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特開2022-133311アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133311
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220906BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220906BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220906BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220906BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20220906BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/50
C08K3/013
H01L23/30 R
H01L21/60 311S
H05K3/34 512C
H05K3/28 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096826
(22)【出願日】2022-06-15
(62)【分割の表示】P 2016202715の分割
【原出願日】2016-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿登
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇磨
(57)【要約】
【課題】リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性に優れるアンダーフィル材の提供。
【解決手段】アンダーフィル材は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含み、硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含み、
硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であるアンダーフィル材。
【請求項2】
硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度が、60℃~150℃である、請求項1に記載のアンダーフィル材。
【請求項3】
硬化物としたときの、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~10GPaである、請求項1又は請求項2に記載のアンダーフィル材。
【請求項4】
さらに(D)可撓化剤を含有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項5】
さらに(E)界面活性剤を含有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項6】
さらに(F)イオントラップ剤を含有する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項7】
さらに(G)硬化促進剤を含有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項8】
さらに(H)カップリング剤を含有する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項9】
さらに(I)酸化防止剤を含有する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項10】
さらに(J)有機溶剤を含有し、前記有機溶剤の含有率が10質量%以下である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項11】
前記(B)硬化剤が、芳香族アミン化合物である、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項12】
配線基板と、
前記配線基板上に配置され、前記配線基板と接続部を介して電気的に接続される電子部品と、
少なくとも、前記配線基板と前記電子部品との接続部を封止する請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のアンダーフィル材の硬化物と、
を備える電子部品装置。
【請求項13】
前記接続部が鉛を含まない、請求項12に記載の電子部品装置。
【請求項14】
前記接続部が銅を含む、請求項12又は請求項13に記載の電子部品装置。
【請求項15】
電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法であって、
前記電子部品における前記配線基板と対向する側の面及び前記配線基板における前記電子部品と対向する側の面の少なくとも一方の面に、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のアンダーフィル材を供給する供給工程と、
前記電子部品と前記配線基板とを前記接続部を介して接続し、かつ前記アンダーフィル材を硬化する接続工程と、を有する電子部品装置の製造方法。
【請求項16】
電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法であって、
接続された前記電子部品と前記配線基板との隙間に請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のアンダーフィル材を充填する充填工程と、
前記アンダーフィル材を硬化させる硬化工程と、を有する電子部品装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の電子部品装置の素子封止の分野では、生産性、コスト等の面から樹脂を含む封止用材料を用いて封止する手法が主流となっている。封止用材料としては、エポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性にバランスがとれているためである。
【0003】
COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等のベアチップ実装した電子部品装置においては、アンダーフィル材が封止材として広く使用されている。
また、半導体素子等の電子部品をセラミック、ガラスエポキシ樹脂、ガラスイミド樹脂、ポリイミドフィルム等を基板とする配線基板上に直接バンプ接続してなる電子部品装置(フリップチップ)では、バンプ接続した電子部品と配線基板との間隙(ギャップ)を充填するアンダーフィル材として、エポキシ樹脂組成物が使用されている。アンダーフィル材は電子部品を温湿度及び機械的な外力から保護するために重要な役割を果たしている。
【0004】
ここで、耐湿接着力、低応力性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれにより封止された素子を備えた信頼性(耐湿性、耐熱衝撃性)の高い電子部品装置を提供するため、(A)液状エポキシ樹脂、(B)液状芳香族アミンを含む硬化剤、(C)ゴム粒子及び(D)無機充填剤を含有してなる封止用エポキシ樹脂組成物、並びにこの封止用エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-270976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体技術の進歩は著しく、半導体及び配線基板の大型化並びに配線基板の薄型化が進んでいる。そのため、バンプ接続を行うフリップチップ方式では、アンダーフィル材の硬化物のリフロー温度における弾性率が高いとバンプの膨張にアンダーフィル材の硬化物が追随できず、配線基板上に形成されたソルダーレジストに応力が集中しやすい。ソルダーレジストに応力が集中することで、リフローの際のバンプの膨張に起因して配線基板上のソルダーレジストにクラックが発生する場合がある。
アンダーフィル材の硬化物の弾性率はアンダーフィル材に含まれる無機充填剤を減量することで低くすることができるが、無機充填剤を減量しすぎると熱膨張係数が増大し、温度サイクル試験においてアンダーフィル材の硬化物の膨張、収縮等に起因した不具合を起こすことがある。
【0007】
以上のように、半導体技術の進歩とともにアンダーフィル材には種々の課題の解決が要求されている。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性に優れるアンダーフィル材、並びにこれにより封止された信頼性の高い電子部品装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アンダーフィル材の組成を、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含むものとし、硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とし、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とすることで上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下に関する。
<1> (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含み、
硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であるアンダーフィル材。
<2> 硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度が、60℃~150℃である、<1>に記載のアンダーフィル材。
<3> 硬化物としたときの、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~10GPaである、<1>又は<2>に記載のアンダーフィル材。
<4> さらに(D)可撓化剤を含有する、<1>~<3>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<5> さらに(E)界面活性剤を含有する、<1>~<4>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<6> さらに(F)イオントラップ剤を含有する、<1>~<5>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<7> さらに(G)硬化促進剤を含有する、<1>~<6>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<8> さらに(H)カップリング剤を含有する、<1>~<7>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<9> さらに(I)酸化防止剤を含有する、<1>~<8>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<10> さらに(J)有機溶剤を含有し、前記有機溶剤の含有率が10質量%以下である、<1>~<9>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<11> 前記(B)硬化剤が、芳香族アミン化合物である、<1>~<10>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<12> 配線基板と、
前記配線基板上に配置され、前記配線基板と接続部を介して電気的に接続される電子部品と、
少なくとも、前記配線基板と前記電子部品との接続部を封止する<1>~<11>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材の硬化物と、
を備える電子部品装置。
<13> 前記接続部が鉛を含まない、<12>に記載の電子部品装置。
<14> 前記接続部が銅を含む、<12>又は<13>に記載の電子部品装置。
<15> 電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法であって、
前記電子部品における前記配線基板と対向する側の面及び前記配線基板における前記電子部品と対向する側の面の少なくとも一方の面に、<1>~<11>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材を供給する供給工程と、
前記電子部品と前記配線基板とを前記接続部を介して接続し、かつ前記アンダーフィル材を硬化する接続工程と、を有する電子部品装置の製造方法。
<16> 電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法であって、
接続された前記電子部品と前記配線基板との隙間に<1>~<11>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材を充填する充填工程と、
前記アンダーフィル材を硬化させる硬化工程と、を有する電子部品装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性に優れるアンダーフィル材、並びにこれにより封止された信頼性の高い電子部品装置及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0012】
<アンダーフィル材>
本開示のアンダーフィル材は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含み、硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であるものである。
【0013】
以下に本開示のアンダーフィル材を構成する各成分について説明する。
【0014】
((A)エポキシ樹脂)
本開示で用いる(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に1個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、アンダーフィル材に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。
本開示で使用されるエポキシ樹脂の種類は特に限定されるものではない。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA、ナフタレンジオール、アルキルジオール等とエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロロヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、アミノフェノール、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸により酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、流動性の観点からはグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の1種である液状ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性、接着性及び流動性の観点から液状グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0015】
上記した2種のエポキシ樹脂は、いずれかを単独で用いても2種を組み合わせて用いてもよいが、その配合率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して合わせて20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
また、本開示のアンダーフィル材には、本開示の効果が達成される範囲内であれば固形エポキシ樹脂を併用することもできる。アンダーフィル材の流動性の観点から、併用する固形エポキシ樹脂はエポキシ樹脂全量に対して20質量%以下とすることが好ましい。
【0016】
アンダーフィル材を硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上とすることがより好ましい。
アンダーフィル材を硬化物としたときの、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましく、60質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0017】
なお、液状エポキシ樹脂とは、常温(25℃)において液状のエポキシ樹脂であることを意味する。具体的には、25℃において、E型粘度計で測定される粘度が1000Pa・s以下であることを意味する。上記粘度は、具体的には、E型粘度計EHD型(コーン角度3°、コーン直径28mm)を用いて、測定温度:25℃、サンプル容量:0.7ml、以下を参考に回転数をサンプルの想定される粘度に合わせて設定の上、測定開始から1分経過後の値を測定値とする。
(1)想定される粘度が100Pa・s~1000Pa・sの場合:回転数0.5回転/分
(2)想定される粘度が100Pa・s未満の場合:回転数5回転/分
また、固形エポキシ樹脂とは常温(25℃)において固体状のエポキシ樹脂であることを意味する。
【0018】
エポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量はIC等の素子上のアルミ配線の腐食に係わるため少ない方が好ましく、耐湿性の優れたアンダーフィル材を得るためには、エポキシ樹脂の加水分解性塩素量は500ppm以下であることが好ましい。ここで、加水分解性塩素量とは試料のエポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1N-KOHメタノール溶液5mlを添加して30分間リフラックス後、電位差滴定により求めた値を尺度としたものである。
【0019】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、粘度調整の観点から、90g/eq~450g/eqであることが好ましく、90g/eq~350g/eqであることがより好ましく、90g/eq~250g/eqであることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、秤量したエポキシ樹脂をメチルエチルケトン等の溶剤に溶解させ、酢酸と臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加えた後、過塩素酸酢酸標準液によって電位差滴定することにより測定される。この滴定には、指示薬を用いてもよい。
【0020】
エポキシ樹脂の含有率は特に限定されるものではなく、例えば、アンダーフィル材の固形分に占める割合として、10質量%~50質量%であることが好ましく、15質量%~45質量%であることがより好ましく、20質量%~40質量%であることがさらに好ましい。
本開示において、アンダーフィル材の「固形分」とは、アンダーフィル材から有機溶剤等の揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。
【0021】
((B)硬化剤)
本開示で用いる(B)成分の硬化剤は特に制限はない。
硬化剤として、芳香環を有するアミン(芳香族アミン化合物)を例示すれば、ジエチルトルエンジアミン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
これらの芳香族アミン化合物は、市販品として、エピキュア-W、エピキュア-Z(三菱化学株式会社製商品名)、カヤハードA-A、カヤハードA-B、カヤハードA-S(日本化薬株式会社製商品名)、トートアミンHM-205(新日鉄住金化学株式会社製商品名)、アデカハードナーEH-101(株式会社ADEKA製商品名)、エポミックQ-640、エポミックQ-643(三井化学株式会社製商品名)、DETDA80(Lonza社製商品名)等が入手可能で、これらは単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
硬化剤として芳香族アミン化合物を用いる場合、芳香族アミン化合物としては、アンダーフィル材の保存安定性の観点からは、例えば、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンが好ましい。ジエチルトルエンジアミンとしては、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン及び3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンが挙げられる。硬化剤として芳香族アミン化合物を用いる場合、硬化剤としては、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン又は3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンを50質量%以上含むものが好ましい。
【0023】
硬化剤として、酸無水物を例示すれば、無水フタル酸、無水マレイン酸、メチルハイミック酸無水物、ハイミック酸無水物、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、クロレンド酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、水素化メチルナジック酸無水物、無水マレイン酸とジエン化合物からディールス・アルダー反応で得られるトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸等の各種酸無水物が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
硬化剤として酸無水物を用いる場合、酸無水物としては、アンダーフィル材の低粘度化の観点からは、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。硬化剤として酸無水物を用いる場合、硬化剤としては、テトラヒドロ無水フタル酸又はヘキサヒドロ無水フタル酸を50質量%以上含むものが好ましい。
【0025】
また、アンダーフィル材には、本開示の効果が達成される範囲内であれば芳香族アミン化合物及び酸無水物以外に、フェノール性硬化剤等のアンダーフィル材で一般に使用されている硬化剤を併用することができる。
硬化剤としては、硬化物が加水分解しにくいことから耐湿信頼性が良好な、芳香族アミン化合物が好ましい。
【0026】
アンダーフィル材に含まれるエポキシ樹脂の当量数と硬化剤の当量数との当量比(硬化剤の当量数/エポキシ樹脂の当量数)は、0.7~1.3であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましく、0.9~1.1であることがさらに好ましい。比が0.7以上であれば、硬化剤が不足することがなく、反応に与らないエポキシ樹脂が減少し、信頼性の低下が生じにくい傾向にある。一方、比が1.3以下であれば、余剰の硬化剤が減少するためガラス転移温度が高くなり過ぎず、硬化物の高温での弾性率が高くなり過ぎることがないため、常温及び高温での反りが生じにくい傾向にある。
【0027】
((C)無機充填剤)
本開示で使用される(C)成分の無機充填剤としては、球状シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。
さらに、難燃効果のある無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アンダーフィル材の微細間隙への流動性及び浸透性の観点からは球状シリカがより好ましい。
【0028】
無機充填剤の平均粒径は、特に球状シリカの場合、0.05μm~20μmの範囲が好ましく、0.2μm~10μmの範囲がより好ましい。平均粒径が0.05μm以上であれば、液状樹脂への分散性が向上して粘度が高くなりにくく、アンダーフィル材の流動特性が向上する傾向にある。平均粒径が20μm以下であれば、沈降を起こしにくい傾向にあり、アンダーフィル材としての微細間隙への浸透性及び流動性が向上してボイド及びアンダーフィル材の未充填を招きにくくなる傾向にある。
ここで、平均粒径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する粒子径であり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0029】
無機充填剤の含有率は、アンダーフィル材の固形分に占める割合として、20質量%~90質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは30質量%~85質量%であり、さらに好ましくは40質量%~80質量%である。含有率が20質量%以上であれば、熱膨張係数が低下しにくく、アンダーフィル材の硬化物の耐温度サイクル性がより優れる傾向にあり、90質量%以下であれば、アンダーフィル材の粘度が上昇しにくく、流動性、浸透性及びディスペンス性の低下を招きにくい傾向にある。
【0030】
((D)可撓化剤)
本開示のアンダーフィル材には、耐熱衝撃性の向上、半導体素子等の電子部品への応力の低減等の観点から各種可撓化剤を配合することができる。
可撓化剤としては特に制限はないが、ゴム粒子が好ましい。ゴム粒子としては、シリコーンゴムのゴム粒子及びシリコーンゴム以外の合成ゴム(以下、単に「合成ゴム」と称することがある)のゴム粒子が挙げられる。
合成ゴムのゴム粒子を例示すれば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(AR)等のゴム粒子が挙げられる。なかでも耐熱性及び耐湿性の観点からアクリルゴムのゴム粒子が好ましく、コアシェル型アクリル系重合体、すなわちコアシェル型アクリルゴム粒子がより好ましい。
【0031】
また、シリコーンゴムのゴム粒子を例示すれば、直鎖状のポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のポリオルガノシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子、シリコーンゴム粒子の表面をシリコーンレジンで被覆したもの、乳化重合等で得られる固形シリコーン粒子のコアとアクリル樹脂等の重合体のシェルとを有するコア-シェル重合体粒子、ジメチル型固形シリコーンゴム粒子の表面がエポキシ基で修飾された球状のシリコーン粒子などが挙げられる。これらのシリコーンゴム粒子の形状は無定形であっても球形であっても使用することができる。アンダーフィル材の成形性に関わる粘度を低く抑えるためには球形のものを用いることが好ましい。これらのシリコーンゴム粒子は東レ・ダウコーニング株式会社、信越化学工業株式会社等から市販品が入手可能である。
【0032】
これらの可撓化剤の平均粒径は、アンダーフィル材を均一に変性するためには小さい方が望ましく、平均粒径が0.05μm~10μmの範囲であることが好ましく、0.1μm~5μmの範囲であることがより好ましい。平均粒径が0.05μm以上であれば、アンダーフィル材への分散性に優れる傾向にあり、10μm以下であれば、応力が低下する傾向にあり、さらにアンダーフィル材としての微細間隙への浸透性及び流動性が向上しボイド及びアンダーフィル材の未充填を招きにくくなる傾向にある。
【0033】
可撓化剤の含有率は、エポキシ樹脂全体に対して1質量%~30質量%の範囲に設定されるのが好ましく、より好ましくは2質量%~20質量%である。可撓化剤の含有率が1質量%以上であれば応力の低下する効果が向上する傾向にあり、30質量%以下であればアンダーフィル材の粘度が上昇しにくく、成形性(流動特性等)に優れる傾向にある。
【0034】
((E)界面活性剤)
本開示のアンダーフィル材には、成形の際のボイドの発生の低減及び各種被着体への濡れ性の向上による接着力の向上の観点から、各種界面活性剤を配合することができる。
界面活性剤としては、特に制限はないが、非イオン性の界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン系界面活性剤、アルキルアルカノールアミド系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ポリアクリル系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの界面活性剤はビックケミー・ジャパン株式会社、花王株式会社等から市販品が入手可能である。
【0035】
また、界面活性剤としてシリコーン変性エポキシ樹脂を添加することができる。シリコーン変性エポキシ樹脂はエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂との反応物として得ることができる。シリコーン変性エポキシ樹脂は、常温(25℃)で液状であることが好ましい。ここでエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンを例示すれば、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基等を1分子中に1個以上有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサンなどが挙げられる。該オルガノシロキサンの重量平均分子量としては、500~5000の範囲が好ましい。オルガノシロキサンの重量平均分子量が500以上であれば、エポキシ樹脂等との相溶性が向上しすぎることがなく添加剤としての効果が発揮されやすい傾向にある。オルガノシロキサンの重量平均分子量が5000以下であれば、エポキシ樹脂等に非相溶となりにくいため、アンダーフィル材を硬化する際にシリコーン変性エポキシ樹脂がアンダーフィル材から分離又はしみ出しが生じにくく、接着性又は外観を損なう問題を生じにくい傾向にある。
オルガノシロキサンの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定される分子量分布から標準ポリスチレンの検量線を使用して換算して求められる。
【0036】
シリコーン変性エポキシ樹脂を得るためのエポキシ樹脂としてはアンダーフィル材の樹脂系に相溶するものであれば特に制限は無く、アンダーフィル材に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロロヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸により酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、常温(25℃)で液状のものが好ましい。
【0037】
界面活性剤の含有率は、エポキシ樹脂全体に対して、0.01質量%~1.5質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%以下がより好ましい。界面活性剤の含有率が0.01質量%以上であれば、十分な添加効果が得られやすい傾向にあり、1.5質量%以下であれば、アンダーフィル材を硬化する際に硬化物表面から界面活性剤の染み出しが発生しにくく、接着力の低下が生じにくい傾向にある。
【0038】
((F)イオントラップ剤)
本開示のアンダーフィル材には、電子部品装置へ適用する際における充填性及び流動性を損なわない範囲で、必要に応じてイオントラップ剤を耐マイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から配合することができる。
イオントラップ剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができ、下記組成式(I)で表されるハイドロタルサイト又は下記組成式(II)で表されるビスマスの含水酸化物が好ましい。
【0039】
Mg1-XAl(OH)(COX/2・mHO (I)
(組成式(I)中、0<X≦0.5であり、mは正の数を表す。)
BiO(OH)(NO (II)
(組成式(II)中、a、b及びcは各々、0.9≦a≦1.1、0.6≦b≦0.8及び0.2≦c≦0.4である。)
【0040】
イオントラップ剤の含有率は、エポキシ樹脂全体に対して0.1質量%~3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%~1.5質量%である。イオントラップ剤の平均粒径は、0.1μm~3.0μmであることが好ましく、最大粒径は10μm以下であることが好ましい。
なお、上記組成式(I)で表される化合物は市販品として協和化学工業株式会社製商品名DHT-4Aとして入手可能である。また、上記組成式(II)で表される化合物は市販品としてIXE-500(東亞合成株式会社製商品名)として入手可能である。
また必要に応じて、イオントラップ剤としてその他の陰イオン交換体を配合することもできる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。イオントラップ剤としては、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等の含水酸化物が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
((G)硬化促進剤)
本開示のアンダーフィル材には、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進する観点から、各種硬化促進剤を配合することができる。
硬化促進剤は、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進するものであれば特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。硬化促進剤としては、1,8-ジアザ-ビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7、1,5-ジアザ-ビシクロ(4.3.0)ノネン、5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザ-ビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等のアルキルジアリールホスフィン、トリフェニルホスフィン、アルキル基置換トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィンなどの有機ホスフィン類、これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、及びこれらの誘導体、さらには2-エチル-4-メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N-メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、潜在性を有する硬化促進剤として、常温(25℃)で固体のアミノ基を有する化合物をコアとして、常温(25℃)で固体のエポキシ化合物のシェルを被覆してなるコア-シェル粒子が挙げられ、市販品としてアミキュア(味の素株式会社製商品名)、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させて潜在性を付与したノバキュア(旭化成株式会社製商品名)等を使用できる。
【0042】
なかでも、硬化促進作用と信頼性のバランスの観点からイミダゾール誘導体が好ましく、フェニル基及び水酸基を置換基として有するイミダゾール誘導体である2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール及びマイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させて潜在性を付与したノバキュア(旭化成株式会社製商品名)がより好ましく、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0043】
硬化促進剤の含有率は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではないが、全エポキシ樹脂の質量に対して0.2質量%~5質量%の範囲が好ましく、0.5質量%~3質量%の範囲がより好ましい。硬化促進剤の含有率が0.2質量%以上であれば、硬化促進剤の添加効果が十分に発揮され、結果としてアンダーフィル材を硬化する際のボイドの発生を抑制できるようになるとともに、反り低減効果も十分になる傾向にあり、5質量%以下であれば保存安定性に優れる傾向にある。
【0044】
((H)カップリング剤)
本開示のアンダーフィル材には、エポキシ樹脂と無機充填剤、又はエポキシ樹脂と電子部品装置の構成部材との界面での接着を強固にする目的で、カップリング剤を配合することができる。カップリング剤には特に制限はなく、従来から公知のものを用いることができる。カップリング剤としては、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、ジルコニウム系化合物などが挙げられる。
これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらを単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
カップリング剤の含有率は、エポキシ樹脂全体に対して0.1質量%~10質量%であることが好ましく、より好ましくは1質量%~5質量%である。
【0046】
((I)酸化防止剤)
本開示のアンダーフィル材には酸化防止剤を配合することができる。酸化防止剤としては従来公知のものを用いることができる。
フェノール化合物系酸化防止剤としては、フェノール核のオルト位に少なくとも1つのアルキル基を有する化合物として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4,4’-ブチリデンビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、ビス[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル(エトキシ)ホスフィナート]カルシウム、2,4-1-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル―4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ジエチル[〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル]ホスホネート、2,5,7,8-テトラメチル-2-(4’,8’,12’-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
有機硫黄化合物系酸化防止剤としては、ジラウリル―3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル―3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル―3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル―3,3’-チオジプロピオネート、2-メルカプトベンズイミダゾール、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、2,4-1-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
アミン化合物系酸化防止剤としては、N,N’-ジアリル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル―p-フェニレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
アミン化合物系酸化防止剤のうち、ジシクロヘキシルアミンとしては、新日本理化株式会社製商品名D-CHA-T等が市販品として入手可能であり、その誘導体としては亜硝酸ジシクロヘキシルアミンアンモニウム、N,N-ジ(3-メチル-シクロヘキシル)アミン、N,N-ジ(2-メトキシ-シクロヘキシル)アミン、N,N-ジ(4-ブロモ-シクロヘキシル)アミン等が挙げられる。
リン化合物系酸化防止剤としては、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、ビス[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル(エトキシ)ホスフィナート]カルシウム、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、2-[〔2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエ-テル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン-6-イル〕オキシ]-N,N-ビス[2-{〔2,4,8,10-テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン-6-イル〕オキシ}-エチル]エタナミン、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、ジエチル[〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル]ホスホネート等が挙げられる。
酸化防止剤は、これらを単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、酸化防止剤の具体例としてフェノール性水酸基に加え、リン原子、硫黄原子及びアミンのいずれかを少なくとも1つ同一分子中に含む化合物が存在するが、これらの化合物は重複して挙げる場合がある。
【0047】
酸化防止剤の含有率は、エポキシ樹脂全体に対して0.1質量%~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%~5質量%である。
【0048】
((J)有機溶剤)
本開示のアンダーフィル材には、低粘度化のために必要に応じて有機溶剤を配合することができる。特に、固体のエポキシ樹脂及び硬化剤を用いる場合には、液状のアンダーフィル材を得るために、有機溶剤を配合することが好ましい。
有機溶剤としては、特に制限はなく、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトン系溶剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、アンダーフィル材を硬化する際の急激な揮発による気泡形成を避ける観点からは沸点が170℃以上の有機溶剤が好ましい。
【0049】
有機溶剤の配合は、アンダーフィル材を硬化する際に気泡を形成しない量であれば特に制限はないが、アンダーフィル材全体に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
(その他の添加剤)
本開示のアンダーフィル材には、その他の添加剤として、染料、カーボンブラック等の着色剤、希釈剤、レベリング剤、消泡剤などを必要に応じて配合することができる。
【0051】
(アンダーフィル材の物性)
アンダーフィル材の粘度は特に制限されない。中でも高流動性の観点から、25℃において1Pa・s~100Pa・sであることが好ましく、3Pa・s~70Pa・sであることがより好ましい。なお、アンダーフィル材の粘度は、E型粘度計(コーン角3°、回転数10回転/分)を用いて、25℃において測定される。
【0052】
また、100℃~120℃付近で数十μm~数百μmの狭ギャップ間にアンダーフィル材を充填する際の充填のしやすさの指標として、110℃の粘度が0.3Pa・s以下であることが好ましく、0.2Pa・s以下であることがより好ましい。なお、110℃でのアンダーフィル材の粘度は、レオメーターAR2000(TAインストルメント製、アルミコーン40mm、せん断速度32.5/sec)により測定される。
【0053】
また、アンダーフィル材は、E型粘度計を用いて25℃で測定される回転数が1.5回転/分における粘度と回転数が10回転/分における粘度との比である揺変指数[(1.5回転/分における粘度)/(10回転/分における粘度)]は、0.3~1.1であることが好ましく、0.4~1.0であることがより好ましい。揺変指数が上記範囲であるとフィレット形成性がより向上する。なお、アンダーフィル材の粘度及び揺変指数は、エポキシ樹脂の組成、無機充填剤の含有率等を適宜選択することで所望の範囲とすることができる。
【0054】
(硬化物の物性)
本開示において、TMAによるガラス転移温度及び熱膨張係数の測定並びにDMAによる貯蔵弾性率の測定に供されるアンダーフィル材の硬化物は、アンダーフィル材を150℃で2時間加熱して得られたものである。
【0055】
アンダーフィル材を硬化物としたときのTMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数は30ppm/℃以下であり、28ppm/℃以下であることが好ましく、26ppm/℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であれば、リフローの際のバンプクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性が向上する。TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数は15ppm/℃以上であってもよい。
アンダーフィル材を硬化物としたときのDMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率は0.10GPa以下であり、0.09GPa以下であることが好ましく、0.08GPa以下であることがより好ましく、0.07GPa以下であることがさらに好ましい。240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であれば、リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性が向上する。DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率は0.02GPa以上であってもよい。
アンダーフィル材を硬化物としたときのTMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度は、60℃~150℃が好ましく、70℃~140℃がより好ましく、70℃~130℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度が60℃以上であれば、高温でのバンプの保護性が高く断線が生じにくくなる傾向にある。またガラス転移温度が150℃以下であると常温(25℃)での反りが大きくなりにくい傾向にある。
アンダーフィル材を硬化物としたときのDMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率は、5GPa~10GPaであることが好ましく、5.5GPa~9.5GPaであることがより好ましく、6GPa~9GPaであることがさらに好ましい。25℃における貯蔵弾性率が5GPa以上であれば、高温でのバンプの保護性が高く断線が生じにくくなる傾向にある。また25℃における弾性率が10GPa以下であると常温(25℃)での反りが大きくなりにくい傾向にある。
【0056】
TMAの測定は、例えば、ティーエーインスツルメント社製TA4000SAを用いて測定することができる。測定条件としては、昇温条件を5℃/分とすることができる。
DMAの測定は、例えば、ティーエーインスツルメント社製Q800を用いて測定することができる。測定条件としては、周波数を1Hzとし、昇温条件を3℃/分とすることができる。
【0057】
(アンダーフィル材の製造)
本開示のアンダーフィル材は、上記各種成分を均一に分散し混合できるのであれば、いかなる手法を用いても製造できる。一般的な手法として、所定の配合率の成分を秤量し、らいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等を用いて混合し、混練し、必要に応じて脱泡することによってアンダーフィル材を得ることができる。
【0058】
<電子部品装置>
本開示の電子部品装置は、配線基板と、前記配線基板上に配置され、前記配線基板と接続部を介して電気的に接続される電子部品と、少なくとも、前記配線基板と前記電子部品との接続部を封止する本開示のアンダーフィル材の硬化物と、を備える。本開示の電子部品装置は、本開示のアンダーフィル材により少なくとも電子部品と配線基板との接続部を封止して得ることができる。電子部品がアンダーフィル材によって封止されることで、本開示の電子部品装置は、耐温度サイクル性等の信頼性に優れる。
電子部品装置における接続部は、高い導電性を確保するため、銅を含む構成であることが好ましい。
【0059】
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド配線板、フレキシブル配線板、ガラス、シリコンウエハ等の配線基板に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を搭載し、必要な部分を本開示のアンダーフィル材で封止して得られる電子部品装置が挙げられる。
特に、リジッド配線板、フレキシブル配線板又はガラス上に形成した配線に、半導体素子をバンプ接続によりフリップチップボンディングした半導体装置を、本開示のアンダーフィル材により封止する態様であることが好ましい。フリップチップボンディングした半導体装置の具体例としては、フリップチップBGA(Ball Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、COF(Chip On Film)等の半導体装置が挙げられる。
【0060】
本開示のアンダーフィル材は信頼性に優れたフリップチップ用のアンダーフィル材として好適である。本開示のアンダーフィル材が特に好適に適用されるフリップチップの分野としては、配線基板と半導体素子を接続するバンプの材質が従来の鉛含有はんだではなく、Sn-Ag-Cu系等の鉛フリーはんだを用いたフリップチップ半導体部品の分野である。
電子部品装置における接続部は、鉛を含まない構成であってもよい。従来の鉛はんだと比較して物性的に脆い鉛フリーはんだを用いてバンプ接続をしたフリップチップに対しても、本開示のアンダーフィル材は良好な信頼性を維持できる。さらには、半導体素子のサイズが長い方の辺で2mm以上である素子に対して好適であり、電子部品装置を構成する配線基板と半導体素子のバンプ接続面の距離が200μm以下であるフリップチップ接続に対しても良好な流動性と充填性を示し、耐湿性、耐熱衝撃性等の信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。また、近年半導体素子の高速化に伴い低誘電率の層間絶縁膜が半導体素子に形成されている場合があり、これら低誘電率の絶縁体は機械強度が弱く、外部からの応力で破壊する故障が発生しやすい。この傾向は半導体素子が大きくなる程顕著になり、アンダーフィル材による応力の低減が求められている。本開示のアンダーフィル材は、半導体素子のサイズが長い方の辺で2mm以上であり、誘電率が3.0以下の層間絶縁膜を有する半導体素子を搭載するフリップチップ半導体装置に対しても優れた信頼性を提供できる。
【0061】
<電子部品装置の製造方法>
本開示のアンダーフィル材を用いて電子部品装置を封止する方法としては、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
本開示のアンダーフィル材は、電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造に好適に用いられる。
例えば、本開示の第1の電子部品装置の製造方法は、電子部品における配線基板と対向する側の面及び配線基板における電子部品と対向する側の面の少なくとも一方の面に、本開示のアンダーフィル材を供給する供給工程と、電子部品と配線基板とを接続部を介して接続し、かつアンダーフィル材を硬化する接続工程と、を有する。第1の電子部品装置の製造方法では、本開示のアンダーフィル材は、先供給方式のアンダーフィル材として用いることができる。
また、本開示の第2の電子部品装置の製造方法は、接続された電子部品と配線基板との隙間に本開示のアンダーフィル材を充填する充填工程と、アンダーフィル材を硬化させる硬化工程と、を有する。第2の電子部品装置の製造方法では、本開示のアンダーフィル材は、後供給方式のアンダーフィル材として用いることができる。
【実施例0062】
次に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例において行ったアンダーフィル材の諸特性及び信頼性の評価方法を以下にまとめて示す。
【0064】
評価に用いた半導体素子は、縦が25mm、横が25mm、厚みが725μmであり、バンプは高さ30μm銅+15μm鉛フリーはんだであり、バンプピッチは150μmでバンプの個数は25921個である。配線基板は、縦が55mm、横が55mm、厚みが1mmのE-705(日立化成株式会社製商品名)を用いた。ソルダーレジストは厚さ15μmのAUS703(太陽インキ製造株式会社製商品名)とした。
【0065】
電子部品装置は、半導体素子と配線基板とがバンプを介して電気的に接続された状態の半導体素子と配線基板との隙間にアンダーフィル材をディスペンス方式で充填し、150℃で2時間硬化することで作製した。また、各種試験片の硬化条件も同様な条件で行った。
【0066】
(1)ガラス転移温度
アンダーフィル材の硬化物についてTMA(熱機械分析)をティーエーインスツルメント社製TA4000SAを用いて行い、得られたチャートの変曲点前後における接線の交点をガラス転移温度とした。昇温速度は5℃/分とした。
(2)熱膨張係数
アンダーフィル材の硬化物についてTMA(熱機械分析)をティーエーインスツルメント社製TA4000SAを用いて行い、得られたチャートの10℃と30℃の2点を結んだ傾きを試験片長さで割った値を熱膨張係数とした。昇温速度は5℃/分とした。
(3)貯蔵弾性率
アンダーフィル材の硬化物についてDMA(動的粘弾性測定)をティーエーインスツルメント社製Q800)を用いて行い、測定結果から240℃の貯蔵弾性率を得た。周波数は1Hzとし、昇温速度は3℃/分とした。
(4)ソルダーレジストクラック
240℃以上の温度で1分以上の熱履歴を3回経た電子部品装置を、バンプ部が観察できるよう切断し、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡(装置名SU1510)でソルダーレジストクラックの有無を観察した。
(5)温度サイクル
-55℃/10分と125℃/10分を1サイクルとして温度サイクル試験を行った後の電子部品装置を、インサイト株式会社製超音波顕微鏡(装置名IS-350)を用いて観察し、アンダーフィル材の硬化物の剥離の有無を観察した。表2における「>1000」は、1000サイクル終了の時点では剥離が生じなかったことを示す。また、<500は、500サイクル終了の時点で剥離が生じたことを示す。
【0067】
(実施例1~5及び比較例1、2)
(A)成分のエポキシ樹脂として、ビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ当量が160g/eqの液状ジエポキシ樹脂(エポキシ樹脂1)、アミノフェノールをエポキシ化して得られるエポキシ当量が95g/eqの3官能液状エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2)、ナフタレンジオールをエポキシ化して得られるエポキシ当量が140g/eqのジエポキシ樹脂(エポキシ樹脂3)及びアルキルジオールをエポキシ化して得られるエポキシ当量が128g/eqの液状ジエポキシ樹脂(エポキシ樹脂4)を用いた。
(B)成分の硬化剤として活性水素当量が45g/eqの3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミンを用いた。
(C)成分の無機充填剤として平均粒径が1μmの球状シリカを用いた。
(D)成分の可撓化剤としてジメチル型固形シリコーンゴム粒子の表面がエポキシ基で修飾された平均粒径が2μmの球状のシリコーン粒子を用いた。
(E)成分の界面活性剤として重量平均分子量が1000であるエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとビスフェノールF型エポキシ樹脂との反応物であるシリコーン変性エポキシ樹脂を用いた。
(F)成分のイオントラップ剤としてビスマス系イオントラップ剤(東亞合成株式会社製商品名IXE-500)を用いた。
(G)成分の硬化促進剤として2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールを用いた。
(H)成分のカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた。
(I)成分の酸化防止剤として3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを用いた。
(J)成分の有機溶剤としてγ-ブチロラクトンを用いた。
着色剤としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA‐100)を用いた。
上記成分の各々を下記表1に示した組成で配合し、三本ロール及び減圧可能ならいかい機にて混練して分散し、実施例1~5及び比較例1、2のアンダーフィル材を作製した。
【0068】
【表1】
【0069】
なお、表1における各成分の配合量の単位は質量部である。また、表1中「当量比」は、「硬化剤の当量数(活性水素の当量数)/エポキシ樹脂の当量数(エポキシ基の当量数)」を表す。
【0070】
各種評価結果をまとめて下記表2に示した。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例1~5においては、TMAで測定したガラス転移温度が60℃~150℃、熱膨張係数が30ppm/℃以下、DMAで測定した25℃における貯蔵弾性率が5GPa~10GPa、そして240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下となった。
240℃における貯蔵弾性率が0.40GPaの比較例1は、耐温度サイクル性に優れるものの、ソルダーレジストクラックが発生した。高温での貯蔵弾性率が高いとリフロー温度においてはんだの膨張をアンダーフィル材の硬化物が吸収できず、ソルダーレジストに応力がかかったためと考えられる。
熱膨張係数が36ppm/℃の比較例2は、ソルダーレジストクラックは発現しなかったものの、温度サイクルが500サイクルで剥離が観察された。熱膨張係数が大きいと温度サイクルによるアンダーフィル材の硬化物の膨張及び収縮量が大きく、収縮時にチップ界面とアンダーフィル材が剥離したためと考えられる。