(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134667
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】岩石選別システム及び岩石識別装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220908BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20220908BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
G06T7/00 350B
G01N21/84 Z
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033956
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉本 有輝
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB20
2G051CA04
2G051CB01
2G051DA15
2G051EA11
2G051EA16
2G051EC01
2G051ED11
2G059AA05
2G059BB09
2G059EE02
2G059FF01
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
5L096AA06
5L096CA02
5L096CA25
5L096DA02
5L096FA02
5L096GA41
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】鉱石を含む岩石の選別において経験等に基づくことなく、岩石の選別を行うことができる岩石選別システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る岩石選別システムは、供給装置と、撮像装置と、識別装置と、選別装置とを有する。供給装置は、鉱石を含む岩石を供給する。撮像装置は、供給された前記岩石を撮像する。識別装置は、前記撮像装置から得た画像を用いて学習した前記岩石の分類モデルを用いて、前記岩石の種類を識別する。選別装置は、識別された前記岩石の種類に基づいて予め決められた種類を選別する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱石を含む岩石を供給する供給装置と、
供給された前記岩石を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置から得た画像を用いて学習した前記岩石の分類モデルを用いて、前記岩石の種類を識別する識別装置と、
識別された前記岩石の種類に基づいて予め決められた種類を選別する選別装置と、
を有する岩石選別システム。
【請求項2】
鉱石を含む岩石の画像を取得する取得部と、
前記画像から前記岩石の特徴を示す特徴量を抽出する抽出部と、
前記特徴量を用いて学習した結果に基づいて前記画像に含まれる前記岩石の種類を識別する識別部と、
を有する岩石識別装置。
【請求項3】
前記抽出部は、前記画像から前記岩石の部分の領域を抽出し、当該領域から前記特徴量を抽出する請求項2に記載の岩石識別装置。
【請求項4】
前記特徴量が、少なくとも前記画像の明度を含む請求項2又は3に記載の岩石識別装置。
【請求項5】
ユーザによる前記岩石の分類に関する入力を受け付ける受付部と、
前記識別部の識別結果を提示する提示部と、
を更に有し、
前記ユーザの前記入力と前記識別結果とが異なる場合に、前記ユーザの前記入力と対応する前記画像とを追加して再学習する請求項2~4の何れか一項に記載の岩石識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石選別システム及び岩石識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、採掘された鉱石を含む岩石は、出鉱して鉱石処理場で破砕した後、適当な粒度に微粉砕し、得られた鉱粒をスラリーにして懸濁させることで、目的の金属を浸出させる。例えば、金の場合、青化法により金を分離及び濃縮する方法が知られている。
【0003】
鉱石を分離するには岩石を数十ミクロンから数百ミクロンに粉砕しなければならないが、採掘されたままの岩石中には、目的とする金属を殆ど含まない母岩の塊が多く含まれている。このため、手選別又は自動選別機(オアソーター(Ore Sorting))によって、製錬の対象となる精鉱と、製錬に用いられない廃石、いわゆるズリと呼ばれるものに選別する。
【0004】
岩石を選別する装置として、例えば、特許文献1には、岩石粉砕物の落下過程にて鉱石の良品及び不良品を選別する岩石選別装置が開示されている。特許文献1の岩石選別装置では、選別対象が金鉱石の場合、選別時に廃石は黒石、金が含まれる白石に分類する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の岩石選別装置は、廃石及び白石を分類するための選別基準を有しておらず、選別基準は、担当者の目視及び経験等に基づいて定期的に調整されていた。
【0007】
本発明の一態様は、鉱石を含む岩石の選別において経験等に基づくことなく、岩石の選別を行うことができる岩石選別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る岩石選別システムの一態様は、供給装置と、撮像装置と、識別装置と、選別装置とを有する。供給装置は鉱石を含む岩石を供給する。撮像装置は供給された前記岩石を撮像する。識別装置は、前記撮像装置から得た画像を用いて学習した前記岩石の分類モデルを用いて、前記岩石の種類を識別する。選別装置は識別された前記岩石の種類に基づいて予め決められた種類を選別する。
【0009】
本発明に係る岩石識別装置の一態様は、取得部と、抽出部と、識別部とを有する。取得部は鉱石を含む粉砕された岩石の画像を取得する。抽出部は、前記画像から前記岩石の特徴を示す特徴量を抽出する。識別部は、前記特徴量を用いて学習した結果に基づいて前記画像に含まれる岩石の種類を識別する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様は、鉱石を含む岩石の選別において経験等に基づくことなく、岩石の選別を行うことができる岩石選別システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る岩石選別システムの機能的な構成例を示すブロック図である。
【
図2】識別装置における識別方法のフローを示す図である。
【
図3】岩石を含む矩形領域から特徴量を抽出する一例を説明するための図である。
【
図4】第2の実施形態に係る岩石選別システムの機能的な構成例を示すブロック図である。
【
図6】識別装置、制御部及び画像保持部を有する装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る岩石選別システムについて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る岩石選別システムの機能的な構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る岩石選別システム1Aは、供給装置10、撮像装置であるカメラ20、選別装置30、識別装置(岩石識別装置)40、制御部50、画像保持部60及び学習部70を備える。
【0014】
供給装置10は、鉱石を含む粉砕された岩石を供給する。供給装置10としては、例えば、ベルトコンベア等を用いることができる。岩石の粉砕物は、ベルトコンベア等のベルト状搬送体の上面に供給されることで搬送される。搬送された岩石は、ベルト状搬送体の端部から略水平方向に飛翔させ、複数用意された収容容器に種類ごとに選別される。収容容器は、例えば、選別後の工程に用いられる精鉱と、廃石(ズリ)とを仕切り壁にて仕切った構造を有してよい。
【0015】
カメラ20は、画像を撮影及びキャプチャすることの可能なセンサである。カメラ20としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)接続可能なWebカメラ等でもよいし、デジタルカメラ等で利用されるイメージセンサでもよい。また、カメラ20としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device・電荷結合素子)を用いてもよいし、赤外線センサ、レーザーセンサ等の特殊なセンサを用いてもよい。さらに、カメラ20としては、センシングしたデータをイメージ化できる機能を有するセンサでもい。例えば、ラインセンサから得られたデータを統合して、所定領域の画として用いることができる。
【0016】
画像は、モノクロである場合、濃淡情報を用いて、カラー画像としてもよい。
【0017】
さらに、カメラ20は、動画像が得られる撮像装置でもよい。動画像の場合は、岩石の供給装置10の搬送速度に合わせた所定間隔のフレーム(静止画)を識別装置40に送る。
【0018】
カメラ20が取得した画像は、画像保持部60に保存してもよい。
【0019】
本実施形態では、カメラ20は、供給装置10の端部において、岩石を逐次撮像できる。カメラ20は、落下、又は落下する手前において岩石を逐次撮像する。例えば、金鉱石等の場合、目的とする鉱物は一般に白色に近く、廃石(ズリ)は、主に、安山岩、頁岩、砂岩等からなるため、黒色に近い。よって、カメラ20で取得した画像は、その画像から明度等の濃淡情報が得られればよい。
【0020】
選別装置30は、岩石の種類を後述する識別装置40によって識別した結果に基づいて岩石の種類ごとに複数の収容容器に岩石を選別する。選別装置30としては、例えば、目的とする鉱物とそれ以外を選別する場合、対象物に向けて空気を吹き付ける空気吹付器具等を用いることができる。
【0021】
選別装置30は、カメラ20による撮像位置よりも搬送(移動)方向下流側に移動した岩石を吹付対象物とする。、選別装置30の吹付対象物への空気の吹付方向は、吹付対象物の移動方向に交差する方向であればよい。なお、空気の吹付位置は、カメラ20による撮像位置から一定の距離をもって設定されていればよく、不図示の空気吹付器具による空気の吹付け動作は岩石粉砕物の移動速度を考慮することが好ましい。
【0022】
識別装置40は、カメラ20から得た画像を用いて学習した岩石の分類モデルを用いて、岩石の種類を識別する。識別装置40の詳細について説明する。識別装置40は、取得部41と、抽出部42と、識別部43とを備える。
【0023】
図2に、識別装置40における識別方法のフローを示す。
図2に示すように、識別装置40では、まず、取得部41で、カメラ20から得た鉱石を岩石の画像を取得し、抽出部42で、取得部41で得た画像から、画像に表わされている岩石部分を示した矩形領域を抽出し、岩石の特徴を示す特徴量を抽出する。その後、識別装置40は、識別部43で、学習部70(学習モデル)に対して、抽出した特徴量を用いた学習を行い生成した分類モデルを用いて、取得部41で得た画像に含まれる岩石の種類を識別する。以下、識別装置40の各構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、取得部41は、カメラ20で得た、鉱石を含む岩石の画像を取得する。カメラ20がラインセンサやエリアセンサであっても所定の大きさより小さい場合は得られた画像を統合する。取得部41は、例えば、オアソーターに供給される粉砕された岩石の大きさと、供給装置10の搬送速度と、カメラ20の画角又はラインセンサ等の画素数とから統合する画像数を決めればよい。
【0025】
抽出部42は、画像から岩石の特徴を示す特徴量を抽出する。本実施形態では、抽出部42は、取得部41から得た画像を用いて岩石部分の領域を抽出し、抽出した領域から岩石の特徴を示す特徴量を抽出できる。
【0026】
抽出部42は、取得部41で得た画像に表わされている岩石部分を示した矩形領域を設定できる。抽出部42は、例えば、隣り合った画素の度合いを用いてエッジ抽出を行う。そして、抽出部42は、エッジ抽出によって得られた境界線に外接する矩形領域を設定し、矩形領域を識別対象とする。
【0027】
抽出部42は、設定した矩形領域から、岩石の特徴を示す特徴量を抽出する。特徴量としては、画像の種類に応じて、明度、色情報、明度や色情報の統計情報等を用いることができる。前述したように、金鉱石等の場合、目的とする鉱物は一般に白色に近く、廃石(ズリ)は黒色に近い。よって、特徴量が、明度、明度の統計情報である場合、明度や色情報の統計情報は、例えば、領域内の画素数(「全体面積」とする)を、画素毎の明度の合計を矩形領域の画素数で除算したもの(「平均明度」とする)、領域内の画素における明度の合計(「明度の和」とする)、領域内の画素値の上位x%に含まれる明度の合計(「明度上位x%の明度和」とする)、領域内の画素値の上位x%に含まれる明度の合計を対応する画素数で除算したもの(「明度上位x%の平均明度」)等が好ましい。
【0028】
なお、抽出部42は、取得した画像に対し、先に特徴量を抽出してもよい。例えば、特徴量として明度を用いた場合、画像から明度を抽出し、所定値以上の領域を岩石部分の領域としてもよい。
【0029】
図3は、岩石を含む矩形領域から特徴量を抽出する一例を説明するための図である。
図3に示すように、抽出部42は、特徴量の抽出のために、まず撮像された画像から、岩石に外接する矩形領域と、岩石の領域とを抽出する。
【0030】
抽出部42は、岩石の領域内の画素毎に明度を抽出する。例えば、抽出部42は、矩形領域の画像を1次元配列化して、矩形領域の画像を明度の降順に再配列し、高明度領域を抽出する。
【0031】
例えば、全体の10%を占める明度の領域を高明度領域として設定した場合、抽出部42は、明度上位10%の明度和、明度上位10%の平均明度等を特徴量として用いる。また、抽出部42は、例えば、30%を占める明度の領域、50%を占める領域を設定して複数組み合わせて用いてもよい。
【0032】
これらの特徴量は、学習部70で学習させてもよい。
【0033】
また、抽出部42は、設定した矩形領域を更に分割し、SIFT(Scale InVariant Feature Transform)、HOG(Histgram of Orientet Gradient)等の特徴量を用いてもよい。
【0034】
識別部43は、学習部70(学習モデル)に、抽出した特徴量を用いた学習を行うことで、分類モデルを生成する。本実施形態では、少なくとも目的鉱物を含む岩石とそれ以外の岩石に分類できればよいため、下記式(1)のように、二値分類問題に用いられるロジスティック関数を用いることができる。
【0035】
【数1】
ここで、w
iは重み、x
iは各特徴量、bは実数で、yは0~1の範囲の確率値で表される。
【0036】
また、識別部43は、分類モデルの学習におけるコスト関数として、交差エントロピーを利用した下記式(2)を用いる。下記式(2)は、交差エントロピーの利用するため、誤差が大きい場合に必要以上の計算コストを要しないため、好ましい。
【0037】
【数2】
ここで、t
jは正解結果、y
jは上記式(1)から算出される鉱石jのy値、w
iは重み、αは正則化パラメータで、M、Nは整数である。
【0038】
なお、本実施形態では、対象の鉱石を含む岩石(精鉱)と含まない岩石(ズリ)の2種類で示したが、所定の閾値を複数用いて、2以上に分類してもよい。例えば、鉱石の場合、目的の鉱石が部分的に岩石に入る場合(片刃)があり、精鉱、ズリ、片刃というような分類を別途行ってもよい。
【0039】
分類モデルは、上記式(1)及び式(2)の関数に限らず、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト等の機械学習手法を用いて行ってもよい。同様に損失関数は、SGD(Stochastic gradient descent/確率的勾配降下法)等、機械学習に用いられる関数の種類に合わせて変更してもよい。
【0040】
識別部43は、学習した結果に基づいてカメラ20により得られた画像に含まれる岩石の種類を識別する。例えば、識別部43は、目的の鉱物を含む岩石と、それ以外とに分類する。
【0041】
図1に示すように、識別部43は、得られた岩石の種類に関する結果を制御部50に送信する。
【0042】
また、分類モデルのための学習は事前に学習しておく方法が好ましい。このため、上述した学習モデルの生成について、事前に、学習部70で事前に生成したモデルを識別装置40で用いてもよい。
【0043】
制御部50は、岩石選別システム1Aを構成する、供給装置10、カメラ20及び選別装置30の各種制御を行う。例えば、供給装置10における搬送速度や、カメラ20の撮像タイミング、選別装置30の対象物に向けて空気を吹き付ける空気吹付器具の照射タイミング等である。このほか、制御部50による制御には、各処理部の設定変更等も含まれる。
【0044】
また、制御部50は、不図示の通信部を備えてもよい。制御部50は、不図示の通信部により、ネットワークに接続された外部装置との間で画像を含めた様々な情報をやり取りすることができる。なお、ネットワークとは、様々な情報を伝送するための通信資源を意味し、有線ないし無線接続される様々な伝送路を含む。例えば、一般的に広く普及しているインターネット網等の通信路や、PHS(Personal Handyphone System)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、LTE(Long Term Evolution)等の携帯機器向けの通信路、地上放送網、衛星放送網、ケーブル伝送網、電波通信、ミリ波通信、レーダー通信等のあらゆる伝送路を指す。
【0045】
また、制御部50は、ネットワークに接続された外部装置から制御命令を受け取り、この制御命令に応じて各処理部の設定を変更することもできる。
【0046】
画像保持部60は、カメラ20で取得した原画像を保持してもよいし、識別装置40で識別処理された後の画像を保持してもよい。例えば、ネットワークに接続された外部端末から通信を介して取得され、画像保持部60に保持してもよい。また、原画像を格納したUSBメモリ等の外部記憶装置やDVD(Digital Versatile Disk)等の記録媒体を識別装置40に接続し、この外部記憶装置や記録媒体から原画像を読み出して画像保持部60に保持させる構成であってもよい。
【0047】
このように、本実施形態に係る岩石選別システム1Aは、供給装置10、カメラ20、選別装置30及び識別装置40を備え、識別装置40で岩石の種類を選別することで、岩石の選別において経験等に基づくことなく、岩石の選別を行うことができる。
【0048】
岩石選別システム1Aは、選別装置30で、識別装置40で識別された岩石の種類の識別結果に基づいて、岩石の種類ごとに複数の収容容器に岩石を高精度に選別することができる。
【0049】
本実施形態に係る識別装置40は、取得部41と、抽出部42と、識別部43とを備える。識別装置40は、抽出部42で、取得部41で得た画像から、岩石の特徴を示す特徴量を抽出し、識別部43で、抽出した特徴量を用いた学習を行って生成した分類モデルを用いて、取得部41で得た画像に含まれる岩石の種類を識別する。これにより、識別装置40は、岩石の選別において経験等に基づくことなく、岩石の選別を行うことができる。
【0050】
また、識別装置40は、識別部43で、分類モデルの学習の過程において主成分分析を行ったり、回帰係数等を用いて、特徴量の重要度を測ることによって、岩石選別の指標を得ることができる。例えば、分類モデルとして、ロジスティック回帰等の線形回帰モデルが用いられる場合、L1正則化により、非ゼロの回帰係数を得ることで、岩石選別の指標が得られる。また、分類モデルとして、ランダムフォレスト等の決定木が用いられる場合、Feature Importanceパラメーター等を用いてもよい。分類モデルとして、異なる特徴量を用いたモデルを作る場合には、1つずつ特徴量を加える方法、全ての特徴量を使う状態から1つずつ特徴量を取り除く方法等で、特徴量の重要度を知る方法(反復特徴量選択)を用いてもよい。また、分類モデルとして、ニューラルネットワークの一部から顕著性マップ(Saliency Map)等を作成し、分類モデルとして用いることによって、岩石選別の指標を得てもよい。
【0051】
識別装置40は、抽出部42が取得部41で得た画像から岩石の部分の領域を抽出し、その領域から特徴量を抽出できる。これにより、識別装置40は、特徴量をより的確に抽出できるため、識別部43で、岩石の種類をより的確に識別することができる。
【0052】
識別装置40は、特徴量として、少なくとも画像の明度を含むことができる。岩石が金鉱石等の場合、目的とする鉱物は一般に白色に近く、廃石(ズリ)は黒色に近い。そのため、抽出部42は、取得した画像に対して、特徴量として、少なくとも画像の明度を用いれば、画像の特徴量が容易かつ精度良く抽出できる。これにより、識別装置40は、特徴量をより簡易かつ的確に抽出できるため、識別部43で、岩石の種類をより精度良く簡易に識別することができる。
【0053】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る岩石選別システムについて説明する。上記の第1の実施形態に係る岩石選別システム1Aでは、岩石の種類を含む分類モデルを明度等の特徴量を用いて学習するが、鉱石の種類、採掘された場所、又は岩石の粉砕具合によっても撮像される岩石の画像が変動する。本実施形態に係る岩石選別システムは、ユーザ(使用者)が識別装置40からの結果と異なる分類を入力し、入力された分類と対応する画像とを用いて再学習する。なお、本実施形態では、第1の実施形態と共通する内容については説明を省略し、第1の実施形態と異なる、識別結果の提示及び再学習について説明する。
【0054】
図4は、本実施形態に係る岩石選別システムの機能的な構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、本実施形態に係る岩石選別システム1Bは、上記の第1の実施形態に係る岩石選別システム1Aにおいて、識別装置40が、受付部44と、提示部45とを更に有する。
【0055】
受付部44は、ユーザによる岩石の分類に関する入力を受け付ける。
【0056】
提示部45は、画像と、識別部43の識別結果を提示し、具体的には、識別部43から得た分類結果を対応させて提示する。提示部45は、識別結果を、カメラ20から得た分類に対応する画像組にして表示することが好ましい。また、提示部45は、識別結果を、画像と機械学習で得た確率値を対応させて表示してもよい。例えば、確率値等の識別結果が得られることによって、識別装置40自体の精度が分かる。ユーザが選別に不具合を確認した場合、カメラ20の不具合等による取得した画像自体の問題か、識別装置40の分類自体が不適切だったかすぐに判断することができる。また、カメラ20の設置情報(例えば、撮影時間、設置場所、明度等の設置場所を示すテキスト等)やカメラ20の製造メーカ、型番、設定情報等の付随情報を画像に重畳してもよい。さらに、ネットワークが接続されている場合、カメラ20の設置場所の天気情報、製造情報等の付随情報を、ネットワークに接続された外部装置からの通信部を介して取得して、これらの付随情報を画像に重畳してもよい。
【0057】
提示部45は、制御部50により、結果の提示方法を制御してもよい。提示部45は、識別装置40によって得られた分類結果に合わせて、色情報及び文字の強調表示をしてもよい。例えば、分類結果の確率値について、予め閾値を設けておき、閾値以下の場合は強調表示する等してもよい。
【0058】
提示部45は、撮像された画像の分類結果に基づいて、分類の修正の要否と、その新しい分類を表示してもよい。
【0059】
次に、岩石選別システム1Bを用いて、識別結果を得る方法について説明する。
図5は、岩石の識別結果の一例を示す説明図である。
図5に示すように、抽出部42で、特徴量の抽出のために、まず撮像された画像から、岩石に外接する矩形領域と、岩石の領域とを抽出する。そして、岩石の領域内の画素毎に明度を抽出する。そして、識別部43で、学習部70(学習モデル)に、抽出した特徴量を用いて学習を行うことで生成した分類モデルを用いてカメラ20により得られた画像に含まれる岩石の種類を識別する。
【0060】
提示部45には、得られた、画像、識別結果の種類(例えば、A、B・・・等)、確率値、分類の修正の要否、その新しい分類が表示される。
【0061】
その後、使用者は、提示部45に示される、画像、識別結果の種類(例えば、A、B・・・等)、確率値、修正の要否、及び岩石の分類結果を確認し、修正を要する場合には新しい分類を入力する。識別装置40は、ユーザの入力を受け付け、新しく入力された分類と対応する画像を取得し、新しく入力された分類と対応する画像とを組にして、再学習を行い、識別装置40内に設けた不図示の記憶部(データテーブル)に記憶する。
【0062】
なお、再学習のタイミングはユーザの所望のタイミングでよく、修正に関する情報を所定量蓄積してからでもよい。再学習した分類モデルは記憶部等を介して、次の選別処理又は識別処理に用いる。
【0063】
識別装置40は、受付部44と提示部45とを有し、ユーザにより入力された分類と対応する画像とを組にして再学習を行う。これにより、識別装置40は、識別部43で、分類モデルを用いて、取得部41で得た画像に含まれる岩石の種類を識別できる確率を高めることができる。よって、識別装置40は、岩石の選別において経験等に基づくことなく、岩石選別の指標を適切に得られる確率を向上させることができる。
【0064】
したがって、岩石選別システム1Bは、選別装置30で、識別装置40で識別された岩石の種類の識別結果に基づいて、岩石の種類ごとに複数の収容容器に岩石を高精度に選別することができる。
【0065】
<ハードウェア構成例>
次に、識別装置40、制御部50及び画像保持部60を有する装置のハードウェア構成の一例について説明する。
図6は、識別装置40、制御部50及び画像保持部60を有する装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、識別装置40、制御部50及び画像保持部60を有する装置は、情報処理装置(コンピュータ)で構成され、物理的には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)1001、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)1002及びROM(Read Only Memory)1003、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置1004、入力デバイスである入力装置1005、通信装置1006並びに出力装置1007等を含むコンピュータシステムとして構成することができる。これらは、バス1008で相互に接続されている。なお、出力装置1007及び補助記憶装置1004は、外部に設けられていてもよい。
【0066】
CPU1001は、識別装置40、制御部50及び画像保持部60を有する装置の全体の動作を制御し、各種の情報処理を行う。CPU1001は、ROM1003又は補助記憶装置1004に格納された識別プログラムを実行して、測定収録画面と解析画面の表示動作を制御する。
【0067】
RAM1002は、CPU1001のワークエリアとして用いられ、主要な制御パラメータや情報を記憶する不揮発RAMを含んでもよい。
【0068】
ROM1003は、基本入出力プログラム等を記憶する。識別プログラムはROM1003に保存されてもよい。
【0069】
補助記憶装置1004は、SSD(Solid State Drive)、及びHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、例えば、識別プログラムや識別装置40の動作に必要な各種のデータ、ファイル等を格納する。
【0070】
入力装置1005は、キーボード、マウス、操作ボタン、タッチパネル等である。
【0071】
通信装置1006は、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスであり、外部のデータ収録サーバ等からの情報を取り込み、他の電子機器に解析情報を出力する通信インタフェースとして機能する。
【0072】
出力装置1007は、モニタディスプレイ等である。出力装置1007では、識別結果等が表示され、入力装置1005や通信装置1006を介した入出力操作に応じて画面が更新される。
【0073】
図1に示す識別装置40、制御部50及び画像保持部60を有する装置の各機能は、CPU1001、RAM1002等の主記憶装置又は補助記憶装置1004に所定のコンピュータソフトウェア(識別プログラムを含む)を読み込ませ、RAM1002、ROM1003又は補助記憶装置1004に格納された識別プログラム等をCPU1001により実行する。入力装置1005、出力装置1007及び通信装置1006を動作させると共に、RAM1002、ROM1003及び補助記憶装置1004等におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで、識別装置40の各機能は、実現される。即ち、識別プログラムをコンピュータ上で実行させることで、識別装置40は、取得部41、抽出部42及び識別部43等の各処理部として機能を実現することができる。
【0074】
識別プログラムは、例えばコンピュータが備える記憶装置内に格納される。識別プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信装置1006等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、識別プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリ等の持ち運び可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【0075】
上記のコンピュータで実行されるプログラムは、上述した識別装置40、制御部50及び画像保持部60を有する装置の各処理部を含むモジュール構成となっており、プロセッサ21がこのプログラムを適宜読み出して実行することにより、上述した各処理部がRAM23等のメモリ上に生成されるようになっている。
【0076】
また、識別装置40は、複数台のコンピュータを通信可能に接続したシステムとして構成し、上述した各処理部を複数台のコンピュータに分散して実現する構成であってもよい。
【0077】
また、識別装置40は、クラウドシステム上で動作する仮想マシンであってもよい。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1A、1B 岩石選別システム
10 供給装置
20 カメラ(撮像装置)
30 選別装置
40 識別装置(岩石識別装置)
41 取得部
42 抽出部
43 識別部
44 受付部
45 提示部
50 制御部
60 画像保持部
70 学習部