(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134977
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】卵調理用の油脂組成物、卵調理品、卵調理品の製造方法、及び卵調理品の風味改善方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220908BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20220908BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23D9/00 508
A23L15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034520
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 妙子
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 美由希
【テーマコード(参考)】
4B026
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG05
4B026DH10
4B026DX01
4B042AC03
4B042AD40
4B042AG07
4B042AH09
4B042AK06
4B042AP02
(57)【要約】
【課題】卵の甘味及び/又は旨味を強く感じることができる、卵調理用の油脂組成物、卵調理品、卵調理品の製造方法、卵調理品の風味改善方法を提供することである。
【解決手段】卵調理用の油脂組成物であって、該油脂組成物中に、構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂を含有し、卵調理が、卵調理品の原材料中に卵黄を10質量%以上含有し、加熱工程を含むものである、卵調理用の油脂組成物。前記油脂の5~60質量%が、構成脂肪酸が炭素数6~12の直鎖飽和脂肪酸のみからなり、且つ、構成脂肪酸中の炭素数6及び12の直鎖飽和脂肪酸が20質量%未満であるトリグリセリドであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵調理用の油脂組成物であって、
該油脂組成物中に、構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂を含有し、
卵調理が、卵調理品の原材料中に卵黄を10質量%以上含有し、加熱工程を含むものである、
卵調理用の油脂組成物。
【請求項2】
前記油脂の5~60質量%が、構成脂肪酸が炭素数6~12の直鎖飽和脂肪酸のみからなり、且つ、構成脂肪酸中の炭素数6及び12の直鎖飽和脂肪酸が20質量%未満であるトリグリセリドである、請求項1に記載の卵調理用の油脂組成物。
【請求項3】
前記卵調理品の原材料中の全卵の含有量が30質量%以上である、請求項1又は2に記載の卵調理用の油脂組成物。
【請求項4】
卵調理用の油脂組成物が、卵調理品の風味改善用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の卵調理用の油脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4に記載の卵調理用の油脂組成物を含有し、加熱された、卵調理品。
【請求項6】
卵調理品の原材料において、卵黄100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物が1~30質量部である、請求項5に記載の卵調理品。
【請求項7】
請求項1~4に記載の卵調理用の油脂組成物を添加する以下の工程A~Cのいずれか1つ又は2つ以上の工程を有し、
卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が10質量%以上であり、加熱工程を経る、卵調理品の製造方法。
工程A:加熱工程の前に、該油脂組成物を混合する
工程B:加熱工程において、該油脂組成物を炒め油又は離形油として用いる
工程C:加熱工程の後に、該油脂組成物を塗布する
【請求項8】
卵調理品の原材料において、卵黄100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物を1~30質量部用いる、請求項7に記載の卵調理品の製造方法。
【請求項9】
請求項1~4に記載の卵調理用の油脂組成物を添加する以下の工程A~Cのいずれか1つ又は2つ以上の工程を有し、
卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が10質量%以上であり、加熱する、卵調理品の風味改善方法。
工程A:加熱の前に、該油脂組成物を混合する
工程B:加熱において、該油脂組成物を炒め油又は離形油として用いる
工程C:加熱の後に、該油脂組成物を塗布する
【請求項10】
卵調理品の原材料において、卵黄100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物を1~30質量部用いる、請求項9に記載の卵調理品の風味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵調理用の油脂組成物、卵調理品、卵調理品の製造方法、及び卵調理品の風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オムレツ、オムライスの皮、スクランブルエッグ、卵焼き、かに玉、茶わん蒸し、プリン、など、加熱された卵調理品は、卵特有の風味を有し、特に卵由来の甘味、旨味が求められる。
これらの卵料理品の風味を向上させる方法として、甘蔗由来のエキスを有効成分として飲食品に添加する方法(特許文献1)が知られている。
【0003】
また、これらの卵調理方法としては、例えば、オムレツ、スクランブルエッグ等を調理する場合、植物油を用いて調理する(特許文献2)、あるいはバターを用いて調理することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-265135号公報
【特許文献2】特開2012-139111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、甘蔗由来のエキスを用いる方法は、従来の卵調理品の原材料を置き換えるものではなく、新たな原材料を追加する必要があった。また、エキスが水溶性のため、卵成分が相対的に多く加熱変性で固形になった卵調理品には不向きで、卵がゆのような、流動性があり水分を多く含む食品でないと十分な効果を得ることができなかった。
【0006】
本発明の課題は、卵調理品において、卵の甘味及び/又は旨味を強く感じることができる卵調理用の油脂組成物を提供することである。また、卵の甘味及び/又は旨味を強く感じることができる卵調理品を提供することである。また、卵の甘味及び/又は旨味を強く感じることができる卵調理品の製造方法を提供することである。また卵の甘味及び/又は旨味を強く感じることができる卵調理品の風味改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂を用いることで、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[10]を提供する。
[1] 卵調理用の油脂組成物であって、
該油脂組成物中に、構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂を含有し、
卵調理が、卵調理品の原材料中に卵黄を10質量%以上含有し、加熱工程を含むものである、
卵調理用の油脂組成物。
[2] 前記油脂の5~60質量%が、構成脂肪酸が炭素数6~12の直鎖飽和脂肪酸のみからなり、且つ、構成脂肪酸中の炭素数6及び12の直鎖飽和脂肪酸が20質量%未満であるトリグリセリドである、[1]の卵調理用の油脂組成物。
[3] 前記卵調理品の原材料中の全卵の含有量が30質量%以上である、[1]又は[2]の卵調理用の油脂組成物。
[4] 卵調理用の油脂組成物が、卵調理品の風味改善用である、[1]~[3]のいずれかの卵調理用の油脂組成物。
[5] 請求項1~4に記載の卵調理用の油脂組成物を含有し、加熱された、卵調理品。
[6]卵調理品の原材料において、卵黄100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物が1~30質量部である、[5]の卵調理品。
[7] 請求項1~4に記載の卵調理用の油脂組成物を添加する以下の工程A~Cのいずれか1つ又は2つ以上の工程を有し、
卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が10質量%以上であり、加熱工程を経る、卵調理品の製造方法。
工程A:加熱工程の前に、該油脂組成物を混合する
工程B:加熱工程において、該油脂組成物を炒め油又は離形油として用いる
工程C:加熱工程の後に、該油脂組成物を塗布する
[8] 卵調理品の原材料において、卵黄100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物を1~30質量部用いる、[7]の卵調理品の製造方法。
[9] [1]~[4]の卵調理用の油脂組成物を添加する以下の工程A~Cのいずれか1つ又は2つ以上の工程を有し、
卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が10質量%以上であり、加熱する、卵調理品の風味改善方法。
工程A:加熱の前に、該油脂組成物を混合する
工程B:加熱において、該油脂組成物を炒め油又は離形油として用いる
工程C:加熱の後に、該油脂組成物を塗布する
[10] 卵調理品の原材料において、卵黄100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物を1~30質量部用いる、[9]の卵調理品の風味改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、構成脂肪酸に炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸を含有しない油脂を用いた場合に比べて、甘味及び/又はうま味等の風味が増強した卵調理品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。また、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0011】
[卵調理品]
本発明の卵調理品は、卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が10質量%以上であり、加熱を受け、後述の卵調理用の油脂組成物を含有した食品であれば特に限定されるものではない。例えば、プリン等の焼き菓子、卵豆腐、茶碗蒸し、オムレツ、卵サンド、錦糸卵、厚焼き卵、親子丼、お好み焼き、かに玉などの卵料理品等が挙げられる。また、卵は鶏卵、うずらの卵、アヒルの卵をはじめ、食に供する卵の全卵、卵液、卵黄などのいずれか又は2種以上を、そのまま又は液状、凍結卵、乾燥卵、濃縮卵、加糖全卵、加糖卵黄などの形態で用いたものを含む。
【0012】
卵調理品は、卵成分が多いほど、卵由来の甘味、旨味を感じるが、その甘味、旨味は、卵黄由来と考えられる。そのため、本願発明において、卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が10質量%以上であると、卵由来の甘味、旨味を十分感じることができる。卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が、20質量%以上が好ましく、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましい。また、一般に流通している全卵の概ね1/3~2/5が卵黄で、3/5~2/3が卵白であるので、全卵を用いる場合は、卵調理品の原材料中の全卵の含有量が、30質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。また、卵調理品の原材料中の全卵の含有量が、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましい。
【0013】
本発明の卵調理品は、卵黄が多く、加熱により卵黄及び/又は卵白が熱変性を受けたものであり、流動性に乏しく、固形、半固型、ペースト状のいずれか1つ、又は2つ以上の状態のものである。加熱による熱変性は、一部又は全部でよく、例えば、いわゆる半熟状態のような一部加熱変性されたものも含む。
【0014】
本発明の卵調理品は、後述の卵調理用の油脂組成物を含有することにより、卵調理品における卵の甘味及び/又は旨味を向上することができる。加熱により卵中の水分量に変化があるので、含有する卵調理用の油脂組成物量は、原材料中における割合で規定することが好ましい。例えば、卵調理品の原材料において、卵黄100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物が1~30質量部であることが好ましく、卵調理用の油脂組成物が2~10質量部であることがより好ましく、卵調理用の油脂組成物が2~15質量部であることがさらに好ましい。また、全卵100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物が3~90質量部が好ましく、卵調理用の油脂組成物が5~30質量部がより好ましく、卵調理用の油脂組成物が10~20質量部がさらに好ましい。なお、含有は、卵調理品中に混合、侵透された状態、及び/又は卵調理品の外側に塗布されている状態を含む。
【0015】
[卵調理用の油脂組成物]
<油脂>
本発明の卵調理用の油脂組成物は、構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂を含有する。構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂の範囲で、卵調理品の甘味及び/又はうま味等の風味を増強することができる。
【0016】
油脂の構成脂肪酸である、炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸として、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸を例示できるが、融点が低く、液状、もしくは液状になりやすいことから、炭素数の小さい直鎖飽和脂肪酸が好ましい。一方、炭素数が小さい脂肪酸のトリグリセリドは食後の喉、胃への刺激がみられる人もいるため、炭素数8以上の直鎖飽和脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸)が多いことが好ましく、炭素数10の直鎖飽和脂肪酸(カプリン酸)であることがより好ましい。
【0017】
本発明で用いる油脂として、構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂が好ましく、構成脂肪酸の8~55質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂がより好ましく、構成脂肪酸の10~50質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂がさらに好ましい。
【0018】
本発明で用いる構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂は、炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸以外の構成脂肪酸として、動植物油を構成する脂肪酸を用いることができる。例えば、炭素数12~22の直鎖飽和脂肪酸及び/又は直鎖不飽和脂肪酸を用いることができ、好ましくは炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸及び/又は直鎖不飽和脂肪酸を用いることができる。これらの脂肪酸として、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が好ましい。
【0019】
本発明で用いる構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である油脂は、中鎖脂肪酸(炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸)とグリセリンとの脱水縮合、あるいは中鎖脂肪酸アルキルエステルとグリセリンとのエステル交換により製造した中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を用いることができる。また、中鎖脂肪酸と炭素数12~22の脂肪酸と、グリセリンとの脱水縮合、MCTと動植物油のエステル交換、中鎖脂肪酸アルキルエステルと動植物油のエステル交換により製造した中鎖脂肪酸・長鎖脂肪酸混合トリグリセリド(MLCT)を用いることができる。
【0020】
なお、油脂中には、遊離の脂肪酸をほとんど含まない、又は含まないため、本発明において、油脂の構成脂肪酸は、実質的にグリセリドを構成する脂肪酸である。本発明において、油脂中のトリグリセリド量は、80質量%以上であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましい。また、油脂中のジグリセリドは、20質量%以下であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0~5質量であることがさらに好ましい。また、油脂中のモノグリセリドは、5質量%以下であることが好ましく、0~1質量%であることがより好ましい。また、油脂中の遊離脂肪酸は、1質量%以下であることが好ましく、0~0.5質量%であることがより好ましい。
【0021】
本発明で用いる油脂は、油脂が構成脂肪酸の5~60質量%が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸であることを満たしている限り、油脂中に他のどのような油脂原料をさらに含有していてもよく、動植物油を用いることができる。例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームミッドフラクション、パームステアリン等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、えごま油、亜麻仁油、落花生油、乳脂、ココアバター等やこれらの混合油、加工油脂等をさらに使用することができる。好ましくは、10℃で液状である植物油が好ましい。
【0022】
なお、油脂を構成するトリグリセリドとして、構成脂肪酸が炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸であることが好ましいが、炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸原料は、わずかに炭素数12の直鎖飽和脂肪酸を含有することがある。そのため、構成脂肪酸が炭素数6~12の直鎖飽和脂肪酸のみからなり、且つ、構成脂肪酸中の炭素数6及び12の直鎖飽和脂肪酸が20質量%未満であるトリグリセリドであることが好ましい。構成脂肪酸中の炭素数6及び12の直鎖飽和脂肪酸が5質量%以下であるトリグリセリドであることがより好ましい。これらの油脂として、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)として販売されているものを用いることができる。
【0023】
構成脂肪酸が炭素数6~12の直鎖飽和脂肪酸のみからなり、且つ、構成脂肪酸中の炭素数6及び12の直鎖飽和脂肪酸が20質量%未満であるトリグリセリドは、油脂の5~60質量%であることが好ましく、油脂の7~55質量%であることがより好ましく、油脂の10~50質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明で用いる油脂は、精製油が好ましい。精製工程は食用油脂として用いる一般的な工程を経たものが好ましく、特に脱色、脱臭を経たものが好ましい。
【0025】
<その他成分>
本発明の卵調理用の油脂組成物は、前述の油脂以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他成分を含むことができる。その他成分は、乳化剤、抗酸化剤、アルコール、水などから選ぶことができる。その他の成分は、卵調理用の油脂組成物中に10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。また、抗酸化剤としては、トコフェロール、トコトリエノール、カロテノイド、ポリフェノール、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体などが挙げられる。
【0026】
[卵調理品の製造方法]
本発明の卵調理品の製造方法は、前述の卵調理用の油脂組成物を添加する工程を有し、卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が10質量%以上であり、加熱工程を経る。加熱工程としては、以下の工程A~Cのいずれか1つ又は2つ以上の工程を用いることができる。
工程A:加熱工程の前に、該油脂組成物を混合する
工程B:加熱工程において、該油脂組成物を炒め油又は離形油として用いる
工程C:加熱工程の後に、該油脂組成物を塗布する
【0027】
対象とする卵調理品は、前述の[卵調理品]に記載の通りであり、用いる卵調理用の油脂組成物は、前述の[卵調理用の油脂組成物]に記載された卵調理用の油脂組成物を用いる。
【0028】
加熱工程は、卵が熱変性する温度で加熱すればよく、例えば、80℃以上で加熱することができる。より好ましくは、100~280℃で加熱することが好ましく、120~280℃で加熱することがさらに好ましく、160~210℃で加熱することがさらに好ましく、160~190℃で加熱することが最も好ましい。加熱時間も、卵が熱変性すればよく、例えば、10秒以上加熱してもよい。加熱時間は、15秒~90分が好ましく、20秒2~45分がより好ましく、20秒~10分がさらに好ましく、20秒~5分が最も好ましい。
【0029】
本発明で用いる卵調理用の油脂組成物は、加熱により変質しないため、加熱工程中、及び/又は前後のどこでも添加することができる。例えば、卵調理用の油脂組成物を他の卵調理品の原材料と混合し、その後、加熱工程を行うこともできる。また、卵調理用の油脂組成物を炒め油として、加熱工程で用いる容器中に他の原材料とは別に添加して、加熱工程を行うこともできる。また、離形油として、加熱工程で用いる容器に塗布し、他の原材料を容器にいれ、加熱工程を行うこともできる。また、加熱工程を経た卵調理品に卵調理用の油脂組成物を塗布してもよい。
【0030】
また、卵調理品の原材料において、卵黄100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物を1~30質量部用いることが好ましく、卵調理用の油脂組成物を2~10質量部用いることがより好ましく、卵調理用の油脂組成物を2~15質量部用いることがさらに好ましい。また、全卵100質量部に対して、卵調理用の油脂組成物を3~90質量部用いることが好ましく、卵調理用の油脂組成物を5~30質量部用いることがより好ましく、卵調理用の油脂組成物を10~20質量部用いることがさらに好ましい。
【0031】
[卵調理品の風味改善方法]
本発明の卵調理品の風味改善方法は、前述の卵調理用の油脂組成物を添加する工程を有し、卵調理品の原材料中の卵黄の含有量が10質量%以上であり、加熱工程を経る。加熱工程としては、以下の工程A~Cのいずれか1つ又は2つ以上の工程を用いることができる。
工程A:加熱工程の前に、該油脂組成物を混合する
工程B:加熱工程において、該油脂組成物を炒め油又は離形油として用いる
工程C:加熱工程の後に、該油脂組成物を塗布する
【0032】
対象とする卵調理品は、前述の[卵調理品]に記載の通りであり、用いる卵調理用の油脂組成物は、前述の[卵調理用の油脂組成物]に記載された卵調理用の油脂組成物を用いる。また、加熱条件、添加工程、卵調理用の油脂組成物の使用量等については、前述の[卵調理品の製造方法]に記載された通りである。本発明の卵調理品の風味改善方法により、卵調理品の甘味及び/又は旨味が強化され、卵調理品の全体的な風味が改善されている。
【実施例0033】
次に、実施例、比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0034】
[油脂組成物]
表1の配合で油脂を混合し、油脂組成物を得た。用いた油脂は以下の通りである。
大豆サラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)
MCT1(日清オイリオ株式会社製:カプリル酸:カプリン酸=75:25のトリグリセリド)
【0035】
[スクランブルエッグ]
卵液100質量部(卵黄約35質量部)、牛乳15質量部、塩0.7質量部、胡椒0.1質量部を混合し、混合液を得た。フライパンに、油脂組成物15質量部を入れ、中火で180℃まで加熱した。フライパンに、混合液115.8質量部を入れ、ゴム製のヘラでかき混ぜながら30秒加熱して、スクランブルエッグを得た。得られたスクランブルエッグを、5℃、24時間保管し、味覚センサー評価、及び官能評価を行った。結果を表1に示した。
【0036】
[甘味・旨味:味覚センサー評価]
上記で製造したスクランブルエッグ100gをイオン交換水120gに浸し、30秒間撹拌した後、ろ過を行った。ろ液を遠心分離し、上層80mlを、電子味覚システムASTREE(バージョン:V14.5、アルファ・モス・ジャパン社製)で分析を行った(データ取得間隔1秒、分析時間120秒)。
なお、甘味、旨味として用いたセンサーは、以下の通りであり、センサーで得られた数値が高いほど、その味(甘味、旨味)が強いことを示す。
甘味:PKS
旨味:NMS
【0037】
[官能評価]
上記で製造したスクランブルエッグ60gを専門パネラー5名で評価した。大豆サラダ油のみで製造したスクランブルエッグの味を基準にして、味の濃度を評価した。なお、評価結果は5名の合議で決定した。
×:甘味、旨味は例1と同等以下である
△:甘味は例1よりやや強く、旨味は例1と同等である
〇:甘味、旨味とも例1より強い。
【0038】
【0039】
スクランブルエッグにおいて、例2~4は例1に比べて、味覚センサー、官能評価とも甘味、旨味とも強い。また、例5は、例1に比べて、味覚センサー、官能評価とも、甘味は強いが、旨味は例1程度である。