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特開2022-132514ポリエステル樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料
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  • 特開-ポリエステル樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132514
(43)【公開日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/20 20060101AFI20220901BHJP
   C08L 67/06 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C08G63/20
C08L67/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114681
(22)【出願日】2022-07-19
(62)【分割の表示】P 2018003382の分割
【原出願日】2018-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰
(72)【発明者】
【氏名】矢本 和久
(57)【要約】
【課題】
硬化物における耐熱性や誘電特性に優れるポリエステル樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料を提供すること。
【解決手段】
芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)と分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)とのエステル化物であって、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)がベンゾイルクロライドであり、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)がジアリルビスフェノールであるポリエステル樹脂を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)と分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)とのエステル化物であって、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)がベンゾイルクロライドであり、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)がジアリルビスフェノールであるポリエステル樹脂。
【請求項2】
請求項1記載のポリエステル樹脂と、硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項4】
請求項2記載の硬化性樹脂組成物を用いてなるプリント配線基板。
【請求項5】
請求項2記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる半導体封止材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における耐熱性や誘電特性に優れるポリエステル樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や多層プリント基板等に用いられる絶縁材料の技術分野では、各種電子部材の薄型化や信号の高速化及び高周波数化に伴い、これらの市場動向に合わせた新たな樹脂材料の開発が求められている。樹脂材料に求められる性能としては、耐熱性や耐吸湿性、基材密着性等の基本的な性能はもちろんのこと、信号の高速や高周波数化が進む中、発熱等によるエネルギー損失を低減させるために、硬化物における誘電率と誘電正接との両値が低いことも重要な性能の一つである。
【0003】
硬化物における誘電率と誘電正接とが比較的低い樹脂材料として、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂とα-ナフトールとをフタル酸クロライドでエステル化して得られる活性エステル樹脂をエポキシ樹脂の硬化剤として用いる技術が知られている(下記特許文献1参照)。特許文献1記載の活性エステル樹脂は、フェノールノボラック樹脂のような従来型の硬化剤を用いた場合と比較すると、硬化物における誘電率や誘電正接が低い特徴を有するが、昨今の市場要求を満たすものではなかった。また、硬化物のガラス転移温度で評価される耐熱性等々の性能についても更なる向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-169021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における耐熱性や誘電特性に優れるポリエステル樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、分子末端にアリールカルボニルオキシ構造を有し、分子中に少なくとも一つの重合性不飽和結合を有する芳香族ポリエステル樹脂は、硬化物における耐熱性が高く、誘電特性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、分子末端にアリールカルボニルオキシ構造を有する芳香族ポリエステル樹脂であって、分子構造中に存在する芳香環の少なくとも一つが、芳香環上の置換基として重合性不飽和結合含有基(P)を有することを特徴とするポリエステル樹脂に関する。
【0008】
本発明は更に、前記ポリエステル樹脂と、硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。
【0010】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物を用いてなるプリント配線基板に関する。
【0011】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物を用いてなる半導体封止材料に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化物における耐熱性や誘電特性に優れるポリエステル樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板及び半導体封止材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1で得られたポリエステル樹脂(1)のGPCチャート図である。
図2図2は、実施例2で得られたポリエステル樹脂(2)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、分子末端にアリールカルボニルオキシ構造を有する芳香族ポリエステル樹脂であって、分子構造中に存在する芳香環の少なくとも一つが、芳香環上の置換基として重合性不飽和結合含有基(P)を有することを特徴とする。
【0015】
本発明において前記芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香環間のエステル結合部位を複数有するポリエステル樹脂のことを指し、分子鎖の一部に脂肪族炭化水素基等を含んでいて
もよい。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂は、分子構造中に存在する芳香環の少なくとも一つが、芳香環上の置換基として重合性不飽和結合含有基(P)を有することを特徴の一つとする。前記重合性不飽和結合含有基(P)において重合性不飽和結合とは、例えば、炭素間二重結合や炭素間三重結合等が挙げられる。前記重合性不飽和結合含有基(P)のうち、炭素間二重結合を有するものの具体例としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アリル基、(メタ)アリルオキシ基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、1-ウンデセニル基、1-ペンタデセニル基、3-ペンタデセニル基、7-ペンタデセニル基、1-オクタデセニル基、2-オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、1,3-ブタジエニル基、1,4-ブタジエニル基、ヘキサ-1,3-ジエニル基、ヘキサ-2,5-ジエニル基、ペンタデカ-4,7-ジエニル基、ヘキサ-1,3,5-トリエニル基、ペンタデカ-1,4,7-トリエニル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルキレンオキシ基等が挙げられる。また、炭素間三重結合を有するものの具体例としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1,3-ブタジイニル基等が挙げられる。これらの中でも、硬化物における耐熱性が特に高く、誘電特性にも優れるポリエステル樹脂となることから、ビニル基、(メタ)アリル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基の何れか一種類以上であることが好ましい。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂は、硬化物における耐熱性が特に高く、誘電特性にも優れるポリエステル樹脂となることから、前記重合性不飽和結合含有基(P)の含有量が150~450g/モルの範囲であることが好ましい。なお、本発明において前記重合性不飽和結合含有基(P)の含有量は、ポリエステル樹脂の反応原料から算出される計算値である。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂は、分子末端にアリールカルボニルオキシ構造を有する。即ち、本発明のポリエステル樹脂は、当該構造部位を形成するための反応原料として、芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)等を必須の反応原料とする。
【0019】
前記アリールカルボニルオキシ構造中のアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル器、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記重合性不飽和結合含有基(P)、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基等の置換基を一つ乃至複数有する構造部位等が挙げられる。前記アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等のアルキル基;シクロへキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。これらの中でも、硬化物における耐熱性と誘電特性とに一層優れるポリエステル樹脂となることから、フェニル基又はその芳香核上に前述の置換基を一つ乃至複数有するものが好ましい。また、芳香核上の置換基としては、重合性不飽和結合含有基(P)、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ベンジル基を一つ乃至複数有するものが好ましい。即ち、本発明のポリエステル樹脂は、分子末端に下記構造式(5)で表される構造部位を有することが好ましい。
【0020】
【化1】
(式中Rはそれぞれ独立に重合性不飽和結合含有基(P)、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ベンジル基の何れかである。kは0又は1~5の整数である。)
【0021】
本発明のポリエステル樹脂は、分子末端にアリールカルボニルオキシ構造を有する芳香族ポリエステル樹脂であって、分子構造中に存在する芳香環の少なくとも一つが、芳香環上の置換基として重合性不飽和結合含有基(P)を有するものであれば、他の具体構造は特に限定されない。また、どのような方法で製造されたものであってもよい。以下、本発明のポリエステル樹脂の具体例を2つ挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
・芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)と分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)とのエステル化物であって、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)及び前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)の少なくとも一方が芳香環上の置換基として重合性不飽和結合含有基(P)を有する化合物
・芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)、及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a3)のエステル化物であって、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)、及び前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a3)の少なくとも一つが芳香環上の置換基として重合性不飽和結合含有基(P)を有する化合物
【0023】
前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)は、例えば、安息香酸、ハロゲン化ベンゾイル、ナフタレンカルボン酸、ハロゲン化ナフトイル、これらの芳香核上に前記重合性不飽和結合含有基(P)、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基等の置換基を一つ乃至複数有する構造部位等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0024】
前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)は、例えば、各種の芳香族ポリヒドロキシ化合物や、下記構造式(1)で表される化合物、下記構造式(3)で表される化合物等が挙げられる。分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)は
【0025】
【化2】
[式中nは1以上の整数、mは0又は1~4の整数である。Xは炭素原子数1~4のアルキレン基、アリールメチレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基、アルキレンビフェニレンアルキレン基、シクロアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。Rはそれぞれ独立して重合性不飽和結合含有基(P)、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、下記構造式(2)で表される構造部位の何れかである。]
【0026】
【化3】
(式中のm、n、X、Rは式(1)と同義である。)
【0027】
【化4】
[式中qは1以上の整数、pは0又は1~6の整数である。Xは炭素原子数1~4のアルキレン基、アリールメチレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基、アルキレンビフェニレンアルキレン基、シクロアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。Rはそれぞれ独立して重合性不飽和結合含有基(P)、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、下記構造式(4)で表される構造部位の何れかである。構造式中の各結合点はナフタレン環上のどの炭素原子に結合していてもよい。]
【0028】
【化5】
(式中のp、q、X、Rは式(3)と同義である。構造式中の各結合点はナフタレン環上のどの炭素原子に結合していてもよい。)
【0029】
前記各種の芳香族ポリヒドロキシ化合物は、例えば、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、テトラヒドロキシアントラセン、ビフェノール、テトラヒドロキシビフェニル等の他、これらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物等が挙げられる。芳香核上の置換基は前記重合性不飽和結合含有基(P)、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、其々の具体例は前述の通りである。
【0030】
前記構造式(1)~(4)中のR、Rについて、重合性不飽和結合含有基(P)、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の具体例は前述の通りである。また、nは1以上の整数であるが、硬化物における耐熱性や誘電特性の他、汎用溶剤への溶解性や低溶融粘度性に優れるポリエステル樹脂となることから、1~4程度であることが好ましい。
【0031】
前記構造式(1)~(4)中のXは炭素原子数1~4のアルキレン基、アリールメチレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基、アルキレンビフェニレンアルキレン基、シクロアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。前記アリールメチレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基、アルキレンビフェニレンアルキレン基、シクロアルキレン基は、具体的には、其々、下記構造式で表されるもの等が挙げられる。
【0032】
【化6】
[式中Rはそれぞれ独立して重合性不飽和結合含有基(P)、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかである。Rは水素原子又はメチル基である。hは0又は1~5の整数、iは0又は1~4の整数、jは0又は1である。]
【0033】
これら分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)の中でも、硬化物における耐熱性や誘電特性の他、汎用溶剤への溶解性や低溶融粘度性に優れるポリエステル樹脂となることから、前記構造式(1)で表される化合物が好ましく、構造式(1)及び(2)中のnの値の合計が1~4の範囲であるものがより好ましい。前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)がn数の異なる成分を複数含有する樹脂である場合には、nの値の合計の平均が1~4の範囲であるものが好ましい。
【0034】
更に、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)は、分子中に前記重合性不飽和結合含有炭化水素基(P)を少なくとも1つ有するものが好ましく、1~10個の範囲で有するものがより好ましく、1~4個の範囲で有するものが特に好ましい。前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)がn数の異なる成分を複数含有する樹脂である場合には、一分子あたりの重合性不飽和結合含有炭化水素基(P)含有数の平均が1~4の範囲であるものが好ましい。
【0035】
前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a3)は、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸;トリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸;ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸;これらの酸ハロゲン化物;これらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物等が挙げられる。前記酸ハロゲン化物は、酸塩化物、酸臭化物、酸フッ化物、酸ヨウ化物等が挙げられる。また、芳香核上の置換基は前記重合性不飽和結合含有基(P)、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、其々の具体例は前述の通りである。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、硬化物における耐熱性や誘電特性に一層優れるポリエステル樹脂となることから、イソフタル酸やテレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物が好ましい。
【0036】
本発明のポリエステル樹脂は、例えば、アルカリ触媒の存在下、40~65℃程度の温度条件下で各反応原料を混合撹拌する方法により製造することができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。また、反応終了後は水洗や再沈殿等により反応生成物を精製しても良い。
【0037】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、3.0~30%程度の水溶液として用いても良い。中でも、触媒能の高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0038】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0039】
各反応原料の反応割合は得られるポリエステル樹脂の所望の物性等に応じて適宜調整されるが、特に好ましくは以下の通りである。
【0040】
前記ポリエステル樹脂が芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)と分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)とのエステル化物である場合、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)が有するフェノール性水酸基の合計1モルに対し、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)が0.95~1.05モルとなる割合であることが好ましい。この場合、ポリエステル樹脂の150℃における溶融粘度は0.01~5dPa・sの範囲であることが好ましい。なお、本発明において150℃における溶融粘度はASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した値である。また、その官能基当量は150~450g/当量の範囲であることが好ましい。なお、本発明においてポリエステル樹脂中の官能基とは、ポリエステル樹脂中のエステル結合部位とフェノール性水酸基とのことを言う。また、ポリエステル樹脂の官能基当量は、反応原料の仕込み量から算出される値である。
【0041】
前記ポリエステル樹脂が芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)、及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a3)のエステル化物である場合、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a3)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計との割合が0.5~5モルの範囲であることが好ましく、0.8~3モルの範囲であることがより好ましい。また、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a2)が有する水酸基1モルに対し、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a1)と前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a3)とが有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計が0.9~1.1の範囲であることが好ましい。この場合、ポリエステル樹脂の軟化点はJIS K7234に基づいて測定される値で60~200℃の範囲であることが好ましく、80~180℃の範囲であることがより好ましい。また、その官能基当量は150~450g/当量の範囲であることが好ましい。
【0042】
本発明のポリエステル樹脂は、分子構造中に重合性不飽和結合含有基(P)を有することから、それ単独で硬化性の樹脂材料として用いることができる。また、各種添加剤や、前記ポリエステル樹脂のエステル結合部位或いは重合性不飽和結合含有基(P)と反応し得る硬化剤と配合して硬化性樹脂組成物として用いてもよい。前記硬化剤は本発明のポリエステル樹脂と反応し得る化合物であれば良く、特に限定なく様々な化合物が利用できる。硬化剤の一例としては、例えば、エステル結合部位と硬化反応を生じる得るものとしてエポキシ樹脂、重合性不飽和結合含有基(P)と硬化反応を生じ得るものとしてビスマレイミド樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレート等に代表されるアリル基含有樹脂等が挙げられる。
が挙げられる。
【0043】
前記エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールやクレゾール、ナフトール、ビフェノール、ビスフェノール等を原料とする各種のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂;ポリアリーレンエーテル型エポキシ樹脂;フェノールやクレゾール、ナフトール、ビフェノール、ビスフェノール等がアリーレンジアルキレン基で連結された樹脂構造を有するフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0044】
前記硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合、更に、一般的なエポキシ樹脂用硬化剤として用いられている各種の化合物を併用してもよい。その具体例としては、本発明のポリエステル樹脂以外の活性エステル樹脂、フェノール樹脂、アミン化合物、アミド化合物、酸無水物等が挙げられる。これらを用いる場合、本発明の効果が十分に発揮されることから、本発明のポリエステル樹脂を含むエポキシ樹脂硬化剤の総質量に対し、本発明のポリエステル樹脂の割合が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0045】
前記エポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ樹脂と硬化反応を生じるものであれば特に限定なく、多種多様のものを用いることができる。その具体例としては、アミン化合物、アミド化合物、酸無水物、フェノ-ル樹脂、活性エステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。前記アミン化合物は、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、BF-アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。前記アミド系化合物は、例えば、ジシアンジアミド、脂肪族二塩基酸やダイマー酸、脂肪酸のカルボン酸化合物とエチレンジアミン等のアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。前記酸無水物は、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。前記フェノール樹脂は、例えば、フェノールやクレゾール、ナフトール、ビフェノール、ビスフェノール等を原料とする各種のノボラック樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、ジシクロペンタジエン付加型フェノール樹脂、ポリアリーレンエーテル型フェノール樹脂、フェノールやクレゾール、ナフトール、ビフェノール、ビスフェノール等がアリーレンジアルキレン基で連結された樹脂構造を有するフェノール樹脂等が挙げられる。前記活性エステル樹脂は、例えば、前記フェノール樹脂と芳香族ジカルボン酸、フェノール性水酸基含有化合物とのエステル化物、芳香族ジカルボン酸とフェノール性水酸基含有化合物とのエステル化物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0046】
本発明のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びその他のエポキシ樹脂用硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基の合計1モルに対して、前記ポリエステル樹脂及びその他のエポキシ樹脂用硬化剤中の官能基の合計が0.7~1.5モルとなる割合であることが好ましい。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物は、この他、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリリン酸エステルやリン酸エステル-カーボネート共重合体等を含有しても良い。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物は必要に応じて硬化促進剤、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0049】
前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチルイミダゾール、ピリジン化合物では4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0050】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10―(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性樹脂組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0051】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部中、0.5~95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0052】
この他、本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0053】
以上詳述した通り、本発明のポリエステル樹脂は、硬化物における耐熱性や誘電特性に優れる特徴を有する。この他、汎用有機溶剤への溶解性や、エポキシ樹脂との硬化性、耐吸湿性、保存安定性、基剤密着性等、樹脂材料に求められる一般的な要求性能も十分に高いものであり、プリント配線基板や半導体封止材料、レジスト材料等の電子材料用途の他、塗料や接着剤、成型品等の用途にも広く利用することができる。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物をプリント配線基板用途やビルドアップ接着フィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性樹脂組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が40~80質量%となる割合で使用することが好ましい。ビルドアップ接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分が30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0055】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてプリント配線基板を製造する方法は、例えば、硬化性組成物を補強基材に含浸し硬化させてプリプレグを得、これと銅箔とを重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。硬化性樹脂組成物の含浸量は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。本発明のポリエステル樹脂と硬化剤、無機質充填剤、及びその他の任意成分を含有する半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50~200℃の温度条件下で2~10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【実施例0057】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。実施例中の「部」及び「%」の記載は、特に断わりのない限り質量基準である。
【0058】
本実施例において樹脂のGPCチャートは下記条件にて測定した。
【0059】
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0060】
本実施例において、ポリエステル樹脂中の官能基とは、ポリエステル樹脂中のエステル結合部位とフェノール性水酸基とのことを言う。また、ポリエステル樹脂の官能基当量は、反応原料の仕込み量から算出される値である。
【0061】
実施例1 ポリエステル樹脂(1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにジアリルビスフェノールA320gとトルエン1500gを仕込み、フラスコ内を減圧窒素置換しながら内容物を溶解させた。次いで、ベンゾイルクロライド281gを仕込み、フラスコ内を減圧窒素置換しながら内容物を溶解させた。更にテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8gを加えて溶解させた。窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液412gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、同条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残ったトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。加熱減圧下条件下で乾燥させて活性エステル樹脂(1)505gを得た。活性エステル樹脂(1)の理論構造は下記構造式の通り。活性エステル樹脂(1)の官能基当量は264g/当量、ASTM D4287に準拠しICI粘度計にて測定した150℃での溶融粘度は0.2dPa・sであった。ポリエステル樹脂(1)のGPCチャート図を図1に示す。
【0062】
【化7】
【0063】
実施例2 ポリエステル樹脂(2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにジアリルビスフェノールA641gとトルエン2900gを仕込み、フラスコ内を減圧窒素置換しながら内容物を溶解させた。次いで、ベンゾイルクロライド281gとイソフタル酸クロリド203gを仕込み、フラスコ内を減圧窒素置換しながら内容物を溶解させた。更にテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5gを加えて溶解させた。窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液824gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、同条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残ったトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。加熱減圧条件下で乾燥させて活性エステル樹脂(2)950gを得た。活性エステル樹脂(2)の理論構造は下記構造式の通り。この活性エステル樹脂(2)の官能基当量は245g/当量、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は65℃であった。ポリエステル樹脂(2)のGPCチャート図を図2に示す。
【0064】
【化8】
【0065】
比較製造例1 ポリエステル樹脂(1’)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにジシクロペンタジエンとフェノールの重付付加反応樹脂(水酸基当量165g/当量、軟化点85℃)165g、1-ナフトール72g、トルエン630gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、イソフタル酸クロライド152g(0.75モル)を仕込み、フラスコ内を減圧窒素置換しながら内容物を溶解させた。次に、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.6gを加えて溶解させた。窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液315gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、同条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残ったトルエン層に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。加熱減圧条件下で乾燥させて活性エステル樹脂(1’)を得た。活性エステル樹脂(1’)の官能基当量は223g/当量、軟化点は150℃であった。
【0066】
実施例3、4及び比較例1
ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジメチルアミノピリジンを下記表1に示す割合で配合して硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物について、下記要領で各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
エポキシ樹脂(1):ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON HP-7200H」、エポキシ当量277g/当量)
エポキシ樹脂(2):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」、エポキシ当量188g/当量)
【0067】
硬化物の作成
先で得た硬化性樹脂組成物を11cm×9cm×2.4mmの型枠に流し込み、プレスで180℃の温度で20分間成型した。型枠から成型物を取り出し、更に、175℃5時間、250℃2時間硬化させて硬化物を得た。
【0068】
ガラス転移温度の測定
硬化物から5mm×54mm×2.4mmの試験片を切り出した。
粘弾性測定装置(レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」)を用い、レクタンギュラーテンション法によるDMA(動的粘弾性)測定により弾性率変化点(tanδ変化率が大きい)の温度を測定した。複数の弾性率変化点が測定された場合は、最も高い温度を耐熱性として評価した。測定条件は、周波数1Hz、昇温温度3℃/分とした。
【0069】
誘電正接の測定
硬化物を加熱真空乾燥後、23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用い、空洞共振法にて誘電正接を測定した。
【0070】
【表1】
図1
図2