(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130326
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】バーナ
(51)【国際特許分類】
F23C 99/00 20060101AFI20220830BHJP
F23D 14/22 20060101ALI20220830BHJP
F23C 1/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F23C99/00 323
F23D14/22 Z ZAB
F23C1/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022723
(22)【出願日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2021028123
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢太
(72)【発明者】
【氏名】松浪 智広
(72)【発明者】
【氏名】茂木 徹
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩亘
(72)【発明者】
【氏名】村井 隆一
(72)【発明者】
【氏名】秋山 勝紀
(72)【発明者】
【氏名】樋野 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】赤松 史光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝人
【テーマコード(参考)】
3K019
3K065
3K091
【Fターム(参考)】
3K019AA06
3K019BA02
3K019BB01
3K019BD06
3K065TA01
3K065TC01
3K065TD05
3K065TD09
3K065TE02
3K065TH02
3K091AA01
3K091BB02
3K091BB25
(57)【要約】
【課題】排気ガス中の窒素酸化物を低減する。
【解決手段】バーナ100は、炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第1噴射口(燃料噴射口112c、混合ガス噴射口114c)を含む第1噴射部110と、第1噴射口と離隔し炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第2噴射口138a、138bを含む第2噴射部130と、少なくともアンモニアを含む燃料ガスと、燃料ガスに対する理論酸化剤量以上の目標酸化剤量の1/3以上2/3以下の酸化剤ガスとを第1噴射部110に供給する第1供給部120と、第1噴射部110に供給される酸化剤ガスの量と目標酸化剤量との差分の酸化剤ガスを第2噴射部130に供給する第2供給部140と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第1噴射口を含む第1噴射部と、
前記第1噴射口と離隔し前記炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第2噴射口を含む第2噴射部と、
少なくともアンモニアを含む燃料ガスと、前記燃料ガスに対する理論酸化剤量以上の目標酸化剤量の1/3以上2/3以下の酸化剤ガスとを前記第1噴射部に供給する第1供給部と、
前記第1噴射部に供給される前記酸化剤ガスの量と前記目標酸化剤量との差分の前記酸化剤ガスを前記第2噴射部に供給する第2供給部と、
を備えるバーナ。
【請求項2】
前記第1噴射口から噴射される前記燃料ガスおよび前記酸化剤ガスの流速aと、前記第2噴射口から噴射される前記酸化剤ガスの流速bとの流速比a/bは、0.05以上である請求項1に記載のバーナ。
【請求項3】
前記第1噴射口は、前記燃料ガスを噴射する燃料噴射口と、前記酸化剤ガスを噴射する酸化剤噴射口とを含む請求項1または2に記載のバーナ。
【請求項4】
前記第1噴射口は、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとを含む混合ガスを噴射する請求項1または2に記載のバーナ。
【請求項5】
炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第1噴射口を含む第1噴射部と、
前記第1噴射口と離隔し、前記炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第2噴射口を含む第2噴射部と、
少なくともアンモニアを含む燃料ガスと、酸化剤ガスとを前記第1噴射部に供給する第1供給部と、
前記酸化剤ガスを前記第2噴射部に供給する第2供給部と、
を備え、
前記第1噴射口から噴射される前記燃料ガスおよび前記酸化剤ガスの流速aと、前記第2噴射口から噴射される前記酸化剤ガスの流速bとの流速比a/bは、0.05以上であるバーナ。
【請求項6】
前記第1噴射部は、1の前記第1噴射口を有し、
前記第1噴射部と前記第2噴射部との間の距離は、前記第1噴射口の口径の1.85倍以上6.0倍未満である請求項1から5のいずれか1項に記載のバーナ。
【請求項7】
前記第1噴射部は、複数の前記第1噴射口を有し、
前記第1噴射部と前記第2噴射部との間の距離は、複数の前記第1噴射口における2つの前記第1噴射口の中心を結ぶ仮想直線のうち、最も長い仮想直線の長さの1.85倍以上6.0倍未満である請求項1から5のいずれか1項に記載のバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを燃焼させるバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を防止するために、CO2(二酸化炭素)排出量の削減が求められている。このため、化石燃料に加えてアンモニアを燃焼させる技術が注目されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアを燃焼させる場合、化石燃料のみを燃焼させる場合と比較して、排気ガス中の窒素酸化物の濃度が上昇してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、排気ガス中の窒素酸化物を低減することが可能なバーナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のバーナは、炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第1噴射口を含む第1噴射部と、第1噴射口と離隔し炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第2噴射口を含む第2噴射部と、少なくともアンモニアを含む燃料ガスと、燃料ガスに対する理論酸化剤量以上の目標酸化剤量の1/3以上2/3以下の酸化剤ガスとを第1噴射部に供給する第1供給部と、第1噴射部に供給される酸化剤ガスの量と目標酸化剤量との差分の酸化剤ガスを第2噴射部に供給する第2供給部と、を備える。
【0007】
また、第1噴射口から噴射される燃料ガスおよび酸化剤ガスの流速aと、第2噴射口から噴射される酸化剤ガスの流速bとの流速比a/bは、0.05以上であってもよい。
【0008】
また、第1噴射口は、燃料ガスを噴射する燃料噴射口と、酸化剤ガスを噴射する酸化剤噴射口とを含んでもよい。
【0009】
また、第1噴射口は、燃料ガスと酸化剤ガスとを含む混合ガスを噴射してもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の他のバーナは、炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第1噴射口を含む第1噴射部と、第1噴射口と離隔し、炉の内部空間に向けて設けられる1または複数の第2噴射口を含む第2噴射部と、少なくともアンモニアを含む燃料ガスと、酸化剤ガスとを第1噴射部に供給する第1供給部と、酸化剤ガスを第2噴射部に供給する第2供給部と、を備え、第1噴射口から噴射される燃料ガスおよび酸化剤ガスの流速aと、第2噴射口から噴射される酸化剤ガスの流速bとの流速比a/bは、0.05以上である。
【0011】
また、第1噴射部は、1の第1噴射口を有し、第1噴射部と第2噴射部との間の距離は、第1噴射口の口径の1.85倍以上6.0倍未満であってもよい。
【0012】
また、第1噴射部は、複数の第1噴射口を有し、第1噴射部と第2噴射部との間の距離は、複数の第1噴射口における2つの第1噴射口の中心を結ぶ仮想直線のうち、最も長い仮想直線の長さの1.85倍以上6.0倍未満であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排気ガス中の窒素酸化物を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るバーナを説明する図である。
【
図2】第1噴射部の噴射口、および、第2噴射部の噴射口を炉の内部空間側から見た図である。
【
図3】第1供給部によって供給される空気の比率と、排気ガス中に含まれるNOx量との関係を説明する図である。
【
図4】第1噴射部から噴出される混合ガスの流速と第2噴射部から噴出される空気の流速との流速比、および、排気ガス中に含まれるNOx量の関係を説明する図である。
【
図5】第1噴射部と第2噴射部との間の距離と混合ガス噴射口の口径との関係と、排気ガス中のNOxの濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
[バーナ100]
図1は、本実施形態に係るバーナ100を説明する図である。
図1に示すように、バーナ100は、炉(例えば、ボイラを構成する火炉)を構成する炉壁10に設けられる。バーナ100は、アンモニアを少なくとも含む燃料ガスを燃焼させる。燃料ガスは、アンモニアのみを含んでもよいし、アンモニアに加えて炭化水素等を含んでもよい。炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、ブタン等である。
【0017】
バーナ100は、第1噴射部110と、第1供給部120と、第2噴射部130と、第2供給部140とを含む。
【0018】
第1噴射部110は、炉の内部空間に向けて設けられる。第1噴射部110は、燃料ガスおよび酸化剤ガスを噴射する。ここでは、酸化剤ガスが、空気である場合を例に挙げる。本実施形態において、第1噴射部110は、燃料噴射ノズル112と、第1酸化剤ガス噴射ノズル114とを有する。
【0019】
燃料噴射ノズル112は、燃料ガスを噴射するノズルである。燃料噴射ノズル112は、本体112aと、燃料供給管112bと、燃料噴射口112c(第1噴射口)とを含む。本体112aは、円筒形状の管体である。本体112aの中心軸は、炉壁10に対して交差(ここでは、略直交)する。
【0020】
本体112aの後部(本体112aにおける炉壁10側に対する逆側(
図1中、左側、以下「後端」という)の部分)に、燃料供給管112bが接続される。また、本体112aの先端(本体112aにおける炉壁10側(
図1中、右側)、以下「先端」という)に、開口である燃料噴射口112cが形成される。燃料噴射口112cは、炉の内部空間を向いている。
【0021】
第1酸化剤ガス噴射ノズル114は、燃料ガスと空気(一次空気)とを含む混合ガスを噴射するノズルである。第1酸化剤ガス噴射ノズル114は、本体114aと、第1酸化剤供給管114bと、混合ガス噴射口114c(第1噴射口)とを有する。本体114aは、円筒形状の管体である。本体114aは、燃料噴射ノズル112の本体112aと同軸上に、本体112aを囲むように配置される。つまり、燃料噴射ノズル112の本体112aと、第1酸化剤ガス噴射ノズル114の本体114aとによって、二重円筒構造が形成される。
図1では、本体114aにおける炉壁10側(
図1中、右側、以下「先端」という)に位置する先端部114dが先端に向かうにつれて径が漸減する形状の場合の例を示しているが、第1酸化剤ガス噴射ノズル114の形状はこれに限らない。
【0022】
本体114aの後部(本体114aにおける炉壁10側に対する逆側(
図1中、左側、以下「後端」という)の部分)に、第1酸化剤供給管114bが接続される。本体114aの後端は、燃料噴射ノズル112の本体112aの後端よりも炉壁10側に位置する。
【0023】
また、本体114aの先端に、開口である混合ガス噴射口114cが形成される。混合ガス噴射口114cは、炉の内部空間に臨む。
【0024】
なお、本実施形態において、燃料噴射ノズル112の燃料噴射口112cは、第1酸化剤ガス噴射ノズル114の本体114a内に位置するように設けられる。つまり、第1酸化剤ガス噴射ノズル114の混合ガス噴射口114cは、燃料噴射ノズル112の燃料噴射口112cよりも炉の内部空間側に設けられる。
【0025】
第1供給部120は、燃料ガスおよび空気を第1噴射部110に供給する。本実施形態において、第1供給部120は、燃料供給系統122と、酸化剤供給系統124とを含む。燃料ガスは、燃料供給系統122から、燃料供給管112bを介して本体112a内に供給される。本体112a内に供給された燃料ガスは、本体112a内の空間を流れる。本体112a内を通過した燃料ガスは、燃料噴射口112cから本体114aの先端部114d内に形成される空間に向けて噴射される。
【0026】
空気は、酸化剤供給系統124から、第1酸化剤供給管114bを介して本体114a内に供給される。本体114a内に供給された空気は、本体114a内の空間を流れる。そして、本体114aの先端部114dに到達した空気は、先端部114d内の空間において、燃料噴射口112cから噴射された燃料ガスと混合される。燃料ガスと空気とを含む混合ガスは、混合ガス噴射口114cから炉の内部空間に噴射される。
【0027】
こうして、混合ガス噴射口114cから噴射された混合ガスは、不図示の着火装置によって着火され、炉の内部空間において火炎が形成される。
【0028】
第2噴射部130は、第1噴射部110によって形成される火炎に対し、径方向外側から空気(二次空気)を供給する。
【0029】
本実施形態において、第2噴射部130は、主流路132と、分岐流路134a、134bと、第2酸化剤供給管136と、第2噴射口138a、138bとを有する。主流路132は、バーナ本体ブロック132a内および耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路である。主流路132は、円筒形状である。主流路132は、第1酸化剤ガス噴射ノズル114の本体114aと同軸上に、本体114aを囲むように配置される。主流路132における炉壁10側(
図1中、右側、以下「先端」という)は、分岐流路134a、134bに分岐される。分岐流路134a、134bは、耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路である。分岐流路134a、134bは、主流路132よりも小径の円筒形状である。
【0030】
主流路132の後部(主流路132における炉壁10側に対する逆側(
図1中、左側、以下「後端」という)の部分)に、第2酸化剤供給管136が接続される。主流路132の後端は、第1酸化剤ガス噴射ノズル114の本体114aの後端よりも炉壁10側に位置する。
【0031】
また、分岐流路134a、134bの先端に、開口である第2噴射口138a、138bが形成される。第2噴射口138a、138bは、炉の内部空間に臨む。第2噴射口138a、138bは、混合ガス噴射口114cと、混合ガス噴射口114cの半径方向に離隔して設けられる。なお、第2噴射口138a、138bと燃料噴射口112cとの間の距離は、混合ガス噴射口114cの内壁面と燃料噴射口112cとの間の半径方向の距離よりも大きい。
【0032】
第2噴射口138a、138bは、第1噴射部110の混合ガス噴射口114cと略同一平面上に設けられる。つまり、分岐流路134a、134bの先端の軸方向の位置は、第1噴射部110の混合ガス噴射口114cの軸方向の位置と略一致する。
【0033】
図2は、第1噴射部110の混合ガス噴射口114c、および、第2噴射部130の第2噴射口138a、138bを炉の内部空間側から見た図である。
図2に示すように、第1噴射部110の混合ガス噴射口114cの中心と、第2噴射部130の第2噴射口138aの中心とは、距離Ln離隔している。同様に、第1噴射部110の混合ガス噴射口114cの中心と、第2噴射部130の第2噴射口138bの中心とは、距離Ln離隔している。距離Lnは、混合ガス噴射口114cの口径D(直径)の1.85倍以上6.0倍未満である。
【0034】
図1に戻って説明すると、第2供給部140は、空気を第2噴射部130に供給する。本実施形態において、第2供給部140は、酸化剤供給系統142を含む。空気は、酸化剤供給系統142から、第2酸化剤供給管136を介して主流路132内に供給される。主流路132内に供給された空気は、主流路132内の空間を流れる。そして、空気は、主流路132から分岐流路134a、134bに導かれ、第2噴射口138a、138bから炉の内部空間に噴射される。
【0035】
[第1供給部120および第2供給部140の空気量の比]
続いて、上記第1供給部120によって第1噴射部110(第1酸化剤ガス噴射ノズル114)に供給される空気量と、第2供給部140によって第2噴射部130に供給される空気量との関係について説明する。
【0036】
第1供給部120および第2供給部140は、合計で、目標空気量の空気を供給する。目標空気量は、第1供給部120によって第1噴射部110(燃料噴射ノズル112)に供給される燃料ガスに対する理論空気量以上の所定の空気量である。理論空気量は、燃料ガスを完全燃焼させるために必要な最小の空気量である。目標空気量は、例えば、理論空気量の1.1倍~1.2倍である。
【0037】
図3は、第1供給部120によって供給される空気の比率と、排気ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)量との関係を説明する図である。
図3中、横軸は、目標空気量に対する、第1供給部120によって供給される空気の比率を示す。
図3中、縦軸は、炉の煙道(煙突)から排出される排気ガス中に含まれるNOx量を示す。なお、NOx量は、第1供給部120が目標空気量の空気を供給した場合、つまり、第2供給部140(第2噴射部130)を備えない場合の排気ガス中に含まれるNOx量を1.00とする。
【0038】
図3に示すように、第1供給部120によって供給される空気の比率が、1/2(第2供給部140によって供給される空気の比率も1/2)以下の範囲では、比率が大きくなるにつれて、NOx量が低減する。第1供給部120によって供給される空気の比率が、1/2の場合、NOx量は、0.08程度となる。
【0039】
一方、第1供給部120によって供給される空気の比率が、1/2超の範囲では、比率が大きくなるにつれて、NOx量が増加する。例えば、第1供給部120によって供給される空気の比率が、4/5(第2供給部140によって供給される空気の比率は1/5)を超えると、NOx量は1.00以上となる。
【0040】
なお、目標空気量の1/3未満の空気を供給した場合、NOxの量は、0.25以下となるものの、燃料ガスの着火性が低下する。一方、目標空気量の2/3超の空気を供給した場合、NOxの量が0.375を上回ってしまう。
【0041】
したがって、第1供給部120は、目標空気量の1/3以上2/3以下、好ましくは1/2の空気を、第1噴射部110(第1酸化剤ガス噴射ノズル114)に供給する。これにより、第1供給部120は、燃料ガスの着火性を低下させることなく、NOxを低減することが可能となる。
【0042】
なお、第1供給部120が目標空気量未満の一次空気を供給することにより、混合ガス噴射口114cから炉の内部空間に噴出される混合ガス中の燃料ガス(アンモニア)が一次空気で燃焼されても、炉の内部空間において未燃のアンモニアが残存する。このため、炉の内部空間において、一次空気で燃焼したアンモニアによって生じるNOxを、未燃のアンモニアで還元(脱硝)することができる。したがって、バーナ100は、炉の内部空間において生じる排気ガス中のNOxを低減することが可能となる。
【0043】
そして、第2供給部140が、第1噴射部110に供給される空気量と目標空気量との差分の空気を第2噴射部130に供給する。これにより、バーナ100は、未燃の燃料ガスを二次空気によって完全燃焼させることが可能となる。
【0044】
[第1噴射部110および第2噴射部130のガスの流速比]
続いて、混合ガス噴射口114cから噴出される混合ガスの流速と、第2噴射口138a、138bから噴出される空気の流速との関係について説明する。
【0045】
図4は、混合ガス噴射口114cから噴出される混合ガスの流速と第2噴射口138a、138bら噴出される空気の流速との流速比、および、排気ガス中に含まれるNOx量の関係を説明する図である。
図4中、横軸は、混合ガス噴射口114cから噴出される混合ガスの流速aと第2噴射口138a、138bから噴出される空気の流速bとの流速比a/bを示す。
図4中、縦軸は、炉の煙道(煙突)から排出される排気ガス中に含まれるNOx量を示す。なお、NOx量は、第1供給部120が目標空気量の空気を供給した場合、つまり、第2供給部140(第2噴射部130)を備えない場合の排ガス気中に含まれるNOx量を1.00とする。
【0046】
図4に示すように、流速比a/bが大きくなるほど、つまり、第2噴射口138a、138bから噴出される空気の流速bが低くなるほど、NOx量は、低減する。例えば、流速比a/bが0.05である場合、NOx量は、0.16程度となる。なお、流速aおよび流速bが変更されても、流速比a/bが大きくなるほど、NOx量は、低減する。
【0047】
したがって、第1噴射部110の混合ガス噴射口114cおよび第2噴射部130の第2噴射口138a、138bは、流速比a/bが0.05以上となるように口径が設計される。これにより、混合ガス噴射口114cから噴射される混合ガスの流速aと、第2噴射口138a、138bから噴射される空気の流速bとの流速比a/bが、0.05以上となる。
【0048】
[第1噴射部110と第2噴射部130との間の距離Ln]
続いて、第1噴射部110と第2噴射部130との間の距離Lnについて説明する。上記したように、第1噴射部110の混合ガス噴射口114cの中心と、第2噴射部130の第2噴射口138aの中心との間の距離Lnは、混合ガス噴射口114cの口径Dの1.85倍以上6.0倍未満である。また、第1噴射部110の混合ガス噴射口114cの中心と、第2噴射部130の第2噴射口138bの中心との間の距離Lnは、混合ガス噴射口114cの口径Dの1.85倍以上6.0倍未満である。
【0049】
図5は、第1噴射部110と第2噴射部130との間の距離Lnと混合ガス噴射口114cの口径Dとの関係と、排気ガス中のNOxの濃度との関係を示す図である。
図5中、縦軸は、換算NOx濃度[ppm]を示し、横軸は、混焼率ENH
3[%]を示す。なお、換算NOx濃度は、下記式(1)を用いて算出される値である。
換算NOx濃度=実測NOx濃度×(21-換算O
2濃度)/(21-実測O
2濃度) …式(1)
本実施形態では、換算O
2濃度を11として、換算NOx濃度を算出した。
【0050】
また、混焼率ENH3は、低位発熱量(Lower Heating Value: LHV)をベースとした際のアンモニアと都市ガスの混焼率[%]を示す。なお、混焼率ENH3:100%の場合、燃料ガスは、アンモニアのみを含む。混焼率ENH3:0%である場合、燃料ガスは、都市ガスのみを含む。また、混焼率ENH3:0%超100%未満である場合、燃料ガスは、アンモニアおよび都市ガスを含む。都市ガスは、例えば都市ガス13Aである。
【0051】
また、
図5中、実線は、距離Ln/口径D=1.84である場合を示す。
図5中、破線は、距離Ln/口径D=3.68である場合を示す。
図5中、一点鎖線は、距離Ln/口径D=5.51である場合を示す。
【0052】
図5に示すように、混焼率ENH
3:80%未満である場合、距離Ln/口径D=1.84である場合よりも距離Ln/口径D=3.68である場合の方が、換算NOxが低い。また、混焼率ENH
3:80%未満である場合、距離Ln/口径D=3.68である場合よりも距離Ln/口径D=5.51である場合の方が、換算NOxが低い。つまり、距離Ln/口径Dが大きくなるほど、換算NOxが低くなる。
【0053】
また、混焼率ENH3:80%以上である場合、距離Ln/口径D=1.84である場合よりも距離Ln/口径D=5.51である場合の方が、換算NOxが低い。また、混焼率ENH3:80%以上である場合、距離Ln/口径D=5.51である場合よりも距離Ln/口径D=3.68である場合の方が、換算NOxが低い。
【0054】
したがって、距離Lnを口径Dの1.85倍以上とすることにより、排気ガス中のNOxを低減することが可能となる。
【0055】
一方、距離Lnを口径Dの6.0倍以上とすると、排気ガスに未燃のアンモニアが含まれることになる。したがって、距離Lnを口径Dの6.0倍未満とすることにより、未燃のアンモニアが発生してしまう事態を回避することができる。
【0056】
つまり、距離Lnを口径Dの1.85倍以上6.0倍未満とすることにより、排気ガス中のNOx濃度を低減し、かつ、排気ガス中に未燃のアンモニア含まれてしまう事態を回避することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係るバーナ100は、排気ガス中のNOxを低減することが可能となる。これにより、バーナ100は、大気汚染防止法のNOx排出基準値未満で、アンモニアを含む燃料ガスを燃焼させることができる。
【0058】
また、既存のプレート保炎型の炭化水素燃料用バーナに、第1供給部120、第2噴射部130、および、第2供給部140を取り付けるだけで、バーナ100とすることができる。したがって、既存のプレート保炎型の炭化水素燃料用バーナを流用して、アンモニアを含む燃料ガスを低NOxで燃焼させることが可能となる。
【0059】
また、バーナ100は、燃焼速度が遅いアンモニアの燃焼性を改善することができ、炉における熱効率を向上させることが可能となる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、上述した実施形態において、酸化剤ガスとして空気を例に挙げた。しかし、酸化剤ガスは、燃料ガスを燃焼させることができればよい。酸化剤ガスは、空気の他、例えば、酸素富化空気、酸素であってもよい。なお、酸化剤ガスが空気以外である場合、上記理論空気量は、理論酸化剤量となり、目標空気量は目標酸化剤量となる。理論酸化剤量は、燃料ガスを完全燃焼させるために必要な最小の酸化剤ガスの量である。また、目標酸化剤量は、理論酸化剤量以上の所定の酸化剤ガス量であり、例えば、理論酸化剤量の1.1倍~1.2倍である。
【0062】
また、上記実施形態において、燃料噴射ノズル112の本体112aおよび第1酸化剤ガス噴射ノズル114の本体114aが管体である場合を例に挙げた。しかし、燃料噴射ノズル112の本体112aおよび第1酸化剤ガス噴射ノズル114の本体114aは、バーナ本体ブロック132a内および耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路であってもよい。
【0063】
同様に、上記実施形態において、主流路132がバーナ本体ブロック132a内および耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路であり、分岐流路134a、134bが耐火材製バーナヘッド132b内に形成される流路である場合を例に挙げた。しかし、主流路132、および、分岐流路134a、134bは、管体であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、第2噴射部130の第2噴射口138a、138bが、第1噴射部110の混合ガス噴射口114cと略同一平面上に設けられる場合を例に挙げた。しかし、第2噴射部130の第2噴射口138a、138bは、第1噴射部110の混合ガス噴射口114cと略同一平面上に設けられずともよい。例えば、第2噴射部130の第2噴射口138a、138bは、火炎に向けて設けられてもよい。
【0065】
また、上記実施形態において、燃料噴射ノズル112の燃料噴射口112cが、第1酸化剤ガス噴射ノズル114の本体114a内に位置するように設けられる場合を例に挙げた。しかし、燃料噴射ノズル112の燃料噴射口112cは、第1酸化剤ガス噴射ノズル114の混合ガス噴射口114cと略同一平面上に設けられてもよいし、第1酸化剤ガス噴射ノズル114の本体114aの先端から突出してもよい。この場合、混合ガス噴射口114c(酸化剤噴射口)から一次空気が噴射され、炉の内部空間において混合ガスが生成される。また、混合ガス噴射口114cが一次空気を噴射する場合、燃料噴射口112cおよび混合ガス噴射口114cは、それぞれ複数設けられてもよいし、燃料噴射口112cが1つ設けられ、混合ガス噴射口114cが燃料噴射口112cを囲むように複数設けられてもよい。また、この場合、燃料噴射口112cから噴射される燃料ガスの流速aおよび混合ガス噴射口114cから噴射される一次空気の流速aと、第2噴射口138a、138bから噴射される二次空気の流速bとの流速比a/bが、0.05以上となるとよい。
【0066】
また、上記実施形態において、第1噴射部110が燃料噴射ノズル112と第1酸化剤ガス噴射ノズル114とを備える場合を例に挙げた。しかし、第1噴射部110は、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスが流れる1のノズルを有していてもよい。この場合、混合ガスを噴射する第1噴射口を1または複数備える。
【0067】
また、上記実施形態において、第2噴射部130が、第2噴射口138a、138bを備える場合を例に挙げた。しかし、第2噴射部130が備える第2噴射口の数に限定はない。例えば、第2噴射部130は、第2噴射口を1つのみ備えていてもよいし、3以上備えていてもよい。なお、第2噴射部130は、第2噴射口を3つ以上備える場合、略同一円周上に略等間隔で複数の第2噴射口が設けられるとよい。また、第2噴射部130が複数の第2噴射口を備えることにより、燃料ガスを効率よく燃焼させることができる。
【0068】
また、上記実施形態において、流速比a/bが、0.05以上となる場合を例に挙げた。しかし、第1供給部120が、燃料ガスと、目標酸化剤量の1/3以上2/3以下の空気とを第1噴射部110に供給し、第2噴射部130が第1噴射部110に供給される空気の量と目標空気量との差分の空気を第2噴射部130に供給すれば、流速比a/bは、0.05未満であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態において、第1供給部120が、燃料ガスと、目標酸化剤量の1/3以上2/3以下の空気とを第1噴射部110に供給し、第2噴射部130が第1噴射部110に供給される空気の量と目標空気量との差分の空気を第2噴射部130に供給する場合を例に挙げた。しかし、流速比a/bが、0.05以上であれば、第1供給部120によって供給される空気量と、第2噴射部130によって供給される空気量との比に限定はない。
【0070】
また、上記実施形態において、第1噴射部110が、炉壁10に形成される第1噴射口(混合ガス噴射口114c)を1つ有する場合を例に挙げた。しかし、第1噴射部110が、炉壁10に形成される複数の第1噴射口を有する場合、複数の第1噴射口の重心と、1または複数の第2噴射口の重心との間の距離Lnを、複数の第1噴射口における2つの第1噴射口の中心を結ぶ仮想直線のうち、最も長い仮想直線の長さの1.85倍以上6.0倍未満としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100 バーナ
110 第1噴射部
112c 燃料噴射口(第1噴射口)
114c 混合ガス噴射口(酸化剤噴射口、第1噴射口)
120 第1供給部
130 第2噴射部
138a 第2噴射口
140 第2供給部