(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134967
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】粉体、フィラー、組成物、フィラーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/37 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
C01B25/37 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034502
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩國 真弓
(72)【発明者】
【氏名】芦▲高▼ 圭史
(72)【発明者】
【氏名】三輪 直也
(57)【要約】
【課題】透明性が求められる光学材料や樹脂のフィラーとして好適な、透過率の高い粉体を提供する。
【解決手段】本発明の粉体は、結晶性板状リン酸チタン粒子からなり、粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0%質量以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性板状リン酸チタン粒子からなり、粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%以下である粉体。
【請求項2】
請求項1記載の粉体からなるフィラー。
【請求項3】
請求項2記載のフィラーを含む組成物。
【請求項4】
結晶性板状リン酸チタン粒子の粉体からなるフィラーの製造方法であって、
前記粉体における粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%以下になっていることを確認する工程を含むフィラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体、フィラー、組成物、フィラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明性が求められる光学材料や樹脂のフィラーとしては、透過率の高い粉体が求められている。
特許文献1には、光散乱体(シート)への配合用として有用な無機粒子として、シリカを主成分とする核部と、シリカとシリコン以外の周期表4族または14族の金属の酸化物とを主成分とするシリカ系複合酸化物の被覆層と、で形成された無機酸化物粒子が記載されている。この無機酸化物粒子の平均粒子径は1.1~10μmであり、電子顕微鏡の撮影像から求められる円形度が0.8以上である。また、被覆層は0.03μm以上の厚みを有し、シリコン以外の周期表4族または14族の金属の酸化物を22~70モル%の範囲で含有している。
【0003】
特許文献2には、発光デバイスにおける光の取り出し効率を十分に高めることができる光取出し用樹脂組成物、特に、発光デバイスの透明基板に高い接着力にて密着して、高効率に光を取り出すことが可能な光取出し層を形成し得る光取出し用樹脂組成物を提供することを目的として、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、およびチタン酸バリウムから選択される少なくとも1種からなり、平均粒径が0.5~50μmであるフィラーを用いることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、マトリックスポリマとの界面での接着性に優れている層間化合物粒子を含むフィルムを提供することを目的として、層状物質と有機物とからなり、該有機物を層状物質の層間に0.1質量%以上15質量%以下含有し、平均粒径が5μm以下であり、かつ10μm以上の粗大粒子の割合が10質量%以下である層間化合物粒子を0.01質量%以上80質量%以下含有するフィルムが記載されている。なお、層間化合物とは、層状物質の層間に有機物が存在している化合物のことである。
【0005】
また、特許文献3には、粒径の細かい層状化合物を得るための方法としては通常の粉砕方法と分粒方法を用いる方法が挙げられること、合成で得られる合成物の層間化合物は細かい粒子が得られやすいこと、層間化合物粒子の粒形は球状、板状、不定形などいずれでもかまわないが、できるだけ球状に近いものが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4841880号公報
【特許文献2】特許第6269669号公報
【特許文献3】特許第3250219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、透明性が求められる光学材料や樹脂のフィラーとして好適な、透過率の高い粉体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様は、結晶性板状リン酸チタン粒子からなり、粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%以下である粉体を提供する。
本発明の第二態様は、結晶性板状リン酸チタン粒子の粉体からなるフィラーの製造方法であって、この粉体における粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%以下になっていることを確認する工程を含むフィラーの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透明性が求められる光学材料や樹脂のフィラーとして好適な、透過率の高い粉体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】合成品A~Fの全光線透過率と体積基準の累積50%一次粒子径との関係を示すグラフである。
【
図2】サンプルNo.1~9の全光線透過率と粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
この実施形態のフィラーは結晶性板状リン酸チタン粒子からなる粉体であって、この粉体は、粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%以下である。結晶性板状リン酸チタン粒子のアスペクト比は5以上である。
【0012】
画像解析法により、板状結晶の板面の最長となる対角線を一次粒子径として計測して、体積基準の累積50%一次粒子径(体積D50%径)を算出することができる。また、画像解析法により、板状結晶の側面の厚さを測定して、体積基準の累積50%厚さ(体積D50%厚さ)を算出することができる。アスペクト比は、体積D50%径を体積D50%厚さで除した値である。
このフィラーは、例えば、以下の方法で得ることができる。
【0013】
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が5以上21以下となる割合で混合して混合液を得る。次に、この混合液を密閉容器内に入れて、温度を100℃以上160℃以下の範囲内の値に保持し、所定時間(例えば、5時間以上)反応させる。つまり、水熱合成を行う。なお、密閉容器内の圧力は、加圧温度によって自然に決まる大気圧以上の圧力となっている。これにより、リン酸チタンの結晶粒子を含むスラリーを得る。
【0014】
次に、得られたスラリーを冷却した後、スラリーから固形分(リン酸チタンの結晶粒子)を分離する。得られた固形分を、水またはアンモニア水(水酸化アンモニウム)からなる洗浄液で洗浄した後、乾燥させる。これにより、結晶性板状リン酸チタンの粉体が得られる。
次に、得られた結晶性板状リン酸チタンの粉体の粒度分布を測定し、粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%以下になっていれば、全光線透過率が高いことが期待できるため、そのままフィラーとして使用する。
【0015】
得られた結晶性板状リン酸チタンの粉体の粒度分布が、粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%を超えていた場合は、粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%以下となるように、粒度分布の異なる結晶性板状リン酸チタンの粉体を混合する。そして、粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%以下になっている結晶性板状リン酸チタンの粉体を、フィラーとして使用する。
【0016】
つまり、この実施形態のフィラーの製造方法は、結晶性板状リン酸チタン粒子の粉体からなるフィラーの製造方法であって、この粉体における粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合が7.0質量%以下になっていることを確認する工程を含む。そのため、全光線透過率の高いフィラーが製造できる。
【実施例0017】
[リン酸チタンの合成]
以下の方法で六種類(A~F)のリン酸チタンを合成した。
<合成品A>
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が9.0となる割合で混合して混合液を得た。次に、この混合液を1.4Lのオートクレーブ内に入れて、温度を110℃に保持して、5時間反応させた。
【0018】
反応後に、蓋を開けて容器内のスラリーを室温まで冷却した後、容器内から取り出して濾過によりスラリーから固形分を分離した。この固形分を水で洗浄した後、乾燥(温度105℃、24時間放置)して、粉体を得た。
得られた粉体を、X線回折装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi(HPO4)2・H2Oである結晶性リン酸チタンであることが確認できた。
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粉体を構成する粒子の形状は板状であり、六角形の板状であるものを多く含むことが確認できた。
【0019】
走査型電子顕微鏡の画像を、株式会社マウンテック製の画像解析ソフト「Mac-View ver.4」を用いて解析することにより、得られた粉体を構成する結晶粒子の体積D50%径、CV値(標準偏差/数平均一次粒子径)、体積D50%厚さを測定したところ、体積D50%径は0.29μmであり、CV値は0.45であり、体積D50%厚さは0.030μmであった。
また、体積D50%厚さおよび体積D50%径の測定値を用いた計算(0.29/0.030)により、得られた粉体を構成する結晶粒子のアスペクト比は10であった。
さらに、同じ解析ソフトを用いて、粒径が0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の割合を調べたところ、5.82質量%であった。
【0020】
また、以下の方法で全光線透過率を測定したところ、89.5%であった。
先ず、粉体を(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマーのシクロペンタシロキサン溶解品(信越化学工業株式会社製のKP―545)に分散させて10質量%のスラリーを作製し、このスラリーを厚さ1mmのスライドガラス上に塗布して、厚さ25μmの塗膜を形成し、乾燥させることで試験サンプルを得た。得られた試験サンプルをビックケミー・ジャパン株式会社製のヘーズメーター「ヘーズガードi」にかけて、ASTM標準「D 1003」に準拠するC光源における全光線透過率を測定した。
【0021】
<合成品B>
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が10.7となる割合で混合して混合液を得た。次に、この混合液を1.4Lのオートクレーブ内に入れて、温度を110℃に保持して、5時間反応させた。
反応後に、蓋を開けて容器内のスラリーを室温まで冷却した後、容器内から取り出して濾過によりスラリーから固形分を分離した。この固形分を水で洗浄した後、乾燥(温度105℃、24時間放置)して、粉体を得た。
【0022】
得られた粉体を、X線回折装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi(HPO4)2・H2Oである結晶性リン酸チタンであることが確認できた。
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粉体を構成する粒子の形状は板状であり、六角形の板状であるものを多く含むことが確認できた。また、合成品Aと同じ方法で、得られた粉体を構成する結晶粒子の体積D50%径、CV値(標準偏差/数平均一次粒子径)、体積D50%厚さを測定したところ、体積D50%径は0.53μmであり、CV値は0.34であり、体積D50%厚さは0.065μmであった。
【0023】
また、体積D50%厚さおよび体積D50%径の測定値を用いた計算(0.53/0.065)により、得られた粉体を構成する結晶粒子のアスペクト比は8であった。
さらに、合成品Aと同じ方法で、粒径が0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の割合を調べたところ、72.64質量%であった。
また、合成品Aと同じ方法で全光線透過率を測定したところ、85.1%であった。
【0024】
<合成品C>
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が10.4となる割合で混合して混合液を得た。次に、この混合液を1.4Lのオートクレーブ内に入れて、温度を110℃に保持して、5時間反応させた。
反応後に、蓋を開けて容器内のスラリーを室温まで冷却した後、容器内から取り出して濾過によりスラリーから固形分を分離した。この固形分を水で洗浄した後、乾燥(温度105℃、24時間放置)して、粉体を得た。
【0025】
得られた粉体を、X線回折装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi(HPO4)2・H2Oである結晶性リン酸チタンであることが確認できた。
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粉体を構成する粒子の形状は板状であり、六角形の板状であるものを多く含むことが確認できた。また、合成品Aと同じ方法で、得られた粉体を構成する結晶粒子の体積D50%径、CV値(標準偏差/数平均一次粒子径)、体積D50%厚さを測定したところ、体積D50%径は0.74μmであり、CV値は0.42であり、体積D50%厚さは0.090μmであった。
【0026】
また、体積D50%厚さおよび体積D50%径の測定値を用いた計算(0.74/0.090)により、得られた粉体を構成する結晶粒子のアスペクト比は8であった。
さらに、合成品Aと同じ方法で、粒径が0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の割合を調べたところ、67.10質量%であった。
また、合成品Aと同じ方法で全光線透過率を測定したところ、85.4%であった。
【0027】
<合成品D>
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が10.2となる割合で混合して混合液を得た。次に、この混合液を200Lのオートクレーブ内に入れて、温度を110℃に保持して、5時間反応させた。
反応後に、蓋を開けて容器内のスラリーを室温まで冷却した後、容器内から取り出して濾過によりスラリーから固形分を分離した。この固形分を29%のアンモニア水(アンモニウム塩の水溶液)で洗浄した後、乾燥(温度105℃、24時間放置)して、粉体を得た。
得られた粉体を、X線回折装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi(HPO4)2・H2Oである結晶性リン酸チタンであることが確認できた。
【0028】
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粉体を構成する粒子の形状は板状であり、六角形の板状であるものを多く含むことが確認できた。また、合成品Aと同じ方法で、得られた粉体を構成する結晶粒子の体積D50%径、CV値(標準偏差/数平均一次粒子径)、体積D50%厚さを測定したところ、体積D50%径は1.11μmであり、CV値は0.33であり、体積D50%厚さは0.143μmであった。
また、体積D50%厚さおよび体積D50%径の測定値を用いた計算(1.11/0.143)により、得られた粉体を構成する結晶粒子のアスペクト比は8であった。
さらに、合成品Aと同じ方法で、粒径が0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の割合を調べたところ、16.97質量%であった。
また、合成品Aと同じ方法で全光線透過率を測定したところ、87.1%であった。
【0029】
<合成品E>
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が6.9となる割合で混合して混合液を得た。次に、この混合液を1.4Lオートクレーブ内に入れて、温度を120℃に保持して、5時間反応させた。
反応後に、蓋を開けて容器内のスラリーを室温まで冷却した後、容器内から取り出して濾過によりスラリーから固形分を分離した。この固形分を水で洗浄した後、乾燥(温度105℃、24時間放置)して、粉体を得た。
【0030】
得られた粉体を、X線回折装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi(HPO4)2・H2Oである結晶性リン酸チタンであることが確認できた。
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粉体を構成する粒子の形状は板状であり、六角形の板状であるものを多く含むことが確認できた。また、合成品Aと同じ方法で、得られた粉体を構成する結晶粒子の体積D50%径、CV値(標準偏差/数平均一次粒子径)、体積D50%厚さを測定したところ、体積D50%径は2.07μmであり、CV値は0.37であり、体積D50%厚さは0.302μmであった。
【0031】
また、体積D50%厚さおよび体積D50%径の測定値を用いた計算(2.07/0.302)により、得られた粉体を構成する結晶粒子のアスペクト比は7であった。
さらに、合成品Aと同じ方法で、粒径が0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の割合を調べたところ、1.05質量%であった。
また、合成品Aと同じ方法で全光線透過率を測定したところ、90.3%であった。
【0032】
<合成品F>
先ず、硫酸チタニル水溶液とリン酸水溶液を、チタンのモル濃度[Ti]に対するリンのモル濃度[P]の比[P]/[Ti]が10.8となる割合で混合して混合液を得た。次に、この混合液を200Lのオートクレーブ内に入れて、温度を130℃に保持して、5時間反応させた。
反応後に、蓋を開けて容器内のスラリーを室温まで冷却した後、容器内から取り出して濾過によりスラリーから固形分を分離した。この固形分を水で洗浄した後、乾燥(温度105℃、24時間放置)して、粉体を得た。
【0033】
得られた粉体を、X線回折装置を用いて分析した結果、粉体を構成する粒子は、構造式がTi(HPO4)2・H2Oである結晶性リン酸チタンであることが確認できた。
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粉体を構成する粒子の形状は板状であり、六角形の板状であるものを多く含むことが確認できた。また、合成品Aと同じ方法で、得られた粉体を構成する結晶粒子の体積D50%径、CV値(標準偏差/数平均一次粒子径)、体積D50%厚さを測定したところ、体積D50%径は7.44μmであり、CV値は0.36であり、体積D50%厚さは0.856μmであった。
【0034】
また、体積D50%厚さおよび体積D50%径の測定値を用いた計算(7.44/0.856)により、得られた粉体を構成する結晶粒子のアスペクト比は9であった。
さらに、合成品Aと同じ方法で、粒径が0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の割合を調べたところ、0.00質量%であった。
また、合成品Aと同じ方法で全光線透過率を測定したところ、91.4%であった。
合成されたA~Fのリン酸チタン粉体の全光線透過率と体積基準の累積50%一次粒子径(体積D50%径)との関係を、
図1にグラフで示す。
図1のグラフから、体積D50%径が0.53μmおよび0.74μm付近で全光線透過率が極小値となることが分かる。
【0035】
[粉体の調製]
合成されたA~Fのリン酸チタン粉体を下記の表1に示す割合で混合して、No.1~No.9のリン酸チタン粉体を得た。No.1~No.6のリン酸チタン粉体は、それぞれ合成品A~Dのリン酸チタン粉体そのままである。No.7~No.9のリン酸チタン粉体は混合品であるため、体積D50%径、CV値、体積D50%厚さを上述の方法で測定し、アスペクト比を算出した。さらに、合成品Aと同じ方法で、粒径が0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の割合を調べるとともに、合成品Aと同じ方法で全光線透過率を測定した。
各粉体の組成、粒径が0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の割合、体積D50%径、CV値、体積D50%厚さ、アスペクト比、全光線透過率を表1に示す。また、サンプルNo.1~9の全光線透過率と粒径0.52μm以上0.87μm以下の粒子の割合との関係を、
図2にグラフで示す。
【0036】
【0037】
この結果から以下のことが分かる。
結晶性板状リン酸チタン粒子からなり、粒径0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の含有率が5.82質量%以下であるNo.1、No.5、No.6、No.9の粉体の全光線透過率は、89.5%以上91.4%以下と高かったが、粒径0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の含有率が7.22質量%以上であるNo.2~No.4、No.7、No.8の粉体の全光線透過率は84.1%以上87.1%以下と低かった。
【0038】
よって、粒径0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の含有率が5.82質量%以下(7.0質量%以下)の粉体は、透明性が求められる光学材料や樹脂のフィラーとして好適なものであると言える。
また、フィラー用リン酸チタン粉体の製造方法が、「結晶性板状リン酸チタン粒子からなる粉体が、粒径0.52μm以上0.87μm以下の範囲の粒子の含有率が7.0質量%以下となっていること」を確認する工程を含むことで、透明性が求められる光学材料や樹脂のフィラーとして好適なフィラー用リン酸チタン粉体を製造することができる。