(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133529
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ブレード破損検出装置及びブレード破損検出方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/12 20060101AFI20220907BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220907BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20220907BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B24B49/12
H01L21/78 F
B24B27/06 M
B23Q17/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032253
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】武内 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】發地 貴大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 汐里
(72)【発明者】
【氏名】室屋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C029EE20
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA09
3C034CA22
3C034DD20
3C158AA03
3C158AC02
3C158BA09
3C158BB08
3C158CB03
3C158DA17
5F063AA23
5F063AA37
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063DD20
5F063DE11
5F063DE17
5F063DE23
5F063DE32
(57)【要約】
【課題】ワークの加工効率を向上させることができるブレード破損検出装置及びブレード破損検出方法を提供する。
【解決手段】光検出ユニット50で受光された光量を高分解能光量判定部であるA/Dコンバータ88で判定し、A/Dコンバータ88の判定結果に基づいてブレード12の刃先12Aに発生する欠けの形状を検出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードに向けて光を投光する投光部、及び前記ブレードを挟んで前記投光部に対向して設けられ前記投光部から投光された前記光を受光する受光部を有する光検出ユニットと、
前記受光部で受光された光量を高分解能に判定可能な高分解能光量判定部を含み、前記高分解能光量判定部の判定結果に基づいて、前記ブレードの刃先に発生する欠けの形状を検出する欠け検出部と、
を備える、ブレード破損検出装置。
【請求項2】
前記光は前記ブレードの径方向に細長い断面形状を有する、請求項1に記載のブレード破損検出装置。
【請求項3】
前記欠け検出部の検出結果に基づいて前記ブレードの交換が必要であるか否かを判定する判定部を備える、請求項1又は2に記載のブレード破損検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記欠け検出部によって検出された前記欠けの形状を形状閾値と比較した結果に基づいて、前記ブレードの交換が必要であるか否かを判定する、請求項3に記載のブレード破損検出装置。
【請求項5】
前記欠け検出部は、前記欠けの形状を示す寸法長さとして、前記欠けの前記ブレードの径方向における第1の長さ及び前記ブレードの周方向における第2の長さのうち少なくとも一つの長さを検出する、請求項4に記載のブレード破損検出装置。
【請求項6】
前記欠け検出部は、前記寸法長さとして、前記第1の長さ及び前記第2の長さを検出し、
前記判定部は、前記第1の長さを第1の閾値と比較した結果と、前記第2の長さを第2の閾値と比較した結果とに基づいて、前記ブレードの交換が必要であるか否かを判定する、請求項5に記載のブレード破損検出装置。
【請求項7】
ブレードに向けて光を投光する投光部、及び前記ブレードを挟んで前記投光部に対向して設けられ前記投光部から投光された前記光を受光する受光部を有する光検出ユニットと、
前記受光部で受光された光量を高分解能に判定可能な高分解能光量判定部を含み、前記高分解能光量判定部の判定結果に基づいて、前記ブレードの刃先に発生する欠けの面積を検出する欠け検出部と、
を備える、ブレード破損検出装置。
【請求項8】
前記光は前記ブレードの径方向に細長い断面形状を有する、請求項7に記載のブレード破損検出装置。
【請求項9】
前記欠け検出部の検出結果に基づいて前記ブレードの交換が必要であるか否かを判定する判定部を備える、請求項7又は8に記載のブレード破損検出装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記欠け検出部によって検出された前記欠けの面積を面積閾値と比較した結果に基づいて、前記ブレードの交換が必要であるか否かを判定する、請求項9に記載のブレード破損検出装置。
【請求項11】
ブレードを挟んで対向する一方側及び他方側のうち、前記一方側から光を投光し、前記他方側で前記光を受光する光検出ステップと、
前記光検出ステップで受光された光量を高分解能光量判定部で判定し、前記高分解能光量判定部の判定結果に基づいて、前記ブレードの刃先に発生する欠けの形状を検出する欠け検出ステップと、
を備える、ブレード破損検出方法。
【請求項12】
ブレードを挟んで対向する一方側及び他方側のうち、前記一方側から光を投光し、前記他方側で前記光を受光する光検出ステップと、
前記光検出ステップで受光された光量を高分解能光量判定部で判定し、前記高分解能光量判定部の判定結果に基づいて、前記ブレードの刃先に発生する欠けの面積を検出する欠け検出ステップと、
を備える、ブレード破損検出方法。
【請求項13】
前記光は前記ブレードの径方向に細長い断面形状を有する、請求項11又は12に記載のブレード破損検出方法。
【請求項14】
前記欠け検出ステップの検出結果に基づいて前記ブレードの交換が必要であるか否かを判定する判定ステップを備える、請求項11から13のいずれか1項に記載のブレード破損検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシング装置に搭載されたブレードの刃先の欠けを検出するブレード破損検出装置及びブレード破損検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や電子部品が形成された半導体ウェーハ等のワークを個々のチップに分割する装置としてダイシング装置が知られている。このダイシング装置は、スピンドルによって高速に回転されるブレードと、ワークを吸着保持するテーブルと、テーブルとブレードとの相対的位置を変化させるX、Y、Z、θの各移動軸とを備えている。ダイシング装置は、テーブルに吸着保持されると共に各移動軸の動作によって相対移動するワークに対し、高速回転するブレードによって溝入れ加工又は切断加工を行う。
【0003】
このようなダイシング装置では、ワークを加工する際に、ブレードに大きな加工負荷が発生すると、加工中のブレードの刃先が欠ける場合がある。刃先が欠けた状態のブレードで加工を継続すると、確実な加工を行うことができず、またワークにダメージを与える場合がある。
【0004】
このような問題を解消するため、特許文献1に開示されたダイシング装置は、ブレード側面近傍に投光部と受光部とを有するブレード破損検出装置が設けられている。このブレード破損検出装置によれば、受光部の受光領域で受ける光量の変化によりブレードの破損を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のブレード破損検出装置によってブレードの破損(刃先の欠け)が検出された場合、ダイシング装置は、例えば警告灯を点灯させてブレードが破損したことをオペレーターに通報する。オペレーターは、その通報によってダイシング装置を停止してブレードの交換を実施する。
【0007】
一方、ブレードの刃先に発生した欠けの大きさ等によっては、ブレードを交換することなく、そのブレードで加工を継続しても加工精度に影響を与えない場合がある。しかしながら、従来のブレード破損検出装置は、欠けの大きさ等に関係なく刃先に欠けが発生したときにブレードが破損したと判定するため、ブレードを交換する必要がない場合でもダイシング装置を停止せざるを得ず、その結果としてワークの加工効率が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワークの加工効率を向上させることができるブレード破損検出装置及びブレード破損検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のブレード破損検出装置は、ブレードに向けて光を投光する投光部、及びブレードを挟んで投光部に対向して設けられ投光部から投光された光を受光する受光部を有する光検出ユニットと、受光部で受光された光量を高分解能に判定可能な高分解能光量判定部を含み、高分解能光量判定部の判定結果に基づいて、ブレードの刃先に発生する欠けの形状を検出する欠け検出部と、を備える。
【0010】
本発明のブレード破損検出装置の一形態によれば、光はブレードの径方向に細長い断面形状を有することが好ましい。
【0011】
本発明のブレード破損検出装置の一形態によれば、欠け検出部の検出結果に基づいてブレードの交換が必要であるか否かを判定する判定部を備えることが好ましい。
【0012】
本発明のブレード破損検出装置の一形態によれば、判定部は、欠け検出部によって検出された欠けの形状を形状閾値と比較した結果に基づいて、ブレードの交換が必要であるか否かを判定することが好ましい。
【0013】
本発明のブレード破損検出装置の一形態によれば、欠け検出部は、欠けの形状を示す寸法長さとして、欠けのブレードの径方向における第1の長さ及びブレードの周方向における第2の長さのうち少なくとも一つの長さを検出することが好ましい。
【0014】
本発明のブレード破損検出装置の一形態によれば、欠け検出部は、寸法長さとして、第1の長さ及び第2の長さを検出し、判定部は、第1の長さを第1の閾値と比較した結果と、第2の長さを第2の閾値と比較した結果とに基づいて、ブレードの交換が必要であるか否かを判定することが好ましい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のブレード破損検出装置は、ブレードに向けて光を投光する投光部、及びブレードを挟んで投光部に対向して設けられ投光部から投光された光を受光する受光部を有する光検出ユニットと、受光部で受光された光量を高分解能に判定可能な高分解能光量判定部を含み、高分解能光量判定部の判定結果に基づいて、ブレードの刃先に発生する欠けの面積を検出する欠け検出部と、を備える。
【0016】
本発明のブレード破損検出装置の一形態によれば、光はブレードの径方向に細長い断面形状を有することが好ましい。
【0017】
本発明のブレード破損検出装置の一形態によれば、欠け検出部の検出結果に基づいてブレードの交換が必要であるか否かを判定する判定部を備えることが好ましい。
【0018】
本発明のブレード破損検出装置の一形態によれば、判定部は、欠け検出部によって検出された欠けの面積を面積閾値と比較した結果に基づいて、ブレードの交換が必要であるか否かを判定することが好ましい。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明のブレード破損検出方法は、ブレードを挟んで対向する一方側及び他方側のうち、一方側から光を投光し、他方側で光を受光する光検出ステップと、光検出ステップで受光された光量を高分解能光量判定部で判定し、高分解能光量判定部の判定結果に基づいて、ブレードの刃先に発生する欠けの形状を検出する欠け検出ステップと、を備える。
【0020】
本発明のブレード破損検出方法の一形態によれば、ブレードを挟んで対向する一方側及び他方側のうち、一方側から光を投光し、他方側で光を受光する光検出ステップと、光検出ステップで受光された光量を高分解能光量判定部で判定し、高分解能光量判定部の判定結果に基づいて、ブレードの刃先に発生する欠けの面積を検出する欠け検出ステップと、を備えることが好ましい。
【0021】
本発明のブレード破損検出方法の一形態によれば、光はブレードの径方向に細長い断面形状を有することが好ましい。
【0022】
本発明のブレード破損検出方法の一形態によれば、欠け検出ステップの検出結果に基づいてブレードの交換が必要であるか否かを判定する判定ステップを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ワークの加工効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るブレード破損検出装置が搭載されたダイシング装置の全体斜視図である。
【
図3】
図3は、ブレード破損検出装置が設けられたスピンドルの先端部構造を示した斜視図である。
【
図4】
図4は、検出ユニットの構造を模式的に表した説明図である。
【
図5】
図5は、ブレードの刃先に発生した4種類の欠けに対応した各種の出力信号を示した図である。
【
図6】
図6は、ブレード破損検出装置によるブレードの判定方法の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に従って本発明に係るブレード破損検出装置及びブレード破損検出方法の実施形態について説明する。
【0026】
図1は、実施形態に係るブレード破損検出装置が搭載されたダイシング装置10の全体斜視図である。
図1に示すダイシング装置10は、一対のブレード12、12が対向して配置されたツインスピンドルダイサーと称されるダイシング装置である。このダイシング装置10は、先端部にブレード12が装着された高周波モータ内蔵型の一対のスピンドル14、14と、ワークWが載置されてワークWを吸着保持するワークテーブル16と、を有する加工部18を備える。この加工部18は、ワークWとブレード12を相対的に移動させながらワークWをブレード12によって切削加工(ダイシング加工)する。なお、ワークWとしては、シリコン、シリコンカーバイド、若しくはその他の半導体材料を例示でき、又はサファイア、ガラス、石英等の他の材料も例示できる。
【0027】
ダイシング装置10には、ワークWの表面を撮像するカメラ19と、加工済みのワークWをスピン洗浄する洗浄部20と、複数枚のワークWを収納したカセットが載置されるロードポート22と、ワークWを搬送する搬送装置24とがそれぞれ所定の位置に配置される。また、ダイシング装置10には、ダイシング装置10の各部の動作を統括制御する制御部26が内蔵されている。
【0028】
上記の制御部26は、不図示のCPU(central processing unit)を含む各演算処理回路と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリと、キーボード等の入力装置と、表示部46等の出力装置とを備えている。制御部26は、メモリに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることにより、ブレード破損検出装置を含む制御部26の各部の機能が実現される。
【0029】
図2は、加工部18の構造を示す斜視図である。
図2に示す加工部18は、Xテーブル34を備える。Xテーブル34は、Xベース28に設けられた一対のXガイド30、30によってガイドされ、リニアモータ32によって矢印X-Xで示すX方向に駆動される。また、Xテーブル34の上面にはθ方向に回転する回転テーブル36が立設され、この回転テーブル36にワークテーブル16が設けられている。よって、ワークテーブル16は、Xテーブル34によってX方向に移動され、かつ回転テーブル36によってθ方向に回転される。
【0030】
また、加工部18は、Xベース28を跨ぐように門型に構成されたYベース38を備える。Yベース38の壁面には、一対のYテーブル42、42が設けられる。一対のYテーブル42、42は、Yベース38の壁面に固定された一対のYガイド40、40によってガイドされ、図示しないモータと送りねじ装置とからなる駆動装置によって矢印Y-Yで示すY方向に駆動される。
【0031】
Yテーブル42、42には、それぞれZテーブル44、44が設けられる。Zテーブル44、44は、Yテーブル42に設けられた不図示のZガイドにガイドされ、図示しないモータと送りねじ装置とからなる駆動装置によって矢印Z-Zで示すZ方向に駆動される。Zテーブル44、44にはスピンドル14、14が対向した状態で固定され、スピンドル14、14の先端部に装着されたブレード12、12がY方向において対向配置される。
【0032】
上記の加工部18の構成により、ブレード12、12はY方向にインデックス送りされるとともにZ方向に切り込み送りされ、ワークテーブル16はX方向に切削送りされるとともにθ方向に回転される。これらの動作は制御部26(
図1参照)によって制御される。なお、前述のX方向とは水平方向における一つの方向を指し、Y方向とは水平方向においてX方向に直交する方向を指す。また、Z方向とはX方向及びY方向にそれぞれ直交する鉛直方向を指し、θ方向とは鉛直軸を中心軸とする回転方向を指す。
【0033】
図1に戻り、ダイシング装置10は表示部46を有する。表示部46は、制御部26に接続されており、ダイシング加工の結果、ブレード12の欠け等の状態、及び各種のデータ等を表示する。なお、表示部46としてタッチパネル付きディスプレイパネルが採用された場合には、ダイシング装置10のオペレーターはそのタッチパネルを用いて制御部26に加工条件、及びブレード12の状態を判定するための閾値等のデータを入力することができる。
【0034】
ところで、ブレード12によるワークWの切削加工中にブレード12に過剰な負荷がかかった場合、ブレード12の刃先12A(
図3参照)に欠けが発生してワークWの加工品質に影響を与える場合がある。例えば、欠けの深さ又は欠けの長さが所定値以上の場合、ブレード12でワークWを切削しても加工精度が十分に得られない、また、切削加工中にワークWに損傷を与えるという問題が発生する。その一方で、刃先12Aに欠けが発生しているが、その欠けの深さ又は長さが所定値未満の場合、又は部分的に発生した微小な部分損(例えば、深さが1mm以下の欠け)のような場合には、ブレード12を交換することなく、そのブレード12でワークWの切削加工を継続しても加工品質に影響を与えない場合がある。
【0035】
このような事情から、刃先12Aに欠けが発生した場合には、その欠けの状態(欠けの深さ及び長さのうち少なくとも一つ)を検出し、その状態に基づいてブレード12が使用可能であるか、又は交換必要であるかを判定することが、ワークWの加工効率を向上させる観点から好ましい。なお、欠けの深さと長さはそれぞれ欠けの形状を示す寸法長さである。欠けの深さとは、欠けのブレード12の径方向における長さを指し、換言すれば、欠けの縁部のうちブレード12の中心軸Sに最も近い縁部からブレード12の外周端までの長さを指す。この欠けの深さは、本発明の第1の長さに相当する。また、欠けの長さとは、欠けのブレード12の周方向における長さを指し、本発明の第2の長さに相当する。
【0036】
そこで、
図1に示すダイシング装置10には、刃先12A(
図3参照)に発生している欠けを検出してブレード12の状態を判定するためのブレード破損検出装置48(
図3及び
図4参照)が搭載されている。
【0037】
次に、
図3及び
図4を参照して、実施形態に係るブレード破損検出装置48について説明する。
【0038】
図3は、ブレード破損検出装置48の一部を構成する光検出ユニット50が設けられたスピンドル14の先端部構造を示した斜視図である。
図4の4Aは、光検出ユニット50の構造を模式的に示した側面図である。また、同図には、光検出ユニット50の機能ブロック図とブレード破損検出装置48の一部を構成する判定部52の機能ブロック図等がそれぞれ示されている。
図4の4Bは、後述する受光部70とブレード12の刃先12Aとの位置関係を示した説明図である。以下、スピンドル14の先端部構造を説明しつつ、ブレード破損検出装置48について説明する。
【0039】
図3の如く、スピンドル14の先端部にはブレード12を覆うようにホイールカバー54が取り付けられている。ホイールカバー54は、カバー前部56、カバー後部58、ノズルブロック60及びガイドブロック72等によって構成されている。カバー後部58にはホース62が接続されており、ホース62からは切削水が供給され、供給された切削水は、ホイールカバー54に設けられたノズル63から回転中のブレード12に向けて噴射される。また、ノズルブロック60にはホース64が接続されており、ホース64からは冷却水が供給され、供給された冷却水は、ホイールカバー54に設けられた一対のノズル66、66からブレード12によるワークWの加工点に向けて噴射される。
【0040】
光検出ユニット50は、
図4の4Aに示すように、投光部68と受光部70とを有している。また、投光部68は投光領域74を有し、受光部70は受光領域76を有し、投光領域74と受光領域76とは、ブレード12を挟んで対向する一方側及び他方側にY方向に沿って配置されている。また、投光部68と受光部70とは一体化されており、
図3に示すガイドブロック72に対しZ方向に昇降自在に支持されている。更に、光検出ユニット50は、ホイールカバー54に設けられた送り機構53に連結されており、この送り機構53の駆動力によってZ方向に昇降移動される。これにより、投光部68の投光領域74と受光部70の受光領域76とが、ブレード12の回転中心Sに対して一体的に進退移動される。なお、送り機構53としては、送りねじ装置を例示できる。
【0041】
図4の4Aに示すように、投光部68には、他端が光源78に接続されたオプティカルケーブル80が接続されている。オプティカルケーブル80を介して伝送された光源78からの光は、投光部68の投光領域74からブレード12に向けて投光される。
【0042】
一方、受光部70には、他端が光電変換部86に接続されたオプティカルケーブル84が接続されている。投光部68から投光された光は、受光部70の受光領域76で受光され、オプティカルケーブル84を介して光電変換部86に入力される。
【0043】
ここで、投光部68から受光部70に向かって投光される光77A(
図4の4B参照:以下「検査用ビーム77A」とも言う。)は、一例として、ブレード12の径方向に細長い断面形状(検査用ビーム77Aの光軸に直交する方向のビーム断面形状)を有している。このように検査用ビーム77Aをブレード12の径方向に細長い断面形状とすることにより、検出可能な光量のダイナミックレンジを上げることが可能となり、その結果として微小な部分損であっても検出することが可能となるので好ましい。また、検査用ビーム77Aを上記の細長い断面形状とすることにより、受光領域76で受光される光量は、刃先12Aに発生した欠けを検出した瞬間に時間軸に対して急峻に上昇するので、再現性の高い欠けの形状を得ることができる。つまり、検査用ビーム77Aを細長い断面形状とした場合には、時間軸に対する光量推移を高い分解能で検出することができるので好ましい。以上が光検出ユニット50の構成である。
【0044】
次に、光電変換部86に入力された検査用ビーム77Aの一部は、光電変換部86により受光量に応じた電圧の電気信号に変換されて、A/Dコンバータ88に入力される。A/Dコンバータ88は、所定のサンプリング周波数(周期)を適用してアナログ信号である上記の電気信号をデジタル信号に変換する。例えば、デジタル信号は、信号値を指定された2進数の桁数で表現される。A/Dコンバータ88から出力されたデジタル信号は、判定部52に入力される。ここで、光電変換部86とA/Dコンバータ88は、受光部70による受光量の変化に基づいて刃先12Aの欠けの形状を検出するための欠け検出部82として機能する。
【0045】
また、上記のA/Dコンバータ88としては、時間分解能の高いものが適用され、サンプリング周波数が数MHz(例えば、1.5MHz)程度に設定されている。これにより、欠け検出部82では、受光部70で受光された光量がA/Dコンバータ88によって高分解能に判定されるので、ブレード12の欠けの形状(深さ及び長さ)を正確に検出することが可能となる。ここで、A/Dコンバータ88は、本発明の高分解能光量判定部に相当するものであり、受光部70による受光量の変化から刃先12Aの欠けの形状を検出可能な程度に高分解能に光量判定を可能なものが適用される。また、上記のサンプリング周波数は、ブレード12の回転数と直径、及び判定の対象となる欠けのブレード12の周方向における長さ等に基づいて設定される。
【0046】
なお、上記の光量を高分解能に判定する手法としては、既述したようにA/Dコンバータ88に設定されるサンプリング周波数を上げてブレードの1回転で欠けを示す電気信号を取得する手法の他、例えば、以下の手法がある。すなわち、ブレードが1回転するごとに検査用ビーム77Aの幅の分だけサンプリングの位相をずらし、その結果として得られるサンプリングごとの信号値を周方向に合成して、ブレード12の一周分の欠けを表す電気信号を取得する手法がある。さらに、電気信号を同期加算処理することで、例えば、加工中に噴射される水(切削水及び冷却水)に起因するノイズ成分を低減することができる。その結果として、欠けを示す電気信号のみを効果的に抽出することが可能となる。
【0047】
次に、判定部52について説明する。判定部52は、欠け検出部82の検出結果に基づいて、ブレード12の交換が必要であるか否かを判定する。
【0048】
判定部52による判定は、ワークWの切削加工中に実施される。この場合、例えば60000rpm程度の高速で回転しているブレード12に対して数百ミクロン程度の欠けの有無の判定が実施される。
【0049】
次に、判定部52の説明を一旦中断して
図5に示す表図について説明する。この表図には、ブレード12の刃先12Aに発生した4種類の欠け13A、13B、13C、13Dの形状と、それらの欠け形状に対応したアナログ信号及び信号値等の一例が示されている。
【0050】
具体的には、
図5のA欄には、上記の4種類の欠け13A~13Dの形状が拡大して示されており、B欄には、欠け13A~13Dの形状に対応したアナログ信号(光電変換部86から出力される電気信号の時間変化を示した波形信号)がそれぞれ示されている。上記のアナログ信号は、投光部68から投光された検査用ビーム77Aの光量のうち欠け13A~13Dを透過した光量によって決定される。C欄には、欠け13A~13Dの形状に対応したアナログ信号をA/Dコンバータ88によって量子化された数値(2~9)が示されており、D欄には、上記の量子化した各数値を棒グラフ形式で表した模式図が示されている。
【0051】
図5のB~D欄に示した信号等は、A欄に示すようにブレード12の径方向に細長い断面形状の検査用ビーム77Aの光量に基づいて得られたものである。一方、E欄には、検査用ビームとして断面形状が円形の検査用ビーム77Bを用い、F欄には検査用ビーム77Bの光量に基づいて得られる欠け13A~13Dの形状に対応したアナログ信号が示されている。ここで、F欄に示したアナログ信号とB欄で示したアナログ信号とを比較すると、円形の検査用ビーム77Bを用いた場合の光量と比較して、ブレード12の径方向に細長い断面形状の検査用ビーム77Aを用いた場合の光量の方が、欠け13A~13Dを検出した瞬間に時間軸に対して急峻に上昇することが分かる。よって、既述したように、ブレード12の径方向に細長い断面形状を有する検査用ビーム77Aを使用することにより、時間軸に対する光量推移を高い分解能で検出可能となる。これにより、欠け検出部82において欠けの形状をより正確に検出することが可能となる。
【0052】
刃先12Aに欠け13A~13Dが発生した場合(A欄参照)、投光部68から投光された検査用ビーム77Aの一部の光は欠け13A~13Dを透過するため、光電変換部86から出力される電気信号の電圧値が欠け13A~13Dの形状に対応して上昇する(B欄参照)。そして、各電気信号の波形には欠け13A~13Dの深さと長さに対応した波形がそれぞれ現れる。このとき、波形の高さは欠け13A~13Dの深さ(「第1の長さ」に相当)に対応し、波形の幅は欠け13A~13Dの長さ(「第2の長さ」に相当)に対応する。このようなことから、波形の高さを示す数値(C欄参照)に基づいて欠け13A~13Dの深さを判定することが可能となり、波形の幅を示す時間軸(B欄参照)等に基づいて欠け13A~13Dの長さを判定することが可能となる。すなわち、欠け検出部82では、欠け13A~13Dの深さと長さから欠け13A~13Dの形状を検出することが可能となる。
【0053】
そこで、
図4の4Aに示した判定部52は、欠け検出部82で検出された欠けの形状に基づいてブレード12の交換が必要であるか否かを判定する。判定部52は、後述の閾値(深さ閾値及び長さ閾値)が設定された記憶部90と、比較部92とを有する。記憶部90には、ブレード12の欠けの深さに対して定められる深さ閾値(形状閾値のうち「第1の閾値」に相当)と、欠けの長さに対して定められる長さ閾値(形状閾値のうち「第2の閾値」に相当)と、が予め設定される。本例では、深さ閾値を定めるに際し、量子化された数値(
図5のC欄参照)が深さを表す指標値として用いられている。また、長さ閾値を定めるに際し、上記の深さ閾値以上の数値が連続して出力された場合の時間にブレード12の周速(刃先12Aの接線方向の速度)を乗算した値が、長さを表す指標値として用いられている。
【0054】
一方、ブレード12の刃先12Aに欠けが発生していても、欠けの深さ又は長さが十分に小さい場合には十分な精度でワークWを切削加工できる場合がある。そこで、上記の深さ閾値は、ブレード12の欠けの深さが十分に小さくそのままワークWを切削加工できると判定できる欠けの深さの上限値に相当する値として定められる。また、上記の長さ閾値は、ブレード12の欠けの長さが十分に小さくそのままワークWを切削加工できると判定できる欠けの長さの上限値に相当する値として定められる。
【0055】
上記の深さ閾値及び長さ閾値は、例えば、ワークWの切削加工前に、ダイシング装置10のオペレーターによって予め設定される。深さ閾値及び長さ閾値は、加工対象のワークWの材質、ブレード12の種類、実施される切削加工の内容により異なっており、それぞれの条件下における各閾値がその都度設定される。
【0056】
なお、本例のブレード破損検出装置48によってブレード12の刃先12Aの欠けを検出する場合、投光部68と受光部70とが送り機構53により所定の高さ位置に位置決めされる。高さ位置は、一例として、スピンドル14に装着されたブレード12の刃先12Aの上端付近に設定される。また、上記の高さ位置は、一例として、刃先12Aに欠けが発生していない場合において、投光部68からの検査用ビーム77Aをブレード12によって90%程度遮光する位置に設定される。これにより、受光部70は、刃先12Aに欠けが発生していない場合においても、投光部68からの検査用ビーム77Aのうち10%程度の光を受光し、この10%程度の光が、
図5のC欄に示した数値「2」として現れている。つまり、本例では、A/Dコンバータ88から「3」以上の数値が出力された場合に、判定部52は刃先12Aに欠けが発生したと判定する構成となっている。なお、ブレード12に欠けが発生していない場合に投光部68からの検査用ビーム77Aがブレード12により遮光される割合は本例(90%)に限定されるものではない。
【0057】
次に、実施形態に係るブレード破損検出装置48の作用について説明する。
【0058】
まず、ブレード破損検出装置48が搭載されたダイシング装置10では、キャリブレーション作業として、回転するブレード12をワークテーブル16の表面に僅かに接触させ、ブレード12の原点位置からワークテーブル16までの距離を記録し、同時に受光領域76で受光されている光量を記録する。そして、キャリブレーション作業で得られた値、予め入力されたワークWの厚み、ブレード12の外径等のデータよってブレード12のZ方向の切込み送り量等が調整される。
【0059】
キャリブレーション作業が終了すると、ブレード12によるワークWの切削加工が開始されると共に、ブレード破損検出装置48によるブレード12の判定が開始される。
【0060】
ここで、ブレード破損検出装置48によるブレード12の判定方法について、
図6を参照して説明する。
図6は、ブレード破損検出装置48によるブレード12の判定方法の一例を示したフローチャートである。この判定方法は、ブレード12の刃先12Aに発生した欠けの深さと長さの双方に基づいてブレード12を判定する方法である。
【0061】
まず、欠けの深さに対して定められる深さ閾値(一例として、数値「6」)と、欠けの長さに対して定められる長さ閾値を記憶部90に設定する(S100:閾値設定ステップ)。この閾値設定ステップ(S100)の実行後にブレード12によるワークWの切削加工が開始される。
【0062】
次に、光検出ユニット50によって、投光部68から検査用ビーム77Aを投光し、その検査用ビーム77Aを受光部70で受光する光検出ステップが実行される(S110)。
【0063】
次に、欠け検出部82によって、ブレード12の刃先12Aに発生する欠けの形状を検出する欠け検出ステップが実行される(S120)。すなわち、欠け検出ステップ(S120)では、光検出ステップ(S110)で受光された光量をA/Dコンバータ88で判定し、A/Dコンバータ88の判定結果(光量による時間的な光強度変化)に基づいて、
図5のA欄にて示したようなブレード12の刃先12Aに発生する欠けの形状を検出する。
【0064】
次に、判定部52によって、欠け検出ステップ(S120)による欠けの形状の検出結果に基づき、ブレード12の交換が必要であるか否かを判定する判定ステップが実行される(S130)。以下、具体的に説明する。
【0065】
判定ステップ(S130)では、深さ閾値と長さ閾値とに基づいて、欠け検出ステップ(S120)で検出された欠けの形状(深さ及び長さ)を有するブレード12の交換が必要であるか否か(すなわち、ブレード12が使用可能であるか否か)が判定される。例えば、欠け検出ステップ(S120)で検出された欠けの深さが深さ閾値未満であり、且つ欠けの長さが長さ閾値未満の場合、判定ステップ(S130)は、ブレード12は使用可能と判定(すなわち、YES判定)を行う。そして、表示部46には、判定ステップ(S130)における判定結果(ブレード使用可能)が表示される。その後、判定ステップ(S130)においてブレード12の交換必要と判定されるまで、ワークWの切削加工が継続されると共に、欠け検出ステップ(S120)及び判定ステップ(S130)が繰り返し行われる。
【0066】
一方、例えば、欠け検出ステップ(S120)で検出された欠けの深さと長さのうち少なくともいずれか一方が、それぞれの閾値以上である場合、判定ステップ(S130)はブレード12の交換必要と判定(すなわち、No判定)を行う。そして、表示部46には、判定ステップ(S130)における判定結果(ブレード交換必要)が表示される。また、例えば、
図4の4Aに示した警告灯94を点灯させることでオペレーターに通報される。オペレーターは、この通報を知ることでブレード交換作業に取り掛かる。なお、判定ステップ(S130)においてNo判定が行われた場合には、ワークWの切削加工を自動的に中断ないし中止するようにしてもよい。
【0067】
このように実施形態のブレード破損検出装置48は、光検出ユニット50で受光された光量を高分解能に判定可能なA/Dコンバータ88(高分解能光量判定部)を含み、A/Dコンバータ88から出力された結果(光量判定結果)に基づいてブレード12の刃先12Aに発生する欠けの形状を検出することが可能である。これにより、ブレード12の刃先12Aに発生した欠けの形状からブレード12の状態(ブレード12の交換が必要であるか否か、すなわち、ブレード12を使用可能であるか否か)を判定することが可能となり、ダイシング装置10の不必要な停止を避けることができる。その結果として、ワークWの加工効率を向上させることができる。
【0068】
また、実施形態のブレード破損検出装置48によれば、ブレード12の刃先12Aに欠けが発生しても、欠けの形状(深さ及び長さ)がそれぞれの閾値未満である場合には、ブレード12が不必要に交換されることがないため、ブレード12の使用量を節約(削減)することができる。また、ブレード12の外周部に沿って複数の欠けが発生している場合には、複数の欠けのうち深さが最も大きい欠け、若しくは欠けの長さが最も長い欠けを基準にブレード12の状態を判定することが好ましく、また、深さごとのピーク値を加算した値に閾値を設定したり、それぞれの長さを加算した値に閾値を設定したりして、それらの閾値に基づいてブレード12の状態を判定してもよい。更に、深さと長さの検出結果が、それぞれの閾値未満の場合でも、その深さと長さを表示部46でモニタリングすることが好ましい。これにより、現在のブレード12の状態を常時監視することができるので、例えば、ブレードの交換時期等を予測することが可能となる。
【0069】
上記のブレード12の判定方法の一例では、ブレード12の刃先12Aに発生した欠けの深さと長さの双方に基づいてブレード12の状態を判定したが、他の例として、ブレード12の刃先12Aに発生した欠けの深さ(第1の長さ)に基づいてブレード12の状態を判定してもよい。また、他の例として、ブレード12の刃先12Aに発生した欠けの長さに基づいてブレード12の状態を判定してもよい。いずれの判定方法においても、ダイシング装置10の不必要な停止を避けることができるので、ワークWの加工効率を向上させることができる。
【0070】
また、実施形態のブレード破損検出装置48によれば、ブレード12の刃先12Aに発生した欠けの形状として、例えば
図5のA欄で示したような欠け13A~13Dの形状を検出することが可能であるため、その検出結果を利用して欠けの面積も検出することが可能となる。ここで、例えば、欠け13Aは、ある深さの基準値に対して深さが浅く、また、ある長さの基準値に対して長さが短い矩形の形状と検出され、欠け13Bは、深さが浅く長さが長い矩形の形状と検出され、欠け13Cは、深さが深く長さが短い矩形の形状と検出され、欠け13Dは、深さが変化し、且つ最大の深さが深く長さが短い三角形の形状と検出される。
【0071】
すなわち、矩形の欠け13A~13Cに関しては、深さと長さを乗算した値を面積として検出でき、三角形の欠け13Dの面積に関しては、深さと長さを乗算した値の半値を面積として検出できる。この場合、量子化された数値(「3」以上の数値:
図5のC欄参照)が深さを表す指標値として用いられ、また、上記の数値「3」以上の数値が連続して出力された場合の時間にブレード12の周速を乗算した値が長さを表す指標値として用いられる。
【0072】
このような観点から、ブレード破損検出装置48によるブレード12の判定方法の他の例として、ブレード12の刃先12Aに発生した欠けの面積に基づいた判定方法も可能である。以下、上記の面積に基づいた判定方法について、
図6のフローチャートを再度用いて説明する。
【0073】
まず、ダイシング装置10によるワークWの切削加工前に、欠けの面積に対して定められる面積閾値を記憶部90に設定する(S100:閾値設定ステップ)。この閾値設定ステップの実行後にブレード12によるワークWの切削加工が開始される。
【0074】
次に、光検出ユニット50によって、投光部68から検査用ビーム77Aを投光し、その検査用ビーム77Aを受光部70で受光する光検出ステップが実行される(S110)。
【0075】
次に、欠け検出部82によって、ブレード12の刃先12Aに発生する欠けの面積を検出する欠け検出ステップが実行される(S120)。すなわち、欠け検出ステップ(S120)では、光検出ステップ(S110)で受光された光量をA/Dコンバータ88で判定し、A/Dコンバータ88の判定結果に基づいて、
図5のA欄にて示したようなブレード12の刃先12Aに発生する欠けの面積を検出する。
【0076】
次に、判定部52によって、欠け検出ステップ(S120)による欠けの面積の検出結果に基づき、ブレード12の交換が必要であるか否かを判定する判定ステップが実行される(S130)。以下、具体的に説明する。
【0077】
判定ステップ(S130)では、面積閾値に基づいて、欠け検出ステップ(S120)で検出された欠けの面積を有するブレード12の交換が必要であるか否か(すなわち、ブレード12が使用可能であるか否か)が判定される。例えば、欠け検出ステップ(S120)で検出された欠けの面積が面積閾値未満の場合、判定ステップ(S130)は、ブレード12は使用可能と判定(すなわち、YES判定)を行う。そして、表示部46には、判定ステップ(S130)における判定結果(ブレード使用可能)が表示される。その後、判定ステップ(S130)においてブレード12の交換必要と判定されるまで、ワークWの切削加工が継続されると共に、欠け検出ステップ(S120)及び判定ステップ(S130)が繰り返し行われる。
【0078】
一方、欠け検出ステップ(S120)で検出された欠けの面積が面積閾値以上である場合、判定ステップ(S130)はブレード12の交換必要と判定(すなわち、No判定)を行う。そして、表示部46には、判定ステップ(S130)における判定結果(ブレード交換必要)が表示される。また、例えば、
図4の4Aに示した警告灯94を点灯させることでオペレーターに通報される。オペレーターは、この通報を知ることでブレード交換作業に取り掛かる。なお、判定ステップ(S130)においてNo判定が行われた場合には、ワークWの切削加工を自動的に中断ないし中止するようにしてもよい。
【0079】
このようにブレード12の刃先12Aに発生する欠けの面積を検出した場合でも、検出した面積に基づいてブレード12の状態(ブレード12の交換が必要であるか否か、すなわち、ブレード12を使用可能であるか否か)を判定することが可能となり、ダイシング装置10の不必要な停止を避けることができる。その結果として、ワークWの加工効率を向上させることができる。
【0080】
また、上記の面積に基づくブレード12の判定方法においても、ブレード12の外周部に沿って複数の欠けが発生している場合には、複数の欠けのうち面積が最も大きい欠けを基準にブレード12の状態を判定することが好ましく、また、欠けごとの面積を加算した値に面積閾値を設定して、その閾値に基づいてブレード12の状態を判定してもよい。更に、面積の検出結果が、面積閾値未満の場合でも、その面積を表示部46でモニタリングすることが好ましい。これにより、現在のブレード12の状態を常時監視することができるので、例えば、ブレードの交換時期等を予測することが可能となる。
【0081】
なお、上記の実施形態では、光検出ユニット50においてブレード12の径方向に細長い検査用ビーム77Aを用い、この検査用ビーム77Aを投光部68から受光部70に向けて照射する構成としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、投光部68と受光部70との間に、ブレード12の径方向に細長いスリット孔が形成されたスリット板を配置して、受光部70においてブレード12の径方向に細長い断面形状の光を受光できるように構成してもよい。また、他の例として、受光部70の受光領域76をブレード12の径方向に細長く構成してもよい。更に、検査用ビーム77Aの形状は、ブレード12の径方向に細長い断面形状に限定されるものではなく、高分解能光量判定部(例えば、A/Dコンバータ88)によって検査用ビームを高分解能に判定可能であれば、検査用ビームの断面形状が他の形状(例えば円形)のものでも用いることができる。
【0082】
また、本実施形態では、ブレード12を挟んで投光部68に対向して設けられ投光部68から投光された光を受光する受光部70を有する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、投光部68と受光部70をブレード12の同一側面側に配置し、投光部68から投光され、ブレード12で反射した光を受光する受光部70を有する構成でもよい。この場合、ブレード12に欠けの無い部分では投光部68から投光された光のうち多くの光が受光部70で受光される。一方で、ブレード12に欠けの有る部分ではブレード12で反射する光が減少するので、受光部70が受光する光は上記の光よりも少なくなる。結果、この構成では、ブレード12を挟んで投光部68に対向して設けられ投光部68から投光された光を受光する受光部70を有する構成とは反対の光量の増減で同様に欠けの形状及び欠けの面積を検出することができる。
【0083】
以上、本発明に係るブレード破損検出装置の一例について説明したが、本発明の技術は実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…ダイシング装置、12…ブレード、12A…刃先、13A~13D…欠け、14…スピンドル、16…ワークテーブル、18…加工部、19…カメラ、20…洗浄部、22…ロードポート、24…搬送装置、26…制御部、30…Xガイド、32…リニアモータ、34…Xテーブル、36…回転テーブル、38…Yベース、40…Yガイド、42…Yテーブル、44…Zテーブル、46…表示部、48…ブレード破損検出装置、50…光検出ユニット、52…判定部、53…送り機構、54…ホイールカバー、56…カバー前部、58…カバー後部、60…ノズルブロック、62…ホース、63…ノズル、64…ホース、66…ノズル、68…投光部、70…受光部、72…ガイドブロック、74…投光領域、76…受光領域、77A…検査用ビーム(光)、77B…検査用ビーム、78…光源、80…オプティカルケーブル、82…欠け検出部、84…オプティカルケーブル、86…光電変換部、88…A/Dコンバータ(高分解能光量判定部)、90…記憶部、92…比較部、94…警告灯