(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133637
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】電線用外装体および該電線用外装体を備えた外装体付きワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20220907BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032427
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 歩
【テーマコード(参考)】
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
5G309AA09
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE02
(57)【要約】
【課題】全体が大型化せず、また軽量に保ちながら、外力に対する破損を防ぐこと。
【解決手段】平板部材としての樹脂シート5を折り曲げて内部に筒状空間11sを有するプロテクタ本体11が形成され、該筒状空間11sに収容されたワイヤハーネスWHを保護する構成において、プロテクタ本体11(樹脂シート5)の表面11A(5A)に、裏面11B(5B)に向かって切り込んだ切込線16が所定の模様で形成された。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板部材を折曲又は湾曲させて内部に筒状空間が形成され、該筒状空間に収容された電線を保護する電線用外装体であって、
前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方の面に、他方の面に向かって切り込んだ切込線が前記少なくとも一方の面に沿って形成された
電線用外装体。
【請求項2】
異なる方向に延びる複数の前記切込線が交差する交差箇所において、少なくとも1つの前記切込線は、非連続に延びている
請求項1に記載の電線用外装体。
【請求項3】
前記切込線の延在方向の一部が他の部位と比して拡幅して設けられた
請求項1又は請求項2に記載の電線用外装体。
【請求項4】
異なる方向に延びる複数の前記切込線が交差する交差箇所において、前記平板部材の板厚方向に貫通する切込孔が形成された
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電線用外装体。
【請求項5】
前記平板部材の前記表面及び前記裏面の両方に、前記切込線が形成され、
前記表面に設けられた前記切込線と、前記裏面に設けられた前記切込線とは、前記表面の正面視で互いに線状に一致しない
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電線用外装体。
【請求項6】
前記切込線が、切り込みの有無又は切り込みの深浅が交互に現れる破線である
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電線用外装体。
【請求項7】
前記切込線が、前記少なくとも一方の面における外縁よりも面内側の領域に設けられた
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電線用外装体。
【請求項8】
前記切込線は、前記少なくとも一方の面に、複数の多角形を組み合わせた格子模様が構成されるように延びている
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電線用外装体。
【請求項9】
前記格子模様が複数の六角形を組み合わせた六角格子模様とされ、
前記筒状空間を内部に有するように折曲又は湾曲された前記平板部材の曲げ方向が、前記六角格子模様における六角形の何れかの対角線と平行な方向に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定された
請求項8に記載の電線用外装体。
【請求項10】
前記格子模様が複数の六角形を組み合わせた六角格子模様とされ、
前記筒状空間を内部に有するように折曲又は湾曲された前記平板部材の曲げ方向が、前記六角格子模様における六角形の何れかの対角線に対して垂直となる方向に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定された
請求項8に記載の電線用外装体。
【請求項11】
前記平板部材の折曲部分の折り曲げ易さ又は湾曲部分の湾曲し易さを促進させる組立用切込線が、前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方に設けられた
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の電線用外装体。
【請求項12】
前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方が緩衝部材で覆われた
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の電線用外装体。
【請求項13】
前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方が遮水部材で覆われた
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の電線用外装体。
【請求項14】
前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方が導電部材で覆われた
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の電線用外装体。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の電線用外装体を備え、
前記電線用外装体が、前記筒状空間にワイヤハーネスを収容して該ワイヤハーネスの外周に装着された
外装体付きワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、平板部材を折曲又は湾曲させて筒状空間が内部に形成され、該筒状空間に挿通された電線を保護する電線用外装体および該電線用外装体を備えた外装体付きワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に配索される電線の外周に装着される電線用外装体(プロテクタ)として、電線の周囲を囲む態様で平板部材を折曲又は湾曲させて筒状空間を構成し、該筒状空間に収容した電線を外力から保護するタイプのものが提案されている。
【0003】
このような従来の電線用外装体においては、該電線用外装体を構成する平板部材自体が外力を受けると変形するなどして破損してしまうおそれがあった。
【0004】
これに対して、特許文献1に例示されるように、外力に対する強度を向上させた電線用外装体(プロテクタ)が提案されている。
特許文献1に記載のプロテクタは、電線の周囲を全体に少なくとも二重に囲う態様で平板部材(板材)を曲げて形成することで、プロテクタ自体の強度を向上させている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のプロテクタは、平板部材を、電線の周囲を全体に少なくとも二重に囲う態様とすることに起因して、周方向全体が肉厚化(すなわち、全体が大型化)して、車両等におけるワイヤハーネスの配索箇所に設置する際に嵩張ることや、筒状空間が狭くなることで電線等の収容可能な容量が低下することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、全体が大型化することがなく、外力に対する平板部材の破損を防ぐことができる電線用外装体および該電線用外装体を備えた外装体付きワイヤハーネスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、平板部材を折曲又は湾曲させて内部に筒状空間が形成され、該筒状空間に収容された電線を保護する電線用外装体であって、前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方の面に、他方の面に向かって切り込んだ切込線が前記少なくとも一方の面に沿って形成されたものである。
【0009】
前記構成によれば、全体が大型化することがなく、外力に対する前記平板部材の破損を防ぐことができる。
【0010】
詳しくは、前記平板部材の表面及び裏面のうち、切込線が設けられた面は、切込線に沿って変形が生じ易くなるため、平板部材の柔軟性が向上する。したがって、大きな衝撃荷重を受けても同衝撃荷重を、その伝達方向を分散して該衝撃荷重を吸収することができる。ひいては前記平板部材の破損を防ぐことが可能となる。
【0011】
また、全体を頑強にすることなく、外力に対する破損を防ぐことができるため、車両等におけるワイヤハーネスの配索箇所に設置する際に嵩張ることがなく、筒状空間の電線等を収容可能な容量を確保することができる。また、電線用外装体全体の重量が増大することもない。
【0012】
前記切込線は、直線形状、曲線形状、或いはこれらを組み合わせた形状を採用することができる。
【0013】
具体的には、前記少なくとも一方の面には、三角形や四角形などの多角形状、或いは円形状や弧形状などの湾曲形状を、前記切込線によって設けることができる。円形状は、正円形状に限らず、楕円形状や長円形状などであってもよい。
【0014】
さらに、前記少なくとも一方の面には、前記形状を構成要素として、平行移動、反転、回転、拡大、縮小、分割などの操作を加えながら組み合わせた規則的な模様を設けてもよい。或いは、前記少なくとも一方の面には、前記形状を構成要素としてランダムに組み合わせるなどした不規則な模様を設けてもよい。
【0015】
前記切込線は、平板部材の全体に亘る領域に形成するに限らず、少なくとも一部の領域に形成してもよい。また、平板部材に形成された切込線の例えば、長さ、数、幅、深さ、密度についても例えば、平板部材の剛性と荷重吸収性とのバランスを考慮して任意に設定することができる。
【0016】
この発明の態様として、異なる方向に延びる複数の前記切込線が交差する交差箇所において、少なくとも1つの前記切込線は、非連続に延びる構成としてもよい。
【0017】
前記構成によれば、前記切込線同士の交差箇所において前記切込線同士が互いにつながっていないため、つながっている場合と比して該交差箇所における応力集中を回避することができる。したがって、前記平板部材の破損を防ぐことが可能となる。
【0018】
また、前記切込線同士の交差箇所において前記切込線同士が互いにつながっていないため、前記平板部材の柔軟性を確保しつつも適度な剛性を確保することができる。したがって、前記平板部材の破損を防ぐとともにワイヤハーネスを確実に保護することが可能となる。
【0019】
また、この発明の態様として、前記切込線の延在方向の一部が他の部位と比して拡幅して設けられた構成としてもよい。
【0020】
前記構成によれば、衝撃荷重を受けたときに、拡幅部分が変形のきっかけとなり、拡幅部分を有する切込線が直ちに変形するため、同衝撃荷重を吸収、分散することができる。したがって、前記平板部材の破損を防ぐことが可能となる。
【0021】
また、この発明の態様として、異なる方向に延びる複数の前記切込線が交差する交差箇所において、前記平板部材の板厚方向に貫通する切込孔が形成された構成としてもよい。
【0022】
前記構成によれば、衝撃荷重を受けたときに、切込孔が変形のきっかけとなり、切込孔の周辺が直ちに変形するため、切込線が集中する交差箇所において切込孔が形成されることで、各切込線に沿う変形が容易になり、同衝撃荷重の伝達方向を分散して該衝撃荷重を吸収することができる。したがって、破損を防ぐことが可能となる。
【0023】
また、この発明の態様として、前記平板部材の前記表面及び前記裏面の両方に、前記切込線が形成され、前記表面に設けられた前記切込線と、前記裏面に設けられた前記切込線とは、前記表面の正面視で互いに線状に一致しない構成としてもよい。
【0024】
前記構成によれば、前記平板部材の表面及び裏面の両方に、前記切込線が形成されるため、平板部材の表面側への曲げ変形に対する柔軟性と裏面側への曲げ変形に対する柔軟性が向上する。したがって、破損を防ぐことが可能となる。
【0025】
また、前記平板部材の表面における前記切込線と裏面における前記切込線とが、前記表面の正面視で互いに線状に一致しない(夫々の延在方向に連続するように一致しない)ため、平板部材の板厚方向において、これら切込線によって挟まれた極端な薄肉部分の形成を極力防止することができる。したがって、破損を防ぐことが可能となる。
【0026】
さらに、例えば、切込線によって構成される所定の模様(切込線によって囲まれた領域)が、前記平板部材の表面又は裏面のいずれか一方の面のみに小さく構成された場合に比べ、同程度の柔軟性を確保しつつ前記平板部材の表面における所定の模様と裏面における所定の模様とを大きく形成できるため、所定の模様の切込線からの剥離を防ぐことができる。したがって、前記平板部材の破損を防ぐことが可能となる。
【0027】
また、この発明の態様として、前記切込線が、切り込みの有無又は切り込みの深浅が交互に現れる破線である構成としてもよい。
【0028】
前記構成によれば、切込線が切り込みの有無又は切り込みの深浅が交互に現れる破線であるため、平板部材の柔軟性を確保しつつも剛性を確保することができる。したがって、前記平板部材の破損を防ぐとともにワイヤハーネスを確実に保護することが可能となる。
【0029】
また、この発明の態様として、前記切込線が、前記少なくとも一方の面における外縁よりも面内側の領域に設けられた構成としてもよい。
【0030】
前記構成によれば、前記少なくとも一方の面における外縁に切込線がつながっていないため、平板部材の柔軟性を確保しつつも十分な剛性を確保することができる。したがって、破損を防ぐとともにワイヤハーネスを確実に保護することが可能となる。
【0031】
また、外縁から切込線に沿って生じる割れの発生を防ぎ、かつ幾何学模様の外縁からの剥離を防ぐことができる。
【0032】
また、この発明の態様として、前記切込線は、前記少なくとも一方の面に、複数の多角形を組み合わせた格子模様が構成されるように延びる構成としてもよい。
【0033】
前記構成によれば、前記少なくとも一方の面には、複数の多角形を組み合わせた格子模様が切込線によって構成されるため、これら切込線に沿う変形によって、衝撃荷重を受けたときの折曲部又は湾曲部における同衝撃荷重の伝達方向を分散して該衝撃荷重を吸収することができる。したがって、破損を防ぐことが可能となる。
【0034】
また、この発明の態様として、前記格子模様が複数の六角形を組み合わせた六角格子模様とされ、前記筒状空間を内部に有するように折曲又は湾曲された前記平板部材の曲げ方向が、前記六角格子模様における六角形の何れかの対角線と平行な方向に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定してもよい。
【0035】
前記構成によれば、前記格子模様を六角格子模様とすることで、前記少なくとも一方の面を多角形(六角形)で隙間なく敷き詰めることができる(すなわち、平面充填形とすることができる)。しかも、前記格子模様を六角格子模様とすることで、同じ平面充填形である三角形や四角形と比して、衝撃荷重を分散する方向を多く確保することができる。よって、衝撃を受けたときの衝撃荷重の伝達方向を分散して該衝撃荷重を吸収することができる。したがって、破損を防ぐことが可能となる。
【0036】
加えて、前記構成によれば、前記平板部材の曲げ方向が、前記六角格子模様における六角形の何れかの対角線と平行な方向に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定されているため、前記筒状空間を内部に有するように折曲又は湾曲された前記平板部材の曲げ中心となる軸が延びる方向に対して、六角形の所定の辺を構成する全ての切込線が平行となる又は鋭角を成すように延ばすことができる。
【0037】
このため、前記平板部材の前記少なくとも一方の面に、このようなレイアウトで切込線によって形成される多数の六角形によって、前記平板部材が衝撃荷重を受けたとき、筒状空間が潰れないように前記電線用外装体の剛性の低下を抑制しながら前記電線用外装体の荷重吸収性を高めることができる。
【0038】
さらに、上述したように、前記平板部材の曲げ方向が、前記六角格子模様における六角形の何れかの対角線と平行な方向に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定されているため、この切込線に沿う変形によって平板部材を容易に折曲又は湾曲させることができる。
【0039】
したがって、前記平板部材を、前記筒状空間を内部に有するように折曲又は湾曲させて組み立てる組立性を向上させることが可能となる。
【0040】
また、この発明の態様として、前記格子模様が複数の六角形を組み合わせた六角格子模様とされ、前記筒状空間を内部に有するように折曲又は湾曲された前記平板部材の曲げ方向が、前記六角格子模様における六角形の何れかの対角線に対して垂直となる方向に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定してもよい。
【0041】
前記構成によれば、前記格子模様を六角格子模様とすることによる、上述した効果、すなわち、衝撃を受けたときの衝撃荷重の伝達方向を分散して該衝撃荷重を吸収し、結果的に、前記平板部材の破損を防ぐことが可能となるという効果を奏することができる。
【0042】
加えて、前記構成によれば、前記平板部材の曲げ方向が、前記六角格子模様における六角形の何れかの対角線に対して垂直となる方向に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定されているため、平板部材の曲げ方向に対して六角形を構成する一部の切込線が垂直又は略垂直に延びている。
【0043】
このため、前記平板部材の前記少なくとも一方の面に、このようなレイアウトで切込線によって形成される多数の六角形によって、上述したように、前記平板部材の曲げ方向が、前記六角格子模様における六角形の何れかの対角線と平行な方向に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定した場合と比して、前記平板部材が衝撃荷重を受けたとき、前記電線用外装体の荷重吸収性をより一層高めることができる。
【0044】
また、この発明の態様として、前記平板部材の折曲部分の折り曲げ易さ又は湾曲部分の湾曲し易さを促進させる組立用切込線が、前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方に設けられた構成としてもよい。
前記構成によれば、前記の効果を奏するとともに組立用切込線に沿って容易に平板部材を折曲又は湾曲させることができる。したがって、組立性を向上させることが可能となる。
【0045】
また、この発明の態様として、前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方が緩衝部材で覆われた構成としてもよい。
【0046】
前記緩衝部材によって平板部材の表面を覆う場合では周囲部品との衝突に起因した破損及び異音の発生を防ぐことができる。また、平板部材の裏面を覆う場合ではワイヤハーネスを安定して保持することができ、かつワイヤハーネスとの衝突に起因した破損及び異音の発生を防ぐことができる。
【0047】
また、この発明の態様として、前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方が遮水部材で覆われた構成としてもよい。
前記構成によれば、前記の効果を奏するとともに遮水機能を付加することができる。
【0048】
また、この発明の態様として、前記平板部材の表面及び裏面の少なくとも一方が導電部材で覆われた構成としてもよい。
【0049】
前記構成によれば、前記の効果を奏するとともに電磁シールド機能を付加することができる。
【0050】
また、本発明は、上述した電線用外装体を備え、前記電線用外装体が、前記筒状空間にワイヤハーネスを収容して該ワイヤハーネスの外周に装着された外装体付きワイヤハーネスであることを特徴とする。
【0051】
前記構成によれば、電線用外装体は、頑強に形成せずとも外力に対して前記平板部材が破損し難いため、全体が大型化することがなく、また、ワイヤハーネスをしっかりと保護することができる。
【発明の効果】
【0052】
前記構成によれば、外力に対する破損を防ぐことができる。しかも、全体を頑強とせずとも外力に対する破損を防ぐことができるため、全体が大型化せず、また軽量に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本実施形態の外装体付きワイヤハーネスの斜視図。
【
図3】(a)は
図2中の矢視A要部拡大図、(b)は
図3(a)中のB-B線矢視断面図、(c)
図3(a)中のC-C線矢視断面図。
【
図5】樹脂シートを筒状に折り曲げる途中経過を示す斜視図。
【
図6】格子模様が六角格子模様である場合において、所定の六角形に外力が入力された際の作用を説明する
図3(a)対応図。
【
図7】(a)は変形例1の
図3(a)対応図、(b)は変形例1の
図2の要部に対応する拡大図。
【
図8】(a)は変形例2の
図3(a)の領域X対応図、(b)は変形例3の
図7(a)対応図、(c)は変形例4の
図8(a)対応図、(d)は
図8(b)中のD-D線矢視断面図、(e)は
図8(c)中のE-E線矢視断面図、(f)は
図8(c)中のG-G線矢視断面図。
【
図9】(a)は変形例5の
図8(a)対応図、(b)は
図9(a)中のH-H線矢視断面図、(c)は変形例5の関連例を示す
図8(b)対応図、(d)は変形例6の
図3(a)の要部に対応する部分の拡大図。
【
図10】(a)は変形例7の
図3(a)対応図、(b)は
図10(a)中のI-I線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、本実施形態の外装体付きワイヤハーネス1を倒位の姿勢で配置した状態の外観図を示し、
図2は、
図1において、外装フォーム3、固定テープ4およびワイヤハーネスWHを仮想線で示した状態を示す。
【0055】
図1、
図2に示すように、本実施形態の外装体付きワイヤハーネス1は、ワイヤハーネスWHと、該ワイヤハーネスWHの外周に装着される外装体としてのプロテクタ10とを備えている。
【0056】
なお、
図1、
図2に示すように、プロテクタ10の長手方向を長手方向Lとし、長手方向Lに直交する方向であって、
図1、
図2の紙面上下方向と一致する方向を高さ方向Hとし、長手方向Lおよび高さ方向Hに直交する方向を幅方向Wとしている。また、
図1中の矢印Riをプロテクタ10の右方向とし、同様に矢印Leを左方向とし、矢印Uを上方向とし、矢印Dを下方向とする。
【0057】
本実施形態のプロテクタ10は、細長い四角筒状のプロテクタ本体11と、該プロテクタ本体11の裏面11B(内面)に接着されたアルミシート2と、該プロテクタ本体11に外装された外装フォーム3と、外装フォーム3をプロテクタ本体11に外装された状態に固定する固定テープ4とを備えている。
【0058】
プロテクタ本体11は、後述する樹脂シート5で形成される倒位の四角筒状体であり、内部に長手方向Lに貫通する筒状空間11sを有している。この筒状空間11sは、ワイヤハーネスWHが長手方向Lに挿通された態様で該ワイヤハーネスWHを収容する空間である。
【0059】
図2に示すように、プロテクタ本体11は、長手方向Lの一方側から視て略正方形状に形成され、高さ方向Hにおいて上下各側で対向する上壁部12aおよび下壁部12bと、幅方向Wにおいて左右各側で対向する左壁部12cおよび右壁部12dとを備えている。
【0060】
上壁部12aと左壁部12cとの境界部には、第1角部13aが形成され、左壁部12cと下壁部12bとの境界部には、第2角部13bが形成され、下壁部12bと右壁部12dとは、第3角部13cが形成され、右壁部12dと上壁部12aとは、第4角部13dが形成されている。これら角部13a,13b,13c,13dは、何れも長手方向Lの一端側から視て略直角を成すとともに、プロテクタ本体11の長手方向Lの略全体に亘って直線状、かつ互いに平行に延びている。
【0061】
なお、プロテクタ本体11の所定の壁部12a,12b,12c,12dの何れかの表面11A(外面)には、車体フレーム等に取り付けるクリップ等の車体取付け部(図示省略)が設けられてもよい。
【0062】
アルミシート2は、アルミ箔で形成され、プロテクタ本体11の裏面11B全体に接着されている。アルミシート2は、アルミ又はアルミ合金で形成され、プロテクタ10に電磁シールド機能を付加することができる。なお、導電部材であれば、アルミシート2に限らず、他の部材を採用してもよい。
【0063】
また、
図1に示すように、外装フォーム3は、消音/防音効果を有する吸音フォーム層3aと、遮水効果を有する遮水フォーム層3bとの2層構造で構成され、遮水フォーム層3bが吸音フォーム層3aよりも外側に位置するようにプロテクタ本体11に外装されている。
【0064】
本実施形態において、吸音フォーム層3aは、連続気泡構造体としてのウレタンフォームで形成されるとともに、遮水フォーム層3bは、独立気泡構造体としてのPE(ポリエチレン)フォームやゴムスポンジで形成される。
【0065】
本実施形態における外装フォーム3は、吸音フォーム層3aと遮水フォーム層3bとが互いに接合された一枚のシート状から成る2層構造としているが、本発明は、このような実施形態に限定しない。例えば図示省略するが、2層構造の外装フォームは、消音/防音効果を有するウレタンフォーム等で形成された外装フォームと、遮水効果を有するPEフォーム等で形成された外装フォームとが備えられ、これら2枚の外装フォームを互いに重合させた状態でプロテクタ本体11に外装する構成を採用してもよい。
【0066】
なお、外装フォーム3を、このような2枚の外装フォームからなる2層構造で構成する場合においては、遮水効果を有する外装フォームが、消音/防音効果を有する外装フォームよりも外側に配置されていることが好ましい。
また、外装フォーム3は、吸音フォーム層3a(消音/防音効果を有する外装フォーム)と、遮水フォーム層3b(遮水効果を有する外装フォーム)との2層構造で構成するに限らず、機能に応じて1層で形成してもよい。
【0067】
図2に示すように、壁部12a,12b,12c,12dを備えたプロテクタ本体11の表面11Aには、複数の六角形15を組み合わせた六角格子模様14(ハニカム構造)が切込線16によって形成されている(上壁部12aおよび右壁部12dのみ図示)。六角格子模様14は、壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aにおける切込線形成領域Rにおいて複数の六角形15が隙間なく配置されている。
【0068】
ここで、切込線形成領域Rは、壁部12a,12b,12c,12dの外縁12eを除く面内側の略全体に亘る領域である。本実施形態において、切込線形成領域Rは、壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aにおける、長手方向Lの両端(外縁12ea)から所定間隔だけ長手方向Lの中央側(面内側)の位置よりも中央側の領域であるとともに、第4角部13dの近傍部位12eb(、すなわち、右壁部12dの上端および上壁部12aの右端)を除く領域である。
【0069】
図3(a)は
図2中の矢視A要部拡大図、
図3(b)は
図3(a)中のB-B線矢視断面図、
図3(c)は
図3(a)中のC-C線矢視断面図を示す。
【0070】
図2、
図3(a)に示すように、六角格子模様14を構成する複数の六角形15は、何れも正六角形で同じ大きさに形成されるとともに、何れも同じ姿勢(向き)で配置されている。
具体的には、
図3(a)に示すように、複数の六角形15は、該六角形15の所定の対角線(153a)および所定の辺(151a)が、プロテクタ10の長手方向L、すなわち、各角部13a,13b,13c,13dの延在方向(
図2参照)と平行になるように配設されている。
【0071】
ここで、
図3(a)に示すように、六角形15を構成する複数の辺151のうち、プロテクタ10の長手方向Lと平行に延びる辺を平行辺151aと設定し、プロテクタ10の長手方向Lに対して鋭角状に傾斜して延びる辺を傾斜辺151bに設定する。さらに、六角形15を構成する複数の対角線153のうち、プロテクタ10の長手方向Lと平行に延びる対角線を平行対角線153aと設定する。
【0072】
また、同図に示すように、本実施形態において、六角格子模様14を構成する複数の六角形15のセルサイズw15は約9.0mmである。
なお、目安として、本実施形態における四角筒状のプロテクタ本体11は、長手方向Lの長さが300mm、高さ方向Hの長さが60mm、幅方向Wの長さが60mmで形成されている。
【0073】
なお、例えば、六角格子模様14を構成する複数の六角形15のセルサイズw15等のプロテクタ10に関する上述した数値は、一実施例におけるワイヤハーネスWHの目安として記載したものであり、本発明は、これら数値に限定されるものではなく、本発明を適用可能な範囲で適宜、数値(サイズ)が変更されてもよいものとする。
【0074】
図3(b)(c)に示すように、切込線16は、裏面11Bに向かって所定の深さで切り込まれたスリット(溝)であり、切込線16の延在方向に沿って略一定の切込み深さおよび幅で形成されている。本実施形態においては、
図3(b)に示すように、壁部12a,12b,12c,12dの肉厚t5(後述する樹脂シート5の厚み)が1.5mmであるのに対して切込線16の深さd16が0.75mmで形成されるとともに、切込線16の溝幅w16(箔厚)は約0.3mmで形成されている。
【0075】
プロテクタ本体11は、
図4に示すように、1枚の樹脂シート5を折り曲げて構成している。
図4は、樹脂シート5を表面側から視た斜視図を示している。
【0076】
このような樹脂シート5は、
図4に示すように、略矩形状に形成され、略矩形状の一辺5aがプロテクタ10の長手方向Lの長さに相当する長さを有するとともに、他辺5bがプロテクタ10の全周の長さに相当する長さより若干長い長さを有して形成されている。
【0077】
なお、樹脂シート5の一辺5aに沿って延びる方向を、プロテクタ10の長手方向Lに対応する第1方向L5に設定するとともに、樹脂シート5の他辺5bに沿って延びる方向を第2方向R5に設定する。
【0078】
樹脂シート5の第2方向R5の一端から他端に向けて上壁部12a、左壁部12c、下壁部12b、右壁部12dがこの順に配設され、上壁部12aと左壁部12cとは、第1角部13aに対応する第1折曲部13a’を介して連結され、左壁部12cと下壁部12bとは、第2角部13bに対応する第2折曲部13b’を介して連結され、下壁部12bと右壁部12dとは、第3角部13cに対応する第3折曲部13c’を介して連結されている。
図4に示すように、各折曲部13a’,13b’,13c’(第1折曲部13a’、第2折曲部13b’または第3折曲部13c’)には、各折曲部13a’,13b’,13c’に沿って組立用切込線17が形成されている。組立用切込線17は、樹脂シート5の表面5A(プロテクタ10の表面11Aに対応する側の面)から裏面5B(プロテクタ10の裏面11Bに対応する側の面)(
図5参照)に向かって切り込まれて形成されている。
【0079】
左壁部12cと右壁部12dとは、第2方向R5(幅方向)の長さが同じに形成されているのに対して上壁部12aは、下壁部12bよりも第2方向R5の長さが若干長くなるように形成されている。
【0080】
図4に示すように、樹脂シート5の第2方向R5の一方側(上壁部12aを有する側)の端部には、一対の突出フランジ6が突出形成されている。一対の突出フランジ6は、樹脂シート5の第2方向R5の一方側の端部における、第1方向L5において互いに離間した位置から第2方向R5の一方側へ突出形成されている。突出フランジ6の平面視で中央部には、厚み方向に貫通する係合孔6aが形成されている。
【0081】
一方、樹脂シート5の第2方向R5の他方側(右壁部12dを有する側)の端部には、一対の係合突起7が突出形成されている。一対の係合突起7は、第1方向L5における、一対の突出フランジ6に対応する位置から第2方向R5の他方側へ突出形成されている。
【0082】
また、樹脂シート5の厚み方向における表面5Aの切込線形成領域Rには、上述した六角格子模様14が切込線16によって形成されている。樹脂シート5の切込線形成領域Rは、樹脂シート5の表面11Aの外縁12e(12ea,12eb)を除いた略全体に設定されている。
【0083】
六角格子模様14の切込線16は、樹脂シート5の表面5Aにおける、切込線形成領域Rに不図示の金型の押圧面を押圧することにより、該切込線形成領域Rに一括して形成される。なお、不図示の押圧面は、切込線形成領域Rと略同じ大きさを有し、その全体に六角格子模様14に対応する刃が突設されている。
【0084】
また、
図4、
図5に示すように、樹脂シート5の厚み方向における裏面5Bの略全体には、上述したアルミシート2が接着されている。
【0085】
プロテクタ本体11は、例えば、ワイヤハーネスWHの製造時又は配索作業時等において、上述した樹脂シート5を
図5に示すように、四角筒状になるように折り曲げて構成される。
具体的には、ワイヤハーネスWHは、上述した樹脂シート5の裏面5Bに備えたアルミシート2の上に配置される。このとき、ワイヤハーネスWHは、長手方向Lと樹脂シート5の第1方向L5とが平行になるように、樹脂シート5の下壁部12bに相当する部位に配置される。
【0086】
その状態で
図5に示すように、上述した樹脂シート5は、ワイヤハーネスWHを包むようにアルミシート2ごと各折曲部13a’,13b’,13c’に沿って折り曲げて上述した四角筒状体とされる。
【0087】
ここで、樹脂シート5の各折曲部13a’,13b’,13c’の折曲げ方向は、上述したように、長手方向Lと一致する方向に延びる軸(すなわち、六角格子模様14における六角形15の平行対角線153a(
図3(a)参照)および平行辺151a(同図参照)と平行な方向に延びる軸)を中心とする曲げ方向となるように設定されている。
【0088】
さらに、
図5に示すように、四角筒状体とされた樹脂シート5は、筒状空間11sの上方に配された上壁部12a(
図5中の仮想線で示した上壁部12a参照)の左端と右壁部12dの上端との対向部分において、右壁部12dの上端に形成された係合突起7が上壁部12aの右端に形成された係合孔6aに差し込まれた状態とする。
【0089】
その状態で、右壁部12dの上端に形成された係合突起7と上壁部12aの右端に形成された係合孔6aの縁部とが、互いに溶着することで一体に固定される。これにより、四角筒状のプロテクタ本体11が構成される。
【0090】
具体的には、係合孔6aに差し込んで上方へ突出する係合突起7の突出部分に対して上方から超音波振動装置に備えたホーン(図示省略)を押し当て超音波を加えることで溶解させる。これにより、該溶解した突出部分と右壁部12dの上端とで、上壁部12aの右端の係合孔6aの縁部を両側から加締めた状態で、係合突起7と係合孔6aの縁部とが第4角部13dにおいて溶着される。
【0091】
さらに、プロテクタ本体11は、外周全体に亘って外装フォーム3が巻き付けられ、さらに、外装フォーム3に対して固定テープ4が周方向に巻き回されて外装フォーム3が外装された状態に固定される(
図1参照)。
【0092】
なお、本実施形態において、プロテクタ本体11は、プロテクタ本体11の突出フランジ6を係合孔6aに差し込んだ状態で互いに溶着し、四角筒状体の形態を維持する構成としたが、この構成に限定しない。例えば、プロテクタ本体11は、係合孔6aと係合突起7とを設けずに、固定テープ4の巻き付けのみによって固定される構成としてもよい。
【0093】
また、プロテクタ本体11を四角筒状体など筒状の形態に保つための手段は、上述したように、外装フォーム3に対して固定テープ4を巻き付けることや、突出フランジ6を係合孔6aに差し込んだ状態で溶着する以外にも他の手段を採用してもよい。
【0094】
例えば、図示省略するが外装フォーム3の裏地が接着層として形成されており(すなわち、裏地がテープになっており)、外装フォーム3がプロテクタ本体11に外装される際に、接着層がプロテクタ本体11の外面に接着されることで外装フォーム3をプロテクタ本体11に外装された状態に固定する構成を採用してもよい。このような構成のプロテクタにおいては、外装フォーム3の裏地に備えた接着層(テープ)が固定テープ4の機能を備えているため、該固定テープ4を備えずに構成してもよい。
【0095】
ここで、プロテクタ本体11を構成する樹脂シート5は、熱可塑性樹脂で形成されることが好ましく、例えば、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0096】
さらに、樹脂シート5は、熱可塑性樹脂発泡シートで形成されることがより好ましく、両面又は片面に非発泡層を有していてもよい。すなわち、樹脂シート5が熱可塑性樹脂発泡シートで形成された場合には、発泡層と該発泡層上に形成された非発泡層とを有する構成としてもよい。樹脂シート5の表面11Aに非発泡層が形成されていることにより、プロテクタ本体11の曲げ弾性が向上して、プロテクタ本体11に収容されるワイヤハーネスWHの保護性能がより向上する。
【0097】
ここで、発泡層の密度は、軽量性と機械的強度とのバランスをより例えば200kg/m3以上1000kg/m3以下であるとともに、発泡層の気泡数密度は、機械的特性の異方性をより確実に防止する点と優れた機械的強度を得る点とから例えば800個/mm3以上1010個/mm3以下であることが好ましい。
【0098】
また、樹脂シート5の厚さは、特に限定されないが、折り曲げの容易さと機械的強度とのバランスをより向上させる点から、例えば0.80mm以上5.0mm以下の範囲内で設定することが特に好ましい。
【0099】
本実施形態における樹脂シート5は、プロテクタ本体11の曲げ弾性をより向上させる点から、発泡層の両面に非発泡層を有する3層構造で構成されており(図示省略)、肉厚t5は、上述したように約1.5mmに設定されている(
図3(b)参照)。
【0100】
上述した実施形態のプロテクタ10は、
図1、
図2に示すように、平板部材としての樹脂シート5(
図4参照)を折り曲げて内部に筒状空間11sが形成され、該筒状空間11sに収容されたワイヤハーネスWHを保護する電線用外装体であって、
図2~
図5に示すように、プロテクタ本体11(樹脂シート5)の表面11A(5A)に、裏面11B(5B)に向かって切り込んだ切込線16が形成されている。
【0101】
このため、プロテクタ10は、外力に対する破損を防ぐことができる。しかも、プロテクタ10は、全体を頑強とせずとも外力に対する破損を防ぐことができるため、全体が大型化せず、また軽量に保つことができる。
【0102】
詳しくは、プロテクタ本体11における切込線16が設けられた壁部12a,12b,12c,12dは、切込線16に沿って変形が生じ易くなるため、該プロテクタ本体11の柔軟性が向上する。
【0103】
したがって、大きな衝撃荷重を受けても同衝撃荷重の伝達方向を分散して該衝撃荷重を吸収することができる。ひいてはプロテクタ10の破損を防ぐことが可能となる。
【0104】
さらに、プロテクタ10は、全体を頑強にすることなく、外力に対する破損を防ぐことができるため、車両等におけるワイヤハーネスWHの配索箇所に設置した際に嵩張ることがなく、筒状空間11sにおける、ワイヤハーネスWHを収容可能な容量を確保することができる。また、プロテクタ10全体の重量が増大することもない。
【0105】
その他にも、切込線16は、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aのみに形成されるため、両面11A,11Bに形成する場合のように両側から切込線16で切り込まれた、極端に薄肉の部分ができず、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの厚さのばらつきを抑えることができる。
【0106】
また、
図2、
図3(a)、
図4に示すように、上述した実施形態のプロテクタ10は、切込線16が、壁部12a,12b,12c,12dの外縁12eよりも面内側の領域、すなわち、切込線形成領域Rに設けられている。換言すると、切込線16は、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの外縁12e(特に12ea)を除いた領域に設けられている。
【0107】
このため、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dにおいて延在する切込線16が、壁部12a,12b,12c,12dの外縁12e(特に12ea)までつながっていないため、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの柔軟性を確保しつつも十分な剛性を確保することができる。
したがって、プロテクタ本体11の破損を防ぐとともにワイヤハーネスWHを確実に保護することが可能となる。
【0108】
また、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの外縁12e(特に12ea)から切込線16に沿って生じる割れの発生を防ぎ、かつプロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dにおいて、切込線16によって形成される六角形15の内側領域(切込線16によって囲まれた領域(例えば、
図3(a)中のハッチングを付した領域))の外縁12e(特に12ea)からの剥離を防ぐことができる。
【0109】
また、
図2、
図3(a)に示すように、上述した実施形態のプロテクタ10は、切込線16が、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aに、複数の六角形15(多角形)を組み合わせた格子模様としての六角格子模様14が構成されるように壁部12a,12b,12c,12dにおいて延びている。
【0110】
前記構成によれば、切込線16に沿う変形によって、衝撃荷重を受けたとき、該衝撃荷重の伝達方向を壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aにおいて分散して該衝撃荷重を吸収することができる。したがって、プロテクタ本体11の破損を防ぐことが可能となる。
【0111】
前記構成によれば、特に格子模様を六角格子模様14とすることで、
図3(a)に示すように、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aにおける、切込線形成領域Rの全体を、六角形15で隙間なく敷き詰めることができる(すなわち、平面充填形とすることができる)。
【0112】
しかも、切込線16によって形成される多角形を六角形15とすることで、
図6に示すように、同じ平面充填形である三角形や四角形と比して、入力された荷重(
図6中の矢印F参照)を分散する方向(
図6中の矢印f参照)を多く確保することができる。よって、衝撃荷重を受けても、該衝撃荷重の伝達方向を分散して該衝撃荷重を吸収することができる。したがって、プロテクタ本体11の破損を防ぐことが可能となる。
【0113】
また、
図4に示すように、上述した実施形態のプロテクタ10は、樹脂シート5の折曲部13a’,13b’,13c’の折り曲げ易さを促進させる組立用切込線17が、樹脂シート5の表面11Aに設けられている。
【0114】
前記構成によれば、樹脂シート5を組立用切込線17に沿って容易に折り曲げることができる。したがって、プロテクタ本体11の組立性を向上させることが可能となる。
【0115】
また、
図2、
図3(a)、
図4に示すように、上述した実施形態のプロテクタ10は、筒状空間11sを内部に有するように折り曲げられた樹脂シート5の曲げ方向が(例えば、
図5中の矢印BD参照)、六角格子模様14における六角形15の平行対角線153a(
図3(a)参照)および平行辺151a(同図参照)と平行な方向(すなわち、長手方向L)に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定されている。
【0116】
前記構成によれば、樹脂シート5の各折曲部13a’,13b’,13c’の曲げ中心となる軸が延びる方向(長手方向L)に対して、六角形15を構成する複数の辺151のうち、傾斜辺151bが鋭角を成すとともに、平行辺151aが平行となる(
図3(a)参照)。
【0117】
このため、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aに、このようなレイアウトで切込線16によって形成される多数の六角形15に、荷重が入力された場合、その荷重は、上壁部12aの長手方向よりも幅方向Wに積極的に分散する(
図6参照)。
【0118】
これにより、プロテクタ本体11が衝撃荷重を受けたとき、筒状空間11sが潰れないようにプロテクタ本体11の剛性の低下を抑制しながらプロテクタ本体11の荷重吸収性を高めることができる。
【0119】
また、仮に、樹脂シート5の第1方向L5(長手方向L)に延びる平行辺151aが、樹脂シート5における各折曲部13a’,13b’,13c’と一致する箇所に形成される場合には、各折曲部13a’,13b’,13c’において組立用切込線17を別途形成せずとも平行辺151aを組立用切込線として活用することができ、平行辺151aによって、樹脂シート5を容易に折り曲げることができる。
【0120】
したがって、樹脂シート5を、筒状空間11sを内部に有するように折り曲げて組み立てる際の組立性を向上させることが可能となる。
【0121】
また、
図1に示すように、プロテクタ本体11は、表面11Aの略全体が緩衝部材としての外装フォーム3に備えた吸音フォーム層3aで覆われているため、プロテクタ10に工具や周辺部品が衝突することに起因してプロテクタ本体11が破損することや異音が発生することを防ぐことができる。
また、
図1に示すように、プロテクタ本体11は、表面11Aの略全体が遮水部材としての遮水フォーム層3bで覆われているため、プロテクタ本体11に遮水機能を付加することができる。
【0122】
また、
図1、
図2、
図5に示すように、プロテクタ本体11は、導電部材としてのアルミシート2で覆われているため、プロテクタ本体11に電磁シールド機能を付加することができる。また、本実施形態のように、プロテクタ本体11の裏面11Bがアルミシート2で覆われた構成とすることで、外力に対して該アルミシート2の破損を防ぐことができる。
【0123】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
以下、本発明の変形例に係るプロテクタ20,30,40,50,60,70,80について説明するが、上述した実施形態のプロテクタ10と同一の構造については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0124】
図7(a)(b)に示すように、変形例1に係るプロテクタ20の壁部12a,12b,12c,12dに切込線16によって形成された六角格子模様14’は、上述した実施形態と同様に、複数の六角形15を組み合わせた六角格子模様であるが、変形例1の六角格子模様14’(六角形15’)は、上述した実施形態の六角格子模様14(六角形15)(
図3(a)参照)の姿勢に対して例えば、30度回転させた姿勢で配設されている。
【0125】
ここで、
図7(a)に示すように、変形例1の六角形15’を構成する複数の辺151’のうち、プロテクタ20の長手方向Lに対して垂直に延びる辺を垂直辺151a’と設定する。さらに、変形例1の六角形15’を構成する複数の対角線153’のうち、プロテクタ20の長手方向Lに対して垂直に延びる対角線を垂直対角線153a’と設定する。
【0126】
要するに、
図7(a)に示すように、変形例1のプロテクタ20は、筒状空間11sを内部に有するように折り曲げられた樹脂シート5の各折曲部13a’,13b’,13c’(
図4参照)における曲げ方向(例えば、
図5中の矢印BD参照)が、六角格子模様14’における六角形15’の垂直対角線153a’および垂直辺151a’に対して垂直な方向(すなわち長手方向L)に延びる軸を中心とする曲げ方向となるように設定されている。
【0127】
前記構成によれば、プロテクタ20の各折曲部13a’,13b’,13c’における曲げ中心となる軸が延びる方向(すなわち、長手方向L)に対して、垂直対角線153a’および垂直辺151a’が直交する(
図7(a)参照)。
このように構成されたプロテクタ20は、上述したプロテクタ10と同様に、前記格子模様を六角格子模様14とすることによる、上述した効果、すなわち、衝撃を受けたときの衝撃荷重の伝達方向を分散して該衝撃荷重を吸収し、結果的に、プロテクタ本体11の破損を防ぐことが可能となるという上述した効果を奏することができる。
【0128】
加えて、プロテクタ20は、壁部12a,12b,12c,12dに上述した六角形15’のレイアウトで切込線16により形成された六角格子模様14’によって、衝撃荷重を受けたとき、プロテクタ本体11の荷重吸収性を、上述した六角格子模様14における六角形15のレイアウト(
図3(a)参照)と比してより一層高めることができる。
【0129】
また、
図8(a)に示すように、変形例2に係るプロテクタ30は、異なる方向に延びる複数の切込線16Aが交差する交差箇所25において、少なくとも1つの前記切込線16Aが非連続に延びるように形成されている。
【0130】
具体的には、変形例2に係るプロテクタ30は、六角格子模様14を構成する複数の六角形15の頂点部152において、互いに交差するように延びる3本の切込線16Aが、何れも非連続に形成されている。3本の切込線16Aは、何れも六角形15の頂点部152に達する手前で途切れて形成され、該頂点部152において互いに交差せずに形成されている。
【0131】
このように構成されたプロテクタ30は、上述したプロテクタ10と同様の効果を奏することに加え、3本の切込線16Aの交差箇所25において切込線16A同士が互いにつながっていないため、つながっている場合と比して該交差箇所25における応力集中を回避することができる。
【0132】
したがって、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dに切込線16Aを形成することによる過度な剛性低下を抑制してワイヤハーネスWHを確実に保護しながらも、プロテクタ30が受ける荷重に対する破損を防ぐことが可能となる。
【0133】
なお、図示省略するが、変形例2に係るプロテクタ30は、3本の切込線16Aの交差箇所25において少なくとも1本の切込線16Aが非連続であればよく、残り2本の切込線16A同士が互いにつながっている構成としてもよい。
【0134】
また、
図8(b)(d)(e)に示すように、変形例3に係るプロテクタ40は、切込線16Bの延在方向の一部が他の部位と比して拡幅して設けられている。
【0135】
具体的には、
図8(b)に示すように、変形例3に係るプロテクタ40は、六角格子模様14を構成する複数の六角形15の頂点部152において交差する3本の切込線16のうち、所定の1本の切込線16Bの延在方向の少なくとも一部(当例では頂点部152の近傍部)に、他の部位の幅(w16)と比して拡幅した拡幅部161が形成されている。この拡幅部161は、延在方向に沿って略一定の幅(w16’)を有して拡幅されている。
【0136】
本実施形態の拡幅部161は、六角形15の頂点部152の近傍に形成されている。詳しくは、拡幅部161の延在方向の一端が六角形15の頂点部152に達するまで、換言すると、他の2本の切込線16と交差するまで延びている。
【0137】
このように構成されたプロテクタ40は、上述したプロテクタ10と同様の効果を奏することに加え、衝撃荷重を受けたときに、拡幅部161が変形のきっかけとなり、拡幅部161を有する切込線16Bが直ちに変形するため、同衝撃荷重を吸収、分散することができる。したがって、プロテクタ40の破損を防ぐことが可能となる。
【0138】
また、
図8(c)(f)に示すように、変形例4に係るプロテクタ50は、異なる方向に延びる複数の切込線16が交差する交差箇所25において、樹脂シート5の厚み方向に貫通する切込孔162が形成されている。
【0139】
具体的には、変形例4に係るプロテクタ50は、六角格子模様14を構成する複数の六角形15の各頂点部152における、3本の切込線16の交差箇所25において、樹脂シート5の厚み方向に貫通する切込孔162が形成されている。
【0140】
このように構成されたプロテクタ50は、上述したプロテクタ10と同様の効果を奏することに加え、衝撃荷重を受けたときに、切込孔162が変形のきっかけとなり、切込孔162の周辺が直ちに変形する。このため、切込線16が集中する交差箇所25において切込孔162が形成されることで、各切込線16に沿う変形が容易になり、同衝撃荷重の伝達方向を分散して該衝撃荷重を吸収することができる。したがって、プロテクタ50の破損を防ぐことが可能となる。
【0141】
また、
図9(a)(b)に示すように、変形例5に係るプロテクタ60は、切込線16Cが、切込みがある部分16Ca(切込み部)とない部分16Cbが交互に現れる破線形状となるように形成されている。
【0142】
このように構成されたプロテクタ60は、上述したプロテクタ10と同様の効果を奏することに加え、プロテクタ60の柔軟性を確保しつつも十分な剛性を確保することができる。したがって、プロテクタ60の破損を防ぐとともにワイヤハーネスWHを確実に保護することが可能となる。
【0143】
なお、切込線16Cを破線形状に形成するに際して、上述したように、切込みがある部分16Caとない部分16Cbが交互に現れる形状に限定せず、変形例5の切込線16Cに関連する、
図9(c)に示す切込線16C’のように、切込みの深い部分16Ca’と浅い部分16Cb’とが交互に現れる形状を採用してもよい。
【0144】
また、
図9(d)に示すように、変形例6に係るプロテクタ70は、六角格子模様14(切込線16A’)は、変形例2(
図8(a)参照)と変形例3(
図8(c)参照)とを組み合わせた構成としている。具体的には、六角格子模様14Dを構成する複数の六角形15の頂点部152(3本の切込線16A’の交差箇所25)において、3本の切込線16Aを非連続に形成するとともに、3本の切込線16A’のうち、少なくとも1つの切込線16A’の端部に切込孔162が形成された構成としてもよい。
【0145】
このように構成されたプロテクタ70は、上述したプロテクタ10と同様の効果を奏することに加え、六角形15の頂点部152において、3本の切込線16A’を非連続とすることで、交差箇所25における応力集中を回避して、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dに切込線16Aを形成することによる過度な剛性低下を抑制できる一方で、切込線16A’の端部に形成された切込孔162が変形のきっかけとなって各切込線16A’に沿う変形が促進され、衝撃荷重を吸収することができる。
【0146】
また、本発明のプロテクタは、切込線16がプロテクタ本体11の表面11Aのみに形成された構成に限定せず、切込線16がプロテクタ本体11の裏面11Bのみに形成された構成、或いは、プロテクタ本体11の両面11A,11Bに形成された構成を採用してもよい。
【0147】
特に、切込線16がプロテクタ本体11の両面11A,11Bに形成された構成とする場合は、
図10(a)(b)に示す変形例7に係るプロテクタ80のように、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12d(
図10(a)(b)には上壁部12aのみ図示)における、表面11Aに設けられた切込線16Dと、裏面11Bに設けられた切込線16Eとは、表面11Aに対して正面視で互いに線状に一致しない構成とすることが好ましい。
【0148】
具体的には、
図10(a)(b)に示すように、変形例7に係るプロテクタ80は、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aのみならず、裏面11Bについても上述した実施形態のプロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aに切込線16Dによって形成された六角格子模様14(
図3(a)参照)と同様の六角格子模様14が切込線16Eによって形成されている。
なお、表面11A側の切込線16Dと裏面11B側の切込線16Eとは共に、切込幅および切込深さについても、何れも上述した実施形態における切込線16と略同じに形成されている。
【0149】
但し、表面11Aの六角格子模様14と裏面11Bの六角格子模様14とは、壁部12a,12b,12c,12dの正面視で完全に一致せずに、例えば、長手方向Lに対して反時計回りに30度の角度だけ傾斜した方向(
図10(a)中の矢印L’参照)において、六角形15の半ピッチ分(六角形15のセルサイズw15の半分)だけ互いにずらしたレイアウトとしている。
【0150】
変形例7に係るプロテクタ80は、上述したように、プロテクタ本体11の表面11Aに切込線16Dが形成されるとともに裏面11Bに切込線16Eが形成されるため、プロテクタ本体11の表面11A側への曲げ変形に対する柔軟性と裏面11B側への曲げ変形に対する柔軟性が向上する。したがって、プロテクタ本体11の破損を防ぐことが可能となる。
【0151】
さらに、プロテクタ本体11の表面11Aにおける切込線16Dと裏面11Bにおける切込線16Eとが、前記表面11Aの正面視で互いに線状に一致しない(すなわち、夫々の切込線16D,16Eが延在方向に連続するように一致しない)レイアウトとすることができる(
図10(a)参照)。このため、特に、
図10(b)に示すように、プロテクタ本体11の厚み方向において、これら切込線16D,16Eによって挟まれた極端な薄肉部分が形成されることを極力回避することができる。したがって、プロテクタ本体11に切込線16D,16Eを形成することによる、該プロテクタ本体11の剛性が低下して、該プロテクタ本体11の破損を防ぐことが可能となる。
【0152】
さらに、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dの表面11Aと裏面11Bとの各六角格子模様14を、上述したように、同じ模様であるが、位相の異なるレイアウトとすることで、例えば、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dにおける、切込線16D,16Eによって構成される所定の模様(切込線16D,16Eによって囲まれた領域(例えば、
図10(a)中のハッチングを付した領域))が、壁部12a,12b,12c,12dの表面11A又は裏面11Bのいずれか一方の面のみに小さく構成された場合に比べて、同程度の柔軟性を確保しつつ、プロテクタ本体11の表面11Aにおける所定の模様と裏面11Bにおける所定の模様とを大きく形成することができる。このため、プロテクタ本体11の壁部12a,12b,12c,12dにおける、所定の模様の切込線16D,16Eからの剥離を防ぐことができる。したがって、プロテクタ80の破損を防ぐことが可能となる。
【0153】
なお、変形例7に係るプロテクタ80のように、表面11A側の切込線16Dと裏面11B側の切込線16Eとが共に、樹脂シート5の厚みの半分の切込深さで形成されている場合、の表面11Aにおける切込線16Dと裏面11Bにおける切込線16Eとの交差箇所において、切込線16D,16Eが厚み方向に連通する。
【0154】
これにより、切込線16D,16Eを、樹脂シート5の厚み方向に貫通する貫通孔として形成することができるため、上述した変形例4に係るプロテクタ50において、樹脂シート5の厚み方向に貫通する切込孔162を形成したことによる効果と同様の効果を奏することができる。
【0155】
また、本発明は、上述した実施形態および変形例1~7の構成に限定されず、他の構成を採用してもよい。
【0156】
例えば、本発明のプロテクタ10に備えた遮水部材は、上述した実施形態においては、外装フォーム3の一部を成す遮水フォーム層3bによって形成されたが(
図1参照)、この構成に限定せず、例えば、外装フォーム3を吸音材として、吸音フォーム層3aのみで形成し、その表面を撥水処理するか、撥水性のある布等で覆うことで遮水機能を外装フォーム3にもたせてもよい。
【0157】
或いは、プロテクタ10は、吸音フォーム層3aのみで形成した外装フォーム3とは別に遮水部材を備えた構成としてもよい。ここで、遮水部材は、例えば、合成ゴム(例えば、加硫ゴム、繊維補強加硫ゴム、オレフィン系熱可塑性ゴム等)又は合成樹脂(例えば、塩化ビニル樹脂、繊維補強塩化ビニル樹脂、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、熱可塑性ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル樹脂等)からなる遮水シートや遮水板などを挙げることができる。
【0158】
また、遮水部材と緩衝部材とのうち少なくとも一方は、上述した実施形態の外装フォーム3のように、プロテクタ本体11の表面11Aに備えた構成に限らず、裏面11Bに備えた構成としてもよい。
【0159】
例えば、外装フォーム3を、プロテクタ本体11の裏面11Bに備えることで、ワイヤハーネスWHを安定して保持することができ、かつワイヤハーネスWHとの衝突に起因した破損及び異音の発生を防ぐことができる。
【0160】
他の実施形態として、導電部材は、アルミニウム或いはアルミニウム合金によって形成されたアルミシート2で形成するに限定せず、プロテクタ10に電磁波を遮蔽する電磁シールド機能を付加することができる材料であれば、例えば、銅、銅合金、ステンレス、鉄等の金属等導電材料で形成してもよい。
【0161】
また、導電部材の形状は、上述した実施形態で採用したアルミ箔のように薄肉のシート状に限定せず、編組、プレス成形等で所定の形状に加工した金属板であってもよい。このようにプロテクタ本体11に導電部材を備えることで、プロテクタ10に電磁波を遮蔽する電磁シールド機能を付加することができる。
【0162】
なお、導電部材は、上述した実施形態のアルミシート2のように、プロテクタ本体11の裏面11Bに備えるに限らず、表面11Aに備えた構成としてもよい。
【0163】
他の実施形態として、切込線16,16A,16A’,16B,16C,16D,16Eによって形成される六角格子模様14等の模様は、プロテクタ本体11における、全ての壁部12a,12b,12c,12dに形成された構成に限らず、少なくとも1つの壁部における、少なくとも一部に形成された構成としてもよい。
なお、本発明の多角形を六角形で形成する場合、上述した六角形15のように正六角形に限らない。
【0164】
また、他の実施形態として、組立用切込線17は、上述した実施形態のように、樹脂シート5の表面11Aのみに形成された構成に限らず、表面11Aと裏面11Bとのうち、少なくとも一方に形成された構成としてもよい。また、組立用切込線17は、上述した実施形態のように、切込線16が形成された側の面と同じ側の面に限らず、異なる側の面に形成された構成としてもよい。
【0165】
また、本発明の電線用外装体は、本実施形態のプロテクタ本体11のように四角筒状に形成するに限らず、例えば、長手方向Lに直交する方向の断面が四角形以外の多角形の筒状、或いは円筒状に形成してもよい。
【0166】
なお、この発明と実施形態または変形例との対応において、この発明の電線用外装体は、実施形態のプロテクタ10および変形例のプロテクタ20,30,40,50,60,70,80のうち、何れかのプロテクタに対応し、以下同様に、
導電部材は、アルミシート2に対応し、
緩衝部材は、外装フォームに備えた吸音フォーム層3aに対応し、
遮水部材は、外装フォームに備えた遮水フォーム層3bに対応し、
平板部材は、樹脂シート5に対応し、
六角形の所定の対角線は、平行対角線153aに対応し、
壁部の外縁よりも面内側の領域…切込線形成領域Rに対応し、
六角形の所定の対角線と平行な方向は、長手方向Lに対応し、
六角形の所定の対角線に対して垂直となる方向は、六角形が上壁部、下壁部に形成されている場合における幅方向Wに対応し、
六角形の所定の対角線に対して垂直となる方向は、六角形が左壁部、右壁部に形成されている場合における高さ方向Hに対応し、
六角格子模様における六角形の所定の対角線と平行な方向に延びる軸を中心とする曲げ方向は、曲げ方向BDに対応するものとする。
【符号の説明】
【0167】
10,20,30,40,50,60,70,80…プロテクタ
2…アルミシート
3a…外装フォームに備えた吸音フォーム層
3b…外装フォームに備えた遮水フォーム層
5…樹脂シート
11s…筒状空間
11A…樹脂シートの表面
11B…樹脂シートの裏面
12a,12b,12c,12d…壁部
12e…壁部の外縁
14,14’…六角格子模様
15,15’…六角形
16,16A,16A’,16B,16C,16C’,16D,16E…切込線
17…組立用切込線
153a…平行対角線
WH…ワイヤハーネス
R…切込線形成領域
L…長手方向
W…六角形が上壁部、下壁部に形成されている場合における幅方向
H…六角形が左壁部、右壁部に形成されている場合における高さ方向
BD…曲げ方向