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特開2022-133261マイクロ粒子及びマイクロ粒子分散液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133261
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】マイクロ粒子及びマイクロ粒子分散液
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/12 20060101AFI20220906BHJP
   C08J 3/07 20060101ALI20220906BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B01J13/12
C08J3/07 CFH
C08J3/07 CEY
C08J3/07 CES
C08J3/16 CEW
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031192
(22)【出願日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2021032109
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大知
(72)【発明者】
【氏名】チャンデル アーヴィンド クマー シン
(72)【発明者】
【氏名】濱田 智仁
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 重仁
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【テーマコード(参考)】
4F070
4G005
【Fターム(参考)】
4F070AA08
4F070AA18
4F070AA23
4F070AA24
4F070AA32
4F070AA60
4F070AB08
4F070AB09
4F070AC34
4F070AC80
4F070AE14
4F070AE30
4F070CA02
4F070CB03
4F070CB12
4F070DA33
4F070DC04
4F070DC07
4F070DC16
4G005AA01
4G005BA12
4G005BB06
4G005BB08
4G005DB25X
4G005DC61X
4G005DC61Y
4G005DC62Y
4G005DD07Z
4G005DD47Z
4G005EA03
(57)【要約】
【課題】新たなマイクロ粒子を提供する。
【解決手段】フッ素含有ポリマー、フッ素非含有ビニルポリマー、及びシリコーンポリマーからなる群より選択される少なくとも一種のポリマーを含むシェルと、フルオロカーボンを含むコアとを含む、コアシェル型のマイクロ粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有ポリマー、フッ素非含有ビニルポリマー、及びシリコーンポリマーからなる群より選択される少なくとも一種のポリマーを含むシェルと、フルオロカーボンを含むコアとを含む、コアシェル型のマイクロ粒子。
【請求項2】
ポリマーを含むシェルと、フルオロカーボンを含むコアとを含む、コアシェル型のマイクロ粒子であって、
前記ポリマー主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に-CX-CXCX-,-CX=CX-,-C≡C-,-CX-O-CX-,-CX-S-CX-,-CX-S-S-CX-,-CX-C(=O)-CX-,-C(=O)-N(X,Y)-,-CX-C(=S)-CX-,-C(=S)-N(X,Y)-,-Si(X,Y)-O-Si(X,Y)-,及び-Si(X,Y)-Si(X,Y)-(式中、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基、ニトリル基、エステル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキレン基であり、X及びYは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~20の、アルキル基、アルキレン基、アリール基、(パー)フルオロアルキル基、又は(パー)フルオロアルキレン基を表す)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位からなる、マイクロ粒子。
【請求項3】
前記ポリマー主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に-CX-CXCX-,-CX=CX-,-CX-O-CX-,-CX-C(=O)-CX-,-C(=O)-N(X,Y)-,-CX-C(=S)-CX-,-Si(X,Y)-O-Si(X,Y)-,及び-Si(X,Y)-Si(X,Y)-(式中、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基、ニトリル基、エステル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキレン基であり、X及びYは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~20の、アルキル基、アルキレン基、アリール基、(パー)フルオロアルキル基、又は(パー)フルオロアルキレン基を表す)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位からなる、請求項1に記載のマイクロ粒子。
【請求項4】
酸性条件付与後におけるマイクロ粒子形状の変化率が50%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項5】
アルカリ性条件付与後におけるマイクロ粒子形状の変化率が50%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項6】
前記ポリマーがシリコーンポリマー又はフッ素含有ポリマーであり、前記ポリマーに含まれるフッ素の含有量が、20重量%以上である請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項7】
コアのフルオロカーボンのフッ素含有率が10質量%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項8】
コアのフルオロカーボンの沸点が90℃以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項9】
コアのフルオロカーボンの酸素の溶解度が30vol/vol%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項10】
前記フルオロカーボンがパーフルオロアルキル基を含むフルオロカーボン又はフルオロポリエーテル基とパーフルオロアルキル基とを含むフルオロカーボンであり、かつ重量平均分子量が50000以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項11】
フルオロポリエーテル基とパーフルオロアルキル基とを含む前記フルオロカーボンの沸点が150℃以上である、請求項10に記載のマイクロ粒子。
【請求項12】
体積平均粒子径が、500μm以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項13】
シェルの厚みが、50nm以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項14】
コアが酸素を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項15】
シェルの弾性率が、500MPa以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ粒子と、
有機溶剤と
を含む組成物。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ粒子と、
水性媒体と
を含み、前記マイクロ粒子が前記水性媒体中に分散している、マイクロ粒子分散液。
【請求項18】
酸素運搬液、移植組織保存液、移植臓器保護液、又は培養液である、請求項17に記載のマイクロ粒子分散液。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ粒子の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含む方法:
(1)ポリマーとフルオロカーボンとを有機溶媒中に分散させた分散層を、均一な細孔を有する多孔質膜を介して、界面活性剤を含む連続相中に、膜乳化させて前記マイクロ粒子を分散質として含むエマルションを得る工程;及び
(2)前記エマルションに含まれる有機溶媒相を除去する工程。
【請求項20】
くぼみを有する請求項1~13のいずれか一項に記載のマイクロ粒子の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含む方法:
(1)項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ粒子を、水性媒体に分散させた分散液に、アルコールを添加する工程;及び
(2)工程(1)で得られた粒子を溶媒に再懸濁させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はマイクロ粒子及びマイクロ粒子分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素運搬体として利用可能なマイクロサイズの粒子が開発されている(非特許文献1、2)。かかる粒子は赤血球の代替物として使用でき、その分散液は、血液の代替物として使用することができる。
【0003】
そのようなマイクロ粒子として、例えば、赤血球のサイズと円盤形状とを模倣し、かつ変形性を有する、ヒドロゲルを固定した直径6μmのマイクロ粒子が報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yu Xiong, et al., Biomacromolecules (13) 3292-3300, 2012
【非特許文献2】Yu Xiong, et al., ACSNANO (7) 7454-7461, 2013
【非特許文献3】Chen K, et al., Biomacromolecules (13) 2748-2759, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、新たなマイクロ粒子及びマイクロ粒子分散液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
項1.
フッ素含有ポリマー、フッ素非含有ビニルポリマー、及びシリコーンポリマーからなる群より選択される少なくとも一種のポリマーを含むシェルと、フルオロカーボンを含むコアとを含む、コアシェル型のマイクロ粒子。
項2.
ポリマーを含むシェルと、フルオロカーボンを含むコアとを含む、コアシェル型のマイクロ粒子であって、
前記ポリマー主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に-CX-CXCX-,-CX=CX-,-C≡C-,-CX-O-CX-,-CX-S-CX-,-CX-S-S-CX-,-CX-C(=O)-CX-,-C(=O)-N(X,Y)-,-CX-C(=S)-CX-,-C(=S)-N(X,Y)-,-Si(X,Y)-O-Si(X,Y)-,及び-Si(X,Y)-Si(X,Y)-(式中、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基、ニトリル基、エステル基、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキレン基であり、X及びYは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~20の、アルキル基、アルキレン基、(パー)フルオロアルキル基、若しくは(パー)フルオロアルキレン基、又はアリール基を表す)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位からなる、マイクロ粒子。
項3.
前記ポリマー主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に-CX-CXCX-,-CX=CX-,-CX-O-CX-,-CX-C(=O)-CX-,-C(=O)-N(X,Y)-,-CX-C(=S)-CX-,-Si(X,Y)-O-Si(X,Y)-,及び-Si(X,Y)-Si(X,Y)-(式中、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基、ニトリル基、エステル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキレン基であり、X及びYは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~20の、アルキル基、アルキレン基、アリール基、(パー)フルオロアルキル基、又は(パー)フルオロアルキレン基を表す)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位からなる、項1に記載のマイクロ粒子。
項4.
前記ポリマーの酸性条件付与後における引張強度の変化が50%以下である、項1~3のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項5.
前記ポリマーの酸性条件付与後における引張伸びの変化が50%以下である、項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項6.
前記ポリマーのアルカリ性条件付与後における引張強度の変化が50%以下である、項1~5のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項7.
前記ポリマーのアルカリ性条件付与後における引張伸びの変化が50%以下である、項1~6のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項8.
酸性条件付与後におけるマイクロ粒子形状の変化率が50%以下である、項1~3のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項9.
アルカリ性条件付与後におけるマイクロ粒子形状の変化率が50%以下である、項1~8のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項10.
シェルの酸素透過係数が10-14cm(STP)cm/(cm・s・Pa)以上である、項1~9のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項11.
前記ポリマーがシリコーンポリマー又はフッ素含有ポリマーであり、前記ポリマーに含まれるフッ素の含有量が、20重量%以上である項1~10のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項12.
コアのフルオロカーボンのフッ素含有率が10質量%以上である、項1~11のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項13.
コアのフルオロカーボンの沸点が90℃以上である、項1~12のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項14.
コアのフルオロカーボンの酸素の溶解度が30vol/vol%以上である、項1~13のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項15.
前記フルオロカーボンがパーフルオロアルキル基を含むフルオロカーボン又はフルオロポリエーテル基とパーフルオロアルキル基とを含むフルオロカーボンであり、かつ重量平均分子量が50000以下である、項1~14のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項16.
フルオロポリエーテル基とパーフルオロアルキル基とを含む前記フルオロカーボンの沸点が150℃以上である、項15に記載のマイクロ粒子。
項17.
体積平均粒子径が、500μm以下である、項1~16のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項18.
シェルの厚みが、50nm以上である、項1~17のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項19.
コアが酸素を含む、項1~17のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項20.
シェルの弾性率が、500MPa以下である、項1~19のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
項21.
項1~20のいずれか一項に記載のマイクロ粒子と、
有機溶剤と
を含む組成物。
項22.
項1~20のいずれか一項に記載のマイクロ粒子と、
水性媒体と
を含み、前記マイクロ粒子が前記水性媒体中に分散している、マイクロ粒子分散液。
項23.
酸素運搬液、移植組織保存液、移植臓器保護液、又は培養液である、項22に記載のマイクロ粒子分散液。
項24.
項1~20のいずれか一項に記載のマイクロ粒子の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含む方法:
(1)ポリマーとフルオロカーボンとを有機溶媒中に分散させた分散相を、均一な細孔を有する多孔質膜を介して、界面活性剤を含む連続相中に、膜乳化させて前記マイクロ粒子を分散質として含むエマルションを得る工程;及び
(2)前記エマルションに含まれる有機溶媒相を除去する工程。
項25.
くぼみを有する項1~18のいずれか一項に記載のマイクロ粒子の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含む方法:
(1)項1~20のいずれか一項に記載のマイクロ粒子を、水性媒体に分散させた分散液に、アルコールを添加する工程;及び
(2)工程(1)で得られた粒子を溶媒に再懸濁させる工程。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、新たなマイクロ粒子及びマイクロ粒子分散液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aは、本開示の一実施形態に係るコアシェル型の球状のマイクロ粒子を示す模式断面図である。図1Bは、変形した一実施形態のマイクロ粒子を示す模式断面図である。
図2図2Aは、本開示の一実施形態に係るコアシェル型のくぼみを有するマイクロ粒子を示す横断面の模式図であり、図2Bは本開示の一実施形態に係るコアシェル型のくぼみを有するマイクロ粒子を示す上断面の模式図である。
図3】本開示の一実施形態に係るマイクロ粒子の製造方法に用いる製造装置の模式図である。
図4】多孔質膜を介した膜乳化法の原理を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.マイクロ粒子
本開示のマイクロ粒子は、ポリマーを含むシェルと、フルオロカーボンを含むコアとを含む、コアシェル型のマイクロ粒子である。
【0010】
本開示において、「マイクロ粒子」とは、直径が1000μm未満のもの全般を指し、直径が1μm未満のものも含む。
【0011】
本開示のマイクロ粒子は、酸素運搬体をはじめ、各種用途に使用できる。本開示のマイクロ粒子のサイズは、用途に応じて適宜設定することができ、そのような用途別の最適サイズは当業者に周知である。
【0012】
本開示のマイクロ粒子は、特に酸素運搬体として使用される場合、体積平均粒子径が、500μm以下であれば好ましく、100μm以下であればより好ましく、50μm以下であれば更に好ましく、20μm以下であればさらに好ましい。本開示のマイクロ粒子は、細胞のエンドサイトーシスを受けにくいという点で、体積平均粒子径が、100nm以上であれば好ましく、500nm以上であればより好ましく、1μm以上であればさらに好ましく、2μm以上であればよりさらに好ましい。本開示において、体積平均粒子径は、走査電子顕微鏡画像にて計測する。
【0013】
本開示のマイクロ粒子は、コントロールされたサイズ及び/又は均一な粒度分布を有することが好ましい。本開示のマイクロ粒子は、単分散な粒度分布を有することが好ましい。本開示のマイクロ粒子のCV値は、好ましくは70%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下、さらにより好ましくは30%以下である。本開示においてマイクロ粒子のCV値は、粒子径の標準偏差と体積平均粒子径とによって求められる、粒度分布の変動係数である。CV値が低いほど、粒子径の均一性に優れることを示す。具体的には、粒度分布の変動係数CV値は、下記式により算出することができる。
CV値(%)=(粒子径の標準偏差/体積平均粒子径)×100
【0014】
本開示のマイクロ粒子の形状は特に限定されず、球形、非球形、楕円形(長球状)、棒状、ピラミッド形、立方体形、円盤状、又はくぼみを有する形状(凹状;concave-shaped)でありうる。円盤状の粒子に対して円の中心から立体中心方向へ面形状の変位が観察された場合、凹状すなわちくぼみを有すると判断することができる。本開示のマイクロ粒子は、球形又はくぼみを有する形状であってもよい。本開示のマイクロ粒子は、特に毛細血管や微細流路等の1~50μm程度の狭い管を通過しやすくなるという点で、くぼみを有する形状であることが好ましい。くぼみを有する形状であると、赤血球のように、スリッパ形状とパラシュート形状とに変形しやすく、狭い管を通過しやすくなる。この場合、くぼみを有する形状は、赤血球に近い形状であれば好ましく、具体的には凹状を有する。くぼみを有するマイクロ粒子はさらに比表面積を高めることもでき、酸素などの気体のガス透過性が向上し得る。
【0015】
本開示のマイクロ粒子のシェルの厚みは、特に制限されないが、粒子の安定性の観点から、例えば、0.05μm以上、又は0.1μm以上、又は0.5μm以上である。また、シェルの厚みは、安定性が確保されれば薄い方がよく、例えば、4μm以下である。マイクロ粒子のシェルの厚みは、例えば、0.1~4μmが好ましい。マイクロ粒子のシェルの厚みは、例えば、0.2~4μm、又は0.5~4μmでありうる。本開示において、シェルの厚みは、共焦点顕微鏡あるいは電子顕微鏡を用いて断面形状写真から測定する。
【0016】
本開示のマイクロ粒子は、コアシェル構造を有する。コアシェル型マイクロ粒子は、従来のエマルションタイプの人工酸素運搬体やフルオロカーボンのような酸素を吸蔵させる成分が粒子表面に存在する非封入タイプの人工酸素運搬体とは異なるものである。コアシェル型マイクロ粒子は、フルオロカーボンを安定的に内部に保持し、エマルションタイプや非封入タイプの酸素運搬体と比較して安定性に優れている。
【0017】
本開示のマイクロ粒子は、好ましくは弾性率が、1~5000MPa、より好ましくは5~3000MPa、さらに好ましくは10~2000MPaである。
【0018】
本開示のマイクロ粒子は、滅菌されていてもよい。滅菌方法としては、例えば、エタノール滅菌、エチレンオキサイド滅菌、UV滅菌、電子線(γ)滅菌、オゾン滅菌、オートクレーブ、乾熱滅菌、グルタルアルデヒド滅菌、オルトフタルアルデヒド滅菌等が挙げられる。滅菌される場合にその条件に曝した後でもコアシェル型の粒子形状は変化していないことが好ましいが、変化する場合にはその変化率は好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは10%以下である。
【0019】
図1Aは、本開示の一実施形態に係るコアシェル型の球状のマイクロ粒子を示す模式断面図である。図1Bは、変形した一実施形態のマイクロ粒子を示す模式断面図である。図2Aおよび図2Bは、本開示の一実施形態に係るコアシェル型のくぼみを有するマイクロ粒子を示す模式断面図である。図2Aはマイクロ粒子の横断面図、図2Bはマイクロ粒子の上断面図である。図1および図2に示すように、マイクロ粒子1は、シェル11と、コア12とを有するマイクロカプセルである。コア12はマイクロ粒子1の内側を形成し、マイクロ粒子1の外側を形成するシェル11に封入または囲まれている。
【0020】
図1Aに示すマイクロ粒子は球形状を有する。図2に示すマイクロ粒子1は、略円盤形状を有しており、中央部にくぼみ15を有する。
【0021】
コア12はフルオロカーボン14を含む。フルオロカーボン14は気体(例えば酸素)の溶解性に優れる。したがって、マイクロ粒子1はコア内に気体を保持して標的部位・組織に輸送し得る運搬体として機能し得る。一実施形態のマイクロ粒子は赤血球のような変形通過性を有する気体運搬体として機能し得る。
【0022】
シェル11はポリマー13を含む。ポリマー13を備えるシェル11は、弾性、変形性及び柔軟性に富み、変形可能なマイクロ粒子1が得られる。本明細書において、「変形可能」とは、粒子が変形した場合であっても、コアシェル構造を維持できることをいう。一実施形態のマイクロ粒子は、粒子の変形によっても、シェルが崩壊することなく、コア成分はシェルの内側に封入されている、またはシェルに取り囲まれている。例えば、マイクロ粒子は、粒子サイズの25%以上(例えば30%以上、または35%以上)の変位を伴う圧縮変形が可能である。例えば、図1Bに示すように、図1Aの球形のマイクロ粒子は、変形して、短径dおよび長径dを有する長球状のマイクロ粒子となりうる。
【0023】
1.1 シェル
本開示のマイクロ粒子はシェルを有し、シェルは特定のポリマーを含む。本開示のポリマーは、フッ素含有ポリマー、フッ素非含有ビニルポリマー、及びシリコーンポリマーからなる群から選択される少なくとも一つのポリマーであってもよい。単独で用いてもよいし、二つ以上のポリマーを組み合わせて用いてもよい。フッ素含有ポリマーとは、構造式中にフッ素原子を含むポリマーをいう。フッ素非含有ビニルポリマーとは、ビニル基を含むモノマーから誘導される構造式中にフッ素原子を含まないポリマーをいう。シリコーンポリマーとは構造式中にフッ素原子を含まず、かつ、ケイ素―ケイ素結合、又はケイ素―酸素結合を含むポリマーをいう。
【0024】
あるいは、本開示のポリマーは主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に-CX-CXCX-,-CX=CX-,-C≡C-,-CX-O-CX-,-CX-S-CX-,-CX-S-S-CX-,-CX-C(=O)-CX-,-C(=O)-N(X,Y)-,-CXX2-C(=S)-CX-,-C(=S)-N(X,Y)-,-Si(X,Y)-O-Si(X,Y)-,及び-Si(X,Y)-Si(X,Y)-(式中、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基、ニトリル基、エステル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキレン基であり、X及びYは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~20の、アルキル基、アルキレン基、アリール基、(パー)フルオロアルキル基、(パー)フルオロアルキレン基を表す)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位からなる、ポリマーであってもよい。この場合、本開示のポリマーは、加水分解する官能基を主鎖に含まないため、水中安定性に優れている。このようなポリマーによりシェルが構成されているため、本開示のマイクロ粒子は水中安定性に優れたものとなる。本開示のポリマーは前記の水中安定性に起因して、コアシェル粒子を形成した際にシェルがコア材料を安定的に内部に封入することができるため、コアシェル粒子として水中に分散した際の安定性を提供する。なお、本開示おいて、「主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に、ある特定の構造単位からなる、ポリマーである」とは、当該主鎖を構成する構造単位が、実質的に、当該特定の構造単位のみからなる場合を含む。この場合、「実質的に」とは、本開示のマイクロ粒子が水中安定性に優れたものとなるという効果が得られる限り、当該主鎖を構成する構造単位がその他の構造単位を含んでいてもよいことを意味する。本開示おいて、「主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に、ある特定の構造単位からなる、ポリマーである」とは、具体的には、「主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、当該特定の構造単位を総計で、主鎖を構成する構造単位に対して、90質量%以上含むこと、好ましくは95質量%以上含むこと、より好ましくは97質量%以上含むこと、さらに好ましくは98質量%以上含むこと、さらにより好ましくは99質量%以上含むことを意味する。また、本開示おいて、「主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的にある特定の構造単位からなる、ポリマーである」とは、当該主鎖を構成する構造単位が、当該特定の構造単位のみからなる場合を含む。
【0025】
本開示のポリマーは、ポリマー主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に-CX-CXCX-,-CX=CX-,-CX-O-CX-,-CX-C(=O)-CX-,-C(=O)-N(X,Y)-,-CX-C(=S)-CX-,-Si(X,Y)-O-Si(X,Y)-,及び-Si(X,Y)-Si(X,Y)-(式中、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基、ニトリル基、エステル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキレン基であり、X及びYは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~20の、アルキル基、アルキレン基、アリール基、(パー)フルオロアルキル基、(パー)フルオロアルキレン基を表す)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位からなるものであることがさらに好ましい。
【0026】
,X,X,及びXは好ましくは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~16のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~16のアルキレン基、ニトリル基、エステル基、置換基を有していてもよい炭素数1~16の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~16の含フッ素アルキレン基、X,Yは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~16の、アルキル基、アルキレン基、アリール基、(パー)フルオロアルキル基、(パー)フルオロアルキレン基であり、より好ましくは、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルキレン基、ニトリル基、置換基を有していてもよい炭素数1~8の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~8の含フッ素アルキレン基、X,Yは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~8の、アルキル基、アルキレン基、アリール基、(パー)フルオロアルキル基、又は(パー)フルオロアルキレン基であり、さらに好ましくは、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基、ニトリル基、置換基を有していてもよい炭素数1~8の含フッ素アルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~4の含フッ素アルキレン基、X,Yは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~4の、アルキル基、アルキレン基、(パー)フルオロアルキル基、若しくは(パー)フルオロアルキレン基、又はアリール基である。
【0027】
本開示のポリマーは、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサンなどのオルガノポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、部分塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ―2-クロロブタジエン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブチレン共重合体、エチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン/ブチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・エチレン/プロピレン・ブタジエンブロック共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体、及びエチレン-ブチレンブロック共重合体等が挙げられる。また本開示のポリマーは、環状構造を全体または部分に有していてもよい。
【0028】
本開示のポリマーは、好ましくは、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ―2-クロロブタジエン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン/ブチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・エチレン/プロピレン・ブタジエンブロック共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体、及びエチレン-ブチレンブロック共重合体等である。また本開示のポリマーは、環状構造を全体または部分に有していてもよい。
【0029】
本開示のポリマー主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位としては、-CH-CH-,-CH-CHR-,-CH-CR-,-CH-CH(C(=О)ОR)-,-CH-CH(OC(=О)R)-,-CH-CHОR-,-CH-CH(CNО)-,-CH-CHCl-,-CH-CHF-,-CF-CF-,-CF-CFR-,-CF-CR-,-CF-CF(C(=О)ОR)-,-CF-CF(ОC(=О)R)-,-CF-CFОR-,-CF-CFCl-,-CHF-CF-,-CHF-CFR-,-CHF-CR-,-CHF-CF(C(=О)ОR)-,-CHF-CF(ОC(=О)R)-,-CHF-CFОR-,-CHF-CFCl-,-CF-CHR-,-CF-CH(C(=О)ОR)-,-CF-CH(ОC(=О)R)-,-CF-CHОR-,-CF-CHCl-,-CF-CHF-,-CH-CF-,-CH-CFR-,-CH-CR-、-CH-CF(C(=О)ОR)-,-CH-CF(ОC(=О)R)-,-CH-CFОR-,-CH-CFCl-,-CH=CH-,-CH=CF-,-CH=CR-,-CH-O-CH-,-CH-O-CHR-,-CH-O-CR-,-CH-O-CH(C(=О)ОR)-,-CH-O-CH(ОC(=О)R)-,-CH-O-CHОR-,-CH-O-CH(CNО)-,-CH-O-CHCl-,-CH-O-CHF-,-CF-O-CF-,-CF-O-CFR-,-CF-O-CR-,-CF-O-CF(C(=О)ОR)-,-CF-O-CF(ОC(=О)R)-,-CF-O-CFОR-,-CF-O-CFCl-,-CHF-O-CF-,-CHF-O-CFR-,-CHF-O-CR-,-CHF-O-CF(C(=О)ОR)-,-CHF-O-CF(ОC(=О)R)-,-CHF-O-CFОR-,-CHF-O-CFCl-,-CF-O-CHR-,-CF-O-CH(C(=О)ОR)-,-CF-O-CH(ОC(=О)R)-,-CF-O-CHОR-,-CF-O-CHCl-,-CF-O-CHF-,-CH-O-CF-,-CH-O-CFR-,-CH-O-CR-、-CH-O-CF(C(=О)ОR)-,-CH-O-CF(ОC(=О)R)-,-CH-O-CFОR-,-CH-O-CFCl-,-CH-C(=O)-CH-,-CH-C(=O)-CHR-,-CH-C(=O)-CR-,-CH-C(=O)-CH(C(=О)ОR)-,-CH-C(=O)-CH(ОC(=О)R)-,-CH-C(=O)-CHОR-,-CH-C(=O)-CH(CNО)-,-CH-C(=O)-CHCl-,-CH-C(=O)-CHF-,-CF-C(=O)-CF-,-CF-C(=O)-CFR-,-CF-C(=O)-CR-,-CF-C(=O)-CF(C(=О)ОR)-,-CF-C(=O)-CF(ОC(=О)R)-,-CF-C(=O)-CFОR-,-CF-C(=O)-CFCl-,-CHF-C(=O)-CF-,-CHF-C(=O)-CFR-,-CHF-C(=O)-CR-,-CHF-C(=O)-CF(C(=О)ОR)-,-CHF-C(=O)-CF(ОC(=О)R)-,-CHF-C(=O)-CFОR-,-CHF-C(=O)-CFCl-,-CF-C(=O)-CHR-,-CF-C(=O)-CH(C(=О)ОR)-,-CF-C(=O)-CH(ОC(=О)R)-,-CF-C(=O)-CHОR-,-CF-C(=O)-CHCl-,-CF-C(=O)-CHF-,-CH-C(=O)-CF-,-CH-C(=O)-CFR-,-CH-C(=O)-CR-、-CH-C(=O)-CF(C(=О)ОR)-,-CH-C(=O)-CF(ОC(=О)R)-,-CH-C(=O)-CFОR-,-CH-C(=O)-CFCl-,-C(=O)-NR-,-SiR-SiR-,及び-SiR-O-SiR- (Rは同一または異なって1個以上の枝分かれ、及び/又は官能基を有してもよい鎖状又は環状の炭素数1~20のアルキル基、アリール基、水素原子の一部がフッ素原子に置換された鎖状又は環状のアルキル基、水素原子の一部がフッ素原子に置換されたアルキレン基、水素原子の一部がフッ素原子に置換されたアリール基、又は鎖状又は環状のパーフルオロアルキル基を示す)等が挙げられる。
【0030】
本開示のポリマー主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位としては、-CH-CH-,-CH-CHR-,-CH-CR-,-CH-CH(C(=О)ОR)-,-CH-CH(ОC(=О)R)-,-CH-CHОR-,-CH-CH(CNО)-,-CH-CHCl-,-CH-CHF-,-CF-CF-,-CF-CFR-,-CF-CR-,-CF-CF(C(=О)ОR)-,-CF-CF(ОC(=О)R)-,-CF-CFОR-,-CF-CFCl-,-CHF-CF-,-CHF-CFR-,-CHF-CR-,-CHF-CF(C(=О)ОR)-,-CHF-CF(ОC(=О)R)-,-CHF-CFОR-,-CHF-CFCl-,-CF-CHR-,-CF-CH(C(=О)ОR)-,-CF-CH(ОC(=О)R)-,-CF-CHОR-,-CF-CHCl-,-CF-CHF-,-CH-CF-,-CH-CFR-,-CH-CR-、-CH-CF(C(=О)ОR)-,-CH-CF(ОC(=О)R)-,-CH-CFОR-,-CH-CFCl-,-CH=CH-,-CH=CF-,-CH=CR-,-CH-O-CH-,-CH-O-CHR-,-CH-O-CR-,-CH-O-CH(C(=О)ОR)-,-CH-O-CH(ОC(=О)R)-,-CH-O-CHОR-,-CH-O-CH(CNО)-,-CH-O-CHCl-,-CH-O-CHF-,-CF-O-CF-,-CF-O-CFR-,-CF-O-CR-,-CF-O-CF(C(=О)ОR)-,-CF-O-CF(ОC(=О)R)-,-CF-O-CFОR-,-CF-O-CFCl-,-CHF-O-CF-,-CHF-O-CFR-,-CHF-O-CR-,-CHF-O-CF(C(=О)ОR)-,-CHF-O-CF(ОC(=О)R)-,-CHF-O-CFОR-,-CHF-O-CFCl-,-CF-O-CHR-,-CF-O-CH(C(=О)ОR)-,-CF-O-CH(ОC(=О)R)-,-CF-O-CHОR-,-CF-O-CHCl-,-CF-O-CHF-,-CH-O-CF-,-CH-O-CFR-,-CH-O-CR-、-CH-O-CF(C(=О)ОR)-,-CH-O-CF(ОC(=О)R)-,-CH-O-CFОR-,-CH-O-CFCl-,-CH-C(=O)-CH-,-CH-C(=O)-CHR-,-CH-C(=O)-CR-,-CH-C(=O)-CH(C(=О)ОR)-,-CH-C(=O)-CH(ОC(=О)R)-,-CH-C(=O)-CHОR-,-CH-C(=O)-CH(CNО)-,-CH-C(=O)-CHCl-,-CH-C(=O)-CHF-,-CF-C(=O)-CF-,-CF-C(=O)-CFR-,-CF-C(=O)-CR-,-CF-C(=O)-CF(C(=О)ОR)-,-CF-C(=O)-CF(ОC(=О)R)-,-CF-C(=O)-CFОR-,-CF-C(=O)-CFCl-,-CHF-C(=O)-CF-,-CHF-C(=O)-CFR-,-CHF-C(=O)-CR-,-CHF-C(=O)-CF(C(=О)ОR)-,-CHF-C(=O)-CF(ОC(=О)R)-,-CHF-C(=O)-CFОR-,-CHF-C(=O)-CFCl-,-CF-C(=O)-CHR-,-CF-C(=O)-CH(C(=О)ОR)-,-CF-C(=O)-CH(ОC(=О)R)-,-CF-C(=O)-CHОR-,-CF-C(=O)-CHCl-,-CF-C(=O)-CHF-,-CH-C(=O)-CF-,-CH-C(=O)-CFR-,-CH-C(=O)-CR-、-CH-C(=O)-CF(C(=О)ОR)-,-CH-C(=O)-CF(ОC(=О)R)-,-CH-C(=O)-CFОR-,-CH-C(=O)-CFCl-,-C(=O)-NR-,-SiR-SiR-,及び-SiR-O-SiR-等が好ましい(Rは同一または異なって1個以上の枝分かれ、及び/又は官能基を有していてもよい鎖状又は環状の炭素数1~10のアルキル基、アリール基、水素原子の一部がフッ素原子に置換された鎖状又は環状のアルキル基、水素原子の一部がフッ素原子に置換されたアリール基、又は鎖状の(パー)フルオロアルキル基を示す)。
【0031】
本開示のポリマーは、マイクロ粒子製造過程において溶剤に溶解させることができれば有利である。製造過程において使用されうる溶剤は特に限定されないが、非プロトン性極性溶媒、非極性溶媒、低極性溶媒、アルコール系溶媒、及びフッ素系溶剤等が好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、ジメチルカーボネート、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等が挙げられる。非極性溶媒としては、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、及びシクロヘキサン等が挙げられる。低極性溶媒としては、ジエチルエーテル、モノグライム、ジクロロメタン、及びクロロホルム等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、及びマンニトール等が挙げられる。フッ素系溶媒としては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロベンゼン、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロクラウンエーテル、1-ブロモヘプタデカフルオロオクタン、1-ブロモトリデカフルオロヘキサン、パーフルオロデカリン、ヘキサフルオロイソプロパノール、及び2-パーフルオロヘキシルエタノール等が挙げられる。これらの溶剤は単独、または複数を組み合わせて用いることができる。複数で組み合わせる場合、相溶すればより好ましく、酢酸エチルとヘキサン、酢酸エチルとメタノール、アセトンとテトラヒドロフラン、ハイドロフルオロエーテルとジクロロメタン、ハイドロフルオロエーテルとアセトン等の組み合わせが挙げられる。
【0032】
本開示のポリマーは、これらの製造過程で使用される溶剤に対して溶解性を示すものが好ましい。これらの溶剤に対する溶解性が、1mg/L以上であれば好ましく、100mg/L以上であればより好ましく、1000mg/L以上であればさらに好ましい。
【0033】
本開示のポリマーは、単一のモノマーを重合して得られるものであってもよいし、複数種のモノマーを共重合して得られるものであってもよい。
【0034】
本開示のポリマーは酸性条件またはアルカリ性条件(例えば10%塩酸あるいは20%水酸化ナトリウム水溶液に室温1週間浸漬)を付与した後においても物性変化が少ないことが好ましい。また熱水条件(例えば50~100℃)を付与した後においても物性変化が少ないことが好ましい。
【0035】
上記物性変化として例えば引張強度、引張伸びなどが挙げられる。
【0036】
本開示のポリマーは、フッ素含有ポリマーであってもよい。この場合、フッ素含有ポリマーの低い分子間引力、及び低い表面自由エネルギーに起因して、本開示のマイクロ粒子は、水性媒体中に分散することができる。また、シェルはフッ素含有ポリマーを含むため、その内部にフルオロカーボンを含むコアを安定的に収容できる。またフッ素含有ポリマーは、優れた酸、アルカリあるいは熱水への安定性を有し、水中での長期安定性にも優れる。さらに、平滑な平面で微生物の繁殖が少ないといった利点を有する。このため、フッ素含有ポリマーの種類は特に限定されない。
【0037】
フッ素含有ポリマーは、単一種のモノマーを重合して得られるものであってもよいし、複数種のモノマーを共重合して得られるものであってもよい。
【0038】
フッ素含有ポリマーは、ホモポリマーである場合、例えば、フルオロアクリルモノマーを重合して得られるポリマーであってもよい。そのようなモノマーとして、例えば、α-フルオロアクリル酸メチル、α-フルオロアクリル酸エチル、α-フルオロアクリル酸トリフルオロエチル、α-フルオロアクリル酸ペンタフルオロプロピル、α-フルオロアクリル酸イソプロピル、α-フルオロアクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、α-フルオロアクリル酸シクロヘキシル、フルオロアクリル酸フェニル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、1,1-ジヒドロヘプタフルオロ-n-ブチル(メタ)アクリレート、1,1,5-トリヒドロオクタフルオロ-n-ペンチル(メタ)アクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロトリデカフルオロ-n-オクチル(メタ)アクリレート、及び1,1,2,2-テトラヒドロヘプタデカフルオロ-n-デシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
フッ素含有ポリマーは、ホモポリマーである場合、別の例として、(パー)フルオロ-1,3-ジオキソール、(パー)フルオロブテニルビニルエーテル、(パー)フルオロ2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール及び(パー)フルオロ―2-メチレン-4-メチル―1,3-ジオキソラン等も挙げられる。本開示において「パーフルオロ」とは炭化水素の水素原子を全てフッ素原子が置換されていることを意味し、「(パー)フルオロ」とは「パーフルオロ」と「フルオロ」のいずれかを示している。
【0040】
フッ素含有ポリマーは、コポリマーである場合、フッ素含有モノマーとフッ素非含有モノマーとのコポリマーであってもよく、フッ素含有モノマー同士のコポリマーであってもよい。この場合、コポリマーを構成するフッ素含有モノマー及びフッ素非含有モノマーは、いずれかが又は両方が二種以上のモノマーであってもよい。フッ素含有モノマーとしては、フッ化ビニルモノマー、(パー)フルオロブテニルビニルエーテル、(パー)フルオロ2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール、(パー)フルオロ―2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン、及び(パー)フルオロ-1,3-ジオキソール等が挙げられる。フッ化ビニルモノマーは、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンの他、以下の一般式で表わされるものも挙げられる。
【0041】
【化1】
(式中、kは0又は1、X~Xは同一又は異なって、水素原子又はフッ素原子を示し、Rは1個以上の枝分かれ、及び/又は官能基を有していてもよい鎖状又は環状の炭素数1~10のアルキル基、アリール基、水素原子の一部がフッ素原子に置換された鎖状又は環状のアルキル基、水素原子の一部がフッ素原子に置換されたアリール基、又は鎖状又は環状のパーフルオロアルキル基を示す)
【0042】
フッ素非含有モノマーとしては、例えば、ビニルモノマー、及び環状モノマー等が挙げられる。ビニルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、ビニルピロリドン、イソプレン、1,3-ブタジエン、スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン及びイソブテン等が挙げられる。環状モノマーとしては、エーテル、スルフィド、炭酸エステル、リン酸エステル、ラクトン、ラクタム、及びシロキサン等の構造を有するものが挙げられる。
【0043】
その他のフッ素含有ポリマーとして具体的には次のものが挙げられる。(主に溶融成形用材料等として用いられる溶剤可溶型の)フッ素含有ポリマーとして、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、フッ化ビニリデン重合体(PVDF)、テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン共重合体(モノマーモル比=50/50~99/1)、テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/第三モノマー共重合体(第三モノマーは、フッ素含有モノマー、フッ素非含有モノマーであってよく、全モノマー単位中、10モル%以下)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)、クロロトリフルオロエチレン重合体(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/イオン交換性の官能基(カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基など)含有パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体又はその前駆体などの熱可塑性フッ素樹脂が挙げられる。
【0044】
フッ素含有ポリマーとして、テトラフルオロエチレン/水酸基とカルボキシル基とを含まない非芳香族系ビニルエステルモノマー/芳香族基とカルボキシル基とを含まない水酸基含有ビニルモノマー共重合体(モノマーモル比=20~49/25~69.9/8~30)(国際公開第2003/106516号参照)、クロロトリフルオロエチレン/シクロヘキシルビニルエーテル/アルキルビニルエーテル/ヒドロキシアルキルビニルエーテル共重合体(モノマーモル比=40~60/5~45/5~45/3~15)(特開昭57-34107号等参照)が挙げられる。
【0045】
フッ素含有ポリマーとして、フルオロオレフィン単位とアミド基を有する重合性ビニル化合物単位とを含む共重合体(モノマーモル比=7~65/35~93)等の熱可塑性フッ素樹脂等が挙げられる(国際公開第2016/133206号参照)。
【0046】
フッ素含有ポリマーのフルオロオレフィンの繰り返し単位と水酸基を有する繰り返し単位を有する共重合体のモノマーモル比は好ましくは10~60/40~90である。
【0047】
フッ素含有ポリマーにはフッ素ゴムも含まれる。フッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/第三モノマー共重合体(第三モノマーは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル類等)、ヘキサフルオロプロピレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン共重合体等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0048】
フッ素含有ポリマーにはアモルファスフッ素樹脂も含まれる。アモルファスフッ素樹脂としては、下記式(A1)で表される構成単位を含む共重合体
【化2】
[式中、Rはフッ素原子又はC1-C5の(パー)フルオロアルキル基を示す。]、下記式(A2)及び下記式(A3)で表される構成単位を含む共重合体
【化3】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5の(パー)フルオロアルキル基、又はC1-C5の(パー)フルオロアルコキシ基を示す。]、
【化4】
[式中、Rは、フッ素原子、C1-C6の(パー)フルオロアルキル基、又はC1-C6の(パー)フルオロアルコキシ基を示す。]、
及び下記式(A4)で表される構成単位を含む共重合体
【化5】
[式中、R~R10はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5の(パー)フルオロアルキル基、又はC1-C5の(パー)フルオロアルコキシ基を示す。]
等が挙げられる。
【0049】
エポキシ構造を含有するフッ素含有ポリマーとしては、
下記式(B):
【化6】
(式中、m=0~6の整数、pは0又は1、qは0~6の整数である。Rfは、酸素を含んでもよい炭素数1~8の(パー)フルオロアルキル基であり、フッ素原子の1個が水素原子に置換されていてもよい。)で示される化合物(B)、
【0050】
下記式(C):
【化7】
(式中、nは0以上の整数である。Mは、下記式(C1):
【化8】
で示される基、下記式(C2):
【化9】
で示される基、若しくは、下記式(C3):
【化10】
(式中、Zは水素または炭素数~10の(パー)フルオロアルキル基である。)で示される基である。)で示される化合物(C)、が挙げられる
【0051】
上記式(C)において、Mは、下記式(C4):
【化11】
で示される基であることが好ましい。
【0052】
上記式(B)において、上記Rfは、炭素数が6の直鎖の(パー)フルオロアルキル基であることが好ましい。
【0053】
また上記化合物(B)と前記化合物(C)とは、それぞれを含む組成物として用いることができ、合計100質量%に対して、化合物(B)が5~95質量%であることが好ましい。またこの組成物は、硬化剤との併用で硬化性の組成物として使用できる。硬化剤として酸無水物、アミン、イソシアネート、アミド、イミダゾール、及び、メルカプタンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。更に、これらの組成物は非含フッ素エポキシ樹脂を含んでもよい。
【0054】
上記化合物(B)は、相溶化剤を含み、フッ素含有率が20質量%以上であることを特徴とする組成物をも提供する。フッ素含有率は好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上である。
【0055】
上記相溶化剤は、2個以上のエポキシ基と、芳香環又はシクロヘキサン環とを分子構造内に含む含フッ素化合物であることが好ましい。
【0056】
上記化合物(B)の具体的な化合物としては、下記化学式で示される化合物が好ましい。これらの化合物は単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
【化12】
【0057】
フッ素含有ポリマーとしては繰り返し単位として以下に示すような構造を含む含フッ素ポリイミドを使用することができる。
【化13】
(式中、R11は、芳香族環構造を表し、R11はそれぞれ隣接するイミド基と共に5又は6原子の環を形成する。
R11は下記式:
【化14】
で示される基であることが好ましい(Rf1~2は同一または異なって炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表わす)。
R12はNH-R12-NHで示されるジアミンの炭素鎖部分を表わし、nは1以上の整数である。)
【0058】
12は特に限定されるものではないが炭素数1~30の含フッ素アルキル鎖で、枝分かれ、あるいは主鎖にエーテル官能基を含んでもよい。またR12内部の構造は複数の繰り返し単位を含んでもよい。
【0059】
フッ素含有ポリマーとして溶剤溶解性を持つ範囲においては特に限定されないが、下記のような構造を含む含フッ素シリコーンを使用することができる。
【化15】
(式中、Rf3~6は同一または異なって炭素数1~20のパーフルオロアルキル基であり、R13~R16は同一または異なって炭素数1~10のアルキル基またはアリール基である。またRf3~6、 R13~R16は枝分かれや酸素原子、硫黄原子、NH基、水酸基を1つ以上有してもよい。p、qはそれぞれ0~1000の範囲内であり、同時に0とはならない整数である。)
【0060】
フッ素非含有ビニルポリマーとしては、単一種のビニルモノマーを重合して得られるものであってもよいし、複数種のビニルモノマーを共重合して得られるものであってもよい。
【0061】
フッ素非含有ビニルポリマーは、ホモポリマーである場合、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、イソプレン等重合して得られるポリマーであってもよい。(メタ)アクリル酸エステルとして例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0062】
シリコーンポリマーとして、溶剤溶解性を持つ範囲においては特に限定されないが、下記のような構造を含むものを使用することができる。
【化16】
(式中、R17~R22は枝分かれや酸素原子、硫黄原子、NH基、水酸基を1つ以上有してもよい。r、sはそれぞれ0~10000の範囲内であり、同時に0とはならない数である。)
【0063】
シェルは、異なる二種類以上のポリマーを含んでいても良く、ポリマーの組み合わせとして、フッ素含有ポリマー同士、フッ素含有ポリマーとフッ素非含有ビニルポリマー、フッ素含有ポリマーとシリコーンポリマーなどが挙げられる。またフッ素含有ポリマー同士等、複合化するポリマー群の相溶性が高い方がより好ましい。
【0064】
シェルは、本開示のポリマーに加えて、さらに他の成分を含んでいてもよい、そのような成分としては、例えば、イメージング用色素、薬物、並びにビタミンC及びビタミンE等のラジカルスカベンジャーからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。ラジカルスカベンジャーは、酸素暴露により毒性が出るおそれがある場合に、副作用を抑える目的などで添加することができる。
【0065】
シェルがフッ素含有ポリマーを含む場合、シェルのフッ素含有量が10%以上であれば好ましく、20質量%以上であればより好ましく、30質量%以上であればより好ましく、40質量%以上であればさらに好ましく、45質量%以上であれば特に好ましい。
【0066】
毛細血管や微細流路等の1~50μm程度の狭い管を通過しやすくなるという点で、シェルが変形性を有していることが好ましい。この点で、シェルの弾性率が、500MPa以下であれば好ましく、300MPa以下であればより好ましく、100MPa以下であればさらに好ましく、50MPa以下であれば特に好ましい。シェルの弾性率は、通常、成形性及び形状維持等のため、0.1MPa以上であれば好ましく、0.5MPa以上であればより好ましく、1MPa以上であればさらに好ましい。
【0067】
シェルの弾性率は、下記の引張試験により測定することができる。
(1)試験フィルムの調製
引張試験のための試験片はシェルをクロロホルム等の溶媒に溶かしてガラス基板上に塗布し、乾燥することで、約200μmのフィルムを形成することにより得る。
(2)引張試験
引張試験を、引張試験機(例えばサン科学(株)製、CR-3000EX-S)を用いて、5mm/minの変位速度で行う。測定は、試験片形成後、室温(21±2℃)で5週間貯蔵した後、ISO 527-3/1995(ISO 527-3/2/5)に従って、室温および50±5%相対湿度(RH)で行う。引張試験結果から、試験片の弾性率を得る。
【0068】
1.2 コア
本開示のマイクロ粒子はコアを有し、コアはフルオロカーボンを含む。フルオロカーボンは酸素溶解性に優れており、本開示のマイクロ粒子を酸素運搬体として好ましく用いることができる。
【0069】
本開示において「フルオロカーボン」は、炭素-フッ素結合を有する有機フッ素化合物を意味する。フルオロカーボンは、酸素、二酸化炭素、窒素、水素などの気体を可逆的に吸蔵及び/又は吸着することが可能である。気体を貯蔵する能力の可逆的な性質によって、フルオロカーボンは、生理学的条件下(特に、酸素等の気体が不足している環境下)において、気体を放出することができ、例えば虚血組織及び/又は臓器に、酸素等の必要とされる気体を放出することができる。さらに、フルオロカーボンは安定性及び滅菌性にも優れる。
【0070】
フルオロカーボンに吸蔵及び/又は吸着(溶解)される気体の種類は特に制限されないが、例えば、酸素、二酸化炭素、窒素等が挙げられる。該気体が酸素であるとき、本開示のマイクロ粒子は人工酸素運搬体(人工酸素キャリア)として使用され得る。
【0071】
フルオロカーボンは、液体又はゲル状であることが好ましく、液体であることがより好ましい。特に、フルオロカーボンは周囲環境又は生理学的条件下において液体であることが好ましい。本開示において「生理学的条件」とは、少なくともin vivoにおける化学的条件(温度、圧力、pH)を含む条件を指す。例えば、フルオロカーボンは、大気圧下及び室温(例えば10~35℃)下において液体であることが好ましい。
【0072】
フルオロカーボンの種類は特に制限されないが、気体吸蔵能(ガス溶解性)に優れるフルオロカーボンが好ましい。例えば、酸素溶解度が30vol/vol%以上(好ましくは40vol/vol%以上、より好ましくは50vol/vol%以上、さらに好ましくは60vol/vol%以上)の液体のフルオロカーボンが好ましい。なお、本開示において「酸素溶解度」は、25℃における、酸素分子のフルオロカーボンへの溶解度を指す。
【0073】
フルオロカーボンの重量平均分子量は、ガス溶解性の面から、150~50000の範囲であることが好ましく、より好ましくは250~45000であり、さらに好ましくは350~40000である。フルオロカーボンの重量平均分子量は、5000以上であれば好ましく、7500以上であればより好ましく、10000以上であればさらに好ましい。フルオロカーボンの重量平均分子量は、溶媒への十分な溶解性を担保できる限りにおいて、高ければ高い方が好ましい。
【0074】
本開示における分子量は全て重量平均分子量を指し、GPC:ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した値を意味する。
【0075】
フルオロカーボンとしては、気体を可逆的に吸蔵及び/又は吸着することが可能であれば特に制限されず、従来、酸素運搬体または酸素運搬体候補として知られているフルオロカーボン類を本開示においても使用することができる。そのようなフルオロカーボンとしては、ハイドロフルオロエーテル、フルオロアルカン、ビス(フルオロアルキル)エテン、環状(パー)フルオロカーボン、(パー)フルオロアミン、(パー)フルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)、臭素化(パー)フルオロカーボン、ヨウ化(パー)フルオロカーボン、塩化(パー)フルオロカーボン、および(パー)フルオロアルキルエーテルまたは(パー)フルオロポリエーテル、末端にフッ素以外の官能基を一つ以上含んでもよい(パー)フルオロポリエーテルからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。本開示において「パーフルオロ」とは炭化水素の水素原子を全てフッ素原子が置換されていることを意味し、「(パー)フルオロ」とは「パーフルオロ」と「フルオロ」のいずれかであることを示す。
【0076】
ハイドロフルオロエーテルとしては、例えばメチル―(パー)フルオロブチルエーテル、エチル-(パー)フルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロヘキシルエーテル、ヘキサフルオロプロピル(メチル)メチル―ヘキサフルオロプロピルエーテル等が挙げられる。
【0077】
フルオロアルカンとしては、例えば、(パー)フルオロヘキサン、(パー)フルオロシクロヘキサン、(パー)フルオロメチルシクロヘキサン、及び(パー)フルオロオクタン、パーフルオロオクチルデカン、パーフルオロヘキシルデカン、パーフルオロオクチルドデカン等が挙げられる。
【0078】
ビス(フルオロアルキル)エテンとしては、例えば、CCH=CHCF、i-CCH=CHC13、及びC13CH=CHC13等が挙げられる。
【0079】
環状(パー)フルオロカーボンとしては、例えば、(パー)フルオロデカリン、(パー)フルオロアダマンタン、(パー)フルオロメチルアダマンタン、F-1,3-ジメチルアダマンタン、(パー)フルオロジメチルビシクロ[3,3,1]ノナン、(パー)フルオロトリメチルビシクロ[3,3,1]ノナン、(パー)フルオロシクロヘキシルメチルモルフォリン、(パー)フルオロシクロヘキシルオキシエチルモルフォリン、(パー)フルオロシクロヘキシルメチルヘキサメチレンイミン、(パー)フルオロシクロヘプチルモルフォリン、(パー)フルオロ-2,6-ジメチル-4-シクロヘキシルモルフォリン、(パー)フルオロエトキシエチルピペリジン、(パー)フルオロ-2-エトキシデカリン、(パー)フルオロメチルシクロヘキサン、(パー)フルオロプロピルシクロヘキサン、(パー)フルオロ-1,4-ジオキサビシクロ-4,4,0-デカン、(パー)フルオロメチルジオキサビシクロ-4,4,0-デカン、(パー)フルオロエトキシメチルジオキサビシクロ-4,4,0-デカン、1-メチル-1,2,2,3,3,4,4,5,5-ノナフルオロシクロペンタン、1-フルオロメチル-1,2,2,3,3,4,4,5,5-ノナフルオロシクロペンタン、1-エチル-1,2,2,3,3,4,4,5,5-ノナフルオロシクロペンタン等が挙げられる。
【0080】
(パー)フルオロアミンとしては、例えば、(パー)フルオロトリプロピルアミン、(パー)フルオロトリブチルアミン、F-4-メチルオクタヒドロキノリジン、F-n-メチル-デカヒドロイソキノリン、F-n-メチルデカヒドロキノリン、F-n-シクロヘキシルピロリジン、F-n-(4-メチルシクロヘキシル)ピペリジン、(パー)フルオロジブチルメチルアミン、1H, 1H-ウンデカフルオロヘキシルアミン、1H, 1H-(パー)フルオロヘプチルアミン等が挙げられる。
【0081】
臭素化(パー)フルオロカーボンとしては、(パー)フルオロオクチルブロミド、(パー)フルオロデシルブロミド、(パー)フルオロヘキシルブロミド、1-ブロモペンタデカフルオロセプタン、1-ブロモ-1H, 1H, 2H, 2H―(パー)フルオロデカン等が挙げられる。
【0082】
ヨウ化(パー)フルオロカーボンとしては、例えば、(パー)フルオロオクチルヨージド、1-ヨード-8H-(パー)フルオロオクタン等が挙げられる。
【0083】
塩化(パー)フルオロカーボンとしては、例えば、1,8-ペルフルオロジクロロオクタン等が挙げられる。
【0084】
(パー)フルオロカーボンとしては常温で液体かつ沸点が90℃以上のものが好ましい。沸点は110℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。
【0085】
(パー)フルオロアルキルエーテル又はポリエーテルとしては、例えば、以下の一般式で表されるもののうち、常温で液体の物が使用できる。
Rf-О-(RfО)-Rf
(RfおよびRfは1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16の(パー)フルオロアルキル基を表しRfxは(パー)フルオロアルキレン基であり、mは1~300である。mはより好ましくは20~300である。但し、(RfО)は、炭素数の異なる2種以上のRf x Oからなるものであってもよい。)
【0086】
RfおよびRfは、具体的には、(CFCF、CFCFCF、CFCF、CF、CFH、CFH、CHFCFCF、CHFCFCFなどが挙げられ、同一又は異なってもよい。
【0087】
Rfは、具体的には、CHCHCFCF、CHCFCFCF、CFCFCFCF、CHCHCHCF、CHCFCFCH、CHCFCF、CHFCFCF、CF、CFH、CFCF、CFHCF、CFHCFH、CF(CF)CF、CFCF(CF)などが挙げられる。Rfは、好ましくはCHCFCF、CF、CFH、CFCF、CF(CF)CFである。
【0088】
(パー)フルオロアルキルエーテル又はポリエーテルの具体例としては、次が挙げられる。(CFCFO(CFCFOCF(CFH)、(CFCFO(CFCFOCF(CFH)、(CF)CFO(CFCF)H)、(CFCFO(CFCFH、(CFCFO(CFО)(CFCFOCF(CFH)、(CFCFO(CFCFOCF(CFH)、(CF)CFO(CFО)(CFCF)H)、(CFCFO(CFCFH、(CHCFO(CFCFH、及び次の式で表されるものである。CFCFCFO(CFCFO)CFCF、CFCFCFO(CFCFCFO)uCFCF、CFO(CFCFО)(CFО)CF、CFO(CF(CF)CFО)αCFCF(式中、t、u、v、w、αはそれぞれ同時に0とならない範囲で0~300を示し、それぞれ単一、組み合わせ、または繰り返し単位の違うものを混合して用いることができる。)。
【0089】
(パー)フルオロアルキルエーテル又はポリエーテルとしては常温で液体かつ沸点が130℃以上のものが好ましい。沸点は150℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。
【0090】
(パー)フルオロアルキルエーテル又はポリエーテルの粘度としては、20℃における動粘度として10~3000cSt(センチストークス)の範囲が好ましく、30~2000cStの範囲がより好ましい。本開示において粘度は市販の粘度計を用いて測定できる。
【0091】
フルオロカーボンは1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0092】
エステル、チオエーテル及びその他の様々の形態に修飾された混合フルオロカーボン-炭化水素化合物も、本開示における使用に適した広義の「フルオロカーボン」物質に包含される。ここに挙げられていないその他の「フルオロカーボン」であっても、本明細書に記載された性質を有するものは使用できる。この他、ゲル化剤を加えたゲル状のフルオロカーボンを使用することもできる。
【0093】
マイクロ粒子中のフルオロカーボンの含有量(質量割合)は、気体の吸蔵能の面から、マイクロ粒子の質量(100質量%)に対して、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。一方、フルオロカーボンの含有量は、マイクロ粒子の質量(100質量%)に対して、例えば95質量%以下、または90質量%以下である。例えば、フルオロカーボンの含有量は30~95質量%の範囲、または30~90質量%の範囲である。なお、フルオロカーボンの含有量(質量割合)は、シェルの質量およびコアの質量の合計質量(すなわち、フルオロカーボンに溶解した気体は含まない)に対するフルオロカーボンの質量の割合である。
【0094】
マイクロ粒子を構成するコア成分とシェル成分との質量比率(コア/シェル)は、例えば30/70~95/5であり、30/70~90/10が好ましく、40/60~90/10がより好ましく、60/40~90/10がさらに好ましい。
【0095】
2.マイクロ粒子の製造方法
本開示のマイクロ粒子は、特に限定されないが、例えば以下の多孔質膜を介した膜乳化法により製造することができる。
膜乳化法は、(1)均一な粒度分布(単分散、低CV値)を有するマイクロ粒子を得られる、(2)マイクロ粒子の粒子サイズ(粒子径)およびシェルの厚みのサイズコントロールが可能である、といった利点を有する。膜乳化法は、具体的には以下の工程を含む。
工程1:上記1.で説明した、本開示のフルオロカーボンと本開示のポリマーとを有機溶媒中に分散させた分散相を、均一な細孔径を有する多孔質膜を介して、界面活性剤を含む連続相中に、膜乳化させてエマルションを得る工程
工程2:前記エマルションに含まれる有機溶媒相を除去することにより、前記ポリマーを含むシェルと前記フルオロカーボンを含むコアとを含むコアシェル型のマイクロ粒子を形成させる工程
【0096】
以下、各工程について図3および図4を参照して説明する。図3は、本開示の一実施形態に係るマイクロ粒子の製造方法に用いる製造装置の模式図である。図4は、多孔質膜を介した膜乳化法の原理を説明する図面である。
【0097】
工程1では、まず、分散相として、フルオロカーボンを含むコア成分と、ポリマーを含むシェル成分とを、有機溶媒中に分散させた分散液を調製する。有機溶媒としては、フルオロカーボンを含むコア成分とポリマーを含むシェル成分との両方を溶解させつつ、水と混和しない低沸点溶媒が好ましい。有機溶媒は、シェル成分のポリマーの種類によって適宜選択し得る。具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、フッ素系溶媒などの水と混和しにくい溶媒が好ましい。分散液中に含まれるフルオロカーボンなどのコア成分とポリマーを含むシェル成分との比率を調節することで、最終物であるマイクロ粒子のシェルの厚みを制御することができる。
【0098】
続いて、図3に示すように、分散相として調製した分散液を、多孔質膜を介して、界面活性剤を含む連続相中に、例えば窒素ガスを用いて圧力を加えることにより、圧入させ、膜乳化させる。具体的には、図4に示すように、油(O)層である分散相は多孔質膜を介して水(W)相である連続相に押し出され、O/Wエマルションを形成する。形成されるエマルションのサイズは、多孔質膜の均一な細孔径に相関した均一(単分散)なものとなる。さらに、形成されるエマルションのサイズは多孔質膜の細孔径に比例したものとなるため、多孔質膜の細孔径のサイズを調整することで、形成されるエマルションのサイズ、ひいては、マイクロ粒子のサイズ(粒子径)のコントロールが可能となる。分散相と連続相との体積比(分散相/連続層)を、1/2~1/1000(より好ましくは1/5~1/100、特に好ましくは約1/10)に保つことが好ましい。
【0099】
多孔質膜は均一な細孔径を有するものであれば特に制限されず、例えば、ガラス製、ポリカーボネートなどの樹脂製、金属製など、多様な材質のものを使用可能である。多孔質膜の細孔径は、マイクロ粒子の所望のサイズに応じて決定すればよいが、通常は、0.05~20μm(好ましくは2~10μm)の範囲を有する細孔径を有する多孔質膜を使用することができる。
【0100】
また、膜乳化は、膜表面から液滴を分離するために、撹拌下で行うことが好ましい。
【0101】
連続相としては、例えば、界面活性剤を含む水性溶液を用いることができる。
界面活性剤としては特に制限されず、エマルション形成のために使用される従来公知のものを好適に使用することができる。例えば、ポリビニルアルコール;ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック共重合体であるプルロニック(登録商標)系界面活性剤等が挙げられる。
水性溶媒としては、例えば、水、リン酸緩衝食塩水、培地、生理食塩水等が挙げられる。使用する界面活性剤の種類および濃度は、エマルションのサイズに影響を与える。具体的には、界面活性剤の濃度が小さいと、形成されるエマルションのサイズが大きくなる傾向がある。また、水性溶液中の界面活性剤の濃度は、水性溶液(水性溶媒および界面活性剤)の合計重量(100重量%)に対して、0.01~10重量%が好ましく、0.1~3重量%がより好ましい。
【0102】
工程2では、工程1で得られたエマルション中の有機溶媒相を蒸発等により除去する。蒸発の過程で、ポリマーを含むシェル成分(O相)とフルオロカーボンを含むコア成分(F相)と連続相(W相)との相分離が生じ、ポリマーを含むシェルとフルオロカーボンを含むコアとを有するコアシェル型の粒子が形成する。粒子は形成後に例えば純水などを用いて洗浄され、界面活性剤が除去される。
【0103】
いずれの場合においても、用途に応じて工程1を実施後の乳化粒子として用いることも可能であるし、工程2を実施後の乾燥させたコアシェル粒子として用いることも可能である。
【0104】
3.くぼみを有するマイクロ粒子の製造方法
くぼみを有する本開示のマイクロ粒子は、特に限定されないが例えば以下の工程を含む方法により製造することができる。
工程1:本開示のマイクロ粒子を、水性媒体に分散させた分散液に、アルコールを添加する工程
工程2:工程1で得られた粒子を溶媒に再懸濁させる工程
【0105】
まず、工程1では、マイクロ粒子を水性媒体に分散させた分散液(第1の分散液)を調製し、これに、アルコールを添加する。これにより、アルコールおよび水性媒体の混合液中にマイクロ粒子が分散された分散液(第2の分散液)が得られる。
【0106】
水性媒体としては特に制限されないが、例えば、水、水とアルコール(例えば低級アルコール)との混合溶液、PBS(リン酸緩衝食塩水)、培地、生理食塩水などが挙げられる。添加するアルコールの種類は特に制限されないが、低級アルコール(例えば、C1~C6アルコール、C1~C3アルコール)が好ましい。中でも、水との相溶性の点で、イソプロパノール、エタノール、メタノール等が望ましい。
【0107】
分散液中のマイクロ粒子の濃度は特に制限されないが、例えば、分散液(水性媒体およびマイクロ粒子)の合計重量に対してマイクロ粒子を0.1~20重量%含むことが好ましい。
【0108】
アルコールの添加量が多いほど、くぼみを有するマイクロ粒子の収率が向上する傾向にある。一方、アルコールの添加量が多すぎると、粒子が凝集する傾向がある。かかる観点から、アルコールの添加量は、水性媒体中の水の量(100体積部)に対して、好ましくは1~60体積部、より好ましくは10~50体積部とすることが好ましい。
アルコールの添加後に、第2の分散液を、好ましくは6~48時間(より好ましくは8~36時間、さらに好ましくは10~24時間)の間、撹拌下(好ましくは粒子が沈降しないゆっくりとした速度で)、静置することが好ましい。静置する際の温度は特に制限されないが、通常、室温(例えば10~35℃)である。
【0109】
続いて、工程2では、工程1で得られた粒子を1000rpmで3分間遠心分離して回収し、溶媒に再懸濁させる。これにより、くぼみを有する粒子を得ることができる。
溶媒としては特に制限されないが、安全性の面から、例えば、水、リン酸緩衝食塩水、生理食塩水などの水性媒体、エタノール、ジメチルスルホキシドが挙げられ、水、リン酸緩衝食塩水などの水性媒体が好ましく、水が特に好ましい。
【0110】
粒子の懸濁に使用する溶媒の量は特に制限されない。例えば、懸濁液中の粒子の濃度が、0.1~50重量%となる量の水性媒体を使用する。
粒子と溶媒との重量比(粒子/溶媒)は、形状制御の面から、好ましくは、1/10000~3/2であり、より好ましくは1/1000~1/1である。
【0111】
4.マイクロ粒子と有機溶剤とを含む組成物
上記の通り、本開示のマイクロ粒子の製造過程において、本開示のマイクロ粒子と、有機溶剤とを含む組成物が得られる。
【0112】
5.マイクロ粒子分散液
本開示のマイクロ粒子分散液は、本開示のマイクロ粒子と、水性媒体とを含み、前記マイクロ粒子が前記水性媒体中に分散している、マイクロ粒子分散液である。
【0113】
本開示のマイクロ粒子分散液の水性媒体中には種々の添加剤を含有し得る。
【0114】
上記における添加剤としては特に水性媒体中に溶解又は分散できるものであれば限定されないが、例えば、無機塩類、リン酸イオン及び重炭酸イオン等からなる緩衝液類;アミノ酸類、リボフラビン、チアミン及びビオチン等のビタミン類;グルコース、ガラクトース及びマルトースなどの炭水化物;トランスフェリン、フィブロネクチン及びフェチュイン等のペプチド及びタンパク質類;コレステロール及びステロイド等の脂肪酸及び脂質類;アルブミン、増殖因子及び増殖抑制物質等の血清成分;並びに亜鉛、銅及びセレンなどの生体微量元素等が挙げられる。
【0115】
本開示のマイクロ粒子分散液は、気体運搬液等として使用され得る。
【0116】
上記において、気体運搬液は、例えば、酸素運搬体であり得る。酸素運搬体として具体的には、例えば、代用血液、体内特定部位への酸素供給手段、移植組織保存液、移植臓器保護液、移植臓器潅流液、又は動物細胞又は微生物の培養液等の用途で使用され得る。
【0117】
本開示のマイクロ粒子分散液は、代用血液として用いられる場合、具体的には、例えば、輸血のため、酸素欠乏状態(例えば、心不全、脳梗塞、呼吸不全などによる虚血など)の予防的処置および/または治療的処置のため、又は虚血状態若しくは再灌流に続く状態、特に止血帯症候群(再灌流症候群)の予防的および/または治療的処置のために、用いることができる。「酸素欠乏状態」は、虚血性及び低酸素状態に関連する。「虚血性」または「虚血」は、組織又は臓器に流れる血液が減少するか流れなくなることをいう。
【0118】
本開示のマイクロ粒子分散液は、輸血目的のために用いられる場合、より具体的には、外科手術、事故、損傷等に関連した血液損失(例えば、出血ショック、手術中の出血)の処置のため等に用いることができる。
【0119】
本開示のマイクロ粒子分散液は、移植組織保存目的のために用いられる場合、具体的には移植組織へ酸素を運搬するための人工酸素運搬体として用いることができる。この場合、本開示のマイクロ粒子分散液は、さらに再生医療分野において移植組織保存目的のために用いることもできる。
【0120】
本開示のマイクロ粒子分散液は、非酸素の気体の運搬液として用いられる場合、具体的には、気体をデリバリーするDDS担体等として使用され得る。また、この場合、本開示のマイクロ粒子分散液は、さらに血流におけるガス気泡形成又はガス血栓の予防的および/または治療的処置(例えば、人工心肺など体外循環回路の補填、液体換気、解毒など)のためにも用いることができる。
【0121】
上記各用途において、動物を対象とする場合、対象は特に限定されず、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ等であり得る。
【実施例0122】
以下、実施例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、表中において単位は質量を表わす。
【0123】
(1)サイズ、粒度分布の測定
実施例で得た粒子に対してレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(ParticaLA-950V2, Horiba)を使用して測定を行い、粒子サイズ(体積平均粒 子径 )およびCV値を測定した。なお、CV値は、粒子径の標準偏差および平均粒子径の値から下記の式に従って求めた。
CV値(%)=( 粒子径 の標準偏差/平均粒子径)x100
(2)弾性率の評価
微小圧縮試験機(MCT series, Shimadzu)を用いて、マイクロ粒子の変形能を測定した。ステージ上の粒子から顕微鏡観察下(対物レンズ50倍)で測定対象を一つ選択し、プローブによって粒子を上方から圧縮することで、圧縮時の応力と変位を評価した。
【0124】
I マイクロ粒子の製造
1.球状マイクロ粒子
[実施例1]
(工程1)30mgの四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体(重量平均分子量44500、四フッ化エチレン:ビニルピロリドン=36:64、フッ素含有率26重量%)、0.12gのパーフルオロオクチルブロミド(酸素溶解度50vol%)を2mLのジクロロメタンに溶解させた。ナイルレッドを蛍光測定用に添加した。次いで、得られた溶液を20mLの2%ポリビニルアルコール水溶液中に、親水性ガラス多孔質膜を介してシリンジで押出すことにより、膜乳化させ、乳化粒子を得た。
(工程2)続いて、エマルションを200rpmで撹拌しながら室温でジクロロメタンを蒸発させ、さらに1000rpmで3分間遠心分離した。得られた粒子を純水で洗浄し、パーフルオロオクチルブロミドからなるコアと四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は11.93μmであった。CV値は34%であった。
【0125】
[実施例2]
50mgの四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、パーフルオロオクチルブロミドからなるコアと四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は10.97μmであった。CV値は43%であった。
【0126】
[実施例3]
100mgの四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、パーフルオロオクチルブロミドからなるコアと四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は12.37μmであった。CV値は31%であった。
【0127】
[実施例4]
工程1として50mgのポリ(メチルα―フルオロアクリレート)(重量平均分子量10400、フッ素含有率18重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことでパーフルオロオクチルブロミドからなるコアとポリ(メチルα―フルオロアクリレート)からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は7.57μmであった。CV値は30%であった。
【0128】
[実施例5]
工程1として50mgの4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体(フッ素含有率33重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロオクチルブロミドからなるコアと4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は6.63μmであった。CV値は29%であった。
【0129】
[実施例6]
工程1として50mgのポリジメチルシロキサンエラストマー(品番 SuperPDMS XM-1700)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロオクチルブロミドからなるコアとポリジメチルシロキサンからなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は10.1μmであった。CV値は28%であった。
【0130】
[実施例7]
工程1として50mgのスチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体(スチレン30wt%、メルトインデックス:10g/10min (200℃/5.0kg))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロオクチルブロミドからなるスチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は9.3μmであった。CV値は33%であった。
【0131】
[実施例8]
工程1として50mgのビニリデンフルオライド/四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体(含有比率 ビニリデンフルオライド/四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン=50/20/30、フッ素含有率67重量%)と61μLのパーフルオロデカリン(酸素溶解度40vol%)、溶媒としてハイドロフルオロエーテル(商品名 Novec7000)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロデカリンからなるコアとビニリデンフルオライド/四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は18.62μmであった。CV値は66%であった。
【0132】
[実施例9]
工程1として50mgのビニリデンフルオライド/四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体(含有比率 ビニリデンフルオライド/四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン=50/20/30、フッ素含有率67重量%)、61μLのパーフルオロポリエーテルオイル(クライトックスGPL103)、溶媒としてハイドロフルオロエーテル(商品名Novec7000)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロポリエーテルオイルからなるコアとビニリデンフルオライド/四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は5.99μmであった。CV値は34%であった。
【0133】
[実施例10]
工程1として50mgのビニリデンフルオライド/四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体(含有比率 ビニリデンフルオライド/四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン=50/20/30、フッ素含有率67重量%)、61μLのパーフルオロオクチルブロミドを2mLのハイドロフルオロエーテル(商品名 Novec7000)を用いたこと以外は実施例1と同様にして乳化粒子を得た。
工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロオクチルブロミドからなるコアとビニリデンフルオライド/四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体からなシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は6.31μmであった。CV値は28%であった。
【0134】
[実施例11]
工程1として5mgの四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体、45mgの4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロオクチルブロミドからなるコアと四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体および4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は5.86μmであった。CV値は30%であった。
【0135】
[実施例12]
工程1として50mgの4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体、溶媒としてジクロロメタンとNovec7000の混合溶媒(ジクロロメタン/Novec7000=2mL/0.2mL)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロデカリンからなるコアと4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は10.54μmであった。CV値は29%であった。
【0136】
[実施例13]
工程1として50mgの4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体、58μLのパーフルオロオクチルブロミド、4μLのパーフルオロオクチルデカンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロオクチルブロミド、パーフルオロオクチルデカンからなるコアと4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は6.7μmであった。CV値は29%であった。
【0137】
[実施例14]
工程1として5mgの四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体、45mgの4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体、61μLのパーフルオロデカリン、溶媒としてジクロロメタンとNovec7000の混合溶媒(ジクロロメタン/Novec7000=2mL/0.2mL)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロデカリンからなるコアと四フッ化エチレンビニルピロリドン共重合体、4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は28.9μmであった。CV値は66%であった。
【0138】
[実施例15]
工程1として25mgのスチレンー無水マレイン酸共重合体、25mgの4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。後に、工程2として溶媒留去と洗浄を行うことで、パーフルオロオクチルブロミドからなるコアとスチレンー無水マレイン酸共重合体、4,4‘-[パーフルオロプロパンー2,2’-ジイル]ジ無水フタル酸/2,2‘-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’ジアミノビフェニル交互共重合体からなるシェルとから構成される粒子を得た。体積平均粒子径は6.58μmであった。CV値は29%であった。
【0139】
[実施例16]
工程1として50mgのポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-co-テトラフルオロエチレン]、61μLのパーフルオロポリエーテルオイル(クライトックスGPL103)、溶媒としてハイドロフルオロエーテル(商品名 Novec7000)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化粒子を得た。体積平均粒子径は27.2μmであった。
【0140】
2.くぼみのあるマイクロ粒子
[実施例17]くぼみのある粒子
実施例5と同様の方法により製造した粒子の0.8重量%の分散液2mLに、1mLのイソプロパノールを撹拌しながら添加した。室温下、マイクロ粒子が沈降しない速度で撹拌させながら約12時間静置した。得られた粒子を純水で再懸濁させることにより、くぼみを有する形状のマイクロ粒子を得た。
【0141】
[実施例18]
実施例6と同様の方法により製造した粒子を、希塩酸水溶液(pH=4.4)、水酸化ナトリウム水溶液(pH=10.4)、70%エタノール、120℃高圧水蒸気条件にそれぞれ24時間さらした後、走査電子顕微鏡にて観察し、コアシェル粒子形状が変化していないことを確認した。
【0142】
[実施例19]
実施例5と同様の方法により製造した粒子を、希塩酸水溶液(pH=4.4)、水酸化ナトリウム水溶液(pH=10.4)、70%エタノール条件にそれぞれ24時間さらした後、走査型電子顕微鏡にて観察し、コアシェル粒子形状が変化していないことを確認した。
【0143】
[比較例1]
Adv. Mater. Technol. 2021, 2100573記載のパーフルオロオクチルブロミドをコアに有し、L-乳酸―カプロラクトン共重合体をシェルに有するコアシェル型粒子を水酸化ナトリウム水溶液(pH=10.4)条件に24時間浸漬させた後、走査型電子顕微鏡にて観察すると、粒子形状が変化してコアシェル構造が崩壊することを確認した。
【符号の説明】
【0144】
1 マイクロ粒子
11 シェル
12 コア
13 ポリマー
14 フルオロカーボン
15 くぼみ
da 短径
db 長径
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有ポリマー、フッ素非含有ビニルポリマー、及びシリコーンポリマーからなる群より選択される少なくとも一種のポリマーを含むシェルと、フルオロカーボンを含むコアとを含む、コアシェル型のマイクロ粒子。
【請求項2】
ポリマーを含むシェルと、フルオロカーボンを含むコアとを含む、コアシェル型のマイクロ粒子であって、
前記ポリマー主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に-CX-CXCX-,-CX=CX-,-C≡C-,-CX-O-CX-,-CX-S-CX-,-CX-S-S-CX-,-CX-C(=O)-CX-,-C(=O)-N(X,Y)-,-CX-C(=S)-CX-,-C(=S)-N(X,Y)-,-Si(X,Y)-O-Si(X,Y)-,及び-Si(X,Y)-Si(X,Y)-(式中、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基、ニトリル基、エステル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキレン基であり、X及びYは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~20の、アルキル基、アルキレン基、アリール基、(パー)フルオロアルキル基、又は(パー)フルオロアルキレン基を表す)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位からなる、マイクロ粒子。
【請求項3】
前記ポリマー主鎖中の繰り返し単位中の主鎖を構成する構造単位が、実質的に-CX-CXCX-,-CX=CX-,-CX-O-CX-,-CX-C(=O)-CX-,-C(=O)-N(X,Y)-,-CX-C(=S)-CX-,-Si(X,Y)-O-Si(X,Y)-,及び-Si(X,Y)-Si(X,Y)-(式中、X,X,X,及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい酸素原子、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、鎖状又は環状で置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基、ニトリル基、エステル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の含フッ素アルキレン基であり、X及びYは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよく鎖状又は環状で炭素数1~20の、アルキル基、アルキレン基、アリール基、(パー)フルオロアルキル基、又は(パー)フルオロアルキレン基を表す)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位からなる、請求項1に記載のマイクロ粒子。
【請求項4】
pH=4.4の希塩酸水溶液に24時間さらした後におけるマイクロ粒子形状の変化率が50%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項5】
pH=10.4の水酸化ナトリウム水溶液に24時間さらした後におけるマイクロ粒子形状の変化率が50%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項6】
前記ポリマーがシリコーンポリマー又はフッ素含有ポリマーであり、前記ポリマーに含まれるフッ素の含有量が、20重量%以上である請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項7】
コアのフルオロカーボンのフッ素含有率が10質量%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項8】
コアのフルオロカーボンの沸点が90℃以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項9】
コアのフルオロカーボンの酸素の溶解度が30vol/vol%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項10】
前記フルオロカーボンがパーフルオロアルキル基を含むフルオロカーボン又はフルオロポリエーテル基とパーフルオロアルキル基とを含むフルオロカーボンであり、かつ重量平均分子量が50000以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項11】
フルオロポリエーテル基とパーフルオロアルキル基とを含む前記フルオロカーボンの沸点が150℃以上である、請求項10に記載のマイクロ粒子。
【請求項12】
体積平均粒子径が、500μm以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項13】
シェルの厚みが、50nm以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項14】
コアが酸素を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項15】
シェルの弾性率が、500MPa以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロ粒子。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ粒子と、
有機溶剤と
を含む組成物。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ粒子と、
水性媒体と
を含み、前記マイクロ粒子が前記水性媒体中に分散している、マイクロ粒子分散液。
【請求項18】
酸素運搬液、移植組織保存液、移植臓器保護液、又は培養液である、請求項17に記載のマイクロ粒子分散液。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ粒子の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含む方法:
(1)ポリマーとフルオロカーボンとを有機溶媒中に分散させた分散層を、均一な細孔を有する多孔質膜を介して、界面活性剤を含む連続相中に、膜乳化させて前記マイクロ粒子を分散質として含むエマルションを得る工程;及び
(2)前記エマルションに含まれる有機溶媒相を除去する工程。
【請求項20】
くぼみを有する請求項1~13のいずれか一項に記載のマイクロ粒子の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含む方法:
(1)項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ粒子を、水性媒体に分散させた分散液に、アルコールを添加する工程;及び (2)工程(1)で得られた粒子を溶媒に再懸濁させる工程。