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特開2022-130791真空排気方法および真空排気システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130791
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】真空排気方法および真空排気システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
F04B37/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029379
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】穂積 崇史
(72)【発明者】
【氏名】塩川 篤志
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA21
3H076BB28
3H076BB31
3H076BB43
3H076CC51
3H076CC81
(57)【要約】
【課題】副生成物の生成を抑制しつつ、不活性ガスの導入に伴う問題を解決することができる真空排気方法が提供される。
【解決手段】真空排気方法は、真空ポンプ装置DPを起動した後、真空ポンプ装置DPの回転速度を所定の安定速度まで上昇させる上昇工程と、真空ポンプ装置DPの回転速度が安定速度に到達した後に、不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入するガス導入工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ装置によって真空チャンバを排気する真空排気方法であって、
前記真空ポンプ装置を起動した後、前記真空ポンプ装置の回転速度を所定の安定速度まで上昇させる上昇工程と、
前記真空ポンプ装置の回転速度が前記安定速度に到達した後に、不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入するガス導入工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記安定速度は、前記真空ポンプ装置の現在の回転速度におけるインバータ出力が前記真空ポンプ装置の軸出力よりも大きくなるときの第1安定速度を含んでおり、
前記真空ポンプ装置の回転速度が前記第1安定速度に到達した後に、前記ガス導入工程を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安定速度は、前記真空ポンプ装置の回転速度が定格回転速度であるときの第2安定速度を含んでおり、
前記真空ポンプ装置の回転速度が前記第2安定速度に到達した後に、前記ガス導入工程を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記真空排気方法は、前記真空ポンプ装置に接続された不活性ガス供給ラインを通じて、前記不活性ガスを加熱するガス加熱工程を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記真空排気方法は、前記ガス導入工程において、前記真空ポンプ装置に接続された不活性ガス供給ラインに取り付けられた開閉弁を開く開動作工程を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記真空排気方法は、
前記真空ポンプ装置に接続された不活性ガス供給ラインから分岐するバイパスラインを通じて、ゼロ流量を含む第1流量の不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する第1導入工程と、
前記第1流量よりも大きな第2流量の不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する第2導入工程と、を含む、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
真空チャンバを排気する真空ポンプ装置と、
不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入するガス導入装置と、
前記真空ポンプ装置の動作および前記ガス導入装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記真空ポンプ装置を起動した後、前記真空ポンプ装置の回転速度を所定の安定速度まで上昇させ、
前記真空ポンプ装置の回転速度が前記安定速度に到達した後、前記ガス導入装置を制御して、前記不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する、真空排気システム。
【請求項8】
前記安定速度は、前記真空ポンプ装置の現在の回転速度におけるインバータ出力が前記真空ポンプ装置の軸出力よりも大きくなるときの第1安定速度を含んでおり、
前記制御装置は、前記真空ポンプ装置の回転速度が前記第1安定速度に到達した後に、前記ガス導入装置を制御して、前記不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する、請求項7に記載の真空排気システム。
【請求項9】
前記安定速度は、前記真空ポンプ装置の回転速度が定格回転速度であるときの第2安定速度を含んでおり、
前記制御装置は、前記真空ポンプ装置の回転速度が前記第2安定速度に到達した後に、前記ガス導入装置を制御して、前記不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する、請求項7に記載の真空排気システム。
【請求項10】
前記ガス導入装置は、
前記真空ポンプ装置に接続された不活性ガス供給ラインと、
前記不活性ガス供給ラインを通じて、前記不活性ガスを加熱するガス加熱構造と、を備えている、請求項7~請求項9のいずれか一項に記載の真空排気システム。
【請求項11】
前記ガス加熱構造は、前記不活性ガス供給ラインを加熱するヒーターである、請求項10に記載の真空排気システム。
【請求項12】
前記ガス加熱構造は、前記真空ポンプ装置の排気口側の圧縮熱によって加熱されたポンプケーシングである、請求項10または請求項11に記載の真空排気システム。
【請求項13】
前記ガス導入装置は、前記不活性ガス供給ラインを開閉する開閉弁を備えており、
前記制御装置は、前記開閉弁の開閉動作を制御する、請求項7~請求項12のいずれか一項に記載の真空排気システム。
【請求項14】
前記ガス導入装置は、前記不活性ガス供給ラインを流れる不活性ガスの流量を検出する流量センサを備えており、
前記制御装置は、前記流量センサから送られる流量信号に基づいて、前記開閉弁の状態を判断する、請求項7~請求項13のいずれか一項に記載の真空排気システム。
【請求項15】
前記ガス導入装置は、前記不活性ガス供給ラインを開閉する開閉弁と、前記不活性ガス供給ラインを流れる不活性ガスの流量を検出する流量センサと、の組み合わせを備えている、請求項7~請求項14のいずれか一項に記載の真空排気システム。
【請求項16】
前記ガス導入装置は、
前記不活性ガス供給ラインから分岐して、前記真空ポンプ装置に接続されたバイパスラインと、
前記バイパスラインを通じて、前記真空ポンプ装置に導入される前記不活性ガスの流量を制御する流量制御装置と、を備えており、
前記制御装置は、
前記流量制御装置を通じて、ゼロ流量を含む第1流量の不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する第1導入工程を実行し、
前記第1導入工程を実行し、かつ前記真空ポンプ装置の回転速度が前記安定速度に到達した後に、前記第1流量よりも大きな第2流量の不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する第2導入工程を実行する、請求項7~請求項15のいずれか一項に記載の真空排気システム。
【請求項17】
前記流量制御装置は、前記バイパスラインを開閉する開閉弁を備えている、請求項16に記載の真空排気システム。
【請求項18】
前記流量制御装置は、前記バイパスラインに取り付けられた流量調整弁またはオリフィスを備えている、請求項16または請求項17に記載の真空排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空排気方法および真空排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置(例えば、エッチング装置や化学気相成長装置(CVD)など)の真空チャンバを真空状態に維持するために、真空チャンバ内のガスを排気する真空ポンプ装置が知られている。
【0003】
真空チャンバ内に供給される成膜用のガス(プロセスガス)は、副生成物を生成するガスを含んでいる場合がある。この場合、真空ポンプ装置が真空チャンバ内のガスを排気すると、副生成物がガスとともに真空ポンプ装置内に流入し、または副生成物が真空ポンプ装置内で生成されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-252651号公報
【特許文献2】特開2004-293466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
副生成物は温度および圧力に依存して生成される。例えば、副生成物は、高圧時(および/または低温時)に生成されやすい。そこで、副生成物の生成を抑制する手段として、真空ポンプ装置内に供給されるガスの圧力を下げる方法が考えられる。この方法の一例は、ガスの濃度を希釈するための不活性ガスを真空ポンプ装置内に導入する方法である。
【0006】
しかしながら、このような方法では、より多くの気体が真空ポンプ装置に導入される。したがって、真空ポンプ装置を駆動するための消費電力が大きくなり、真空ポンプ装置の回転速度が定格の回転速度(定格回転速度)に到達する前に停滞してしまうおそれがある。結果として、真空ポンプ装置の立ち上がりに多大な時間を要したり、または、真空ポンプ装置の回転速度が定格回転速度に到達しないといった問題が生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、副生成物の生成を抑制しつつ、不活性ガスの導入に伴う問題を解決することができる真空排気方法および真空排気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、真空ポンプ装置によって真空チャンバを排気する真空排気方法が提供される。真空排気方法は、前記真空ポンプ装置を起動した後、前記真空ポンプ装置の回転速度を所定の安定速度まで上昇させる上昇工程と、前記真空ポンプ装置の回転速度が前記安定速度に到達した後に、不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入するガス導入工程と、を含む。
【0009】
一態様では、前記安定速度は、前記真空ポンプ装置の現在の回転速度におけるインバータ出力が前記真空ポンプ装置の軸出力よりも大きくなるときの第1安定速度を含んでおり、前記真空ポンプ装置の回転速度が前記第1安定速度に到達した後に、前記ガス導入工程を実行する。
一態様では、前記安定速度は、前記真空ポンプ装置の回転速度が定格回転速度であるときの第2安定速度を含んでおり、前記真空ポンプ装置の回転速度が前記第2安定速度に到達した後に、前記ガス導入工程を実行する。
一態様では、前記真空排気方法は、前記真空ポンプ装置に接続された不活性ガス供給ラインを通じて、前記不活性ガスを加熱するガス加熱工程を含む。
【0010】
一態様では、前記真空排気方法は、前記ガス導入工程において、前記真空ポンプ装置に接続された不活性ガス供給ラインに取り付けられた開閉弁を開く開動作工程を含む。
一態様では、前記真空排気方法は、前記真空ポンプ装置に接続された不活性ガス供給ラインから分岐するバイパスラインを通じて、ゼロ流量を含む第1流量の不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する第1導入工程と、前記第1流量よりも大きな第2流量の不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する第2導入工程と、を含む。
【0011】
一態様では、真空チャンバを排気する真空ポンプ装置と、不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入するガス導入装置と、前記真空ポンプ装置の動作および前記ガス導入装置の動作を制御する制御装置と、を備える真空排気システムが提供される。前記制御装置は、前記真空ポンプ装置を起動した後、前記真空ポンプ装置の回転速度を所定の安定速度まで上昇させ、前記真空ポンプ装置の回転速度が前記安定速度に到達した後、前記ガス導入装置を制御して、前記不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する。
【0012】
一態様では、前記安定速度は、前記真空ポンプ装置の現在の回転速度におけるインバータ出力が前記真空ポンプ装置の軸出力よりも大きくなるときの第1安定速度を含んでおり、前記制御装置は、前記真空ポンプ装置の回転速度が前記第1安定速度に到達した後に、前記ガス導入装置を制御して、前記不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する。
一態様では、前記安定速度は、前記真空ポンプ装置の回転速度が定格回転速度であるときの第2安定速度を含んでおり、前記制御装置は、前記真空ポンプ装置の回転速度が前記第2安定速度に到達した後に、前記ガス導入装置を制御して、前記不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する。
一態様では、前記ガス導入装置は、前記真空ポンプ装置に接続された不活性ガス供給ラインと、前記不活性ガス供給ラインを通じて、前記不活性ガスを加熱するガス加熱構造と、を備えている。
【0013】
一態様では、前記ガス加熱構造は、前記不活性ガス供給ラインを加熱するヒーターである。
一態様では、前記ガス加熱構造は、前記真空ポンプ装置の排気口側の圧縮熱によって加熱されたポンプケーシングである。
一態様では、前記ガス導入装置は、前記不活性ガス供給ラインを開閉する開閉弁を備えており、前記制御装置は、前記開閉弁の開閉動作を制御する。
【0014】
一態様では、前記ガス導入装置は、前記不活性ガス供給ラインを流れる不活性ガスの流量を検出する流量センサを備えており、前記制御装置は、前記流量センサから送られる流量信号に基づいて、前記開閉弁の状態を判断する。
一態様では、前記ガス導入装置は、前記不活性ガス供給ラインを開閉する開閉弁と、前記不活性ガス供給ラインを流れる不活性ガスの流量を検出する流量センサと、の組み合わせを備えている。
一態様では、前記ガス導入装置は、前記不活性ガス供給ラインから分岐して、前記真空ポンプ装置に接続されたバイパスラインと、前記バイパスラインを通じて、前記真空ポンプ装置に導入される前記不活性ガスの流量を制御する流量制御装置と、を備えており、前記制御装置は、前記流量制御装置を通じて、ゼロ流量を含む第1流量の不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する第1導入工程を実行し、前記第1導入工程を実行し、かつ前記真空ポンプ装置の回転速度が前記安定速度に到達した後に、前記第1流量よりも大きな第2流量の不活性ガスを前記真空ポンプ装置に導入する第2導入工程を実行する。
【0015】
一態様では、前記流量制御装置は、前記バイパスラインを開閉する開閉弁を備えている。
一態様では、前記流量制御装置は、前記バイパスラインに取り付けられた流量調整弁またはオリフィスを備えている。
【発明の効果】
【0016】
真空排気方法は、真空ポンプ装置の回転速度が安定速度に到達した後、不活性ガスを真空ポンプ装置に導入する方法である。したがって、真空排気方法は、副生成物の生成を抑制することができるのみならず、真空ポンプ装置の立ち上がりに必要な時間を短縮することもできる。さらに、真空ポンプ装置の回転速度が定格回転速度に到達しないといった問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】真空排気システムの一実施形態を示す図である。
図2】制御装置の動作フローを示す図である。
図3】開閉弁を開閉動作させるタイミングを示す図である。
図4】第1安定速度を説明するための図である。
図5】ガス導入装置の他の実施形態を示す図である。
図6】ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図7】ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図8】ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図9】ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図10】ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図11】ガス加熱構造の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、真空排気システムの一実施形態を示す図である。図1に示すように、真空排気システムDSは、半導体製造工程において、エッチングや成膜などの処理を行うための真空チャンバCHを排気する真空ポンプ装置DPと、不活性ガス(例えば、Nガス)を真空ポンプ装置DPに導入するガス導入装置GIと、真空ポンプ装置DPの動作およびガス導入装置GIの動作を制御する制御装置CTと、を備えている。
【0019】
真空チャンバCHは、半導体製造装置(図示しない)の一部を構成しており、真空チャンバCH内には、副生成物を生成するガスを含むプロセスガスが導入される。真空ポンプ装置DPは、真空チャンバCHに接続されている。真空ポンプ装置DPは、その駆動により、真空チャンバCHを排気する。プロセスガスは、真空チャンバCHの排気により真空ポンプ装置DPに吸い込まれる。
【0020】
図1に示す実施形態では、真空ポンプ装置DPは、2台の真空ポンプ装置(すなわち、ブースターポンプ装置BPおよびメインポンプ装置MP)を備えている。ブースターポンプ装置BPは、ブースターポンプBP1と、ブースターポンプBP1を駆動するモータBP2と、モータBP2の可変速手段であるインバータINV1と、を備えている。同様に、メインポンプ装置MPは、メインポンプMP1と、メインポンプMP1を駆動するモータMP2と、モータMP2の可変速手段であるインバータINV2と、を備えている。一実施形態では、真空ポンプ装置DPは、単一のポンプ装置を備えてもよく、または3台以上の真空ポンプ装置を備えてもよい。
【0021】
ガス導入装置GIは、真空ポンプ装置DPに接続されている。図1に示す実施形態では、ガス導入装置GIは、メインポンプ装置MPのメインポンプMP1に接続された不活性ガス供給ラインSLと、不活性ガス供給ラインSLを通じて不活性ガスをメインポンプ装置MPに供給するガス供給源ISと、不活性ガス供給ラインSLを開閉する開閉弁VL1と、を備えている。一実施形態では、不活性ガス供給ラインSLは、ブースターポンプ装置BPのブースターポンプBP1に接続されてもよい。他の実施形態では、不活性ガス供給ラインSLは、ブースターポンプBP1およびメインポンプMP1の両方に接続されてもよい。
【0022】
制御装置CTは、開閉弁VL1に電気的に接続されており、開閉弁VL1の開閉動作を制御する。開閉弁VL1の一例として、電磁弁を挙げることができる。制御装置CTが開閉弁VL1を閉じると、開閉弁VL1は、不活性ガスの、ガス供給源ISからメインポンプMP1への供給を遮断する。制御装置CTが開閉弁VL1を開くと、開閉弁VL1は、不活性ガスの、ガス供給源ISからメインポンプMP1への供給を許容する。
【0023】
制御装置CTは、インバータINV1およびインバータINV2のそれぞれに電気的に接続されており、モータBP2およびモータMP2の駆動動作を制御する。言い換えれば、制御装置CTは、モータBP2およびモータMP2を通じて、ブースターポンプ装置BPおよびメインポンプ装置MPの運転を制御する。以下、本明細書において、ブースターポンプ装置BPおよびメインポンプ装置MPを総称して、真空ポンプ装置DPと呼ぶことがある。
【0024】
真空チャンバCHを排気すると、副生成物を生成するガスを含むプロセスガスは、真空ポンプ装置DPに吸い込まれる。上述したように、副生成物は、圧力(および温度)に依存して、生成される。したがって、副生成物の生成を抑制するために、ガス導入装置GIは、不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入して、プロセスガスの圧力を低下させる。
【0025】
しかしながら、真空ポンプ装置DPの起動時から不活性ガスを導入すると、真空ポンプ装置DPの消費電力が大きくなるおそれがあり、真空ポンプ装置DPの回転速度が上昇せずに、停滞するおそれがある。結果として、真空ポンプ装置DPの立ち上がりに多大な時間を要するおそれや真空ポンプ装置DPの回転速度が定格回転速度に到達しないおそれがある。
【0026】
そこで、本実施形態では、制御装置CTは、真空ポンプ装置DPを起動した後、真空ポンプ装置DPの回転速度を所定の安定速度まで上昇させ、真空ポンプ装置DPの回転速度が安定速度に到達した後、ガス導入装置GIを制御して、不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入する。
【0027】
制御装置CTは、真空ポンプ装置DPの起動開始から真空ポンプ装置DPの回転速度が安定速度に到達するまでの間、不活性ガスを導入せずに、真空ポンプ装置DPの回転速度が安定速度に到達した後、不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入する。このような動作により、制御装置CTは、真空ポンプ装置DPの起動時に不要な電力を消費することなく、真空ポンプ装置DPの回転速度をスムーズに定格回転速度に到達させることができる。結果として、真空排気システムDSは、真空ポンプ装置DPの立ち上がり時間を短縮することができる。さらに、このような動作により、真空排気システムDSは、不活性ガスの使用量の削減を実現することができる。
【0028】
図2は、制御装置の動作フローを示す図である。図2のステップS101に示すように、まず、制御装置CTは、真空ポンプ装置DPを起動する。その後、ステップS102に示すように、真空ポンプ装置DPの回転速度を所定の安定速度まで上昇させる。この回転速度を上昇させる工程は、上昇工程と呼ばれる。制御装置CTは、真空ポンプ装置DPに供給される電力(すなわち、電流、電圧)に基づいて、真空ポンプ装置DPの回転速度を判断する。
【0029】
図3は、開閉弁を開閉動作させるタイミングを示す図である。図3に示すように、所定の安定速度は、第1安定速度と、第1安定速度よりも大きな第2安定速度と、を含んでいる。第1安定速度は、真空ポンプ装置DPの現在の回転速度におけるインバータ出力(電力)が真空ポンプ装置DPの軸出力よりも大きくなるときの速度である。第2安定速度は、真空ポンプ装置DPの回転速度が定格回転速度であるときの速度である。
【0030】
図4は、第1安定速度を説明するための図である。図4に示すように、吸気口IPと1段目のロータRT1との間の容積は1段目容積Vと定義され、排気口EPと2段目のロータRT2との間の容積は2段目容積Vと定義される。軸出力は、ロータの回転時に発生する圧縮動力(Wc)および機械損(F)を合計した出力である。圧縮動力(Wc)は、次の数式により表すことができる。圧縮動力(Wc)=Σ(各段の容積V×回転速度r×各段の圧力差P
【0031】
例えば、図4に示す実施形態では、圧縮動力(Wc)は次の数式により表すことができる。圧縮動力(Wc)=1段目容積V×回転速度r×(P1out-P1in)+V×r×(P2out-P2in
【0032】
機械損(F)は主に、真空ポンプ装置DPの構成要素(例えば、タイミングギヤ、軸受)の摩擦によって発生し、機械損(F)は真空ポンプ装置DPの回転速度に比例して増加する。
【0033】
図2のステップS103に示すように、制御装置CTは、ステップS102の実行後、真空ポンプ装置DPの回転速度が所定の安定速度(第1安定速度または第2安定速度)に到達したか否かを判断する。真空ポンプ装置DPの回転速度が所定の安定速度に到達していない場合(ステップS103の「No」参照)、制御装置CTは、ステップS102を継続する。このとき、制御装置CTは、開閉弁VL1の閉動作を継続する。
【0034】
真空ポンプ装置DPの回転速度が所定の安定速度に到達した場合(ステップS103の「Yes」参照)、ステップS104に示すように、制御装置CTは、開閉弁VL1を開いて、不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入する。この不活性ガスを導入する工程は、ガス導入工程と呼ばれる。
【0035】
図3に示す実施形態では、制御装置CTは、真空ポンプ装置DPの回転速度が第1安定速度に到達した後に、ガス導入装置GIの開閉弁VL1を開いて、不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入する。一実施形態では、第1安定速度は、真空ポンプ装置DPの排気側の性能が十分に確保され、回転速度の停滞が発生しない回転速度(第2安定速度(すなわち、定格回転速度)の60%程度)に決定される。
【0036】
一実施形態では、制御装置CTは、真空ポンプ装置DPの回転速度が第2安定速度(すなわち、定格回転速度)に到達した後に、ガス導入装置GIの開閉弁VL1を開いて、不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入してもよい。
【0037】
図5は、ガス導入装置の他の実施形態を示す図である。図5に示すように、ガス導入装置GIは、不活性ガス供給ラインSLから分岐して、真空ポンプ装置DPに接続されたバイパスラインBLと、バイパスラインBLを通じて真空ポンプ装置DPに導入される不活性ガスの流量を制御する流量制御装置と、を備えている。
【0038】
図5に示す実施形態では、流量制御装置は、バイパスラインBLを開閉する開閉弁VL2を備えている。制御装置CTは、開閉弁VL2に電気的に接続されており、開閉弁VL2の開閉動作を制御する。開閉弁VL2は、開閉弁VL1と同一の構成を有してもよい。開閉弁VL2の一例として、電磁弁を挙げることができる。
【0039】
バイパスラインBLは、不活性ガス供給ラインSLの断面積よりも小さな断面積を有している。このような構造により、バイパスラインBLを通過する不活性ガスの流量(第1流量)は、不活性ガス供給ラインSLを通過する不活性ガスの流量(第2流量)よりも小さい。第1流量は、不活性ガスの、バイパスラインBLの通過を遮断するゼロ流量を含んでもよい。したがって、開閉弁VL2が閉状態であるとき、バイパスラインBLを通過する不活性ガスの流量はゼロである。開閉弁VL2が開状態であるとき、バイパスラインBLを通過する不活性ガスの流量は、ゼロよりも大きく、第2流量よりも小さい。
【0040】
図5に示す実施形態では、制御装置CTは、上記上昇工程において、バイパスラインBLを通じて、第1流量の不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入する第1導入工程を実行してもよい。一実施形態では、第1導入工程は、真空ポンプ装置DPの起動開始直後から開始されてもよい。第1導入工程では、開閉弁VL1は、閉状態に維持されている。
【0041】
制御装置CTは、第1導入工程の実行後、上記ガス導入工程において、第1流量よりも大きな第2流量の不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入してもよい(第2導入工程)。第2導入工程では、制御装置CTは、開閉弁VL1を閉状態から開状態に切り替える。このとき、制御装置CTは、開閉弁VL2を閉じてもよく、または開いてもよい。開閉弁VL2を開くことにより、より大きな流量の不活性ガスを真空ポンプ装置DPに導入することができる。
【0042】
図6は、ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。図6に示すように、ガス導入装置GIは、開閉弁VL1および開閉弁VL2の代わりに、流量制御装置としての三方弁TVLを備えてもよい。図6に示す実施形態では、三方弁TVLは、開閉弁VL1および開閉弁VL2に相当する。
【0043】
図6に示すように、制御装置CTは、三方弁TVLに電気的に接続されており、三方弁TVLの切り替え動作を制御する。より具体的には、制御装置CTは、三方弁TVLを動作(すなわち、第1動作)させて、不活性ガス供給ラインSLの上流側および下流側を接続する。この場合、ガス供給源ISおよび真空ポンプ装置DPは、不活性ガス供給ラインSLを通じて連結される。制御装置CTは、三方弁TVLを動作(すなわち、第2動作)させて、不活性ガス供給ラインSLの上流側およびバイパスラインBLを接続する。この場合、ガス供給源ISおよび真空ポンプ装置DPは、バイパスラインBLを通じて連結される。
【0044】
図6に示す実施形態における真空排気システムDSも、図5に示す実施形態における真空排気システムDSと同様の効果を奏することができる。したがって、制御装置CTは、上記上昇工程において、三方弁TVLを第2動作させて、第1流量(図6に示す実施形態では、ゼロ流量)の不活性ガスを、バイパスラインBLを通じて真空ポンプ装置DPに導入する。制御装置CTは、上記ガス導入工程において、三方弁TVLを第1動作させて、第2流量の不活性ガスを、不活性ガス供給ラインSLを通じて真空ポンプ装置DPに導入する。
【0045】
図7は、ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。図7に示すように、流量制御装置は、バイパスラインBLに取り付けられたオリフィスORを備えてもよい。図7に示す実施形態では、制御装置CTは、上記上昇工程において、開閉弁VL1を閉じて、第1流量(図7に示す実施形態では、ゼロ流量よりも大きな流量)の不活性ガスを、バイパスラインBLを通じて真空ポンプ装置DPに導入する。制御装置CTは、上記ガス導入工程において、開閉弁VL1を開いて、第2流量の不活性ガスを、不活性ガス供給ラインSLを通じて真空ポンプ装置DPに導入する。このとき、第1流量の不活性ガスは、バイパスラインBLを通じて真空ポンプ装置DPに導入される。
【0046】
図示しないが、流量制御装置は、オリフィスORの代わりに流量調整弁を備えてもよい。さらに、必要に応じて、図5に示す実施形態と、図6に示す実施形態と、図7に示す実施形態と、を、適宜、組み合わせてもよい。例えば、流量制御装置は、図5に示す開閉弁VL2と、図6に示す三方弁TVLと、図7に示すオリフィスOR(または流量調整弁)と、を備えてもよい。
【0047】
図8は、ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。図8に示すように、ガス導入装置GIは、不活性ガス供給ラインSLを流れる不活性ガスの流量を検出する流量センサFSをさらに備えてもよい。流量センサFSは、不活性ガスの流れ方向において、開閉弁VL1の下流側に配置されている。
【0048】
制御装置CTは、流量センサFSに電気的に接続されており、流量センサFSから送られる流量信号に基づいて、流量センサFSを通過する不活性ガスの流量を測定する。図8に示す実施形態では、制御装置CTは、流量センサFSから送られる流量信号に基づいて、開閉弁VL1の状態(より具体的には、異常)を判断することができる。例えば、制御装置CTは、上記上昇工程において、流量センサFSを通過する不活性ガスの流量が所定のしきい値(第1しきい値)よりも大きい場合、制御装置CTは、開閉弁VL1の異常を決定してもよい。同様に、制御装置CTは、上記ガス導入工程において、流量センサFSを通過する不活性ガスの流量が所定のしきい値(第2しきい値)よりも小さい場合、制御装置CTは、開閉弁VL1の異常を決定してもよい。
【0049】
このように、制御装置CTは、流量センサFSから送られる流量信号に基づいて、開閉弁VL1の異常を決定することができる。制御装置CTは、開閉弁VL1の異常を決定した場合、警報を発報してもよい。図示しないが、流量センサFSは、バイパスラインBL(図5図6、および図7参照)に取り付けられてもよい。
【0050】
図9は、ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。図9に示すように、ガス導入装置GIは、質量流量センサFCを備えてもよい。質量流量センサFCは、開閉弁VL1と、流量センサFSと、の組み合わせである。図9に示す実施形態では、質量流量センサFCは、流量センサに開閉弁が内蔵された構造を有している。制御装置CTは、質量流量センサFCに電気的に接続されている。制御装置CTは、質量流量センサFCを動作させて、不活性ガス供給ラインSLの開閉動作を制御し、かつ質量流量センサFCから送られる流量信号に基づいて、質量流量センサFCを通過する不活性ガスの流量を測定することができる。
【0051】
図10は、ガス導入装置のさらに他の実施形態を示す図である。図10に示す実施形態では、ガス導入装置GIは、不活性ガス供給ラインSLを通じて、不活性ガスを加熱するガス加熱構造を備えてもよい。上述したように、副生成物は、圧力のみならず、温度にも依存して、生成される。したがって、副生成物の生成を抑制するために、ガス導入装置GIはガス加熱構造を備えてもよい。ガス加熱構造によって加熱された不活性ガスが真空ポンプ装置DPに供給されると、プロセスガスの温度低下は抑制される。言い換えれば、プロセスガスの温度は上昇される。結果として、副生成物の生成は抑制される。
【0052】
図10に示すように、ガス加熱構造は、不活性ガス供給ラインSLを加熱するヒーターHTである。ヒーターHTは、不活性ガス供給ラインSLを加熱し、加熱された不活性ガス供給ラインSLを通過する不活性ガスは高温となる。結果として、高温の不活性ガスが真空ポンプ装置DPに供給され、副生成物の生成は抑制される。不活性ガスを加熱する工程は、ガス加熱工程と呼ばれる。
【0053】
図11は、ガス加熱構造の他の実施形態を示す図である。図11に示すように、ガス加熱構造は、真空ポンプ装置DP(図11に示す実施形態では、メインポンプ装置MP)の排気口EP側の圧縮熱によって加熱されたポンプケーシングPCである。真空ポンプ装置DPの駆動によって、気体が圧縮排出されると、ポンプケーシングPC(特に、排気口EP側)は発熱し、高温となる。そこで、不活性ガス供給ラインSLは、ポンプケーシングPCに接触するように配置されている。
【0054】
図11に示す実施形態では、不活性ガス供給ラインSLは、ポンプケーシングPCに巻き付いている。このような配置により、不活性ガス供給ラインSLは、ポンプケーシングPCの熱によって加熱され、加熱された不活性ガス供給ラインSLを通過する不活性ガスは高温となる。結果として、高温の不活性ガスが真空ポンプ装置DPに供給され、副生成物の生成は抑制される。
【0055】
図10に示す実施形態と、図11に示す実施形態と、は組み合わされてもよい。この場合、ガス加熱構造は、不活性ガス供給ラインSLに取り付けられたヒーターHTと、不活性ガス供給ラインSLがポンプケーシングPCに巻き付けられた構造と、を有している。
【0056】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0057】
DS 真空排気システム
CH 真空チャンバ
DP 真空ポンプ装置
BP ブースターポンプ装置
BP1 ブースターポンプ
BP2 モータ
INV1 インバータ
MP メインポンプ装置
MP1 メインポンプ
MP2 モータ
INV2 インバータ
IP 吸気口
EP 排気口
RT1 ロータ
RT2 ロータ
GI ガス導入装置
CT 制御装置
SL 不活性ガス供給ライン
IS ガス供給源
VL1 開閉弁
VL2 開閉弁
TVL 三方弁
OR オリフィス
BL バイパスライン
FS 流量センサ
FC 質量流量センサ
HT ヒーター
PC ポンプケーシング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11