(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133827
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】剥離層形成用組成物及び剥離層
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20220907BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20220907BHJP
C09D 133/08 20060101ALI20220907BHJP
C09D 133/10 20060101ALI20220907BHJP
C09D 133/26 20060101ALI20220907BHJP
C09D 133/20 20060101ALI20220907BHJP
C09D 135/00 20060101ALI20220907BHJP
C09D 125/04 20060101ALI20220907BHJP
C09D 125/00 20060101ALI20220907BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20220907BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20220907BHJP
C08L 25/00 20060101ALI20220907BHJP
C08F 220/00 20060101ALI20220907BHJP
C08F 222/00 20060101ALI20220907BHJP
C08F 212/00 20060101ALI20220907BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220907BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20220907BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C08L101/02
C09D201/02
C09D133/08
C09D133/10
C09D133/26
C09D133/20
C09D135/00
C09D125/04
C09D125/00
C08L33/00
C08L35/00
C08L25/00
C08F220/00
C08F222/00
C08F212/00
B32B27/00 L
B32B27/26
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032735
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK12A
4F100AK24A
4F100AK25A
4F100AK26A
4F100AK27A
4F100AK49A
4F100AK53B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02A
4F100EH46A
4F100GB41
4F100JA07A
4F100JK06A
4F100JL08A
4F100JL14A
4F100JN01B
4J002BC041
4J002BC091
4J002BC111
4J002BE041
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG061
4J002BG071
4J002BH021
4J002CD191
4J002CK022
4J002EH076
4J002ET006
4J002EU026
4J002EU186
4J002FD142
4J002FD146
4J002GF00
4J002GJ01
4J038CB001
4J038CC021
4J038CG081
4J038CG141
4J038CG161
4J038CG171
4J038GA01
4J038GA09
4J038KA04
4J038NA10
4J038PA19
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC08
4J100AB00Q
4J100AB02Q
4J100AB03Q
4J100AB04Q
4J100AB08Q
4J100AB09Q
4J100AE03Q
4J100AE09Q
4J100AE18Q
4J100AL03Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL10Q
4J100AL11Q
4J100AQ01Q
4J100AQ26Q
4J100AR05Q
4J100AR16Q
4J100AR36Q
4J100BA05Q
4J100BA06Q
4J100BA08Q
4J100BA12P
4J100BA14P
4J100BB18Q
4J100BC04Q
4J100BC07Q
4J100BC09Q
4J100BC12Q
4J100BC23Q
4J100BC26Q
4J100BC28Q
4J100BC43Q
4J100BC48Q
4J100BC49Q
4J100BC53Q
4J100BC54Q
4J100JA03
4J100JA05
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】剥離層上に樹脂基板等から構成されるデバイスを形成でき、剥離層と樹脂基板等から構成されるデバイスとの界面で容易に剥離する剥離層を与える剥離層形成用組成物を提供する。
【解決手段】(A)全モノマー単位100モル%に対して、マイケルドナー基を有するモノマーを1~70モル%含有する重合体、(B)マイケルアクセプター基を有する架橋剤、(C)マイケル付加反応触媒、を含有する剥離層形成用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)全モノマー単位100モル%に対して、マイケルドナー基を有するモノマーを1~70モル%含有する重合体、
(B)マイケルアクセプター基を有する架橋剤、及び
(C)マイケル付加反応触媒、
を含有する剥離層形成用組成物。
【請求項2】
(A)重合体が、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーを用いて得られる重合体である請求項1記載の剥離層形成用組成物。
【請求項3】
(A)重合体のマイケルドナー基が、活性メチレン基又は活性メチン基である請求項1又は2記載の剥離層形成用組成物。
【請求項4】
(A)重合体のマイケルドナー基を有しないモノマーが、脂環式炭化水素基又はマレイミド基を有するモノマーである請求項1~3のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物。
【請求項5】
(B)架橋剤のマイケルアクセプター基が、(メタ)アクロイル基である請求項1~4のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物。
【請求項6】
(B)架橋剤の含有量が、(A)重合体100質量部に対し、1~100質量部である請求項1~5のいずれか1項記載の剥離層形成用樹脂組成物。
【請求項7】
(C)触媒の含有量が、(A)重合体100質量部に対し、0.1~20質量部である請求項1~6のいずれか1項記載の剥離層形成用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物から得られる剥離層。
【請求項9】
請求項8記載の剥離層に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂基板が積層された積層体。
【請求項10】
前記樹脂基板が、エポキシ化合物を含有する熱硬化膜である請求項9記載の積層体。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物を基体に塗布し、剥離層を形成する工程、
前記剥離層上に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂基板を形成する工程、及び
前記樹脂基板を、0.4N/25mm以下の剥離力で剥離する工程
を含む樹脂基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離層形成用組成物及び剥離層に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスには薄型化及び軽量化という特性に加え、曲げることができるという機能を付与することが求められている。このことから、従来の重く脆弱で曲げることができないガラス基板にかわって、軽量なフレキシブルプラスチック基板を用いることが求められる。
【0003】
特に、新世代ディスプレイでは、軽量なフレキシブルプラスチック基板(以下、樹脂基板ともいう。)を用いたアクティブマトリクス型フルカラーTFTディスプレイパネルの開発が求められている。また、タッチパネル式ディスプレイは、ディスプレイパネルに組み合わせて使用されるタッチパネルの透明電極や樹脂基板等、フレキシブル化に対応する材料が開発されている。透明電極としては、従来使用されていたITOから、PEDOT等の曲げ加工が可能な透明導電性ポリマー、金属ナノワイヤ、及びその混合系等、別の透明電極材料が提案されている(特許文献1~4)。
【0004】
一方、タッチパネルフィルムの基材も、ガラスからポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、シクロオレフィン、アクリル等のプラスチックからなるシート等になり、フレキシブル性を持たせた透明フレキシブルタッチスクリーンパネルが開発されている(特許文献5~7)。
【0005】
一般的に、フレキシブルタッチスクリーンパネルは、安定して生産を行うため、ガラス基板等の支持基板上に剥離(粘着)層を作製し、その上に樹脂基板等から構成されるデバイスを作製した後、該デバイスを前記粘着層から剥離することで生産される(特許文献8)。
【0006】
剥離層としては、例えば、所定のポリマー及び架橋剤を含む硬化性樹脂化合物が記載されている(特許文献9~10)。これらの剥離層は支持基板上から容易に剥離できる一方、支持基板と剥離層との界面で剥離するため、剥離層がデバイス側に残存し、デバイス作製工程や透過性に悪影響を及ぼす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2012/147235号
【特許文献2】特開2009-283410号公報
【特許文献3】特表2010-507199号公報
【特許文献4】特開2009-205924号公報
【特許文献5】国際公開第2017/002664号
【特許文献6】国際公開第2016/160338号
【特許文献7】特開2015-166145号公報
【特許文献8】特開2016-531358号公報
【特許文献9】国際公開第2018/033995号
【特許文献10】国際公開第2019/159248号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、剥離層上に樹脂基板等から構成されるデバイスを形成でき、剥離層と樹脂基板等から構成されるデバイスとの界面で容易に剥離する剥離層を与える剥離層形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)全モノマー単位100モル%に対して、マイケルドナー基を有するモノマーを1~70モル%含有する重合体、及び(C)マイケル付加反応触媒を含有する剥離層形成用組成物が、剥離層上に樹脂基板等から構成されるデバイスを形成でき、剥離層と樹脂基板等から構成されるデバイスとの界面で容易に剥離する剥離層を再現性よく与え得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の剥離層形成用組成物及び剥離層を提供する。
1. (A)全モノマー単位100モル%に対して、マイケルドナー基を有するモノマーを1~70モル%含有する重合体、
(B)マイケルアクセプター基を有する架橋剤、及び
(C)マイケル付加反応触媒、
を含有する剥離層形成用組成物。
2. (A)重合体が、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーを用いて得られる重合体である1の剥離層形成用組成物。
3. (A)重合体のマイケルドナー基が、活性メチレン基又は活性メチン基である1又は2の剥離層形成用組成物。
4. (A)重合体のマイケルドナー基を有しないモノマーが、脂環式炭化水素基又はマレイミド基を有するモノマーである1~3のいずれかの剥離層形成用組成物。
5. (B)架橋剤のマイケルアクセプター基が、(メタ)アクロイル基である1~4のいずれかの剥離層形成用組成物。
6. (B)架橋剤の含有量が、(A)重合体100質量部に対し、1~100質量部である1~5のいずれかの剥離層形成用樹脂組成物。
7. (C)触媒の含有量が、(A)重合体100質量部に対し、0.1~20質量部である1~6のいずれかの剥離層形成用樹脂組成物。
8. 1~7のいずれかの剥離層形成用組成物から得られる剥離層。
9. 8の剥離層に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂基板が積層された積層体。
10. 前記樹脂基板が、エポキシ化合物を含有する熱硬化膜である9の積層体。
11. 1~7のいずれかの剥離層形成用組成物を基体に塗布し、剥離層を形成する工程、
前記剥離層上に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂基板を形成する工程、及び
前記樹脂基板を、0.4N/25mm以下の剥離力で剥離する工程
を含む樹脂基板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の剥離層形成用組成物を用いることで、剥離層上に樹脂基板等から構成されるデバイスを形成でき、剥離層と樹脂基板等から構成されるデバイスとの界面で容易に剥離する剥離層を再現性よく得ることできる。また、フレキシブル電子デバイスの製造プロセスにおいて、基体上に形成された樹脂基板や、更にその上に設けられる回路等に損傷を与えることなく、当該回路等とともに当該樹脂基板を当該基体から分離することが可能となる。したがって、本発明の剥離層形成用組成物は、樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造プロセスの高速化やその歩留り向上等に寄与し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
[剥離層形成用組成物]
本発明の剥離層形成用組成物は、(A)全モノマー単位100モル%に対して、マイケルドナー基を有するモノマーを1~70モル%含有する重合体、(B)マイケルアクセプター基を有する架橋剤、及び(C)マイケル付加反応触媒を含むことを特徴とする。
【0013】
[1](A)成分
本発明の剥離層形成用組成物における(A)成分は、全モノマー単位100モル%に対して、マイケルドナー基を有するモノマーを1~70モル%含有する重合体である。
【0014】
重合体を構成するモノマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0015】
マイケルドナー基としては、例えば、メルカプト基、アミノ基、活性メチレン基及び活性メチン基が挙げられる。反応性と保存安定性の観点から、活性メチレン基及び活性メチン基であることが好ましい。
【0016】
活性メチレン基とは、メチレン基(-CH2-)のうち、隣接位置にカルボニル基を持ち、求核試薬に対する反応性を持つものをいう。また、本発明において前記活性メチン基とは、前記活性メチレン基においてメチレン基(-CH2-)の1個の水素原子がアルキル基で置換された構造を有し、求核試薬に対する反応性を持つものをいう。
【0017】
活性メチレン基及び活性メチン基としては下記式(a1)で表される基がより好ましい。
【化1】
(式中、Rは、アルキル基、アルコキシ基又はフェニル基を表し、破線は結合手を表す。)
【0018】
アルキル基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等が挙げられる。その中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基等が好ましい。
【0019】
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。その中でも、メトキシ基、エトキシ基及びn-プロポキシ基等が好ましい。
【0020】
前記式(a1)で表される基としては、例えば、以下の構造が挙げられる。なお、構造式中、破線は結合手を表す。
【化2】
【0021】
式(a1)で表される基を各成分に導入する方法としては、ヒドロキシ基を有する低分子化合物又はポリマーに、メルドラム酸とカルボン酸クロリドとを反応させて得られるアシルメルドラム酸を反応させるという方法が挙げられる。この方法は公知である。ここで、Rとしては、入手性や剥離性などを加味して、メチル基が好ましい。
【0022】
【0023】
式(a1)で表される基を各成分に導入するための別の方法としては、ヒドロキシ基を有する低分子化合物又はポリマーに、アシル酢酸t-ブチルを反応させるという方法が挙げられる。この方法は公知である。ここで、Rとしては、入手性や剥離性などを加味して、メチル基が好ましい。
【0024】
【0025】
マイケルドナー基を有するモノマーの具体例としては、2-アセトアセトキシエチルアクリレート、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0026】
本発明の剥離層形成用組成物における(A)成分である重合体は、マイケルドナー基を有しないモノマーを含有する。
【0027】
マイケルドナー基を有しないモノマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。以下、前記モノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0028】
マイケルドナー基を有しないモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、及び8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、γ-ブチロラクトンメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、及び8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル化合物;メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、及び1,7-オクタジエンモノエポキサイド等のビニル化合物;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、及びブロモスチレン等のスチレン化合物;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物等が挙げられる。
【0029】
マイケルドナー基を有しないモノマーとしては、耐熱性と疎水性の観点から、脂環式炭化水素基又はマレイミド基を有するモノマーであることが望ましい。
【0030】
脂環式炭化水素基を有するモノマーとしては、炭素数6~20の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることがより好ましい。前記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0031】
脂環式炭化水素基を有するモノマーの具体例としては、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0032】
マレイミド基を有するモノマーの具体例としては、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0033】
(A)マイケルドナー基を有するモノマーを用いて得られる重合体において、マイケルドナー基を有するモノマーの含有率は、全モノマー単位100モル%に対して、1~70モル%であり、2~60モル%が好ましく、3~50モル%がより好ましい。マイケルドナー基を有するモノマーの含有率が過小である場合には、剥離層の溶剤耐性及び耐熱性が低下し、剥離性が低下するおそれがある。他方、含有率が過大である場合には、剥離層上の樹脂基板等と反応が進行し、剥離性が低下するおそれがある。重合体を構成するモノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本発明の剥離層形成用組成物に用いる重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、モノマー及び重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50~110℃の温度下で重合反応させて得られる。その際、用いられる溶剤は、モノマー及び重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する溶剤に記載する溶剤が挙げられる。
【0035】
このようにして得られる重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態であり、本発明において(A)成分の溶液としてそのまま使用することができる。
【0036】
また、前記のようにして得られた重合体の溶液を、ヘキサンやジエチルエーテル、水等の撹拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、重合体の粉体とすることができる。このような操作により、重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製した重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、前記の操作を繰り返し行えばよい。
【0037】
本発明の剥離層形成用組成物においては、(A)成分として前記重合体の粉体をそのまま用いてもよく、あるいはその粉体を、例えば後述する溶剤に再溶解して溶液の状態として用いてもよい。
【0038】
なお、本発明の剥離層形成用組成物では、(A)成分の重合体として、単一種類の重合体を用いても、複数種の重合体の混合物を用いてもよい。
【0039】
[2](B)成分
本発明の剥離層形成用組成物は、(B)成分としてマイケルアクセプター基を有する架橋剤を含む。
【0040】
マイケルアクセプター基としては、例えば、(メタ)アクロイル基及びマレイミド基、すなわち、CH2=CH-C(=O)-、CH(CH3)=CH-C(=O)-及びマレイミド基が挙げられる。
【0041】
マイケルアクセプター基を有する架橋剤としては、以下の低分子化合物及び高分子化合物を用いることができる。
低分子化合物としては、多官能アクリレート化合物、ビスマレイミド化合物等が挙げられる。
【0042】
多官能アクリレートとしては、3官能((メタ)アクリロイル基を3個有する)ウレタン(メタ)アクリレート化合物、4官能((メタ)アクリロイル基を4個有する)ウレタン(メタ)アクリレート化合物、5官能以上((メタ)アクリロイル基を5個以上有する)のウレタン(メタ)アクリレート化合物、3官能((メタ)アクリロイル基を3個有する)(メタ)アクリレート化合物、4官能((メタ)アクリロイル基を5個有する)(メタ)アクリレート化合物、及び5官能以上((メタ)アクリロイル基を5個以上有する)の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0043】
3官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、NKオリゴUA-7100(新中村化学工業(株)製);EBECRYL(登録商標)204、同205、同264、同265、同294/25HD、同1259、同4820、同8311、同8465、同8701、同9260、KRM(登録商標)8296、同8667(以上、何れもダイセル・オルネクス(株)製);紫光(登録商標)UV-7550B、同7000B、同7510B、同7461TE、同2750B(以上、何れも日本合成化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0044】
4官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、EBECRYL(登録商標)8210、同8405、KRM(登録商標)8528(以上、何れもダイセル・オルネクス(株)製);紫光(登録商標)UV-7650B(日本合成化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0045】
5官能以上のウレタン(メタ)アクリレート)の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとのウレタン化物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとトルエンジイソシアネートとのウレタン化物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとのウレタン化物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとのウレタン化物等が挙げられる。
【0046】
前記5官能以上のウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販品を好適に使用でき、その具体例としては、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H(以上、何れも共栄社化学(株)製);NKオリゴU-6LPA、同U-10HA、同U-10PA、同U-1100H、同U-15HA、同UA-53H、同UA-33H(以上、何れも新中村化学工業(株)製);EBECRYL(登録商標)220、同1290、同5129、同8254、同8301R、KRM(登録商標)8200、同8200AE、同8904、同8452(以上、何れもダイセル・オルネクス(株)製);紫光(登録商標)UV-1700B、同6300B、同7600B、同7605B、同7610B、同7620EA、同7630B、同7640B、同7650B(以上、何れも日本合成化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0047】
3官能(メタ)アクリレート化合物としては、1,1,1-トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
前記3官能(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を好適に使用でき、その具体例としては、ビスコート#295、同#300(以上、何れも大阪有機化学工業(株)製);ライトアクリレートTMP-A、同PE-3A、ライトエステルTMP(以上、何れも共栄社化学(株)製);NKエステルA-9300、同A-9300-1CL、同A-TMM-3、同A-TMM-3L、同A-TMM-3LM-N、同A-TMPT、同TMPT(以上、何れも新中村化学工業(株)製);PETIA、PETRA、TMPTA、EBECRYL(登録商標)180(以上、何れもダイセル・オルネクス(株)製)等が挙げられる。
【0049】
4官能(メタ)アクリレート化合物としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
前記4官能(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を好適に使用でき、その具体例としては、ビスコート#300(大阪有機化学工業(株)製);ライトアクリレートPE-4A(共栄社化学(株)製);NKエステルAD-TMP、同A-TMMT(以上、何れも新中村化学工業(株)製);EBECRYL(登録商標)140、同1142、同180(以上、何れもダイセル・オルネクス(株)製)等が挙げられる。
【0051】
5官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
前記5官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を好適に使用でき、その具体例としては、ビスコート#802(大阪有機化学工業(株)製);ライトアクリレートDPE-6A(共栄社化学(株)製);NKエステルA-9550、同A-DPH(以上、何れも新中村化学工業(株)製);DPHA(ダイセル・オルネクス(株)製)等が挙げられる。
【0053】
ビスマレイミド化合物としては、下記式(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0054】
【0055】
式中、R33は、脂肪族基、環式構造を含む脂肪族基及び芳香族基からなる群から選ばれる有機基又はそれらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基である。そして、R33には、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合等の結合を含んでいてもよい。
【0056】
このようなビスマレイミド化合物としては、例えば、N,N’-3,3-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-(3,3-ジエチル-5,5-ジメチル)-4,4-ジフェニル-メタンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、3,3-ジフェニルスルホンビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’-p-ベンゾフェノンビスマレイミド、N,N’-ジフェニルエタンビスマレイミド、N,N’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-(メチレンジ-ジテトラヒドロフェニル)ビスマレイミド、N,N’-(3-エチル)-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-(3、3-ジメチル)-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-(3,3-ジエチル)-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-(3,3-ジクロロ)-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-イソホロンビスマレイミド、N,N’-トリジンビスマレイミド、N,N’-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-ナフタレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-5-メトキシ-1,3-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-クロロ-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-プロピル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)エタン、1,1-ビス(3-メチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)エタン、1,1-ビス(3-クロロ-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)エタン、1,1-ビス(3-ブロモ-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)エタン、3,3-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)ペンタン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、N,N’-エチレンジマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-ドデカメチレンビスマレイミド、N,N’-m-キシレンビスマレイミド、N,N’-p-キシレンビスマレイミド、N,N’-1,3-ビスメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’-2,4-トリレンビスマレイミド、N,N’-2,6-トリレンビスマレイミド等が挙げられる。
【0057】
高分子化合物としては、分子内に1個以上の末端が重合性不飽和結合である側鎖を有する高分子化合物等が挙げられる。このような高分子化合物としては、分子内の2個以上の側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子化合物が好ましい。
【0058】
前記高分子化合物としては、ウレタンアクリル系、エポキシアクリル系、各種(メタ)アクリレート系等の(メタ)アクリロイル基を含有する高分子化合物、特に前記(メタ)アクリロイル基を3個以上含有する多官能高分子化合物等が挙げられる。本発明では、これらの高分子化合物の中でも、(メタ)アクリロイル基を含有する高分子化合物が好ましい。
【0059】
前記(メタ)アクリロイル基を含有する高分子化合物としては、市販品を好適に使用でき、その具体例としては、アクリット8KX-077、同8KX-078、同8KX-089、同8KX-127、同8KX-128、同8KX-012C、同8KX-014C、同8KX-018C、同8KX-052C、同8KQ-2001、同8BR-600、同8UH-1006、同8UH-1012(以上、何れも大成ファインケミカル(株)製);SMP-220A、SMP-250A、SMP-360A、SMP-550A(以上、何れも共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
【0060】
(B)成分の含有量は、(A)成分の重合体100質量部に対し、1~100質量部が好ましく、2~50質量部がより好ましい。(B)成分の含有量が前記範囲であれば、高耐熱性と適度な剥離性を有する剥離層樹脂組成物が得られる。架橋剤の含有量が過小である場合には、剥離層の溶剤耐性及び耐熱性が低下し、剥離性が低下することがある。他方、含有量が過大である場合には、剥離層上の樹脂基板等との架橋反応が進行し、剥離性が低下することがある。(B)架橋剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
[3](C)成分
本発明の剥離層形成用組成物は、(C)成分としてマイケル付加反応触媒を含む。
【0062】
マイケル付加反応触媒とは、より具体的には、下記に示される塩基性化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;ナトリウムメトキサイド、カリウムエトキサイド等のアルカリ金属のアルコキシド;テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド等の4級アンモニウムヒドロキサイド;テトラブチルアンモニウムカーボネート、ベンジルトリメチルアンモニウムカーボネー、トリエチルモノメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、テトラブチルアンモニウムアセタート等の4級アンモニウムカーボネート;テトラブチルアンモニウムフロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムフロライド等の4級アンモニウムフロライド; テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート、ベンジルトリメチルアンモニウムテトラヒドロボレート等の4級アンモニウムテトラヒドロボレート;テトラメチルグアニジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5等の第3級アミン;グアニジン、アジン、トリフェニルフォスフィン等の第3級ホスフィン等が挙げられる。
【0063】
さらに、貯蔵する際の保存安定性を高める目的でマイケル付加反応触媒と併せて酸性化合物を添加してもよい。特に触媒活性の高い強塩基化合物を利用する場合は、酸性化合物の添加は保存安定性を高めるのに効果的である。酸性化合物としては、酢酸、ギ酸、プロピオン酸などのよう低沸点カルボン酸又はモノクロロ酢酸、オクタン酸等のような高沸点カルボン酸等が挙げられる。
【0064】
本発明では、これらのマイケル付加反応触媒の中でも、反応性や保存安定性の観点から、4級アンモニウムカーボネート、4級アンモニウムヒドロキサイド、第3級アミンがより好ましい。
【0065】
(C)成分の含有量は、(A)成分の重合体100質量部に対し、0.1~20質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。(C)成分の含有量が前記範囲であれば、高耐熱性と適度な剥離性とを有する剥離層を与える剥離層樹脂組成物が得られる。(C)架橋触媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
[4]その他の添加剤
本発明の剥離層形成用組成物は、必要に応じて界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤を添加することで、基板に対する前記剥離層形成用組成物の塗布性を向上させることができる。前記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の公知の界面活性剤を用いることができる。
【0067】
前記ノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0068】
前記フッ素系界面活性剤等としては、エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック(登録商標)F171、F173、F554、F559、F563、R-30、R-40、R-40-LM、DS-21(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGC(株)製)等が挙げられる。
【0069】
また、シリコーン系界面活性剤としては、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0070】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤を用いる場合、その使用量は、(A)重合体100質量部に対し、0.0001~1質量部が好ましく、0.001~0.5質量部がより好ましい。
【0071】
また、本発明の実施形態の剥離層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤として、シランカップリング剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0072】
[5]溶剤
本発明の剥離層形成用組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
溶剤としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び必要に応じて用いられるその他の添加剤の溶解能を有するものであれば、その種類及び構造等は特に限定されるものでないが、本発明では、炭素数3~20のグリコールエーテル系溶剤、炭素数3~20のエステル系溶剤、炭素数3~20のケトン系溶剤、アミド系溶剤が好ましい。
【0073】
グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
エステル系溶剤の具体例としては、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロシキイソ酪酸メチル、2-ヒドロシキイソ酪酸エチル等が挙げられる。
ケトン系溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
アミド系溶剤の具体例としては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
なお、溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0074】
溶剤の含有量は、本発明の剥離層形成用組成物中の固形分濃度が、0.1~40質量%となる量が好ましく、0.5~20質量%となる量がより好ましく、0.5~10質量%となる量がより一層好ましい。なお、固形分とは、剥離層形成用組成物の全成分のうち、溶剤以外のものの総称である
【0075】
本発明の剥離層形成用組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、溶剤に溶解した(A)成分の溶液に(B)成分及び(C)成分、所望によりその他の添加剤等を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法や、前記調製方法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
なお、調製された剥離層形成用組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルター等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0076】
本発明の剥離層形成用組成物の粘度は、作製する剥離層の厚み等を勘案して適宜設定するものではあるが、特に0.01~5μm程度の厚さの膜を再現性よく得ることを目的とする場合、通常、25℃で1~5,000mPa・s程度が好ましく、1~2,000mPa・s程度がより好ましい。
【0077】
ここで、粘度は、市販の液体の粘度測定用粘度計を使用して、例えば、JIS K7117-2に記載の手順を参照して、組成物の温度25℃の条件にて測定することができる。好ましくは、粘度計としては、円錐平板型(コーンプレート型)回転粘度計を使用し、好ましくは同型の粘度計で標準コーンロータとして1°34’×R24を使用して、組成物の温度25℃の条件にて測定することができる。このような回転粘度計としては、例えば、東機産業(株)製TVE-25Lが挙げられる。
【0078】
[剥離層]
本発明の剥離層形成用組成物を、基体上に塗布した後、100~280℃で焼成する工程を含む焼成法にて、剥離層を得ることができる。
この場合、焼成時間は、温度によって異なるため一概に規定できないが、通常1分間~5時間である。また、焼成工程は、最高温度が前記範囲となる限り、それ以下の温度で焼成する工程を含んでもよい。
【0079】
本発明における加熱態様の好ましい一例としては、50~150℃で1分間~1時間加熱した後に、そのまま加熱温度を上昇させて100~280℃で5分間~4時間加熱する態様が挙げられる。特に、加熱態様のより好ましい一例としては、50~150℃で1分間~1時間加熱し、150~280℃で5分間~2時間加熱する態様が挙げられる。更に、加熱態様のより好ましい他の一例としては、50~150℃で1分間~30分間加熱した後に、200~280℃で5分間~1時間加熱する態様が挙げられる。
【0080】
本発明の剥離層を基体上に形成する場合、剥離層は基体の一部表面に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。基体の一部表面に剥離層を形成する態様としては、基体表面のうち所定の範囲にのみ剥離層を形成する態様、基体表面全面にドットパターン、ラインアンドスペースパターン等のパターン状に剥離層を形成する態様等がある。
なお、本発明において、基体とは、その表面に本発明の剥離層形成用組成物が塗られるものであって、フレキシブル電子デバイス等の製造に用いられるものを意味する。
【0081】
基体(基材)としては、例えば、ガラス、金属(シリコンウエハ等)、スレート等が挙げられるが、特に、本発明に係る剥離層形成用組成物から得られる剥離層がそれに対する十分な密着性を有することから、ガラスが好ましい。なお、基体表面は、単一の材料で構成されていてもよく、2以上の材料で構成されていてもよい。2以上の材料で基体表面が構成される態様としては、基体表面のうち、ある範囲はある材料で構成され、その余の表面はその他の材料で構成されている態様、基体表面全体にドットパターン、ラインアンドスペースパターン等のパターン状にある材料がその他の材料中に存在する態様等がある。
【0082】
塗布方法は、特に限定されないが、例えば、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等が挙げられる。
【0083】
加熱に用いる器具としては、例えば、ホットプレート、オーブン等が挙げられる。加熱雰囲気は、空気下であっても不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよい。
【0084】
剥離層の厚さは、通常0.01~50μm程度、生産性の観点から、好ましくは0.01~20μm程度、より好ましくは0.01~5μm程度であり、加熱前の塗膜の厚さを調整して所望の厚さを実現する。
【0085】
本発明の剥離層は、その上に設けられた樹脂基板と良好な剥離性を有する。このため、本発明の剥離層は、フレキシブル電子デバイスの製造プロセスにおいて、当該デバイスの樹脂基板に損傷を与えることなく、当該樹脂基板を、その樹脂基板上に形成された回路等とともに、基体から剥離させるために好適に用いることができる。
【0086】
本発明の剥離層を用いたフレキシブル電子デバイスの製造方法の一例について説明する。まず、本発明の剥離層形成用組成物を用いて、前述の方法によって、ガラス基体上に剥離層を形成する。この剥離層の上に、樹脂基板を形成するための樹脂基板形成用溶液を塗布し、得られた塗膜を焼成することで、本発明の剥離層を介して、ガラス基体に固定された樹脂基板を形成する。
【0087】
前記塗膜の焼成温度は、樹脂の種類等に応じて適宜設定されるものであるが、本発明では、この焼成時の最高温度を200~250℃とすることが好ましく、210~250℃とすることがより好ましく、220~240℃とすることがより一層好ましい。樹脂基板作製の際の焼成時の最高温度をこの範囲とすることで、剥離層と樹脂基板との剥離性をより向上させることができる。この場合も、最高温度が前記範囲となる限り、それ以下の温度で焼成する工程を含んでもよい。
【0088】
樹脂基板は剥離層を全て覆うようにして、剥離層の面積と比較して大きい面積で、樹脂基板を形成することが好ましい。樹脂基板としては、エポキシ化合物を含有する熱硬化膜からなる樹脂基板、アクリルポリマーからなる樹脂基板、シクロオレフィンポリマーからなる樹脂基板等が挙げられる。当該樹脂基板の形成方法は、常法に従えばよい。また、樹脂基板としては、波長400nmの光透過率が80%以上であるものが好ましい。
【0089】
次に、本発明の剥離層を介して基体に固定された当該樹脂基板の上に、必要に応じて所望の回路を形成し、その後、例えば剥離層に沿って樹脂基板をカットし、この回路とともに樹脂基板を剥離層から剥離して、樹脂基板と基体とを分離する。この際、基体の一部を剥離層とともにカットしてもよい。
本発明の剥離層を用いれば、樹脂基板を剥離層から0.4N/25mm以下の剥離力で剥離することができる。
【実施例0090】
以下、合成例、調製例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0091】
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
【0092】
〔ポリマー原料〕
ADMA:メタクリル酸2-アダマンチル
DCPMA:メタクリル酸ジシクロペンタニル
EGAMA:メタクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)エチル
PhMI:N-フェニルマレイミド
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
【0093】
〔溶媒〕
CHN:シクロヘキサノン
【0094】
〔(B)成分〕
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(A-DPH、新中村化学工業(株)製)
A-TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(A-TMPT、新中村化学工業(株)製)
AD-TMP:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(AD-TMP、新中村化学工業(株)製)
【0095】
〔(C)成分〕
U-CAT:トリエチルモノメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩(U-CAT18X、サンアプロ(株)製)
【0096】
〔重合体の分子量の測定〕
重合例におけるアクリル共重合体の分子量は、(株)Shodex社製常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)、Shodex社製カラム(KD-803、KD-805)を用い以下のようにして測定した。
なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:昭和電工(株)製 標準ポリスチレン(分子量約197,000、55,100、12,800、3,950、1,260、580)
【0097】
(1)(A)成分の合成
[合成例1]
非架橋性モノマーとしてADMA5.00g(22.70mmol)、架橋モノマーとしてEGAMA0.26g(1.19mmol)、重合触媒としてAIBN0.12g(0.72mmol)をTHF50.0gに溶解し、加熱還流下にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液を得た。アクリル共重合体溶液をヘキサン500.0gに徐々に滴下して固体を析出させ、ろ過及び減圧乾燥することでアクリル重合体(PA-1)を得た。得られたアクリル共重合体のMwは17,000であった。
【0098】
[合成例2~8]
原料化合物の種類、配合量を下記表1のとおりとした以外は、合成例1と同様に操作し、重合体(PA-2)~(PA-8)を得た。得られた重合体のMwを表1に示す。
【0099】
【0100】
(2)樹脂基板形成用組成物の調製
[調製例1]
溶媒として四塩化炭素100gを入れたナスフラスコに、ゼオノア(登録商標)1020R(日本ゼオン(株)製シクロオレフィンポリマー)10g及びエポリード(登録商標)GT401((株)ダイセル製)3gを添加した。この溶液を、窒素雰囲気下、24時間攪拌して溶解し、樹脂基板形成用組成物F1を調製した。
【0101】
(2)剥離層形成用組成物の調製
[実施例1-1]
(A)成分として前記合成例1で得た重合体PA-1を100質量部、(B)成分としてDPHAを5質量部、(C)成分としてU-CATを1質量部混合し、これにCHNを加え、固形分濃度が5.0質量%の剥離層形成用組成物(A-1)を調製した。
【0102】
[実施例1-2~1-10、比較例1-1~1-2]
各成分の種類と量を、それぞれ表2に記載のとおりとした以外は、実施例1-1と同様に実施し、剥離層形成組成物(A-2)~(A-12)を調製した。
【0103】
【0104】
(3)剥離層及び樹脂基板の作製
[実施例2-1]
スピンコータ(条件:回転数2,000rpmで約30秒)を用いて、剥離層形成用組成物(A-1)を、基体としてのガラス基板(コーニング社製イーグルXG、100mm×100mm×0.7mm、以下同様)の上に塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱し、次いでホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、ガラス基板上に厚さ約0.1μmの剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
その後、スピンコータ(条件:回転数200rpmで約15秒)を用いて、前記ガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F1を塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で2分間加熱し、その後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、剥離層上に厚さ約3μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0105】
[実施例2-2~2-10、比較例2-1~2-2]
剥離層形成組成物として(A-2)~(A-12)を用いた以外は、実施例2-1と同様に操作し、実施例2-2~2-10、比較例2-1~2-2の樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0106】
〔剥離力の評価〕
前記で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板を、カッターを用いて25mm×50mmの短冊状に切り込みを入れた。更に、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製CT-24)を貼った後、オートグラフAGS-X500N((株)島津製作所製)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで剥離し、剥離力を測定した。なお、剥離できないものは、剥離不可とした。評価結果は「剥離力」とし、結果を表3にまとめて示す。
【0107】
〔剥離界面の評価〕
剥離力の評価後のガラス基板上に残存する剥離層を、触針式膜厚計で膜厚を測定した。剥離層形成時の膜厚と比較を行い、剥離界面を判別した。評価結果は「剥離界面」とし、残膜率(残膜率(%)=剥離後の剥離層膜厚/剥離層形成時の剥離層膜厚×100)が90%以上の場合は剥離層/樹脂界面、10%以上90%未満の場合は剥離層の凝集破壊、10%未満の場合はガラス基板/剥離層界面とした。評価結果を表3にまとめて示す。
【0108】
【0109】
表3に示した結果より、実施例の剥離層は、低い剥離力を示し、剥離性に優れていることが確認された。また、実施例の剥離層は、剥離層と樹脂基板の界面で剥離することが確認された。一方、比較例2-1及び2-2の膜は、剥離層として機能しないことがわかる。