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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132962
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20220906BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220906BHJP
   C08G 4/00 20060101ALI20220906BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C08G4/00
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031727
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部隼人
(72)【発明者】
【氏名】西巻裕和
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J033
5F004
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H225AE06N
2H225AM26N
2H225AM62N
2H225AM79N
2H225AN39N
2H225AN42N
2H225BA01N
2H225BA32N
4J033CA05
4J033CA11
4J033CA32
4J033CC03
4J033EA33
4J033HA02
4J033HB10
5F004DB01
5F004DB03
5F004DB07
5F004DB19
5F004DB23
5F004DB25
5F004EA02
5F004EA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、入手が容易かつ安価な材料を用いてもフラーレン誘導体と同程度のフルオロカーボンを含むガスに対するドライエッチング耐性を有し、更に優れた膜硬度を有するレジスト下層膜の形成組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ホルミル基とヒドロキシ基が隣り合う2つの炭素にそれぞれ結合する構造を少なくとも1つ以上有する炭素数6~60の芳香族化合物の重合体と溶剤を含むレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜は、フラーレンを用いた材料に近い高いエッチング耐性を有し、膜収縮率が低く、下層膜の内面均一性が保ちやすいため、非感光領域の発生を抑えることができる。また、高い硬度を示したことで、エッチングによる基板加工に有利である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルミル基とヒドロキシ基が隣り合う2つの炭素にそれぞれ結合する構造を少なくとも1つ以上有する炭素数6~60の芳香族化合物の重合体と、溶剤を含むレジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
前記芳香族化合物は、式(1)で表される化合物である請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基、炭素数2乃至10のアルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エーテル基、アルコキシ基で置換されていても良い炭素数6乃至59の芳香環を表す。)
【請求項3】
式(1)において、Arが単環、縮合環、複素環またはこれらの環が単結合によりもしくはスペーサーを介して連結されている連結環である請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
式(1)において、Arがベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環のいずれかである請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
更に架橋剤を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
更に酸及び/又は酸発生剤を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
前記溶剤の沸点が、160℃以上である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
【請求項9】
半導体基板上に塗布された請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を焼成してレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜の製造方法。
【請求項10】
前記焼成を2段階でおこなう請求項9記載のレジスト下層膜の製造方法。
【請求項11】
前記焼成における2段階目の焼成温度が400℃以上である請求項10記載のレジスト下層膜の製造方法。
【請求項12】
前記焼成を不活性ガス雰囲気下で行う請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載のレジスト下層膜レジスト下層膜の製造方法。
【請求項13】
半導体基板上に請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
形成されたレジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程、
形成されたレジスト膜に対する光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
形成されたレジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングし、パターン化する工程、及び
パターン化されたレジスト下層膜を介して半導体基板を加工する工程
を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィープロセスにおいて使用されるレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜形成組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際のリソグラフィープロセスにおいて、フォトレジスト膜を形成するのに先立ち、レジスト下層膜を設けることによって、所望の形状のレジストパターンを形成する技術が知られている。下記特許文献1には、フラーレン誘導体を用いて調製した、レジスト下層膜形成組成物が記載されている。フラーレン誘導体は炭素含有率が高い化合物であり、レジスト下層膜を形成した際に高い硬度を有し、またレジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する際、フルオロカーボンを含むガスに対する高いドライエッチング耐性を有することから有用な材料として用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/143436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしならフラーレン誘導体は特殊な化学構造を有することから入手性が良いとは言えず、また高価であることから工業的に用いるには必ずしも有用な材料では無かった。
本発明は、入手が容易かつ安価な材料を用いてもフラーレン誘導体と同程度のフルオロカーボンを含むガスに対するドライエッチング耐性を有し、更に優れた膜硬度を有するレジスト下層膜の形成組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らが鋭意検討した結果、高いドライエッチング耐性を有し、更に優れた膜硬度を有するレジスト下層膜の形成組成物を見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は以下を包含する。
1.ホルミル基とヒドロキシ基が隣り合う2つの炭素にそれぞれ結合する構造を少なくとも1つ以上有する炭素数6~60の芳香族化合物の重合体と、溶剤を含むレジスト下層膜形成組成物に関する。
2.前記芳香族化合物は、式(1)で表される化合物である上記1に記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
【化1】
(式(1)中、Arは炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基、炭素数2乃至10のアルキニル基、、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エーテル基、アルコキシ基で置換されていても良い炭素数6~59の芳香環を表す。)
3.式(1)において、Arが単環、縮合環、複素環またはこれらの環が単結合によりもしくはスペーサーを介して連結されている連結環である上記2に記載のレジスト下層膜
形成組成物に関する。
4.式(1)において、Arがベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環のいずれかである上記2に記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
5.更に架橋剤を含む、上記1乃至上記4のいずれか1つに記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
6.更に酸及び/又は酸発生剤を含む、上記1乃至上記5のいずれか1つに記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
7.前記溶剤の沸点が、160℃以上である上記1乃至上記6のいずれか1つに記載のレジスト下層膜形成組成物に関する。
8.上記1乃至上記7のいずれか1つに記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜に関する。
9.半導体基板上に塗布された上記1乃至上記8のいずれか1つに記載のレジスト下層膜形成組成物を焼成してレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜の製造方法に関する。
10.前記焼成を2段階でおこなう上記9に記載のレジスト下層膜の製造方法に関する。
11.前記焼成における2段階目の焼成温度が400℃以上である上記10に記載のレジスト下層膜の製造方法に関する。
12.前記焼成を不活性ガス雰囲気下で行う上記9乃至上記11のいずれか1つに記載のレジスト下層膜レジスト下層膜の製造方法に関する。
13.半導体基板上に上記1乃至上記8のいずれか1つに記載のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
形成されたレジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程、
形成されたレジスト膜に対する光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
形成されたレジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングし、パターン化する工程、及び
パターン化されたレジスト下層膜を介して半導体基板を加工する工程
を含む半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のレジスト下層膜形成組成物を用いて形成されたレジスト下層膜は、フラーレンを用いた材料に近い高いエッチング耐性を有し、膜収縮率が低く、下層膜の内面均一性が保ちやすいため、非感光領域の発生を抑えることができる。また、高い硬度を示したことで、エッチングによる基板加工に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、ホルミル基とヒドロキシ基が隣り合う2つの炭素にそれぞれ結合する構造を少なくとも1つ以上有する炭素数6~60の芳香族化合物の重合体と、溶剤を含むレジスト下層膜形成組成物である。
【0008】
[炭素数6~60の芳香族化合物]
炭素数6~60の芳香族化合物は、式(1)で表される化合物である。
【化2】
(式(1)中、Arは炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基、炭素数2乃至10のアルキニル基、、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エーテル基、アルコキシ基で置換されていても良い炭素数6~59の芳香環を表す。)
【0009】
[炭素数6~59の芳香環(Ar)]
炭素数6~59の芳香環(Ar)は、単環、縮合環、複素環またはこれらの環が単結合によりもしくはスペーサーを介して連結されている連結環である。具体的に、炭素数6~59の芳香環(Ar)は、
(a)ベンゼン、フェノール、のような単環であってもよく、
(b)ナフタレン、アントラセン、ピレン、ヒドロキシナフタレン、ナフトール、9,10-アントラキノン、インデノフルオレンジオンのような縮合環であってもよく、
(c)フラン、チオフェン、ピリジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノオキサジン、インドロカルバゾールのような複素環であってもよく、
(d)ビフェニル、フェニルインドール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、α,α,α’,α’-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-p-キシレン、9,9-フルオレニリデン-ビスナフトールのように(a)~(c)の芳香環が単結合で結合された環であってもよく、
(e)フェニルナフチルアミンのように、スペーサーを介して(a)~(d)の芳香環が連結された環であってもよい。ここの置換基Rは後述する炭素数1~20のアルキル基を例示することができる。
スペーサーの例としては、-(CH-(n=1~20)、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-NH-、-NR-、-NHCO-、-NRCO-、-S-、-COO-、-OCO-、-O-、-CO-、-Ph-、-Ph-Ph-、-Ph-O-Ph-(Ph=C)、及び-CH=N-の一種又は二種以上の組合せが挙げられる。これらのスペーサーは2つ以上連結していてもよい。
【0010】
上記例示された芳香環以外に、Arとしては、さらにピリミジン、ピラジン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、キノリン、フルオレン、キナゾリン、プリン、インドリジン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、アクリジン等が挙げられる。
【0011】
上記炭素数6~59の芳香環(Ar)の水素原子は、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基、炭素数2乃至10のアルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エーテル基、アルコキシ基で置換されていてもよい。
【0012】
上記炭素数1乃至20のアルキル基としては、置換基を有しても、有さなくてもよい直鎖または分岐を有するアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、p-tert-ブチルシクロヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシルノニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基およびエイコシル基などが挙げられる。好ましくは炭素数1~12のアルキル基、より好ましくは炭素数1~8のアルキル基、更に好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。
【0013】
炭素数2乃至10のアルケニル基、炭素数2乃至10のアルキニル基としては置換基を有しても、有さなくてもよい直鎖または分岐を有するアルケニル基、アルキニル基が挙げられ、例えば、ビニル基、エチニル基、2-プロぺニル基、2-プロピニル基、2-ブテニル基、2-ブチニル基、3-ブテニル基、3-ブチニル基などが挙げられる。
【0014】
上記置換基を有してもよい炭素数1乃至20のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数2乃至10のアルケニル基、置換基を有しても良い炭素数2乃至10のアルキニル基の置換基としてはホルミル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エーテル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0015】
上記芳香環(Ar)は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環が好ましい。また、上記芳香環(Ar)は炭素数が59を越えない範囲において2種類以上の芳香環(Ar)が縮合した縮合環としていてもよい。
【0016】
[溶剤]
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の溶剤としては、上記反応生成物を溶解できる溶剤であれば、特に制限なく使用することができる。特に、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は均一な溶液状態で用いられるものであるため、その塗布性能を考慮すると、リソグラフィー工程に一般的に使用される溶剤を併用することが推奨される。
【0017】
そのような溶剤としては、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン
、4-メチル-2-ペンタノール、及びγ-ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で、又は二種以上の組み合わせで使用することができる。
【0018】
また、WO2018/131562A1に記載された下記の化合物を用いることもできる。
【化3】
(式(i)中のR、R及びRは各々水素原子、酸素原子、硫黄原子又はアミド結合で中断されていてもよい炭素数1乃至20のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっても良く、互いに結合して環構造を形成しても良い。)
【0019】
炭素数1乃至20のアルキル基としては、置換基を有しても、有さなくてもよい直鎖又は分岐を有するアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、p-tert-ブチルシクロヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシルノニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基およびエイコシル基などが挙げられる。好ましくは炭素数1乃至12のアルキル基、より好ましくは炭素数1乃至8のアルキル基、更に好ましくは炭素数1乃至4のアルキル基である。
【0020】
酸素原子、硫黄原子又はアミド結合により中断された炭素数1乃至20のアルキル基としては、例えば、構造単位-CH-O-、-CH-S-、-CH-NHCO-又は-CH-CONH-を含有するものが挙げられる。-O-、-S-、-NHCO-又は-CONH-は前記アルキル基中に一単位又は二単位以上あってよい。-O-、-S-、-NHCO-又は-CONH-単位により中断された炭素数1乃至20のアルキル基の具体例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ブチルカルボニルアミノ基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基等であり、更には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基又はオクタデシル基であって、その各々がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基等により置換されたものである。好ましくはメトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0021】
これらの溶剤は比較的高沸点であることから、レジスト下層膜形成組成物に高埋め込み性や高平坦化性を付与するためにも有効である。
【0022】
以下に式(i)で表される好ましい化合物の具体例を示す。
【化4】
【0023】
上記の中で、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、及び下記式:
【化5】
で表される化合物が好ましく、式(i)で表される化合物として特に好ましいのは、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、及びN,N-ジメチルイソブチルアミドである。
【0024】
これらの溶剤は単独で、又は二種以上の組み合わせで使用することができる。これらの溶剤の中で沸点が160℃以上であるものが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、2,5-ジメチルヘキサン-1,6-ジイルジアセテート(DAH;cas,89182-68-3)、及び1,6-ジアセトキシヘキサン(cas,6222-17-9)等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルイソブチルアミドが好ましい。
【0025】
[架橋剤成分]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は架橋剤成分を含むことができる。その架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、又はそれらのポリマー系等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコールウリル(例えば、テトラメトキシメチルグリコールウリル)、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、又はメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
【0026】
また、上記架橋剤としては耐熱性の高い架橋剤を用いることができる。耐熱性の高い架橋剤としては分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を好ましく用いることができる。
【0027】
この化合物は下記式(4)の部分構造を有する化合物や、下記式(5)の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【化6】
上記R11、R12、R13、及びR14は水素原子又は炭素数1乃至10のアルキル基であり、これらのアルキル基は上述の例示を用いることができる。n3は1~4の整数であり、n4は1~(5-n3)の整数であり、(n3+n4)は2~5の整数を示す。n5は1~4の整数であり、n6は0~(4-n5)であり、(n5+n6)は1~4の整数を示す。オリゴマー及びポリマーは繰り返し単位構造の数が2~100、又は2~50の範囲で用いることができる。
【0028】
式(4)及び式(5)の化合物、ポリマー、オリゴマーは以下に例示される。
【化7】
【化8】
【0029】
上記化合物は旭有機材工業株式会社、本州化学工業株式会社の製品として入手することができる。例えば上記架橋剤の中で式(4-24)の化合物は旭有機材工業株式会社、商品名TM-BIP-Aとして入手することができる。
架橋剤の添加量は、使用する塗布溶媒、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、全固形分に対して0.001乃至80質量%、好ましくは 0.01乃至50質量%、さらに好ましくは0.05乃至40質量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の上記反応生成物中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0030】
[酸及び/又は酸発生剤]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は酸及び/又は酸発生剤を含有することができる。
酸としては例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸、ピリジニウムフェノールスルホン酸、サリチル酸、5-スルホサリチル酸、4-フェノールスルホン酸、カンファースルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香
酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。
酸は一種のみを使用することができ、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。配合量は全固形分に対して、通常0.0001乃至20質量%、好ましくは0.0005乃至10質量%、さらに好ましくは0.01乃至3質量%である。
【0031】
酸発生剤としては、熱酸発生剤や光酸発生剤が挙げられる。
熱酸発生剤としては、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2-ニトロベンジルトシレート、K-PURE〔登録商標〕CXC-1612、同CXC-1614、同TAG-2172、同TAG-2179、同TAG-2678、同TAG2689、同TAG2700(King Industries社製)、及びSI-45、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-150(三新化学工業(株)製)その他有機スルホン酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0032】
光酸発生剤は、レジストの露光時に酸を生ずる。そのため、下層膜の酸性度の調整ができる。これは、下層膜の酸性度を上層のレジストとの酸性度に合わせるための一方法である。また、下層膜の酸性度の調整によって、上層に形成されるレジストのパターン形状の調整ができる。
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれる光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、及びジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。
【0033】
オニウム塩化合物としてはジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフエート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート及びビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のスルホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0034】
スルホンイミド化合物としては、例えばN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド及びN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられる。
【0035】
ジスルホニルジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、及びメチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン等が挙げられる。
【0036】
酸発生剤は一種のみを使用することができ、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
酸発生剤が使用される場合、その割合としては、レジスト下層膜形成組成物の固形分100質量部に対して、0.01乃至5質量部、又は0.1乃至3質量部、又は0.5乃至1質量部である。
【0037】
[その他の成分]
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生がなく
、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(株式会社トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R-40、R-40N、R-40LM(DIC株式会社製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子株式会社製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、レジスト下層膜材料の全固形分に対して通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また二種以上の組み合わせで使用することもできる。界面活性剤が使用される場合、その割合としては、レジスト下層膜形成組成物の固形分100質量部に対して0.0001乃至5質量部、又は0.001乃至1質量部、又は0.01乃至0.5質量部である。
【0038】
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、吸光剤、レオロジー調整剤、接着補助剤などを添加することができる。レオロジー調整剤は、下層膜形成組成物の流動性を向上させるのに有効である。接着補助剤は、半導体基板又はレジストと下層膜の密着性を向上させるのに有効である。
【0039】
吸光剤としては例えば、「工業用色素の技術と市場」(CMC出版)や「染料便覧」(有機合成化学協会編)に記載の市販の吸光剤、例えば、C.I.Disperse Yellow 1,3,4,5,7,8,13,23,31,49,50,51,54,60,64,66,68,79,82,88,90,93,102,114及び124;C.I.Disperse Orange1,5,13,25,29,30,31,44,57,72及び73;C.I.Disperse Red 1,5,7,13,17,19,43,50,54,58,65,72,73,88,117,137,143,199及び210;C.I.Disperse Violet 43;C.I.Disperse Blue 96;C.I.Fluorescent Brightening Agent 112,135及び163;C.I.Solvent Orange2及び45;C.I.Solvent Red 1,3,8,23,24,25,27及び49;C.I.Pigment Green 10;C.I.Pigment Brown 2等を好適に用いることができる。上記吸光剤は通常、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下の割合で配合される。
【0040】
レオロジー調整剤は、主にレジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、レジスト下層膜の膜厚均一性の向上やホール内部へのレジスト下層膜形成組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペー
ト、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、又はノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0041】
接着補助剤は、主に基板あるいはレジストとレジスト下層膜形成組成物の密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにするための目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルメチロールクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメチロールエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、メチロールトリクロロシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、又はチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0042】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の固形分は通常0.1乃至70質量%、好ましくは0.1乃至60質量%とする。固形分はレジスト下層膜形成組成物から溶剤を除いた全成分の含有割合である。固形分中における上記反応生成物の割合は、1乃至100質量%、1乃至99.9質量%、50乃至99.9質量%、50乃至95質量%、50乃至90質量%の順で好ましい。
【0043】
レジスト下層膜形成組成物が均一な溶液状態であるかどうかを評価する尺度の一つは、特定のマイクロフィルターの通過性を観察することであるが、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、孔径0.1μmのマイクロフィルターを通過し、均一な溶液状態を呈する。
【0044】
上記マイクロフィルター材質としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などのフッ素系樹脂、PE(ポリエチレン)、UPE(超高分子量ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PSF(ポリスルフォン)、PES(ポリエーテルスルホン)、ナイロンが挙げられるが、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製であることが好ましい。
【0045】
[レジスト下層膜及び半導体装置の製造方法]
以下、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物を用いたレジスト下層膜及び半導体装置の製造方法について説明する。
【0046】
半導体装置の製造に使用される基板(例えば、シリコンウエハー基板、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板、ポリイミド基板、及び低誘電率材料(low-k材料)被覆基板等)の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のレジスト下層膜形成組成物が塗布され、その後、焼成することによりレジスト下層膜が形成される。焼成する条件としては、焼成温度80℃乃至
800℃、焼成時間0.3乃至60分間の中から適宜選択される。焼成時の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。好ましくは、空気中で焼成温度150℃乃至350℃、焼成時間0.5乃至2分間でプリベークを行った後、不活性ガス中で焼成温度400℃乃至800℃、より好ましくは450℃乃至700℃、更に好ましくは500℃の至600℃、焼成時間0.5乃至2分間で本焼成を行うことである。不活性ガス下における酸素濃度としては、1容量%未満であり、0.1容量%以下が好ましく、0.01容量%以下がより好ましく、0.005容量%以下がさらに好ましく、0.003容量%以下が特に好ましい。加熱時の酸素濃度が高い場合、レジスト下層膜の酸化分解が進行し、レジスト下層膜として必要な特性が発現できないおそれがある。ここで、形成される下層膜の膜厚としては、例えば、10乃至1000nmであり、又は20乃至500nmであり、又は30乃至400nmであり、又は50乃至300nmである。
【0047】
また、本発明に係る有機レジスト下層膜上に無機レジスト下層膜(ハードマスク)を形成することもできる。例えば、WO2009/104552A1に記載のシリコン含有レジスト下層膜(無機レジスト下層膜)形成組成物をスピンコートで形成する方法の他、Si系の無機材料膜をCVD法などで形成することができる。
【0048】
また、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物を、段差を有する部分と段差を有しない部分とを有する半導体基板(いわゆる段差基板)上に塗布し、焼成することにより、当該段差を有する部分と段差を有しない部分との段差が3~70nmの範囲内である、レジスト下層膜を形成することができる。
【0049】
次いでそのレジスト下層膜の上にレジスト膜、例えばフォトレジストの層が形成される。フォトレジストの層の形成は、周知の方法、すなわち、フォトレジスト組成物溶液の下層膜上への塗布及び焼成によって行なうことができる。フォトレジストの膜厚としては例えば50乃至10000nmであり、又は100乃至2000nmであり、又は200乃至1000nmである。
【0050】
レジスト下層膜の上に形成されるフォトレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。例えば、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学工業株式会社製商品名PAR710、及び信越化学工業株式会社製商品名SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0051】
次に、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する。まず、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光には、近紫外線、遠紫外線、又は極端紫外線(例えば、EUV(波長13.5nm))等が用いられる。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びFエキシマレーザー(波長157nm)等を使用することができる。これらの中でも、ArFエキシマ
レーザー(波長193nm)及びEUV(波長13.5nm)が好ましい。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃乃至150℃、加熱時間0.3乃至10分間から適宜、選択された条件で行われる。
【0052】
また、本発明ではレジストとしてフォトレジストに変えて電子線リソグラフィー用レジストを用いることができる。電子線レジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用できる。酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジストなどがある。これらの電子線レジストを用いた場合も照射源を電子線としてフォトレジストを用いた場合と同様にレジストパターンを形成することができる。
【0053】
次いで、現像液によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光された部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5℃乃至50℃、時間10乃至600秒から適宜選択される。
【0054】
そして、このようにして形成されたフォトレジスト(上層)のパターンを保護膜として無機下層膜(中間層)の除去が行われ、次いでパターン化されたフォトレジスト及び無機下層膜(中間層)からなる膜を保護膜として、有機下層膜(下層)の除去が行われる。最後に、パターン化された無機下層膜(中間層)及び有機下層膜(下層)を保護膜として、半導体基板の加工が行なわれる。
【0055】
まず、フォトレジストが除去された部分の無機下層膜(中間層)をドライエッチングによって取り除き、半導体基板を露出させる。無機下層膜のドライエッチングにはテトラフルオロメタン(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等のガスを使用することができる。無機下層膜のドライエッチングにはハロゲン系ガスを使用することが好ましく、フッ素系ガスによることがより好ましい。フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH)等が挙げられる。
【0056】
その後、パターン化されたフォトレジスト及び無機下層膜からなる膜を保護膜として有機下層膜の除去が行われる。有機下層膜(下層)は酸素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。シリコン原子を多く含む無機下層膜は、酸素系ガスによるドライエッチングでは除去されにくいからである。
【0057】
最後に、半導体基板の加工が行なわれる。半導体基板の加工はフッ素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。
フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH)等が挙げられる。
【0058】
また、レジスト下層膜の上層には、フォトレジストの形成前に有機系の反射防止膜を形成することができる。そこで使用される反射防止膜組成物としては特に制限はなく、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、また、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる塗布及び焼成によって反射防止膜の形成を行なうことができる。
【0059】
本発明では基板上に有機下層膜を成膜した後、その上に無機下層膜を成膜し、更にその上にフォトレジストを被覆することができる。これによりフォトレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐためにフォトレジストを薄く被覆した場合でも、適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。例えば、フォトレジストに対して十分に早いエッチング速度となるフッ素系ガスをエッチングガスとしてレジスト下層膜に加工が可能であり、また無機下層膜に対して十分に早いエッチング速度となるフッ素系ガスをエッチングガスとして基板の加工が可能であり、更に有機下層膜に対して十分に早いエッチング速度となる酸素系ガスをエッチングガスとして基板の加工を行うことができる。
【0060】
レジスト下層膜形成組成物より形成されるレジスト下層膜は、また、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光に対する吸収を有することがある。そして、そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する反射防止膜として機能することができる。さらに、本発明のレジスト下層膜形成組成物で形成された下層膜はハードマスクとしても機能し得るものである。本発明の下層膜は、基板とフォトレジストとの相互作用の防止するための層、フォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能とを有する層、加熱焼成時に基板から生成する物質の上層フォトレジストへの拡散を防ぐ機能を有する層、及び半導体基板誘電体層によるフォトレジスト層のポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として使用することも可能である。
【0061】
また、レジスト下層膜形成組成物より形成される下層膜は、デュアルダマシンプロセスで用いられるビアホールが形成された基板に適用され、ホールを隙間なく充填することができる埋め込み材として使用できる。また、凹凸のある半導体基板の表面を平坦化するための平坦化材として使用することもできる。
【実施例0062】
本明細書の下記合成例に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する。)による測定結果である。測定には東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8320GPC)を用い、測定条件等は次のとおりである。
GPCカラム:TSKgelSuperH-RC,TSKgelSuperMultipore HZ-N,TSKgelSuperMultipore HZ-N(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(関東化学,高速液体クロマトグラフィー用)
標準試料:ポリスチレン(Shodex製)
【0063】
また、下記合成例に記載の略記号は以下の意味を表す。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME: プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0064】
<合成例1>(ポリマー(1)の合成)
【化9】
窒素下、300ミリリットル容量の四口フラスコに、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド(東京化成工業(株)製)70.00g(406.6mmol)、メタンスルホン酸(東京化成工業(株)製)39.1g(406.6mmol)、N-メチル-2-ピロリジノン(関東化学、鹿1級)49.1g、PGMEA114.5gを入れて150℃に昇温し、150℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物を1600mlのメタノール(関東化学,特級)/水(5/5)混合溶媒に滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、真空乾燥したのち再度シクロヘキサノンで固形分30%に溶解し、800mlのメタノール(関東化学,特級)/水(5/5)混合溶媒に滴下してポリマーを再度沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は524であり、収率は30.1%であった。得られたポリマーをシクロヘキサノンで固形分濃度30%に希釈し、固形分量と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂をそれぞれ加え、4時間撹拌した。イオン交換樹脂をろ過してポリマー溶液を得た。
【0065】
<合成例2>(ポリマー(2)の合成)
【化10】
窒素下、100ミリリットル容量の二口フラスコに、サリチルアルデヒド(東京化成工業(株)製)8.00g(65.5mmol)、メタンスルホン酸(東京化成工業(株)製)6.3g(65.5mmol)、N-メチル-2-ピロリジノン(関東化学、鹿1級)6.4g、PGMEA15.0gを入れて150℃に昇温し、150℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物を350mlのメタノール(関東化学,特級)/水(5/5)
混合溶媒に滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は3200であった。得られたポリマーをシクロヘキサノンで固形分濃度30%に希釈し、固形分量と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂をそれぞれ加え、4時間撹拌した。イオン交換樹脂をろ過してポリマー溶液を得た。
【0066】
<合成例3>(ポリマー(3)の合成)
【化11】
窒素下、100ミリリットル容量の二口フラスコに、3-メチルサリチルアルデヒド(東京化成工業(株)製)8.00g(58.8mmol)、メタンスルホン酸(東京化成工業(株)製)5.6g(58.8mmol)、N-メチル-2-ピロリジノン(関東化学、鹿1級)6.1g、PGMEA14.3gを入れて150℃に昇温し、150℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物を350mlのメタノール(関東化学,特級)/水(5/5)混合溶媒に滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は1000であった。得られたポリマーをPGMEで固形分濃度30%に希釈し、固形分量と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂をそれぞれ加え、4時間撹拌した。イオン交換樹脂をろ過してポリマー溶液を得た。
【0067】
<合成例4>(ポリマー(4)の合成)
【化12】
窒素下、100ミリリットル容量の二口フラスコに、4-メチルサリチルアルデヒド(東京化成工業(株)製)8.00g(58.8mmol)、メタンスルホン酸(東京化成工業(株)製)5.6g(58.8mmol)、N-メチル-2-ピロリジノン(関東化学、鹿1級)6.1g、PGMEA14.3gを入れて150℃に昇温し、150℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物を350mlのメタノール(関東化学,特級)/水
(5/5)混合溶媒に滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は1500であった。得られたポリマーをPGMEで固形分濃度30%に希釈し、固形分量と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂をそれぞれ加え、4時間撹拌した。イオン交換樹脂をろ過してポリマー溶液を得た。
【0068】
<合成例5>(ポリマー(5)の合成)
【化13】
窒素下、100ミリリットル容量の二口フラスコに、5-メチルサリチルアルデヒド(東京化成工業(株)製)8.00g(58.8mmol)、メタンスルホン酸(東京化成工業(株)製)5.6g(58.8mmol)、N-メチル-2-ピロリジノン(関東化学、鹿1級)6.1g、PGMEA14.3gを入れて150℃に昇温し、150℃で18時間攪拌した。得られた反応混合物を350mlのメタノール(関東化学,特級)/水(5/5)混合溶媒に滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は800であった。得られたポリマーをPGMEで固形分濃度30%に希釈し、固形分量と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂をそれぞれ加え、4時間撹拌した。イオン交換樹脂をろ過してポリマー溶液を得た。
【0069】
<比較合成例1>(ポリマー(7)の合成)
【化14】
窒素下、100mL容量の二口フラスコに2,2’-ビフェノール(東京化成工業(株)製)25.00g、1-ナフトアルデヒド(東京化成工業(株)製)10.5g、1-ピレンカルボキシアルデヒド(アルドリッチ製)15.5g及びメタンスルホン酸(東京化成工業(株)製)3.87gを入れた。その後、120℃まで加熱し、約24時間後室温まで放冷し、メタノールで沈殿させて、得られた沈殿物を乾燥させた。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,000であった。得られたポリマーをPGMEAで固形分濃度30%に希釈し、固形分量と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂をそれぞれ加え、4時間撹拌した。イオン交換樹脂をろ過してポリマー溶液を得た。
【0070】
<比較合成例2>(ポリマー(8)の合成)
【化15】
窒素下、3リットル容量の四口フラスコにマロン酸-ジ-tert-ブチル(Aldrich社製)9.80gを入れ、さらに1,2,4-トリメチルベンゼン150cmとジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene、東京化成工業株式会社製)6.50gを加えて撹拌しながら、温度を4℃に調整した。得られた温度調整後の反応液に、ヨウ素(和光純薬工業株式会社製)10.9gを130cmの1,2,4-トリメチルベンゼンに溶解させた黒紫色の溶液をゆっくり滴下した。滴下中は氷浴を用いてフラスコ内温を11℃になるよう制御した。滴下終了後、反応液の温度を室温まで戻し、その後、上記反応容器内の反応液に、フラーレン混合物(C60、C70及びその他高次フラーレン類を含む、フロンティアカーボン株式会社製)5.00gを1,2,4-トリメチルベンゼン350cmに溶解させた溶液を撹拌しながら加えた。その後、フラスコ内の反応液に、ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene、東京化成工業株式会社製)6.90gを5cmの1,2,4-トリメチルベンゼンで希釈した溶液を撹拌しながらゆっくり滴下した。室温で6.5時間撹拌して反応させた。得られた反応液について、反応層(有機相)を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液で4回洗浄した。得られた有機相を、1N硫酸水溶液100cmを用いて2回洗浄した後、純水200cmを用いて3回洗浄した。溶剤(1,2,4-トリメチルベンゼン)を減圧下留去し、赤茶色の固体9.50gを得た。 得られた固体をシリカゲルクロマトグラフでn-ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒にて分別して、フラーレン誘導体(マロン酸-ジ-tert-ブチルエステル付加体)を得た。
【0071】
<比較合成例3>(ポリマー(9)の合成)
【化16】
窒素下、300mL容量の四口フラスコに1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成工業(株)製)12.5g(76.5mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物(東京化成工業(株)製)3.55g(2.1mmol)、PGME74.4gを入れて85℃に昇温し、37%ホルムアルデヒド液(東京化成工業(株)製)5.86gを反応液に滴下した。その後、約5時間後室温まで放冷し、ヘプタンで沈殿させて、得られた沈殿物を乾燥させた。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,400であった。
【0072】
<比較合成例4>(ポリマー(10)の合成)
【化17】
窒素下、100ミリリットル容量の二口フラスコに、6-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド(東京化成工業(株)製)4.00g(23.2mmol)、メタンスルホン酸(東京化成工業(株)製)2.23g(23.2mmol)、N-メチル-2-ピロリジノン(関東化学、鹿1級)7.41g、PGMEA17.4gを入れて150℃に昇温したところ、1時間程度でゲル化した。
【0073】
<実施例1>
合成例1で得た樹脂溶液5.31gに1%の界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック[商品名]R-40、フッ素系界面活性剤)を含むPGMEA0.14g、PGMEA2.40g、シクロヘキサノン2.13gを混合した。その後、口径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過し、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調整した。
【0074】
<実施例2>
合成例2で得た樹脂溶液3.98gに1%の界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック[商品名]R-40、フッ素系界面活性剤)を含むPGMEA0.10g、PGME1.80g、PGMEA3.50g、シクロヘキサノン0.61gを混合した。その後、口径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過し、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調整した。
【0075】
<実施例3>
合成例3で得た樹脂溶液10.59gに1%の界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック[商品名]R-40、フッ素系界面活性剤)を含むPGMEA0.21g、PGME0.53g、PGMEA3.66gを混合した。その後、口径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過し、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調整した。
【0076】
<実施例4>
合成例4で得た樹脂溶液8.78gに1%の界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック[商品名]R-40、フッ素系界面活性剤)を含むPGMEA0.21g、PGME2.34g、PGMEA3.66gを混合した。その後、口径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過し、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調整した。
【0077】
<実施例5>
合成例5で得た樹脂溶液9.79gに1%の界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガ
ファック[商品名]R-40、フッ素系界面活性剤)を含むPGMEA0.21g、PGME1.32g、PGMEA3.66gを混合した。その後、口径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過し、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調整した。
【0078】
<実施例6>
合成例1で得た樹脂を7.82gに2%のピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナートを含むPGME2.54g、TMOM-BP(本州化学工業(株)製、架橋剤)0.51g、1%の界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック[商品名]R-40、フッ素系界面活性剤)を含むPGMEA0.20g、PGME4.35g、PGMEA4.15g、シクロヘキサノン0.42gを混合した。その後、口径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過し、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調整した。
【0079】
<比較例1>
比較合成例1で得た樹脂溶液(固形分は29.9質量%)を得た。この樹脂溶液3.02gに1質量%界面活性剤(DIC(株)製、メガファックR-40)含有PGMEA0.10g、PGMEA3.68g、PGME2.68gを加えて溶解させ、口径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0080】
<比較例2>
比較合成例2で得たフラーレン誘導体1.0gに、下記式(6)で表されるエポキシ化合物(東都化成株式会社製、商品名:YH434L)0.15g、界面活性剤としてメガファック〔登録商標〕R-30(DIC株式会社)0.001gを混合し、PGMEA7.0gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物溶液を調製した。
【化18】
【0081】
<比較例3>
比較合成例3で得た樹脂1.29gに1質量%界面活性剤(DIC(株)製、メガファックR-40)含有PGMEA0.25g、PGME6.09g、PGMEA2.35gを加えて溶解させ、口径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0082】
〔膜収縮率の測定〕
実施例1乃至実施例6、及び比較例1至比較例3で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。その後、大気中ホットプレート上で350℃で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚約0.25μm)を形成し、膜厚Aを測定した。この基板を更に窒素雰囲気下500℃あるいは600℃で5分ベークし、膜厚Bを測定した。膜厚B/膜厚A×100からなる値を膜収縮率とした。
なお、焼成温度が500℃の場合、「記号-1」と表1に記載され、焼成温度が600
℃の場合、「記号-2」と表1に記載される。
比較例1で調整したレジスト下層膜組成物の膜収縮率が50%と大きいのに対して実施例1至実施例6からなる組成物は25%以下と小さい。これは昇華物が少なく装置汚染が少なくなるという利点があり、また、膜の面内均一性に対しても収縮率が少ない方が有利である。
【0083】
〔ドライエッチング速度の測定〕
実施例1乃至実施例6、及び比較例1至比較例3で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。その後、ホットプレート上で350℃で1分間ベークした後、窒素雰囲気下500℃、600℃で5分ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。そして、これらのレジスト下層膜のドライエッチング速度を、サムコ株式会社製RIEシステムを用い、ドライエッチングガスとしてCFを使用した条件下で測定した。
前記比較例2-1(フラーレン)のドライエッチング速度(E.R.)を1.00としたときの、前記各レジスト下層膜のドライエッチング速度を算出した。その結果を下記表1に“相対ドライエッチング速度”として示す。比較例2-1で形成されたレジスト下層膜は蒸着で形成されるアモルファスカーボン層の代替となり得るドライエッチング速度を有している。一方、実施例1至実施例6で形成されたレジスト下層膜はフラーレンを用いた材料(比較例2)に近い高いエッチング耐性を有している。
【0084】
〔硬度の測定〕
実施例1乃至実施例6、及び比較例1至比較例3で調製したレジスト下層膜形成組成物を用い、上記と同様の方法によって、シリコンウエハー上にレジスト下層膜を形成した。東陽テクニカ社製ナノインデンターでナノインデンテーション試験を行い、上記レジスト下層膜の硬度を測定した。実施例1乃至実施例6は1.40GPa以上の硬度を示し、より緻密な構造を有していることからエッチングによる基板加工に有利であることが示された。
【0085】
【表1】