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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131817
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/51 20060101AFI20220831BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20220831BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/496
A61F13/49 413
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030962
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジュライラット ブンタノム
(72)【発明者】
【氏名】橋本 達也
(72)【発明者】
【氏名】ハタヤ レイトン
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA14
3B200CA03
3B200DA21
3B200DD02
(57)【要約】
【課題】胴回り部の吸汗性及び水分の蒸散性を向上させつつ、吸汗及び蒸散機能を備える吸収性物品である印象を着用者等に与えやすい吸収性物品を提供する。
【解決手段】液吸収性の吸収性コア(11)と、吸収性コア(11)よりも非肌側に設けられた一対の胴回り部(20)と、を有する吸収性物品(1)であって、有色である有色部(S)を有し、胴回り部(20)のうち少なくとも一方の胴回り部(40a)は、疎水性の疎水部(41)と親水性の親水部(42)を有し、親水部(42)は、一方の胴回り部(40a)の最も非肌側面の少なくとも一部であり、非肌側から見たときに、疎水部(41)と親水部(42)の少なくとも一部が重なっており、親水部(42)と有色部(S)の少なくとも一部が重なっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液吸収性の吸収性コアと、
前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた一対の胴回り部と、
を有する吸収性物品であって、
有色である有色部を有し、
前記胴回り部のうち少なくとも一方の胴回り部は、疎水性の疎水部と親水性の親水部を有し、
前記親水部は、前記一方の胴回り部の最も非肌側面の少なくとも一部であり、
前記非肌側から見たときに、
前記疎水部と前記親水部の少なくとも一部が重なっており、
前記親水部と前記有色部の少なくとも一部が重なっている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、
前記一方の胴回り部において、前記有色部が、前記吸収性コアより上側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアより前記非肌側に、液不透過性の防漏シートを有し、
前記一方の胴回り部において、前記有色部が、前記防漏シートより上側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、
前記有色部の上端は、前記一方の胴回り部の上端より下側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記疎水部及び前記親水部は、それぞれ繊維を有し、
前記疎水部の繊維密度は、前記親水部の繊維密度より低いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記有色部は、繊維を有し、
前記有色部は、前記一方の胴回り部の厚さ方向に圧搾された圧搾部を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性物品であって、
前記圧搾部において、前記有色部と前記厚さ方向に隣接する隣接部材とが前記厚さ方向に圧搾されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記有色部の色は、前記一方の胴回り部が水分を含んだ場合に、水分を含む前よりも濃い色に視認され、
濃い色に視認される領域は、
所定の色の濃さに視認される第1有色部分と、
前記第1有色部分の色より薄く視認される第2有色部分と、
を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記疎水部は、一方側疎水部、前記親水部は、一方側親水部、前記有色部は、一方側有色部であり、
前記胴回り部のうち、他方の胴回り部は、疎水性の他方側疎水部と、親水性の他方側親水部を有し、
前記他方側親水部は、前記他方の胴回り部の最も非肌側面の少なくとも一部であり、
前記他方は、有色である他方側有色部を有し、
前記他方の胴回り部の前記非肌側から見たときに、
前記他方側疎水部と前記他方側親水部の少なくとも一部が重なっており、
前記他方側親水部と前記他方側有色部の少なくとも一部が重なっていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項9に記載の吸収性物品であって、
互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、
前記一方側有色部の上端と、前記他方側有色部の上端が異なる位置に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、
前記左右方向の一方側の端部と他方側の端部に、前記一方の胴回り部と他方の胴回り部とが接合された一方側接合部及び他方側接合部をそれぞれ有し、
前記左右方向における一方側において、
前記有色部の一方側の側端が、前記一方側接合部より外側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記有色部は、前記親水部より肌側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項12に記載の吸収性物品であって、
前記有色部の明度は、前記親水部の明度より低いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の吸収性物品であって、
互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、
前記吸収性コアは、吸収性本体に設けられており、
前記有色部は、前記疎水部より肌側に設けられたシート部材であり、
前記非肌側から見たときに、前記有色部は、前記吸収性本体と重なる部分を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、
前記吸収性コアは、吸収性本体に設けられており、
前記有色部は、前記疎水部より肌側に設けられたシート部材であり、
前記有色部の下端部が、前記一方の胴回り部の厚さ方向において、前記有色部と隣接する部材と接合されていない非接合部を有することを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンツ型使い捨ておむつ等の吸収性物品において、当該吸収性物品を構成するシート部材に親水性シートを用いることで吸水性を高める技術が知られている。例えば、特許文献1には、着用者の肌側に位置する疎水性の肌側シートと、肌側シートの非肌対向面側に位置する親水性の非肌側シートとを有するウエストフラップを備えた使い捨ておむつが開示されている。このような使い捨ておむつは、着用時において、着用者の肌から汗等の水分を吸収しやすくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-113188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の使い捨ておむつは、非肌側シートが汗等の水分を吸収しても、着用者や使い捨ておむつを着用させる者は、使い捨ておむつが汗等を吸収したことを視認することが難しかった。また、非肌側シートの非肌対向面側に設けられた疎水性の外層シートによって、着用者の肌等から吸収した水分が非肌側シートに留まりやすく、水分を含んだ状態のウエストフラップによって、着用者の肌にかぶれ等のトラブルを生じさせたり、不快感を生じさせたりする場合があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、胴回り部の吸汗性及び水分の蒸散性を向上させつつ、吸汗及び蒸散機能を備える吸収性物品である印象を着用者等に与えやすい吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、液吸収性の吸収性コアと、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた一対の胴回り部と、を有する吸収性物品であって、有色である有色部を有し、前記胴回り部のうち少なくとも一方の胴回り部は、疎水性の疎水部と親水性の親水部を有し、前記親水部は、前記一方の胴回り部の最も非肌側面の少なくとも一部であり、前記非肌側から見たときに、前記疎水部と前記親水部の少なくとも一部が重なっており、前記親水部と前記有色部の少なくとも一部が重なっていることを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、親水部と重なる領域に設けられた有色部を設けることで、胴回り部における疎水部から親水部に着用者の汗を移行させ、親水部で水分を蒸散させることができる吸収性物品であって、有色部は、白色の部材よりも水分の吸収による色変化が顕著となりやすいため、着用者及び吸収性物品を着用させる者に、有色部の色の濃さの変化によって認識させやすくなり、吸汗し、水分を蒸散することができる部分を着用者等に認識させることで、吸汗及び蒸散機能を備えた吸収性物品であるという印象を与えやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】おむつ1の概略斜視図である。
図2】展開且つ伸長状態のおむつ1の平面図である。
図3図2のA-A線での概略断面図である。
図4】中央位置CLで二つ折りされた状態のおむつ1の図2のA-A線に該当する部分の概略断面図である。
図5図5Aは、吸収性本体10の平面図であり、図5Bは、吸収性本体10の概略断面図である。
図6図6Aは、おむつ1の構成部材を厚さ方向に分解した状態の説明図である。図6Bは、図6Aのおむつ1の構成部材を厚さ方向に重ねた状態の説明図である。
図7図7A図7Cは、おむつ1の後側胴回り部40aにおいて、水分を吸収・蒸散する際の基本原理について説明する図である。
図8図8Aは、白色部Wの水分吸収領域WWの色変化を説明する図である。図8Bは、有色部Sの水分吸収領域SWの色変化を説明する図である。
図9】後側胴回り部40aの一部の拡大断面図である。
図10】他の実施形態について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
液吸収性の吸収性コアと、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられた一対の胴回り部と、を有する吸収性物品であって、有色である有色部を有し、前記胴回り部のうち少なくとも一方の胴回り部は、疎水性の疎水部と親水性の親水部を有し、前記親水部は、前記一方の胴回り部の最も非肌側面の少なくとも一部であり、前記非肌側から見たときに、前記疎水部と前記親水部の少なくとも一部が重なっており、前記親水部と前記有色部の少なくとも一部が重なっていることを特徴とする吸収性物品である。
【0010】
このような吸収性物品によれば、親水部と重なる領域に設けられた有色部を設けることで、胴回り部における疎水部から親水部に着用者の汗を移行させ、親水部で水分を蒸散させることができる吸収性物品であって、有色部は、白色の部材よりも水分の吸収による色の濃さの変化が顕著となりやすいため、着用者及び吸収性物品を着用させる者に、有色部の色の濃さの変化によって認識させやすくなり、吸汗し、水分を蒸散することができる部分を着用者等に認識させることで、吸汗及び蒸散機能を備えた吸収性物品であるという印象を与えやすくなる。また、親水部が親水性の不織布である場合には、着用者の汗の水分を親水性の不織布の平面方向に拡散させやすくなるため、水分による色の濃さが変化する領域がより広くなり、着用者等に有色部の色の濃さの変化を認識させやすくなる。
【0011】
かかる吸収性物品であって、互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、前記一方の胴回り部において、前記有色部が、前記吸収性コアより上側に設けられていることが望ましい。
【0012】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアより上側で着用者の汗を吸収することを着用者等に認識させやすくなる。
【0013】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアより前記非肌側に、液不透過性の防漏シートを有し、前記一方の胴回り部において、前記有色部が、前記防漏シートより上側に設けられていることが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、液不透過性の防漏シートより上側で着用者の汗を吸収することを着用者等に着用者に認識させやすくなる。
【0015】
かかる吸収性物品であって、互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、前記有色部の上端は、前記一方の胴回り部の上端より下側に設けられていることが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、着用者等に、胴回り部の上端部において、汗を吸収が行われていない印象を与えやすくなり、着用者等は、胴回り部の上端部を触ったり、掴んだりしやすくなる。
【0017】
かかる吸収性物品であって、前記疎水部及び前記親水部は、それぞれ繊維を有し、前記疎水部の繊維密度は、前記親水部の繊維密度より低いことが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、疎水部から親水部への水分の移行を促しやすくし、着用者等に有色部の色の濃さを変化させやすくなる。
【0019】
かかる吸収性物品であって、前記有色部は、繊維を有し、前記有色部は、前記一方の胴回り部の厚さ方向に圧搾された圧搾部を有することが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、毛細管現象により、繊維密度が高い圧搾部は水分を吸収しやすくなるため、有色部の色をより濃く変化させ、着用者等に吸汗機能を認識させやすくなる。
【0021】
かかる吸収性物品であって、前記圧搾部において、前記有色部と前記厚さ方向に隣接する隣接部材とが前記厚さ方向に圧搾されていことが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、有色部の色をより濃く変化させつつ、有色部と隣接部材との間の水分の移行を促しやすくなる。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記有色部の色は、前記一方の胴回り部が水分を含んだ場合に、水分を含む前よりも濃い色に視認され、濃い色に視認される領域は、所定の色の濃さに視認される第1有色部分と、前記第1有色部分の色より薄く視認される第2有色部分と、を有することが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、第1有色部分と第2有色部分との色の濃さの違いで、着用者等に有色部の色の濃さの変化を認識させやすくなる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記疎水部は、一方側疎水部、前記親水部は、一方側親水部、前記有色部は、一方側有色部であり、前記胴回り部のうち、他方の胴回り部は、疎水性の他方側疎水部と、親水性の他方側親水部を有し、前記他方側親水部は、前記他方の胴回り部の最も非肌側面の少なくとも一部であり、前記他方は、有色である他方側有色部を有し、前記他方の胴回り部の前記非肌側から見たときに、前記他方側疎水部と前記他方側親水部の少なくとも一部が重なっており、前記他方側親水部と前記他方側有色部の少なくとも一部が重なっていることが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、一方の胴回り部だけでなく、他方の胴回り部においても他方側有色部の色の濃さの変化によって、着用者等に吸汗し、水分を蒸散することができる部分を着用者等に認識させることで、他方の胴回り部が吸汗及び蒸散機能を備えるという印象を与えやすくなる。
【0027】
かかる吸収性物品であって、互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、
前記一方側有色部の上端と、前記他方側有色部の上端が異なる位置に設けられていることが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、一方側胴回り部と他方側胴回り部とで、それぞれ着用者の身体のうち吸汗に適した位置に一方側有色部と他方側有色部とを設けることで、着用者等は、一方側有色部と他方側有色部の吸汗による色の濃さの変化を認識しやすくなる。
【0029】
かかる吸収性物品であって、互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、前記左右方向の一方側の端部と他方側の端部に、前記一方の胴回り部と他方の胴回り部とが接合された一方側接合部及び他方側接合部をそれぞれ有し、前記左右方向における一方側において、前記有色部の一方側の側端が、前記一方側接合部より外側に設けられていることが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品によれば、一方の胴回り部と他方の胴回り部とが接合された接合部は、吸汗による色の変化が起こりにくい部分であるため、一方側接合部より左右方向における外側と、一方側接合部より左右方向における内側に位置する有色部の色とを比較することで、吸汗による有色部の色の濃さの違いを着用者等に認識させやすくなる。
【0031】
かかる吸収性物品であって、前記有色部は、前記親水部より肌側に設けられていることが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品によれば、胴回り部が汗を吸収すると、有色部の汗による色変化に加えて、有色部より肌側に設けられた部材と有色部との距離を縮めやすくなるため、着用者等に有色部の色の濃さの変化を認識させやすくなる。
【0033】
かかる吸収性物品であって、前記有色部の明度は、前記親水部の明度より低いことが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品によれば、親水部を介して有色部を視認しやすくなるため、着用者等に有色部の色の濃さの変化を認識させやすくなる。
【0035】
かかる吸収性物品であって、互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、前記吸収性コアは、吸収性本体に設けられており、前記有色部は、前記疎水部より肌側に設けられたシート部材であり、前記非肌側から見たときに、前記有色部は、前記吸収性本体と重なる部分を有することが望ましい。
【0036】
このような吸収性物品によれば、吸収性本体は、その他の部分よりも厚みを有し、吸収性本体は、着用時に着用者が汗をかきやすい部分であるため、吸収性本体と重なる部分と有色部とが重なることで、着用者等に吸汗による有色部の色の濃さの変化を認識させやすくなる。
【0037】
かかる吸収性物品であって、互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、前記吸収性コアは、吸収性本体に設けられており、前記有色部は、前記疎水部より肌側に設けられたシート部材であり、前記有色部の下端部が、前記一方の胴回り部の厚さ方向において、前記有色部と隣接する部材と接合されていない非接合部を有することが望ましい。
【0038】
このような吸収性物品によれば、着用時に汗を有色部が汗と接触すると、有色部の下端部の非接合部と着用者の肌との距離が近づきやすくなるため、有色部の色の濃さの変化が起こりやすくなり、着用者等に、吸汗し、水分を蒸散することができる部分を着用者等に認識させることで、吸収性物品が吸汗及び蒸散機能を備えるという印象を与えやすくなる。
【0039】
===本実施形態===
本発明に係る吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る吸収性物品には、テープ型使い捨ておむつ、ショーツ型ナプキンやその他の吸収性物品も含まれる。また、吸収性物品の着用者は、乳幼児、大人、又は動物等の生物であってもよい。
【0040】
<おむつ1の構成>
図1は、おむつ1の概略斜視図である。おむつ1は、図1に示されるパンツ型状態において、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、胴回り開口BHと一対の脚回り開口LH,LHとを有している。上下方向の上側が胴回り開口BH側に対応し、下側が股下側に対応する。また、前後方向の前側が着用者の腹側に対応し、後側が着用者の背側に対応する。
【0041】
図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1の平面図である。図3は、図2のA-A線での概略断面図である。なお、おむつ1の「展開状態」とは、おむつ1の両側部の、前側帯部材30の側部30swと後側帯部材40の側部40swとの接合(サイド接合部1e)をそれぞれ分離し、開いておむつ1全体を平面的に展開した状態である。また、おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する吸収性本体10や,帯部材30、40等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことを言う。
【0042】
また、図2の展開状態において、おむつ1は、互いに交差する縦方向と横方向とを有する。図2中のC-C線は、横方向における中心線である。縦方向は、図1における上下方向に沿った方向であり、吸収性本体10の長手方向に相当する。横方向は、図1における左右方向に沿った方向である。また、図3に示すように、おむつ1を構成する資材が積層された方向を厚さ方向とする。厚さ方向において着用者の肌と接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
【0043】
おむつ1は、吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に配置された帯部材30、40とを有している。帯部材30、40は、おむつ1の前身頃に相当する前側帯部材30と、おむつ1の後身頃に相当する後側帯部材40とを有している。すなわち、おむつ1は、着用者の股間部にあてがわれ尿等の排泄物を吸収する吸収性本体10と、着用者の腹側部を覆う前側胴回り部30aを備える前側帯部材30と、着用者の背側部を覆う後側胴回り部40aを備える後側帯部材40を有する、所謂3ピースタイプのパンツ型のおむつである。なお、パンツ型のおむつとしては、3ピースタイプに限らず、前側帯部材30と後側帯部材40とが一体となった2ピースタイプのパンツ型のおむつであってもよい。
【0044】
図2の展開状態では、前側帯部材30と後側帯部材40とが互いに縦方向に間隔を空けて平行に並んだ状態で、これらの間に吸収性本体10が掛け渡されつつ、吸収性本体10の長手方向(縦方向)の各端部10ea,10ebがそれぞれ最寄りの帯部材30,40の肌側に接合固定されており、その外観形状は平面視略H形状をなしている。
【0045】
図2に示す状態から、縦方向の中央位置CLを折り位置(二つ折り線)として、図4に示すように、前側帯部材30(前側胴回り部30a)と後側帯部材40(後側胴回り部40a)とが対向するように吸収性本体10が二つ折りされる。図4は、中央位置CLで二つ折りされた状態のおむつ1の図2のA-A線に相当する部分の概略断面図である。図4において、便宜上、各部材を接合する接着剤を省略して示している。この二つ折りの状態において互いに対向する前側胴回り部30aと後側胴回り部40aとが、左右方向両側の側部30sw及び側部40swにて互いに接合・連結され、一対のサイド接合部1e,1eが形成される。サイド接合部1eは、溶着や接着等の公知の接合手段によって形成される。一対のサイド接合部1e,1eによって前側帯部材30と後側帯部材40とが環状に成形され、図1に示すような胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成されたパンツ型状態のおむつ1となる。なお、おむつ1における脚回り開口LHの上端より上側を胴回り部20(前側胴回り部30a、後側胴回り部40a)といい、脚回り開口部LHの上端より下側を股下部50ともいう。また、パンツ型の使い捨ておむつにおいて、上下方向において一対のサイド接合部1eと重複する領域を胴回り部20という。
【0046】
おむつ1の脚回り開口LHは、サイド接合部1eよりも上下方向の下側(サイド接合部1eの下端を含む)において、胴回り部20及び吸収性本体10の一部分によって形成されている。具体的には、前側帯部材30の下端縁部と、後側帯部材40の下端縁部と、吸収性本体10の左右方向の両側縁部とによって囲まれる領域が脚回り開口LHとなる。
【0047】
(吸収性本体10)
図5Aは、吸収性本体10の平面図であり、図5Bは、吸収性本体10の概略断面図である。吸収性本体10は、白色の部材で構成されており、その構成部材として、排泄液を吸収する吸収性コア11と、吸収性コア11よりも厚さ方向の肌側に配置されたトップシート12と、吸収性コア11よりも非肌側に配置されたバックシート13とを有する。但し、吸収性本体10が、これ以外のシート部材を備えていても良い。例えば、トップシート12と吸収性コア11との厚さ方向の間に、セカンドシート(不図示)を備えていてもよい。
【0048】
吸収性コア11は、尿等の排泄液を吸収して保持する部材であり、例えば高吸収性ポリマー(SAP)が混入したパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。なお、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシート部材(コアラップシート11b)によって、外周面が覆われていても良い。本実施形態の吸収性コア11は、長手方向の前側端と後側端との間に、左右方向における幅が狭くなったくびれ部11cを有しており、図5Aに示されるような平面視略砂時計形状を有している。このくびれ部11cは、おむつ1の着用時において着用者の両脚の間に挟まれる部分であり、当該部分の左右方向における長さが短く(幅が狭く)なっていることにより、吸収性コア11が着用者の股間にフィットしやすくなる。また、吸収性コア11が厚さ方向において1層の構成でもよく、2層以上重ねられた構成でもよい。
【0049】
トップシート12は、液透過性のシートであり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等が用いられる。本実施形態では、図5Bのように吸収性コア11の肌側面の全域を覆うように設けられている。
【0050】
バックシート13は、液不透過性シート13aと、その非肌側に配された疎水性の外装シート13bと、の二層構造である。液不透過性シート13aは、所謂防漏シートであり、吸収性コア11で吸収した排泄物が非肌側に漏れるのを防ぐシートである。液不透過性シート13aとしては、例えば樹脂フィルム等が用いられ、外装シート13bとしては、例えば柔軟性を有する疎水性の不織布が用いられる。液不透過性シート13a及び外装シート13bは、吸収性コア11の非肌側面の全域を覆うように設けられている。
【0051】
吸収性本体10の左右方向の両側部には、縦方向(吸収性本体10の長手方向)に沿って一対の防漏壁部15が設けられている。本実施形態において、防漏壁部15は、上述した外装シート13bによって形成されている。具体的には、左右方向(横方向)において、外装シート13bの一部が吸収性コア11の両端よりも外側に延出しつつ、図5Bのように肌側に複数個所で折り曲げられることによって、一対の防漏壁部15が形成される。防漏壁部15の肌側端部(先端部)には、糸ゴム等の防漏壁弾性部材16が縦方向(吸収性本体10の長手方向)に沿って伸長した状態で取り付けられている。おむつ1の着用時には、該防漏壁弾性部材16が発現する伸縮性に基づいて、防漏壁部15が着用者の肌側に起立し、着用者の股間部にフィットする。
【0052】
また、吸収性本体10の左右方向の両側部には、糸ゴム等の脚回り弾性部材17が縦方向(吸収性本体10の長手方向)に沿って伸長した状態で取り付けられている。おむつ1の着用時には、該脚回り弾性部材17が発現する伸縮性に基づいて、吸収性本体10の両側部が収縮し、着用者の脚回り沿ってフィットしやすくなる。
【0053】
(前側帯部材30)
前側帯部材30は、着用者の腹側部を覆う前側胴回り部30aでもある。図3等に示すように、厚さ方向の最も非肌側に配置された非肌側シート32と、非肌側シート32の肌側に隣接するように積層された肌側シート31と、肌側シート31と非肌側シート32との厚さ方向の間に設けられた胴回り弾性部材35とを有する。
【0054】
図6Aは、おむつ1の構成部材を厚さ方向に分解した状態の説明図であり、図6Bは、図6Aのおむつ1の構成部材を厚さ方向に重ねた状態の説明図である。なお、図6A及び図6Bにおいて、弾性部材を省略して示している。図6A及び図6Bに示すように、前側帯部材30は、厚さ方向における非肌側から肌側に向かって、非肌側シート32、肌側シート31、(吸収性本体10、)肌面シート36が順に重ねられている。前側帯部材30は、肌側シート31と非肌側シート32との2層構造であってもよく、例えば、肌面シート36を設けた部分のように部分的に、又は前側帯部材30の全域に亘って3層以上の構成を有していていも良い。前側帯部材30において、肌側シート31よりも肌側、若しくは非肌側シート32よりも非肌側にシート部材が設けられる場合、肌側シート31及び非肌側シート32の一部部分のみが覆われるようにシート部材が配置されることが好ましい。
【0055】
本実施形態の前側帯部材30は、肌側シート31と非肌側シート32とは略同じ大きさであるが、肌側シート31又は非肌側シート32の何れか一方のシートの長手方向の長さが長くてもよい。例えば、非肌側シート32が、非肌側から肌側、且つ縦方向の前側から後側に折り返された折り返し部を有していてもよい。この折り返し部が肌側シート31の一部(上端部)を覆うことで、肌側シート31の上端エッジが着用者の肌に食い込んでしまうことを抑制できる。
【0056】
図2等に示すように、肌側シート31及び非肌側シート32は、平面視長方形状のシート部材であり、例えば、白色のSMS不織布等によって形成されている。なお、おむつ1において、非肌側シート32を構成するシート部材(不織布)は、肌側シート31を構成するシート部材(不織布)よりも親水性が高くなっている。すなわち、肌側シート31は親水性の低い不織布によって構成されており、肌側シート31を「疎水部31」ともいう。これに対し、非肌側シート32は肌側シート31よりも親水性の高い不織布によって構成されており、非肌側シート32を「親水部32」ともいう。
【0057】
胴回り弾性部材35は、左右方向に伸縮可能な伸縮部材であり、本実施形態では、白色の糸ゴムが用いられている。胴回り弾性部材35は、肌側シート31と非肌側シート32との間に、上下方向に並んで複数配置されるとともに、左右方向に伸長された状態で取り付けられている。胴回り弾性部材35が発現する伸縮性によって、前側帯部材30(前側胴回り部30a)は、着用者の腹側胴回りにフィットする。
【0058】
胴回り弾性部材35の取り付けは、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いて行うことができる。例えば、胴回り弾性部材35にホットメルト接着剤を塗布して所定の伸長倍率で伸長させ、肌側シート31と非肌側シート32とで挟み込むことによって胴回り弾性部材35を取り付けることができる。すなわち、胴回り弾性部材35を介して肌側シート31と非肌側シート32とが接着剤によって接合される。
【0059】
また、前側帯部材30は、肌面シート36を有する。肌面シート36は、図3等に示されるように、吸収性本体10の上端部(縦方向における前側端部)を肌側から覆うように配置されたシート部材であり、カバーシートとしての機能を有している。これにより、おむつ1の着用時に吸収性本体10の上端エッジが着用者の肌に食い込んでしまうことが抑制される。肌面シート36は、例えばSMS不織布等によって形成されており、本実施形態では、青色である。図3等における肌面シート36は、肌側シート31の肌側の一部分を覆うように設けられている。おむつ1では、肌面シート36を前側帯部材30(前側胴回り部30a)の一部とするが、肌面シート36が、前側帯部材30や吸収性本体10から独立した部材でもよい。
【0060】
また、前側帯部材30は、開孔部30hが複数設けられている。開孔部30hは、前側帯部材30を厚さ方向に貫通する貫通孔であり、具体的には、肌側シート31と非肌側シート32とを貫通する貫通孔であり、肌面シート36が設けられた部分においては、肌面シート36と肌側シート31と非肌側シート32とを貫通する貫通孔である。開孔部30hが設けることで、前側帯部材30の通気性を高めることができる。また、開孔部30hが、前側帯部材30の非肌面側から視認可能に配置されていることで、前側帯部材30が良好な通気性を有していることをユーザーに想起させやすくなる。各開孔部30hは、例えば直径1mm程度の円形状としたが、開孔部30hの形状や配置(個数及びパターン)は適宜変更可能である。
【0061】
(後側帯部材40)
後側帯部材40は、着用者の背側部を覆う後側胴回り部40aと、着用者の臀部を覆う臀部カバー40bを有する。具体的には、上下方向において、サイド接合部1e(側部40sw)と重なる領域が後側胴回り部40aであり、サイド接合部1eより下側が臀部カバー40bである。臀部カバー40bによって、おむつ1の着用時に後側帯部材40が着用者の臀部を広く被覆することが可能となる。なお、後側帯部材40は、必ずしも臀部カバー40bを備える必要はなく、後側胴回り部40aのみから成る後側帯部材40であってもよい。
【0062】
臀部カバー40bには、図2に示すような白色の糸ゴム等の湾曲弾性部材47が設けられている。湾曲弾性部材47は、伸長した状態で肌側シート41と非肌側シート42との間に取り付けられており、湾曲弾性部材47が発現する伸縮性によって、おむつ1着用時に、後側帯部材40の臀部カバー40bが着用者の臀部にフィットしやすくなり、また、臀部から捲れにくくなる。
【0063】
図3等に示すように、厚さ方向の最も非肌側に配置された非肌側シート42と、非肌側シート42の肌側に隣接するように積層された肌側シート41と、肌側シート41と非肌側シート42との厚さ方向の間に設けられた胴回り弾性部材45と、を有する。
【0064】
図6A及び図6Bに示すように、後側帯部材40は、前側帯部材30と同様に、厚さ方向における非肌側から肌側に向かって、非肌側シート42、肌側シート41、(吸収性本体10、)肌面シート46が順に重ねられている。後側帯部材40は、肌側シート41と非肌側シート42との2層構造であってもよく、例えば、肌面シート46を設けた部分のように部分的に、又は後側帯部材40の全域に亘って3層以上の構成を有していていも良い。後側帯部材40において、肌側シート41よりも肌側、若しくは非肌側シート42よりも非肌側にシート部材が設けられる場合、肌側シート41及び非肌側シート42の一部分のみが覆われるようにシート部材が配置されることが好ましい。
【0065】
本実施形態の後側帯部材40は、肌側シート41と非肌側シート42とは略同じ大きさであるが、肌側シート41又は非肌側シート42の何れか一方のシートの長手方向の長さが長くてもよい。例えば、非肌側シート42が、非肌側から肌側、且つ縦方向の前側から後側に折り返された折り返し部を有していてもよい。この折り返し部が肌側シート41の一部(上端部)を覆うことで、肌側シート41の上端エッジが着用者の肌に食い込んでしまうことを抑制できる。
【0066】
図2等に示すように、肌側シート41及び非肌側シート42は、平面視長方形状のシート部材であり、例えば、白色のSMS不織布等によって形成されている。なお、おむつ1において、非肌側シート42を構成するシート部材(不織布)は、肌側シート41を構成するシート部材(不織布)よりも親水性が高くなっている。すなわち、肌側シート41は親水性の低い不織布によって構成されており、肌側シート41を「疎水部41」ともいう。これに対し、非肌側シート42は肌側シート41よりも親水性の高い不織布によって構成されており、非肌側シート42を「親水部42」ともいう。各シート41,42の親水性、及び、親水性の違いに基づく機能の詳細については、後で説明する。
【0067】
胴回り弾性部材45は、左右方向に伸縮可能な伸縮部材であり、本実施形態では、白色の糸ゴムが用いられている。胴回り弾性部材45は、肌側シート41と非肌側シート42との間に、上下方向に並んで複数配置されるとともに、左右方向に伸長された状態で取り付けられている。この胴回り弾性部材45が発現する伸縮性によって、後側帯部材40(後側胴回り部40a)は、着用者の背側胴回りにフィットする。胴回り弾性部材45の取り付けは、前側帯部材30の胴回り弾性部材35と同様の方法で取り付け可能である。
【0068】
また、後側帯部材40は、肌面シート46を有する。肌面シート46は、図3等に示すように、吸収性本体10の上端部(縦方向における後側端部)を肌側から覆うように配置されたシート部材であり、カバーシートとしての機能を有している。これにより、おむつ1の着用時に吸収性本体10の上端エッジが着用者の肌に食い込んでしまうことが抑制される。肌面シート46は、例えばSMS不織布等によって形成されており、本実施形態では、青色である。図3等における肌面シート46は、肌側シート41の肌側の一部分を覆うように設けられている。本実施形態のおむつ1では、肌面シート46を後側帯部材40(後側胴回り部40a)の一部とするが、肌面シート46が、後側帯部材40や吸収性本体10から独立した部材であってもよい。
【0069】
また、後側帯部材40は、開孔部40hが複数設けられている。開孔部40hは、後側帯部材40を厚さ方向に貫通する貫通孔であり、具体的には、肌側シート41と非肌側シート42とを貫通する貫通孔であり、肌面シート46が設けられた部分においては、肌面シート46と肌側シート41と非肌側シート42とを貫通する貫通孔である。開孔部40hが設けられていることで、後側帯部材40の通気性を高めることができる。また、開孔部40hが、後側帯部材40の非肌面側から視認可能に配置されていることで、後側帯部材40が良好な通気性を有していることをユーザーに想起させやすくなる。各開孔部40hは、例えば直径1mm程度の円形状としたが、開孔部40hの形状や配置(個数及びパターン)は適宜変更可能である。
【0070】
<各シートの親水性について>
ここで、各シートの親水性について説明する。おむつ1では、胴回り部20(前側帯部材30、後側帯部材40)を構成する肌側シート31,41、及び肌面シート36、46として疎水性不織布を用い、非肌側シート32,42として疎水性不織布よりも親水性の高い親水性不織布を用いる。また、吸収性本体10を構成する外装シート13bとしても疎水性不織布を用いている。
【0071】
本実施形態の親水性不織布は、疎水性不織布に対して、所定の油剤を付着させる処理(親水処理)を行うことによって親水性を高めたものである。親水処理に用いる油剤としては、例えば、アニオン系油剤や非イオン系油剤及びそれらの配合品等、繊維の帯電防止剤として効果を有する市販の油剤を使用することができる。これらの油剤を油槽に投入して、オイリングローラー等を用いてオイリングすることにより、疎水性不織布の親水性を高め、親水性不織布を得ることができる。但し、これ以外の方法によって親水性不織布が形成されるのであっても良い。例えば、親水性の高い繊維を用いて不織布を製造することによって、親水性不織布を得ても良い。
【0072】
本実施形態では、非肌側シート32、42を構成する不織布の全体について親水処理が行われ、非肌側シート32、42全体の親水性が高められているが、非肌側シート32、42の一部の領域のみ親水性が高められているのであってもよい。例えば、非肌側シート32、42の一部の領域にのみ親水処理が行われる等によって、局所的に親水性の高い部分と低い部分を有するシート部材としても良い。
【0073】
各シートの親水性は、各シートの表面にイオン交換水を接触させた際の接触角を測定することによって評価することができる。具体的には、親水性不織布とイオン交換水との接触角が、疎水性不織布とイオン交換水との接触角よりも小さければ、親水性不織布の親水性の方が、疎水性不織布の親水性よりも高くなる。本実施形態で用いられる親水性不織布(非肌側シート32、42)としては、イオン交換水との接触角が、90度未満以下であることが望ましく、50度以下であることが更に望ましい。一方、疎水性不織布(肌側シート31、41及び肌面シート36、46)としては、イオン交換水との接触角が、90度以上であることが望ましく、120度以上であることが更に望ましい。
【0074】
接触角の測定は、例えば、協和界面科学株式会社製の接触角計MCA-Jを用いて、以下の方法で行うことができる。先ず、測定対象となるシート部材(被測定シート)を構成する繊維の表面に、イオン交換水を滴下(約20ピコリットル)した後、直ちに前記接触角計を用いて接触角度の測定を行う。測定は、被測定シートの表面の複数個所(例えば5箇所以上)で行い、それらの平均値を接触角とする。なお、測定環境温度は22℃とする。
【0075】
また、イオン交換水を滴下した被測定シートを、当該被測定シートの断面方向から撮像し、撮像した画像を解析して、イオン交換水の液滴と被測定シートとがなす角度を測定することによって、接触角を測定するようにしても良い。
【0076】
<水分の吸収及び蒸散について>
親水性不織布を備えたおむつ1は吸汗及び蒸散機能を有する。おむつ1において、着用者の肌から汗等の水分を吸収し、吸収した水分を大気に蒸散させるメカニズムについて、後側胴回り部40aを用いて説明するが、前側胴回り部30aも同様である。図7A図7Cは、おむつ1において、水分を吸収・蒸散する際の基本原理について説明する図である。図7では、おむつ1を構成する部材のうち、後側胴回り部40aの断面を模式的に表している、
【0077】
まず、着用者がおむつ1を着用すると、後側胴回り部40aのうち、肌面シート46が設けられた部分は肌面シート46が着用者の肌に当接し、肌面シート46が設けられていない部分は、肌側シート41が着用者の肌に当接する。なお、図7A図7Cは、後側帯部材40のうち、後側胴回り部40aを非肌側から見て、非肌側シート42と肌側シート41と肌面シート46とが重なる部分を示している。
【0078】
上述のとおり、肌面シート46及び肌側シート41は、疎水性不織布である。本実施形態の肌側シート41及び肌面シート46はSMS不織布によって構成されており、スパンボンド繊維と比較して繊維径が細いメルトブローン繊維を含んでいる。そのため、細いメルトブローン繊維が密に絡まり合って繊維間距離が狭くなっている部分を有している。疎水性不織布を構成する繊維の密度が高いほど、毛細管現象が作用しやすい。そのため、おむつ1の着用中は、肌側シート41、肌面シート46において毛細管現象が生じ、着用者の肌の汗等の水分を吸収しやすい。
【0079】
次いで、肌側シート41又は肌面シート46によって吸収された水分は、図7Bのように、肌側シート41の非肌側に隣接して積層されている非肌側シート42(親水性不織布)に移行する。なお、図7Bに示すように、肌面シート46を備える部分については、肌面シート46によって吸収された水分が、肌側シート41を介して、非肌側シート42に移行する。肌側シート41及び肌面シート46が疎水性不織布であるのに対して、非肌側シート42は親水性不織布であることから、疎水性のシートと親水性シートとの間には親水性の大きさの差(親水勾配)が生じ、親水性の低い肌側シート41、肌面シート46側から、親水性の高い非肌側シート42側に水分が移動しやすくなるためである。したがって、着用者の肌と接している肌側シート41側には水分が保持され難くなり、着用者の肌と接していない非肌側シート42側に水分が保持されやすくなる。
【0080】
非肌側シート42中に保持された水分は、非肌側シート42の非肌側面から大気中に蒸散する。図7Cに示されるように、非肌側シート42が、後側胴回り部40aの最も非肌側面を構成する資材の一部である場合には、非肌側シート42の非肌側の表面全体が、大気に面している状態となり、非肌側シート42と大気との界面の面積が大きくなり、水分の蒸散が生じやすくなる。
【0081】
なお、疎水部である肌側シート41と親水部である非肌側シート42は、それぞれ繊維を有しており、肌側シート41の繊維密度が、非肌側シート42の繊維密度より低いことが好ましい。本実施形態のおむつ1は、肌側シート41の繊維密度が、15g/mであり、非肌側シートの線に密度が18g/mである。このように、おむつ1の最も非肌側面を構成する親水部(非肌側シート42)より肌側に位置する疎水部(肌側シート41)の繊維密度をより小さくすることで、疎水部から親水部への水分の移行を促しやすくなる。おむつ1においては、肌側シート41より肌側に設けられた肌面シート46の繊維密度を、非肌側シート42の繊維密度より低くしている。具体的には、肌面シート46の繊維密度は、15g/mである。これによって、着用者の汗の水分を肌面シート46及び肌側シート41から非肌側シート42に向かう移行を促しやすくなる。
【0082】
このようにして、おむつ1の胴回り部20では、疎水性不織布によって着用者の肌から吸収された水分を、非肌側の親水性不織布へ移行させ、親水性不織布の非肌側表面から大気中に放出する。つまり、水分を吸収して効率的に大気に蒸散させることができる。これにより、着用者の肌に水分が接触し難くなり、着用者の肌がビチャついてかぶれ等の肌トラブルを生じさせたり、着用者に不快感を生じさせたりすることを抑制することができる。
【0083】
後側胴回り部40aのうち、上下方向において一対のサイド接合部1eと重複する領域において、最も非肌側面の少なくとも一部は、親水性不織布が配置された親水部である。本実施形態のおむつ1において、後側胴回り部40aの非肌側面は、全域に亘って親水性の非肌側シート42で構成されているため、後側胴回り部40aは非肌側面の全域が親水部である。また、親水部である非肌側シート42の肌側に隣接して、疎水部としての肌側シート41が積層されている。さらに、後側胴回り部40aには、肌側シート41より肌側に、肌側シート41に隣接して、肌面シート46が積層されている部分が設けられている。したがって、疎水性の肌面シート46及び肌側シート41において、着用者の肌から汗等の水分を吸収し、親水勾配によって、非肌側シート42への水分の移動を促しやすくし、肌側から移動され、非肌側シート42まで到達した水分は、最も非肌側の表面において親水性の非肌側シート42から水分を蒸散させやすい構造となっている。
【0084】
<有色部Sについて>
おむつ1は、有色である有色部Sを有する。「有色」とは、無色透明及び白以外の色とする。白色とは、例えば、マンセル表色系で「N9.5」と表される色や、RGB色空間で「255,255,255」と表される色(所謂、真っ白)に加え、真っ白との色差が12未満である色も白色に含まれるものとする。白色についての色差の測定は、例えば、色差測定器として、Konica Minolta社製 CR-300を用いることができ、測定機器の光源としては、C光源(国際照明委員会(CIE)の規格)を用いることができる。この場合の測定機器の測定窓の直径は、40mmである。色差は、白色基準板に対する(L*a*b*)色空間のΔL、Δa及びΔbである。白色基準板に対する色差は、白色基準板のlab値と対象サンプルのlab値をそれぞれ測定して算出できる。白色基準板は、(X93.19、Y95.20、Z112.28)でlab0に設定する。ここでLは、明るさを指標する値であり、a、bは、色度の平面座標である。白色基準板のLab値をL0、a0、b0とし、対象サンプルのL1、a1、b1とすると、ΔL=L0‐L1、Δa=a0‐a1、Δb=b0‐b1によって算出できる。
【0085】
本実施形態のおむつ1の有色部Sは、前側胴回り部30aの肌面シート36と後側胴回り部40aの肌面シート46である。肌面シート36と肌面シート46は、それぞれ青色のシート部材である。なお、肌面シート36及び肌面シート46は、成形後の白色の不織布を青色に着色したものであってもよく、青色の繊維を不織布状に成形したものであってもよい。さらに、肌面シート36及び肌面シート46は、全域に亘って青色を呈する部材であるが、これに限られない。肌面シート36及び肌面シート46における一部分を有色部分とする有色部Sであってもよい。
【0086】
<有色部Sの色変化について>
従来、白色の使い捨ておむつ等の吸収性物品が広く知られている。図8Aは、白色部Wの水分吸収領域WWの色変化を説明する図である。図8Aは、一般的な白色の使い捨ておむつの胴回り部を構成するシート部材を白色サンプルとして用い、白色サンプルの白色部Wに所定量の水分を滴下して水分吸収領域WWを形成した状態を示している。白色サンプルの水分未吸収の白色部Wと水分吸収領域WWとの色を比較すると、図8Aに示すように、水分吸収領域WWの色は、水分未吸収の白色部Wの白色がより薄くなる程度で、水分未吸収の白色部Wと水分吸収領域WWとの色の変化が乏しく見える。白色のシート部材は、水に濡れると、シート部材を構成する繊維の隙間に水分が入り込み、シート部材の表面の凸凹が少なくなり、シート部材の表面における光の乱反射が生じにくくなる。そして、水分吸収領域WWは、光がシート部材の中に透過しやすくなり、光の乱反射によって白く視認される水分未吸収の白色部Wより、水分未吸収の白色部Wの白色より薄く、より透明に見えやすくなる。そのため、吸収性物品が上述のような汗を吸収する吸汗機能を備えていたとしても、吸収性物品が汗を吸収していることを外部から認識することが難しい。特に、吸収性物品の着用者が乳幼児や意思の疎通が難しい患者の場合には、吸収性物品が汗を吸収していることを着用者自身が認識したり、周囲にその効果を伝えたりすることが難しいため、白色の吸収性物品が吸汗機能を備えていても、吸汗の前後の色の変化が乏しく、吸収性物品の吸汗機能を、着用者や着用者に吸収性物品を着用させようとする者等(以下、「着用者等」ともいう。)に認識させることが難しかった。
【0087】
これに対し、おむつ1は、有色部Sを備えることで、汗の吸収を有色部Sの色の濃さの変化によって、周囲に認識させやすくなる。図8Bは、有色部Sの水分吸収領域SWの色変化を説明する図である。図8Bは、本実施形態における青色の肌面シート46を有色部Sの有色サンプルとして用い、有色サンプルの有色部Sに所定量の水分を滴下して水分吸収領域SWを形成した状態を示している。図8Bに示すように、有色サンプルの水分未吸収の有色部Sと水分吸収領域SWとの色を比較すると、図8Bに示すように、水分吸収領域SWの色は、水分未吸収の有色部Sの色より明らかに濃く見える。有色のシート部材は、白色のシート部材と同様に、水に濡れると、シート部材を構成する繊維の隙間に水分が入り込み、シート部材の表面の凸凹が小さくなり、シート部材の表面における光の乱反射が生じにくくなる。このとき、白色のシート部材と異なり、有色のシート部材は、その有色によって、白色のシート部材よりも光がシート部材の中を透過しづらい。そのため、乱反射する光と透過する光が少なくなり、正反射する光の量が多くなることで、水分吸収領域SWの色は、水分未吸収の有色部Sの色よりも濃く見える。つまり、おむつ1における有色部Sは、水分を吸収すると、吸収する前よりも色が濃く見えることになる。
【0088】
おむつ1の後側胴回り部40aは、上述のとおり、疎水部として肌側シート41と親水部として非肌側シート42を有し、非肌側シート42は、後側胴回り部40aの最も非肌側面の少なくとも一部である。つまり、非肌側シート42は、最も非肌側面の少なくとも一部を構成する資材である。また、後側(一方側)の有色部Sを構成する青色(有色)の肌面シート46を有している。そして、図1に示すおむつ1を非肌側から見たときに、肌側シート41と非肌側シート42の少なくとも一部が重なっており、非肌側シート42と肌面シート46の少なくとも一部が重なっている。本実施形態のおむつ1は、図4等に示すように、おむつ1を前後方向に沿って見たときに、肌側シート41と非肌側シート42とは、同じ大きさで、略全域において重なっており、且つ、肌側シート41と非肌側シート42と肌面シート46が重なっている。そして、着用者の汗を吸収した状態のおむつ1を非肌側から見たときに、肌面シート46(有色部S)の色は視認可能な状態である。
【0089】
おむつ1の後側胴回り部40aは、上述のとおり、親水部である非肌側シート42で水分を保持し、且つ蒸散させることができる。そして、おむつ1を非肌側から見て、非肌側シート42と重なる位置に有色部Sとしての青色の肌面シート46を設けることで、吸汗によって有色の肌面シート46の色が濃くなるように見える。この肌面シート46の色を視認した着用者等は、おむつ1を非肌側から見て、少なくとも非肌側シート42と重なる肌面シート46(有色部S)の部分で、着用者の汗を吸収し、その水分を発散することができる部分であることを認識することができる。そのため、乳幼児等のように、着用者自身がそのおむつ1のつけ心地を外部に表すことができないような場合でも、着用者におむつ1を着用させる者等の周囲の人が、有色部Sの色の濃さを外部から視認することができ、おむつ1の有色部S(肌面シート46)の部分が着用者の汗を吸収している部分であり、色が濃く視認された領域において、汗の水分を保水し、発散することができる機能を備えている印象を与えやすくなる。また、着用者等は着用者が汗をかいていることを視覚的に認識することができるため、言葉を発することが難しい乳幼児等の着用者が暑いと感じていることを有色部Sの色で認識することが可能となる。さらに、おむつ1は、親水性の不織布である非肌側シート42を親水部とすることで、着用者の汗の水分を非肌側シート42内の平面方向に拡散させやすくなり、より広い領域を水分によって色の濃さが変化する領域とすることができるため、着用者等に肌面シート46の色の濃さの変化を認識させやすくなる。なお、汗をかきやすい背側(後側)に有色部Sとしての肌面シート46を設けることで、着用者等に吸汗による肌面シート46の色の濃さの変化を認識させやすくなる。
【0090】
なお、本実施形態において有色部Sを青色としたが、有色部Sの色は青色に限らず、有色であれば、任意に設定することができる。ただし、汗等の水分を吸収する機能を可視化するために、有色部Sの色を青色や水色等の寒色にすることが好ましい。有色部Sの色を寒色にすることで、着用者等に水や涼しさ等を想起させやすくなる。また、後側胴回り部40aが汗を吸収する前後において、着用者等が有色部Sの色を視認可能であることがより好ましい。着用者等は、汗を吸収する前でも、吸汗機能を有する部分を認識することができると、おむつ1が吸汗機能を有していることを予め知ることができる。
【0091】
おむつ1の前側胴回り部30aは、後側胴回り部40aと同様に、疎水部として肌側シート31と親水部として非肌側シート32を有し、非肌側シート32は、前側胴回り部30aの最も非肌側面の少なくとも一部である。また、前側(他方側)の有色部Sを構成する青色(有色)の肌面シート36を有している。そして、図1に示すおむつ1を非肌側から見たときに、肌側シート31と非肌側シート32の少なくとも一部が重なっており、非肌側シート32と肌面シート36の少なくとも一部が重なっている。本実施形態のおむつ1は、図4等に示すように、おむつ1を前後方向に沿って見たときに、肌側シート31と非肌側シート32とは、同じ大きさで、略全域において重なっており、且つ、肌側シート31と非肌側シート32と肌面シート36とが重なっている。そして、着用者の汗を吸収した状態のおむつ1を非肌側から見たときに、肌面シート36(有色部)の色は視認可能な状態である。
【0092】
このように、後側胴回り部40aだけでなく、前側胴回り部30aについても、非肌側シート32と重なる位置に有色部Sとして肌面シート36を設けることで、汗を吸収する吸汗機能を有する使い捨ておむつであること、及び肌面シート36が設けられた領域が汗の水分を吸収し且つ蒸散させる機能を備えた部分であることを着用者等に認識させやすい。
【0093】
また、前後方向における後側の肌面シート46(有色部S)の上端と、前側の肌面シート36(有色部S)の上端が異なる位置に設けられていることが好ましい。本実施形態のおむつ1は、図4に示すように、後側の肌面シート46の上端が前側の肌面シート36の上端より上側に設けられている。このように、着用者の身体の体型や姿勢に応じた有色部Sを配置することで、効果的に吸汗を行うことができ、吸汗による有色部Sの色の濃さの変化を着用者等に認識させやすくなる。また、前後における有色部Sの位置が異なることで、着用者等は、おむつ1の前後を認識しやすくなる。
【0094】
おむつ1の前側胴回り部30aは、後側胴回り部40aの構成と同様であるため、以下、主に後側胴回り部40aの説明を行うが、前側胴回り部30aも同様である。
【0095】
また、後側胴回り部40aにおいて、有色部Sが吸収性コア11より上側に設けられていることが好ましい。図4等に示すように、前後方向における後側において、後側胴回り部40aの青色の肌面シート46は、吸収性コア11より上側に設けられている。吸収性コア11は、液体(排泄物)を吸収する部材であるため、尿等の排泄物に限らず、汗も吸収される。これに対し、吸収性コア11より上側において、有色部材Sとして肌面シート46を設けることで、肌面シート46の吸汗による色の濃さの変化によって、着用者等に吸収性コア11より上側の領域において、おむつ1における着用者の汗を吸収している部分を視認しやすくさせることで、色が濃く見える領域において、着用者の汗を吸収し、吸収した汗の水分を蒸散させることができる印象を与えやすくなる。なお、おむつ1は、肌面シート46の全域を吸収性コア11より上側に設けたが、これに限られない。吸収性コア11より上側に、有色部Sの少なくとも一部が設けられていればよく、上下方向において、吸収性コア11と有色部S(肌面シート46)の一部が重なっていてもよい。
【0096】
さらに、後側胴回り部40aにおいて、有色部Sが液不透過性シート13aより上側に設けられていることが好ましい。図4等に示すように、前後方向における後側において、後側胴回り部40aの青色の肌面シート46が、液不透過性シート13aより上側に設けられている。これによって、液不透過性シート13aより上側で着用者の汗を吸収している部分を視認しやすくさせることで、色が濃く見える領域において、着用者の汗を吸収し、吸収した汗の水分を蒸散させることができる印象を与えやすくなる。
【0097】
また、有色部Sの上端が、後側胴回り部40aの上端より下側に設けられていることが好ましい。図1等に示すように、おむつ1は、後側胴回り部40a(後側帯部材40)の上端より肌面シート46の上端が下側に位置している。これによって、着用者の汗を後側胴回り部40aが吸収した状態で、後側胴回り部40aの上端部は、肌面シート46とは異なる色又は異なる濃さとなるため、着用者等に後側胴回り部40aの上端部では、着用者の汗を吸収していないような印象を与えやすくなり、着用者等は後側胴回り部40aの上端部を触ったり、掴んだりしやすくなる。
【0098】
おむつ1のように、有色部Sは、親水部である非肌側シート42より肌側に設けられていることが好ましい。おむつ1は、非肌側シート42より肌側に肌面シート46を青色の有色部Sとしている。後側胴回り部40aが汗を吸収すると、肌面シート46(有色部)の色が濃く見える。また、汗の水分によって、肌面シート46と厚さ方向に互いに隣接する部材との距離が縮められやすくなるため、肌面シート46の色の濃さがより濃くなり、着用者等は、おむつ1が着用者の汗を吸収していることを認識しやすくなる。
【0099】
なお、有色部Sを、親水部(非肌側シート42)より肌側に設ける場合は、有色部Sの明度が、親水部の明度より低いことが好ましい。つまり、肌面シート46の明度が、非肌側シート42の明度より低いことが好ましい。図6Aに示すように、本実施形態のおむつ1は、青色の肌面シート46の明度が、白色の非肌側シート42の明度より低い。これによって、非肌側シート42を介して肌側シート46の色を視認しやすくなるため、着用者等は、肌側シート46の色の濃さの変化によって、おむつ1の吸汗を認識しやすくなる。
【0100】
各シートの明度(L値)は、例えば、市販の色差計(コニカミノルタ株式会社製、色彩色差計CR-300)を用いて、白色校正板(コニカミノルタ株式会社製、CR-A43(L値96.7))の上で測定することができる。測定された明度(L値)が大きいほど、シートが明るく見えることになる。また、各シートについて、それぞれ所定の大きさの複数のサンプルを切り出し、測定したL値の平均値を比較することが好ましい。
【0101】
後側胴回り部40aの最も非肌側面の少なくとも一部を構成する非肌側シート42の光線透過率が50%以上であることが好ましい。おむつ1のように、有色部Sを非肌側シート42より肌側に設ける場合には、着用者等は、非肌側シート42を通して有色部Sの色を視認しやすくなる。
【0102】
吸収性本体10は、複数の部材が重ねられた部分であり、前側帯部材30や後側帯部材40よりも厚い。そのため、吸収性本体10が設けられた部分は、着用時に着用者が汗をかきやすい部分となる。図4等に示すように、おむつ1を非肌側から見たときに、有色部Sの肌面シート46が、吸収性本体10と重なる部分を有することが好ましい。吸収性本体10と肌面シート46とが重なることで、着用者等により多くの吸汗による肌面シート46の色の濃さの変化を認識させやすくなる。
【0103】
さらに、図3に示すように、後側胴回り部40aの厚さ方向において、肌面シート46の下端部が、肌面シート46と隣接する吸収性本体10の肌面シートと接合されていない下側非接合部46ndを有することが好ましい。具体的には、肌側シートの46のうち、下側非接合部46ndの部分には、接着剤が塗布されていないため、下側非接合部46ndは、吸収性本体10に固定されていない部分である。下側非接合部46ndを設けることで、肌面シート46が水分を吸収すると、肌面シート46のうち、固定されていない下側非接合部46ndは、着用者の肌との距離が近づきやすくなる。着用者の肌と下側非接合部46ndとの距離が近づくことで、肌面シート46が着用者の汗をより吸収し、肌面シート46の色の濃さがより変化して見えるようになり、着用者に、後ろ側胴回り部40aにおける着用者の汗を吸収している部分を視認しやすくさせることで、色が濃く見える領域において、着用者の汗を吸収し、吸収した汗の水分を蒸散させることができる印象を与えやすくなる。
【0104】
また、おむつ1の左右方向における一方側において、有色部Sの一方側の側端が、一方側のサイド接合部1eより外側に設けられていることが好ましい。本実施形態のおむつ1は、図1等に示すように、有色部Sである肌面シート46の一方側の側端が、一方側のサイド接合部1eより外側に設けられている。具体的には、肌面シート46は、おむつ1の左右方向の一方側の側端から他方側の側端まで連続しており、肌面シート46は、肌側シート41と非肌側シート42とともに、前側胴回り部30aと一方側のサイド接合部1eと他方側のサイド接合部1eで接合されている。肌面シート46のうち、サイド接合部1e、1eより左右方向における外側の部分は、着用者の肌に直接触れる部分ではないため、後側胴回り部40aが汗を吸収した場合でも、色が変化しているように見えない場合が多い。そのため、肌面シート46について、一方側のサイド接合部1eより左右方向における外側の領域と、一方側のサイド接合部1eより左右方向における内側の領域の色を比較することで、着用者等は、吸汗によって生じる色の見え方の違いを認識しやすくなる。
【0105】
有色部Sは、後側胴回り部40aが水分を含むと、水分を含む前よりも濃い色に視認される。このとき、濃い色に視認される領域は、所定の濃さに視認される第1有色部分S1と、第1有色部分S1より薄く視認される第2有色部分とを有することが好ましい。図9は、後側胴回り部40aの一部の拡大断面図である。例えば、おむつ1は、肌側シート41と非肌側シート42との間に複数の胴回り弾性部材45を有し、この胴回り弾性部材45の左右方向の伸縮に伴って、後側胴回り部40aには、厚さ方向に凹凸する皺が形成される。図9に示すように、皺が形成された後側胴回り部40aを非肌側から見ると、最も肌側の部分は、第1有色部分S1として、所定の色の濃さで視認される。一方、第1有色部分S1より非肌側は、第2有色部分S2として、第1有色部分S1の色より薄く視認される。このように、第1有色部分S1と第2有色部分S2の色の濃さの違いによって、着用者等に有色部Sの色を認識させやすくなる。
【0106】
上述のように、後側胴回り部40a(後側帯部材40)は、厚さ方向に貫通した複数の開孔部40hを有している。この後側胴回り部40aの非肌側から見たときに、開孔部40hが、有色部S(肌面シート46)と重なることが好ましい。開孔部40hと重なることで、後側胴回り部40aが汗の水分を吸収して、有色部Sの色がより濃く見えることによって、色が設けられていない開孔部40hがより目立つようになる。着用者等に、開孔部40hを視認しやすくなり、おむつ1の通気性の良さを認識させやすくなる。
【0107】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。
【0108】
上述の実施形態では、前側胴回り部30aと後側胴回り部40aにそれぞれ有色部S(青色の肌面シート36、46)を設けたが、これに限られない。前側胴回り部30aのみに有色部Sを設ける構成でもよく、後側胴回り部40aのみに有色部Sを設ける構成でもよい。さらに、前側胴回り部30aの全域、後側胴回り部40aの全域を有色の有色部Sとしてもよい。また、前側胴回り部30aと後側胴回り部40aについて、有色部Sをそれぞれ1箇所だけ設ける構成でなくてもよい。例えば、後側胴回り部40aについて、左右方向の中央部に有色部Sを設けず、左右方向の中央部より外側の両側端部に一対の有色部Sを設けてもよい。各部材(肌面シート36、46)のうちの一部分を有色部Sとし、その部材(肌面シート36、46)のうち有色部S以外の部分を白色としてもよい。着用者の体型、体質や姿勢等に応じて有色部Sの形状、大きさ、配置は適宜変更可能である。
【0109】
上述の実施形態では、親水部である非肌側シート32、42より肌側に設けられた疎水部としての肌側シート31、41より、更に肌側に位置する有色の不織布からなる肌面シート36、46を有色部Sとしたが、これに限られない。疎水部である肌側シート31、41、親水部である非肌側シート32、42、胴回り弾性部材35、45の各部材の一部又は全部を有色の有色部Sとしてもよく、前側胴回り部30a及び後側胴回り部40aにおける各部材を有色の接着剤で接合してもよい。有色の接着剤を用いた場合には、接着剤が有色部Sとなる。さらに、複数の部材を有色にして有色部Sとしてもよい。なお、肌面シート36、46を有色部としない場合において、肌面シート36、46は必ずしも設けなくても良い。
【0110】
例えば、おむつ1を非肌側から見たときに、非肌側シート42と重なる複数の胴回り弾性部材45を水色の有色部Sとし、非肌側シート42を白色のシート部材としてもよい。この場合、胴回り弾性部材45の伸縮機能を保持しつつ、汗の水分によって、胴回り弾性部材45と非肌側シート42とが密接すると、有色の胴回り弾性部材45と重なる部分の非肌側シート42は、光の透過が少なくなり、胴回り弾性部材45の色が濃く見える。また、胴回り弾性部材45は、上下方向に間欠に配置されているため、胴回り弾性部材45が配置されている部分と配置されていない部分との色の差を認識しやすい。そのため、着用者等は、非肌側シート42を介して胴回り弾性部材45の色の濃さの変化を視認することができ、おむつ1における着用者の汗を吸収している部分を視認しやすくさせることで、色が濃く見える領域において、着用者の汗を吸収し、吸収した汗の水分を蒸散させることができる印象を与えやすくなる。
【0111】
また、例えば、非肌側シート42と肌側シート41とを接合する接着剤を青色の接着剤として、おむつ1を非肌側から見たときに、非肌側シート42と重なる位置に青色の接着剤を有色部Sとして設けてもよい。この場合、非肌側シート42と肌側シート41との接着機能を維持しつつ、汗の水分によって、肌側シート41と非肌側シート42とが密接すると、肌側シート41と非肌側シート42との間に設けられた接着剤と重なる部分は、光の透過が少なくなり、有色の接着剤の色が濃く見える。また、接着剤は、任意の形状及び任意の場所に配置が可能であるため、接着剤が設けられた部分と設けられていない部分との色の差を認識させやすくなる。そのため、着用者等は、非肌側シート42を介して接着剤の色の濃さの変化を視認することができ、おむつ1における着用者の汗を吸収している部分を視認しやすくさせることで、色が濃く見える領域において、着用者の汗を吸収し、吸収した汗の水分を蒸散させることができる印象を与えやすくなる。
【0112】
上述の実施形態では、有色部Sとしての肌面シート36、46の全域が、おむつ1の非肌側面から見て、親水部の非肌側シート32、42と疎水部の肌側シート31、41と重なるものとしたが、これに限られない。有色部Sの少なくとも一部が、親水部と重なっていればよいため、肌面シート36、46の少なくとも一部が、非肌側シート32、42と重なっていればよく、肌面シート36、46が肌側シート31、41と重ならなくてもよい。上述のとおり、親水部の非肌側シート32は、汗の水分を保水し、且つ蒸散させる機能を有する。そのため、親水部の非肌側シート32が吸収した水分は、非肌側シート32内で平面的に拡散されるため、おむつ1の非肌側面から見て肌面シート36、46の少なくとも一部が重なる場合でも、非肌側から見たときの少なくとも一部が重なったその領域は、汗の水分を吸収し、且つ、蒸散する機能を備えており、肌面シート36、46の色の濃さの変化によって、おむつ1における着用者の汗を吸収している部分を視認しやすくさせることで、色が濃く見える領域において、着用者の汗を吸収し、吸収した汗の水分を蒸散させることができる印象を与えやすくなる。
【0113】
有色部Sが肌面シート46のように繊維を有し、有色部Sが、後側胴回り部40aの厚さ方向に圧搾された圧搾部(不図示)を備える構成であってもよい。圧搾部は、繊維密度が高くなるため、毛細管現象により、圧搾部は水分をより吸収しやすい部分となる。後側胴回り部40aが水分を吸収すると、有色部Sの圧搾部は、より水分が吸収されるために、色がより濃く見えることになり、着用者等は、おむつ1における着用者の汗を吸収している部分を視認しやすくさせることで、色が濃く見える領域において、着用者の汗を吸収し、吸収した汗の水分を蒸散させることができる印象を与えやすくなる。
【0114】
さらに、有色部Sの圧搾部が、有色部Sと厚さ方向に隣接する隣接部材と一緒に厚さ方向に圧搾されている構成であってもよい。つまり、おむつ1が、肌面シート46と肌側シート41とが圧搾された圧搾部を備えてもよい。圧搾部は、圧搾によって、厚さ方向に隣接するシート同士の繊維が絡み合ったり、繊維が溶融したりして、シート間の距離が寄り近くなる。これによって、有色部Sの色がより濃く見えるだけでなく、有色部Sの肌面シート46と肌側シート41との間の水分の移行を促しやすくなる。例えば、肌面シート46と肌側シート41と非肌側シート42とを厚さ方向に圧搾(溶着)した圧搾部(溶着部)を設けて、肌側シート41と非肌側シート42との間に設けた胴回り弾性部材45を複数の圧搾部(溶着部)を用いて胴回り弾性部材45を後側胴回り部40に取付けるようにしてもよい。
【0115】
上述の実施形態では、帯部材30、40をそれぞれ厚さ方向に貫通する開孔部30h、40hを設けたが、これに限られない。帯部材30、40が開孔部を備えない構成であってもよいし、各帯部材30、40のそれぞれ非肌側シート32、42のみを貫通する開孔部を備え、肌側シート31、41が開孔部を備えない構成であってもよい。
【0116】
上述の実施形態において所謂パンツ型の使い捨ておむつについて説明したが、これに限られない。例えば、図10に示すような、所謂テープ型の使い捨ておむつ2(以下、「おむつ2」ともいう。)等であってもよい。図10は、他の実施形態について説明する図である。おむつ2について、上述の実施形態の構成と共通する部分は、符号等を同じとし、おむつ2の基本構成の詳細な説明は省略する。
【0117】
テープ型の使い捨ておむつ2は、前側胴回り部30a、後側胴回り部40a及び吸収体(不図示)を備え、後側胴回り部40aに設けられた係止部48を前側胴回り部30aに係止することで、図10に示すようなパンツ状となる。パンツ状のおむつ2は、胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LHを備える。このパンツ状のおむつ2において、脚回り開口LHの上端より上側を「胴回り部20」といい、脚回り開口LHの上端より下側を「股下部50」という。おむつ2の胴回り部20は、有色部Sを備える。おむつ2の有色部Sは、おむつ2の最も非肌側面の少なくとも一部を構成する非肌側シート32、42より肌側に位置する肌側シート31、41を部分的に着色した領域である。胴回り部20が着用者の汗を吸収した場合に、有色部Sは色が濃く見えるため、着用者等は、おむつ2の胴回り部20が汗を吸収していること、及び胴回り20のうち、有色部Sが設けられた部分が着用者の汗を吸収し、吸収した汗の水分を蒸散させることができる印象を与えやすくなる。
【0118】
図10に示すテープ型の使い捨ておむつ2においては、肌側シート31、41の一部分を着色した有色部Sについて説明したが、これに限られない。有色部Sを非肌側シート32、42や胴回り部30a、40aに設けられた左右方向に伸縮する伸縮部材(不図示)のいずれかの部材に設けてもよい。また、有色部Sは、肌側シート31、41、非肌側シート32、42、胴回り部30a、40aの伸縮部材の各部材を全域に亘って着色したものであってもよく、各部材の一部分を着色したものであってもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 おむつ(使い捨ておむつ、吸収性物品)、
1e サイド接合部(一方側接合部、他方側接合部)、
2 おむつ(使い捨ておむつ、吸収性物品)、
10 吸収性本体、
11 吸収性コア、
11b コアラップシート、
12 トップシート、
13 バックシート、
13a 液不透過性シート(防漏シート)、
13b 外装シート、
15 防漏壁部、
16 防漏壁弾性部材、
17 脚回り弾性部材、
20 胴回り部、
30 前側帯部材、
30a 前側胴回り部、
30h 開孔部、
31 肌側シート(疎水部)、
32 非肌側シート(親水部)、
35 胴回り弾性部材、
36 肌面シート(他方側有色部)、
40 後側帯部材、
40a 後側胴回り部、
40b 臀部カバー、
40h 開孔部、
41 肌側シート(疎水部)、
42 非肌側シート(親水部)、
45 胴回り弾性部材、
46 肌面シート(一方側有色部)、
47 湾曲弾性部材、
50 股下部、
BH 胴回り開口、
LH 脚回り開口、
S 有色部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10