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特開2022-133828エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133828
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20220907BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20220907BHJP
   C08K 5/21 20060101ALI20220907BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220907BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/40
C08K5/21
C08L63/00 C
C08J5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032738
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】三角 侑司
(72)【発明者】
【氏名】福原 康裕
(72)【発明者】
【氏名】河村 奈緒
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB06
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AD27
4F072AD28
4F072AE02
4F072AE07
4F072AF22
4F072AF30
4F072AG03
4J002CD04W
4J002CD06X
4J002ET007
4J002EU118
4J002EW046
4J002FD136
4J002FD147
4J002FD148
4J002FD150
4J002GC00
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002HA02
4J036AA05
4J036AD08
4J036AF05
4J036AF06
4J036DA05
4J036DA06
4J036DA09
4J036DC25
4J036DC31
4J036DC40
4J036FA12
4J036JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燃焼時間が短く、短時間での成形が可能な、難燃性および速硬化性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】有機ホスフィン酸金属塩、例えば下記式(3)で示される、ナフタレン構造を有するエポキシ樹脂、および尿素化合物を含むエポキシ樹脂組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、および(C)成分を含む、エポキシ樹脂組成物。
(A)成分:有機ホスフィン酸金属塩
(B)成分:下記式(1)で表されるナフタレン構造を有するエポキシ樹脂
(C)成分:尿素化合物
【化1】
(式(1)中、Xは式(1A)または(1B)で表される。式(1A)、(1B)における*は、式(1)中のメチレン基との結合手を表す。
上記式中、j、k、l、x、y、zはそれぞれ独立に0以上の整数である。R~Rはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基、または炭素数7~10のアラルキルオキシ基を表す。)
【請求項2】
下記(D)成分をさらに含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
(D)成分:イミダゾール化合物および/またはイミダゾール化合物誘導体
【請求項3】
下記(E)成分をさらに含む、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
(E)成分:ノボラック型エポキシ樹脂
【請求項4】
前記(A)成分が、下記式(2)で表される有機ホスフィン酸金属塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】
(式(2)中、R11およびR12は各々独立にアルキル基またはアリール基を表す。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Ni、Li、K、およびNaからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、mは1~4の整数を表す。)
【請求項5】
前記式(2)中、R11およびR12がアルキル基であり、MがAlで、mが3である、請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)成分のエポキシ当量が250g/eq以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、下記式(3)~(5)のいずれかで表されるナフタレン構造を有するエポキシ樹脂である、請求項1~6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化3】
【請求項8】
前記(C)成分が、フェニルジメチルウレア、メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、およびトリレンビス(ジメチルウレア)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1~7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂組成物が、さらに下記(D)成分を含み、該エポキシ樹脂組成物中の前記(C)成分と該(D)成分との含有質量比((C)成分/(D)成分)が、0.1~0.5である、請求項1~8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
(D)成分:イミダゾール化合物および/またはイミダゾール化合物誘導体
【請求項10】
前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(A)成分を25質量部以下含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(B)成分を25~50質量部含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(C)成分を1~5質量部含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させてなる、プリプレグ。
【請求項14】
前記強化繊維基材が炭素繊維からなる、請求項13に記載のプリプレグ。
【請求項15】
請求項13または14に記載のプリプレグを硬化して得られる、繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性および速硬化性に優れたエポキシ樹脂組成物と、このエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂と強化繊維とを組み合わせた繊維強化複合材料(FRP)は、軽量性、剛性、耐衝撃性等に優れることから様々な用途に用いられている。特に炭素繊維強化複合材料は、軽量かつ高強度、高剛性であるため、釣り竿やゴルフシャフト等のスポーツ・レジャー用途、自動車用途や航空機用途等の幅広い分野で用いられている。また近年では、炭素繊維強化複合材料の機械的特性に加え、炭素繊維の電磁波遮蔽性といった特長を生かし、ノートパソコンなどの電子・電気機器の筐体としても使用されている。
【0003】
繊維強化複合材料は、様々な用途の中で、難燃性能を求められることがある。例えば、繊維強化複合材料を電子・電気機器や航空機用の構造体などに用いる場合、発熱による発火が火災の原因となる可能性があるため、難燃性能が求められる。繊維強化複合材料に難燃性能を付与する方法としては、マトリックス樹脂組成物に臭素化エポキシ樹脂を添加する方法が広く用いられていた。しかし近年では、ハロゲンを含む樹脂組成物が燃焼時に発生する物質の人体や環境への負荷を考慮して、リン系難燃剤を含むエポキシ樹脂組成物が用いられるようになってきた(特許文献1~3参照)。例えば、リン系難燃剤として有機ホスフィン酸の金属塩を使用することで、UL-94V燃焼試験においてV-0を達成している(特許文献2および3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-218573号公報
【特許文献2】特開2017-2202号公報
【特許文献3】特表2006-526066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の難燃性エポキシ樹脂組成物では、UL-94V燃焼試験においてV-0を達成するものの燃焼時間が長いという問題があった。また、従来の難燃性エポキシ樹脂組成物は硬化に長時間を要し、生産性に劣るという問題もあった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、燃焼時間が短く、短時間での成形が可能な、難燃性および速硬化性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。本発明はまた、このエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、エポキシ樹脂として特定のナフタレン構造を有するエポキシ樹脂を用い、このエポキシ樹脂に有機ホスフィン酸金属塩と尿素化合物を組み合わせて用いることで、難燃性と速硬化性を兼備するエポキシ樹脂組成物を得ることができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0008】
[1] 下記(A)成分、(B)成分、および(C)成分を含む、エポキシ樹脂組成物。
(A)成分:有機ホスフィン酸金属塩
(B)成分:下記式(1)で表されるナフタレン構造を有するエポキシ樹脂
(C)成分:尿素化合物
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、Xは式(1A)または(1B)で表される。式(1A)、(1B)における*は、式(1)中のメチレン基との結合手を表す。
上記式中、j、k、l、x、y、zはそれぞれ独立に0以上の整数である。R~Rはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基、または炭素数7~10のアラルキルオキシ基を表す。)
【0011】
[2] 下記(D)成分をさらに含む、[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
(D)成分:イミダゾール化合物および/またはイミダゾール化合物誘導体
【0012】
[3] 下記(E)成分をさらに含む、[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
(E)成分:ノボラック型エポキシ樹脂
【0013】
[4] 前記(A)成分が、下記式(2)で表される有機ホスフィン酸金属塩である、[1]~[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0014】
【化2】
【0015】
(式(2)中、R11およびR12は各々独立にアルキル基またはアリール基を表す。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Ni、Li、K、およびNaからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、mは1~4の整数を表す。)
【0016】
[5] 前記式(2)中、R11およびR12がアルキル基であり、MがAlで、mが3である、[4]に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0017】
[6] 前記(B)成分のエポキシ当量が250g/eq以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0018】
[7] 前記(B)成分が、下記式(3)~(5)のいずれかで表されるナフタレン構造を有するエポキシ樹脂である、[1]~[6]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0019】
【化3】
【0020】
[8] 前記(C)成分が、フェニルジメチルウレア、メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、およびトリレンビス(ジメチルウレア)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、[1]~[7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0021】
[9] 前記エポキシ樹脂組成物が、さらに下記(D)成分を含み、該エポキシ樹脂組成物中の前記(C)成分と該(D)成分との含有質量比((C)成分/(D)成分)が、0.1~0.5である、[1]~[8]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(D)成分:イミダゾール化合物および/またはイミダゾール化合物誘導体
【0022】
[10] 前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(A)成分を25質量部以下含む、[1]~[9]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0023】
[11] 前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(B)成分を25~50質量部含む、[1]~[10]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0024】
[12] 前記エポキシ樹脂組成物100質量部に対し、前記(C)成分を1~5質量部含む、[1]~[11]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0025】
[13] [1]~[12]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させてなる、プリプレグ。
【0026】
[14] 前記強化繊維基材が炭素繊維からなる、[13]に記載のプリプレグ。
【0027】
[15] [13]または[14]に記載のプリプレグを硬化して得られる、繊維強化複合材料。
【発明の効果】
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物によれば、燃焼時間が短く、短時間での成形が可能な、難燃性および速硬化性に優れた成形品、プリプレグおよび繊維強化複合材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「エポキシ樹脂」とは、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。平均粒子径とはレーザー回折法で測定した体積基準での累積分布の50%に相当する粒子径を意味する。
以下において、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を「樹脂硬化物」と称し、その中でも特に板状の硬化物を「樹脂板」と称することがある。
【0030】
[エポキシ樹脂組成物]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、下記(A)成分、(B)成分、および(C)成分を含む。本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、下記(D)成分、(E)成分を含んでいてもよい。
(A)成分:有機ホスフィン酸金属塩
(B)成分:下記式(1)で表されるナフタレン構造を有するエポキシ樹脂
(C)成分:尿素化合物
(D)成分:イミダゾール化合物および/またはイミダゾール化合物誘導体
(E)成分:ノボラック型エポキシ樹脂
【0031】
【化4】
【0032】
(式(1)中、Xは式(1A)または(1B)で表される。式(1A)、(1B)における*は、式(1)中のメチレン基との結合手を表す。
上記式中、j、k、l、x、y、zはそれぞれ独立に0以上の整数である。R~Rはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基、または炭素数7~10のアラルキルオキシ基を表す。)
【0033】
<(A)成分>
(A)成分は、有機ホスフィン酸金属塩である。有機ホスフィン酸金属塩はリン含有量が高く、難燃性を効率的に付与できる。また、加水分解性、熱安定性に優れているため、加工時の圧力や熱による硬化剤等の粒子のブリードアウト現象が起こりにくい。加えて、有機ホスフィン酸金属塩を含有するエポキシ樹脂組成物は、例えばせん断速度に対する粘度変化において、高せん断速度時の粘度の変化幅が小さいため塗工性に優れる。
【0034】
熱安定性の観点から、DSC(示差走査熱量測定)で観測される有機ホスフィン酸金属塩の分解温度は、250℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましい。
【0035】
有機ホスフィン酸金属塩としては、例えば下記式(2)で表されるものが、難燃性の向上効果に優れるため、好ましい。
【0036】
【化5】
【0037】
(式(2)中、R11およびR12は各々独立にアルキル基またはアリール基を表す。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Ni、Li、K、およびNaからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、mは1~4の整数を表す。)
【0038】
上記式(2)中のR11およびR12のアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐していてもよい。R11およびR12としては、難燃性の観点からアルキル基が好ましい。アルキル基としては、難燃性の観点から炭素数1~20であることが好ましく、炭素数1~6であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t-ブチル基等が挙げられ、メチル基またはエチル基が特に好ましい。アリール基としては、難燃性の観点から炭素数6~20であることが好ましく、炭素数6~8であることがより好ましい。具体的には、フェニル基、キシリル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
Mとしては、難燃性の観点からAl、Zn、またはTiが好ましく、Alがより好ましい。
【0039】
上記式(2)で表される有機ホスフィン酸金属塩としては、例えばトリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、ビスジフェニルホスフィン酸チタニルなどが挙げられる。これらの中でも、高い難燃性や耐湿性を有するエポキシ樹脂組成物が得られる点で、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウムが好ましい。
【0040】
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(A)成分としては市販品を用いてもよいし、公知の製造方法により合成したものを用いてもよい。有機ホスフィン酸金属塩やその複合体の市販品としては、例えばExolit OP930、OP935、OP945、OP1230(いずれも商品名、クラリアントジャパン株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
有機ホスフィン酸金属塩の平均粒子径は50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。平均粒子径を50μm以下にすることで、エポキシ樹脂組成物の難燃性や機械的特性が向上し、良好な外観となる。また有機ホスフィン酸金属塩の平均粒子径は0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。平均粒子径を0.01μm以上とすることでエポキシ樹脂組成物の粘度を調整しやすくなる。有機ホスフィン酸金属塩の粒子径は、予めビーズミル等により粉砕したり、液状のエポキシ樹脂成分等との配合時に3本ロール等により粉砕したりすることで、調整できる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物100質量部に対する(A)成分の含有量は、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。(A)成分の含有量を1質量部以上とすることで、樹脂硬化物の難燃性が向上し、難燃性により優れた樹脂硬化物及び繊維強化複合材料が得られる。また(A)成分の含有量は、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。(A)成分の含有量を25質量部以下とすることで、硬化速度の速いエポキシ樹脂組成物、機械的特性や良好な外観の樹脂硬化物及び繊維強化複合材料を得ることができる。
【0044】
<(B)成分>
(B)成分は、下記式(1)で表されるナフタレン構造を有するエポキシ樹脂(以下、「ナフタレン型エポキシ樹脂」と称す場合がある。)である。エポキシ樹脂の構造中にナフタレン骨格を含むことで燃焼時のチャー生成量が増加し、固相での難燃効果を高めることができる。またナフタレン骨格の平面構造による立体障害効果と、(C)成分による硬化促進の相乗効果により、エポキシ基が活性化することで、エポキシ組樹脂成物の硬化速度の向上に繋がる。その結果、エポキシ樹脂組成物の硬化性が向上し、速硬化性と難燃性との両立を図ることができる。
【0045】
【化6】
【0046】
(式(1)中、Xは式(1A)または(1B)で表される。式(1A)、(1B)における*は、式(1)中のメチレン基との結合手を表す。
上記式中、j、k、l、x、y、zはそれぞれ独立に0以上の整数である。R~Rはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基、または炭素数7~10のアラルキルオキシ基を表す。)
【0047】
難燃性の観点から、R~Rは炭素数1~8のアルキル基または炭素数6~10のアリール基が好ましい。炭素数6~10のアリール基としては、ナフチル基、フェニル基、キリシル基、トリル基などが挙げられる。炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基などが挙げられる。また、j~lは難燃性の観点から、0~5が好ましく、0~3がより好ましい。x~zは保存安定性の観点から、0~5が好ましく、0~3がより好ましい。
【0048】
(B)成分のナフタレン型エポキシ樹脂は、硬化促進の観点から、下記式(3)~(5)で表される構造を有することが好ましい。
【0049】
【化7】
【0050】
なお、上記式(3)中、nは繰り返し数であり、好ましくは後述の好ましいエポキシ当量を満たす値である。
【0051】
(B)成分のナフタレン型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、硬化時間を短縮できることから、250g/eq以下が好ましく、240g/eq以下がより好ましい。一方、保存安定性の観点から、150g/eq以上が好ましく、150g/eq以上がより好ましい。
【0052】
(B)成分のナフタレン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、NC-7000L(商品名、日本化薬株式会社製)、HP-4700、HP-4710、HP-4770(商品名、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
(B)成分は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物100質量部に対する(B)成分の含有量は、25質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。(B)成分の含有量を25質量部以上とすることで、より高度に難燃性と速硬化性を両立したエポキシ樹脂組成物が得られる。また、(B)成分の含有量は、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。(B)成分の含有量を50質量部以下とすることで、より機械的特性および保存安定性に優れた樹脂硬化物及び繊維強化複合材料を得ることができる。
【0055】
<(C)成分>
(C)成分は、尿素化合物である。尿素化合物は、高温で加熱することによりイソシアネート基とジメチルアミンを生成し、これらがエポキシ基と反応することで生じた熱により、生成した-NH基とエポキシ基の反応をさらに促進することで硬化速度を速くすることができる。
【0056】
尿素化合物としては、特に制限されないが、例えばジメチルウレイド基が芳香環に結合した芳香族ジメチルウレア、ジメチルウレイド基が脂肪族化合物に結合した脂肪族ジメチルウレアなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、硬化速度が速くなる点で、芳香族ジメチルウレアが好ましい。
【0057】
芳香族ジメチルウレアとしては、例えばフェニルジメチルウレア、メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、トリレンビス(ジメチルウレア)が挙げられる。より具体的には、4,4’-メチレンビス(フェニルジメチルウレア)(MBPDMU)、3-フェニル-1,1-ジメチルウレア(PDMU)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(DCMU)、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチルウレア、2,4-ビス(3,3-ジメチルウレイド)トルエン(TBDMU)などが挙げられる。これらの中でも、硬化促進作用の観点から、フェニルジメチルウレア、メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、およびトリレンビス(ジメチルウレア)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。
【0058】
脂肪族ジメチルウレアとしては、例えばイソホロンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチルウレア、m-キシリレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチルウレア、ヘキサメチレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチルウレアなどが挙げられる。
【0059】
また、(C)成分としては市販品を用いてもよい。PDMUの市販品としては、例えばOmicure(オミキュア)94(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂組成物100質量部に対する(C)成分の含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。(C)成分の含有量を0.5質量部とすることで、エポキシ樹脂組成物の硬化が促進される。また、(C)成分の含有量は、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。(C)成分の含有量を10質量部以下とすることで、難燃性、耐熱性、機械的特性がより優れた樹脂硬化物及び繊維強化複合材料が得られる。
【0061】
<(D)成分>
(D)成分は、イミダゾール化合物および/またはイミダゾール化合物誘導体である。
イミダゾール化合物および/またはイミダゾール化合物誘導体は、その構造の中に非共有電子対を有する窒素原子を有し、これがエポキシ基を活性化し、硬化を促進する。
【0062】
保存安定性と成形における硬化速度を向上させる観点から、(D)成分は硬化開始温度が100℃以上のイミダゾール化合物および/またはイミダゾール化合物誘導体であることが好ましく、硬化開始温度が110℃以上のイミダゾール化合物および/またはイミダゾール化合物誘導体であることがより好ましい。
【0063】
ここで、硬化開始温度は、以下の方法で測定された値である。
まずエポキシ当量が180~220g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂100質量部に、イミダゾール化合物またはイミダゾール化合物誘導体10質量部を加えて混合し試料樹脂組成物を調製する。該試料樹脂組成物につき、昇温速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)により発熱量を測定し、得られたDSC曲線の変曲点における接線とベースラインとの交点の温度を硬化開始温度とする。
【0064】
イミダゾール化合物としては、例えば2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0065】
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール化合物のイミダゾールアダクト、包接イミダゾール、マイクロカプセル型イミダゾール、および安定化剤を配位させたイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の誘導体であってもよい。
【0066】
アダクト処理、異分子による包接処理、マイクロカプセル処理、あるいは安定化剤を配位させる前のイミダゾールの具体例としては、上記の他に、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾ リウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト 、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-エチル-4-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
(D)成分の市販品としては、2MZ-A、2MZA-PW、2E4MZ-A、2MZ、2PZ、2E4MZ、2PHZ(いずれも商品名、四国化成株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。エポキシ樹脂のエポキシ基にイミダゾール化合物が開環付加した構造を有するイミダゾールアダクトの市販品としては、例えばPN-50、PN-50J、PN-40、PN-40J、PN-31、PN-23、PN-H(いずれも商品名、味の素ファインテクノ株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。包接イミダゾールの市販品としては、例えばTIC-188、KM-188、HIPA-2P4MHZ、NIPA-2P4MHZ、TEP-2E4MZ、HIPA-2E4MZ、NIPA-2E4MZ(いずれも商品名、日本曹達株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。マイクロカプセル型イミダゾールの市販品としては、例えばノバキュアHX3721、HX3722、HX3742、HX3748(商品名、旭化成イーマテリアルズ株式会社製);LC-80(商品名、A&C Catalysts社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物が(D)成分を含有する場合、エポキシ樹脂組成物100質量部に対する(D)成分の含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。(D)成分の含有量を1質量部以上とすることで、エポキシ樹脂組成物の硬化がより促進される。また、(D)成分の含有量は、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。(D)成分の含有量を30質量部以下とすることで、難燃性、耐熱性、機械的特性により優れた樹脂硬化物が得られる。
【0070】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中の(C)成分と(D)成分の含有比率((C)成分の質量/(D)成分の質量)は、硬化性の観点から、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。一方、保存安定性の観点から、0.6以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
【0071】
<(E)成分>
(E)成分は、ノボラック型エポキシ樹脂である。本発明のエポキシ樹脂組成物が(E)成分のノボラック型エポキシ樹脂を含むことで、樹脂硬化物の耐熱性を良好に維持することが可能となる。加えて、エポキシ樹脂組成物の速硬化性が向上し、低温でも短時間に硬化が完了するプリプレグが得られる。
【0072】
(E)成分としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0073】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER(登録商標)の152、154(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);エピクロン(登録商標)のN-740、N-775(いずれも商品名、DIC株式会社製)などが挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロン(登録商標)のN-660、N-665(いずれも商品名、DIC株式会社製);EOCN-1020、EOCN-102S(いずれも商品名、日本化薬株式会社製);YDCN-700、YDCN-701(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)などが挙げられる。
【0074】
(E)成分は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0075】
本発明のエポキシ樹脂組成物が(E)成分を含む場合、エポキシ樹脂組成物100質量部に対する(E)成分の含有量は、5~35質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、20~30質量部は特に好ましい。(E)成分の含有量が上記下限値以上であれば、樹脂硬化物の耐熱性が向上する傾向にあり、耐熱性に優れた樹脂硬化物及び繊維強化複合材料が得られる。加えて、エポキシ樹脂組成物の速硬化性が向上し、低温でも短時間に硬化が完了するプリプレグが得られる。一方、(E)成分の含有量が上記上限値以下であれば、樹脂硬化物の機械物性が向上する傾向にあり、機械物性に優れた樹脂硬化物及び繊維強化複合材料が得られる。加えて、破断歪が高くボイドの無い樹脂硬化物を得ることができる傾向にある。また、エポキシ樹脂組成物の粘度が過度に上昇するのを抑制でき、エポキシ樹脂組成物の調製が容易となる。
【0076】
<任意成分>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上述した(A)成分~(E)成分以外の成分(以下、「任意成分」と称す場合がある。)をさらに含有するものであってもよい。
任意成分としては、(B)成分および(E)成分以外のエポキシ樹脂(以下、「他のエポキシ樹脂」という。)、熱可塑性樹脂、添加剤などが挙げられる。
【0077】
他のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0078】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER(登録商標)の825、826、827、828、834、1001(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);エピクロン(登録商標)850(商品名、DIC株式会社製);エポトート(登録商標)YD-128(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製);DER(登録商標)の331、332(いずれも商品名、ダウ・ケミカル日本株式会社製);Bakelite(登録商標)のEPR154、EPR162、EPR172、EPR173、EPR174(いずれも商品名、Bakelite AG社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER(登録商標)の806、807、1750(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);エピクロン(登録商標)830(商品名、DIC株式会社製);エポトート(登録商標)のYD-170、YD-175(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製);Bakelite(登録商標)EPR169(商品名、Bakelite AG社製);GY281、GY282、GY285(いずれも商品名、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER(登録商標)630(商品名、三菱ケミカル株式会社製);アラルダイト(登録商標)のMY0500、MY0510、MY0600(いずれも商品名、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、NC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3000-FH-75M、NC-3100(いずれも商品名、日本化薬株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
オキサゾリドン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、AER4152、AER4151、LSA3301、LSA2102(いずれも商品名、旭化成イーマテリアルズ株式会社製);ACR1348(商品名、株式会社ADEKA製);DER(登録商標。以下同様。)の852、858(いずれも商品名、ダウ・ケミカル日本株式会社製);TSR-400(商品名、DIC株式会社製);YD-952(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明のエポキシ樹脂組成物が他のエポキシ樹脂を含有する場合、他のエポキシ樹脂の含有量は、本発明の効果をより有効に得る観点から、エポキシ樹脂組成物100質量部中に60質量部以下が好ましく、50質量部以下が好ましい。また、(B)成分と(E)成分と他のエポキシ樹脂の合計100質量%中に60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
一方で、その他のエポキシ樹脂の配合効果を有効に得る観点から、エポキシ樹脂組成物100質量部中のその他のエポキシ樹脂の含有量は30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましい。また、(B)成分と(E)成分とその他のエポキシ樹脂の合計100質量%中のその他のエポキシ樹脂の含有量は30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。
【0084】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリオレフィン、液晶ポリマー、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリビニルホルマール、フェノキシ樹脂、ブロックポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの熱可塑性樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0085】
上記熱可塑性樹脂の中でも、樹脂フロー制御性等に優れる観点から、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリビニルホルマール、ブロックポリマーが好ましい。特に、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドを用いれば、樹脂硬化物の耐熱性や難燃性がより高まる。ポリビニルホルマールを用いれば、樹脂硬化物の耐熱性を損なうことなく、得られるプリプレグのタックを適切な範囲に容易に制御できる。加えて、強化繊維と樹脂硬化物の接着性がより高まる。ブロックポリマーを用いれば、樹脂硬化物の靱性や耐衝撃性が向上する。
【0086】
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、YP-50、YP-50S、YP70、ZX-1356-2、FX-316(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリビニルホルマールの市販品としては、例えば、ビニレック(登録商標)のK(数平均分子量:59,000)、L(数平均分子量:66,000)、H(数平均分子量:73,000)、E(数平均分子量:126,000)(いずれも商品名、JNC株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
樹脂硬化物に180℃を超える耐熱性が必要とされる場合、熱可塑性樹脂としてはポリエーテルスルホンやポリエーテルイミドが好ましく用いられる。ポリエーテルスルホンの市販品としては、例えば、スミカエクセル(登録商標)の3600P(数平均分子量:16,400)、5003P(数平均分子量:30,000)、5200P(数平均分子量:35,000)、7600P(数平均分子量:45,300)(いずれも商品名、住友化学株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエーテルイミドの市販品としては、例えば、ULTEM(登録商標)の1000(数平均分子量:32,000)、1010(数平均分子量:32,000)、1040(数平均分子量:20,000)(いずれも商品名、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
ブロックポリマーの市販品としては、例えば、Nanostrength(登録商標)のM52、M52N、M22、M22N、123、250、012、E20、E40(いずれも商品名、ARKEMA社製);TPAE-8、TPAE-10、TPAE-12、TPAE-23、TPAE-31、TPAE-38、TPAE-63、TPAE-100、PA-260(いずれも商品名、株式会社T&K TOKA製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の様々な添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、エポキシ樹脂の硬化促進剤、無機質充填材、内部離型剤、有機顔料、無機顔料などが挙げられる。
【0090】
添加剤としては、より具体的には、(A)成分以外のリン系難燃剤(例えばリン含有エポキシ樹脂や赤燐、ホスファゼン化合物、リン酸塩類、リン酸エステル類等)、無機系難燃化剤として水和金属化合物系(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)、無機酸化物その他助剤系(アンチモン化合物、硼酸亜鉛,錫酸亜鉛,Mo化合物,ZrO,硫化亜鉛,ゼオライト,酸化チタンナノフィラー系等)、シリコーンオイル、湿潤分散剤、消泡剤、脱泡剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド、エステル類、パラフィン類等の離型剤、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の粉体やガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0091】
また、その他の添加剤として、ジシアンジアミドまたはその誘導体を添加することもできる。
ジシアンジアミドおよびその誘導体は融点が高く、低温領域でエポキシ樹脂との相溶性が低い。また、エポキシ樹脂組成物がジシアンジアミドまたはその誘導体を含むことで、優れたポットライフが得られるとともに、樹脂硬化物の力学特性が向上する。
【0092】
ジシアンジアミドの誘導体としては、例えばジシアンジアミドと、エポキシ樹脂やビニル化合物、アクリル化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド等の各種化合物を結合させたものなどが挙げられるが、反応性の点からジシアンジアミドが好ましい。
【0093】
ジシアンジアミドまたはその誘導体としては市販品を用いてもよい。ジシアンジアミドの市販品としては、例えばDicy7、Dicy15(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製)、DICYANEX1400F(商品名、エボニックジャパン株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
エポキシ樹脂組成物100質量部に対するジシアンジアミドまたはその誘導体の含有量は、硬化促進の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また硬化物の靱性の観点から、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して11質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0095】
以上のその他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
<エポキシ樹脂組成物の製造方法>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、上述した各成分を混合することにより得られる。各成分の混合方法としては、三本ロールミル、プラネタリミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、ホモディスパー等の混合機を用いる方法が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、後述するように、強化繊維の集合体に含浸させてプリプレグの製造に用いることができる。他にも、エポキシ樹脂組成物を離型紙等に塗布して硬化させることで、エポキシ樹脂組成物のフィルムを得ることができる。この場合、30℃におけるエポキシ樹脂組成物の粘度が、100~1,000,000Pa・sであると、プリプレグ表面のタックの調整や作業性に優れる。
【0097】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、上述した本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させてなるものである。
【0098】
<強化繊維>
強化繊維は、プリプレグ中で強化繊維基材(強化繊維の集合体)として存在し、シート状であることが好ましい。強化繊維は、強化繊維が単一方向に配列したものであってもよく、ランダム方向に配列したものであってもよい。強化繊維の形態としては強化繊維の織物、強化繊維の不織布、強化繊維の長繊維が一方向に引き揃えられたシートなどが挙げられる。強化繊維は、比強度や比弾性率が高い繊維強化複合材料を成形することができるという観点からは、長繊維が単一方向に引き揃えられた強化繊維の束からなるシートであることが好ましく、取り扱いが容易であるという観点からは、強化繊維の織物であることが好ましい。
【0099】
強化繊維の材質としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維などが挙げられる。得られる繊維強化複合材料の機械物性および軽量化の観点から、強化繊維としては炭素繊維が好ましい。
【0100】
炭素繊維の繊維径は、3~12μmが好ましい。炭素繊維の繊維径が上記下限値以上であれば、炭素繊維を加工するための、例えば、コーム、ロール等のプロセスにおいて、炭素繊維が横移動して炭素繊維同士が擦れたり、炭素繊維とロール表面等とが擦れたりするときに、炭素繊維が切断したり、毛羽だまりが生じたりしにくい。このため、安定した強度の繊維強化複合材料を好適に製造することができる。炭素繊維の繊維径が上記上限値以下であれば、通常の方法で炭素繊維を製造することができる。
ここで炭素繊維の繊維径とは繊維1本あたりの直径を表し、炭素繊維の線密度と密度、及び構成する単繊維の本数から計算によって求めることができる。
【0101】
炭素繊維束における炭素繊維の本数は、1,000~70,000本が好ましい。
【0102】
得られる繊維強化複合材料の剛性の観点から、炭素繊維のストランド引張強度は1.5~9GPaが好ましく、炭素繊維のストランド引張弾性率は150~260GPaが好ましい。
ここで、炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率は、JIS R7601:1986に準拠して測定される値である。
【0103】
<プリプレグの製造方法>
プリプレグは、例えば、上述したエポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させることで得られる。このようにして得られるプリプレグは、エポキシ樹脂組成物が強化繊維基材に含浸したものである。エポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させる方法としては、例えばエポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトン、メタノール等の溶媒に溶解して低粘度化してから、強化繊維の集合体に含浸させるウェット法;エポキシ樹脂組成物を加熱により低粘度化してから、強化繊維の集合体に含浸させるホットメルト法(ドライ法)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
ウェット法は、強化繊維の集合体をエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法である。ホットメルト法には、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接、強化繊維の集合体に含浸させる方法と、一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙等の基材の表面に塗布してフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の集合体の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維の集合体にエポキシ樹脂組成物を含浸させる方法がある。離型紙等の基材の表面に塗布して得られるエポキシ樹脂組成物の塗布層は、未硬化のままでホットメルト法に用いてもよいし、塗布層を硬化させた後にホットメルト法に用いてもよい。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上存在しないため好ましい。
【0105】
プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の含有量(以下、「樹脂含有量」という)は、プリプレグの総質量に対して、15~50質量%が好ましく、20~45質量%がより好ましく、25~40質量%がさらに好ましい。樹脂含有量が、上記下限値以上であれば強化繊維とエポキシ樹脂組成物との接着性を充分に確保することができ、上記上限値以下であれば得られる繊維強化複合材料の機械物性がより高まる。
【0106】
[繊維強化複合材料]
本発明の繊維強化複合材料は、本発明のプリプレグの硬化物であり、2枚以上のプリプレグが積層された積層体の硬化物であることが好ましい。プリプレグの一部を硬化させたものであってもよい。すなわち、繊維強化複合材料は、プリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物の硬化物と、強化繊維とを含む。繊維強化複合材料は、例えば、前述のプリプレグを2枚以上積層した後、得られた積層体に圧力を付与しながら、エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させる方法等により成形して得られる。
【0107】
成形方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法、シートラップ成形法や、強化繊維のフィラメントやプリフォームにエポキシ樹脂組成物を含浸させて硬化し成形品を得るRTM(Resin Transfer Molding)、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding:真空樹脂含浸製造法)、フィラメントワインディング、RFI(Resin Film Infusion)などが挙げられるが、これらの成形方法に限られるものではない。これらの中でも、エポキシ樹脂組成物の特徴を十分に生かすことができ、しかも生産性が高く、良質な繊維強化複合材料が得られやすいという観点から、プレス成形法が好ましい。
【0108】
プレス成形法で繊維強化複合材料を製造する場合、プリプレグ、またはプリプレグを積層して作製したプリフォームを、予め硬化温度に調整した金型に挟んで加熱加圧することにより、プリプレグまたはプリフォームを硬化させることが好ましい。プレス成形時の金型内の温度は、100~160℃が好ましい。また、1~15MPaの条件下で1~20分間、プリプレグまたはプリフォームを硬化させることが好ましい。
【0109】
<用途>
本発明の繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂が前記本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物であることから、ハロゲン系難燃剤、赤リン、およびリン酸エステルを含有しなくても優れた難燃性を有する。したがって、本発明の繊維強化複合材料は、高度な難燃性能が要求される用途、たとえば電気電子筐体材料や航空機内装用材料等において有用であり、ノートパソコンなどの電気・電子機器用筐体、航空機や自動車の内装部材などに適用できる。その他にも、スポーツ用途、一般産業用途および航空宇宙用途に好適に用いられる。
【実施例0110】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0111】
以下の実施例および比較例で使用した原料を以下に示す。
【0112】
[原料]
<(A)成分>
・OP935:トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、リン原子含有量23.0質量%、平均粒子径2~3μm、最大粒径10μm未満、分解温度300℃以上、クラリアントジャパン株式会社製の「Exolit OP935」
【0113】
<(B)成分>
・NC-7000L:下記式(3)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量225g/eq、日本化薬株式会社製の「NC-7000L」
【0114】
【化8】
【0115】
・HP-4700:下記式(4)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量160g/eq、DIC株式会社製の「HP-4700」
【0116】
【化9】
【0117】
・HP-4770:下記式(5)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq、DIC株式会社製の「HP-4770」
【0118】
【化10】
【0119】
<(C)成分>
・Omicure94:3-フェニル-1,1-ジメチルウレア、ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製の「Omicure(オミキュア)94」
【0120】
<(D)成分>
・2MZA-PW:2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]- エチル-s-トリアジン、硬化開始温度140℃、四国化成工業株式会社製の「2MZA-PW」
【0121】
<(E)成分>
・N-740:フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量180g/eq、DIC株式会社製の「N-740」
【0122】
<その他のエポキシ樹脂>
・jER828:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量189g/eq、三菱ケミカル株式会社製の「jER828」
・NC-3000:ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量275g/eq、日本化薬株式会社製の「NC-3000」
・jER1001:固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量475g/eq、三菱ケミカル株式会社製の「jER1001」
【0123】
<その他の添加剤>
・Dicy15:ジシアンジアミド、三菱ケミカル株式会社製の「jERキュア Dicy15」
・CDP:クレジルジフェニルホスフェート、大八化学工業株式会社製の「CDP」。
【0124】
[実施例1]
(A)成分としてOP935、(B)成分としてNC-7000L、(C)成分としてOmicure94、(D)成分として2MZA-PW、(E)成分としてN-740を用い、以下のようにしてエポキシ樹脂組成物を調製した。
まず、表1に記載の組成に従い、jER828(液状)と、(C)成分(固形)および(D)成分(固形)およびDicy15(固形)を、固形成分と液状成分の質量比が1:1となるよう容器に計量し、攪拌し、混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合し、硬化剤マスターバッチを得た。続けて、表1に記載の組成の内、(A)成分と硬化剤マスターバッチ以外の成分をフラスコに計量し、オイルバスを用いて120℃に加熱し溶解混合した。その後65℃程度まで冷却しつつ、(A)成分を加えて攪拌混合し、65℃程度まで冷却したところで、前記硬化剤マスターバッチを加えて攪拌混合することによりエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用い、後述するエポキシ樹脂板作製方法に従って、樹脂板を作製した。また後述の評価方法に従って、各種測定および評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0125】
[実施例2~4、比較例1~10]
表1~3に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、このエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂板を作製し、各種測定および評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0126】
[樹脂板の作製方法]
未硬化のエポキシ樹脂組成物をオーブン雰囲気温度70℃×10分で硬化後、140℃×40分(昇温速度は10℃/分)で硬化させて、厚さ2mmの樹脂板を作製した。
【0127】
[評価方法]
(1)樹脂板のUL-94V燃焼試験
得られた厚さ2mmの樹脂板を、長さ127mm×幅12.7mmに加工して試験片とした。該試験片について、燃焼試験機(スガ試験機株式会社製)を用いて、UL-94V規格に従って燃焼試験を実施した。具体的には、試験片をクランプに垂直に取付け、20mm炎による接炎を10秒間行い、燃焼時間を測定した。5個の試験片について燃焼試験を行い、クランプまで燃焼したサンプルの数、各燃焼時間のうちの最大値(max)、および5個の燃焼時間の合計(総燃焼時間:total)を記録した。また、その結果に基づいて判定[V-0、V-1、V-2、fail]を行った。難燃性はV-0が最も優れており、V-1、V-2、failの順に劣っていく。
【0128】
(2)エポキシ樹脂組成物の硬化度と硬化時間の算出
未硬化のエポキシ樹脂組成物のトルク値をキュラストメーター(JSRトレーディング株式会社製、「キュラストメーター7(TypeP)」)を用いて連続的に測定し、硬化反応中の粘弾性応力の変化を求めることで、硬化度と硬化時間を測定した。トルクの最大値の90%が得られる時間をtc(90)、ゲルタイムをtsxとし、硬化度を比較した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
表1~3の結果から明らかなように、実施例1~4のエポキシ樹脂組成物は、燃焼試験の最大燃焼時間が10秒以下と難燃性に優れていた。実施例1~4のエポキシ樹脂組成物は、(C)成分および(D)成分によって、エポキシ基が活性化し、エポキシ樹脂組成物の架橋密度が適度に高くなることで、(A)成分を均一に分散でき、また、(B)成分が縮合多環芳香族骨格を含むことから、燃焼時のチャー生成量が増加し、高い難燃性が得られたと考えられる。
また、実施例1~4のエポキシ樹脂組成物は、トルクの最大値の90%が得られる時間が5分以内と速硬化性に優れていた。実施例1~4は(C)成分による硬化促進効果と、ナフタレン骨格が立体障害効果としての機能を有することの相乗効果により、優れた速硬化性が得られたと考えられる。
これに対して、本発明の要件を満たさない比較例1~10は、難燃性および/または速硬化性が劣る。