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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133682
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】切削ブレードの管理方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/12 20060101AFI20220907BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20220907BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20220907BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B27/06 M
B23Q17/09 C
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032507
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古場 光彦
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C029DD04
3C029DD20
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA22
3C034CB03
3C034CB13
3C034DD10
3C034DD18
3C034DD20
3C158AA03
3C158AC02
3C158BA01
3C158BC01
3C158BC02
3C158CB03
3C158DA17
5F063AA23
5F063AA40
5F063AA48
5F063DD20
5F063DE23
5F063DE36
(57)【要約】
【課題】鋸刃状の切削ブレードの破損を自動的に検出できる切削ブレードの管理方法を提供すること。
【解決手段】刃先の形状が鋸刃状の切削ブレード21を管理する切削ブレードの管理方法は、検知部31を切削ブレード21の径方向に進退させ、回転する切削ブレード21の刃先で受光部が受光する光が部分的に遮られて、受光量が所定範囲になる測定位置に検知部31を配置する検知部位置調整ステップと、所定時間毎の受光量の平均値の変動から切削ブレード21の破損の有無を判定しながら、被加工物100を切削ブレード21で切削する切削ステップと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードが装着されるスピンドルを含む切削ユニットと、切削ブレードの破損を検出する破損検出ユニット、を備える切削装置を用いて、刃先の形状が鋸刃状の該切削ブレードを管理する切削ブレードの管理方法であって、
該破損検出ユニットは、該切削ブレードが進入する隙間を挟んで対向する発光部及び受光部を有する検知部と、該受光部に入射した光量に対応する値の電気信号を出力する光電変換部と、該電気信号の変動から該切削ブレードの破損を判定する判定部と、を有し、
該検知部を該切削ブレードの径方向に進退させ、回転する該切削ブレードの刃先で該受光部が受光する光が部分的に遮られて、受光量が所定範囲になる測定位置に該検知部を配置する検知部位置調整ステップと、
所定時間毎の該受光量の平均値の変動から該切削ブレードの破損の有無を判定しながら、被加工物を該切削ブレードで切削する切削ステップと、を有することを特徴とする切削ブレードの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハや樹脂パッケージ基板等の被加工物の切削に、スピンドルにブレードを装着した切削装置が用いられることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2879445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような切削装置では、切削ブレードは、切削中、被加工物が動いたり、チップが飛散して衝突したりするなどにより、破損する事がある。切削ブレードが部分的に破損した場合、見た目でも判別がつきにくく、切削が続行されることがあり、その場合、切削により形成される切削溝の欠けが非常に大きくなってしまうなど異常加工となってしまう。そこで、切削中の切削ブレードの破損を常時検出するブレード破損検出機構が考案された。
【0005】
このブレード破損検出機構は、切削ブレードを挟んで並ぶ発光部と受光部を備え、受光部の単位時間当たりの平均受光量が増加した際に、切削ブレードの欠け(破損)を検出し、加工を停止できるものである。このブレード破損検出機構は、破損していない切削ブレードの刃先を、直径数mmの光芒に対し適切な測定位置に検知部を位置付ける事が重要になる。光芒を遮らない位置に配置すると破損を全く検出出来ず、光芒を全て隠してしまった場合は、刃先だけの破損だと検出できない。そのため、切削ブレードの回転を停止した状態で検知部を切削ブレードの径方向に進退させ、適切な位置に微調整する。
【0006】
切削ブレードの中でも、延性材料をバリの発生を抑制して切削できる鋸刃状のメタルソーが用いられる場合、これまで切削ブレードの形状からしてブレード破損検出機構によるブレード破損検出は難しいとされてきた。しかし、鋸刃状のメタルソーを大量生産に用い、製造不良を抑えるためには、自動的な破損検出は必須であり、メタルソーの導入が進まない要因となっていた。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、鋸刃状の切削ブレードの破損を自動的に検出できる切削ブレードの管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削ブレードの管理方法は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードが装着されるスピンドルを含む切削ユニットと、切削ブレードの破損を検出する破損検出ユニット、を備える切削装置を用いて、刃先の形状が鋸刃状の該切削ブレードを管理する切削ブレードの管理方法であって、該破損検出ユニットは、該切削ブレードが進入する隙間を挟んで対向する発光部及び受光部を有する検知部と、該受光部に入射した光量に対応する値の電気信号を出力する光電変換部と、該電気信号の変動から該切削ブレードの破損を判定する判定部と、を有し、該検知部を該切削ブレードの径方向に進退させ、回転する該切削ブレードの刃先で該受光部が受光する光が部分的に遮られて、受光量が所定範囲になる測定位置に該検知部を配置する検知部位置調整ステップと、所定時間毎の該受光量の平均値の変動から該切削ブレードの破損の有無を判定しながら、被加工物を該切削ブレードで切削する切削ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、鋸刃状の切削ブレードの破損を自動的に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る切削ブレードの管理方法を実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、鋸刃状の切削ブレードを示す側面図である。
図3図3は、鋸刃状の切削ブレードを示す断面図である。
図4図4は、図1の切削装置の要部の構成例を示す側面図である。
図5図5は、図1の切削装置の要部の構成例を示す断面図である。
図6図6は、図1の切削装置が取得する受光量の測定結果の第1例を示すグラフである。
図7図7は、図1の切削装置が取得する受光量の測定結果の第2例を示すグラフである。
図8図8は、実施形態に係る切削ブレードの管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る切削ブレードの管理方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る切削ブレードの管理方法を実施する切削装置1の構成例を示す斜視図である。図2は、鋸刃状の切削ブレード21を示す側面図である。図3は、鋸刃状の切削ブレード21を示す断面図であり、図2の(III)-(III)断面図である。図4は、図1の切削装置1の要部の構成例を示す側面図である。図5は、図1の切削装置1の要部の構成例を示す断面図である。図6は、図1の切削装置1が取得する受光量の測定結果の第1例を示すグラフである。図7は、図1の切削装置1が取得する受光量の測定結果の第2例を示すグラフである。切削装置1は、図1に示すように、チャックテーブル10と、切削ユニット20と、破損検出ユニット30と、X軸移動ユニット41と、Y軸移動ユニット42と、Z軸移動ユニット43と、を備える。
【0013】
実施形態に係る切削ブレードの管理方法を実施する切削装置1における加工対象、すなわち切削装置1が切削加工する加工対象である被加工物100は、例えば、焼結前のセラミックスである生セラミックスが円板状に形成されて積層されたものである。被加工物100は、平坦な表面101の格子状に形成される複数の分割予定ライン102によって区画された領域に複数のチップコンデンサ等のデバイス103が形成されている。被加工物100は、表面101の裏側の裏面104に粘着テープ105が貼着され、粘着テープ105の外縁部に環状フレーム106が装着されている。なお、被加工物100は、本発明ではこれに限定されず、樹脂により封止され金属の電極を備えたデバイスを複数有した矩形状の樹脂パッケージ基板等でも良い。
【0014】
チャックテーブル10は、凹部が形成された円盤状の枠体と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部と、を備える。チャックテーブル10の吸着部は、ポーラス状のポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル10の吸着部の上面は、被加工物100が載置されて、載置された被加工物100を吸引保持する保持面11である。保持面11は、本実施形態では、被加工物100が表面101を上方に向けて載置され、載置された被加工物100を裏面104側から粘着テープ105を介して吸引保持する。保持面11とチャックテーブル10の枠体の上面とは、同一平面上に配置されており、水平面に平行なXY平面に沿って形成される。チャックテーブル10は、X軸移動ユニット41により、水平方向と平行なX軸方向に沿って移動自在に設けられる。チャックテーブル10は、不図示の回転駆動源により鉛直方向に平行でかつXY平面に直交するZ軸回りに回転自在に設けられている。
【0015】
切削ユニット20は、チャックテーブル10で保持された被加工物100を分割予定ライン102に沿って加工して切削溝を形成する。切削ユニット20は、図4及び図5に示すように、切削ブレード21と、スピンドル22と、スピンドルハウジング23と、ブレードマウント24と、ブレードカバー25と、給水ノズル26-1,26-2と、給水源接続部27と、を備える。
【0016】
切削ブレード21は、水平方向と平行でX軸方向と直交するY軸と平行な軸心周りの回転動作が加えられて、チャックテーブル10に保持された被加工物100を切削する。切削ブレード21は、図2及び図3に示すように、鋸刃状のメタルソーであり、ブレード本体211と、歯212と、を有する。歯212は、ブレード本体211の外周縁に等間隔で複数形成され、ブレード本体211の外周から突出して形成されている。切削ブレード21のブレード本体211と歯212とは、一体に形成されていても良いし、ブレード本体211に歯212が固定されていても良い。ブレード本体211は、中央にブレードマウント24に固定されるための挿入穴213を有し、環状に形成されている。切削ブレード21は、薄鋼板ブレードであり、例えば、高速度鋼(high-speed steel)や、タングステンカーバイド、コバルト、ニッケル等を焼結して得られた超硬合金からなる。切削ブレード21は、例えば、厚みが50μm~300μm程度のものが使用される。
【0017】
スピンドル22は、図4及び図5に示すように、軸心がY軸方向に沿って設けられ、先端で軸心周りに回転可能に切削ブレード21を支持する。スピンドル22は、切削装置1が備える制御ユニット50からの制御に従ってY軸周りに回転駆動する。スピンドルハウジング23は、スピンドル22をY軸周りの回転動作を可能に収納する。切削ユニット20は、スピンドルハウジング23が、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、Y軸移動ユニット42によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット43によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0018】
ブレードマウント24は、円板状のフランジ部で切削ブレード21を挟持して、円筒状のボス部が挿入穴213に挿入されてスピンドル22の先端に装着されることで、切削ブレード21を軸心周りに回転可能にスピンドル22の先端に装着する。
【0019】
ブレードカバー25は、スピンドルハウジング23の先端側に装着されており、切削ブレード21の上方、前方及び後方を覆う。ブレードカバー25は、制御ユニット50の開閉指示部51からの制御に従って、切削ブレード21を覆う閉位置と、切削ブレード21から離間して開放する開位置との間を移動する。ブレードカバー25は、内部に複数の水路が形成されており、図4に示すように、複数の水路の下側の一端には給水ノズル26-1,26-2が設けられ、複数の水路の上側の他端には給水源接続部27が設けられている。給水ノズル26-1は、給水源接続部27から供給される切削水を切削ブレード21の側方に供給する。給水ノズル26-2は、給水源接続部27から供給される切削水を切削ブレード21の前方に供給する。切削水は、例えば、純水であり、制御ユニット50によりその流量が制御される。
【0020】
破損検出ユニット30は、図1及び図5に示すように、検知部31と、光電変換部32と、判定部33と、を有する。検知部31は、溝状部材311と、発光部312と、受光部313とを有し、昇降部314が接続されている。光電変換部32及び判定部33は、制御ユニット50により実現される。制御ユニット50は、図5に示すように、光電変換部32と、基準値記憶部331及び閾値記憶部332を有する判定部33と、開閉指示部51と、発光素子52と、受光素子53と、アンプ54と、を有する。制御ユニット50は、切削装置1の各構成要素の動作を制御して、被加工物100の切削加工処理や、本実施形態に係る切削ブレードの管理方法を切削装置1に実施させる。
【0021】
溝状部材311は、図5に示すように、切削ブレード21の厚みよりも広い幅の溝315が形成されている。溝状部材311は、ブレードカバー25に設けられ、溝315により切削ブレード21の歯212が形成された刃先の上端側が進入する隙間を形成している。昇降部314は、検知部31を昇降移動させることにより、溝状部材311の溝315によって形成された隙間への切削ブレード21の刃先の上端側の進入位置を変動させる。昇降部314は、本実施形態では自動で溝状部材311を昇降移動させるが、本発明ではこれに限定されず、オペレータの手動により溝状部材311を昇降移動させてもよい。
【0022】
発光部312は、溝315の一方の側壁に設けられ、溝315の他方の側壁に向けて光を発する。発光部312は、発光素子52が光ファイバー等により光学的に接続されており、発光素子52からの光を発して直径数mmの光芒を形成する。受光部313は、溝315の他方の側壁に発光部312と対面する位置に設けられ、発光部312で発せられた光が入射する。受光部313は、受光素子53が光ファイバー等により光学的に接続されている。受光素子53は、受光部313に入射した光を検出する。発光部312及び受光部313は、このように、溝315によって形成された切削ブレード21が進入する隙間を挟んで対向する。アンプ54は、判定部33からの制御に従って、発光素子52からの発光量を増幅することで、発光部312から発する発光量を調整する。
【0023】
光電変換部32は、受光素子53で検出した受光部313での受光量を、受光部313に入射した受光量に対応する値の電気信号(本実施形態では、電圧)に変換し、この電気信号を判定部33に出力する。切削ブレード21の刃先の上端側が溝315に進入するに従って、切削ブレード21の刃先が発光部312と受光部313との間の光芒を遮蔽する量が増加すると、受光素子53で検出する受光部313での受光量(光芒の透過量)が徐々に減少することに伴い、光電変換部32からの出力電圧が徐々に減少する。光電変換部32は、本実施形態では、例えば、発光部312の発光量に対する受光部313の受光量の割合である受光率が100%の時には5V(最大電圧)、受光率が0%の時には0V(最小電圧)の電圧を出力する。光電変換部32は、受光部313の受光量が所定光量となったとき、すなわち切削ブレード21の刃先の上端側の進入位置が発光部312と受光部313との間の所定位置に達したときに、出力電圧の所定時間の平均値が所定の基準値(本実施形態では、例えば3V)になるように設定されている。
【0024】
なお、受光部313の受光量の所定光量及び出力電圧の所定の基準値は、切削ブレード21が光芒の少なくとも一部を遮るときの受光量及び電圧値であればよい。また、切削ブレード21(メタルソー)が、砥粒とボンド材(結合材)とからなるタイプの砥粒系ブレードとは異なり、消耗しないので、受光部313の受光量の所定光量及び出力電圧の所定の基準値は、砥粒系ブレードの破損の有無を判定するときよりも高めに設定してもよい。
【0025】
切削ブレード21を回転中に判定部33が光電変換部32から取得する出力電圧は、切削ブレード21の刃先の外縁が径方向に突き出している場合には減少し、径方向に凹んでいる場合には増大する。光電変換部32から取得する出力電圧の変動は、受光素子53で検出した受光部313での受光量(光芒の透過量)の変動を示す。このため、判定部33が光電変換部32から取得する出力電圧は、スピンドル22に装着中の切削ブレード21の刃先の外縁の形状を示すものとなる。ここで、切削ブレード21を所定の回転速度で回転させながら受光部313が受光する光の受光量や、判定部33が光電変換部32から取得する出力電圧は、切削ブレード21を回転していることによって、所定時間毎に平均化される。
【0026】
本実施形態では、切削ブレード21が鋸刃状のメタルソーであるため、破損のない切削ブレード21を所定の回転速度で回転させながら判定部33が光電変換部32から取得する出力電圧は、例えば図6に示すように、切削ブレード21の歯212の先端である歯先215(図2参照)が溝315に進入するときには小さくなり、切削ブレード21の歯212の根元である歯元216(図2参照)が溝315に進入するときには大きくなり、時間経過に従って歯212による周期的な凹凸状の変動を示すものとなる。なお、図6に示すグラフでは、判定部33が切削ブレード21を所定の回転速度で回転させながら光電変換部32から出力電圧を取得しているため、出力電圧が所定時間毎に平均化されて歯212による凹凸状の変動量が小さく抑制される。
【0027】
一方、切削ブレード21が破損している場合、すなわち、切削ブレード21の刃先の外縁に欠けが発生している場合には、切削ブレード21を所定の回転速度で回転させながら判定部33が光電変換部32から取得する出力電圧は、例えば図7に示すように、欠けの大きさに応じて、切削ブレード21の欠けが発生している部分が溝315に進入しているとき(図7の時間T1)に、スパイク状に増加する。例えば切削ブレード21の歯212が1個分欠けた場合、判定部33が光電変換部32から取得する出力電圧は、図7に示すように、歯212による周期的な凹凸の1個分増加する。なお、図7に示すグラフでは、出力電圧が所定時間毎に平均化されて歯212による凹凸状の変動量が小さく抑制されることにより、破損によるスパイク状の増加信号400が凹凸状の変動に対して浮き上がる。判定部33は、光電変換部32から取得する出力電圧に基づいてスパイク状の増加信号400の有無を判定することにより、切削ブレード21の破損の有無を判定できる。
【0028】
基準値記憶部331は、光電変換部32に設定する出力電圧の所定の基準値(本実施形態では、例えば3V)を記憶する。判定部33は、切削ブレード21を回転させながら、昇降部314により検知部31を昇降移動させて切削ブレード21の径方向に進退させることにより、切削ブレード21の刃先の上端側の進入位置を徐々に変動させながら、光電変換部32から取得する出力電圧の所定時間毎の平均値と基準値記憶部331が記憶する所定の基準値とを比較し、光電変換部32から取得する出力電圧の所定時間毎の平均値が当該基準値に達したときの検知部31の昇降方向の位置を、切削ブレード21の破損の有無を判定する際の検知部31の測定位置に調整する。
【0029】
なお、この判定部33が検知部31の測定位置を調整するときの切削ブレード21の回転は、オペレータにより手動で所定の回転数(30~300rpm(rotations per minute、1分間の回転数))で空転させることにより実行してもよいし、スピンドル22を所定の回転数、例えば被加工物100を加工する際の加工条件に準じる回転数(5000~30000rpm)で回転駆動することにより実行してもよい。
【0030】
検知部31が測定位置に調整されると、受光部313が受光する光の受光量は、所定範囲になる。この所定範囲は、上記の所定光量に、所定時間毎に平均化されて小さく抑制された歯212による凹凸状の変動量を加算又は減算して求められる範囲である。また、検知部31が測定位置に調整されると、判定部33が光電変換部32から取得する出力電圧は、基準値記憶部331で記憶する所定の基準値に、所定時間毎に平均化されて小さく抑制された歯212による凹凸状の変動量を加算又は減算して求められる範囲になる。
【0031】
閾値記憶部332は、切削ブレード21の破損の有無を判定するための閾値(本実施形態では、例えば0.1~0.5V)を記憶する。判定部33は、検知部31を測定位置に調整した後に、スピンドル22により切削ブレード21を所定の回転速度で回転させながら、光電変換部32から所定時間毎の出力電圧の平均値を取得し、所定時間毎の出力電圧の平均値が、閾値記憶部332が記憶する閾値を超えて変動したか否かを判定し、この判定に基づいて破損によるスパイク状の増加信号400の有無を判定し、これにより切削ブレード21の破損の有無を判定する。判定部33は、所定時間毎の出力電圧の平均値が、閾値記憶部332が記憶する閾値を超えて変動した場合、破損によるスパイク状の増加信号400が有ると判定し、切削ブレード21に破損が有ると判定する。一方、判定部33は、所定時間毎の出力電圧の平均値が、閾値記憶部332が記憶する閾値を超えて変動しなかった場合、破損によるスパイク状の増加信号400が無いと判定し、切削ブレード21に破損が無いと判定する。
【0032】
制御ユニット50は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット50が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット50の演算処理装置は、制御ユニット50の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット50の入出力インターフェース装置を介して切削装置1の各構成要素に出力する。
【0033】
制御ユニット50が有する光電変換部32、判定部33及び開閉指示部51の各機能は、本実施形態では、制御ユニット50が含むコンピュータシステムの演算処理装置が、制御ユニット50が含むコンピュータシステムの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。制御ユニット50の判定部33が有する基準値記憶部331及び閾値記憶部332は、制御ユニット50が含むコンピュータシステムの記憶装置により実現される。
【0034】
切削装置1は、図1に示すように、さらに、カセット載置台81と、洗浄ユニット82とを備える。カセット載置台81は、複数の被加工物100を収容するための収容器であるカセット85を載置する載置台であり、載置されたカセット85をZ軸方向に昇降させる。洗浄ユニット82は、切削加工後の被加工物100を洗浄し、被加工物100に付着した切削屑等の異物を除去する。被加工物100は、チャックテーブル10と、洗浄ユニット82と、カセット85とのそれぞれの間で、不図示の搬送ユニットにより搬送される。
【0035】
切削装置1は、さらに、不図示の表示ユニットを備えていてもよく、また、不図示の表示ユニットを備える情報機器と有線又は無線で情報通信可能に接続されていてもよい。表示ユニットは、切削装置1の切削加工処理に関する画面や、判定部33による切削ブレード21の破損の有無の判定結果に関する画面を表示する。表示ユニットは、液晶表示装置等により構成される。表示ユニットは、オペレータが切削装置1の切削加工処理に関する情報等を入力する際に使用する入力ユニットが設けられている。表示ユニットに設けられた入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0036】
次に、本明細書は、実施形態に係る切削ブレードの管理方法の処理を、図面を用いて説明する。図8は、実施形態に係る切削ブレードの管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。実施形態に係る切削ブレードの管理方法は、切削装置1により実施され、図8に示すように、検知部位置調整ステップ1001と、切削ステップ1002とを有する。
【0037】
検知部位置調整ステップ1001は、受光部313が受光する光が切削ブレード21により部分的に遮られて、受光部313が受光する光の受光量が所定範囲になる測定位置に検知部31を配置するステップである。検知部位置調整ステップ1001では、具体的には、判定部33は、切削ブレード21を回転させた状態で、昇降部314により検知部31を昇降移動させて切削ブレード21の径方向に進退させることにより、切削ブレード21の刃先の上端側の進入位置を徐々に変動させながら、光電変換部32から受光部313が受光する光の受光量に基づいて取得する出力電圧の所定時間毎の平均値と基準値記憶部331が記憶する所定の基準値とを比較し、光電変換部32から取得する出力電圧の所定時間毎の平均値が当該基準値に達したときの検知部31の昇降方向の位置を、切削ブレード21の破損の有無を判定する際の検知部31の測定位置に調整する。
【0038】
切削ステップ1002は、検知部位置調整ステップ1001で検知部31を測定位置に調整した後に、受光部313が受光する光の所定時間毎の受光量の平均値の変動から切削ブレード21の破損の有無を判定しながら、被加工物100を切削ブレード21で切削するステップである。切削ステップ1002では、具体的には、判定部33は、スピンドル22により切削ブレード21を所定の回転速度で回転させながら、光電変換部32から所定時間毎の出力電圧の平均値を取得し、この所定時間毎の出力電圧の平均値が閾値記憶部332で記憶する閾値を超えて変動したか否かに基づいて切削ブレード21の破損の有無を判定する。切削ステップ1002では、また、この判定部33による判定処理と合わせて、制御ユニット50は、X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、スピンドル22により回転中の切削ブレード21をチャックテーブル10に保持された被加工物100に対して分割予定ライン102に沿って相対的に移動させることにより、被加工物100を切削加工して分割予定ライン102に沿って切削溝を形成する。
【0039】
切削ステップ1002では、制御ユニット50は、判定部33が切削ブレード21に破損が無いと判定した場合、切削ブレード21による被加工物100の切削加工処理を継続し、判定部33が切削ブレード21に破損が有ると判定した場合、切削ブレード21による被加工物100の切削加工処理を中止する。
【0040】
以上のような構成を有する実施形態に係る切削ブレードの管理方法は、判定部33が、切削ブレード21を所定の回転速度で回転させながら、光電変換部32から取得した所定時間毎の出力電圧の平均値に基づいて、切削ブレード21の破損の有無を判定する際の検知部31の測定位置を調整し、光電変換部32から取得した所定時間毎の出力電圧の平均値が、所定の閾値を超えて変動したか否かに基づいて切削ブレード21の破損の有無を判定する。このため、実施形態に係る切削ブレードの管理方法は、切削ブレード21の回転により鋸刃状のメタルソーの歯212による受光量や出力電圧の凹凸状の変動量を抑制することにより、歯212が形成された鋸刃状のメタルソーの破損を自動的に検出できるという作用効果を奏する。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 切削装置
10 チャックテーブル
20 切削ユニット
21 切削ブレード
22 スピンドル
30 破損検出ユニット
31 検知部
32 光電変換部
33 判定部
100 被加工物
312 発光部
313 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8