位置を示す目印150が必要となる。
図5(C)に示す開口部パネル144では、自動搬送車10が第1の辺152c側から進入する。そして、開口部パネル144の上面の第3の辺156c側には、自動搬送車10の停止位置を示す停止目印150cが設けられる。
【0094】
停止目印150cは、荷台102が開口部166を支障なく通過できる位置に自動搬送車10が停止できる位置に設けられる。停止目印150cが第1センサー122により検出された際、自動搬送車10は停止する。
【0095】
また、開口部パネル144の上面には開口部166から第1の辺152cに至る直線状の進路目印150aが設けられており、また、この進路目印150aを横切るように参照目印150bが設けられる。参照目印150bは、例えば、自動搬送車10の第1センサー122により検出される。さらに、開口部164は、第1センサー122により検出可能であり、目印150の一種として機能できる。
【0096】
自動搬送車10は、開口部パネル144の第2の辺154c、第3の辺156c、及び第4の辺158c側から進退しない。そこで、開口部パネル144の上面の第2の辺154c、第3の辺156c、及び第4の辺158cには、壁状のガード部160が設けられてもよい。なお、
図5(C)においては、第3の辺156c側にガード部160が設けられていない。
【0097】
そして、第1の辺152c側からのみ自動搬送車10が開口部パネル144に進退するため、該開口部パネル144は搬送路6の行き止まりを構成する行き止まりパネルに分類される。
【0098】
図5(D)に示す待機位置パネル146は、稼働していない自動搬送車10が他の自動搬送車10の搬送を妨げないように待機する待機位置として機能する正方形状のパネルである。第3の辺156d側からのみ自動搬送車10が待機位置パネル146に進退するため、該待機位置パネル146は搬送路6の行き止まりを構成する行き止まりパネルに分類される。
【0099】
待機位置パネル146の上面には、自動搬送車10が進退する第3の辺156dから第1の辺152dに至る直線状の進路目印150aが設けられる。待機位置パネル146の上面の第1の辺152d側には、自動搬送車10が停止するべき位置を示す目印150として、自動搬送車10の停止位置を示す停止目印150cが設けられる。また、待機位置パネル146の上面には、進路目印150aに直交する短い線状の参照目印150bが設けられている。
【0100】
さらに、待機位置パネル146には、進路目印150aを跨ぐように設けられた比較的小さな開口部164が設けられている。開口部164は、主に、自動搬送車10で搬送される小型の工具類等の昇降経路として機能する。例えば、待機位置パネル146と重なるように下方に加工装置4が設置されている場合、該開口部164を通して工具類が該加工装置4に搬出入されてもよい。
【0101】
待機位置パネル146の進路目印150a、参照目印150b、停止目印150c、及び開口部164は、自動搬送車10の第1センサー122により検出可能であり、目印150の一種として機能できる。
【0102】
自動搬送車10は、待機位置パネル146の第1の辺152d、第2の辺154d、及び第4の辺158d側から進退しない。そこで、待機位置パネル146の上面の第1の辺152d、第2の辺154d、及び第4の辺158dには、壁状のガード部160が設けられてもよい。なお、
図5(D)においては、第1の辺152d側にガード部160が設けられていない。
【0103】
なお、開口部パネル144及び待機位置パネル146では、自動搬送車10が所定の時間停止することが想定される。そこで、自動搬送車10の停止時間を利用してバッテリー96を充電できるように、電源(不図示)に接続された給電用の端子168(
図1参照)が配置されているとよい。
図1には、開口部パネル144に設けられた一対の端子168が模式的に示されている。
【0104】
例えば、開口部パネル144や待機位置パネル146に自動搬送車10を停車させて、自動搬送車10の端子(受電端子)100を端子168に接触させれば、端子100及び充電用の配線(充電配線)98を介して、バッテリー(二次電池)96に充電用の電力が供給される。つまり、バッテリー96を充電できる。
【0105】
搬送路6は、T字路パネル140、十字路パネル142、開口部パネル144、及び待機位置パネル146等の路面パネル138の組み合わせにより構築されるとよい。搬送路6を構成する各路面パネル138の構成及び配置は、搬送路6が設けられる工場等における加工装置4やローダー・アンローダー8等の配置に合わせて決定される。各路面パネル138は、加工装置4の上面等に固定された図示しないフレームに固定ネジ170(
図1参照)等により固定される。
【0106】
ここで、単に4種類の路面パネル138を組み合わせただけでは、加工装置4やローダー・アンローダー8等の配置に合った好適な搬送路6を構築できない場合がある。そこで、各路面パネル138の位置をより自由に調整できるように、
図5(E)に示される調整パネル148が使用される。
【0107】
図5(E)は、調整パネル148を模式的に示す平面図である。調整パネル148は、第1の辺152e及び第3の辺156eと、第2の辺154e及び第4の辺158eと、の長さの異なる矩形状のパネルである。調整パネル148の上面には、自動搬送車10の進路を示す直線状の進路目印150aが設けられる。進路目印150aは、第2の辺154e及び第4の辺158eと平行である。
【0108】
例えば、第1の辺152e及び第3の辺156eの長さは、他の路面パネル138の幅に合わせられる。第2の辺154e及び第4の辺158eの長さは、調整パネル148の設置される位置や用途等に応じて適宜設定される。さらに、搬送路6では、第2の辺154e及び第4の辺158eの長さの異なる複数の種類の調整パネル148が使用されてもよい。
【0109】
図6は、加工装置4等の上面に構築された搬送路6の一例を模式的に示す平面図であり、
図1は、搬送路6の他の一例の一部を拡大して模式的に示す斜視図である。
図6に示す搬送路6は、環状に配された14枚のT字路パネル140と、各加工装置4等の載置領域Aの上方に配された4枚の開口部パネル144と、分散配置された6枚の待機位置パネル146と、2枚の調整パネル148と、により構成される。搬送路6上では、複数の自動搬送車10が走行することで被加工物や工具等の物品が搬送される。
【0110】
制御ユニット12は、各自動搬送車10と通信し、各自動搬送車10を制御する。より詳細には、制御ユニット12は、搬送路6の構成に関する情報を含むマップ情報を記憶し、該マップ情報に基づいて各自動搬送車10の出発地から目的地までの道順を決定し、該道順に従って走行するように自動搬送車10を制御する。
【0111】
自動搬送車10は、制御ユニット12から指令を受け、搬送路6の路面パネル138の上面に設けられた各目印150をセンサー122,124で検出し、自身の位置を確認しつつ該道順に沿って搬送路6上を走行する。より具体的には、自動搬送車10は、進路目印150aを検出し、進路目印150aに沿って直進する。そして、交差する2つの進路目印150aを検出して交差点162を検出し、所定の交差点162で旋回して進行方向を変更する。
【0112】
例えば、自動搬送システム2の制御ユニット12は、自動搬送車10が旋回するべき交差点162を自動搬送車10の制御部130に指示するために、該交差点162が何番目に検出される交差点162であるかを示す数を該制御部130に送る。そして、自動搬送車10の制御部130は、移動する自動搬送車10が通過する交差点162の数をカウントする。そして、検出された交差点162の数がこの数に達すると、制御部130は自動搬送車10を旋回させる。
【0113】
最終的に、目的地となる開口部パネル144または待機位置パネル146に設けられた停止目印150cを検出し、停止する。このように、各目印150は、自動搬送車10の予定された走行を実現するために参照される
【0114】
自動搬送車10は、例えば、環状に配された複数のT字路パネル140に沿う一方の向きに走行し、他方の向きには走行しない(つまり、一方通行)。これにより、自動搬送車10を簡単な制御で安全に走行させることができる。ただし、搬送路6の構成や自動搬送車10の走行の態様等に制限はない。例えば、搬送路6は、自動搬送車10の双方向への走行を許容するように構成されることがある。また、搬送路6は、終端のない環状に形成されている必要はなく、例えば、終端を持つ形状に形成されても良い。
【0115】
待機位置パネル146は、例えば、自動搬送車10を待機させる可能性の高い領域に配置される。待機位置パネル146に自動搬送車10を待機させることで、他の自動搬送車10は、待機中の自動搬送車10を追い越すことができる。また、自動搬送車10の双方向への走行が許容されている場合には、この待機位置パネル146で一時的に自動搬送車10を待機させることで、2台の自動搬送車10を行き違わせることができる。
【0116】
ここで、制御ユニット12の構成について説明する。
図2には、制御ユニット12の構成を模式的に示すブロック図が含まれている。制御ユニット12は、各種の制御を行うための制御信号を生成する制御部172を備えている。この制御部172は、例えば、CPU等の処理装置と、DRAM等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部172の機能が実現される。
【0117】
制御部172には、加工装置4、ローダー・アンローダー8、自動搬送車10等との間で各種の信号を送受信する第2の送受信器174が接続されている。第2の送受信器174は、例えば、自動搬送車10が備える第1の送受信器134(
図3(A)等参照)との間で情報(信号)を送受信する。
【0118】
また、制御ユニット12は各種の情報を記憶できる記憶部176を備える。記憶部176は、例えば、被加工物に関する情報や加工装置4の加工条件等の各種の情報を記憶できる。また、記憶部176は、搬送路6のマップ情報を記憶できるマップ情報記憶部として機能できる。
【0119】
ここで、搬送路6のマップ情報とは該搬送路6の構成に関する情報であり、各自動搬送車10の走行計画の策定時や走行時に参照される情報である。マップ情報は、必ずしも搬送路6の構成を平面的に表現した地図の形態に限定されない。
【0120】
例えば、マップ情報には、搬送路6を構成する各路面パネル138の配置や、それぞれの路面パネル138の向き等の情報により構成される。さらに、各路面パネル138に設けられた各目印150の配置や、交差点162等の位置、各開口部164,166の配置に関する情報が含まれてもよい。マップ情報では、各要素の配置を示す平面座標により構成されてもよい。
【0121】
制御ユニット12の制御部172は、記憶部(マップ情報記憶部)176に記憶されたマップ情報を読み出し、各自動搬送車10の走行計画を策定する。例えば、制御部172は、マップ情報に基づいて各自動搬送車10の出発地から目的地までの道順を決定する。そして、該道順に従って走行するように自動搬送車10に信号を送り、各自動搬送車10を制御する。このように、制御部172は、自動搬送車10を制御する搬送制御部として機能できる。
【0122】
ここで、自動搬送システム2が稼働する半導体デバイスの工場等では、製造する半導体デバイスや被加工物の加工条件の変更、その他の事情により、各加工装置4の配置が変更されることがある。また、該工場等では、古い加工装置4が取り除かれて新しい加工装置4に入れ替えられたりする。このとき、工場における加工装置4等の新しい配置に対応した搬送路6となるように、搬送路6の構成を変更する必要がある。
【0123】
そして、搬送路6の構成が変更されたとき、記憶部(マップ情報記憶部)176に記憶された古いマップ情報が参照されて各自動搬送車10が制御されると、自動搬送車10が目的の通りに被加工物等の物品を搬送できない。さらに、開口部166への自動搬送車10の車輪86,88の脱落が生じることや、搬送路6からの自動搬送車10の落下が生じることがある。すなわち、搬送路6の構成が変更された際には、記憶部176に新しいマップ情報を登録する必要がある。
【0124】
例えば、自動搬送システム2や加工装置4等の管理者が、制御ユニット12の記憶部176に新しいマップ情報を登録することが考えられる。マップ情報は、例えば、この管理者等が制御ユニット12やその他の端末を利用して作成する。しかしながら、この場合、新しいマップ情報を作成するために搬送路6の各所の寸法を測定する必要があり、また、搬送路6の構築に使用された各路面パネル138の配置及び向き等を確認する必要があり、人的コストや時間的コストがかかる。
【0125】
その上、記憶部176に新たに登録したマップ情報に間違いがある場合、自動搬送車10が正常に動かなくなり工程が停止するだけでなく、自動搬送車10や加工装置4、被加工物等の物品に損傷が生じる場合がある。そして、再度搬送路6の各所の寸法等を測定してマップ情報を作り直す必要がある。
【0126】
そこで、本実施形態に係る自動搬送システム2では、搬送路6が新設される際や搬送路6の構成が変更された際に、自動搬送車10に搬送路6を走行させて探索させることで自動的にマップ情報を作成する。自動搬送車10は、搬送路6に設けられた目印150をセンサー122,124で検出しつつ該搬送路6を走行し、検出される目印150の種別や位置等の情報を生成する。そして、各目印150の位置(座標)等の情報に基づいてマップ情報を自動的に作成する。
【0127】
制御ユニット12の制御部172は、記憶部176に記憶されたプログラムに従って自動搬送車10に搬送路6の探索動作を実施させる探索制御部172aと、探索の結果に基づいて搬送路6のマップ情報を作成するマップ情報作成部172bと、を備える。自動搬送システム2の管理者は、制御ユニット12を操作してこのプログラムを実行させ、探索及びマップ情報の作成工程を開始させる。なお、探索制御部172a及びマップ情報作成部172bは、制御ユニット12に代えて自動搬送車10が備えてもよい。
【0128】
以下、本実施形態に係る自動搬送システム2において、自動的にマップ情報が作成される過程について詳述する。すなわち、マップ情報を作成するマップ情報作成方法の各ステップについて説明する。
図11は、マップ情報作成方法の各ステップの流れを説明するフローチャートである。
【0129】
まず、自動搬送車10を搬送路6上に配置する配置ステップS10が実施される。
図9は、配置ステップS10を模式的に示す平面図である。
図9では、説明の便宜のために搬送路6の一部の構成例として2つの並んだT字路パネル140を表示しており、搬送路6の他の構成については省略している。また、該構成例では、2つのT字路パネル140の向きを同一としており、第1の辺152aから第3の辺156aに向く方向をX軸方向とし、第4の辺158aから第2の辺154aに向く方向をY軸方向とする。
【0130】
配置ステップS10では、管理者等が搬送路6上に自動搬送車10を置く。このとき自動搬送車10が置かれる位置に特に制限はないが、自動搬送車10のセンサー122,124が最初の目印150を検出するまでの間に自動搬送車10が闇雲に移動する必要のないように、搬送路6に設けられた線状の目印150に重ねるように自動搬送車10を搬送路6上に置くことが好ましい。
【0131】
図9に示す例では、搬送路6を構成する2つのT字路パネル140のうち左側のT字路パネル140の交差点162に自動搬送車10の中心が合うように該T字路パネル140の上に自動搬送車10を載せる。このとき、自動搬送車10の前方向をY軸方向に合わせている。ただし、配置ステップS10はこれに限定されない。
【0132】
なお、搬送路6の構成が部分的に変更される場合等において、自動搬送車10は、搬送路6の変更の前後にわたり一つの路面パネル138(例えば、待機位置パネル146)上に載り続けてもよい。この場合、搬送路6の構成の変更が完了した時点で、新たな搬送路6における配置ステップS10が完了したといえる。すなわち、自動搬送車10を搬送路6上に配置するとは、自動搬送車10の移動を伴う場合に限定されず、自動搬送車10が搬送路6上に位置する状態であることを含む。
【0133】
次に、自動搬送車10が配置された位置に設けられた目印150をセンサー122,124に検出させ、該位置についての情報を取得する初動ステップS20を実施する。
図10(A)は、初動ステップS20を模式的に示す平面図である。初動ステップS20では、目印150に基づいて自動搬送車10の現在の位置についての情報を作成する。
【0134】
まず、センサー122,124を作動させる。このとき、該自動搬送車10が配置された位置に設けられた目印150がセンサー122,124により検出されない場合、各センサー122,124を作動させながら搬送路6上を走行し、最初の目印150を検出する。そして、最初の目印150が検出されたとき、自動搬送車10がその場で旋回し、周囲に設けられている目印150をセンサー122,124により検出する。
【0135】
ここで、
図5(A)乃至
図5(E)のそれぞれに示す5種類の路面パネル138により搬送路6が構成される場合、自動搬送車10が載っている路面パネル138の種別と、該路面パネル138の向きと、が判別されるとよい。これにより、自動搬送車10の現在の位置についての情報が得られる。
【0136】
例えば、
図10(A)に示す通り自動搬送車10がセンサー122,124を作動させつつ旋回すると、2つの直交する進路目印150aが検出される。この場合、該進路目印150aに沿った進路が存在することが検出される。また、進行方向を変更できる交差点162が存在することと、その位置と、が検出される。交差点162が存在する種別の路面パネル138は交差点パネル(T字路パネル140、十字路パネル142)であるため、この時点で自動搬送車10が交差点パネルに載っていることが判明する。
【0137】
そして、一方の進路目印150aの交差点162を挟んだ一方側と、他方の進路目印150aの交差点162を挟んだ一方側と、に設けられた2つの参照目印150bがセンサー122,124により検出される。交差点パネルのうち、この位置関係で参照目印150bが設けられているのはT字路パネル140であるため、この時点で自動搬送車10がT字路パネル140に載っていることが判明する。
【0138】
さらに、T字路パネル140の向きもこの時点で判別可能である。T字路パネル140では、交差点162から進路目印150aが伸びた4つの進路のうち、参照目印150bが設けられた進路に第1の辺152aまたは第4の辺158aが存在する。そして、交差点162を中心とした時計回り方向において、前方側の参照目印150bが設けられている進路に第1の辺152aが存在し、後方側の参照目印150bが設けられている進路に第4の辺158aが存在する。
【0139】
また、T字路パネル140では、交差点162から進路目印150aが伸びた4つの進路のうち、参照目印150bが設けられていない進路に第2の辺154aまたは第3の辺156aが存在する。そして、交差点162を中心とした時計回り方向において、参照目印150bが設けられていない前方側の進路に第3の辺156aが存在し、後方側の進路に第2の辺154aが存在する。すなわち、T字路パネル140の向きが特定される。
【0140】
なお、配置ステップS10において自動搬送車10が十字路パネル142に配置される場合、初動ステップS20では、2つの互いに直交する進路目印150aが検出される。そして、一方の進路目印150aに参照目印150bが設けられており、他方の進路目印150aに参照目印150bが設けられていないことが検出される。この特徴は十字路パネル142に固有の特徴であるため、自動搬送車10が十字路パネル142に載っていることが検出される。
【0141】
さらに、交差点162から伸びた4つの進路のうち、参照目印150bが設けられた進路に第3の辺156bが存在し、交差点162を中心とした時計回り方向において、第3の辺156bの前側に第4の辺158bが存在する。そして、さらにその前側に第1の辺152bが存在し、さらにその前側に第2の辺154bが存在する。すなわち、十字路パネル142の向きが特定される。
【0142】
このように、初動ステップS20では、自動搬送車10のセンサー122,124で搬送路6に設けられた目印150を検出することで、配置ステップS10で自動搬送車10が置かれた位置に関する情報を取得する。
【0143】
なお、自動搬送車10は、センサー122,124による目印150の検出状況を第1の送受信器134により制御ユニット12に逐一送信してもよい。そして、自動搬送車10が置かれた位置についての情報は、制御ユニット12の記憶部176に記憶されてもよい。
【0144】
初動ステップS20の後、搬送路6の未探索の領域の構成を特定するために、走行ステップS30を実施する。走行ステップS30では、配置ステップS10で自動搬送車10が位置する初期位置から該自動搬送車10を移動させ、搬送路6の未探索の領域を探索させる。ここで、初動ステップS20において該初期位置に交差点162が存在することが検出され該交差点162から延びる搬送路6の方向(進路)が2つ以上検出されている場合における自動搬送車10の進路の優先順位が予め設定されていてもよい。
【0145】
例えば、自動搬送車10の初期位置において最初の目印150がセンサー122,124で検出されたときに自動搬送車10が向いている方向に最も近い進路目印150aの延びた方向を基準の方向とする。そして、基準の方向を優先順位の最も高い方向とし、自動搬送車10を時計回りに旋回させるときに次に自動搬送車10が向く進路目印150aの延びた方向を次に優先順位の高い方向とする。同様に、時計回りに旋回する自動搬送車10が向く順番で進路の優先順位が決定されるとよい。
【0146】
すなわち、
図10(A)に示す例では、優先順位が最も高い基準の方向はY軸方向であり、X軸方向が次に優先順位の高い方向となる。探索制御部172aは、交差点162から延びる搬送路6の方向が2つ以上検出された場合、他の方向よりも優先順位が高い方向の進路に向けて自動搬送車10を走行させる。
【0147】
ここで、
図10(A)に示す例では、最も優先順が高いY軸方向にガード部160が設けられており、自動搬送車10の進路としては不適である。この進路の適否は、自動搬送車10が置かれた初期位置がT字路パネル140であることと、該T字路パネル140の向きと、が検出されることで判定される。この場合、次に優先順位の高いX軸方向が進路として選定される。この方向への自動搬送車10の進行には特に問題がない。
【0148】
走行ステップS30では、このように決定された進路に自動搬送車10を走行させる。走行ステップS30における自動搬送車10の走行距離は、後にマップ情報を作成するために記録される。走行中、自動搬送車10は、第1センサー122により目印150(進路目印150a)を検出することで進路からの逸脱を防止する。さらに、自動搬送車10は、搬送路6の次の領域に設けられた各種の目印150を検出できるように、第1センサー122及び第2センサー124を作動させる。
【0149】
図10(B)は、走行ステップS30を模式的に示す平面図である。
図10(B)に示す例では、自動搬送車10は、2番目のT字路パネル140に進行する。そして、2番目のT字路パネル140のY軸方向に沿った進路目印150aがセンサー122,124により検出されたとき、このT字路パネル140の交差点162の位置が検出される。
【0150】
次に、センサー122,124で検出された目印150に基づいて、自動搬送車10が走行する領域についての情報を取得する領域識別ステップS40を実施する。探索制御部172aは、この交差点162を中心として自動搬送車10を旋回させ、参照目印150bを検出させる。これにより、自動搬送車10が2番目のT字路パネル140に載っていることと、該T字路パネル140の向きと、が検出される。
【0151】
走行ステップS30では、探索制御部172aは、車輪86を回転させるモーターの回転数と、該車輪86の円周と、自動搬送車10の走行時間と、から該自動搬送車10の直線走行における走行距離を算出する。この走行距離に基づくと、2つのT字路パネル140の交差点162の距離を算出できる。ここで、車輪86の円周とは、車輪86を床面上で一回転だけ転がしたときの該車輪86の移動距離である。車輪86の円周は、周長とも呼ばれる。
【0152】
ここで、2つのT字路パネル140の間には、調整パネル148(
図5(E)参照)が設けられていてもよい。調整パネル148には、進路目印150a以外の目印が設けられていないため、調整パネル148の存在は直接的には検出されない。調整パネル148の有無は、2つのT字路パネル140の交差点162の距離に基づいて判定可能である。
【0153】
交差点162間の最低距離は、2つのT字路パネル140が隣接している場合における2つの交差点162間の距離である。そのため、走行ステップS30で検出される2つのT字路パネル140の交差点162の距離がこの最低距離と等しい場合、2つのT字路パネル140の間に調整パネル148が存在しないことが確認される。該距離がこの最低距離よりも大きい場合、これらの差に相当する長さの調整パネル148が2つのT字路パネル140の間に設けられていることが判別される。
【0154】
2番目のT字路パネル140の存在と、その位置及び向きと、が確認された後、上述の初動ステップS20と同様の手順により優先順位の高い進路が選択される。そして、自動搬送車10は、該進路に向けて進行する。なお、自動搬送車10の次の進路を決定する際には、自動搬送車10がまだ走行しておらず、かつ、他の方向よりも優先順位の高い進路が選択される。そして、探索制御部172aは、さらに次の進路に向けて自動搬送車10を走行させ、搬送路6の探索を続行する。
【0155】
ここで、走行ステップS30において自動搬送車10が
図5(B)に示す十字路パネル142に到達し、領域識別ステップS40において該自動搬送車10が走行する領域が十字路パネル142であることが識別される過程について説明する。
【0156】
自動搬送車10は、2つの進路目印150aの一方に沿って十字路パネル142に進入し、交差点162に到達する際にセンサー122,124により2つの進路目印150aの他方を検出する。これにより、交差点162の存在及び位置が認識される。ここで、交差点162が存在する種別の路面パネル138は交差点パネル(T字路パネル140、十字路パネル142)であるため、この時点で自動搬送車10が交差点パネルに載っていることが判明する。
【0157】
そして、探索制御部172aは、センサー122を作動させながら交差点162の周りに自動搬送車10を旋回させる。すると、一方の進路目印150aの交差点162を境とした一方側にだけ参照目印150bが形成されており、該進路目印150aの他方側及び他方の進路目印150aには、参照目印150bが設けられていないことが検出される。交差点パネルのうち、この態様で参照目印150bが設けられているのは十字路パネル142であるため、自動搬送車10が十字路パネル142に載っていることが判明する。
【0158】
次に、走行ステップS30において自動搬送車10が
図5(C)に示す開口部パネル144に到達し、領域識別ステップS40において該自動搬送車10が走行する領域が開口部パネル144であることが識別される過程について説明する。自動搬送車10は、第1の辺152c側から進路目印150aに沿って開口部パネル144に進入する。
【0159】
図8は、第1の辺152c側から開口部パネル144に進入した自動搬送車10の構成要素の位置関係を模式的に示す平面図である。自動搬送車10が開口部パネル144に進入すると、前側の第1センサー122aが開口部166の上方に到達する。このとき、自動搬送車10が走行している開口部パネル144の床面が第1センサー122aにより検出されなくなる。これにより開口部166の存在及び位置が検出される。
【0160】
搬送路6に使用できる路面パネル138のうち開口部166が設けられているのは開口部パネル144のみであるため、この時点で自動搬送車10が走行している路面パネル138が開口部パネル144であることが識別される。開口部パネル144は行き止まりパネルの一種であり第1の辺152c以外の辺では自動搬送車10が進退できないため、探索制御部172aは、自動搬送車10の前進を止め自動搬送車10を後退させる。
【0161】
なお、本実施形態に係る自動搬送システム2において物品を搬送する自動搬送車10は、開口部パネル144において、前側の第1センサー122aが停止目印150cを検出するまで前進する。これに対して、探索制御部172aが自動搬送車10を制御して搬送路6を探索する際には、自動搬送車10が走行している路面パネル138が開口部パネル144であることが検出されたとき、自動搬送車10をさらに前進させる必要はない。
【0162】
すなわち、前側の第1センサー122aにより開口部166が検出されたときに自動搬送車10はそれ以上前進しなくてもよく、その場から後退してもよい。これにより、自動搬送車10の不要な移動が削減されるため、搬送路マップが効率的に作成される。
【0163】
次に、走行ステップS30において自動搬送車10が
図5(D)に示す待機位置パネル146に到達し、領域識別ステップS40において該自動搬送車10が走行する領域が待機位置パネル146であることが識別される過程について説明する。自動搬送車10は、進路目印150aの一方に沿って第3の辺156d側から待機位置パネル146に進入する。
【0164】
自動搬送車10が待機位置パネル146に進入すると、自動搬送車10の前側の第1センサー122aがまず参照目印150bを検出し、その後、開口部164を検出する。待機位置パネル146では、開口部164の後方側には停止目印150c以外の目印150が形成されておらず、第2センサー124が検出できる目印150も設けられていない。
【0165】
目印150がこの態様で設けられた路面パネル138は、待機位置パネル146以外にはない。そのため、探索制御部172aは、自動搬送車10が走行している路面パネル138が待機位置パネル146であることを判別できる。このとき、待機位置パネル146の位置及び向きも判別される。そして、待機位置パネル146は行き止まりパネルの一種であるため、自動搬送車10が走行している路面パネル138が待機位置パネル146であることが判別したとき、自動搬送車10はそれ以上前進する必要がない。
【0166】
なお、
図5(E)に示す調整パネル148には、センサー122,124が検出できる目印150が設けられていない。そのため、走行ステップS30において自動搬送車10が調整パネル148を走行しても、自動搬送車10が走行する領域が調整パネル148であることが直接的に検出されることはない。しかしながら、他の路面パネル138の配置が確認されることで、各路面パネル138の間に位置する調整パネル148が間接的に検出される。
【0167】
領域識別ステップS40について小括する。領域識別ステップS40では、目印150により搬送路6の交差点162が検出されたとき、自動搬送車10の走行距離に基づいて該交差点162の位置を検出する。そして、センサー122,124で目印150を検出することで交差点162から延びている搬送路6の方向を検出する。また、領域識別ステップS40では、目印150により搬送路6の行き止まりが検出されたとき、自動搬送車10の走行距離に基づいて該行き止まりの位置を検出する。
【0168】
なお、搬送路6には、直線状の走路、交差点、及び行き止まり以外の要素が含まれてもよい。例えば、搬送路6には、カーブや曲がり角等が含まれてもよい。そして、領域識別ステップS40では、目印150により搬送路6の曲がり角等が検出されてもよく、自動搬送車10の該走行距離に基づいてこの曲がり角等の位置が検出されてもよい。
【0169】
このように、探索制御部172aは、自動搬送車10のセンサー122,124に目印150を検出させながら搬送路6上を自動搬送車10に走行させる。そして、探索制御部172aは、搬送路6の交差点162が検出されたときに自動搬送車10の走行距離に基づいて該交差点162の位置及び交差点162から延びる搬送路6の方向(進路)を検出する。また、搬送路6の行き止まりが検出されたとき、自動搬送車10の走行距離に基づいて該行き止まりの位置を検出する。
【0170】
探索制御部172aは、自動搬送車10を制御して該搬送路6を構成する各路面パネル138の種別及びその向きを次々に明らかにすることにより該搬送路6の未探索領域を次々に探索する。搬送路6に未探索の領域が残っている場合(S50)、走行ステップS30と、領域識別ステップS40と、が繰り返される。
【0171】
そして、搬送路6のすべての進路が確認され搬送路6に未探索の領域が残っていない場合(S50)、搬送路6の探索を終了する。そして、探索の結果に基づいて搬送路6のマップ情報を作成し、マップ情報を記憶部(マップ情報記憶部)176に記憶させるマップ情報記録ステップS60を実施する。マップ情報記録ステップS60では、交差点162の位置と、行き止まりの位置と、に基づいて搬送路6のマップ情報を作成する。
【0172】
本実施形態に係る自動搬送システム2の制御ユニット12の制御部172は、探索制御部172aにより実施された搬送路6の探索動作により得られた情報に基づいてマップ情報を作成するマップ情報作成部172bを備える。マップ情報記録ステップS60は、主にマップ情報作成部172bの機能により実施される。マップ情報作成部172bは、交差点162の位置と、行き止まりの位置と、に基づいて搬送路6のマップ情報を作成する。
【0173】
マップ情報記録ステップS60で作成されるマップ情報は、例えば、
図6に示されるような平面状の図面でもよい。またマップ情報は、例えば、搬送路6を構成する各路面パネル138の種別と、各路面パネル138の位置及び向きと、を含む情報でもよい。ただし、マップ情報作成部172bが作成するマップ情報はこれに限定されない。
【0174】
自動搬送車10が物品を搬送するときに搬送路6上の道順を制御部(搬送制御部)172が決定する際に必要となる情報以外の情報は、マップ情報作成部172bが作成するマップ情報から省略されてもよい。
【0175】
例えば、マップ情報は、搬送路6に含まれる各交差点162の位置を表す座標と、各行き止まりの位置を表す座標と、等により構成されてもよく、各路面パネル138の配置に関する情報が省略されてもよい。マップ情報作成部172bが作成したマップ情報は、制御ユニット12の記憶部(マップ情報記憶部)176に記憶される。
【0176】
以上に説明する通り、本実施形態に係る自動搬送システム2及びマップ情報作成方法によると、自動搬送車10に搬送路6を探索させることで自動的にマップ情報を作成でき、該マップ情報を記憶部(マップ情報記憶部)176に記憶できる。そのため、搬送路6の構成が変更されたとき等において、自動搬送システム2の管理者等がマップ情報を作成する必要がない。そして、マップ情報が自動的に作成されるため、誤ったマップ情報が記憶部176に登録されることもない。
【0177】
なお、上記の実施形態では、探索制御部172a及びマップ情報作成部172bが制御ユニット12の制御部172に設けられる場合を例に本発明の一態様について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、探索制御部及びマップ情報作成部の機能は、自動搬送車10の制御部130により実現されてもよい。
【0178】
この場合、制御ユニット12が第2の送受信器174から自動搬送車10の第1の送受信器134に搬送路6の探索動作を実施する指令を含む信号を送信する。そして、第1の送受信器134で該信号を受信した自動搬送車10では、該探索制御部が自動搬送車10に搬送路6を走行させ、探索動作を実施する。
【0179】
すなわち、搬送路6に設けられた各目印150を自動搬送車10の各センサー122,124で検出することで搬送路6の構成を明らかにする。そして、マップ情報作成部は、得られた情報から搬送路6のマップ情報を作成する。そして、自動搬送車10の制御部130は、第1の送受信器134から制御ユニット12の第2の送受信器174に作成されたマップ情報が格納された信号を送信する。そして、第2の送受信器174で該信号を受信した制御ユニット12では、記憶部176にマップ情報を記憶させる。
【0180】
この場合、自動搬送車10の第1の送受信器134と、制御ユニット12の第2の送受信器174と、の間の通信の回数を低減できるため、通信エラーに起因するマップ情報の作成の失敗が生じにくくなる。
【0181】
また、上記の実施形態では、搬送路6が複数の路面パネル138により構成され、各路面パネル138の配置と向きが検出されることでマップ情報が作成される場合について主に説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、搬送路6は、路面パネル138により構成されていなくてもよい。
【0182】
この場合においても搬送路6に設けられた目印150を自動搬送車10のセンサー122,124で検出することによりマップ情報を作成できる。そして、マップ情報は、各交差点及び行き止まり等の位置(座標)及び各交差点から延びる搬送路6の方向等により構成される。
【0183】
その他、上述した実施形態や変形例等にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0184】
2 自動搬送システム
4 加工装置
6 搬送路
8 ローダー・アンローダー
10,10a,10b 自動搬送車
10c 外装カバー
12 制御ユニット
82 フレーム
84 車軸
86,88 車輪
90 駆動ユニット
92 モーター
92a 回転軸
94 プーリー
96 バッテリー
100 端子
102 荷台
102a収容部
102b開口
104 格納領域
106,108 ガイドレール
110 昇降ユニット
112 吊り下げ部材
114 駆動機構
120 カバー
122,122a,122b,124,124a,124b,126 センサー
128 支持台
130 制御部
132a 受信器
132b き0送信器
134 第1の送受信器
138 路面パネル
140 T字路パネル
142 十字路パネル
144 開口部パネル
146 待機位置パネル
148 調整パネル
150,150a,150b,150c 目印
152a,152b,152c,152d,152e 第1の辺
154a,154b,154c,154d,154e 第2の辺
156a,156b,156c,156d,156e 第3の辺
158a,158b,158c,158d,158e 第4の辺
160 ガード部
162 交差点
164,166 開口部
168 端子
170 固定ネジ
172 制御部
172a 探索制御部
172b マップ情報作成部
174 第2の送受信器
176 記憶部