(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130936
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220831BHJP
B23K 26/361 20140101ALI20220831BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220831BHJP
【FI】
H01L21/304 601B
B23K26/361
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029615
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】廣沢 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】湊 浩吉
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AD06
4E168AD18
4E168AE01
4E168AE02
4E168CA06
4E168CB01
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA04
4E168DA24
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA01
5F057AA19
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057CA16
5F057DA17
5F057DA22
5F057GA01
5F057GA15
5F057GB02
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】エッジトリミングによって損傷するデバイスの割合を0にする又は低減するとともに、ウェーハが割れる蓋然性、及び/又は、貼り合わせウェーハにおいて汚染源若しくは発塵源が形成される蓋然性を低減することが可能なウェーハの加工方法を提供する。
【解決手段】複数のデバイスが形成されたデバイス領域及びデバイス領域を囲繞する外周余剰領域の境界とウェーハの中心との間隔に応じて変動する幅でウェーハの外周端部を加工する。換言すると、ウェーハのエッジトリミングによって除去される外周端部の幅を、デバイス領域及び外周余剰領域の境界とウェーハの中心との間隔に応じて設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面に有し、かつ、外周端部が面取りされたウェーハの加工方法であって、
該ウェーハを保持する保持面を有し、かつ、該保持面の中心を通る回転軸で回転可能な保持テーブルで該ウェーハを保持する保持ステップと、
該複数のデバイスの少なくとも一部及び該ウェーハの外周を含む領域の撮像によって形成された画像に基づいて、該デバイス領域と該外周余剰領域との境界を特定する境界特定ステップと、
該保持面の外周に沿って加工点を移動させながら、該境界と該ウェーハの中心との間隔に応じて該保持面の中心と該加工点との間隔を調整することによって、該境界と該ウェーハの中心との間隔に応じて変動する幅で該ウェーハの該外周端部を加工する加工ステップと、
を含むことを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
該加工ステップは、回転可能なスピンドルの先端に装着された切削ブレードを該ウェーハに切り込ませることによって行われることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該加工ステップは、該ウェーハに吸収される波長のレーザービームを該ウェーハに照射することによって行われることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該加工ステップは、該ウェーハを透過する波長のレーザービームの集光点を該ウェーハの内部に位置付けた状態において、該レーザービームを該ウェーハに照射することで該ウェーハの内部に形成される変質層に沿って、該ウェーハを破断することによって行われることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが形成されたデバイス領域とデバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面に有し、かつ、外周端部が面取りされたウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)及びLSI(Large Scale Integration)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、ウェーハの表面に多数のデバイスを形成した後に、ウェーハを個々のデバイスを含む領域毎に分割することで製造される。
【0003】
チップの製造に用いられるウェーハは、外周端部に形成された欠けを起点として割れやすい。そのため、チップの製造工程においては、各種工程に先立って、ウェーハの外周端部が面取りされることが一般的である。さらに、チップの製造工程においては、製造されるチップの小型化等を目的として、ウェーハの分割に先立って、ウェーハの裏面側を研削してウェーハが薄化されることも多い。
【0004】
ただし、外周端部が面取りされたウェーハの裏面側を研削してウェーハを薄化すると、ウェーハの裏面側の外周端部がシャープエッジ(ナイフエッジ)になる。この外周端部には、応力が集中して欠けが生じやすい。そのため、チップの製造工程においては、ウェーハの研削に先立って、ウェーハの面取りされた外周端部の一部又は全部を除去するエッジトリミングが行われることがある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
このようなエッジトリミングは、例えば、以下の順序で行われる。まず、ウェーハを保持する保持面を有し、かつ、保持面の中心を通る回転軸で回転可能な保持テーブルでウェーハを保持する。そして、保持テーブルを回転させながら、保持面の中心から一定の距離にエッジトリミングの加工点を位置付けてウェーハの外周端部を加工する。これにより、面取りされた外周端部の一部又は全部がウェーハから除去される。
【0006】
ただし、ウェーハは、その中心が保持面の中心からずれた状態で保持面に置かれることもある。この状態で保持面の中心から一定の距離に加工点を位置付けてエッジトリミングを行うと、ウェーハの中心と加工点との間隔がばらつく。この点に鑑み、ウェーハの中心と保持面の中心とがずれた場合であっても、ウェーハの中心とエッジトリミングの加工点との間隔を一定にする方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
この方法においては、まず、ウェーハの外周上の3点の位置を測定し、測定された3点の位置に基づいてウェーハの中心の位置を算出する。次いで、保持テーブルの保持面の中心とウェーハの中心とのずれ量を算出する。次いで、ウェーハの中心と加工点との間隔が一定に維持されるように、保持テーブルを回転させ、かつ、保持面の中心と加工点との間隔を変更しながら、ウェーハの外周端部を加工する。
【0008】
また、エッジトリミングは、シリコン貫通電極(TSV(Through-Silicon Via))及び裏面照射(BSI(Back Side Illumination))型CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等のデバイスのチップの製造に用いられるウェーハに対して実施されることもある(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
具体的には、このようなデバイスは、貼り合わせられた2つのウェーハ(貼り合わせウェーハ)を用いて製造されるが、各ウェーハの外周端部が面取りされている場合には、ウェーハの外周端部にウェーハ同士が十分に結合されていない未結合部が形成されやすい。そして、このような未結合部は、ゴミが溜まって汚染源又は発塵源になりやすい。そのため、このような汚染源又は発塵源が形成されないように、2つのウェーハを貼り合わせるのに先立って、2つのウェーハの少なくとも一方に対してエッジトリミングが行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000-173961号公報
【特許文献2】特開2006-108532号公報
【特許文献3】特開2006-93333号公報
【特許文献4】特開平10-242091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
チップの製造コストを低減するためには、ウェーハの表面にできるだけ多くのデバイスを形成することが好ましい。すなわち、デバイスは、ウェーハの表面の中央の領域のみならず、ウェーハの外周近傍の領域にも形成されることが好ましい。
【0012】
他方、上述したようにウェーハの割れを防止し、かつ/又は、貼り合わせウェーハに汚染源若しくは発塵源を形成しないためには、ウェーハの裏面側を研削するのに先立って、エッジトリミングが十分に行われることが好ましい。すなわち、エッジトリミングは、ウェーハの外周近傍の領域のみならず、それよりも内側の領域に至る幅広の領域に対して実施されることが好ましい。
【0013】
これらの相反する2つの要望に鑑み、本発明の目的は、エッジトリミングによって損傷するデバイスの割合を0にする又は低減するとともに、ウェーハが割れる蓋然性、及び/又は、貼り合わせウェーハにおいて汚染源若しくは発塵源が形成される蓋然性を低減することが可能なウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面に有し、かつ、外周端部が面取りされたウェーハの加工方法であって、該ウェーハを保持する保持面を有し、かつ、該保持面の中心を通る回転軸で回転可能な保持テーブルで該ウェーハを保持する保持ステップと、該複数のデバイスの少なくとも一部及び該ウェーハの外周を含む領域の撮像によって形成された画像に基づいて、該デバイス領域と該外周余剰領域との境界を特定する境界特定ステップと、該保持面の外周に沿って加工点を移動させながら、該境界と該ウェーハの中心との間隔に応じて該保持面の中心と該加工点との間隔を調整することによって、該境界と該ウェーハの中心との間隔に応じて変動する幅で該ウェーハの該外周端部を加工する加工ステップと、を含むウェーハの加工方法が提供される。
【0015】
さらに、該加工ステップは、回転可能なスピンドルの先端に装着された切削ブレードを該ウェーハに切り込ませることによって行われることが好ましい。
【0016】
あるいは、該加工ステップは、該ウェーハに吸収される波長のレーザービームを該ウェーハに照射することによって行われることが好ましい。
【0017】
あるいは、該加工ステップは、該ウェーハを透過する波長のレーザービームの集光点を該ウェーハの内部に位置付けた状態において、該レーザービームを該ウェーハに照射することで該ウェーハの内部に形成される変質層に沿って、該ウェーハを破断することによって行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、複数のデバイスが形成されたデバイス領域及びデバイス領域を囲繞する外周余剰領域の境界とウェーハの中心との間隔に応じて変動する幅でウェーハの外周端部が加工される。換言すると、本発明においては、ウェーハのエッジトリミングによって除去される外周端部の幅が、デバイス領域及び外周余剰領域の境界とウェーハの中心との間隔に応じて設定される。
【0019】
端的には、この境界とウェーハの中心との間隔が長ければ、この幅が狭くなるようにエッジトリミングが行われる。これにより、エッジトリミングによって損傷するデバイスの割合を0にする又は低減することができる。また、この境界とウェーハの中心との間隔が短ければ、この幅が広くなるようにエッジトリミングが行われる。これにより、エッジトリミング後の工程において、ウェーハが割れる蓋然性、及び/又は、貼り合わせウェーハにおいて汚染源若しくは発塵源が形成させる蓋然性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、ウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図2(B)は、ウェーハの一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、加工方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、保持テーブルに置かれたウェーハの一例を模式的に示す上面図である。
【
図5】
図5(A)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図5(B)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6(A)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図6(B)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(A)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図7(B)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8(A)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図8(B)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9(A)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図9(B)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10(A)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図10(B)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11(A)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図11(B)は、エッジトリミングが行われているウェーハの一例を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12(A)は、エッジトリミングされたウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図12(B)は、エッジトリミングされたウェーハの一例を模式的に示す側面図である。
【
図13】
図13は、レーザー照射装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図14】
図14は、ウェーハの中心が保持テーブルの保持面の中心からずれた状態で保持面に置かれたウェーハの一例を模式的に示す上面図である。
【
図15】
図15は、加工方法の別の例を模式的に示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、
図14に示される保持テーブルを回転させた状態のウェーハの一例を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、ウェーハを加工する加工装置となる切削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図1に示されるX軸方向(前後方向)及びY軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。
【0022】
図1に示される切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の上面には、長手方向がX軸方向に平行な矩形の開口4aが形成されている。開口4a内には、平板状のカバー6と、カバー6の移動に伴って伸縮する蛇腹状のカバー8とが設けられている。
【0023】
カバー6の上方には、保持テーブル10が設けられている。保持テーブル10は、上方に露出した円盤状のポーラス板10aを有する。ポーラス板10aの上面は、概ね平行であり、ウェーハを保持する保持テーブル10の保持面となる。また、カバー6,8の下方には、カバー6及び保持テーブル10をX軸方向に沿って移動させるX軸方向移動機構(不図示)が設けられている。
【0024】
図2(A)は、保持テーブル10の保持面に保持されるウェーハの一例を模式的に示す上面図であり、
図2(B)は、このウェーハを模式的に示す断面図である。
図2(A)及び
図2(B)に示されるウェーハ11は、例えば、Si(シリコン)、SiC(炭化シリコン)又はGaN(窒化ガリウム)等の半導体材料からなる。
【0025】
ウェーハ11の表面11aは、格子状に設定された複数の分割予定ラインによって複数の領域に区画されている。そして、当該複数の領域のうちウェーハ11の外周に近接する領域の一部を除く領域のそれぞれには、IC又はLSI等のデバイス13が形成されている。すなわち、ウェーハ11の表面11aには、複数のデバイス13が形成されるデバイス領域15aと、デバイス領域15aを囲繞する外周余剰領域15bとが含まれる。
【0026】
また、ウェーハ11の外周端部は、面取りされている。すなわち、ウェーハ11の側面11bは、外側に凸になるように湾曲している。そして、ウェーハ11の裏面11cは、直接又はダイシングテープ(不図示)を介して、保持テーブル10の保持面(ポーラス板10aの上面)に置かれる。
【0027】
保持テーブル10の内部には、保持テーブル10の外部に設けられたエジェクタ等の吸引源(不図示)に一端が接続された吸引路(不図示)が形成されている。この吸引路の他端は、ポーラス板10aに達している。そのため、保持面にウェーハ11が置かれた状態で、この吸引源を動作させると、ウェーハ11が保持テーブル10に吸引保持される。
【0028】
さらに、保持テーブル10は、モータ等の保持テーブル用回転駆動源(不図示)に連結されている。この保持テーブル用回転駆動源を動作させると、保持面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った回転軸で保持テーブル10が回転する。
【0029】
基台4の上面の開口4aの近傍には、支持構造12が設けられている。支持構造12は、基台4の上面からZ軸方向に沿って延在する立設部12aと、開口4aを渡るように立設部12aの上端部からY軸方向に沿って延在する腕部12bとを備える。腕部12bの前面側には、Y軸方向移動機構14が設けられている。
【0030】
Y軸方向移動機構14は、腕部12bの前面に固定され、かつ、Y軸方向に沿って延在する一対のY軸ガイドレール16を備える。一対のY軸ガイドレール16の前面側には、一対のY軸ガイドレール16に沿ってスライド可能な態様でY軸移動プレート18が連結されている。
【0031】
また、一対のY軸ガイドレール16の間には、Y軸方向に沿って延在するねじ軸20が配置されている。ねじ軸20の一端部には、ねじ軸20を回転させるためのモータ(不図示)が連結されている。ねじ軸20の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸20の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0032】
すなわち、ねじ軸20が回転すると、ボールがナット部内を循環して、ナット部がY軸方向に沿って移動する。また、このナット部は、Y軸移動プレート18の後面側に固定されている。そのため、ねじ軸20の一端部に連結されているモータでねじ軸20を回転させれば、ナット部とともにY軸移動プレート18がY軸方向に沿って移動する。
【0033】
Y軸移動プレート18の前面側には、Z軸方向移動機構22が設けられている。Z軸方向移動機構22は、Y軸移動プレート18の前面に固定され、かつ、Z軸方向に沿って延在する一対のZ軸ガイドレール24を備える。一対のZ軸ガイドレール24の前面側には、一対のZ軸ガイドレール24に沿ってスライド可能な態様でZ軸移動プレート26が連結されている。
【0034】
また、一対のZ軸ガイドレール24の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸28が配置されている。ねじ軸28の一端部には、ねじ軸28を回転させるためのモータ30が連結されている。ねじ軸28の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸28の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0035】
すなわち、ねじ軸28が回転すると、ボールがナット部内を循環して、ナット部がZ軸方向に沿って移動する。また、このナット部は、Z軸移動プレート26の後面側に固定されている。そのため、モータ30でねじ軸28を回転させれば、ナット部とともにZ軸移動プレート26がZ軸方向に沿って移動する。
【0036】
Z軸移動プレート26の下部には、切削ユニット32が固定されている。切削ユニット32は、長手方向がY軸方向に平行な筒状のスピンドルハウジング34を有する。スピンドルハウジング34には、長手方向がY軸方向に平行な円柱状のスピンドル(不図示)が収容されている。このスピンドルは、回転可能な状態でスピンドルハウジング34によって支持される。
【0037】
このスピンドルの先端部は、スピンドルハウジング34の外に突出し、この先端部には環状の切刃を有する切削ブレード36が装着されている。また、スピンドルの基端部は、スピンドルハウジング34に内蔵されるモータ等の切削ブレード用回転駆動源(不図示)に連結されている。この切削ブレード用回転駆動源を動作させると、スピンドルとともにY軸方向に沿った回転軸で切削ブレード36が回転する。
【0038】
また、X軸方向において切削ユニット32に隣接する位置には、Z軸移動プレート26の下部に固定されている撮像ユニット38が設けられている。撮像ユニット38は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の光源と、対物レンズと、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子とを含む。
【0039】
図3は、切削装置2等の加工装置におけるウェーハ11の加工方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、保持テーブル10でウェーハ11を保持する(保持ステップ:S1)。例えば、ウェーハ11が保持テーブル10の保持面に置かれた状態で、保持テーブル10の内部に形成された吸引路に接続されている吸引源を動作させる。
【0040】
次いで、ウェーハ11のデバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界を特定する(境界特定ステップ:S2)。この特定は、ウェーハ11の外周及び複数のデバイス13の一部を含む領域の撮像によって形成された画像に基づいて行われる。この画像の形成は、例えば、以下の順序で行われる。
【0041】
まず、撮像ユニット38の視野の中心がウェーハ11の外周よりも僅かに内側に位置し、かつ、この視野にウェーハ11の外周と少なくとも一つのデバイス13とが含まれた状態で、撮像ユニット38がウェーハ11を撮像する。さらに、保持テーブル10の回転前後において撮像ユニット38の視野の一部が重なるように、保持テーブル用回転駆動源を動作させて保持テーブル10を回転させた後、撮像ユニット38がウェーハ11を撮像する。また、保持テーブル10が1回転するまで同様の処理を複数回繰り返す。
【0042】
これにより、ウェーハ11の外周及び複数のデバイス13の一部を含む領域の画像が形成される。そして、ウェーハ11のデバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界が、この画像に基づいて特定される。例えば、ウェーハ11の表面11aに形成された複数のデバイス13のうち最も外側に位置するデバイス13の辺又は点を結ぶことによって得られる多角形状の線が、デバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界として特定される。
【0043】
次いで、この境界とウェーハ11の中心との間隔に応じて変動する幅(エッジトリミングの加工幅)でウェーハ11の外周端部を加工する(加工ステップ:S3)。端的には、エッジトリミングの加工幅は、この境界とウェーハ11の中心との間隔が長ければ狭くなり、この境界とウェーハ11の中心との間隔が短ければ広くなるように設定される。この点について、
図4を参照して詳細に説明する。なお、
図4は、保持テーブル10に置かれたウェーハ11を模式的に示す上面図である。
【0044】
図4に示される2点鎖線Aは、ウェーハ11の半径からエッジトリミングの基準幅(例えば、3mm)を引いた長さ(基準長)を半径とするウェーハ11の外周の同心円を表している。この2点鎖線Aは、ウェーハ11の表面11aに形成された複数のデバイス13のうち最も外側に位置するデバイス13の一部と重なる。
【0045】
具体的には、この2点鎖線Aは、デバイス13d,13j,13k等と重なり、デバイス13a,13b,13c,13e,13f,13g,13h,13i,13l等と重ならない。すなわち、デバイス13d,13j,13k等の近傍のデバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界と、ウェーハ11の中心との間隔は、上記の基準長よりも長い。
【0046】
このように当該間隔が上記の基準長よりも長くなる場合には、エッジトリミングの加工幅を基準幅よりも狭く設定する。例えば、エッジトリミングの基準幅から最大減分値(例えば、0.5mm)を限度に加工幅を狭く設定する。なお、
図4に示される2点鎖線Aの外側の点線Bは、上記の基準長に最大減分値を足した長さ(最長長)を半径とするウェーハ11の外周の同心円を表している。
【0047】
この点線Bは、デバイス13j等と重なるものの、デバイス13d,13k等と重ならない。そのため、このようにエッジトリミングの加工幅が設定されることで、デバイス13d,13k等の損傷が防止される。また、デバイス13j等の損傷は避けられないが、デバイス13j等の近傍においても最低限必要な加工幅でエッジトリミングが行われることで、エッジトリミングされたウェーハ11が割れる蓋然性の増加が抑制される。
【0048】
また、デバイス13a,13b,13c,13e,13f,13g,13h,13i,13l等の近傍のデバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界と、ウェーハ11の中心との間隔は、上記の基準長よりも短い。
【0049】
このように当該間隔が上記の基準長よりも短くなる場合には、エッジトリミングの加工幅を基準幅よりも広く設定する。例えば、エッジトリミングの基準幅から最大増分値(例えば、0.5mm)を限度に加工幅を広く設定する。なお、
図4に示される2点鎖線Aの内側の点線Cは、上記の基準長から最大増分値を引いた長さ(最短長)を半径とするウェーハ11の外周の同心円を表している。
【0050】
この点線Cは、デバイス13a,13f,13g,13h等と重ならない。そのため、このようにエッジトリミングの加工幅が広くなるように設定されたとしても、デバイス13a,13f,13g,13h等が損傷することはない。また、デバイス13a,13f,13g,13h等の近傍において十分な加工幅でエッジトリミングが行われることで、エッジトリミングされたウェーハ11が割れる蓋然性が低減される。
【0051】
そして、加工ステップ(S3)においては、上述のように加工幅を変動させながらエッジトリミングが行われる。具体的には、このエッジトリミングは、保持テーブル10の保持面の外周に沿って加工点を移動させながら、デバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界とウェーハ11の中心との間隔に応じて保持面の中心と加工点との間隔を調整することによって行われる。このようなエッジトリミングの一例について、
図5~
図11を参照して詳細に説明する。
【0052】
なお、
図5~
図11の(A)は、エッジトリミングが行われているウェーハ11を模式的に示す上面図であり、
図5~
図11の(B)は、エッジトリミングが行われているウェーハ11を模式的に示す断面図である。なお、
図5~
図11の(A)においては、便宜上、切削ブレード36の上面が模式的に示されている。また、
図5~
図11の(B)においては、便宜上、切削ブレード36の側面が模式的に示されている。また、この切削ブレード36としては、上記のエッジトリミングの基準幅及び上記の最大増分値の和よりも幅が広い切削ブレードが用いられる。
【0053】
ウェーハ11に対してエッジトリミングを行う際には、まず、ウェーハ11の外周とデバイス13aとの間の領域の直上に切削ブレード36を位置付ける。具体的には、X軸方向移動機構が保持テーブル10の位置を調整し、かつ、Y軸方向移動機構14が切削ユニット32の位置を調整する。この時、ウェーハ11の中心と当該領域との間隔は、上記の最短長になるように調整される(
図5(A)及び
図5(B)参照)。
【0054】
次いで、切削ブレード用回転駆動源を動作させて切削ブレード36を回転させながら、切削ブレード36をウェーハ11に切り込ませる。例えば、ウェーハ11の表面11aよりも低く、かつ、裏面11cよりも高い位置に切削ブレード36の最下端を位置付けるように、Z軸方向移動機構22が切削ユニット32を下降させる。これにより、切削ブレード36とウェーハ11の面取りされた外周端部とが接触する箇所が加工点となって、当該箇所のウェーハ11の一部が除去される(
図6(A)及び
図6(B)参照)。
【0055】
次いで、切削ブレード36を回転させたまま、保持テーブル用回転駆動源が保持テーブル10を回転させ、かつ、ウェーハ11の中心から切削ブレード36が離隔するようにY軸方向移動機構14が切削ユニット32の位置を調整する。例えば、Y軸方向移動機構14は、デバイス13dのウェーハ11の中心から最も遠い点とウェーハ11の中心とを通る直線がY軸方向に平行になるタイミングで、ウェーハ11の中心と切削ブレード36の最下端との間隔が上記の最長長となるように、切削ユニット32をウェーハ11の中心から徐々に離隔させる(
図7(A)及び
図7(B)参照)。
【0056】
次いで、切削ブレード36及び保持テーブル10を回転させたまま、ウェーハ11の中心に切削ブレード36が接近するようにY軸方向移動機構14が切削ユニット32の位置を調整する。例えば、Y軸方向移動機構14は、デバイス13fのウェーハ11の中心から最も遠い点とウェーハ11の中心とを通る直線がY軸方向に平行になるタイミングで、ウェーハ11の中心と切削ブレード36の最下端との間隔が上記の最短長となるように、切削ユニット32をウェーハ11の中心に徐々に接近させる(
図8(A)及び
図8(B)参照)。
【0057】
次いで、切削ブレード36及び保持テーブル10を回転させたまま、ウェーハ11の中心と切削ブレード36との間隔を維持する。例えば、Y軸方向移動機構14は、デバイス13hのウェーハ11の中心から最も遠い点とウェーハ11の中心とを通る直線がY軸方向に平行になるまで、切削ユニット32を移動させない(
図9(A)及び
図9(B)参照)。
【0058】
次いで、切削ブレード36及び保持テーブル10を回転させたまま、ウェーハ11の中心から切削ブレード36が離隔するようにY軸方向移動機構14が切削ユニット32の位置を調整する。例えば、Y軸方向移動機構14は、デバイス13jのウェーハ11の中心から最も遠い点とウェーハ11の中心とを通る直線がY軸方向に平行になるタイミングで、ウェーハ11の中心と切削ブレード36の最下端との間隔が上記の最長長となるように、切削ユニット32を徐々にウェーハ11の中心から離隔させる(
図10(A)及び
図10(B)参照)。
【0059】
次いで、切削ブレード36及び保持テーブル10を回転させたまま、ウェーハ11の中心と切削ブレード36との間隔を維持する。例えば、Y軸方向移動機構14は、ウェーハ11の表面11aに形成された複数のデバイスのうちデバイス13jがエッジトリミングの加工点に最も近接するデバイスである間は、切削ユニット32を移動させない。
【0060】
次いで、切削ブレード36及び保持テーブル10を回転させたまま、ウェーハ11の中心に切削ブレード36が接近するようにY軸方向移動機構14が切削ユニット32の位置を調整する。例えば、Y軸方向移動機構14は、デバイス13lのウェーハ11の中心から最も遠い点とウェーハ11の中心とを通る直線がY軸方向に平行になるタイミングで、ウェーハ11の中心と切削ブレード36の最下端との間隔が上記の基準長となるように、切削ユニット32を徐々にウェーハ11の中心に接近させる(
図11(A)及び
図11(B)参照)。
【0061】
以上によって、ウェーハ11の外周端部の約1/4のエッジトリミングが完了する。また、ウェーハ11の外周端部の残りの約3/4のエッジトリミングも上記同様に行われる。その結果、
図12(A)及び
図12(B)に示されるように、エッジトリミングによって外周端部に段差11dが形成されたウェーハ11が得られる。
【0062】
なお、
図12(A)は、エッジトリミング後のウェーハ11を模式的に示す上面図であり、
図12(B)は、エッジトリミング後のウェーハ11を模式的に示す側面図である。また、
図12(A)には、便宜上、上記の最長長を半径とするウェーハの同心円を表す点線B及び上記の最短長を半径とするウェーハ11の同心円を表す点線Cも示されている。
【0063】
図3に示される方法においては、複数のデバイス13が形成されたデバイス領域15a及びデバイス領域15aを囲繞する外周余剰領域15bの境界とウェーハ11の中心との間隔に応じて変動する幅でウェーハ11の外周端部が加工される。換言すると、この方法においては、ウェーハ11のエッジトリミングによって除去される外周端部の幅が、デバイス領域15a及び外周余剰領域15bの境界とウェーハ11の中心との間隔に応じて設定される。
【0064】
端的には、この境界とウェーハ11の中心との間隔が長ければ、この幅が狭くなるようにエッジトリミングが行われる。これにより、エッジトリミングによって損傷するデバイスの割合を0にする又は低減することができる。また、この境界とウェーハ11の中心との間隔が短ければ、この幅が広くなるようにエッジトリミングが行われる。これにより、エッジトリミング後の工程において、ウェーハ11が割れる蓋然性、及び/又は、ウェーハ11を用いて構成される貼り合わせウェーハにおいて汚染源若しくは発塵源が形成させる蓋然性を低減することができる。
【0065】
なお、上述した方法は本発明の一態様であって、本発明の方法は上述した方法に限定されない。例えば、上述した方法の加工ステップ(S3)においては、ウェーハ11の外周端部の裏面11c側の一部を残存させるようにエッジトリミングが行われているが、本発明の方法の加工ステップ(S3)においては、ウェーハ11の外周端部の全部が除去されてもよい。
【0066】
すなわち、本発明の方法の加工ステップ(S3)においては、ウェーハ11の外周端部に段差11dを形成することなく、ウェーハ11の表面11a及び裏面11cに直交するような側面が形成されるようにエッジトリミングが行われてもよい。
【0067】
このようなエッジトリミングは、例えば、切削ブレード36の最下端がウェーハ11の裏面11cよりも下に位置付けられた状態で、
図7~
図11等を参照して説明したように、ウェーハ11の外周端部を加工することによって行われる。
【0068】
なお、この場合には、ウェーハ11の裏面11c側にダイシングテープが貼着されていることが好ましい。すなわち、このダイシングテープを介してウェーハ11が保持テーブル10に保持された状態で、ウェーハ11のエッジトリミングが行われることが好ましい。
【0069】
また、上述した方法の加工ステップ(S3)においては、Z軸方向移動機構22が切削ユニット32を下降させることによって切削ブレード36をウェーハ11に切り込ませていたが、本発明の方法の加工ステップ(S3)においては、X軸方向移動機構が保持テーブル10を移動させることによって切削ブレード36をウェーハ11に切り込ませてもよい。
【0070】
このようにウェーハ11に対してエッジトリミングを行う際には、まず、切削ブレード36がウェーハ11から離隔するように、X軸方向移動機構が保持テーブル10をX軸方向に沿って移動させる。次いで、切削ブレード36からみてウェーハ11の外周とデバイス13aとの間の領域がX軸方向に配置されるように、Y軸方向移動機構14が切削ユニット32をY軸方向に沿って移動させる。
【0071】
この時、ウェーハ11の中心と当該領域との間隔は、上記の最短長になるように調整される。次いで、ウェーハ11の表面11aよりも低く、かつ、裏面11cよりも高い位置に切削ブレード36の最下端を位置付けるように、Z軸方向移動機構22が切削ユニット32を下降させる。次いで、切削ブレード用回転駆動源を動作させて切削ブレード36を回転させながら、切削ブレード36をウェーハ11に切り込ませる。
【0072】
具体的には、切削ブレード36の最下端がウェーハ11の外周とデバイス13aとの間の領域に至るまで、X軸方向移動機構が保持テーブル10をX軸方向に沿って移動させる。その後、
図7~
図11等を参照して説明したように、ウェーハ11の外周端部を加工することによってウェーハ11に対してエッジトリミングが行われる。
【0073】
また、上述した方法の加工ステップ(S3)においては、切削ブレード36を用いてウェーハ11が加工されていたが、本発明の方法の加工ステップ(S3)においては、レーザービームを用いてウェーハ11が加工されてもよい。
【0074】
図13は、レーザービームを用いて加工ステップ(S3)を行うレーザー照射装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図13に示されるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、
図1に示されるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向にそれぞれ対応する。
【0075】
図13に示されるレーザー照射装置40は、保持テーブル42を有する。保持テーブル42は、上方に露出した円盤状のポーラス板42aを有する。ポーラス板42aの上面は、概ね平行であり、ウェーハ11を保持する保持テーブル42の保持面となる。
【0076】
保持テーブル42の内部には、保持テーブル42の外部に設けられたエジェクタ等の吸引源(不図示)に一端が接続された吸引路(不図示)が形成されている。この吸引路の他端は、ポーラス板42aに達している。そして、保持面にウェーハ11が置かれた状態で、この吸引源を動作させると、ウェーハ11が保持テーブル42に吸引保持される。
【0077】
さらに、保持テーブル42は、X軸方向移動機構(不図示)及びY軸方向移動機構(不図示)に連結されている。そして、X軸方向移動機構及び/又はY軸方向移動機構が動作すると、保持テーブル42は、X軸方向及び/又はY軸方向に沿って移動する。
【0078】
また、保持テーブル42は、回転駆動源(不図示)に連結されている。そして、この回転駆動源を動作させると、保持面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った回転軸で保持テーブル42が回転する。なお、レーザービーム照射ユニット44においては、保持テーブル42でウェーハ11を保持することによって、
図3に示される保持ステップ(S1)が行われる。
【0079】
保持テーブル42の上方には、レーザービーム照射ユニット44のヘッド46が設けられている。ヘッド46は、Y軸方向に沿って延在する連結部48の先端(一端)部に設けられている。なお、ヘッド46は集光レンズ及びミラー等の光学系を収容し、連結部48はミラー及び/又はレンズ等の光学系を収容する。
【0080】
また、連結部48の他端部は、Z軸方向移動機構(不図示)に連結されている。そして、Z軸方向移動機構が動作すると、ヘッド46及び連結部48は、Z軸方向に沿って移動する。レーザービーム照射ユニット44は、ウェーハ11に吸収される波長(例えば、365nm)又はウェーハ11を透過する波長(例えば、1064nm)のレーザービームを生成するレーザー発振器(不図示)を有する。
【0081】
レーザー発振器は、例えば、Nd:YAG等のレーザー媒質を有する。そして、レーザー発振器でレーザービームが生成されると、連結部48及びヘッド46に収容された光学系を介して、レーザービームがヘッド46の直下に照射される。さらに、連結部48の側部には、保持テーブル42の保持面側を撮像可能な撮像ユニット50が設けられている。
【0082】
撮像ユニット50は、例えば、LED等の光源と、対物レンズと、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ等の撮像素子とを有する。なお、レーザービーム照射ユニット44においては、撮像ユニット50によるウェーハ11の撮像によって形成された画像に基づいて、
図3に示される境界特定ステップ(S2)が行われる。
【0083】
そして、レーザービーム照射ユニット44においては、ウェーハ11に吸収される波長又はウェーハ11を透過する波長のレーザービームを用いて、
図3に示される加工ステップ(S3)が行われる。
【0084】
そして、ウェーハ11に吸収される波長のレーザービームを用いる場合には、例えば、以下の順序で加工ステップ(S3)が行われる。まず、ウェーハ11の外周とデバイス13aとの間の領域の直上にレーザービーム照射ユニット44のヘッド46が位置付けられるように、X軸方向移動機構、Y軸方向移動機構及び回転駆動源がウェーハ11を保持する保持テーブル10の位置を調整する。
【0085】
次いで、ウェーハ11に吸収される波長のレーザービームをウェーハ11に照射する。この時、レーザービームは、そのY軸方向に沿った幅が上記のエッジトリミングの基準幅及び上記の最大増分値の和よりも広くなるように調整される。また、ウェーハ11の中心とウェーハ11に照射されるレーザービームとの間隔は、上記の最短長になるように調整される。
【0086】
これにより、ウェーハ11の面取りされた外周端部を構成する材料のアブレーションが生じる。すなわち、ウェーハ11に吸収される波長のレーザービームが照射されたウェーハ11の箇所が加工点となって、当該箇所のウェーハ11の一部が除去される。
【0087】
次いで、
図7~
図11等を参照して説明したように、Y軸方向移動機構及び回転駆動源が保持テーブル42を移動させながら、レーザービーム照射ユニット44がウェーハ11に吸収される波長のレーザービームを照射する。その結果、
図12(A)及び
図12(B)に示されるように、エッジトリミングによって外周端部に段差11dが形成されたウェーハ11が得られる。
【0088】
また、ウェーハ11を透過する波長のレーザービームを用いる場合には、例えば、以下の順序で加工ステップ(S3)が行われる。まず、ウェーハ11の外周とデバイス13aとの間の領域の直上にレーザービーム照射ユニット44のヘッド46が位置付けられるように、X軸方向移動機構、Y軸方向移動機構及び回転駆動源がウェーハ11を保持する保持テーブル10の位置を調整する。
【0089】
次いで、ウェーハ11を透過する波長のレーザービームをウェーハ11に照射する。この時、レーザービームは、その集光点がウェーハ11の内部に位置付けられるように調整される。また、ウェーハ11の中心とウェーハ11に照射されるレーザービームとの間隔は、上記の最短長になるように調整される。
【0090】
これにより、ウェーハ11の面取りされた外周端部を構成する材料の構造が多光子吸収に起因して変質する。すなわち、ウェーハ11を透過する波長のレーザービームが照射されたウェーハ11の箇所が加工点となって、当該箇所のウェーハ11に変質層が形成される。
【0091】
次いで、
図7~
図11等を参照して説明したように、Y軸方向移動機構及び回転駆動源が保持テーブル42を移動させながら、レーザービーム照射ユニット44がウェーハ11を透過する波長のレーザービームを照射する。これにより、円環状の変質層が外周端部の内部に形成されたウェーハ11が得られる。
【0092】
次いで、ウェーハ11に外力を付与することで、円環状の変質層に沿ってウェーハ11を破断する。例えば、ウェーハ11の裏面11c側を研削することで、円環状の変質層からウェーハ11の厚さ方向にクラックを進展させて、ウェーハ11の中央部と面取りされた外周端部とを分離する。その結果、エッジトリミングされたウェーハ11が得られる。
【0093】
なお、レーザー照射装置40における加工点の位置(レーザービームが照射されるウェーハの位置)の調整は、レーザービーム照射ユニット44に収容された光学系を調整することによって行われてもよい。すなわち、この加工点の調整は、レーザービーム照射ユニット44に収容されたミラー及び/又はレンズの傾き等を調整することによって行われてもよい。
【0094】
さらに、本発明の方法の保持ステップ(S1)においては、ウェーハ11の中心が保持テーブル10又は保持テーブル42の保持面の中心からずれた状態でウェーハ11が保持面に置かれることがある。
図14は、このような状態で保持面に置かれたウェーハ11を模式的に示す上面図である。なお、
図14においては、便宜上、ウェーハ11に形成されている複数のデバイス13が省略されている。
【0095】
また、
図14は、保持テーブル10又は保持テーブル42の保持面の中心を原点OとするX軸方向及びY軸方向に平行な座標平面(XY座標平面)を示していると表現することもできる。
図14においては、ウェーハ11の中心が、保持面の中心(原点O)からずれた位置、すなわち、XY座標平面上の座標(Xc,Yc)の位置に置かれている。
【0096】
図15は、このような場合に、デバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界とウェーハ11の中心との間隔に応じて変動する幅でウェーハ11の外周端部を加工するための方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、上記の保持ステップ(S1)が行われる。
【0097】
次いで、ウェーハ11の中心の位置を算出する(中心算出ステップ:S4)。例えば、ウェーハ11の中心の位置は、ウェーハ11の外周上の少なくとも3点の位置に基づいて算出される。具体的には、ウェーハ11の外周上の3点のXY座標平面上の座標が(X1,Y1)、(X2,Y2)及び(X3,Y3)である場合、ウェーハ11の中心のXY座標平面上の座標(Xc,Yc)は、以下の数式1及び数式2によって算出される。
【0098】
【0099】
【0100】
なお、ウェーハ11の外周上の少なくとも3点の位置に対応するXY座標平面上の座標は、例えば、撮像ユニット38又は撮像ユニット50によるウェーハ11の外周を含む領域の撮像によって形成された画像に基づいて特定される。
【0101】
次いで、保持面の中心(原点O)と加工点とを通る直線上に位置付けられるウェーハ11の外周上の点の位置を算出する(外周位置算出ステップ:S5)。なお、上述した切削装置2及びレーザー照射装置40を用いたエッジトリミングにおいては、この加工点は、保持面の中心からみてY軸方向に位置付けられる。
【0102】
そのため、この直線は、
図14に示されるXY座標平面のY軸に対応する。また、ウェーハ11の中心がXY座標平面上の座標(Xc,Yc)に位置する場合、このウェーハ11の外周上の点のXY座標平面上の座標は、(0,Y
0)と表現できる。そして、XY座標平面のX軸と、保持面の中心(原点O)とウェーハ11の中心(座標(Xc,Yc))とを通る直線とがなす角をφとし、ウェーハ11の半径をrとすると、Y
0は、以下の数式3によって算出される。
【0103】
【0104】
さらに、保持テーブル10又は保持テーブル42は、上述のとおり、保持面の中心(原点O)を通り、かつ、XY座標平面に直交する方向(Z軸方向)に沿った回転軸で回転する。例えば、
図16に示されるように、保持テーブル10又は保持テーブル42を回転角θで回転させると、このウェーハ11の外周上の点のXY座標平面上の座標は、(0,y)と表現できる。そして、yは、以下の数式4によって算出される。
【0105】
【0106】
次いで、上記の境界特定ステップ(S2)及び加工ステップ(S3)が行われる。ただし、
図15に示される方法の加工ステップ(S3)においては、保持面の中心(原点O)と加工点との間隔が、デバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界とウェーハ11の中心との間隔のみならず、保持面の中心(原点O)と加工点とを通る直線上に位置付けられるウェーハ11の外周上の点の位置に応じて調整される。端的には、保持面の中心(原点O)と加工点との間隔は、保持テーブル10又は保持テーブル42の回転角θを変数とする関数であるyの値に応じて調整される。
【0107】
例えば、
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、ウェーハ11の外周とデバイス13aとの間の領域に対してエッジトリミングを行う際には、保持面の中心(原点O)と加工点との間隔が、yの値から上記のエッジトリミングの基準幅及び上記の最大増分値を引いた長さとなるように調整される。
【0108】
また、
図7(A)及び
図7(B)に示されるように、ウェーハ11の外周とデバイス13dとの間の領域に対してエッジトリミングを行う際には、保持面の中心(原点O)と加工点との間隔が、yの値から、上記のエッジトリミングの基準幅を引き、かつ、上記の最大減分値を足した長さとなるように調整される。
【0109】
また、
図11(A)及び
図11(B)に示されるように、ウェーハ11の外周とデバイス13lとの間の領域に対してエッジトリミングを行う際には、保持面の中心(原点O)と加工点との間隔が、yの値から上記のエッジトリミングの基準幅を引いた長さとなるように調整される。
【0110】
これにより、
図15に示される方法においては、ウェーハ11の中心が保持テーブル10又は保持テーブル42の保持面の中心からずれた場合であっても、デバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界とウェーハ11の中心との間隔に応じて変動する幅でウェーハ11の外周端部を加工することができる。
【0111】
なお、
図15に示される方法においては、中心算出ステップ(S4)及び外周位置算出ステップ(S5)が境界特定ステップ(S2)の後に行われてもよい。また、この場合には、境界特定ステップ(S2)において、デバイス領域15aと外周余剰領域15bとの境界を特定するために利用された画像を中心算出ステップ(S4)において流用してもよい。
【0112】
例えば、境界特定ステップ(S2)において形成された画像に基づいてウェーハ11の外周上の3点の位置を特定した後、この3点の位置に基づいてウェーハ11の中心の位置が算出されてもよい。この場合、中心算出ステップ(S4)において新たに撮像を行う必要がない点で好ましい。
【0113】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0114】
2 :切削装置
4 :基台(4a:開口)
6,8:カバー
10 :保持テーブル(10a:ポーラス板)
12 :支持構造(12a:立設部、12b:腕部)
14 :Y軸方向移動機構
16 :Y軸ガイドレール
18 :Y軸移動プレート
20 :ねじ軸
22 :Z軸方向移動機構
24 :Z軸ガイドレール
26 :Z軸移動プレート
28 :ねじ軸
30 :モータ
32 :切削ユニット
34 :スピンドルハウジング
36 :切削ブレード
38 :撮像ユニット
11 :ウェーハ(11a:表面、11b:側面、11c:裏面、11d:段差)
13 :デバイス
13a~13l:デバイス
15a:デバイス領域
15b:外周余剰領域
40 :レーザー照射装置
42 :保持テーブル(42a:ポーラス板)
44 :レーザービーム照射ユニット
46 :ヘッド
48 :連結部
50 :撮像ユニット