(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133300
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体の製造方法、感光性樹脂組成物の製造方法、パターン硬化物の製造方法、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜の製造方法、及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20220906BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220906BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20220906BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220906BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C08G73/10
G03F7/027 514
G03F7/40 501
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C08F290/14
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094853
(22)【出願日】2022-06-13
(62)【分割の表示】P 2020512131の分割
【原出願日】2018-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 聡
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業性に優れるポリイミド前駆体の製造方法、感光性樹脂組成物の製造方法、パターン硬化物の製造方法、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜の製造方法、及び電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】下記(i)及び(ii)を含み、前記(i)及び(ii)の少なくとも一方は、エーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含む溶剤中で行われるポリイミド前駆体の製造方法。
(i)テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させ、ポリイミド前駆体を得る工程
(ii)前記ポリイミド前駆体と無水トリフルオロ酢酸とを反応させ、その反応物と下記式(3)で表される構造を含む化合物とを反応させて、側鎖に重合性基が導入されたポリイミド前駆体を得る工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体の製造方法であって、
下記(i)及び(ii)を含み、前記(i)及び(ii)の少なくとも一方は、エーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含む溶剤中で行われるポリイミド前駆体の製造方法。
(i)カルボン酸無水物と、ジアミン化合物とを反応させ、下記式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を得る工程
(ii)前記式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体と下記式(8)で表される化合物とを反応させ、その反応物と下記式(9)で表される化合物とを反応させて、下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を得る工程
【化19】
(式(1)中、X
1は1以上の芳香族基を有する4価の基であって、-COOR
1基と-CONH-基とは互いにオルト位置にあり、-COOR
2基と-CO-基とは互いにオルト位置にある。Y
1は2価の芳香族基である。R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、下記式(3)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方が前記式(3)で表される基である。)
【化20】
(式(3)中、Raは炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基である。R
3~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基である。)
【化21】
(式(2)中、X
1は、式(1)のX
1に対応する基である。Y
1は式(1)で定義した通りである。)
【化22】
【化23】
(式(9)中、R
14は前記式(3)で表される基である。)
【請求項2】
前記エーテル結合及びアミド結合を有する化合物が、下記式(10)で表される化合物である請求項1に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【化24】
(式(10)中、R
21~R
23は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基である。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法でポリイミド前駆体を製造し、
前記ポリイミド前駆体、(B)重合性モノマー、及び(C)光重合開始剤を混合し、感光性樹脂組成物を得る、感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法で感光性樹脂組成物を製造する工程と、
前記感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて、現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含むパターン硬化物の製造方法。
【請求項5】
前記加熱処理の温度が200℃以下である請求項4に記載のパターン硬化物の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の方法で製造するパターン硬化物を用いて作製する層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法で製造する層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を用いて作製する電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体の製造方法、感光性樹脂組成物の製造方法、パターン硬化物の製造方法、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜の製造方法、及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの高性能化を支えてきたトランジスタの微細化は、スケーリング則の限界に来ており、さらなる高性能化や高速化のために半導体素子を3次元的に積層する積層デバイス構造が注目を集めている。
【0003】
上記のような、半導体素子の表面保護膜及び層間絶縁膜には、優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミドやポリベンゾオキサゾールが用いられている。近年、これらの樹脂自身に感光特性を付与した感光性樹脂組成物が用いられており、これを用いるとパターン硬化膜の製造工程が簡略化でき、煩雑な製造工程を短縮できる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献2には、エーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含むような溶剤中で、酸ハロゲン化物とジアミンを反応させることで、ポリベンゾオキサゾールを得ることができる、感光性樹脂組成物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-265520号公報
【特許文献2】特開2017-37129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、作業性に優れるポリイミド前駆体の製造方法、感光性樹脂組成物の製造方法、パターン硬化物の製造方法、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜の製造方法、及び電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリイミド前駆体、ポリアミド酸、その反応中間体等は、溶剤への溶解性が悪く、反応溶剤が限定されているとの知見を有する。
【0008】
また、ポリイミド前駆体、ポリアミド酸を再配線層に用いる場合、半導体素子の集積度の向上や、チップの矮小化等から微細配線になる場合が多く、その場合、配線間の信頼性向上のために、製造工程にハロゲン化物、特に塩化水素が副生成物として含まれないような製造方法が求められるとの知見を、経験により有する。
さらに、本発明者らは、製造方法において、カルボン酸塩化物を用いた場合、製造後の樹脂に塩素を含む副生成物が残存してしまい、半導体製品へと樹脂を応用した場合に信頼性の悪化するおそれがあるとの知見を、経験により有する。
【0009】
特許文献2では、環境への負荷を減らすという観点から、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いない、感光性樹脂組成物の製造方法が開示されている。
しかしながら、実施例として報告されているのはポリベンゾオキサゾール前駆体の合成方法であり、ポリイミドについては、合成も結果も記載されていない。
【0010】
本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、ポリイミド前駆体の製造時において特定の溶剤を用いることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明によれば、以下のポリイミド前駆体の製造方法等が提供される。
1.下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体の製造方法であって、
下記(i)及び(ii)を含み、前記(i)及び(ii)の少なくとも一方は、エーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含む溶剤中で行われるポリイミド前駆体の製造方法。
(i)カルボン酸無水物と、ジアミン化合物とを反応させ、下記式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を得る工程
(ii)前記式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体と下記式(8)で表される化合物とを反応させ、その反応物と下記式(9)で表される化合物とを反応させて、下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を得る工程
【化1】
(式(1)中、X
1は1以上の芳香族基を有する4価の基であって、-COOR
1基と-CONH-基とは互いにオルト位置にあり、-COOR
2基と-CO-基とは互いにオルト位置にある。Y
1は2価の芳香族基である。R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、下記式(3)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方が前記式(3)で表される基である。)
【化2】
(式(3)中、Raは炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基である。R
3~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基である。)
【化3】
(式(2)中、X
1は、式(1)のX
1に対応する基である。Y
1は式(1)で定義した通りである。)
【化4】
【化5】
(式(9)中、R
14は前記式(3)で表される基である。)
2.前記エーテル結合及びアミド結合を有する化合物が、下記式(10)で表される化合物である1に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【化6】
(式(10)中、R
21~R
23は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基である。)
3.1又は2に記載の方法でポリイミド前駆体を製造し、
前記ポリイミド前駆体、(B)重合性モノマー、及び(C)光重合開始剤を混合し、感光性樹脂組成物を得る、感光性樹脂組成物の製造方法。
4.3に記載の方法で感光性樹脂組成物を製造する工程と、
前記感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて、現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含むパターン硬化物の製造方法。
5.前記加熱処理の温度が200℃以下である4に記載のパターン硬化物の製造方法。
6.4又は5に記載の方法で製造するパターン硬化物を用いて作製する層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜の製造方法。
7.6に記載の方法で製造する層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を用いて作製する電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業性に優れるポリイミド前駆体の製造方法、感光性樹脂組成物の製造方法、パターン硬化物の製造方法、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜の製造方法、及び電子部品の製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のポリイミド前駆体の製造方法、それを用いた感光性樹脂組成物の製造方法、パターン硬化物の製造方法、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜の製造方法、及び電子部品の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
本明細書において「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明のポリイミド前駆体の製造方法は、下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体の製造方法であって、
下記(i)及び(ii)を含み、前記(i)及び(ii)の少なくとも一方は、エーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含む溶剤中で行われるポリイミド前駆体の製造方法。
(i)カルボン酸無水物と、ジアミン化合物とを反応させ、下記式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を得る工程
(ii)前記式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体と下記式(8)で表される化合物とを反応させ、その反応物と下記式(9)で表される化合物とを反応させて、下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を得る工程
【化7】
(式(1)中、X
1は1以上の芳香族基を有する4価の基であって、-COOR
1基と-CONH-基とは互いにオルト位置にあり、-COOR
2基と-CO-基とは互いにオルト位置にある。Y
1は2価の芳香族基である。R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、下記式(3)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方が前記式(3)で表される基である。)
【化8】
(式(3)中、Raは炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基である。R
3~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基である。)
【化9】
(式(2)中、X
1は、式(1)のX
1に対応する基である(即ち、X
1は、1以上の芳香族基を有する4価の基であって、2つの-COOH基の一方と-CONH-基とは互いにオルト位置にあり、2つの-COOH基の他方と-CO-基とは互いにオルト位置にある。)。Y
1は式(1)で定義した通りである。)
【化10】
【化11】
(式(9)中、R
14は前記式(3)で表される基である。)
【0017】
これにより、作業性を向上させることができる。具体的には、ゲル化を抑制し、容易にろ別でき、安定して高分子量のポリイミド前駆体を得ることができる。
また、任意の効果として、塩素を含まないポリイミド前駆体を得ることができ、信頼性の高い電子部品を得ることができる。
また、任意の効果として、環境負担を低減することができる。
【0018】
式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体は、特に制限はされないが、パターニング時の光源にi線を用いた場合の透過性が高く、200℃以下の低温硬化時にも高い硬化物特性を示すポリイミド前駆体が好ましい。
式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体は、感光性樹脂組成物用であることが好ましい。
【0019】
式(1)のX1の1以上(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)の芳香族基を有する4価の基において、芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよく、芳香族複素環式基でもよい。芳香族炭化水素基が好ましい。
【0020】
式(1)のX1の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環から形成される2~4価の基、ナフタレンから形成される2~4価の基、ペリレンから形成される2~4価の基等が挙げられる。
【0021】
式(1)のX
1の1以上の芳香族基を有する4価の基としては、例えば以下の式(4)の4価の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化12】
式(4)中、X及びYは、それぞれ独立に、各々が結合するベンゼン環と共役しない2価の基又は単結合を示す。Zはエーテル基(-O-)又はスルフィド基(-S-)である(-O-が好ましい)。
【0022】
式(4)において、X及びYの各々が結合するベンゼン環と共役しない2価の基は、-O-、-S-、メチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、又はジフルオロメチレン基であることが好ましく、-O-がより好ましい。
【0023】
式(1)のY1の2価の芳香族基は、2価の芳香族炭化水素基でもよく、2価の芳香族複素環式基でもよい。その中では、2価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0024】
式(1)のY1の2価の芳香族複素環式基としては、カルバゾールから形成される2価の基、ジメチルチオフェンスルホンから形成される2価の基等が挙げられる。
【0025】
式(1)のY
1の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば以下の式(5)の基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【化13】
(式(5)中、R
6~R
13は、それぞれ独立に水素原子、1価の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を有する1価の有機基である。)
【0026】
式(5)のR6~R13の1価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6)としてはメチル基が好ましい。
【0027】
式(5)のR6~R13のハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有する1価の有機基は、ハロゲン原子を有する1価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6)が好ましく、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0028】
式(1)のR1及びR2の炭素数1~4(好ましくは1又は2)の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0029】
式(1)のR1及びR2の少なくとも一方が、式(3)で表される基であり、ともに式(3)で表される基であることが好ましい。
【0030】
式(3)のRaの炭素数1~20(好ましくは1~10、より好ましくは2~5、さらに好ましくは2又は3)の2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でもよく、また環状構造を有していてもよい。メチレン基、エチレン基、-CH2-(C6H4)-CH2-基等が挙げられる。
【0031】
式(3)のR3~R5の炭素数1~3(好ましくは1又は2)の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基等が挙げられる。メチル基が好ましい。
【0032】
式(3)で表される基は、下記式(3A)で表される基であることが好ましい。
【化14】
(式(3A)中、R
3~R
5は式(3)で定義した通りである。mは1~10の整数(好ましくは2~5の整数、より好ましくは2又は3)である。)
【0033】
式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体において、全カルボキシ基及び全カルボキシエステルに対して、式(3)で表される基でエステル化されたカルボキシ基の割合が、50モル%以上であることが好ましく、60~100モル%がより好ましく、70~90モル%がより好ましい。
式(3)で表される基でエステル化されたカルボキシ基の割合は、NMR測定し、算出する。
【0034】
式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体の分子量に特に制限はないが、重量平均分子量で10,000~200,000であることが好ましい。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求める。
【0035】
(i)及び(ii)の少なくとも一方(プロセスの簡略化の観点と(i)及び(ii)をワンポットで行う観点から、好ましくは両方)は、エーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含む溶剤中で行われる。
【0036】
エーテル結合及びアミド結合を有する化合物は、式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体の溶解性が高く、また、適度な極性を有しており、副反応を起こさないため、(i)及び(ii)において、その反応を円滑に進行させることができる。
【0037】
エーテル結合及びアミド結合を有する化合物は、下記式(10)で表される化合物であることが好ましい。
【化15】
(式(10)中、R
21~R
23は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基である。)
【0038】
式(10)中におけるR21~R23の炭素数1~10(好ましくは1~3、より好ましくは1又は3)のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
【0039】
エーテル結合及びアミド結合を有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
溶剤は、エーテル結合及びアミド結合を有する化合物以外の溶剤と含んでもよい。
エーテル結合及びアミド結合を有する化合物以外の溶剤としては、通常用いられる溶剤(例えば有機溶剤)であれば特に限定されず、例えば、
エステル類として、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンδ-バレロラクトン、アルコキシ酢酸アルキル(例えば、アルコキシ酢酸メチル、アルコキシ酢酸エチル、アルコキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルコキシプロピオン酸メチル、3-アルコキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルコキシプロピオン酸メチル、2-アルコキシプロピオン酸エチル、2-アルコキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチルなど、
エーテル類として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、
ケトン類として、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドン等、
芳香族炭化水素類として、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等、及び
スルホキシド類として、ジメチルスルホキシド等が好適に挙げられる。
【0041】
エーテル結合及びアミド結合を有する化合物以外の溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
エーテル結合及びアミド結合を有する化合物の含有量は、溶剤100質量%に対して、25~100質量%が好ましい。
【0043】
(i)において、カルボン酸無水物と、ジアミン化合物とを反応(好ましくは縮合重合)させ、式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体(以下、ポリアミド酸又はポリアミック酸ともいう。)を得る。
【0044】
(i)において、カルボン酸無水物は、式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0045】
【化16】
(式(6)中、X
1は、式(1)のX
1に対応する基である。)
【0046】
(i)において、ジアミン化合物は、式(7)で表されるジアミン化合物が好ましい。
【0047】
【化17】
(式(7)中、Y
1は式(1)で定義した通りである。)
【0048】
カルボン酸無水物及びジアミン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0049】
(i)において、反応の温度及び時間は、カルボン酸無水物及びジアミン化合物の種類に応じて適宜設定することができる。反応の時間は、例えば30分間~24時間であり、反応の温度は、例えば0~80℃が好ましく、20~50℃の範囲がより好ましい。
(i)において、反応は、例えば撹拌により促進することができる。
【0050】
(ii)において、式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体と式(8)で表される化合物を反応(イソイミド化)させ、その反応物と式(9)で表される化合物とを反応させて(例えば、イソイミド環を開環させ、部分的にエステル化し)、上述の式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を得る。
【0051】
式(8)で表される化合物を反応させることで、式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を活性化させ、式(9)で表される化合物と反応(分子変換)させやすくすることができる。
【0052】
式(8)で表される化合物に代えて、公知の脱水縮合剤を用いてもよい。公知の脱水縮合剤としては、例えばN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、塩化チオニル、N-メチルイネメチルスルホンアミド(N-methylynemethylsulfonamide)等の触媒が挙げられる。また、脱水縮合剤に対し1.00~1.20モル等量の、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン等の第三級アミンをさらに加え、反応を促進させてもよい。
【0053】
式(2)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体と式(8)で表される化合物との反応において、反応の温度及び時間は式(8)で表される化合物の種類に応じて適宜設定することができる。反応の時間は、例えば1~6時間であり、反応の温度は、例えば20~70℃で行われることが好ましい。
式(8)で表される化合物との反応は、例えば撹拌により促進することができる。
【0054】
式(9)で表される化合物として、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0055】
式(9)で表される化合物との反応において、反応の温度及び時間は式(9)で表される化合物の種類に応じて適宜設定することができる。反応の時間は、例えば1~24時間であり、反応の温度は、例えば10~70℃である。
式(8)で表される化合物との反応は、例えば撹拌により促進することができる。
【0056】
(i)の前に、
カルボン酸無水物と、
式(9)で表される化合物、水酸基を有する化合物(例えば4-アミノフェノール)、又はアミノ基又はチオール基を有する化合物(カルボン酸無水物に対して少量(例えば、カルボン酸無水物100モル%に対して、5~50モル%が好ましく、10~30モル%がより好ましい)加えることが好ましい。)と、
を反応させてもよい。
これにより、式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体の末端を任意に変更することができ、硬化後の樹脂の物性を任意に変更することができる。
【0057】
水酸基を有する化合物、及びアミノ基又はチオール基を有する化合物は、同一分子内に、二重結合、アセチレン基、エポキシ基、シラノール基、イソシアネート基、マレイミド基等を有してもよい。
【0058】
水酸基を有する化合物としては、例えば公知の水酸基を有する化合物を使用することができ、公知のアルコール類等を使用することができる。メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブチルアルコール、n-ペンタノール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
また、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、又は1-ヒドロキシベンゾトリアゾールの誘導体等を用いてもよい。
【0059】
アミノ基又はチオール基を有する化合物としては、例えば公知のアミノ基又はチオール基を有する化合物を使用することができる。
アミノ基を有する化合物としては、例えば公知の1級、2級アミンを使用することができる。アニリン、エチニルアニリン、ノルボルネンアミン、ブチルアミン、プロパルギルアミン、アミノスチレン、アクリルアミド等が挙げられる。
チオール基を有する化合物としては、例えば公知のチオールを使用することができる。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法では、上述の方法でポリイミド前駆体を製造し、得られたポリイミド前駆体、(B)重合性モノマー(以下、「(B)成分」ともいう。)、及び(C)光重合開始剤(以下、「(C)成分」ともいう。)を混合し、感光性樹脂組成物を得る。
【0061】
混合は、公知の方法により行うことができる。
【0062】
上述の方法で製造したポリイミド前駆体は、そのまま用いてもよくまた、溶剤で希釈してもよく、他の溶剤で置換してもよい。
溶剤としては、上述のエーテル結合及びアミド結合を有する化合物を用いてもよく、エーテル結合及びアミド結合を有する化合物以外の溶剤を用いてもよい。
溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
溶剤の含有量は、特に限定されないが、一般的に、上述の方法で製造したポリイミド前駆体100質量部に対して、50~1000質量部である。
【0063】
(B)成分として、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
また、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート、アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、メタクリロイルオキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0064】
(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0065】
(B)成分の含有量は、上述の方法で製造したポリイミド前駆体100質量部に対して、1~50質量部が好ましい。硬化物の疎水性向上の観点から、より好ましくは5~50質量部、さらに好ましくは5~40質量部である。
上記範囲内である場合、実用的なレリ-フパターンが得られやすく、未露光部の現像後残滓を抑制しやすい。
【0066】
(C)成分としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、
2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体、
チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、
ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体、及び
1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、下記式で表される化合物等のオキシムエステル類などが好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化18】
【0067】
特に光感度の点で、オキシムエステル類が好ましい。
【0068】
(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0069】
(C)成分の含有量は、上述の方法で製造したポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.1~5質量部である。
上記範囲内の場合、光架橋が膜厚方向で均一となりやすく、実用的なレリ-フパターンを得やすくなる。
【0070】
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法では、さらにカップリング剤、界面活性剤又はレベリング剤、防錆剤、重合禁止剤、及び接着助剤等の添加剤を1種以上混合してもよい。
【0071】
本発明のパターン硬化物の製造方法では、上述の方法で感光性樹脂組成物を製造する工程と、得られた感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて、現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む。
これにより、パターン硬化物を得ることができる。
【0072】
また、上述の方法で得られた感光性樹脂組成物を用いて、パターンがない硬化物を得てもよい。
パターンがない硬化物を製造する方法は、例えば、上述の感光性樹脂膜を形成する工程と加熱処理する工程とを備える。さらに、露光する工程を備えてもよい。
これにより、パターンがない硬化物を得ることができる。
【0073】
パターン硬化物及びパターンがない硬化物の膜厚は、3~30μmが好ましい。
【0074】
基板としては、ガラス基板、Si基板(シリコンウエハ)等の半導体基板、TiO2基板、SiO2基板等の金属酸化物絶縁体基板、窒化ケイ素基板、銅基板、銅合金基板などが挙げられる。
【0075】
塗布方法に特に制限はないが、スピナーやバーコーター等を用いて行うことができる。
【0076】
乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
乾燥温度は90~150℃が好ましく、溶解コントラスト確保の観点から、90~120℃がより好ましい。乾燥時間は、30秒間~5分間が好ましく、乾燥は、2回以上行ってもよい。
これにより、上述の感光性樹脂組成物を膜状に形成した感光性樹脂膜を得ることができる。
【0077】
感光性樹脂膜の膜厚は、5~100μmが好ましく、8~50μmがより好ましく、10~30μmがさらに好ましい。
【0078】
パターン露光は、例えばフォトマスクを介して所定のパターンに露光する。
照射する活性光線は、i線等の紫外線、可視光線、放射線などが挙げられるが、i線であることが好ましい。
露光装置としては、平行露光機、投影露光機、ステッパ、スキャナ露光機等を用いることができる。
【0079】
現像することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得ることができる。一般的に、ポジ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、未露光部を現像液で除去する。
現像液として用いる有機溶剤は、現像液としては、感光性樹脂膜の良溶剤を単独で、又は良溶剤と貧溶剤を適宜混合して用いることができる。
良溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ガンマブチロラクトン、α-アセチル-ガンマブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
貧溶媒としては、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び水等が挙げられる。
【0080】
現像液に界面活性剤を添加してもよい。添加量としては、現像液100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。
【0081】
現像時間は、例えば感光性樹脂膜を浸漬して完全に溶解するまでの時間の2倍とすることができる。
現像時間は、上述の方法で製造したポリイミド前駆体によっても異なるが、10秒間~15分間が好ましく、10秒間~5分間より好ましく、生産性の観点からは、20秒間~5分間がさらに好ましい。
【0082】
現像後、リンス液により洗浄を行ってもよい。
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を単独又は適宜混合して用いてもよく、また段階的に組み合わせて用いてもよい。
【0083】
パターン樹脂膜を加熱処理することにより、パターン硬化物を得ることができる。
ポリイミド前駆体が、加熱処理工程によって、脱水閉環反応を起こし、対応するポリイミドとなってもよい。
【0084】
加熱処理の温度は、250℃以下が好ましく、120~250℃がより好ましく、200℃以下又は150~200℃がさらに好ましい。
上記範囲内であることにより、基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスを歩留り良く生産することが可能となり、プロセスの省エネルギー化を実現することができる。
【0085】
加熱処理の時間は、5時間以下が好ましく、30分間~3時間がより好ましい。
上記範囲内であることにより、架橋反応又は脱水閉環反応を充分に進行することができる。
加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよいが、パターン樹脂膜の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。
【0086】
加熱処理に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0087】
上述の方法で製造するパターン硬化物及びパターンがない硬化物は、パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜等として用いることができる。
上記パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層及び表面保護膜等からなる群から選択される1以上を用いて、信頼性の高い、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス等の電子部品などを製造することができる。
【0088】
本発明の方法で得られる電子部品である半導体装置の製造工程の一例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法の工程図、具体的には、多層配線構造の半導体装置の製造方法の工程図である。
図1において、回路素子を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2などで被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成される。その後、前記半導体基板1上に層間絶縁膜4が形成される。
【0089】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、層間絶縁膜4上に形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられる。
【0090】
窓6Aが露出した層間絶縁膜4は、選択的にエッチングされ、窓6Bが設けられる。
次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食せずに、感光性樹脂層5を腐食するようなエッチング溶液を用いて感光性樹脂層5が除去される。
【0091】
さらに公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成し、第1導体層3との電気的接続を行う。
3層以上の多層配線構造を形成する場合には、上述の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる。
【0092】
次に、上述の方法で得られる感光性樹脂組成物を用いて、パターン露光により窓6Cを開口し、表面保護膜8を形成する。表面保護膜8は、第2導体層7を外部からの応力、α線等から保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
尚、前記例において、層間絶縁膜を本発明の方法で得られる感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【実施例0093】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0094】
作業性の評価
以下、実施例1及び比較例1~2において、
合成中にポリアミド酸又はポリイミド前駆体がゲル化を起こさない、
ろ別を、(2回以上ろ別を行う場合は、2回以上のろ別の合計時間において)2時間以内で行うことができる、
実施例1の重量平均分子量の、プラスマイナス5,000以内の重量平均分子量のポリマーを得ることができる、及び
分散度が1.0~3.0のポリマーを得ることができる、以上の項目をすべて満たすものを○とした。上記項目において少なくとも1つを満たさないものを×とした。
【0095】
実施例1(ポリマーIの合成)
3,3’,4,4’ -ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)23.5gを3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド190gに溶かした溶液に、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン(DMAP)13gを3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド75gに溶解した溶液を、滴下し30℃で2時間撹拌することで、ポリアミド酸を得た。
そこに40℃以下で無水トリフルオロ酢酸を37g加え、45℃で3時間撹拌したのち、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)25.5gを加え40℃で10時間撹拌を行った。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することを3回繰り返すことによってポリイミド前駆体を得た(以下、ポリマーIとする)。ろ別にかかった時間は、3回のろ別の合計時間で、1.5時間であった。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて、標準ポリスチレン換算により、以下の条件で、重量平均分子量、数平均分子量及び分散度を求めた。ポリマーIの重量平均分子量は、20,000であり、分散度は1.74であった。
【0096】
0.5mgのポリマーIに対して溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。ポリマーIの分散度は、重量平均分子量を数平均分子量で除算して算出した。
【0097】
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C-R4A Chromatopac
測定条件:カラムGelpack GL-S300MDT-5×2本
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/L)、H3PO4(0.06mol/L)
流速:1.0mL/min、検出器:UV270nm
【0098】
また、ポリマーIのエステル化率(ODPAのカルボキシ基のHEMAとの反応率)を、以下の条件でNMR測定を行い、算出した。エステル化率は、ポリアミド酸の全カルボキシ基に対し74モル%であった(残り26モル%はカルボキシ基)。
【0099】
測定機器:ブルカー・バイオスピン社製 AV400M
磁場強度:400MHz
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
溶剤:ジメチルスルホキシド(DMSO)
【0100】
比較例1
3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドに代えて、1、3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を使用した以外は、実施例1と同様に、HEMAを加え撹拌まで行ったが、反応溶液がゲル化し、ポリイミド前駆体は得られなかった。
【0101】
比較例2(ポリマーIIの合成)
3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドに代えて、γ-ブチロラクトン(GBL)を使用した以外は、実施例1と同様に、ポリイミド前駆体を製造し(以下、ポリマーIIとする)、評価した。ここで、HEMAを加え撹拌した反応液を蒸留水に滴下した際に、ポリマーが粉末状にならず、粘土状に変化し、ろ別に、3回のろ別の合計時間で、3時間を要した。
ポリマーIIの重量平均分子量は、8,000であり、分散度は5.18であった。また、ポリマーIIのエステル化率は49%であった。
【0102】
以上の結果を表1にまとめた。重量平均分子量「-」は、測定できなかったことを示す。
【表1】
【0103】
実施例2
(感光性樹脂組成物の調製)
100質量部のポリマーIを、150質量部の3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドに溶解し、そこに、テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製)20質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製)15質量部、IRUGCURE OXE 02(BASFジャパン株式会社製、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)0.2質量部、PDO(ランブソン社製、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム)2質量部を加え、感光性樹脂組成物を調製した。
【0104】
(感度の評価)
得られた感光性樹脂組成物を、塗布装置Act8(東京エレクトロン株式会社製)を用いて、シリコンウエハ上にスピンコートし、100℃で2分間乾燥後、110℃で2分間乾燥して乾燥膜厚が13μmの感光性樹脂膜を形成した。
得られた感光性樹脂膜をシクロペンタノンに浸漬して完全に溶解するまでの時間の2倍を現像時間として設定した。
また、上記と同様に感光性樹脂膜を作製し、得られた感光性樹脂膜に、i線ステッパFPA-3000iW(キヤノン株式会社製)を用いて、100~600mJ/cm2のi線を、50mJ/cm2刻みの照射量で、所定のパターンに照射して、露光を行った。
露光後の樹脂膜を、Act8を用いて、シクロペンタノンに、上記の現像時間でパドル現像した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)でリンス洗浄を行い、パターン樹脂膜を得た。
【0105】
得られたパターン樹脂膜の膜厚が、露光前の感光性樹脂膜の膜厚の80%以上となる露光量の下限を感度とした。
感度は150mJ/cm2であり、良好な感度を示した。
【0106】
(パターン硬化物の製造)
感度の評価で得られたパターン樹脂膜を、縦型拡散炉μ-TF(光洋サーモシステム株式会社製)を用いて、窒素雰囲気下、175℃で2時間加熱し、良好なパターン硬化物(硬化後膜厚10μm)が得られた。