(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130245
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20220830BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220830BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220830BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220830BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01L29/78 613A
H01L29/78 618B
H01L29/78 618C
H01L29/78 626C
H01L29/28 250H
H01L29/28 100A
H01L29/28 220C
H01L29/78 618A
H01L21/368 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029329
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 純一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 峻一郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 翔平
(72)【発明者】
【氏名】韋 瀟竹
(72)【発明者】
【氏名】池田 大次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】赤井 泰之
【テーマコード(参考)】
5F053
5F110
【Fターム(参考)】
5F053AA03
5F053AA06
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5F110NN27
5F110NN77
5F110NN78
5F110QQ05
5F110QQ06
5F110QQ14
(57)【要約】
【課題】安価に製造することができ、長期安定性に優れ、p型トランジスタとn型トランジスタの動作のバランスが良く、高速で動作する無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスを提供する。
【解決手段】基板、p型有機半導体単結晶層、前記基板と前記単結晶層との間のn型アモルファス金属酸化物無機半導体層、及び前記単結晶層と前記無機半導体層との間の保護層を含み、前記単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、前記単結晶層の少なくとも一部が前記無機半導体層に重なるように、または前記単結晶層が前記無機半導体層と重ならないように、前記単結晶層が配置されており、前記単結晶層と前記無機半導体層との間の距離が1mm以下であり、前記無機半導体層が、前記基板側よりも前記単結晶層側の酸素欠陥量が多い、厚み方向の酸素欠陥量の分布を有する、無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
p型有機半導体単結晶層、
前記基板と前記p型有機半導体単結晶層との間のn型アモルファス金属酸化物無機半導体層、及び
前記p型有機半導体単結晶層と前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層との間の保護層
を含み、
前記p型有機半導体単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、前記p型有機半導体単結晶層の少なくとも一部が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層に重なるように、または前記p型有機半導体単結晶層が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層と重ならないように、前記p型有機半導体単結晶層が配置されており、
前記p型有機半導体単結晶層と前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層との間の距離が1mm以下であり、
前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層が、前記基板側よりも前記p型有機半導体単結晶層側の酸素欠陥量が多い、厚み方向の酸素欠陥量の分布を有する、
無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
【請求項2】
前記p型有機半導体単結晶層の平均厚みが2~100nmである、請求項1に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
【請求項3】
前記p型有機半導体単結晶層は、0.0025mm2以上のシングルドメインを有する、請求項1または2に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
【請求項4】
前記基板がフレキシブル基板である、請求項1~3のいずれか一項に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
【請求項5】
前記保護層が、第1の有機膜及び第2の有機膜を含み、
前記第1の有機膜が、前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層側に位置し、前記第2の有機膜が、前記p型有機半導体単結晶層側に位置し、
前記第1の有機膜が有機溶媒可溶性ポリマーで構成され、前記第2の有機膜が真空蒸着膜である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
【請求項6】
前記第1の有機膜が10nm以上の厚みを有し、前記第2の有機膜が100~300nmの厚みを有する、請求項5に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
【請求項7】
前記第1の有機膜がPMMA膜であり、前記第2の有機膜がパリレン膜である、請求項5または6に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
【請求項8】
基板を用意すること、
前記基板上にn型構造を形成すること、
前記n型構造上に保護層を形成すること、及び
前記保護層上にp型構造を形成すること
を含む、無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法であって、
前記n型構造を形成することが、
ゾルゲル法を用いて、金属塩を含むn型アモルファス金属酸化物無機半導体の前駆体溶液を調製すること、
前記基板上に、前記前駆体溶液を塗布して前駆体膜を形成すること、及び
前記前駆体膜を350~400℃で熱処理してn型アモルファス金属酸化物無機半導体層を形成すること
を含み、
前記p型構造を形成することが、塗布法を用いてp型有機半導体単結晶層を形成すること
を含み、
前記p型有機半導体単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、前記p型有機半導体単結晶層の少なくとも一部が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層に重なるように、または前記p型有機半導体単結晶層が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層と重ならないように、前記p型有機半導体単結晶層が配置されており、
前記p型有機半導体単結晶層と前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層との間の距離が1mm以下であり、
前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層が、前記基板側よりも前記p型有機半導体単結晶層側の酸素欠陥量が多い、厚み方向の酸素欠陥量の分布を有する、
無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記前駆体溶液を塗布して前記前駆体膜を形成することが、スピンコート法を用いて行われる、請求項8に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記保護層を形成することが、
ポリマーが溶解した有機溶媒を調製すること、
前記n型構造上に、前記ポリマーが溶解した有機溶媒を塗布して第1の有機膜を形成すること、及び
前記第1の有機膜上に、化学気相成長法を用いて真空蒸着膜である第2の有機膜を形成すること
を含む、請求項8または9に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記p型有機半導体単結晶層を形成することが、
前記塗布法を用いて、親水性且つ非水溶性の第1の基板上に、p型有機半導体単結晶膜を形成すること、及び
前記第1の基板と前記p型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用して、前記p型有機半導体単結晶膜を前記第1の基板から分離させて、第2の基板上に前記p型有機半導体単結晶層を配置すること
を含み、
前記第2の基板は、前記n型構造のゲート絶縁層及びS/D電極のうちの少なくとも1つ、前記保護層、またはそれらの組み合わせである、
請求項8~10のいずれか一項に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記p型有機半導体単結晶層を形成することが、
前記塗布法を用いて、親水性且つ非水溶性の第3の基板上に、p型有機半導体単結晶膜を形成すること、
前記p型有機半導体単結晶膜を、凸部及び凹部を有するスタンプの前記凸部に押し付けること、
前記第3の基板と前記p型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用して、前記凸部に前記p型有機半導体単結晶膜を転写すること、及び
前記凸部に転写された前記p型有機半導体単結晶膜を第4の基板に押し付けて、前記第4の基板に前記p型有機半導体単結晶膜を転写してパターニングされた前記p型有機半導体単結晶層を得ること
を含み、
前記第4の基板は、前記n型構造のゲート絶縁層及びS/D電極のうちの少なくとも1つ、前記保護層、またはそれらの組み合わせである、
請求項8~10のいずれか一項に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスはIoT(Internet of Things)社会における電子デバイスの基本素子として期待されている。特に、p型トランジスタとn型トランジスタとから構成される相補型金属酸化膜半導体(CMOS)が、現在の集積回路の基盤技術となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Takeda, Y. et al. Appl. Sci. 2018, 8, 1331
【非特許文献2】K. Hong, et al. Adv. Mater. 2014, 26, 7032
【非特許文献3】M. Uno, et al. Adv. Electron. Mater. 2015, 1, 1500178
【非特許文献4】K.J. Baeg. et al. Org. Electron. 2013, 14, 1407
【非特許文献5】S. H. Kim, et al, IEEE Electron Device Lett. 2013, 34, 307
【非特許文献6】W. Smaal, et al, Org. Electron. 2012, 13, 1686
【非特許文献7】L. Herlogsson, et al. Adv. Mater. 2011, 23, 4684
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、依然として、大規模な製造が可能な安価なCMOSが求められている。また、長期安定性に優れ、p型トランジスタとn型トランジスタの動作のバランスが良く高速で動作するCMOSが求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安価に製造することができ、長期安定性に優れ、p型トランジスタとn型トランジスタの動作のバランスが良く、高速で動作する相補型半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)基板、
p型有機半導体単結晶層、
前記基板と前記p型有機半導体単結晶層との間のn型アモルファス金属酸化物無機半導体層、及び
前記p型有機半導体単結晶層と前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層との間の保護層
を含み、
前記p型有機半導体単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、前記p型有機半導体単結晶層の少なくとも一部が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層に重なるように、または前記p型有機半導体単結晶層が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層と重ならないように、前記p型有機半導体単結晶層が配置されており、
前記p型有機半導体単結晶層と前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層との間の距離が1mm以下であり、
前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層が、前記基板側よりも前記p型有機半導体単結晶層側の酸素欠陥量が多い、厚み方向の酸素欠陥量の分布を有する、
無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
(2)前記p型有機半導体単結晶層の平均厚みが2~100nmである、上記(1)に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
(3)前記p型有機半導体単結晶膜は、0.0025mm2以上のシングルドメインを有する、上記(1)または(2)に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
(4)前記基板がフレキシブル基板である、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
(5)前記保護層が、第1の有機膜及び第2の有機膜を含み、
前記第1の有機膜が、前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層側に位置し、前記第2の有機膜が、前記p型有機半導体単結晶層側に位置し、
前記第1の有機膜が有機溶媒可溶性ポリマーで構成され、前記第2の有機膜が真空蒸着膜である、
上記(1)~(4)のいずれかに記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
(6)前記第1の有機膜が10nm以上の厚みを有し、前記第2の有機膜が100~300nmの厚みを有する、上記(5)に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
(7)第1の有機膜がPMMA膜であり、第2の有機膜がパリレン膜である、上記(5)または(6)に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス。
(8)基板を用意すること、
前記基板上にn型構造を形成すること、
前記n型構造上に保護層を形成すること、及び
前記保護層上にp型構造を形成すること
を含む、無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法であって、
前記n型構造を形成することが、
ゾルゲル法を用いて、金属塩を含むn型アモルファス金属酸化物無機半導体の前駆体溶液を調製すること、
前記基板上に、前記前駆体溶液を塗布して前駆体膜を形成すること、及び
前記前駆体膜を350~400℃で熱処理してn型アモルファス金属酸化物無機半導体層を形成すること
を含み、
前記p型構造を形成することが、塗布法を用いてp型有機半導体単結晶層を形成すること
を含み、
前記p型有機半導体単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、前記p型有機半導体単結晶層の少なくとも一部が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層に重なるように、または前記p型有機半導体単結晶層が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層と重ならないように、前記p型有機半導体単結晶層が配置されており、
前記p型有機半導体単結晶層と前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層との間の距離が1mm以下であり、
前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層が、前記基板側よりも前記p型有機半導体単結晶層側の酸素欠陥量が多い、厚み方向の酸素欠陥量の分布を有する、
無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
(9)前記前駆体溶液を塗布して前記前駆体膜を形成することが、スピンコート法を用いて行われる、上記(8)に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
(10)前記保護層を形成することが、
ポリマーが溶解した有機溶媒を調製すること、
前記n型構造上に、前記ポリマーが溶解した有機溶媒を塗布して第1の有機膜を形成すること、及び
前記第1の有機膜上に、化学気相成長法を用いて真空蒸着膜である第2の有機膜を形成すること
を含む、上記(8)または(9)に記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
(11)前記p型有機半導体単結晶層を形成することが、
前記塗布法を用いて、親水性且つ非水溶性の第1の基板上に、p型有機半導体単結晶膜を形成すること、及び
前記第1の基板と前記p型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用して、前記p型有機半導体単結晶膜を前記第1の基板から分離させて、第2の基板上にp型有機半導体単結晶層を配置すること
を含み、
前記第2の基板は、前記n型構造のゲート絶縁層及びS/D電極のうちの少なくとも1つ、保護層、またはそれらの組み合わせである、
上記(8)~(10)のいずれかに記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
(12)前記p型有機半導体単結晶層を形成することが、
前記塗布法を用いて、親水性且つ非水溶性の第3の基板上に、p型有機半導体単結晶膜を形成すること、
前記p型有機半導体単結晶膜を、凸部及び凹部を有するスタンプの前記凸部に押し付けること、
前記第3の基板と前記p型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用して、前記凸部に前記p型有機半導体単結晶膜を転写すること、及び
前記凸部に転写された前記p型有機半導体単結晶膜を第4の基板に押し付けて、前記第4の基板に前記p型有機半導体単結晶膜を転写してパターニングされたp型有機半導体単結晶層を得ること
を含み、
前記第4の基板は、前記n型構造のゲート絶縁層及びS/D電極のうちの少なくとも1つ、保護層、またはそれらの組み合わせである、
上記(8)~(10)のいずれかに記載の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安価に製造することができ、長期安定性に優れ、p型トランジスタとn型トランジスタの動作のバランスが良く、高速で動作する相補型半導体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ボトムゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図2】
図2は、ボトムゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図3】
図3は、トップゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図4】
図4は、トップゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図5】
図5は、ボトムゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図6】
図6は、ボトムゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図7】
図7は、トップゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図8】
図8は、トップゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図9】
図9は、ボトムゲート・トップコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図10】
図10は、ボトムゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図11】
図11は、トップゲート・トップコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図12】
図12は、トップゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図13】
図13は、n型構造のトップゲート電極とp型構造のボトムゲート電極とを共通にし、且つ保護層とp型ゲート絶縁層とを共通にする相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図14】
図14は、ボトムゲート・トップコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図15】
図15は、ボトムゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図16】
図16は、トップゲート・トップコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図17】
図17は、トップゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図18】
図18は、ボトムゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図19】
図19は、ボトムゲート・トップコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図20】
図20は、ボトムゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図21】
図21は、ボトムゲート・トップコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図22】
図22は、保護層とp型ゲート絶縁層とを共通にする相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図23】
図23は、ボトムゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図24】
図24は、ボトムゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図25】
図25は、ボトムゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図26】
図26は、ボトムゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図27】
図27は、トップゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図28】
図28は、トップゲート・トップコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図29】
図29は、トップゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図30】
図30は、トップゲート・トップコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有する相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図31】
図31は、保護層とp型構造のゲート絶縁層とを共通にする相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図32】
図32は、トップゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造
【
図33】
図33は、トップゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造
【
図34】
図34は、トップゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造
【
図35】
図35は、トップゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造
【
図36】
図36は、ゾルゲル法を用いたアモルファス金属酸化物無機半導体(AOS)の前駆体溶液を調製する方法を表す模式図である。
【
図37】
図37は、スピンコート法を用いてAOS層を形成する方法を表す模式図である。
【
図38】
図38は、光ラジカル開始剤と炭酸ナトリウム現像剤を用いたパターニング操作を表す模式図である。
【
図39】
図39は、AOS層上に蒸着によりソース/ドレイン電極(S/D電極)を形成する方法を表す模式図である。
【
図40】
図40は、S/D電極を形成したAOS層を含むn型TFTの一例の模式図である。
【
図41】
図41は、作製したハイブリッド相補型半導体デバイスの断面模式図である。
【
図42】
図42は、作製したハイブリッド相補型半導体デバイスを模式的に表した斜視図である。
【
図43】
図43は、実施例で得られた有機/無機ハイブリッド相補型半導体デバイスの外観写真である。
【
図44】
図44は、ゲート電圧を0V~-10Vで-2Vのステップ及び0V~10Vで2Vのステップで変化させたときの、ドレイン電圧に対するドレイン電流の出力特性をまとめたグラフである。
【
図45】
図45は、p型有機TFTのゲート電圧に対するドレイン電流の伝達特性、及びn型無機TFTのゲート電圧に対するドレイン電流の伝達特性を表すグラフである。
【
図46】
図46は、有機無機ハイブリッド相補型半導体インバーター単素子の回路図である。
【
図47】
図47は、インプット電圧を0~10Vで変化させたときのアウトプット電圧の出力特性である。
【
図48】
図48は、スイッチング時の電圧の増幅作用の原因を評価したグラフである。
【
図49】
図49は、インプット電圧とサプライ電流との関係を表すグラフである。
【
図51】
図51は、ハイブリッド相補型半導体デバイスを作製直後に測定した初期特性及び大気中に5ヶ月放置後の特性を評価したグラフである。
【
図52】
図52は、レーザーリフトオフ(LLO)法を用いてガラスサポーターから剥離したポリイミド基板上に形成したハイブリッド相補型半導体デバイスの外観写真である。
【
図53】
図53は、ポリイミド基板上に形成したハイブリッド相補型半導体デバイスを湾曲させた状態の模式図である。
【
図54】
図54は、LLO処理前後(剥離前後)の有機TFT及び無機TFTで構成されるハイブリッド相補型半導体デバイスの電圧伝達曲線(VTC)特性を表すグラフである。
【
図55】
図55は、ガラス円筒の表面にポリイミド基板上に形成したハイブリッド相補型半導体デバイスを巻きつけた外観写真、及び曲率が異なる円筒のそれぞれの表面に有機TFT及び無機TFTで構成されるハイブリッド相補型半導体デバイスを配置した場合の出力特性を表すグラフである。
【
図56】
図56は、リングオシレータの外観写真、回路図、及び四角で囲んだ部分を拡大した外観写真である。
【
図57】
図57は、V
DDが10Vのときの単一のハイブリッド相補型半導体デバイスのインバーター特性を評価したグラフである。
【
図58】
図58は、V
DDが10Vのときのリングオシレータの出力電圧を測定したグラフである。
【
図59】
図59は、O1sの角度分解XPSの測定結果である。
【
図60】
図60は、O1s全体に対するM-O-M(金属酸化物になっている状態)の割合(η
M-O-M)の角度依存性を表すグラフである。
【
図61】
図61は、前駆体溶液濃度と形成したAOS層の厚みの関係を表すグラフである。
【
図62】
図62は、AOS層の厚みを変えたTFTのゲート電圧に対するドレイン電流の関係を表すグラフである。
【
図63】
図63は、350℃、370℃、及び390℃の異なる温度で焼結して作製したIZO薄膜を用いて作製したトランジスタ特性を示すグラフである。
【
図64】
図64は、各焼結温度で得られたIZO薄膜のXRD測定結果である。
【
図65】
図65は、各焼結温度で得られたIZO薄膜の全反射FT-IR測定結果である。
【
図66】
図66は、角度分解XPSの測定方法の模式図である。
【
図67】
図67は、AOS膜の厚みによる酸素欠損状態の分布を表す断面模式図である。
【
図68】
図68は、O1s全体に対する各結合種の割合の、AOS膜の基板から最表面に向かう厚み依存性を表すグラフである。
【
図69】
図69は、熱処理前のIZO薄膜の原子間力顕微鏡(AFM)像及びX線反射率法の測定結果である。
【
図70】
図70は、熱処理後のIZO薄膜のAFM像及びX線反射率法の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、基板、p型有機半導体単結晶層、前記基板と前記p型有機半導体単結晶層との間のn型アモルファス金属酸化物無機半導体層、及び前記p型有機半導体単結晶層と前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層との間の保護層を含み、前記p型有機半導体単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、前記p型有機半導体単結晶層の少なくとも一部が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層に重なるように、または前記p型有機半導体単結晶層が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層と重ならないように、前記p型有機半導体単結晶層が配置されており、前記p型有機半導体単結晶層と前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層との間の距離が1mm以下であり、前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層が、前記基板側よりも前記p型有機半導体単結晶層側の酸素欠陥量が多い、厚み方向の酸素欠陥量の分布を有する、無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスを対象とする。
【0010】
本開示の無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイス(以下、相補型半導体デバイスともいう)は、溶液プロセスを用いて大気下で成膜されたアモルファス金属酸化物無機半導体層(以下、AOS層ともいう)及び有機半導体単結晶層で構成される。そのため、本開示の相補型半導体デバイスの製造には、ドライプロセスで用いられる高真空チャンバー等の特別な装置が不要であり、製造コストを従来よりも低減することができる。特に、大面積化を図る場合に、高真空チャンバー等の特別な装置の大型化が不要であり、ドライプロセスに対してコスト低減効果がさらに大きくなる。
【0011】
本開示の相補型半導体デバイスは、長期安定性にも優れており、大気中に5ヶ月静置前後で、実質的に同じ特性を示すことができる。
【0012】
p型トランジスタが有機半導体単結晶で構成され、n型トランジスタはAOSで構成されるため、p型トランジスタとn型トランジスタの動作のバランスが良く、本開示の相補型半導体デバイスは高速で動作することができる。
【0013】
AOS層は、溶液プロセスで形成されるため、AOS層の表面における酸素の欠損が生じ、
図67に模式的に表すように、AOS層の厚み方向(主表面に垂直方向)に酸素欠陥量の分布を有する。すなわち、AOS層の基板側と表面側とで酸素欠損の状態が異なる。相補型半導体デバイス中では、AOS層は、有機半導体単結晶層側の酸素欠陥量が多い厚み方向の酸素欠陥量の分布を有する。
【0014】
そのため、溶液法で形成したAOS層は、好ましくは4~7nm、より好ましくは5~6nmの膜厚のときに特に良好に動作する。表面の酸素欠損を活用してデバイスの性能を最大化させている。スパッタ等のドライプロセスで形成したAOS膜は、このような酸素欠損状態の分布を有しない。AOS層の膜厚は、前駆体溶液中の金属イオン濃度を変えること等により調整することができる。
【0015】
AOS層の厚み方向の酸素欠陥量の分布は、角度分解X線光電子分光法(XPS)で、O1s全体に対するM-O-M(金属酸化物になっている状態)の割合(ηM-O-M)の角度依存性を測定することで、評価することができる。厚み方向に酸素欠陥量の分布を有するAOS層は、AOS層の最表面に近いほどM-O-M(M:InまたはZn)結合が少なくなる。
【0016】
角度分解XPSとは、
図66に示すように、測定試料の表面に垂直方向を基準(0°)としたXPSの検出器(アナライザ)に対する角度(傾斜角θ)を変えることによって、下記式1及び式2:
【数1】
(式中、I
0は入射電子強度、I
(d)は表面からの深さdにおける実効強度、λは固体中の電子の非弾性平均自由行程(今回の測定条件では約2.8nmと推定)、3λは脱出深さ(I
(d)~I
0×5%)である)
【数2】
(式中、dは表面からの深さ、d
infは検出深さ(情報深さ)、θ
subは基板の傾斜角)で表される測定対象膜の表面から所定の深さ(情報深さd
inf)までの範囲の化学種を検出する方法である。傾斜角θは0°~90°未満、好ましくは0°~70°の範囲で設定可能である。
【0017】
AOS層は、内部のηM-O-Mに対する最表面のηM-O-Mの比率が、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上小さい。
【0018】
AOS層は、好ましくは0.0025mm2以上、より好ましくは0.005mm2以上、さらに好ましくは0.5mm2以上、さらにより好ましくは2.0mm2以上の面積を有する。
【0019】
AOS層は、好ましくは0.5cm2/V・s以上、より好ましくは3.0cm2/V・s以上、さらに好ましくは5.0cm2/V・s以上、さらにより好ましくは7.5cm2/V・s以上、さらにより好ましくは10cm2/V・s以上の移動度を示す。AOS層の移動度は、有機電界効果トランジスタの測定結果から算出することができる。
【0020】
AOS層を構成する無機半導体の種類については特に制限は無いが、例えば、ZnO、In2O3、In-Zn-O(IZO)、In-Ga-Zn-O(IGZO)等を用いることができる。
【0021】
AOS層は、薄膜X線回折により、アモルファスであるかどうかを確認することができる。
【0022】
有機半導体単結晶層の平均膜厚は、好ましくは2~100nmであり、より好ましくは4~20nmである。有機半導体単結晶層の平均膜厚の上限は、18nm以下、16nm以下、14nm以下、12nm以下、10nm以下、または8nm以下でもよい。有機半導体単結晶層の平均膜厚が前記範囲にあることにより、良好なデバイス特性を得ることができる。有機半導体単結晶層の平均膜厚の測定は、触針式表面形状測定器または原子間力顕微鏡を用いて行うことができる。
【0023】
有機半導体単結晶層は厚み方向に、好ましくは1分子層~50分子層、より好ましくは1分子層~10分子層、さらに好ましくは1分子層~5分子層、さらにより好ましくは1分子層~4分子層、さらにより好ましくは1分子層~3分子層、さらにより好ましくは1分子層~2分子層を有する。有機半導体単結晶層は、1分子層を有することが最も好ましいが、厚み方向に2分子層以上を有してもよい。有機半導体単結晶層の分子層数は原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0024】
有機半導体単結晶層の1分子層の厚みは、好ましくは2~6nm、より好ましくは2~4nmである。有機半導体単結晶層の1分子層の厚みは単結晶X線構造解析と原子間力顕微鏡観察と組み合わせることで測定することができる。
【0025】
有機半導体単結晶層は、シングルドメインまたはマルチドメインからなり、好ましくはシングルドメインからなる。有機半導体単結晶層のドメインは、単結晶X線回折で測定することができる。有機半導体単結晶層は、好ましくは0.0025mm2以上、より好ましくは0.005mm2以上、さらに好ましくは0.5mm2以上、さらにより好ましくは2.0mm2以上の連続面積のシングルドメインを有する。有機半導体単結晶層のシングルドメインの面積は、AOSの上述した好ましい面積と同じでもよい。有機半導体単結晶層の面積は、上記シングルドメインの面積と同じでもよい。
【0026】
当然理解されるべきことであるが、本開示の相補型半導体デバイスにおける有機半導体単結晶層には、上記好ましい連続面積のシングルドメインを有する有機半導体単結晶層が分離されたものが組み込まれていてもよい。例えば、上記好ましい連続面積のシングルドメインを有する有機半導体単結晶層が、複数片の有機半導体単結晶層に分離されて有機半導体デバイスに組み込まれたものでもよく、及び/または上記好ましい連続面積のシングルドメインを有する有機半導体単結晶層の不要な部分がフォトリソグラフィ等によりエッチングされ、複数片の有機半導体単結晶層に分離されて相補型半導体デバイスに組み込まれたものでもよい。相補型半導体デバイス内で各有機半導体単結晶層が分離されていることで、他の素子と電気的に孤立させることができる。分離された各有機半導体単結晶層が、結晶軸の方向が揃った単結晶膜から得られていることは、単結晶X線回折、電子線回折で測定することや偏光顕微鏡での観察によって確認できる。
【0027】
有機半導体単結晶層は、好ましくは0.5cm2/V・s以上、より好ましくは3.0cm2/V・s以上、さらに好ましくは5.0cm2/V・s以上、さらにより好ましくは7.5cm2/V・s以上、さらにより好ましくは10cm2/V・s以上の移動度を示す。有機半導体単結晶層の移動度は、有機電界効果トランジスタの測定結果から算出することができる。
【0028】
有機半導体単結晶層を構成する有機半導体の種類については特に制限は無いが、例えば、4環以上の多環芳香族化合物や、1つまたは複数の不飽和の五員複素環式化合物と複数のベンゼン環とによる4環以上の多環化合物を用いることができる。
【0029】
また、有機半導体単結晶層を構成する有機半導体は、自己凝縮機能の高い材料であることが好ましく、例えば、高移動度を示す次式(1)のp型有機半導体Cn-DNBDT-NW等が挙げられる。
【0030】
【化1】
式(1)において、nは1~14であることができる。自己凝縮機能とは、分子が溶媒から析出する際に、自発的に凝集して、結晶化しやすい傾向を意味する。
【0031】
有機半導体単結晶層を構成する有機半導体の他の例を、次式(2)~次式(5)に示す。
【0032】
【0033】
式(2)中、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数が1~14のアルキル基である。アルキル基はヘテロ原子(典型的には酸素原子及び硫黄原子から選択される。)を含んでもよく、アルキル基中の水素原子はハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。自己凝集能の理由により、R4=R5であることが好ましく、R3=R6であることが好ましい。溶解性の観点から、好ましくは、R4及びR5が水素原子であり、R3及びR6がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基であるか、又は、R3及びR6が水素原子であり、R4及びR5がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基である。より好ましくは、R3及びR6が水素原子であり、R4及びR5がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基である。自己凝集能の理由により、アルキル基の好ましい炭素数は4~12であり、より好ましくは6~10である。
【0034】
【0035】
式(3)中、R7、R8、R9及びR10はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数が1~14のアルキル基である。アルキル基はヘテロ原子(典型的には酸素原子及び硫黄原子から選択される。)を含んでもよく、アルキル基中の水素原子はハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。自己凝集能の理由により、R7=R9であることが好ましく、R8=R10であることが好ましい。溶解性の観点から、好ましくは、R7及びR9が水素原子であり、R8及びR10がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基であるか、又は、R8及びR10が水素原子であり、R7及びR9がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基である。より好ましくは、R8及びR10が水素原子であり、R7及びR9がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基である。自己凝集能の理由により、アルキル基の好ましい炭素数は6~13であり、より好ましくは8~10である。
【0036】
【0037】
式(4)中、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数が1~14のアルキル基である。アルキル基はヘテロ原子(典型的には酸素原子及び硫黄原子から選択される。)を含んでもよく、アルキル基中の水素原子はハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。自己凝集能の理由により、R11=R13であることが好ましく、R12=R14であることが好ましい。溶解性の観点から、好ましくは、R11及びR13が水素原子であり、R12及びR14がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基であるか、又は、R12及びR14が水素原子であり、R11及びR13がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基である。より好ましくは、R12及びR14が水素原子であり、R11及びR13がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基である。自己凝集能の理由により、アルキル基の好ましい炭素数は5~12であり、より好ましくは8~10である。
【0038】
【0039】
式(5)中、R15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数が1~14のアルキル基である。アルキル基はヘテロ原子(典型的には酸素原子及び硫黄原子から選択される。)を含んでもよく、アルキル基中の水素原子はハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。自己凝集能の理由により、R15=R17であることが好ましく、R16=R18であることが好ましい。溶解性の観点から、好ましくは、R16及びR18が水素原子であり、R15及びR17がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基であるか、又は、R15及びR17が水素原子であり、R16及びR18がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基である。より好ましくは、R16及びR18が水素原子であり、R15及びR17がそれぞれ独立に炭素数が1~14のアルキル基である。自己凝集能の理由により、アルキル基の好ましい炭素数は5~12であり、より好ましくは8~10である。
【0040】
有機半導体単結晶層を構成する有機半導体のさらに他の例を、次式(6)~次式(15)に示す。式(6)~式(15)中、Rは、直鎖アルキル、分岐アルキル、環状アルキル、フッ素化直鎖・分岐アルキル、トリイソプロピルシリルエチニル、フェニルなどを用いることができる。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
有機半導体単結晶層は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより、単結晶であるかどうかを確認することができる。
【0052】
本開示の相補型半導体デバイスに用いられる基板は、従来、半導体プロセスで用いられている基板、フレキシブル基板等であることができ、好ましくはフレキシブル基板である。フレキシブル基板はフィルム状の基板であり、好ましくは、ポリイミド基板、ポリフェニレンスルファイド基板、またはシリコーン基板である。基板の厚みは、好ましくは0.001~1mmであり、より好ましくは0.002~0.1mmである。フレキシブル基板を用いることにより、本開示の相補型半導体デバイスは、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.04%以上、さらに好ましくは0.08%以上の歪みεに歪ませた状態でも、歪みがない状態と実質的に同じ特性を示すことができる。歪みε(%)は、ε=hs/2R×100(式中、hsは相補型半導体デバイスが配置される基板の厚みであり、Rは曲げ半径である)で近似計算される。例えば、10μmの厚みを有するポリイミド基板上に配置された200nmの厚みを有する相補型半導体デバイスを、半径が6mmのガラス円筒に巻きつけた場合、歪みε(%)=10μm/(2×6mm)×100で計算される。
【0053】
有機半導体単結晶層とAOS層との間の距離は、1mm以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.3mm以下、さらにより好ましくは0.1mm以下である。有機半導体単結晶層とAOS層との間の距離とは、有機半導体単結晶層とAOS層との最短距離をいう。有機半導体単結晶層とAOS層との間の距離が、上記範囲にあることにより、相補型半導体デバイスの高速動作が可能になり、また、相補型半導体デバイスの高集積化が可能である。p型有機半導体単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、p型有機半導体単結晶層の少なくとも一部が前記n型アモルファス酸化物無機半導体層に重なる場合は、
図1に例示するように、有機半導体単結晶層とAOS層との間の距離は、相補型半導体デバイスの中間層の厚みに相当する。p型有機半導体単結晶層がn型アモルファス酸化物無機半導体層と重ならないようにp型有機半導体単結晶層が配置されている場合は、
図18に例示するように、有機半導体単結晶層とAOS層との間の距離は、有機半導体単結晶層の端部とAOS層の端部との間の距離に相当する。
【0054】
保護層は、AOS層と有機半導体単結晶層との間に配置される。保護層は、AOS層と隣接していても隣接していなくてもよいが、好ましくはAOS層に隣接している。保護層は、有機半導体単結晶層と隣接していても隣接していなくてもよい。保護層は、相補型半導体デバイスの製造プロセスによる影響からAOS層を保護することができる。保護層はまた、水、酸素等の大気中の成分がAOS層と反応することを防止することができる。これにより、AOS層の劣化を防止することができ、相補型半導体デバイスの長期安定性を向上することができる。保護層は、AOS層の主面と平行に配置され得るが、加えて、AOS層の端面を保護するように配置されてもよい。
【0055】
保護層の厚みは、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは250nm以下、さらにより好ましくは100nm以下、さらにより好ましくは75nm以下である。保護層の厚みの下限は、好ましくは25nm以上である。保護層の厚みが薄いほど、表面平坦性に優れた保護層を形成しやすくなり、相補型半導体デバイスの特性低下を抑制することができる。保護層の厚みの下限が上記範囲であることにより、より良好なバリア機能を得ることができる。
【0056】
保護層は、好ましくは、第1の有機膜及び第2の有機膜を含み、第1の有機膜が、n型アモルファス金属酸化物無機半導体層側に位置し、第2の有機膜が、p型有機半導体単結晶層側に位置し、第1の有機膜が有機溶媒可溶性ポリマーで構成され、第2の有機膜が真空蒸着膜である。
【0057】
有機溶媒可溶性ポリマーは、有機溶媒に可溶性のポリマーを意味し、有機溶媒に溶解したときにポリマーまたはオリゴマーであるものが含まれる。有機溶媒は、有機溶媒可溶性ポリマーを溶解可能且つAOS層を溶解しない溶媒であり、例えば酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0058】
有機溶媒可溶性ポリマーで構成された第1の有機膜は、溶液プロセスというマイルドな方法で、AOS層にダメージを与えずにAOS層上に成膜することができる。溶液プロセスは、真空やラジカル反応を利用しないので、酸素の脱離による酸素欠陥のさらなる形成を避けることができ、また、AOS層との反応性が非常に低いかないという利点がある。溶液プロセスには、酸が発生するような反応もない。そのため、AOS層上に直接、ダメージを実質的に与えずに、第1の有機膜を形成することができる。真空蒸着膜である第2の有機膜は、第1の有機膜上に形成されるため、真空プロセスによるAOS層へのダメージを抑制することができる。
【0059】
パリレンのような化学気相成長膜(真空蒸着膜)は、基板加熱の必要がない化学気相成長法(CVD)で成膜できるが、AOS層は環境感度が非常に高いために、真空蒸着膜の成膜時の真空環境及び発生するラジカルによってもダメージを受けやすい。
【0060】
これに対して、AOS層上に、有機溶媒可溶性ポリマーを含む第1の有機膜を溶液プロセスで形成することにより、AOS層に実質的なダメージを与えることなく、第1の有機膜を配置することができる。
【0061】
第1の有機膜は、真空蒸着膜の成膜時に発生するラジカル及び真空環境からAOS層を保護することができる。そのため、AOS層にダメージを実質的に与えずに、第1の有機膜上に第2の有機膜を形成することができる。第1の有機膜は、密度が低いのでガスバリア性能が低く、酸素をある程度透過させてしまう。第1の有機膜の密度は、好ましくは0.4~1.3g/cm3、より好ましくは0.5~1.2g/cm3、さらに好ましくは0.6~1.1g/cm3、さらに好ましくは0.7~1.0g/cm3である。一方で、第1の有機膜の上に比較的密度が高い第2の有機膜が位置するので、水分や酸素は保護層を実質的に通過できない。第1の有機膜の密度は、X線反射率測定から算出される。X線反射率データのフィッティングにより、膜厚と膜密度とを同時にフィッティングパラメータとして見積もることができる。
【0062】
真空蒸着膜である第2の有機膜は、溶液プロセスで形成される第1の有機膜とは異なり、ドライプロセスで形成される。そのため、第2の有機膜は緻密であり、バリア効果が高い。真空蒸着膜からなる第2の有機膜の密度は、有機溶媒可溶性ポリマーを含む第1の有機膜の密度よりも大きい。第2の有機膜の密度は、好ましくは1.0~1.5g/cm3、より好ましくは1.0超~1.45g/cm3である。第2の有機膜の密度は、ASTM D1505またはASTM E1461で測定される。
【0063】
保護層は、任意の形状であることができ、保護膜、保護シート等であることができる。
【0064】
第1の有機膜は、好ましくは10nm以上、より好ましくは13nm以上、さらに好ましくは16nm以上の厚みを有する。第1の有機膜が上記好ましい厚みを有することにより、第2の有機膜を真空蒸着する際の真空プロセス及び発生するラジカルによるAOS層へのダメージをより抑制することができる。第1の有機膜の厚みの上限は特に限定されず、例えば1mm以下でもよいが、相補型半導体デバイスの全体厚みが大きくなるため、第1の有機膜の厚みは小さい方がよく、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下であり、100nm以下、50nm以下、または30nm以下でもよい。
【0065】
第2の有機膜は、好ましくは100~300nm、より好ましくは120~200nmの厚みを有する。真空蒸着膜である第2の有機膜が上記好ましい厚みを有することにより、相補型半導体デバイスの作製プロセスによるAOS層へのダメージ、及び相補型半導体デバイスの長期間の大気への暴露によるAOS層へのダメージをより抑制することができる。また、真空蒸着膜は比較的硬いポリマー膜であるが、第2の有機膜の厚みの上限が上記好ましい範囲にあることにより、フレキシブル基板上に相補型半導体デバイスを形成したときのフレキシビリティへの影響を小さくすることができる。
【0066】
有機溶媒可溶性ポリマーは、好ましくは、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、フッ素系ポリマー、熱架橋性ポリマー、またはそれらの組み合わせである。
【0067】
アクリル系ポリマーは、好ましくは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸アダマンチル(PADMA)、またはポリメタクリル酸シクロヘキシル(PCMA)である。
【0068】
スチレン系ポリマーは、好ましくは、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン(PαMS)、ポリ-4-メチルスチレン(PMS)、またはポリビニルフェノール(PVP)である。
【0069】
フッ素系ポリマーは、好ましくは、CYTOP(登録商標)またはテフロン(登録商標)AFである。
【0070】
熱架橋性ポリマーは、好ましくは、エポキシ樹脂または熱硬化性シクロオレフィンポリマーである。
【0071】
真空蒸着膜は好ましくはパリレンである。パリレンは、逐次的に室温付近で成膜されるため、緻密性及び均一性が高い点で好ましい。パリレンにはその誘導体も含まれる。
【0072】
保護層は上述の構成に限られず、好ましくは、第1の有機膜及び無機酸化物絶縁体膜を含む保護層(以下、第2の保護層という)であってもよい。第2の保護層においては、第1の有機膜が、n型アモルファス金属酸化物無機半導体層側に位置し、無機酸化物絶縁体膜が、p型有機半導体単結晶層側に位置する。AOS層と無機酸化物絶縁体膜との間に第1の有機膜が存在することにより、無機酸化物絶縁体膜を形成する際のAOS層へのダメージを抑制することができる。
【0073】
第1の有機膜は、上述の第1の有機膜と同じ構成を有するが、好ましくは50nm以上、より好ましくは75nm以上、さらに好ましくは100nm以上の厚みを有する。第1の有機膜が、前記好ましい厚みを有することにより、無機酸化物絶縁体膜を形成する際のAOS層へのダメージをより抑制することができる。
【0074】
AlOx層等の無機酸化物絶縁体膜を、AOS層上に、原子層堆積(ALD)法を用いて無機酸化物絶縁体膜を直接成膜しようとすると、ALD法は真空下で基板を加熱し且つ水を介するプロセスなので、AOSは劣化してしまう。AOS層上に、スパッタリング法を用いて無機酸化物絶縁体膜を直接成膜しようとすると、スパッタリング法は真空プロセスなので、AOSは劣化してしまう。
【0075】
第1の有機膜は、ALD法に付随する水分またはスパッタリングプロセスの真空環境からAOS層を保護することができる。そのため、AOS層にダメージを実質的に与えずに、第1の有機膜上に無機酸化物絶縁体膜を形成することができる。第1の有機膜は、密度が低いのでガスバリア性能が低く、酸素をある程度透過させてしまう。一方で、第1の有機膜上に緻密構造を有する無機酸化物絶縁体膜が位置するので、水分や酸素は第2の保護層を実質的に通過できない。
【0076】
好ましくは、保護層は、第1の有機膜と無機酸化物絶縁体膜との間に位置する真空蒸着膜である第2の有機膜をさらに含む。真空蒸着膜である第2の有機膜が、第1の有機膜と無機酸化物絶縁体膜との間に位置することにより、無機酸化物絶縁体膜を形成する際のAOS層へのダメージをより抑制することができる。また、第2の有機膜を形成するCVDプロセスによるラジカルの攻撃から、AOS層を保護することができる。第2の保護層が第2の有機膜を含むとき、第1の有機膜の好ましい厚みは薄くてもよく、10nm以上の厚みでもよい。
【0077】
第2の有機膜の構成は、上述の第2の有機膜と同じ構成を有するが、第2の保護層における第2の有機膜の厚みは、好ましくは10~40nm、より好ましくは15~35nmである。第2の有機膜は密度が高いために、上記好ましい厚み範囲でも無機酸化物絶縁体とともにバリア効果を得ることができるので、第2の保護層の全体厚みを低減することができる。
【0078】
第1の有機膜、第2の有機膜、及び無機酸化物絶縁体膜を含むハイブリッド構造の第2の保護層は、有機溶媒可溶性ポリマーを含む第1の有機膜及び真空蒸着膜である第2の有機膜が、無機酸化物絶縁体膜を形成するときのALDプロセスまたはスパッタリングプロセスによるダメージからのバッファ層として機能し、無機酸化物絶縁体膜は強力なバリア効果を有する。
【0079】
無機酸化物絶縁体膜の厚みは、好ましくは5~100nm、より好ましくは15~75nm、さらに好ましくは25~55nmである。無機酸化物絶縁体膜は、ポリマーで構成される第2の有機膜よりもバリア効果がさらに高いため、上記好ましい厚み範囲で、良好なバリア効果を発揮しつつ、第2の保護層の全体厚みを低減することができる。無機酸化物絶縁体膜は緻密構造を有し比較的硬いため、第2の保護層を含む電子素子または電子デバイスのフレキシビリティを確保する観点で、無機酸化物絶縁体膜の厚みは、100nm以下が好ましい。
【0080】
第2の保護層が、有機溶媒可溶性ポリマーを含む第1の有機膜、真空蒸着膜からなる第2の有機膜、及び無機酸化物絶縁体膜を含む場合、第2の保護層の合計厚みは、好ましくは100nm以下、より好ましくは90nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。真空蒸着膜からなる第2の有機膜を備える場合、第2の保護層の全体厚みを薄くすることができる。第2の保護層の厚みの下限は、好ましくは25nm以上、より好ましくは40nm以上である。第2の保護層の厚みが上記好ましい範囲であることにより、良好なバリア機能を得つつ、第2の保護層を備えた電子素子または電子デバイスの厚みを低減することができる。
【0081】
無機酸化物絶縁体膜の無機酸化物絶縁体は、好ましくは、AlOx、HfOx、ZrOx、SiOx、TiOx、またはそれらの組み合わせである。xは化学量論組成を満たす値でもよく化学量論組成を満たさない値でもよい。無機酸化物絶縁体膜は密度が高く、空気中の水分子や酸素のような大きな分子は透過できないため、水分やガスに対するバリア効果が高い。
【0082】
第2の保護層は、好ましくは、第1の有機膜としてPMMA層、第2の有機膜としてパリレン層、及び無機酸化物絶縁体膜としてAlOx層の3層のハイブリッド構造を有する。PMMA/パリレン/AlOxのハイブリッド3層保護層は、AOS層の性能を劣化させることなく、強力な保護を得ることができる。
【0083】
ゲート絶縁膜、ゲート電極、及びソース/ドレイン電極(S/D電極)は、従来用いられている材料で構成され得る。
【0084】
本開示の相補型半導体デバイスは、p型構造とn型構造とで構成される。有機半導体単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、有機半導体単結晶層とAOS層とが完全に重なるように有機半導体単結晶層が配置されている場合の相補型半導体デバイスのとり得る例を以下に説明する。
【0085】
n型トランジスタがボトムゲート・トップコンタクト構造を有する場合、相補型半導体デバイスのp型構造/n型構造は、
図1のボトムゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造、
図2のボトムゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造、
図3のトップゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造、または
図4のトップゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造を有することができる。
図1を例に説明すると、基板10上にn型構造のゲート電極20、ゲート絶縁層22、n型アモルファス金属酸化物無機半導体層24、及びS/D電極26が配置され、保護層30を挟んで、p型構造のゲート電極40、ゲート絶縁層42、p型有機半導体単結晶層44、及びS/D電極46が配置される。
【0086】
n型トランジスタがボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する場合、相補型半導体デバイスのp型構造/n型構造は、
図5のボトムゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、
図6のボトムゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、
図7のトップゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、または
図8のトップゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有することができる。
【0087】
n型トランジスタがトップゲート・トップコンタクト構造を有する場合、相補型半導体デバイスのp型構造/n型構造は、
図9のボトムゲート・トップコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造、
図10のボトムゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造、
図11のトップゲート・トップコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造、または
図12のトップゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造を有することができる。
図9の構造のように、n型構造がトップゲート構造及びp型構造がボトムゲート構造を有するとき、n型構造のトップゲート電極とp型構造のボトムゲート電極とを共通にし、且つ保護層とp型ゲート絶縁層とを共通にした
図13に示す構造を有してもよい。
図10の構造においても同様である。
【0088】
n型トランジスタがトップゲート・ボトムコンタクト構造を有する場合、相補型半導体デバイスのp型構造/n型構造は、
図14のボトムゲート・トップコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造、
図15のボトムゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造、
図16のトップゲート・トップコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造、または
図17のトップゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有することができる。
図14及び
図15の構造のように、n型構造がトップゲート構造及びp型構造がボトムゲート構造を有するとき、
図13と同様に、n型構造のトップゲート電極とp型構造のボトムゲート電極を共通にし、且つ保護層とp型ゲート絶縁層とを共通にした構造を有してもよい。
【0089】
有機半導体単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、有機半導体単結晶層がAOS層と重ならないように、有機半導体単結晶層が配置されている場合の相補型半導体デバイスのとり得る例を以下に説明する。
【0090】
n型トランジスタがボトムゲート・トップコンタクト構造を有する場合、相補型半導体デバイスのn型構造/p型構造は、
図18のボトムゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造、
図19のボトムゲート・トップコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造、
図20のボトムゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、または
図21のボトムゲート・トップコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有することができる。
図18のように、n型構造がトップコンタクト構造及びp型構造がボトムゲート構造を有する場合、n型構造のS/D電極とp型構造のゲート電極とを同一材料で同一層に形成して、保護層とp型ゲート絶縁層とを共通にした
図22に示す構造を有してもよい。
図20の構造においても同様である。
【0091】
n型トランジスタがボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する場合、相補型半導体デバイスのn型構造/p型構造は、
図23のボトムゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造、
図24のボトムゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造、
図25のボトムゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、または
図26のボトムゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有することができる。
【0092】
n型トランジスタがトップゲート・トップコンタクト構造を有する場合、相補型半導体デバイスのn型構造/p型構造は、
図27のトップゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造、
図28のトップゲート・トップコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造、
図29のトップゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、または
図30のトップゲート・トップコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有することができる。
図27のようにn型構造がトップゲート構造及びp型構造がボトムゲート構造を有する場合、n型構造のゲートとp型構造のゲート電極とを同一材料で同一層に形成して、保護層とp型ゲート絶縁層とを共通にした
図31に示す構造を有してもよい。
図29の構造においても同様である。
【0093】
n型トランジスタがトップゲート・ボトムコンタクト構造を有する場合、相補型半導体デバイスのn型構造/p型構造は、
図32のトップゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造、
図33のトップゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・トップコンタクト構造、
図34のトップゲート・ボトムコンタクト/ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、または
図35のトップゲート・ボトムコンタクト/トップゲート・ボトムコンタクト構造を有することができる。
図32のようにn型構造がトップゲート構造及びp型構造がボトムゲート構造を有する場合、
図31と同様に、保護層とp型構造のゲート絶縁層とを共通にした構造を有してもよい。
図33の構造においても同様である。
【0094】
図1~
図35に示すように、AOS層は、基板上、ゲート絶縁層上、ゲート電極上、S/D電極上、またはそれらの組み合わせの上に形成され得る。AOS層上には、保護層、S/D電極、ゲート絶縁層、ゲート電極、有機半導体単結晶層、またはそれらの組み合わせが隣接して形成され得る。
【0095】
本開示の方法は、基板を用意すること、前記基板上にn型構造を形成すること、前記n型構造上に保護層を形成すること、及び前記保護層上にp型構造を形成することを含む、無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法であって、前記n型構造を形成することが、ゾルゲル法を用いて、金属塩を含むn型アモルファス金属酸化物無機半導体の前駆体溶液を調製すること、前記基板上に、前記前駆体溶液を塗布して前駆体膜を形成すること、及び前記前駆体膜を350~400℃で熱処理してn型アモルファス金属酸化物無機半導体層を形成することを含み、前記p型構造を形成することが、塗布法を用いてp型有機半導体単結晶層を形成することを含み、前記p型有機半導体単結晶層の主面に垂直方向からみたときに、前記p型有機半導体単結晶層の少なくとも一部が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層に重なるように、または前記p型有機半導体単結晶層が前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層と重ならないように、前記p型有機半導体単結晶層が配置されており、前記p型有機半導体単結晶層と前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層との間の距離が1mm以下であり、前記n型アモルファス金属酸化物無機半導体層が、前記基板側よりも前記p型有機半導体単結晶層側の酸素欠陥量が多い、厚み方向の酸素欠陥量の分布を有する、無機/有機ハイブリッド相補型半導体デバイスの製造方法を対象とする。n型構造及びp型構造はそれぞれ、
図1~
図35を参照して説明したn型構造及びp型構造の上記例示の構成をとり得る。
【0096】
本開示の方法では、アモルファス金属酸化物無機半導体層(AOS層)及び有機半導体単結晶層の成膜プロセスとして溶液プロセスを用いる。AOS層及び有機半導体単結晶層を、溶液プロセスを用いて大気下で成膜することができるので、ドライプロセスで用いられる高真空チャンバー等の特別な装置が不要であり、安価に製造することができる。特に、大面積化を図る場合に、高真空チャンバー等の特別な装置の大型化が不要であり、ドライプロセスに対してコスト低減効果がさらに大きくなる。
【0097】
AOS層の成膜プロセスとして、まず、
図36に示すように、ゾルゲル法を用いてAOSの前駆体溶液を調製する。金属塩を水または有機溶媒中に溶解した後、加水分解し、縮合してM-O-M構造を形成して前駆体をゾル化させた前駆体溶液を調製する。例えば、AOS層としてIZO層を形成する場合、硝酸インジウムと硝酸亜鉛とを混合して前駆体溶液を調製する。
図36におけるMは、AOS中に含まれる金属カチオン元素であり、例えばIn、Zn、Ga、Al、Sn、Y等の金属元素が挙げられる。Rはアルキル基である。Xとしては、塩化物塩、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。溶媒は、水、水溶液、アルコール等の、酸素が金属イオンに結合・架橋可能な溶媒であることができ、O及びHを含み、Cを含んでもよく、さらにN、F、Cl等の他の元素を含んでもよい。溶媒は、例えば2-メトキシエタノールであることができる
【0098】
次いで、前駆体溶液を基板上に塗布して前駆体の薄膜を形成する。前駆体溶液の塗布方法は、好ましくは、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、またはグラビア印刷法であり、より好ましくはスピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、またはインクジェット法であり、さらに好ましくはスピンコート法である。
図37に、前駆体溶液を基板上にスピンコート位して前駆体の薄膜を形成する態様を表す模式図を示す。前駆体の薄膜をソフトベーク(熱処理)して溶媒を除去し、ハードベーク(熱処理)して緻密なアモルファス金属酸化物無機半導体層を形成することができる。
【0099】
スピンコート法は、活性層の堆積において、再現性の良さと、加工されたままの膜の均一性の高さにおいて利点を有する。スピンコート法で形成した熱処理前の薄膜は、前駆体溶液の調製で用いられる窒素等の不純物を多量に含んでおり、ドライプロセスで得られるものとは全く異なるが、熱処理によって窒素等の不純物はガスとして放出され、不純物が抜けた箇所が酸素で架橋され得る。
【0100】
溶媒を除去するソフトベークは、好ましくは100~150℃で行う。前記好ましい温度で熱処理することにより、より良好に溶媒を除去することができる。
【0101】
焼成するハードベークは350~400℃で行われる。400℃以下という低温で熱処理することにより、フレキシブル基板を含む場合でも、フレキシブル基板を損傷させずに、アモルファス金属酸化物無機半導体層を形成することができる。また、熱処理温度が高いとM-O-M構造の形成が容易になり、結晶性が高くなり、浅いドナー濃度が増加し、移動度が向上するが、温度が高すぎるとオン電圧(VON)の負電圧シフトや高オフ電流が発生し、消費電力が増加する傾向があるため、この観点でも熱処理温度は400℃以下とする。熱処理温度が350℃未満の場合は、アモルファス金属酸化物無機半導体層中に有機残渣が発生し、有機残渣は電子トラップとして働くため、熱処理温度は350℃以上とする。
【0102】
熱処理温度の下限は、好ましくは355℃以上、より好ましくは360℃以上、さらに好ましくは365℃以上である。熱処理温度の上限は、好ましくは400℃未満、より好ましくは395℃以下、さらにより好ましくは390℃以下、さらにより好ましくは385℃以下、さらにより好ましくは380℃以下、さらにより好ましくは375℃以下である。上記好ましい温度範囲で熱処理することにより、消費電力及び有機残渣をより低減することができる。
【0103】
本方法で形成されるAOS層の面積は、好ましくは2mm2以上、より好ましくは10mm2以上、さらに好ましくは100mm2以上、さらにより好ましくは1000mm2以上、さらにより好ましくは10000mm2以上である。AOS層の面積の上限は、特に限定されず、製造設備の大きさによって制限され、例えば10m2としてもよい。本開示の相補型半導体デバイスにおけるAOS層は、溶液プロセスで成膜するため、低コストで上記のように大きな面積を有することができる。
【0104】
(AOS層のパターニング)
溶液プロセスで成膜するAOS層は、光ラジカル開始剤と炭酸ナトリウム現像剤とを用いてパターニングを行うことが好ましい。
図38に、光ラジカル開始剤と炭酸ナトリウム現像剤を用いたパターニング操作を表す模式図を示す。
【0105】
溶液プロセスで成膜するAOS層は、酸素、水、有機溶媒等の外部環境に非常に敏感である。従来のフォトリソグラフィプロセスで用いられる光酸発生剤や水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等の強アルカリ現像剤は、AOS層にダメージを与え得る。これに対して、光ラジカル開始剤と、強アルカリ現像剤よりもマイルドな溶媒である炭酸ナトリウム現像剤(1質量%のNa2CO3溶液)とを用いてフォトリソグラフィ法でパターニングすることにより、溶液プロセスで成膜したAOS層の特性を変えずに、微細なパターニングを行うことができる。
【0106】
図39に示すように、シャドウマスクを介してS/D電極を構成する金属を蒸着して、AOS層上にS/D電極を形成することができる。S/D電極のパターニングには、レジストPDMを使用してもよい。S/D電極を構成する金属は、例えばAl等が挙げられる。
【0107】
図40に、S/D電極を形成したAOS(MOSともいう)層を含むn型TFTの一例の模式図を示す。
【0108】
好ましくは、保護層を形成することが、ポリマーが溶解した有機溶媒を調製すること、n型構造上に、ポリマーが溶解した有機溶媒を塗布して第1の有機膜を形成すること、及び第1の有機膜上に、化学気相成長法を用いて真空蒸着膜である第2の有機膜を形成することを含む。
【0109】
有機溶媒とポリマーを混合して、ポリマーが溶解した有機溶媒を調製することができる。ポリマーの濃度は、第1の有機膜の目的とする厚みに応じて変えればよく、例えば1~80mg/mL、2~70mg/mL、または3~60mg/mLである。
【0110】
n型構造上に、ポリマーが溶解した有機溶媒を塗布して第1の有機膜を形成する。塗布方法は、好ましくは、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、またはグラビア印刷法であり、より好ましくはスピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、またはインクジェット法であり、さらに好ましくはスピンコート法である。
【0111】
第1の有機膜上に、化学気相成長法(CVD)を用いて真空蒸着膜である第2の有機膜を形成する。真空蒸着膜である第2の有機膜は、CVDで成膜する。CVDは軽い真空プロセスであり、成膜速度、処理面積、緻密性、及び均一性の点で好ましい。
【0112】
有機半導体単結晶層は、有機半導体単結晶層は、ゲート絶縁層、S/D電極、保護層、またはそれらの組み合わせ上に、直接、塗布法を用いて成膜してもよい。
【0113】
塗布法は、有機半導体を有機溶媒に溶解させて有機半導体溶液を調製し、基板上に有機半導体溶液を塗布し、有機溶媒を蒸発させて膜を形成する方法である。有機溶媒としては、従来、塗布法に用いられている有機溶媒を用いることができ、例えばトルエン、ジクロロベンゼン等を用いることができる。
【0114】
塗布法で形成される有機半導体単結晶層の面積は、好ましくは2mm2以上、より好ましくは10mm2以上、さらに好ましくは100mm2以上、さらにより好ましくは1000mm2以上、さらにより好ましくは10000mm2以上である。有機半導体単結晶層の面積の上限は、特に限定されず、製造設備の大きさによって制限され、例えば10m2としてもよい。従来、気相成長法を用いる場合は最大でも1mm2程度の面積を有する有機半導体単結晶膜しか得られなかったのに対して、本方法における有機半導体単結晶層は、溶液プロセスで成膜するため、上記のように大きな面積を有することができる。
【0115】
好ましくは、p型有機半導体単結晶層を形成することが、塗布法を用いて、親水性且つ非水溶性の第1の基板上に、p型有機半導体単結晶膜を形成すること、及び第1の基板とp型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用して、p型有機半導体単結晶膜を第1の基板から分離させて、第2の基板上にp型有機半導体単結晶層を配置することを含み、第2の基板は、n型構造のゲート絶縁層及びS/D電極のうちの少なくとも1つ、保護層、またはそれらの組み合わせである。
【0116】
第1の基板から分離させるp型有機半導体単結晶膜を、上記ゲート絶縁層、S/D電極、保護層、またはそれらの組み合わせの上に配置して有機半導体単結晶層を形成する。n型構造のゲート絶縁層及びS/D電極のうちの少なくとも1つ、保護層、またはそれらの組み合わせを第2の基板という。第2の基板とは、p型有機半導体単結晶層を配置するときにp型有機半導体単結晶層に接する表面に位置するものをいう。この有機半導体単結晶層の形成方法によれば、第2の基板が、疎水性、溶剤可溶性、非耐熱性、またはそれらの組み合わせの特性を有していても、さらには、凹部、凸部、または凹凸部を有していても、第2の基板上に、薄い膜厚を有する有機半導体単結晶層を容易に配置することができる。
【0117】
塗布法として、従来から用いられている方法を用いることができ、例えば、エッジキャスト法、連続エッジキャスト法、ドロップキャスト法、スピンコーティング法、印刷法(インクジェット法やグラビア印刷法)、ディスペンサー法、及びスプレー法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、ブレードコーティング法等を用いることができる。
【0118】
第1の基板は、水の接触角が好ましくは20度以下、より好ましくは10度以下の親水性基板である。第1の基板は非水溶性であり、例えば雲母またはガラスであることができる。第1の基板が非水溶性であるため、第1の基板と有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用する際に、第1の基板の成分が溶出して有機半導体単結晶膜に付着したり反応することがなく、高純度な有機半導体単結晶膜を得ることができる。また、第1の基板と有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用する際に、第1の基板の形状が崩れることなく維持されるために、有機半導体単結晶膜の形状を歪ませることなく第1の基板から有機半導体単結晶膜を分離させることができる。非水溶性とは、水または水溶液に実質的に溶解、分解、または膨潤しないことをいう。ガラスは、好ましくは、表面にUV・オゾン処理または親水性コーティング材料等により親水化処理されたものである。
【0119】
第1の基板と有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用して、有機半導体単結晶膜を第1の基板から分離させる。第1の基板上に塗布する有機半導体単結晶膜の分子は疎水性であるため、親水性の第1の基板と疎水性の有機半導体単結晶膜の分子との間に水または水溶液が入り、有機半導体単結晶膜を第1の基板から分離させることができる。
【0120】
親水性の第1の基板の水または水溶液の接触角は、疎水性の有機半導体単結晶膜の水または水溶液の接触角よりも小さく、第1の基板と有機半導体単結晶膜との水または水溶液の接触角の差は、好ましくは80度以上、より好ましくは90度以上である。有機半導体単結晶膜の接触角は好ましくは100~120度である。親水性の第1の基板と疎水性の有機半導体単結晶膜との接触角の差が、前記好ましい範囲であることにより、より安定して第1の基板から有機半導体単結晶膜を剥離させることができる。
【0121】
第1の基板と有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用する方法は特に限定されず、有機半導体単結晶膜を形成した第1の基板を水または水溶液中に浸漬すること、第1の基板と有機半導体単結晶膜との界面にスポイトで滴下する等の方法であることができる。
【0122】
第1の基板と有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用する方法は、好ましくは、有機半導体単結晶膜を形成した第1の基板を水または水溶液中に浸漬することを含む。有機半導体単結晶膜を形成した第1の基板を水または水溶液中に浸漬することによって、水または水溶液中で有機半導体単結晶膜が第1の基板から分離し、水または水溶液中で自立した(self-standing状態の)有機半導体単結晶膜を得ることができる。自立した有機半導体単結晶膜は、上記第2の基板上に配置することができる。
【0123】
有機半導体単結晶膜を第2の基板の上に配置することは、好ましくは、第1の基板上に形成した有機半導体単結晶膜に接するように第2の基板を配置しながら、第1の基板と有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用して有機半導体単結晶膜を第1の基板から分離させて第2の基板の上に配置することを含む。このように有機半導体単結晶膜に接するように第2の基板を配置しながら有機半導体単結晶膜を第1の基板から分離させることにより、第1の基板から第2の基板の上に、有機半導体単結晶膜を移し替えることができる。
【0124】
別法では、有機半導体単結晶膜を第2の基板の上に配置することは、好ましくは、有機半導体単結晶膜を形成した第1の基板を水または水溶液中に浸漬し、水または水溶液中で有機半導体単結晶膜を第1の基板から分離して自立した有機半導体単結晶膜を得て、水または水溶液中で第2の基板の上に有機半導体単結晶膜を配置することを含む。このように、水または水溶液中で、自立した有機半導体単結晶膜を第2の基板の上に配置することによって、第1の基板から第2の基板の上に容易に有機半導体単結晶膜を移し替えることができる。
【0125】
さらに好ましくは、有機半導体単結晶膜を第2の基板の上に配置することは、第1の基板上に形成した有機半導体単結晶膜に接するように第2の基板を配置しながら、第1の基板、有機半導体単結晶膜、及び第2の基板を水または水溶液中に浸漬し、有機半導体単結晶膜を第1の基板から第2の基板に移し替えることを含む。このように、水または水溶液中で、有機半導体単結晶膜に接するように第2の基板を配置しながら有機半導体単結晶膜を第1の基板から分離させることにより、第1の基板から第2の基板の上にさらに容易に有機半導体単結晶膜を移し替えることができる。
【0126】
有機半導体単結晶膜のパターニングは、特に限定されず従来の方法で行うことができるが、ドライフィルムのフォトレジストを用いて行うことが好ましい。ドライフィルムのフォトレジストを用いる場合、有機溶媒を含む塗布するタイプのフォトレジストを用いる場合よりも、有機半導体単結晶膜のダメージを抑制することができる。
【0127】
好ましくは、p型有機半導体単結晶層を形成することが、塗布法を用いて、親水性且つ非水溶性の第3の基板上に、p型有機半導体単結晶膜を形成すること、p型有機半導体単結晶膜を、凸部及び凹部を有するスタンプの前記凸部に押し付けること、第3の基板と前記p型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用して、凸部にp型有機半導体単結晶膜を転写すること、及び凸部に転写されたp型有機半導体単結晶膜を第4の基板に押し付けて、第4の基板に前記p型有機半導体単結晶膜を転写してパターニングされたp型有機半導体単結晶層を得ることを含み、第4の基板は、n型構造のゲート絶縁層及びS/D電極のうちの少なくとも1つ、保護層、またはそれらの組み合わせである。
【0128】
n型構造のゲート絶縁層及びS/D電極のうちの少なくとも1つ、保護層、またはそれらの組み合わせを第4の基板という。第4の基板とは、スタンプと凸部からp型有機半導体単結晶層を転写してパターニングするときにp型有機半導体単結晶層に接する表面に位置するものをいう。
【0129】
この方法によれば、モールドを作製しておけばフォトリソグラフィが不要で低コストである。スタンプへの転写と同時にp型有機半導体単結晶層のパターニングを行うことができるため、パターニングを短時間で行うことができる。スタンプの凹凸を利用してp型有機半導体単結晶層のパターニングを物理的に行うので、溶剤やレーザーを用いる必要がなく、様々なp型有機半導体単結晶層のパターニングを行うことができ、汎用性が高い。第4の基板にはスタンプを押し付けるだけであるため、第4の基板に溶媒等のダメージを与えることがない。例えば、第4の基板が有機材料を溶解させる溶剤に溶解性である場合でも、パターニングされたp型有機半導体単結晶層を形成することができる。スタンプには水または水溶液しか触れず、溶媒の接触や加熱される必要がないため、溶媒や熱によるスタンプの膨潤または収縮がない。例えば、あらかじめ塗布して単結晶となった膜をパターニングできる。
【0130】
この方法においては、塗布法を用いて、親水性且つ非水溶性の第3の基板上に、耐水性のp型有機半導体単結晶膜を形成する。塗布法は、有機材料を有機溶媒に溶解させて有機溶液を調製し、基板上に有機溶液を塗布し、有機溶媒を蒸発させて膜を形成する方法である。有機溶媒としては、従来、塗布法に用いられている有機溶媒を用いることができ、例えばトルエン、ジクロロベンゼン等を用いることができる。
【0131】
塗布法としては、従来から用いられている方法を用いることができ、例えば、エッジキャスト法、連続エッジキャスト法、ドロップキャスト法、スピンコーティング法、印刷法(インクジェット法やグラビア印刷法)、ディスペンサー法、及びスプレー法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、ブレードコーティング法等を用いることができる。
【0132】
第3の基板は、水または水溶液の接触角が好ましくは20度以下、より好ましくは10度以下の親水性基板である。第3の基板は、表面が親水性の基板または表面を親水化処理した基板であることができ、ガラス基板またはマイカが好ましく、より好ましくはガラス基板である。ガラス基板は、好ましくはEagleガラスである。親水化処理は、ガラス基板にUV/O3処理をすることで行うことができる。
【0133】
第3の基板は非水溶性であり、例えば雲母またはガラスであることができる。第3の基板が非水溶性であるため、第3の基板とp型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用する際に、第3の基板の成分が溶出してp型有機半導体単結晶膜に付着したり反応することがなく、高純度なp型有機半導体単結晶膜を得ることができる。また、第3の基板とp型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用する際に、第3の基板の形状が崩れることなく維持されるために、p型有機半導体単結晶膜の形状を歪ませることなく第3の基板から有機膜を分離させることができる。非水溶性とは、水または水溶液に実質的に溶解、分解、または膨潤しないことをいう。ガラスは、好ましくは、表面にUV・オゾン処理または親水性コーティング材料等により親水化処理されたものである。第3の基板は柔軟性を有してもよい。
【0134】
第3の基板とp型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用して、p型有機半導体単結晶膜を第3の基板から分離させる。p型有機半導体単結晶膜は、疎水性のp型有機半導体単結晶膜であればよい。親水性の第3の基板と疎水性のp型有機半導体単結晶膜の分子との間に水または水溶液が入り、p型有機半導体単結晶膜を第3の基板から分離させることができる。
【0135】
親水性の第3の基板の水の接触角は、疎水性のp型有機半導体単結晶膜の水の接触角よりも小さく、第3の基板とp型有機半導体単結晶膜との水の接触角の差は、好ましくは80度以上、より好ましくは90度以上である。p型有機半導体単結晶膜の接触角は好ましくは100~120度である。親水性の第3の基板と疎水性のp型有機半導体単結晶膜との接触角の差が、前記好ましい範囲であることにより、より安定して第3の基板からp型有機半導体単結晶膜を剥離させることができる。
【0136】
第3の基板とp型有機半導体単結晶膜との界面に水または水溶液を適用する方法は特に限定されず、第3の基板とp型有機半導体単結晶膜との界面にスポイト等の水供給器を用いて水または水溶液を滴下すること、p型有機半導体単結晶膜を形成した第3の基板を水または水溶液中に浸漬すること等の方法であることができる。
【0137】
疎水性とは、好ましくは80度以上の接触角、より好ましくは90度以上の接触角、さらに好ましくは100度以上、さらにより好ましくは110度以上、さらにより好ましくは150度以上の接触角を有し得る。
【0138】
スタンプの凸部の最上部と凹部の最低部との間の距離は、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、さらに好ましくは7~40μm、さらにより好ましくは10~30μmである。スタンプの凸部の最上部と凹部の最低部との間の距離が上記好ましい範囲であることにより、スタンプとp型有機半導体単結晶膜とを押し付ける際に凹部がp型有機半導体単結晶膜に接触することを抑制し且つ凸部が折れることを抑制しながら、物理的にパターニングを行うことができる。
【0139】
p型有機半導体単結晶膜をスタンプの凸部に押し付ける際の圧力は、凹部がp型有機半導体単結晶膜に接触せず且つ凸部が折れない範囲に適宜調整すればよいが、例えば5~200kPa、10~100kPa、または15~50kPaであることができる。
【0140】
スタンプの構成材料は、好ましくは樹脂、好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)、さらに好ましくはPDMSである。スタンプの構成材料は、PDMSまたはPMMAを主要な構成要素としてもよい。このような材料で構成されたスタンプを用いることにより、p型有機半導体単結晶膜をスタンプの凸部に転写すること、及びスタンプの凸部から第4の基板にp型有機半導体単結晶膜を転写することを良好に行うことができる。スタンプは疎水性であってもよい。スタンプは、ガラスまたはフィルムの支持基板を備えてもよい。
【0141】
支持基板は、好ましくは、ガラス基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、またはポリエチレンテレフタレート(PET)基板である。
【0142】
ガラス基板、PEN基板、またはPET基板(スタンプ作製時の熱処理温度による)は、硬化前のスタンプ材料の押さえつけ及び熱硬化後にスタンプ作製用モールドからの剥離しやすさに基づいて選択することができる。スタンプの基材にフレキシブル基板を用いることで、剥離が容易になる。
【0143】
スタンプの表面には剥離層を形成してもよい。剥離層は、好ましくはCYTOPまたは自己組織化単分子膜(SAM)であり、より好ましくはCTYOPである。自己組織化単分子膜は、例えば、デシルトリメトキシシラン(DTS)、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルシラン(F-SAM)、またはトリメトキシ(2-フェニルエチル)シラン(β-PTS)である。DTSは約101度の接触角を有し、F-SAMは約110度の接触角を有し、β-PTSは約80度の接触角を有するので、第4の基板にp型有機半導体単結晶膜を転写する際に、p型有機半導体単結晶膜をスタンプからより容易に剥離して転写しやすくなる。SAM処理は、気相法または液相法で行うことができる。
【0144】
パターニングされたp型有機半導体単結晶層は、好ましくは、10個以上の単結晶膜を含み、それぞれの単結晶膜が、厚みが2nm以上、幅が500nm以上、及び長さが500nm以上を有し、隣り合う単結晶膜同士の間隔は10μm以上である。
【0145】
パターニングされたp型有機半導体単結晶層に含まれる単結晶膜の個数は、より好ましくは50個以上、さらに好ましくは100個以上である。単結晶膜の幅及び長さはそれぞれ、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは45μm以上であることができる。単結晶膜の厚みは、より好ましくは2~100nm、さらに好ましくは7~20nmである。隣り合う単結晶膜同士の間隔は、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上である。
【0146】
単結晶膜の幅の上限は特に制限されないが、例えば500μm以下である。単結晶膜同士の間隔の上限は特に制限されない。
【0147】
本方法において形成される有機半導体単結晶層、AOS層、保護層、及び相補型半導体デバイスの構成は、相補型半導体デバイスに関して説明した上述の内容が適用される。ゲート電極、ゲート絶縁膜、及びS/D電極の構成に関しても同様である。
【実施例0148】
(実施例1)
(相補型半導体デバイスを作製)
図41及び
図42に示す相補型半導体デバイスを作製した。
図41は、作製した相補型半導体デバイスの断面模式図であり、
図42は、作製した相補型半導体デバイスを模式的に表した斜視図である。
図41の断面図に示すように、n型TFTのS/D電極とp型TFTのゲート電極を同一層に配置し、IZOのn型無機TFT上にp型有機TFTを配置した。n型無機TFTの保護層としてPMMA層/パリレン層を配置した。このPMMA層/パリレン層は、p型有機TFTのゲート絶縁膜としても機能するので、工程の削減効果も得られる。相補型半導体デバイスの製造方法を下記に示す。
【0149】
(ゾルゲル法によるAOS前駆体溶液の調製)
図36に模式的に示すゾルゲル法で酸化インジウム亜鉛(IZO)の前駆体溶液を調製した。10mLの2-メトキシエタノールに0.462gのIn(NO
3)
3-xH
2O(Aldrich)を添加し、大気下で6時間撹拌して、インジウムの前駆体溶液(0.1M)を得た。10mLの2-メトキシエタノールに0.297gのZn(NO
3)
2-xH
2O(Aldrich)を添加し、大気下で6時間撹拌して、亜鉛の前駆体溶液(0.1M)を得た。得られたインジウム及び亜鉛の前駆体溶液を、In:Zn=3:2のモル比で混合し、大気下で6時間撹拌して、IZOの前駆体溶液を調製した。
【0150】
(PI基板の作製)
5cm角のガラス製サポーター上にポリイミドワニス(ユピア(登録商標)-ST、宇部興産株式会社製)を2000rpmで3分間スピンコートした後、大気下においてホットプレート上で110℃60分、150℃30分、200℃10分、250℃10分、及び430℃10分の条件で熱硬化させて、厚みが10μmのポリイミド基板を形成した。
【0151】
(ゲート電極及びゲート絶縁膜の形成)
ポリイミド基板上に、フォトレジスト(TLOR、東京応化工業株式会社)で形成したパターン上にCr/Au/Crを蒸着し、次いでフォトレジストを除去するリフトオフ法により、厚みが5/25/5nmのCr/Au/Crのゲート電極を形成した。ポリイミド基板と形成したゲート電極との全面に、厚みが75nmのAlOx(アルミナ)ゲート絶縁膜を原子層堆積(ALD)法で形成した。
【0152】
(AOS層の形成)
AlOxゲート絶縁膜を形成した基板をUVオゾンクリーナー(フィルゲン社製、UV253H)で10分間処理し、有機残渣を除去し、濡れ性を向上させた。
【0153】
図37に模式的に示すように、上記UV処理した基板上に、調製したIZO前駆体溶液を500rpmで5秒間、次いで5000rpmで30秒間スピンコートしてIZO中間膜を形成した。次いで、形成したIZO中間膜に、大気雰囲気下で、150℃で5分間の熱処理を行い、さらに370℃で1時間の熱処理を行い、厚みが6nmのAOS膜(IZO膜)を形成した。形成したIZO膜に感光性誘電体(PDM、太陽インキ製造株式会社)を用いてフォトリソグラフィ及び1.75質量%のシュウ酸水溶液によるウェットエッチングを施して、パターニングされたn型半導体であるIZO活性層を形成した。
【0154】
パターニングされたIZO活性層を有する基板上の同一レイヤーに、感光性誘電体(PDM、太陽インキ製造株式会社)を配置及びフォトリソグラフィでパターニングを行い、パターニングしたPDMをシャドウマスクとして用いて、Alを熱蒸着及びリフトオフにより、厚みが60nmのn型トランジスタのS/D電極とp型有機半導体のゲート電極とを形成した。次いで、S/D電極を形成した積層体を、大気下、90℃で3時間熱処理し、室温まで徐冷した。
【0155】
(保護層の形成)
IZO層の保護層とp型有機トランジスタのゲート絶縁膜とを兼ねて、AlOxゲート絶縁膜、IZO層、及びAl電極の全面上に、13nm厚のPMMA層及び200nm厚のパリレン層を形成して、相補型半導体デバイスの中間体を得た。
【0156】
PMMA層は、0.56質量%のPMMA溶液(Mw=120,000)を溶解させた酢酸ブチル溶液を、500rpmで5秒間、4000rpmで30秒間スピンコートした後、150℃で1時間熱処理することで形成した。パリレンは、CVD真空蒸着で成膜した。
【0157】
(p型有機半導体単結晶層の形成)
p型トランジスタ部分の保護層上に、連続エッジキャスト法により、p型半導体であるC9-DMBDT-NWの有機半導体単結晶層を形成した。連続エッジキャスト法は以下のようにして行った。
【0158】
親水性基板として天然マイカ基板を用意した。有機半導体として、高移動度を示す下記式(16):
【化16】
のp型有機半導体C
9-DNBDT-NWの粉末を用意した。溶剤として3-クロロチオフェンを用い、溶剤中に有機半導体粉末を0.02質量%溶解させて、有機半導体溶液を調製した。100℃に加熱したマイカ基板上に、調製した有機半導体溶液を連続エッジキャスト法で塗布し、平均厚みが12nm、面積が200mm
2の有機半導体単結晶膜を製膜した。有機半導体単結晶膜表面の水の接触角は108度であった。
【0159】
マイカ基板上に成膜した有機半導体単結晶膜に保護層が接するように、保護層を形成した相補型半導体デバイスの中間体を配置し、マイカ基板と有機半導体単結晶膜との界面に水を滴下して、有機半導体単結晶膜をマイカ基板から剥離させ、保護層上に転写した。転写した有機半導体単結晶膜をフォトリソグラフィでパターニングして有機半導体単結層を形成した。
【0160】
(有機半導体単結晶膜のパターニング)
有機半導体単結晶膜のパターニングは、フォトレジストとして5μm厚のドライフィルムレジスト(PDM、太陽インキ製造株式会社製)を用いて、次のようにして行った。
【0161】
有機半導体単結晶膜上に30nm厚のAuを熱蒸着により堆積させ、PMMA溶液(Mw=120,000、0.56質量%、酢酸ブチル溶液)を500rpmで5秒間、1000rpmで30秒間スピンコートした後、80℃で10分間熱処理して、300nm厚のPMMA膜を形成し、PMMA膜上にドライフィルムレジストをラミネートした。
【0162】
フォトリソグラフィによりドライフィルムレジストをパターニングし、パターニングされたドライフィルムレジストをマスクとして用いてO2プラズマ処理によりPMMA膜を除去した。次いで、Aurum S-50790(関東化学株式会社製)を用いたエッチングによりAu膜をパターニングした。さらに、O2プラズマ処理により有機半導体単結晶膜をパターニングした。次いで、PMMA膜とドライフィルムレジストを、マイルドなフォトレジストリムーバーであるアセトニトリルで剥離した。
【0163】
(S/D電極の形成)
上記の方法で作製した相補型半導体デバイスの中間体の全面に、60nm厚のAuを熱蒸着により堆積させた。次いで、上記と同様の方法で、PMMA膜の形成、ドライフィルムレジストのラミネート、フォトリソグラフィによるドライフィルムレジストのパターニング、O
2プラズマによるPMMA膜の除去、Aurum S-50790を用いたAu膜のパターニング、及びアセトニトリルを用いたレジスト剥離を行い、縦0.2mm、横1mm、及び高さ90nm(配線部分を除く)のAuのS/D電極を形成した。次いで、S/D電極を形成した積層体を、大気下、90℃で3時間熱処理し、室温まで徐冷した。このようにして、
図41に示すp型構造/n型構造がボトムゲート・トップコンタクト/ボトムゲート・トップコンタクト構造の相補型半導体デバイスを作製した。得られた相補型半導体デバイスは、厚みが10μmのポリイミド基板上に配置され、ポリイミド基板を除く厚みは約380nmであった。
【0164】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、チャネル幅Wを200μmとして、チャネル長Lがそれぞれ、100μm、80μm、60μm、40μm、20μm、10μm、7μm、及び5μmの相補型半導体デバイスを作製した。p型有機TFT及びn型無機TFTのチャネル長Lは同じにした。
【0165】
図43に、得られた有機/無機ハイブリッド相補型半導体デバイスの外観写真を示す。
図43の上側の写真が、チャネル長Lがそれぞれ、100μm、80μm、60μm、40μm、20μm、10μm、7μm、及び5μmの相補型半導体デバイスの外観写真である。
図43の下側の写真が、p型構造及びn型構造のチャネル長Lが40μm、20μm、10μm、7μm、及び5μmの相補型半導体デバイスの拡大写真である。相補型半導体デバイスは、上側の層に位置する有機TFTと下側の層に位置する無機TFTとから構成される。
図43に示す相補型半導体デバイスにおける有機半導体単結晶層とAOS層との間の距離は100μmであった。
【0166】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、W/Lが200μm/9μmの有機TFTと、W/Lが200μm/13μmの無機TFTとからなる有機/無機ハイブリッド相補型半導体デバイスを作製し、特性を評価した。
【0167】
図44は、ゲート電圧を0V~-10Vで-2Vのステップ及び0V~10Vで2Vのステップで変化させたときの、相補型半導体デバイスに含まれるp型有機TFT及びn型無機TFTそれぞれの、ドレイン電圧に対するドレイン電流の出力特性をまとめたグラフである。
図45の左側の図は、p型有機TFTのゲート電圧に対するドレイン電流の伝達特性を表すグラフであり、右側の図は、n型無機TFTのゲート電圧に対するドレイン電流の伝達特性を表すグラフである。これらの測定は相補型半導体デバイス作製後に実施した。
図46に示す有機無機ハイブリッド相補型半導体インバーター単素子の回路図において、測定されない側のTFTのソース電圧とドレイン電圧を等電位とした。例えば、p型有機TFTを測定する際、相補型半導体インバーターの出力端子にドレイン電圧を印加するが、同時にn型無機TFT中のソース電圧にp型有機TFTのドレイン電圧と同じ電圧を印加することで、n型無機TFTに電流が流れないようにした。
【0168】
p型有機TFTの移動度は5.1cm2V-1s-1であり、n型無機TFTの移動度は4.0cm2V-1s-1であった。また、p型有機TFTのオフ電流は10-11A及びオンオフ比は108であり、n型無機TFTのオフ電流は10-12A及びオンオフ比は108であった。p型有機TFTとn型無機TFTの閾値電圧もほぼ同じであった。このように、本開示の相補型半導体デバイスを構成するp型有機TFT及びn型無機TFTは、動作のバランスが良く高速で動作することが確認できた。
【0169】
実施例3で得られた有機無機ハイブリッド相補型半導体デバイス単素子のインバーター特性を評価した。
図46は、有機無機ハイブリッド相補型半導体インバーター単素子の回路図である。
【0170】
図47に、実施例3で作製した相補型半導体デバイスについて、インプット電圧を0~10Vで変化させたときのアウトプット電圧の出力特性を示す。良好なレール・ツー・レール性能が得られていた。
図48に、実施例3で作製した相補型半導体デバイスのスイッチング時の電圧の増幅作用の原因を評価したグラフを示す。V
DDが7V程度の場合に大きな電圧ゲインが得られ、30~40Vの電圧ゲインが得られていた。
【0171】
図49に、実施例3で作製した相補型半導体デバイスのインプット電圧とサプライ電流との関係を表すグラフを示す。V
DDが7Vの場合に、待機中の静的電力消費量は0.76μW以下と小さいことが分かった。
図50は、実施例3で作製した相補型半導体デバイスノイズマージンを評価したグラフである。NM
Hは2.7Vであり、NM
Lは1.9Vであり、大きなノイズマージンが得られていた。
図51は、実施例3で作製した相補型半導体デバイスを作製直後に測定した初期特性及び大気中に5ヶ月放置後の特性を評価したグラフである。初期特性及び5ヶ月放置後において、実質的に同じスイッチング特性を示し、良好な長期安定性を有することが分かった。
【0172】
(フレキシブル評価)
図52に、実施例3と同様の方法で作製し、レーザーリフトオフ(LLO)法を用いてガラスサポーターから剥離したポリイミド基板上に形成した相補型半導体デバイスの外観写真を示す。5cm角のポリイミド基板上に750個超の相補型インバーターが集積されている。
図53に、ポリイミド基板上に形成した相補型半導体デバイスを湾曲させた状態の模式図を示す。
【0173】
図54は、LLO処理前後(剥離前後)のW/Lが200μm/10μmの有機TFT及び無機TFTで構成される相補型半導体デバイスの電圧伝達曲線(VTC)特性を表すグラフである。V
DDが4V、6V、8V、及び10Vの場合に、LLO処理前後でほぼ同じ特性を示し、LLO処理による相補型半導体デバイスへのダメージはほとんどないことが分かった。
【0174】
図55に、半径が6.0mmのガラス円筒の表面に、
図52のポリイミド基板上に形成した相補型半導体デバイスを巻きつけた外観写真を示す。
図55にはまた、平面基板、半径が17.5mm(歪み0.03%)、12.0mm(歪み0.04%)、及び6.0mm(歪み0.08%)の円筒のそれぞれの表面に、nチャネルのW/Lが50μm/24μm及びpチャネルのW/Lが210μm/19μmの有機TFT及び無機TFTで構成される実施例3と同様の方法で作製された相補型半導体デバイスを配置した場合の出力特性を表すグラフを示す。平面基板及び曲率が異なる円筒上に配置した相補型半導体デバイスは、ほぼ同じ特性を示した。フレキシブル基板としてポリイミド基板を用いることで、フレキシブル相補型半導体デバイスを得ることができた。
【0175】
(リングオシレータ特性評価)
実施例1と同様の方法でそれぞれ作製した5つの相補型半導体デバイスをループ状に接続した5段のリングオシレータ(発振回路)を作製した。
図56に、リングオシレータの外観写真、回路図、及び四角で囲んだ部分を拡大した外観写真を示す。各段のTFTは、pチャネルについては、W/L=200μm/4μm及びΔL=3μm、並びにnチャネルについては、W/L=200μm/8μm及びΔL=1.5μmの同一寸法を有している。ΔLは、ゲート電極とS/D電極のオーバーラップしている部分の長さである。
【0176】
図57は、V
DDが10Vのときの単一の相補型半導体デバイスのインバーター特性を評価したグラフである。チャネル長が短いインバーターでも、レール・ツー・レール特性を示し、順方向・逆方向電圧掃引ともにV
Mが5V程度の対称遷移、並びに3.2VのNM
H及び2.9VのNM
Lという高いノイズマージンを示していることが示唆された。
【0177】
図58に、V
DDが10Vのときのリングオシレータの出力電圧を測定したグラフを示す。リングオシレータの発振周波数f
ROSCは77kHzであり、下式:
【数3】
(式中、tはリングオシレータ1段あたりの遅延時間、nはリングオシレータの段数である)により、1段あたりの遅延時間は1.3μsと算出された。定常波形を出力するリングオシレータ動作をしたことにより、各p型TFT及び各n型TFT並びに各相補型半導体デバイスの特性の均一性が高いことが分かった。各相補型半導体デバイスが、p型半導体として有機半導体単結晶膜及びn型半導体として均一なAOSを備えているためと考えられる。
【0178】
従来報告されている溶液プロセス且つ400℃以下の熱処理で成膜された有機半導体及び酸化物半導体をベースとした相補型半導体デバイスのリングオシレータ特性を、スケーラブルな製造とフレキシブルな回路の観点から比較した。表1に、評価結果を示す。p型半導体は全て有機半導体である。n型半導体は、実施例1及び比較例2がアモルファス酸化物であり、その他は有機半導体である。表1中の実施例1とは、実施例1と同様の方法でそれぞれ作製した5つの相補型半導体デバイスをループ状に接続した5段のリングオシレータである。遅延時間はVDDに比例関係にあり、各例のリングオシレータ特性を比較するために、VDDを10Vに揃えたときの換算遅延時間をt10Vとして示す。比較例1、2及び4~6は、インクジェット法で、比較例3は連続エッジキャスト法で、比較例7はスピンコート法で、同一レイヤーにp型半導体及びn型半導体が形成されており、保護層は用いられていない。
【0179】
【0180】
比較例1は、Takeda, Y. et al. Appl. Sci. 2018, 8, 1331に報告の方法で作製した。比較例2は、K. Hong, et al. Adv. Mater. 2014, 26, 7032に報告の方法で作製した。比較例3は、M. Uno, et al. Adv. Electron. Mater. 2015, 1, 1500178に報告の方法で作製した。比較例4は、K.J. Baeg. et al. Org. Electron. 2013, 14, 1407に報告の方法で作製した。比較例5は、S. H. Kim, et al, IEEE Electron Device Lett. 2013, 34, 307に報告の方法で作製した。比較例6は、W. Smaal, et al, Org. Electron. 2012, 13, 1686に報告の方法で作製した。比較例7は、L. Herlogsson, et al. Adv. Mater. 2011, 23, 4684に報告の方法で作製した。
【0181】
実施例1で作製した相補型半導体デバイスを5つつなげたリングオシレータは、従来報告されている溶液プロセス且つ400℃以下の熱処理で成膜された有機半導体及び酸化物半導体をベースとした相補型半導体デバイスのリングオシレータと比較して、換算遅延時間t10Vが非常に小さいことが分かった。
【0182】
(酸素欠陥の濃度分布の分析)
図59に、実施例1と同様の方法で作製したAOS層のO1sの角度分解XPSの測定結果を示す。
図59(a)は、傾斜角θを0°、40°、55°、63°、及び70°としたときの、実施例1で形成したAOS層のO1sの測定スペクトルをまとめたグラフである。
図59(b)~
図59(f)は、傾斜角θを0°、40°、55°、63°、及び70°として測定した測定スペクトルを、結合エネルギーが529.7eVにピークを持つM-O-M、531.1eVにピークを持つM-O(H)、及び532.0eVにピークを持つM-O-Rに分解及びフィッティングしたグラフである。
【0183】
Mは、InまたはZnを意味する。M-O-Mは、金属イオン間を酸素が架橋して酸素欠陥がない化学量論組成の酸化物を意味する。M-O(H)は、金属イオン間を架橋しない不対電子を有する酸素または水酸基を含む酸素欠陥がある組成を意味する。M-O-Rは、金属イオンに結合したH2O、CO2、アルコール等の有機物中の酸素を含む酸素欠陥がある組成を意味する。
【0184】
図60、
図68及び表2に、上記フィッティングにより算出した、O1s全体に対するM-O-M(金属酸化物になっている状態)の割合(η
M-O-M)の角度依存性を示す。
【0185】
【0186】
傾斜角θが大きくなるほど表面選択的になり、AOS層の表面に近い組成を表す。AOS膜の内部はM-O-M結合の割合が約50%で一定であるが、AOS膜の表面に近いほどM-O-M結合の割合が少なくなり、約40%まで減少、すなわちM-O-M結合の割合は約20%減少した。このように、AOS層は、内部に比べて表面付近では酸素欠陥が多く、膜厚方向に不均一な化学組成を有することが示された。
図68において、横軸の5.5nmにおける3点は、AOS最表面から5.5nmまでの深さまでの各M-O種の積算値の割合であり、2.8nmにおける3点は最表面から2.8nmの深さまでのM-O種の積算値の割合である。相補型半導体デバイスの経時変化が少ないのは、AOS層の表面近傍に酸素欠陥が最初から入っていることも寄与していると考えられる。
【0187】
(参考例1:AOS層の厚みを変えた実施例)
ゲート絶縁膜として熱酸化SiO2(厚み100nm)を有するPドープSiウエハー基板を、アセトン次いで2-プロパノール中で各10分間超音波洗浄した後、ホットプレートを用い、大気下、100℃で10分間乾燥させた。
【0188】
上記洗浄及び乾燥した基板をUVオゾンクリーナー(フィルゲン社製、UV253H)で10分間処理し、有機残渣を除去し、濡れ性を向上させた。
【0189】
前駆体溶液濃度を変えたこと以外は実施例1と同様の方法で異なる厚みのIZO膜(AOS層)を形成した。
図61及び表3に、前駆体溶液濃度と形成したAOS層の厚みの関係を示す。AOS層の厚みは、X線反射率で測定した。
【0190】
IZO膜上に、メタルマスクを用いてソース・ドレイン(S/D)電極(Al、40nm)を熱蒸着により成膜及びパターニングした。さらに、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)レーザーによりIZO膜をパターニングして、大気下、90℃で3時間熱処理し室温まで徐冷してIZO活性層を得た。
【0191】
IZO活性層及びS/D電極を形成したゲート絶縁層上に、PMMA(Mw:120,000)を溶解させた酢酸ブチル溶液(50mg/mL)を、500rpmで5秒間、4000rpmで30秒間スピンコートした後、150℃で2時間熱処理を行い、厚みが100nmのPMMA層を形成した。PMMA層上に、ALD法を用いて、基板温度を110℃に保ちながら、厚みが40nmのAlOxを堆積させて、PMMA層/AlOx層の2層の保護層を形成した。このようにして、保護層とIZO膜とを有するボトムゲート・トップコンタクトn型無機TFTを作製した。作製したn型無機TFTは、100μmのチャネル長(L)及び2000μmのチャネル幅(W)を有していた。
【0192】
【0193】
総金属イオン濃度を0.05M、0.1M、及び0.2Mとしてそれぞれ形成したIZOのTFT特性を評価した。
図62に、AOS層の厚みが2.5nm、5.5nm、及び11nmのTFTの、ドレイン電圧を2Vとしたとき及び30Vとしたときの、ゲート電圧に対するドレイン電流の関係を示す。
【0194】
AOS層の厚みが2.5nmの場合は、オフ電流は良好であるが、移動度が比較的低く、ヒステリシスもみられた。AOS層の厚みが5.5nmの場合は、オフ電流及び移動度は良好であり、ヒステリシスもみられなかった。AOS層の厚みが11nmの場合は、オフ状態が得られなかった。総金属イオン濃度が0.1Mで、AOS層の厚みが5.5nmのときに、最も良好なTFT特性が得られた。
【0195】
(参考例2)
熱処理温度を変更したこと以外は参考例1と同様の方法で成膜した酸化物薄膜(IZO)、及びそれを用いて参考例1と同様の方法で作製したn型TFTの特性を評価した。
【0196】
図63に、350℃、370℃、及び390℃の異なる温度で焼結して作製したIZO薄膜を用いて作製したTFT特性を示す。
図64に、各焼結温度で得られたIZO薄膜のXRD測定結果を示す。
図65に、各焼結温度で得られたIZO薄膜の全反射FT-IR測定結果を示す。
【0197】
各焼結温度でアモルファス構造を示し、均一性が高く、良好な特性を有するIZO薄膜が得られていた。ただし、350℃での熱処理では、電子トラップとして働く有機残渣が観察された。したがって、このIZO系は370℃が最適であると考えられる。
【0198】
図69及び
図70に、370℃の熱処理前後のIZO薄膜の原子間力顕微鏡(AFM、島津製作所製SPM-9700HT)像及びX線反射率法で測定した厚みを示す。熱処理前に比べて熱処理後は、表面粗さは4.3nmから0.2nmに減少し、厚さは14nmから5.5nmとほぼ半減した。