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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133681
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/04 20140101AFI20220907BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B23K26/04
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032506
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣沢 俊一郎
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168CA06
4E168CA13
4E168CB07
4E168CB18
4E168CB22
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F063AA48
5F063BA33
5F063BA34
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063DD26
5F063DE12
5F063DE17
(57)【要約】
【課題】集光位置の違いに起因する加工品質の低下を抑制しつつ、調整作業を削減してダウンタイムを短縮することができるレーザー加工装置を提供すること。
【解決手段】レーザー加工装置1は、被加工物100の上面101を基準とする第1高さの位置にレーザービーム21を集光させて形成した第1溝の中心線と、第1高さとは異なる第2高さの位置にレーザービーム21を集光させて形成した第2溝の中心線と、のズレ量に基づいて、レーザービーム21の集光点の高さ位置とズレ量との相関関係を記憶する記憶部91と、記憶部91に記憶された相関関係に基づいて、所定の高さ位置に集光点を位置付けた際に形成される加工溝のズレ量を予測して算出する算出部92と、所定の高さ位置に集光点を位置付けた状態で加工する時に、算出部92で算出されたズレ量を相殺するように集光点の水平方向の位置を補正する補正部93と、を含む制御ユニット90を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物に対してレーザービームを集光照射する集光レンズを備えたレーザービーム照射ユニットと、
該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを加工送り方向に相対的に移動させる加工送りユニットと、
該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを該加工送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に移動させる割り出し送りユニットと、
該集光レンズを該チャックテーブルの保持面と垂直な方向に移動させ集光点の高さ位置を調整する集光点位置調整ユニットと、
該被加工物を撮像する撮像ユニットと、
該撮像ユニットによって撮像された画像を表示する表示ユニットと、
制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
被加工物の上面を基準とする第1高さの位置に該レーザービームを集光させて該被加工物に形成した第1溝を撮像して得られる第1画像における該第1溝の中心線と、被加工物の上面を基準としかつ該第1高さとは異なる第2高さの位置に該レーザービームを集光させて該被加工物に形成した第2溝を撮像して得られる第2画像における該第2溝の中心線と、のズレ量に基づいて、該レーザービームの集光点の高さ位置と該ズレ量との相関関係を記憶する記憶部と、
該記憶部に記憶された該相関関係に基づいて、所定の高さ位置に集光点を位置付けた際に形成される加工溝のズレ量を予測して算出する算出部と、
該所定の高さ位置に集光点を位置付けた状態で加工する時に、該算出部で算出された該ズレ量を相殺するように該集光点の水平方向の位置を補正する補正部と、
を含むことを特徴とする、レーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物を分割してチップを製造するために、被加工物に対してレーザービームを照射して加工溝を形成するレーザー加工装置が用いられる(特許文献1参照)。一般に、レーザー加工装置では、搭載したレーザー発振器からミラーやレンズ等の様々な光学部品を経て伝播されたレーザービームが、集光レンズによって被加工物を加工する加工点に集光照射するよう構成される。
【0003】
レーザービームが集光レンズの中心に対してズレて入射されていたり、傾いて入射されていたりすると、加工溝が斜めに形成されたり、加工時に飛散するデブリが加工溝の片側に偏って形成されたりと様々な問題が引き起こされる可能性がある。したがって、レーザービームは、角度や位置ズレを極力抑えて光軸調整される必要があり、集光位置をオフセットさせて被加工物を加工した際の加工痕の位置ズレ量が所定の許容値の範囲内に収まるように調整されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-275912号公報
【特許文献2】特開2020-196038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被加工物の表面に集光させた状態(ジャストフォーカス)でストリート内に一対の加工ラインを形成した後、集光位置をオフセットさせた状態(デフォーカス)で一対の加工ラインの間を加工することで、膜剥がれを抑制しつつパス数を減らす加工方法がある。この加工方法を用いる場合、特許文献2に記載の方法等により加工痕の位置ズレ量が最小限に収まるように調整されてはいるが、許容値の範囲内での位置ズレは起きてしまうため、両端の加工痕と中央の加工痕との位置ズレによってデラミネーションの発生を抑制しきれなくなる場合がある。
【0006】
そこで、現状では、被加工物を加工する際の集光位置における加工痕の位置ズレ量をオペレータが確認し、確認したズレ量を補正するように制御ユニット上で設定するという作業を行っている。しかしながら、このような方法では、異なる集光位置で加工したい場合に、都度確認作業が必要であるため煩雑である。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、集光位置の違いに起因する加工品質の低下を抑制しつつ、調整作業を削減してダウンタイムを短縮することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に対してレーザービームを集光照射する集光レンズを備えたレーザービーム照射ユニットと、該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを加工送り方向に相対的に移動させる加工送りユニットと、該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを該加工送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に移動させる割り出し送りユニットと、該集光レンズを該チャックテーブルの保持面と垂直な方向に移動させ集光点の高さ位置を調整する集光点位置調整ユニットと、該被加工物を撮像する撮像ユニットと、該撮像ユニットによって撮像された画像を表示する表示ユニットと、制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、被加工物の上面を基準とする第1高さの位置に該レーザービームを集光させて該被加工物に形成した第1溝を撮像して得られる第1画像における該第1溝の中心線と、被加工物の上面を基準としかつ該第1高さとは異なる第2高さの位置に該レーザービームを集光させて該被加工物に形成した第2溝を撮像して得られる第2画像における該第2溝の中心線と、のズレ量に基づいて、該レーザービームの集光点の高さ位置と該ズレ量との相関関係を記憶する記憶部と、該記憶部に記憶された該相関関係に基づいて、所定の高さ位置に集光点を位置付けた際に形成される加工溝のズレ量を予測して算出する算出部と、該所定の高さ位置に集光点を位置付けた状態で加工する時に、該算出部で算出された該ズレ量を相殺するように該集光点の水平方向の位置を補正する補正部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、集光位置の違いに起因する加工品質の低下を抑制しつつ、調整作業を削減してダウンタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、レーザービームの光軸の調整状態の第一例を示す模式図である。
図3図3は、図2に示す調整状態におけるレーザービームによる加工状態の一例を示す平面図である。
図4図4は、レーザービームの光軸の調整状態の第二例を示す模式図である。
図5図5は、図4に示す調整状態におけるレーザービームによる加工状態の一例を示す平面図である。
図6図6は、レーザービームの光軸の調整状態の第三例を示す模式図である。
図7図7は、図6に示す調整状態におけるレーザービームによる加工状態の一例を示す平面図である。
図8図8は、第1溝を撮像して得られる第1画像を示す図である。
図9図9は、第2溝を撮像して得られる第2画像を示す図である。
図10図10は、第3溝を撮像して得られる第3画像を示す図である。
図11図11は、集光点の高さ位置と水平方向のズレ量との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
まず、本発明の実施形態に係るレーザー加工装置1の構成について図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係るレーザー加工装置1の構成例を示す斜視図である。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態のレーザー加工装置1は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向である。
【0013】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20と、加工送りユニット40と、割り出し送りユニット50と、集光点位置調整ユニット60と、撮像ユニット70と、表示ユニット80と、制御ユニット90と、を備える。実施形態に係るレーザー加工装置1は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、レーザービーム照射ユニット20によってレーザービーム21を照射することにより、被加工物100を加工する装置である。レーザー加工装置1による被加工物100の加工は、例えば、被加工物100の表面に溝を形成する溝加工、または分割予定ラインに沿って被加工物100を切断する切断加工等である。
【0014】
被加工物100は、実施形態において、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、またはリチウムタンタレート(LiTa)等を基板とする円板状の半導体デバイスウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハであって、確認加工用のダミーウェーハである。なお、被加工物100は実施形態に限定されず、本発明では円板状でなくともよい。被加工物100は、例えば、環状フレーム110が貼着されかつ被加工物100の外径よりも大径なテープ111が被加工物100の裏面に貼着されて、環状フレーム110の開口内に支持される。
【0015】
チャックテーブル10は、被加工物100を保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面11は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面11は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。チャックテーブル10は、保持面11上に載置された被加工物100を吸引保持する。チャックテーブル10の周囲には、被加工物100を支持する環状フレーム110を挟持するクランプ部12が複数配置されている。
【0016】
チャックテーブル10は、回転ユニット13によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット13は、X軸方向移動プレート14に支持される。回転ユニット13およびチャックテーブル10は、X軸方向移動プレート14を介して、加工送りユニット40によりX軸方向に移動される。回転ユニット13およびチャックテーブル10は、X軸方向移動プレート14、加工送りユニット40およびY軸方向移動プレート15を介して、割り出し送りユニット50によりY軸方向に移動される。
【0017】
レーザービーム照射ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、被加工物100を加工するための所定の波長を有するパルス状のレーザービーム21を照射するユニットである。レーザービーム照射ユニット20は、例えば、レーザービーム21を発振するレーザー発振器と、集光レンズ22(図2図4および図6参照)と、レーザー発振器と集光レンズ22との間のレーザービーム21の光路上に設けられる各種の光学部品と、を含む。集光レンズ22は、レーザー発振器から発振され各種の光学部品で伝搬されたレーザービーム21を、チャックテーブル10の保持面11に保持された被加工物100に集光して、被加工物100に照射させる。
【0018】
加工送りユニット40は、チャックテーブル10とレーザービーム照射ユニット20とを加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。加工送りユニット40は、実施形態において、チャックテーブル10をX軸方向に移動させる。加工送りユニット40は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。
【0019】
加工送りユニット40は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。加工送りユニット40は、周知のボールねじ41と、周知のパルスモータ42と、周知のガイドレール43と、を含む。ボールねじ41は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ42は、ボールねじ41を軸心回りに回転させる。ガイドレール43は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール43は、Y軸方向移動プレート15に固定して設けられる。
【0020】
割り出し送りユニット50は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。割り出し送りユニット50は、実施形態において、チャックテーブル10をY軸方向に移動させる。割り出し送りユニット50は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。
【0021】
割り出し送りユニット50は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。割り出し送りユニット50は、周知のボールねじ51と、周知のパルスモータ52と、周知のガイドレール53と、を含む。ボールねじ51は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ52は、ボールねじ51を軸心回りに回転させる。ガイドレール53は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール53は、装置本体2に固定して設けられる。
【0022】
集光点位置調整ユニット60は、レーザービーム照射ユニット20の集光レンズ22(図2図4および図6参照)によって集光されたレーザービーム21の集光点23(図2図4および図6参照)を、チャックテーブル10の保持面11に垂直な光軸方向に移動させ、集光点23の高さ位置を調整するユニットである。より詳しくは、集光点位置調整ユニット60は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを集光点位置調整方向であるZ軸方向に相対的に移動させる。集光点位置調整ユニット60は、実施形態において、レーザービーム照射ユニット20のうち、少なくとも集光レンズ22をZ軸方向に移動させる。集光点位置調整ユニット60は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2から立設した柱3に設置されている。
【0023】
集光点位置調整ユニット60は、レーザービーム照射ユニット20のうち、少なくとも集光レンズ22(図2図4および図6参照)をZ軸方向に移動自在に支持する。集光点位置調整ユニット60は、周知のボールねじ61と、周知のパルスモータ62と、周知のガイドレール63と、を含む。ボールねじ61は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ62は、ボールねじ61を軸心回りに回転させる。ガイドレール63は、レーザービーム照射ユニット20をZ軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール63は、柱3に固定して設けられる。
【0024】
撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を撮像する。撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラまたは赤外線カメラを含む。撮像ユニット70は、例えば、レーザービーム照射ユニット20の集光レンズ22(図2図4および図6参照)に隣接するように固定されている。撮像ユニット70は、被加工物100を撮像して、被加工物100とレーザービーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット90に出力する。
【0025】
表示ユニット80は、液晶表示装置等により構成される表示部である。表示ユニット80は、例えば、加工条件の設定画面、撮像ユニット70が撮像した被加工物100の状態、加工動作の状態等を、表示面に表示させる。表示ユニット80の表示面がタッチパネルを含む場合、表示ユニット80は、入力部を含んでもよい。入力部は、オペレータが加工内容情報を登録する等の各種操作を受付可能である。入力部は、キーボード等の外部入力装置であってもよい。表示ユニット80は、表示面に表示される情報や画像が入力部等からの操作により切り換えられる。表示ユニット80は、報知装置を含んでもよい。報知装置は、音および光の少なくとも一方を発してレーザー加工装置1のオペレータに予め定められた報知情報を報知する。報知装置は、スピーカーまたは発光装置等の外部報知装置であってもよい。
【0026】
制御ユニット90は、レーザー加工装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物100に対する加工動作をレーザー加工装置1に実行させる。制御ユニット90は、レーザービーム照射ユニット20、加工送りユニット40、割り出し送りユニット50、集光点位置調整ユニット60、撮像ユニット70、および表示ユニット80を制御する。制御ユニット90は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、レーザー加工装置1の制御を行う。
【0027】
制御ユニット90は、例えば、撮像ユニット70に被加工物100を撮像させる。制御ユニット90は、例えば、撮像ユニット70によって撮像した画像の画像処理を行う。制御ユニット90は、例えば、画像処理によって被加工物100の加工ラインを検出する。制御ユニット90は、例えば、レーザービーム21の集光点23(図2図4および図6参照)である加工点が加工ラインに沿って移動するように加工送りユニット40を駆動させると共に、レーザービーム照射ユニット20にレーザービーム21を照射させる。制御ユニット90は、記憶部91と、算出部92と、補正部93と、を含む。制御ユニット90の記憶部91、算出部92および補正部93の機能については、後述にて説明する。
【0028】
次に、レーザービーム21の光軸24の調整状態、および集光点23の高さ位置の差異による加工状態の差異について説明する。図2は、レーザービーム21の光軸24の調整状態の第一例を示す模式図である。図3は、図2に示す調整状態におけるレーザービーム21による加工状態の一例を示す平面図である。図4は、レーザービーム21の光軸24の調整状態の第二例を示す模式図である。図5は、図4に示す調整状態におけるレーザービーム21による加工状態の一例を示す平面図である。図6は、レーザービーム21の光軸24の調整状態の第三例を示す模式図である。図7は、図6に示す調整状態におけるレーザービーム21による加工状態の一例を示す平面図である。
【0029】
なお、図3図5および図7は、被加工物100の上面101に形成された一対の第1加工ライン120と、第1加工ライン120の間に形成された第2加工ライン121と、を示す。第1加工ライン120は、レーザービーム21の集光点23の高さ位置を被加工物100の上面101に調整させた状態、すなわちデフォーカスが0μm(ジャストフォーカス)の状態で形成される。デフォーカスが0μm(ジャストフォーカス)の状態で形成された第1加工ライン120の加工幅(Y軸方向の幅)は、5μm以上15μm以下程度である。第2加工ライン121は、第1加工ライン120を形成した後、集光点23の高さ位置を所定量(例えば、+300μm)オフセットさせた状態で、一対の第1加工ライン120の間に形成される。デフォーカスが+300μmの状態で形成された第2加工ライン121の加工幅は、20μm以上50μm以下程度である。
【0030】
図2に示すように、第一例のレーザービーム21の光軸24の調整状態では、光軸24が集光レンズ22の中心に入射する。この場合、集光レンズ22を通過したレーザービーム21は、光軸25がZ軸方向に平行、すなわち直進する。したがって、集光点23の高さ位置をオフセットした場合でも、集光レンズ22を通過したレーザービーム21の光軸25は、集光点23に対して水平方向(X-Y平面方向)にズレない。
【0031】
すなわち、図2に示す第一例の調整状態では、レーザービーム21のY軸方向中心が一定であるので、加工点に対して集光点23をZ軸方向にオフセットしても、加工痕のY軸方向中心がズレない。したがって、図2に示す調整状態におけるレーザービーム21による加工状態では、図3に示すように、一対の第1加工ライン120の間の中心に沿って、第2加工ライン121が形成される。
【0032】
図4に示すように、第二例のレーザービーム21の光軸24の調整状態では、光軸24が集光レンズ22の中心に対して-Y方向にズレた位置に入射する。この場合、集光レンズ22を通過したレーザービーム21は、光軸25がZ軸方向に対して+Y方向に傾く。したがって、集光点23の高さ位置をオフセットした場合、集光レンズ22を通過したレーザービーム21の光軸25は、集光点23より上方では集光点23に対して-Y方向にズレ、集光点23より下方では集光点23に対して+Y方向にズレる。
【0033】
すなわち、図4に示す第二例の調整状態では、レーザービーム21のY軸方向中心が-Z方向に進むにつれて-Y方向から+Y方向に向かって変化するので、加工点に対して集光点23をZ軸方向にオフセットすると、加工痕のY軸方向中心がズレる。したがって、図4に示す調整状態におけるレーザービーム21による加工状態では、図5に示すように、一対の第1加工ライン120の間の中心から-Y方向にズレた位置に、第2加工ライン121が形成される。
【0034】
図6に示すように、第三例のレーザービーム21の光軸24の調整状態では、光軸24が集光レンズ22の中心に対して+Y方向にズレた位置に入射する。この場合、集光レンズ22を通過したレーザービーム21は、光軸25がZ軸方向に対して-Y方向に傾く。したがって、集光点23の高さ位置をオフセットした場合、集光レンズ22を通過したレーザービーム21の光軸25は、集光点23より上方では集光点23に対して+Y方向にズレ、集光点23より下方では集光点23に対して-Y方向にズレる。
【0035】
すなわち、図6に示す第三例の調整状態では、レーザービーム21のY軸方向中心が-Z方向に進むにつれて+Y方向から-Y方向に向かって変化するので、加工点に対して集光点23をZ軸方向にオフセットすると、加工痕のY軸方向中心がズレる。したがって、図6に示す調整状態におけるレーザービーム21による加工状態では、図7に示すように、一対の第1加工ライン120の間の中心から+Y方向にズレた位置に、第2加工ライン121が形成される。
【0036】
次に、図1に示すレーザー加工装置1の制御ユニット90の機能について詳細に説明する。図8は、第1溝130を撮像して得られる第1画像71を示す図である。図9は、第2溝140を撮像して得られる第2画像72を示す図である。図10は、第3溝150を撮像して得られる第3画像73を示す図である。図11は、集光点23の高さ位置と水平方向のズレ量132、142との関係の一例を示す図である。図8図9および図10は、撮像ユニット70によって被加工物100の上面101の所定の撮像領域を撮像した画像である。
【0037】
図8に示す第1画像71の第1溝130は、被加工物100の上面101を基準とする第1高さ26(図11参照)の位置にレーザービーム21を集光させることによって被加工物100に形成される。第1溝130の中心線131は、基準線74に対して-Y方向へズレ量132だけズレている。なお、基準線74は、撮像ユニット70が撮像する撮像領域に予め設定されたX軸方向に平行な線である。
【0038】
図9に示す第2画像72の第2溝140は、被加工物100の上面101を基準としかつ第1高さ26とは異なる第2高さ27(図11参照)の位置にレーザービーム21を集光させることによって被加工物100に形成される。第2溝140の中心線141は、基準線74に対して+Y方向へズレ量142だけズレている。
【0039】
図10に示す第3画像73の第3溝150は、被加工物100の上面101にレーザービーム21を集光させることによって被加工物100に形成される。第3溝150の中心線151は、基準線74と一致する。
【0040】
図1に示す制御ユニット90の記憶部91は、レーザービーム21の集光点23の高さ位置(第1高さ26および第2高さ27)とズレ量132、142との相関関係94(図11参照)を記憶する。レーザービーム21の集光点23の高さ位置とズレ量132、142との相関関係94は、図11に示すように、第1画像71における第1溝130の中心線131と、第2画像72における第2溝140の中心線141と、のズレ量132、142に基づくものである。
【0041】
なお、図11に示す相関関係94は、集光点23の高さ位置が被加工物100の上面101である時にズレ量が0μmである、すなわち原点を通る比例関係である。また、実施形態では、第1高さ26を被加工物100の上面101より下方(-Z方向)の位置に設定し、第2高さ27を被加工物100の上面101より上方(+Z方向)の位置に設定したが、いずれかを被加工物100の上面101に設定してもよい。相関関係94は、比例関係であるので、少なくとも2点の高さ位置でのズレ量に基づいて算出できる。
【0042】
算出部92は、記憶部91に記憶された相関関係94に基づいて、所定の高さ位置(例えば、図11に示す高さ位置28)に集光点23を位置付けた際に形成される加工溝のズレ量(例えば、図11に示すズレ量162)を予測して算出する。例えば、算出部92は、加工時の集光点23の高さ位置(デフォーカス量)がレーザー加工装置1の加工条件に入力された場合、デフォーカス量に対応するズレ量を自動的に算出する。
【0043】
補正部93は、所定の高さ位置(例えば、図11に示す高さ位置28)に集光点23を位置付けた状態で加工する時に、算出部92で算出されたズレ量(例えば、図11に示すズレ量162)を相殺するように集光点23の水平方向の位置を自動的に補正する。すなわち、補正部93は、算出部92で算出されたズレ量に対して、Y軸方向(割り出し送り方向)に正負を反転した座標位置に集光点23を補正する。
【0044】
なお、記憶部91の機能は、前述した制御ユニット90の記憶装置により実現される。また、算出部92および補正部93の機能は、記憶装置に記憶されたプログラムを、前述した制御ユニット90の演算処理装置が実行することにより実現される。
【0045】
以上説明したように、実施形態に係るレーザー加工装置1は、集光点23の高さ位置(第1高さ26および第2高さ27)と加工溝のズレ量132、142との相関関係94を予め測定して記憶部91に記憶させておき、所定の高さ位置28に集光点23を位置付けた状態で加工する時に算出部92が自動でズレ量162を算出する。更に、実施形態のレーザー加工装置1は、算出部92が算出したズレ量162に基づいて、補正部93がズレ量162を相殺するように自動で集光点23の水平方向の位置を補正する。これにより、調整作業を削減してダウンタイムを短縮するとともに、集光位置の違いに起因する加工品質の低下を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル
11 保持面
20 レーザービーム照射ユニット
21 レーザービーム
22 集光レンズ
23 集光点
24、25 光軸
26 第1高さ
27 第2高さ
28 高さ位置
40 加工送りユニット
50 割り出し送りユニット
60 集光点位置調整ユニット
70 撮像ユニット
71 第1画像
72 第2画像
73 第3画像
74 基準線
80 表示ユニット
90 制御ユニット
91 記憶部
92 算出部
93 補正部
94 相関関係
100 被加工物
101 上面
120 第1加工ライン
121 第2加工ライン
130 第1溝
140 第2溝
150 第3溝
131、141、151 中心線
132、142、162 ズレ量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11