(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133144
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】廃硫黄回収設備及びこれを用いた廃硫黄の回収方法
(51)【国際特許分類】
C01B 17/027 20060101AFI20220906BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C01B17/027 Z
C22B23/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032055
(22)【出願日】2021-03-01
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フックロール
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智孝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓二
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA19
4K001BA02
4K001DB03
4K001DB23
4K001DB24
(57)【要約】
【課題】 濾過器において液体硫黄から分離除去された廃硫黄を回収する際に該廃硫黄が粉塵となって飛散するのを防止することが可能な回収設備を提供する。
【解決手段】 リーフフィルター1のエレメント1bから払い落とされる廃硫黄Sを下方にガイドするシュート部10と、シュート部10の真下にあって廃硫黄Sを収容する金属製の略直方体形状のコンテナ部20とから構成される廃硫黄回収設備であって、シュート部10は、金属製の筒状部10aと、その下端部に取り付けられている可撓性部材からなるスカート部10bとから構成され、コンテナ部20は、前部外側にアームロール車30のアーム部先端が係合する係合部21が設けられていると共に後部に漏水防止用の耐熱パッキン24でシールされた下開き方式の廃硫黄排出用の扉部23が設けられており、上部が開放している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体硫黄の浄化処理を行なう濾過器のエレメントに堆積した廃硫黄を回収する廃硫黄回収設備であって、該エレメントから払い落とされる廃硫黄を下方にガイドするシュート部と、該シュート部の真下にあって該廃硫黄を収容する金属製の略直方体形状のコンテナ部とから構成され、前記シュート部は、金属製の筒状部と、その下端部に取り付けられている可撓性部材からなるスカート部とから構成され、前記コンテナ部は、前部外側にアームロール車のアーム部先端が係合する係合部が設けられていると共に後部に漏水防止用の耐熱パッキンでシールされた下開き方式の廃硫黄排出用の扉部が設けられており、上部が開放していることを特徴とする廃硫黄回収設備。
【請求項2】
前記コンテナ部の底部4に水抜き用の貫通孔が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の廃硫黄回収設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の廃硫黄回収設備を用いた廃硫黄の回収方法であって、前記コンテナ部の内部に水を張る工程と、前記エレメントから払い落とされる廃硫黄を前記シュート部を介して前記コンテナ部に収容する工程と、前記コンテナ部を前記アームロール車に搭載して搬出する工程とからなることを特徴とする廃硫黄の回収方法。
【請求項4】
前記コンテナ部の内部に張る水の量が、該コンテナ部の内部容量の1/4以上2/4以下であることを特徴とする、請求項3記載の廃硫黄の回収方法。
【請求項5】
前記エレメントから払い落とされる廃硫黄は、灰分と液体硫黄とを含んだ湿潤ケーキの形態を有していることを特徴とする、請求項3又は4記載の廃硫黄の回収方法。
【請求項6】
前記濾過器がリーフフィルターであることを特徴とする、請求項3から5のいずれか1項に記載の廃硫黄の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃硫黄回収設備及びこれを用いた廃硫黄の回収方法に関し、特に、硫化水素ガス製造用の原料として使用する液体硫黄に含まれる不純物等を除去する際に排出される廃硫黄の回収設備及びこれを用いた廃硫黄の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低ニッケル品位の鉱石原料からニッケルを回収する場合に適した湿式製錬法として、原料のニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリーに対して、硫酸を添加して高温高圧下でニッケルやコバルトなどの有価金属を酸浸出処理するHigh Pressure Acid Leaching(HPAL)法が知られている。このHPAL法では、酸浸出処理により生成したニッケルやコバルトを含む浸出液に対して、鉄分や亜鉛分などの不純物を除去した後、反応容器内で硫化水素ガスを吹き込んで硫化処理が施される。これより、これらニッケルやコバルトは混合硫化物として回収される。
【0003】
上記の硫化処理に用いる硫化水素ガスは、例えば特許文献1に開示されているような硫化水素製造装置から一般的に供給される。この特許文献1の硫化水素製造装置は、反応槽内に貯留されている液体硫黄に対して該反応槽の底部から水素ガスを吹き込むことで、該水素ガスが該液体硫黄内を上昇する間に該液体硫黄と反応させて硫化水素ガスを生成させるものである。上記の硫化水素製造装置への液体硫黄の供給源には、スチームコイル等の加熱手段を備えた溶融槽が一般的に用いられており、ここで原料の固体硫黄が溶融される。
【0004】
上記の溶融槽で溶融する原料の固体硫黄は、一般的にフレコンバックの荷姿で納入されるため、該溶融槽にはその上部に原料投入用シュートが設けられている。この原料投入用シュートを介して溶融槽に投入される固体硫黄は、灰分等の不純物を含んでいるため、該溶融槽内の液体硫黄を槽内の縦型ポンプで抜き出して、例えば非特許文献1に開示されているようなリーフフィルターに導入し、ここで該不純物を固液分離することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】”SULPHUR HANDLING & FILTRATION”、Twin Process Filtration BV、[online]、[令和2年12月28日検索]、インターネット(URL:https://mesaredondachile.com/pdf/papers/02-sulphur-handling-and-filtration.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記リーフフィルターに代表される液体硫黄の浄化処理用の濾過器は、通常は屋外の鉄骨建造物に設置されているため、分離除去された不純物を含む廃硫黄が濾過器の濾材(エレメント)の一次側表面に堆積することによって濾過能力が低下したときは、該濾過器への液体硫黄の導入を停止して該濾過器のハウジングを開放し、該濾材の一次側表面に堆積している湿潤ケーキ状の廃硫黄を該鉄骨構造物の下方の場面に払い落とす作業が必要になる。このようにして場面に払い落とされた廃硫黄は、ホイールローダーによって回収してダンプカーに積み込んだ後、所定の場所まで搬送してそこで再処理又は廃棄される。
【0008】
この従来の廃硫黄の回収方法は、廃硫黄が払い落とされる場面から周囲に飛散してそこで地面に堆積するので、この地面に堆積した廃硫黄がホイールローダーのタイヤに付着して他のエリアまで広がることが問題になっていた。特に雨季は他のエリアに広がった廃硫黄が泥状になって機器等に付着するので、作業環境を広範囲に亘って悪化させる要因になっていた。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、濾過器において液体硫黄から分離除去された廃硫黄の回収時に、該廃硫黄が粉塵となって飛散するのを抑制することで周辺も含めて作業環境を改善すると共に、該廃硫黄を容易に回収することが可能な回収設備及びこれを用いた回収方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る廃硫黄回収設備は、液体硫黄の浄化処理を行なう濾過器のエレメントに堆積した廃硫黄を回収する廃硫黄回収設備であって、該エレメントから払い落とされる廃硫黄を下方にガイドするシュート部と、該シュート部の真下にあって該廃硫黄を収容する金属製の略直方体形状のコンテナ部とから構成され、前記シュート部は、金属製の筒状部と、その下端部に取り付けられている可撓性部材からなるスカート部とから構成され、前記コンテナ部は、前部外側にアームロール車のアーム部先端が係合する係合部が設けられていると共に後部に漏水防止用の耐熱パッキンでシールされた下開き方式の廃硫黄排出用の扉部が設けられており、上部が開放していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、濾過器の濾材表面に堆積した廃硫黄を払い落とす時に粉塵となって周囲に飛散したり、回収した廃硫黄がその運搬車両のタイヤに付着して周辺まで広がったりする作業環境上の問題を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の廃硫黄回収設備によって回収される廃硫黄が除去されることで浄化された液体硫黄を原料として生成した硫化水素を硫化剤として用いるHPAL法のブロックフロー図である。
【
図2】従来の廃硫黄の回収方法を示す概要図である。
【
図3】本発明の実施形態の廃硫黄回収設備をリーフフィルター及びアームロール車と共に示す全体的な正面図である。
【
図5】
図3に示す廃硫黄回収設備を構成するコンテナ部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.硫化水素製造プロセス
先ず、本発明の廃硫黄回収設備によって回収される廃硫黄が除去されることで浄化された液体硫黄を原料として生成する硫化水素製造プロセスについて説明する。硫化水素は可燃性の有毒ガスであり、その製造プロセスとしては、触媒の存在下で硫黄と水素とを反応させて硫化水素を生成する触媒反応法と、触媒を用いないで硫黄と水素とを反応させて硫化水素を生成する無触媒反応法とが知られている。
【0013】
前者の触媒反応法は、例えば貯留槽内の液体硫黄を加熱することで発生させた硫黄ガスと、別途用意した水素ガスとを触媒が充填された反応管内に導入し、この反応管内で例えば圧力5~50kPaG程度、温度300~400℃程度の条件で反応させることで硫化水素ガスを生成する方法である。一方、後者の無触媒反応法は、例えば圧力約800kPaG、温度約470℃の高温高圧条件下の反応容器内に加熱された状態で保持されている液体硫黄内に水素ガスを吹き込み、この水素ガスが液体硫黄内を上昇する間にその気液界面において液体硫黄と反応させることで硫化水素ガスを生成する方法である。
【0014】
上記の触媒反応法及び無触媒反応法のいずれの製造プロセスにおいても、生成した硫化水素ガスには未反応の硫黄ガスが含まれうるので、一般的には生成した硫化水素ガスを熱交換器に導入し、ここで冷媒を用いて冷却することにより該硫黄ガスを凝縮により分離除去して純度の高い硫化水素ガスを作製すると共に、液体の形態で分離除去された硫黄は回収して原料として再利用する。このようにして作製された硫化水素ガスは、必要に応じて温水による洗浄により純度が更に高められた後、乾燥処理により残存する水分を除去することで高純度の硫化水素ガスになる。後述する硫黄溶融設備で作製される液体硫黄は、上記のような触媒反応法や無触媒反応法による硫化水素製造プロセスの原料に好適に用いられる。
【0015】
2.湿式製錬プロセス
上記の硫化水素製造プロセスで製造された硫化水素ガスは、HPAL法によるニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて硫化剤として使用される。この湿式製錬プロセスは、
図1に示すように、前処理工程S1、浸出工程S2、向流多段洗浄工程S3、中和工程S4、脱亜鉛工程S5、ニッケル回収工程S6、及び最終中和工程S7の一連の湿式処理工程から一般的に構成される。
【0016】
これら工程の各々について説明すると、前処理工程S1では、原料のニッケル酸化鉱石に対して粉砕及び湿式分級を行なうことにより所定の粒度を有するニッケル酸化鉱石を含んだ鉱石スラリーの調製を行なう。浸出工程S2では、前処理工程S1で得た鉱石スラリーを硫酸と共にオートクレーブに装入し、更に高圧蒸気を吹き込んで高温高圧下で浸出処理を行なうことで、有価金属のニッケル及びコバルトを浸出させて浸出スラリーを生成する。向流多段洗浄工程S3では、浸出工程S2で得た浸出スラリーを直列に接続したシックナー群の先頭に導入し、反対側から導入した洗浄液と互いに向流に流すことで該浸出スラリーを洗浄しながらこれに含まれる浸出残渣を除去して浸出液を得る。中和工程S4では、向流多段洗浄工程S3で得た浸出液に中和剤を添加して鉄分等の不純物を中和澱物の形態で分離除去して中和終液を得る。脱亜鉛工程S5では、中和工程S4で得た中和終液に硫化剤として上記の硫化水素ガスを添加して不純物の亜鉛を亜鉛硫化物として分離除去することでニッケル及びコバルトを含む母液を得る。ニッケル回収工程S6では、脱亜鉛工程S5で得た母液に硫化剤として上記の硫化水素ガスを添加してニッケル及びコバルトから混合硫化物を生成して回収する。最終中和工程S7では、ニッケル回収工程S6から排出されるニッケル貧液及び向流多段洗浄工程S3から排出される浸出残渣に中和剤を添加して無害化処理を行なう。
【0017】
3.硫黄溶融設備
次に、本発明の実施形態の廃硫黄回収設備によって回収される廃硫黄の排出源である濾過器を備えた硫黄溶融設備について説明する。硫黄溶融設備は、一般的には、上面が天板で覆われた略直方体形状のステンレス製の溶融槽からなり、該溶融槽内には、シュートを介して投入される融点約120℃の固体硫黄を溶融すると共に、該溶融槽内の液体硫黄を好ましくは液温125℃以上150℃以下に保温する役割を担う複数の蒸気コイルと、該溶融槽内の液体硫黄を撹拌する撹拌機とが設けられている。この溶融槽内には、更にオーバーフローにより液面を維持する堰と、この堰をオーバーフローした液体硫黄を抜き出す縦型ポンプとが設けられており、この縦型ポンプによって抜き出された液体硫黄は、後述する濾過器に導入されて浄化処理される。
【0018】
4.廃硫黄回収設備
次に、本発明の実施形態の廃硫黄回収設備及びこれを用いた廃硫黄の回収方法について説明する。上記の硫黄溶融設備に設けられている液体硫黄の浄化用の濾過器にはリーフフィルターが用いられることが多く、このリーフフィルターは一般的に鉄骨建造物の2階部分に設置されている。その理由は、リーフフィルターによる液体硫黄の浄化処理では、運転時間の経過に伴ってエレメントの一次側に徐々に廃硫黄が堆積して濾過能力が低下するため、ある程度時間が経過して例えば該エレメントの差圧が規定値を超えたときに、リーフフィルターのハウジングを開放して該エレメントの一次側表面に堆積している廃硫黄を1階に払い落とす作業が必要になるからである。
【0019】
上記のようにして1階に払い落とされた廃硫黄は、従来はホイールローダー及びダンプカーを用いて回収していた。すなわち、
図2に示すように、建屋の2階に設置されているリーフフィルター1のハウジング1aを開放し、エレメント1bに付着している廃硫黄Sを治具で掻き落としたり圧縮空気を吹き付けたりすることで払い落とし、これによりリーフフィルター1の真下の1階の床面において山状に積み重ねられる廃硫黄Sに対して、ホイールローダー2のショベルで掬い取ってダンプカー3に積み込み、再処理又は廃棄を行なう場所まで運搬していた。
【0020】
上記の従来の廃硫黄の回収方法では、エレメント1bに付着している廃硫黄Sを2階から1階へ払い落とす際に、1階で積み重なっている廃硫黄Sが矢印で示すように舞い上がり、周囲に飛散して作業環境を悪化させることが問題になっていた。また、硫黄は燃えやすいため、周囲に飛散した廃硫黄Sが降り積もった後に何等かの要因により加熱され、発火して火災事故を引き起こすおそれがあった。更に、山状に積み重なっている廃硫黄Sを掬い取るには、ホイールローダー2をリーフフィルター1のほぼ真下まで近づける必要があり、その際、ホイールローダー2のタイヤに廃硫黄Sが付着するため、ホイールローダー2が他のエリアへ移動するときにこのタイヤに付着した廃硫黄Sがタイヤ跡となって他のエリアの床面を汚すことが問題になっていた。
【0021】
これに対して、本発明の実施形態においては、
図3及び
図4に示すように、リーフフィルター1のエレメント1bから払い落とされる廃硫黄Sを下方にガイドするシュート部10と、その真下にあって廃硫黄Sを収容する金属製の略直方体形状の容器からなるコンテナ部20とから構成される廃硫黄回収設備をリーフフィルター1の下方に設置している。これにより、2階のリーフフィルター1から払い落とされる廃硫黄Sを1階の場面に積み重ねることなくシュート部10を介して直接コンテナ部20に回収することができるので、廃硫黄Sを周囲に飛散させることなく容易に回収することが可能になる。
【0022】
具体的に説明すると、本発明の実施形態の廃硫黄回収設備を構成するシュート部10は、水平方向に切断した断面形状が矩形又は円形の好適には金属製の筒状部10aと、該筒状部10aの下端部にボルトナット等の結合手段で取り付けられている可撓性部材からなるスカート部10bとから構成される。筒状部10aは、より確実に廃硫黄Sを回収できるように、その上端部が全周に亘って外側に広がるように傾斜しているのが好ましい。更に、この筒状部10aの上端部には、例えば上記の傾斜している部分に、転落防止用の好適には目開き150~250mm程度のグレーチング又は複数本の平行棒を設けるのが好ましい。
【0023】
上記のシュート部10の真下に設けるコンテナ部20は、その内側まで上記のシュート部10のスカート部10bの少なくとも下端部が入り込むように上部が開放されている。これにより、廃硫黄Sを周囲に飛散させることなく、コンテナ部20の内側まで確実に導入することができる。コンテナ部20は、更に
図5に示すように、回収した廃硫黄を収容したままアームロール車(脱着ボディシステム車又はフックロール車とも称する)30で運搬可能なように、その前部側壁の外側にアームロール車30のアーム部先端のフックを引っ掛ける湾曲した金属棒からなる係合部21が設けられると共に、後部下側に車輪22が設けられている。このように、廃硫黄Sをコンテナ部20に収容したままの状態でアームロール車30にて運搬できるので、リーフフィルター1の真下まで車両を近づける必要がなくなり、また、廃硫黄Sが1階の床面上に払い落とされなくなるので、タイヤへの廃硫黄Sの付着を防ぐことができる。コンテナ部20は、更に
図6にも示すように、回収した廃硫黄Sを容易に排出できるように、下開き方式の揺動自在な扉部(リヤゲートとも称する)23が後部に設けられている。
【0024】
上記のコンテナ部20内にリーフフィルター1から払い落とされるときの廃硫黄Sの温度は140℃程度の高温になるため、この高温の廃硫黄Sによるコンテナ部20の変形や底部への付着等の問題を防ぐため、廃硫黄Sの回収時には、予めコンテナ部20内に水を張っておくのが好ましい。このため、コンテナ部20の後端部分のうち扉部23の周縁部が当接する部分には、漏水防止用のシリコン製の耐熱パッキン24が設けられている。また、コンテナ部20の底部4隅には、上記の張り込んだ水を必要に応じて抜き出すための水抜き用の貫通孔25が設けられている。なお、これら貫通孔25の各々の近傍には、ゴム栓などの貫通孔25の封止手段を鎖などでぶら下げておくのが好ましい。あるいはバルブ付きの短管を各貫通孔25に接続してもよい。
【0025】
上記した本発明の実施形態の廃硫黄回収設備を用いてリーフフィルター1のエレメント1bの一次側表面に堆積した廃硫黄Sを回収する場合は、先ず
図3に示すようにシュート部10の真下にコンテナ部20を配置する。この状態でコンテナ部20の貫通孔25にゴム栓等を用いて栓をした後、コンテナ部20内に水を張り込む。コンテナ部20内に張り込む水の量は、コンテナ部20の内部容量の1/4以上2/4以下が好ましい。これにより、リーフフィルター1のハウジング1aを開放してエレメント1bから払い落とされるほぼ全ての廃硫黄Sを水中に浸らせることが可能になる。この張り込む水の量がコンテナ部20の内部容量の1/4未満では、リーフフィルター1から払い落とされる廃硫黄Sの熱でコンテナ部20の底部が変形するおそれがある。逆に、この張り込む水の量がコンテナ部20の内部容量の2/4を超えると、リーフフィルター1から落下する廃硫黄Sによってコンテナ部20内の水が廃硫黄Sと共にコンテナ部20の外部に飛び散りやすくなる。
【0026】
コンテナ部20内への水張りが完了した後は、リーフフィルター1のハウジング1aを開けてエレメント1bの一次側表面に堆積している廃硫黄Sの払い落としを行なう。コンテナ部20内への廃硫黄Sの収容は、リーフフィルター1の濾過能力が低下する度に行なわれる1回のハウジング1aの開放により払い落とされる廃硫黄Sを全て回収した時点で終了するのが好ましいが、この1回のハウジング1aの開放で回収した廃硫黄Sの量が少なすぎる場合は、前述した高温の廃硫黄Sの問題が生じない限り、例えばコンテナ部20の高さの1/4程度まで廃硫黄Sが収容されるまで複数回のハウジング1aの開放で払い落とされる廃硫黄Sを回収してもよい。
【0027】
このようにしてリーフフィルター1から払い落とした廃硫黄Sをコンテナ部20内に収容した後、コンテナ部20内の水の温度を必要に応じて確認してから、底部4隅の貫通孔25の栓を外して常温程度の水を排出する。これにより、アームロール車30による搬送時に車両が揺れにくくなるので運転が安定するうえ、当然のことながら運搬荷重が減るので燃費が向上する。コンテナ部20からの水の排出がほぼ完了した時点で貫通孔25に再び栓をした後、コンテナ部20の係合部21にアームロール車30のアーム部先端のフックを引っ掛けることで係合させ、
図3の1点鎖線で示すように、アーム部を回動させることでアームロール車30の荷台の上にコンテナ部20を搭載し、再処理場や廃棄場等の他のエリアに向けて搬出する。これにより、廃硫黄Sの回収が完了する。
【符号の説明】
【0028】
1 リーフフィルター
1a ハウジング
1b エレメント
2 ホイールローダー
3 ダンプカー
10 シュート部
10a 筒状部
10b スカート部
20 コンテナ部
21 係合部
22 車輪
23 扉部
24 耐熱パッキン
25 貫通孔
30 アームロール車
S 廃硫黄