(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134710
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】洗浄装置及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/304 643C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034051
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】村田 研二
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄貴
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157BA02
5F157BA07
5F157BA13
5F157BA31
5F157BB23
5F157BB37
5F157BB45
(57)【要約】
【課題】板状物の外周部の上方にクランプ等がはみ出していても、板状物の外周部を洗浄する。
【解決手段】円板状の基台と、基台の外周部の少なくとも3箇所に設けられた規制部材と、を有し、規制部材で板状物の移動を規制した状態で回転可能な保持ユニットと、保持ユニットで保持された板状物の一方の面を洗浄する洗浄ユニットと、備え、洗浄ユニットは、板状物の一方の面の中央部に第1の洗浄液を噴射可能な第1の洗浄ノズルと、アームと、アームの基端部に連結され、アームを水平面に沿って揺動させる揺動機構と、アームの先端部に連結され、保持ユニットで保持された板状物の一方の面に接して板状物を洗浄する洗浄用具と、アームの基端部と先端部との間に設けられ、一方の面の外周部に第2の洗浄液を噴射可能な第2の洗浄ノズルと、を有する洗浄装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を洗浄するための洗浄装置であって、
円板状の基台と、該基台の外周部の少なくとも3箇所に設けられ該基台の径方向及び厚さ方向における該板状物の移動を規制する規制部材と、を有し、該規制部材で該板状物の移動を規制した状態で回転可能な保持ユニットと、
該保持ユニットで保持された該板状物において、該基台とは反対側に位置する該板状物の一方の面を洗浄する洗浄ユニットと、備え、
該洗浄ユニットは、
該保持ユニットで保持された該板状物の該一方の面の中央部に第1の洗浄液を噴射可能な第1の洗浄ノズルと、
該保持ユニットの該基台よりも上方に配置されたアームと、
該アームの基端部に連結され、該アームを水平面に沿って揺動させる揺動機構と、
該アームの先端部に連結され、該保持ユニットで保持された該板状物の該一方の面に接して該板状物を洗浄する洗浄用具と、
該アームの該基端部と該先端部との間に設けられ、該保持ユニットで保持された該板状物の該一方の面の外周部に第2の洗浄液を噴射可能な第2の洗浄ノズルと、を有し、
該保持ユニットで保持され該基台の周方向に回転する該板状物の該一方の面を、該第1の洗浄ノズルから噴射された該第1の洗浄液と、該板状物の該一方の面に揺動しながら接する該洗浄用具と、で洗浄した後、該アームの位置を調整することで該第2の洗浄ノズルを該板状物の外周部に位置付けて、該第2の洗浄ノズルから該基台の該一方の面の外周部に該第2の洗浄液を噴射させると共に、該保持ユニットで保持された該板状物を該基台の周方向に回転させることで、該一方の面の外周部を洗浄することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
該第2の洗浄ノズルは、液体と気体とが混合された気液混合流体を噴射することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
板状物を洗浄する洗浄方法であって、
保持ユニットの基台の外周部の少なくとも3箇所に設けられた規制部材で該基台の径方向及び厚さ方向における該板状物の移動を規制することで、該保持ユニットで該板状物を保持する保持工程と、
該保持工程で保持され該基台の周方向に回転する該板状物において、該基台とは反対側に位置する該板状物の一方の面の中央部に、第1の洗浄ノズルから第1の洗浄液を噴射すると共に、該板状物の上方に配置されたアームの先端部に連結された洗浄用具を該板状物の該一方の面に接触させた状態で該アームを水平面に沿って揺動させることで、該一方の面を洗浄する第1の洗浄工程と、
該第1の洗浄工程の後に、該アームの基端部と該先端部との間に設けられた第2の洗浄ノズルを該板状物の外周部に位置付けて該第2の洗浄ノズルから該基台の該一方の面の外周部に第2の洗浄液を噴射させると共に、該基台の周方向に該板状物を回転させることで、該一方の面の外周部を洗浄する第2の洗浄工程と、
を備えることを特徴とする洗浄方法。
【請求項4】
該第2の洗浄工程において、該第2の洗浄ノズルは、液体と気体とが混合された気液混合流体を該一方の面に噴射することを特徴とする請求項3に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物を洗浄するための洗浄装置及び板状物を洗浄する洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、シリコン等の半導体材料で形成されたウェーハの被加工面(一面)に対して研削や研磨が施される。研削や研磨後にウェーハの一面に付着した研削屑、研磨屑等は、例えば、研削研磨装置に備えられているスピンナ洗浄機構によりウェーハの一面から除去される。
【0003】
例えば、スピンナ洗浄機構では、ウェーハの一面とは反対側に位置するウェーハの他面側を吸引保持したスピンナテーブルを回転させながら、スピンナテーブルの上方に配置された洗浄ノズルから純水等の洗浄水をウェーハの一面に噴射することで、ウェーハの一面が洗浄される。
【0004】
また、より高い清浄度が求められる場合には、所定の回転軸の周りに回転しているウェーハの一面に、洗浄水を供給しながら洗浄ブラシを押し当てて、洗浄ブラシを揺動させながらウェーハの一面を洗浄する洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、ウェーハの一面を洗浄する際、洗浄機構の構成部品との接触によるウェーハの他面の汚染を避ける目的や、ウェーハの一面及び他面を同時に洗浄するという目的の下、ウェーハの外周側面をそれぞれ把持可能な4個のクランプを備えるスピンナ洗浄機構が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかし、当該スピンナ洗浄機構でウェーハを把持した場合、ウェーハの一面側において一面の外周から中心に向かってクランプがはみ出す。洗浄ブラシの揺動範囲は、クランプのはみ出し位置よりも内側に設定する必要があるので、クランプのはみ出し位置よりも外側に位置するウェーハの一面の外周部を洗浄できないという問題がある。
【0007】
そこで、ウェーハの一面の外周部を洗浄するために、例えば、ウェーハの他面を吸引保持するスピンナテーブルを備える別途のスピンナ洗浄機構を用意することも考えられるが、設置面積の増大や、半導体装置の製造コストの上昇といった問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-198167号公報
【特許文献2】特開平11-31643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、ウェーハ等の板状物の外周部の上方にクランプ等がはみ出した状態で、洗浄ブラシ等の洗浄用具を揺動させながらウェーハ等の板状物を洗浄する場合に、板状物の外周部を洗浄することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、板状物を洗浄するための洗浄装置であって、円板状の基台と、該基台の外周部の少なくとも3箇所に設けられ該基台の径方向及び厚さ方向における該板状物の移動を規制する規制部材と、を有し、該規制部材で該板状物の移動を規制した状態で回転可能な保持ユニットと、該保持ユニットで保持された該板状物において、該基台とは反対側に位置する該板状物の一方の面を洗浄する洗浄ユニットと、備え、該洗浄ユニットは、該保持ユニットで保持された該板状物の該一方の面の中央部に第1の洗浄液を噴射可能な第1の洗浄ノズルと、該保持ユニットの該基台よりも上方に配置されたアームと、該アームの基端部に連結され、該アームを水平面に沿って揺動させる揺動機構と、該アームの先端部に連結され、該保持ユニットで保持された該板状物の該一方の面に接して該板状物を洗浄する洗浄用具と、該アームの該基端部と該先端部との間に設けられ、該保持ユニットで保持された該板状物の該一方の面の外周部に第2の洗浄液を噴射可能な第2の洗浄ノズルと、を有し、該保持ユニットで保持され該基台の周方向に回転する該板状物の該一方の面を、該第1の洗浄ノズルから噴射された該第1の洗浄液と、該板状物の該一方の面に揺動しながら接する該洗浄用具と、で洗浄した後、該アームの位置を調整することで該第2の洗浄ノズルを該板状物の外周部に位置付けて、該第2の洗浄ノズルから該基台の該一方の面の外周部に該第2の洗浄液を噴射させると共に、該保持ユニットで保持された該板状物を該基台の周方向に回転させることで、該一方の面の外周部を洗浄する洗浄装置が提供される。好ましくは、該第2の洗浄ノズルは、液体と気体とが混合された気液混合流体を噴射する。
【0011】
本発明の他の態様によれば、板状物を洗浄する洗浄方法であって、保持ユニットの基台の外周部の少なくとも3箇所に設けられた規制部材で該基台の径方向及び厚さ方向における該板状物の移動を規制することで、該保持ユニットで該板状物を保持する保持工程と、該保持工程で保持され該基台の周方向に回転する該板状物において、該基台とは反対側に位置する該板状物の一方の面の中央部に、第1の洗浄ノズルから第1の洗浄液を噴射すると共に、該板状物の上方に配置されたアームの先端部に連結された洗浄用具を該板状物の該一方の面に接触させた状態で該アームを水平面に沿って揺動させることで、該一方の面を洗浄する第1の洗浄工程と、該第1の洗浄工程の後に、該アームの基端部と該先端部との間に設けられた第2の洗浄ノズルを該板状物の外周部に位置付けて該第2の洗浄ノズルから該基台の該一方の面の外周部に第2の洗浄液を噴射させると共に、該基台の周方向に該板状物を回転させることで、該一方の面の外周部を洗浄する第2の洗浄工程と、を備える洗浄方法が提供される。好ましくは、該第2の洗浄工程において、該第2の洗浄ノズルは、液体と気体とが混合された気液混合流体を該一方の面に噴射する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る洗浄装置は、保持ユニットと、洗浄ユニットと、備える。洗浄ユニットは、保持ユニットで保持された板状物の一方の面の中央部に第1の洗浄液を噴射可能な第1の洗浄ノズルと、保持ユニットで保持された板状物の一方の面の外周部に第2の洗浄液を噴射可能な第2の洗浄ノズルと、を有する。
【0013】
洗浄装置を用いて、板状物を洗浄する際には、まず、保持ユニットで保持され基台の周方向に回転する板状物の一方の面を、第1の洗浄ノズルから噴射された第1の洗浄液と、板状物の一方の面に揺動しながら接する洗浄用具と、で洗浄する。
【0014】
その後、アーム部の位置を調整することで第2の洗浄ノズルを板状物の外周部に位置付けて、第2の洗浄ノズルから基台の一方の面の外周部に第2の洗浄液を噴射させると共に、保持ユニットで保持された板状物を基台の周方向に回転させることで、一方の面の外周部を洗浄する。
【0015】
それゆえ、一方の面の外周部の上方に保持ユニットの規制部材がはみ出していても、外周部を洗浄するための別途のスピンナ洗浄機構を用いることなく、一方の面の外周部を洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】
図4(A)は保持ユニットの斜視図であり、
図4(B)は保持ユニットの側面図である。
【
図8】
図8(A)は保持ユニットの斜視図であり、
図8(B)は保持ユニットの側面図である。
【
図9】
図9(A)は上面洗浄装置の上面図であり、
図9(B)は上面洗浄装置の側面図である。
【
図10】
図10(A)は上面洗浄装置の上面図であり、
図10(B)は上面洗浄装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、半導体製のウェーハ11に対して、研削、研磨及び洗浄を施す研削研磨装置2の概要図である。
図1に示すX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する。
【0018】
研削研磨装置2は、直方体状の基台4を有する。基台4の前方(Y軸方向の一方)には、2つのカセット6a、6bが載置されている。カセット6aには、加工前の複数のウェーハ11が収容されている。
【0019】
ウェーハ11の表面11a側には、複数のデバイス(不図示)が形成されている。表面11a側には、700μmから800μm程度の厚さを有する円板状の支持基板13が、接着剤、ワックス等で貼り付けられ、板状物15が構成されている(
図6参照)。
【0020】
板状物15においては、ウェーハ11の裏面が上方に露出しており、この露出している上面11b(一方の面)側に、研削、研磨等の加工が施される。加工後の板状物15は、カセット6bへ収容される。
【0021】
カセット6a、6bの後方(Y軸方向の他方)には、カセット6a、6b等にアクセス可能な搬送ロボット8が設けられている。搬送ロボット8は、ハンド部8aを有する。ハンド部8aは、その一面に設けられた吸着パッド(不図示)により、板状物15を吸引保持できる。
【0022】
搬送ロボット8は、ボールねじ式の移動機構8bによりX軸方向に移動可能である。搬送ロボット8は、水平多関節型のアームユニットを展開することにより、カセット6aから搬出した板状物15を、搬送ロボット8の後方に配置された位置決めテーブル10に配置する。
【0023】
位置決めテーブル10は、円板状のテーブルと、テーブルの周囲に配置された複数の移動ピンを有する。移動ピンをテーブルの中心側に移動させることで、X-Y平面における板状物15の位置が調整される。
【0024】
位置決めテーブル10の上方には、第1の搬送機構12が配置されている。第1の搬送機構12は、水平多関節型のアームユニット12aを有する。アームユニット12aの基端部には、Y軸方向及びZ軸方向に沿ってアームユニット12aを移動させる移動機構が設けられている。
【0025】
アームユニット12aの先端部には、板状物15を負圧で吸引保持する円板状の吸引保持ユニット12bが設けられている。位置決めテーブル10で位置が調整された板状物15は、第1の搬送機構12により、基台4上に配置された円板状のターンテーブル14へ搬送される。
【0026】
ターンテーブル14は、Z軸方向に略平行な回転軸の周りに回転可能である。ターンテーブル14の上面は、4つの領域に分割されており、各領域には、板状物15をそれぞれ負圧により吸引保持可能なチャックテーブル16が設けられている。
【0027】
位置決めテーブル10に最も近い領域は、搬入搬出領域Aである。第1の搬送機構12は、位置決めテーブル10から、搬入搬出領域Aに位置するチャックテーブル16に、板状物15を搬送する。
【0028】
搬入搬出領域Aから上面視で時計回りに90度進んだ領域は、粗研削領域Bである。粗研削領域Bの上方には、スピンドル、粗研削ホイール等を有する粗研削ユニット20が設けられている。
図1では、粗研削ユニット20を簡略化して示す。
【0029】
粗研削領域Bから上面視で時計回りに90度進んだ領域は、仕上げ研削領域Cである。仕上げ研削領域Cの上方には、スピンドル、仕上げ研削ホイール等を有する仕上げ研削ユニット22が設けられている。
図1では、仕上げ研削ユニット22を簡略化して示す。
【0030】
仕上げ研削領域Cから上面視で時計回りに90度進んだ領域は、研磨領域Dである。研磨領域Dの上方には、スピンドル、研磨ホイール等を有する研磨ユニット24が設けられている。
図1では、研磨ユニット24を簡略化して示す。なお、研磨ユニット24の位置は不図示の移動機構によりX軸方向に移動可能である。
【0031】
板状物15を搬入搬出領域Aへ搬入した後、ターンテーブル14を時計回りに90度回転させる。これにより、板状物15は粗研削領域Bへ搬送され、粗研削領域Bで上面11b側が粗研削される。
【0032】
粗研削後、ターンテーブル14を時計回りに90度回転させることで、板状物15を仕上げ研削領域Cへ搬送する。そして、上面11b側を仕上げ研削する。仕上げ研削後、ターンテーブル14を時計回りに90度回転させることで、板状物15を研磨領域Dへ搬送する。そして、上面11b側を研磨する。
【0033】
研磨後、ターンテーブル14を上面視で反時計回りに270度回転させることで、板状物15を搬入搬出領域Aへ戻す。そして、第2の搬送機構26が板状物15をチャックテーブル16から搬出する。
【0034】
第2の搬送機構26は、アーム26aを有する。アーム26aの基端部には、アーム26aをX-Y平面内で旋回させる旋回機構が設けられている。旋回機構には、移動機構が連結されている。旋回機構は、移動機構により、Y軸方向及びZ軸方向に沿って移動する。
【0035】
アーム26aの先端部には、円板状の吸引保持ユニット26bが設けられている。
図6及び
図7に示す様に、吸引保持ユニット26bは、円板状の枠体26b
1を有する。枠体26b
1には円板状の凹部が形成されており、この凹部には、円板状のポーラス板26b
2が固定されている。
【0036】
枠体26b1に形成されている流路の一端には、エジェクタ等の負圧発生源(不図示)が連結されている。負圧発生源で発生された負圧は、ポーラス板26b2に伝達される。枠体26b1及びポーラス板26b2の下面は、板状物15の上面11bを吸引保持する保持面26cとして機能する。
【0037】
保持面26cで吸引保持された板状物15は、下面洗浄装置30(
図1参照)の上方へ搬送され、下方に露出している支持基板13の下面13a(即ち、板状物15の他方の面)が、下面洗浄装置30で洗浄される。
【0038】
ここで、
図2を参照して、下面洗浄装置30の構成について説明する。
図2は、下面洗浄装置30の拡大斜視図である。下面洗浄装置30は、基台4上に固定された円筒状の支持部材32を有する。
【0039】
支持部材32の側面には、純水等の洗浄水が供給されるパイプ32aが設けられている。支持部材32は、長さ方向がZ軸方向に略平行である貫通孔32bを有し、貫通孔32bには、円筒状の回転体34が挿入されている。
【0040】
回転体34の上部には、水平面と平行な第1方向E1に略平行に配置された一対の支持ブロック36が固定されている。各支持ブロック36の上面には、研削砥石36aが固定されている。
【0041】
各支持ブロック36の一側面に隣接する様に、回転体34の上面には、円筒状のノズルユニット38が設けられている。ノズルユニット38の長手部は、水平面と平行であり第1方向E1と直交する第2方向E2に略平行に配置されている。
【0042】
ノズルユニット38の側面には、第2方向E
2に沿って複数の開口38aが設けられている。各開口38aは、上方を向く様に配置されており、パイプ32aを介して供給される洗浄水38b(
図6、
図7参照)は、各開口38aから上方へ噴射される。
【0043】
貫通孔32bの下部から突出する様に配置されている回転体34の下部には、従動プーリー40が形成されている。従動プーリー40と、モーター42の出力軸に連結された駆動プーリー44とには、無端ベルト46が架けられている。
【0044】
モーター42を動作させれば、回転体34はZ軸方向に略平行な回転軸の周りに回転する。回転体34の円筒の中央部には、貫通孔が形成されている。この貫通孔には、ロッド48が挿入されている。
【0045】
ロッド48の上端部には、一対の支持ブロック36の間を通る様に第2方向E2に略平行に配置された支持ブロック50が固定されている。支持ブロック50の上面には、スポンジ等の柔軟部材で形成された洗浄部材50aが固定されている。
【0046】
支持ブロック50の下面には、下方に突出する一対のピン(不図示)が設けられている。これらのピンを回転体34に設けられた穴(不図示)に嵌合させた状態で、モーター42を動作させれば、回転体34と共にロッド48も回転する。
【0047】
ロッド48の下端部には、エアシリンダ52のロッド52aの上端部が接触している。
図2では、ロッド52aの突出量が最小の位置にある場合を示す。このとき、洗浄部材50aの上面は、研削砥石36aの上面よりも低い位置にある(
図7参照)。
【0048】
これに対して、ロッド52aの突出量が最大の位置にあるとき、洗浄部材50aの上面は、研削砥石36aの上面よりも高い位置にある(
図6参照)。なお、ロッド52aの突出量が最大のときも、支持ブロック50の各ピンは、回転体34に嵌合している。
【0049】
板状物15は、下面洗浄装置30で下面13aが洗浄された後、第2の搬送機構26により上面洗浄装置60(洗浄装置)へ搬送される。次に、
図3、
図4(A)、
図4(B)を参照して、ウェーハ11の上面11b(即ち、板状物15の一方の面)を洗浄する上面洗浄装置60について説明する。
【0050】
図3は、上面洗浄装置60の拡大斜視図である。上面洗浄装置60は、板状物15を保持するための保持ユニット62を有する。
図4(A)は、保持ユニット62の斜視図であり、
図4(B)は、保持ユニット62の側面図である。保持ユニット62は、円板状の基台64を備える。
【0051】
基台64の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が設けられている。回転駆動源は、Z軸方向に略平行な回転軸の周りに、低速(例えば、50rpm以上100rpm以下の所定値)又は高速(例えば、1000rpm以上2000rpm以下の所定値)で、基台64を回転させる。
【0052】
基台64の上面は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)等のフッ素樹脂でコーティングされている。基台64の上面の外周部には、複数(本実施形態では、6個)の支持ピン66が、基台64の外周に沿って所定の間隔で配置されている。
【0053】
各支持ピン66は、PTFE等のフッ素樹脂で形成されている。基台64の上面に対する支持ピン66の上端の高さは、複数の支持ピン66で支持された板状物15の下面13aと、基台64の上面との間に、ハンド部8aを挿入可能な所定値(例えば、約20mm)に設定される。
【0054】
基台64の外周部の側面には、複数(本実施形態では、3個)の規制部材68が、基台64の外周に沿って所定の間隔で配置されている。なお、規制部材68の数は、3個以上であればよく、3個に限定されるものではない。
【0055】
規制部材68の下端部には、エアアクチュエータ等の駆動機構70が設けられている。規制部材68は、駆動機構70により、閉位置(
図3、
図4(A)参照)と、開位置(
図4(B)参照)と、に移動する。
【0056】
規制部材68は、規制部材68が閉位置のときに支持ピン66で支持されたウェーハ11の側部に接触可能なエッジ規制部68a(
図3参照)を有する。エッジ規制部68aは、PTFE等のフッ素樹脂で形成された直方体状の部材であり、規制部材68が閉位置のときに、基台64の径方向での板状物15の移動を規制する。
【0057】
エッジ規制部68aの上端部には、基台64の中心側へ所定量(例えば、0.5mm)だけ突出する態様で、上面規制部68b(
図3参照)が設けられている。上面規制部68bは、PTFE等のフッ素樹脂で形成された直方体状の部材であり、基台64の厚さ方向での板状物15の移動を規制する。
【0058】
なお、基台64を静止させて、支持ピン66で板状物15を支持した状態で、規制部材68を閉位置にした場合、上面規制部68bの下面と、板状物15の上面11bとの間には、隙間68cが形成される(
図8(B)参照)。
【0059】
本実施形態では、下面洗浄装置30で板状物15の下面13aが洗浄された後、上面洗浄装置60で板状物15の上面11bを洗浄するので、上面11bの洗浄時には、可能な限り下面13aと基台64との接触面積を減らすことが望ましい。それゆえ、ポーラスチャックテーブルではなく、支持ピン66及び規制部材68を採用している。
【0060】
基台64の中央部の上方には、第1の洗浄ノズル72が配置されている。なお、基台64の中央部とは、基台64の円形の上面の略中央の領域を指し、例えば、半径rを有する基台64の上面と同心状であり、半径r/2を有する円形領域である。
【0061】
第1の洗浄ノズル72は、噴射口72aが下方を向く様に配置されており、第1の洗浄ノズル72には、不図示の薬液供給源74が接続されている。薬液供給源74は、薬液(第1の洗浄液)72b(
図9(B)参照)を貯留するタンク(不図示)を有する。
【0062】
薬液72bは、オゾン水、フッ化水素酸と硝酸との混合液(所謂、フッ硝酸)、クエン酸水等である。薬液供給源74は、タンクから第1の洗浄ノズル72への薬液72bの供給を制御する電磁弁(不図示)を更に有する。
【0063】
基台64の側方には、揺動機構76が設けられている。揺動機構76は、Z軸方向に略平行に配置された基部76aを有する。基部76aの底部には、モーター、アクチェーター等の駆動源(不図示)が連結されている。
【0064】
駆動源は、水平面内において所定の角度範囲で基部76aを回転させる。駆動源は、基部76aの回転に加えて、基部76aの向きが回転角度範囲とは異なる所定の角度になる様に、基部76aの向きを配置することもできる。
【0065】
駆動源の下面には、駆動源及び基部76aを上下方向に移動させるアクチュエータ(不図示)が設けられている。基部76aの上端部は、基台64よりも上方に配置されており、基部76aの上端部には、基台64の中心側へ突出する様に配置されたアーム78の基端部が連結されている。アーム78の先端部には、洗浄用具80が連結されている。
【0066】
洗浄用具80は、略平坦な円板形状を有し、柔軟性及び吸水性が比較的高いスポンジである。スポンジの材料としては、例えば、PVA(polyvinyl alcohol)が使用される。洗浄用具80は、円板の下面に複数の突起が設けられたスポンジブラシであってもよい。
【0067】
アーム78の基端部と先端部との間には、第2の洗浄ノズル82が設けられている。アーム78の長手方向における第2の洗浄ノズル82の位置は、基部76aの向きが所定の角度になったときに、基台64の外周部の直上に位置する様に適宜定められる。
【0068】
第2の洗浄ノズル82には、圧縮エアー(気体)を供給するエアー供給源(不図示)と、純水等の洗浄水(液体)を供給する洗浄水供給源(不図示)と、が接続されている。第2の洗浄ノズル82の噴射口82aは下方を向いている。
【0069】
噴射口82aからは、洗浄水とエアーとが混合され洗浄水が微粒化された気液混合流体(第2の洗浄液)82b(
図10(B)参照)が下方へ噴射される。なお、第2の洗浄ノズル82は、気液混合流体82bに代えて、薬液供給源74から供給される薬液72bを噴射してもよい。
【0070】
アーム78を揺動機構76で揺動させると、洗浄用具80と共に第2の洗浄ノズル82も水平面内で揺動する。第1の洗浄ノズル72、揺動機構76、アーム78、洗浄用具80、第2の洗浄ノズル82等は、板状物15の上面11bを洗浄する洗浄ユニット84を構成する。
【0071】
研削研磨装置2の各構成要素の動作は、不図示の制御部により制御される。制御部は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置や、フラッシュメモリ等の記憶装置を含むコンピュータによって構成される。
【0072】
記憶装置に記憶されるプログラム等のソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、制御部は、ソフトウェアと処理装置(ハードウェア資源)とが協働した具体的手段として機能する。
【0073】
次に、
図5から
図10を参照し、板状物15の洗浄方法について説明する。
図5は、洗浄方法のフロー図である。板状物15の洗浄は、上面11b側の粗研削、仕上げ研削、及び、研磨の後に行われる。
【0074】
まず、第2の搬送機構26が、搬入搬出領域Aに配置された研磨後の板状物15を吸引保持し、板状物15を下面洗浄装置30の上方に配置する。このとき、吸引保持ユニット26bは、ウェーハ11の上面11bを吸引保持するので、支持基板13の下面13aが下方に露出する。
【0075】
そして、ロッド48を上昇させて洗浄部材50aを下面13aに接触させると共に、ノズルユニット38から洗浄水38b(
図6参照)を噴射させた状態で、ロッド48を軸として洗浄部材50aを回転させる(下面洗浄工程S10)。
【0076】
これにより、板状物15の下面13aを洗浄する。
図6は、下面洗浄工程S10を示す図である。下面洗浄工程S10の後、規制部材68が開位置となった保持ユニット62へ、第2の搬送機構26が板状物15を搬送し、板状物15は、支持ピン66を介して基台64の上部に載置される(搬送工程S20)。
【0077】
本実施形態では、搬送工程S20の後、吸引保持ユニット26bを下面洗浄装置30に戻し、吸引保持ユニット26bの保持面26cを洗浄する(保持面洗浄工程S30)。
図7は、保持面洗浄工程S30を示す図である。
【0078】
保持面洗浄工程S30では、ロッド48を下降させ、回転体34を軸として研削砥石36aを回転させる。この状態で、吸引保持ユニット26bを下降させると共に、ノズルユニット38から洗浄水38bを噴射させながら、保持面26cを研削砥石36aで研削及び洗浄する。
【0079】
保持面洗浄工程S30を経た保持面26cでウェーハ11の上面11bを吸引保持することにより、保持面洗浄工程S30を経ていない保持面26cで上面11bを吸引保持する場合に比べて、上面11bの清浄度(クリーン度)を高くできる。
【0080】
なお、保持面洗浄工程S30は、搬送工程S20の後であれば任意のタイミングで行うことができる。例えば、後述する保持工程S40、第1の洗浄工程S50及び第2の洗浄工程S60のいずれか1つ以上の工程と、並列して行うこともできる。
【0081】
搬送工程S20で上面洗浄装置60へ搬送された板状物15は、規制部材68を閉位置とすることで、規制部材68により移動が規制される。この様にして、板状物15は、保持ユニット62で保持される(保持工程S40)。
【0082】
図8(A)は、閉位置にある規制部材68で板状物15を保持するときの保持ユニット62の斜視図であり、
図8(B)は、板状物15を保持するときの保持ユニット62の側面図である。
【0083】
保持工程S40では、下面13aが基台64に対面し、上面11bが上方に露出する(即ち、上面11bが基台64とは反対側に位置する)。保持工程S40の後、基台64をその周方向に低速(例えば、60rpm)で回転させ、回転する板状物15の上面11bを薬液72b及び洗浄用具80で洗浄する(第1の洗浄工程S50)。
【0084】
図9(A)は、第1の洗浄工程S50における上面洗浄装置60の上面図である。また、
図9(B)は、
図9(A)において方向F
1で基台64を側面視した場合における第1の洗浄工程S50での上面洗浄装置60の側面図である。
図9(B)では、基部76a、アーム78、第2の洗浄ノズル82等を省略している。
【0085】
第1の洗浄工程S50では、板状物15の上面11bの中央部に位置付けられた第1の洗浄ノズル72から薬液72b(
図9(B)参照)を噴射すると共に、洗浄用具80が上面11bに接した状態で、アーム78を水平面に沿って所定の揺動角で揺動させる。これにより、上面11bを洗浄する。
【0086】
第1の洗浄工程S50の後、基台64を低速で回転させたまま、揺動機構76の揺動を停止し、洗浄用具80が上面11bに接しない様にアーム78を上方に移動させる。そして、第2の洗浄ノズル82が板状物15の外周部の上方に位置する様に、揺動機構76でアーム78の位置を調整する。
【0087】
そして、アーム78を静止させた状態で、第2の洗浄ノズル82から上面11bの外周部に気液混合流体82bを噴射させると共に、上面11bの外周部を洗浄する(第2の洗浄工程S60)。
【0088】
図10(A)は、第2の洗浄工程S60における上面洗浄装置60の上面図であり、
図10(B)は、
図10(A)において方向F
2で基台64を側面視した場合における第2の洗浄工程S60での上面洗浄装置60の側面図である。
図10(B)では、基部76a、アーム78、洗浄用具80等を省略している。
【0089】
第2の洗浄工程S60後、基台64を高速(例えば、2000rpm)で回転させることで、遠心力により上面11bに残留した洗浄水等を、板状物15の径方向の外側に飛散させて、板状物15を乾燥させる。そして、搬送ロボット8が上面洗浄装置60にアクセスし、板状物15をカセット6bへ搬送する。
【0090】
本実施形態では、上面11bの外周部の上方に規制部材68がはみ出していても、上面11bの外周部を洗浄するための別途のスピンナ洗浄機構を用いることなく、上面11bの外周部を洗浄できる。
【0091】
なお、上面11bと上面規制部68bとの間に隙間68cが形成されている限り、気液混合流体82bは、この隙間68cにも噴射されるので、上面11bのうち上面規制部68bの直下に位置する外周部も洗浄される。
【0092】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、吸引保持ユニット12b、26bに代えて、ウェーハ11の外周側面の少なくとも3箇所に物理的に接することでウェーハ11を保持するエッジクランプ機構(メカニカルピックとも称される)を用いることもできる。但し、このエッジクランプ機構を用いる場合、保持面洗浄工程S30は省略される。
【符号の説明】
【0093】
2:研削研磨装置、4:基台、6a,6b:カセット
8:搬送ロボット、8a:ハンド部、8b:移動機構、10:位置決めテーブル
11:ウェーハ、11a:表面、11b:上面
12:第1の搬送機構、12a:アームユニット、12b:吸引保持ユニット
13:支持基板、13a:下面、15:板状物
14:ターンテーブル、16:チャックテーブル
20:粗研削ユニット、22:仕上げ研削ユニット、24:研磨ユニット
26:第2の搬送機構、26a:アーム、26b:吸引保持ユニット
26b1:枠体、26b2:ポーラス板、26c:保持面
30:下面洗浄装置、32:支持部材、32a:パイプ、32b:貫通孔、34:回転体
36:支持ブロック、36a:研削砥石
38:ノズルユニット、38a:開口、38b:洗浄水
40:従動プーリー、42:モーター、44:駆動プーリー、46:無端ベルト
48:ロッド、50:支持ブロック、50a:洗浄部材
52:エアシリンダ、52a:ロッド
60:上面洗浄装置、62:保持ユニット、64:基台、66:支持ピン
68:規制部材、68a:エッジ規制部、68b:上面規制部、68c:隙間
70:駆動機構
72:第1の洗浄ノズル、72a:噴射口、72b:薬液、74:薬液供給源
76:揺動機構、76a:基部、78:アーム、80:洗浄用具
82:第2の洗浄ノズル、82a:噴射口、82b:気液混合流体
84:洗浄ユニット
A:搬入搬出領域、B:粗研削領域、C:仕上げ研削領域、D:研磨領域
E1:第1方向、E2:第2方向、F1,F2:方向