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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134989
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034537
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】敦森 洋和
(72)【発明者】
【氏名】ストコ ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】小幡 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】西村 彩子
(72)【発明者】
【氏名】舟根 司
(72)【発明者】
【氏名】神鳥 明彦
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼ 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】濱 聖司
(57)【要約】
【課題】
簡便な検査により、被検体の脳状態を推定し、さらに推定された脳状態から心身の不調等の状態を推定可能な情報処理システムを提供する。
【解決手段】
所定の検査に対する複数の被検体の行動の結果である第1の検査結果と被検体の脳状態を関連づける検査-脳状態関連情報と、所定の検査に対する複数の被検体の心身の状態の結果である第2の検査結果と、を記憶する記憶部と、所定の検査に対する被検体の行動の結果である第1の検査結果を受け付ける入力部と、検査-脳状態関連情報に基づいて、第1の検査結果から脳状態を推定し、且つ、推定された脳状態と第2の検査結果に基づいて、脳状態以外の状態を推定する制御部と、推定した脳状態以外の状態を出力する出力部と、を備える情報処理システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検査に対する複数の被検体の行動の結果である第1の検査結果と前記被検体の脳状態を関連づける検査-脳状態関連情報と、所定の検査に対する複数の被検体の心身の状態の結果である第2の検査結果と、を記憶する記憶部と、
前記所定の検査に対する被検体の行動の結果である第1の検査結果を受け付ける入力部と、
前記検査-脳状態関連情報に基づいて、前記第1の検査結果から脳状態を推定し、且つ、推定された前記脳状態と前記第2の検査結果に基づいて、脳状態以外の状態を推定する制御部と、
推定した脳状態以外の状態を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、
精神に関する状態および/または内臓に関する状態を含む前記脳状態以外の状態を推定する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記記憶部は、
回復前後における被検体の脳状態と、回復前後における前記第2の検査結果と、を関連付ける脳状態-状態関連情報を記憶し、
前記制御部は、
前記脳状態-状態関連情報、および、前記第1の検査結果から推定された脳状態を用いて、被検体の回復予測を行う、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、
前記脳状態-状態関連情報を被検体の回復傾向に基づいて分類し、回復傾向が類似する複数の被検体が属するグループを複数生成し、
前記の複数のグループから、前記第1の検査結果から推定された脳状態が対応するグループを特定し、
特定した前記グループに対応する回復予測を行う、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理システムであって、
表示部を備え、
前記表示部は、前記回復予測を示すレーダーチャートを表示する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理システムであって、
前記レーダーチャートは、回復前後における前記第2の検査結果に基づくデータを含む、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項7】
請求項3に記載の情報処理システムであって、
表示部を備え、
前記記憶部は、
それぞれ異なる複数の介入メニューと、複数の被検体への前記の各介入メニューの効果と、を関連付ける介入メニューテーブルを記憶し、
前記制御部は、
前記回復予測を行う被検体への回復効果の高い介入メニューを、前記介入メニューテーブルから選択し、
選択した前記介入メニューと、前記回復予測と、を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
電子計算機を用いた処理により被検体の状態を推定する方法であって、
所定の検査に対する複数の被検体の行動の結果である第1の検査結果と前記被検体の脳状態を関連づける検査-脳状態関連情報と、所定の検査に対する複数の被検体の心身の状態の結果である第2の検査結果と、を取得し、
前記所定の検査に対する被検体の行動の結果である第1の検査結果を取得し、
前記検査-脳状態関連情報に基づいて、前記第1の検査結果から脳状態を推定し、且つ、推定された前記脳状態と前記第2の検査結果に基づいて、脳状態以外の状態を推定する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の情報処理方法であって、
前記脳状態以外の状態は、精神に関する状態および/または内臓に関する状態を含む、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
請求項8に記載の情報処理方法を電子計算機に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の状態を推定する情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳梗塞等の脳血管障害(もしくは脳卒中)の患者に対するリハビリテーション(以下、リハビリと呼ぶ)の現場において、患者のモチベーション向上が課題となっている。そのため、リハビリ効果を患者にフィードバックすることが望ましい。
【0003】
また、リハビリの効率を向上させることも課題となっている。そのため、医師、看護師、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士等の医療従事者(以下、医療スタッフと呼ぶ)に、リハビリ効果を適時フィードバックし、リハビリプログラムに反映していくことが求められている。
【0004】
ここで、本技術分野の背景技術として、例えば、いくつかの簡易テスト(標準注意検査法CAT(clinical assessment for attention))の成績が、脳梗塞部位と関連しているとの報告がある。例えば、非特許文献1の報告がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Taro Murakami、 Seiji Hama、 Hidehisa Yamashita、 Keiichi Onoda、 Seiichiro Hibino、 Hitoshi Sato、 Shuji Ogawa、 Shigeto Yamawaki、 Kaoru Kurisu、“Neuroanatomic pathway associated with attentional deficits after stroke、”Brain Research 1544、 25‐32(2014).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者や医療スタッフ等へリハビリ効果を早期にフィードバックするために、脳状態を可視化し、リハビリプログラムの最適化によりリハビリを効率化することが課題である。
【0007】
患者や医療スタッフにリハビリ効果をフィードバックするためには、例えば患者の脳状態の詳細を、簡便な検査で把握できるとよい。例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)やCT(Computed Tomography)による検査を行わなくても、簡便な検査で脳状態の詳細を把握できるとよい。また、例えば、簡易テスト(CAT等)の成績のみから把握される内容より、詳細に脳状態を把握できるとよい。
【0008】
さらに、脳状態推定技術に加え、推定された脳状態から、対象者の心身に関する不調等の状態を推定することにより、不調の早期発見や早期対応につなげることが重要である。
【0009】
そこで、例え簡便な検査であっても、被検体の脳状態を推定し、さらに推定された脳状態から心身の不調等の状態を推定可能な情報処理システムおよび情報処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明の第1の態様によれば、下記の情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、記憶部と、入力部と、制御部と、出力部と、を備える。記憶部は、所定の検査に対する複数の被検体の行動の結果である第1の検査結果と被検体の脳状態を関連づける検査-脳状態関連情報と、所定の検査に対する複数の被検体の心身の状態の結果である第2の検査結果と、を記憶する。入力部は、所定の検査に対する被検体の行動の結果である第1の検査結果を受け付ける。制御部は、検査-脳状態関連情報に基づいて、第1の検査結果から脳状態を推定し、且つ、推定された脳状態と第2の検査結果に基づいて、脳状態以外の状態を推定する。出力部は、推定した脳状態以外の状態を出力する。
【0011】
また、上記の課題を解決する本発明の第2の態様によれば、下記の情報処理方法が提供される。この情報処理方法は、電子計算機を用いた処理により被検体の状態を推定する方法である。この情報処理方法は、(1)所定の検査に対する複数の被検体の行動の結果である第1の検査結果と被検体の脳状態を関連づける検査-脳状態関連情報と、所定の検査に対する複数の被検体の心身の状態の結果である第2の検査結果と、を取得し、(2)所定の検査に対する被検体の行動の結果である第1の検査結果を取得し、(3)検査-脳状態関連情報に基づいて、第1の検査結果から脳状態を推定し、且つ、推定された脳状態と第2の検査結果に基づいて、脳状態以外の状態を推定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例え簡便な検査であっても、被検体の脳状態から推定される脳に関する検査データだけではわからない状態(不調など)を推定することが可能な情報処理システムを提供することができる。これにより、不調の早期発見に繋がる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】情報処理システムの構成例を示す図である。
図2】情報処理システムのハードウェア構成例を示す図である。
図3】検査-脳状態関連情報を示す図である。
図4】脳状態出力のプロセスを示すフローチャートである。
図5】脳の病巣部位の三次元確率マップの一例を示した図である。
図6】脳病巣と予備・残存機能確率マップ作成時のデータの流れを簡易的に示した図である。
図7】脳病巣と予備・残存機能の融合マップの一例を示す図である。
図8】脳部位DB、脳機能DB、リハビリDBに含まれる情報の一例を示す図である。
図9】実施形態のデータの流れを簡易的に示した図である。
図10】生体データ取得部、特徴量抽出部を有する情報処理システムの構成例を示す図である。
図11】検査-脳状態関連情報学習部を含む情報処理システムの構成例を示す図である。
図12】指タップパフォーマンスに基づく脳画像提示の際の特徴量抽出画面を示す図である。
図13】指タップパフォーマンスに基づく脳画像提示の例を示す図である。
図14】左右指タッピング時の総移動距離算出により脳病巣位置を推定する処理フローを簡易的に示した図である。
図15】脳状態-状態関連情報の一例を示す図である。
図16】被検体の回復予測を表示する処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図17】脳領域-グループテーブルの一例を示す図である。
図18】介入メニューテーブルの一例を示す図である。
図19】効果の高い介入メニューを表示する処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図20】脳状態を推定する処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。異なる図面において、同一の数番で示される構成ブロック、構成要素は同一物を示す。
【0015】
図1に、実施形態に係る情報処理システム1の構成例を示す。情報処理システム1は、例えば記憶部と、入力部と、制御部と、出力部とを備える構成である。また、情報処理システム1は、表示部をさらに備えていてもよい。
【0016】
図1の例においては、記憶部は、検査結果保持部12と検査-脳状態関連情報保持部11と推定脳状態保持部14と脳状態-状態・介入関連情報保持部15とを有する。また、入力部は入力部22、制御部は解析手段(13、16)、出力部は脳状態出力部にそれぞれ相当する。
【0017】
記憶部は、複数の被検体について、所定の検査に対する被検体の行動の結果である検査結果(第1の検査結果)と、被検体の脳状態とを関連づける検査-脳状態関連情報を記憶する。この検査-脳状態関連情報の詳細については、図3を用いて後述する。ここで、所定の検査の一例(第1の検査の一例)は、CAT(Clinical Attention Assessment、標準注意検査法)による検査や、指タッピング装置による計測等の生体計測による検査などである。所定の検査の一例として、運動、認知、注意に関する脳の機能のうち、少なくともいずれか1以上の脳の機能に関する検査を含んでいてもよい。
【0018】
また、記憶部は、複数の被検体について、所定の脳状態と、所定の検査に対する複数の被検体の脳状態以外の状態の結果である検査結果(第2の検査結果)とを関連づける脳状態-状態関連情報を記憶する。この脳状態-状態関連情報の詳細については、図15を用いて後述する。
【0019】
ここで、所定の検査(第2の検査に対応する検査)は、被検体の心身(つまり、精神や身体)の状態に関連する検査とすることができる。被検体の心身の状態は、例えば、標準化された質問紙による抑うつ傾向、意欲低下傾向等のスコアや、医師による問診の結果や、リハビリにおけるADL(Activity of Daily Living)のスコアの改善度、などで評価される。なお、これらのうち、少なくともいずれか1以上の脳の機能に関連したスコアや検査を含んでいても良い。
【0020】
入力部22は、所定の検査に対する被検体の行動の結果である検査結果(つまり、第1の検査結果)を受け付ける。当該被検体の一例は患者である。例えば、リハビリを受ける患者は、患者自身や医療スタッフにリハビリ効果をフィードバックする目的で、所定の検査を受けることが想定される。なお、当該被検体は、検査-脳状態関連情報や脳状態-状態関連情報などに検査結果が含まれる被検体であってもよいし、検査結果が含まれていない被検体であってもよい。
【0021】
制御部は、検査-脳状態関連情報に基づいて、入力部22から受け付けた被検体の検査結果から被検体の脳状態を推定する。ここで、制御部は、当該脳状態の一例として、脳病巣部位を推定してもよい。
【0022】
出力部は、制御部で推定した脳状態を出力する。ここで、出力部は、脳における脳病巣部位(推定した脳病巣部位)を示す画像を出力してもよい。例えば、出力部は、表示部として動作する表示装置(ディスプレイやモニタ)に脳状態を示す画像を出力することにより、脳状態を可視化することができ、患者や医療スタッフにリハビリ効果をフィードバックできる。これにより、フィードバック結果をリハビリプログラムに反映(リハビリプログラムの変更を含む)することや、患者のモチベーションを向上させることも可能となる。このように、患者や医療スタッフ等への効果的かつ迅速な情報提供及びフィードバックにより、リハビリが効率化される。
【0023】
脳梗塞等の脳血管障害(もしくは脳卒中)の場合には、脳のある領域が脳梗塞等による病巣部位(損傷部位もしくは欠損部位を含む)となるために失われる機能がある。また、脳の病巣部位により、失われる機能が異なる。このことから、所定の検査に対する被検体の行動の結果である検査結果について、脳の病巣部位が共通する被検体の検査結果には同じまたは類似した傾向がみられ、脳の病巣部位が異なる被検体の検査結果には異なる傾向がみられる可能性が高い。このことに着目して、本実施形態では、検査-脳状態関連情報に基づいて、所定の検査の検査結果から、被検体の脳状態(例えば脳の病巣部位等)を推定する。この所定の検査は指タッピング装置による計測等の簡便な検査でもよく、本発明によれば、例え簡便な検査であっても、被検体の脳状態を推定可能な情報処理システムを提供することができる。また、脳の病巣部位により失われた機能のリハビリ訓練を繰り返し行うだけの、効率の悪いリハビリが改善される。リハビリの効率化により、リハビリによる治療期間の短縮化が期待できる。また、リハビリに伴う医療スタッフ(医師、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士等の医療従事者)の作業負担を低減することができる。さらに、病状の進行および再発の見逃しを防ぐことができる。
【0024】
図1の例において、検査結果保持部12は、CAT(Clinical Attention Assessment、標準注意検査法)、指タッピング装置による計測等の複数の生体計測から得られた検査結果を保持する。解析手段13は、検査結果保持部12が保持する検査結果と、検査-脳状態関連情報保持部11が保持している検査‐脳状態関連情報から、脳病巣部位の確率マップにおける重症部位を推定する。推定脳状態保持部14は、推定結果の脳画像の3次元データを保持する。また、推定結果の脳画像の3次元データは、後述する被検体表示部17に出力されてもよい。検査‐脳状態関連情報は、データベースとして検査-脳状態関連情報保持部11が保持していてもよい。ここでは、脳欠損部位、脳梗塞部位、脳萎縮部位、等をまとめて脳病巣部位と呼ぶ。解析手段13は、検査結果保持部12が有する1つまたは複数の検査結果から得られる1つまたは複数のパラメータを、検査-脳状態関連情報保持部11の検査-脳状態関連情報に入力することにより、脳状態を推定する。
【0025】
図2は、情報処理システム1のハードウェア構成の例を示す図である。情報処理システム1は、例えば、記憶装置、入力装置25、演算装置などで構成される。記憶装置は記憶部として動作し、入力装置25は入力部として動作し、演算装置は例えば制御部や出力部として動作する。なお、情報処理システム1は、表示部として動作する表示装置26や、外部装置と通信する通信部として動作する通信装置などをさらに含む構成であってもよい。なお、演算装置は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)といったプロセッサで構成されてもよいし、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0026】
本実施形態では、記憶装置としてメモリ21、演算装置としてCPU23である例を説明する。メモリ21は、検査結果保持部12と検査-脳状態関連情報保持部11と推定脳状態保持部14とを構成し、CPU23は、解析手段(13、16)及び脳状態出力部を構成する。CPU23より出力された脳状態について、ディスプレイもしくはモニタからなる被検体状態表示部17で表示されてもよい。実施形態中、CPU23は、制御部や出力部として動作し、メモリ21に格納されたプログラムを実行することで解析手段(13、16)、脳状態出力部等の機能を実現する。尚、実施形態中、CPU23で構成されると説明する解析手段(13、16)、脳状態出力部、特徴量抽出部62、検査‐脳状態関連情報学習部72等の各機能についても同様である。
【0027】
入力装置25は、例えば外部装置からのデータからを受け付けるインターフェースやマウスやキーボードなどであって、入力部22として動作する。なお、入力装置25は、入出力インターフェース(入出力IF)であってもよい。また、表示装置26は、ディスプレイやモニタなどであって、被検体状態表示部17として動作する。なお、被検体状態表示部17の前には、該被検体状態表示部17の入出力に係る入出力IFや通信路等があってもよい。
【0028】
情報処理システム1のハードウェア構成として、1つまたは複数のコンピュータ(電子計算機)で構成されてよい。なお、上述した情報処理システム1のハードウェアの各構成要素は、単数でも複数でも構わない。
【0029】
図3は、検査-脳状態関連情報保持部11が保持する検査―脳状態関連情報の一例として、検査・生体信号―脳病巣データベース50の内容を示す図であり、検査結果(検査または生体計測の結果等)と脳病巣位置との関連情報である。検査-脳状態関連情報は、1または複数の被検体について、所定の検査に対する被検体の行動の結果である検査結果(第1の検査結果)と、被検体の脳状態とが関連づけられた情報である。図3の検査―脳状態関連情報の例では、被検体(被検者)に関する識別情報(被検者No.)と、所定の検査に対する被検体の行動の結果である検査結果(検査出力)と、被検体の脳状態(病巣位置)とが関連づけられている。ここで、検査―脳状態関連情報における「被検体の脳状態」の例としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)やCT(Computed Tomography)等の脳画像検査の結果などを用いて、医師が診断した脳状態である。また、「被検体の脳状態」の例として、脳画像や、脳画像等から得られた脳構造、脳病巣情報等である。また、「被検体の脳状態」の例として、脳画像や各種の検査結果等に基づいて、脳状態について推定された情報を含んでいてもよい。
【0030】
検査結果は、指タッピング検査であれば、例えば総移動距離、左右バランス、接触時間の標準偏差、タップ間隔の標準偏差、位相差の標準偏差等の情報であり、CATの検査結果であれば、例えば、Digit span forward、Digit span backward、Visual cancellation、position stroop等がある。検査結果は、他にも、MMSE(mini-mental state examination)、FIM(Functional Independence Measure)のスコアであっても良い。検査-脳状態関連情報保持部11には、それらのスコア情報及び特徴量情報と、MRI(Magnetic Resonance Imaging)やCT(Computed Tomography)等の脳画像検査による脳構造、脳病巣情報等が格納される。このように、検査-脳状態関連情報保持部11は、各種検査結果と脳状態との関連情報を保持している。
【0031】
実際の脳病巣位置は、必ずしも一か所では無く一つの領域名で表せない場合があり、検査―脳状態関連情報は、脳梗塞の座標情報や座標情報の分布情報を含んでいてもよい。検査-脳状態関連情報保持部11には、例えばデータベースとして多数の被検体の情報があらかじめ格納されており、ある検査のスコア情報に対応する被検体の病巣位置を検索できるような構成としても良い。なお、実施形態では、主な被検体としてヒトを想定しており、被検体のことを被検者と呼んでもよい。
【0032】
総移動距離の具体的な算出方法として、例えば、親指、人差し指の間の距離を時系列で取得し、各周期における最大振幅の2倍を総和し右手、左手の総移動距離を求め、それらを総和したものとして算出しても良い。つまり、指の物理的位置より算出する。左右バランスは、左右の総移動距離の比を取ったもので算出しても良い。指の接触時間は、親指と人差し指が接触している時間と離れている状態を両指間の距離で定義し、接触している時間を用いれば良い。指タップ間隔は両指の接触開始時間の間隔により算出すれば良い。位相差の標準偏差は、例えば、左右の指タッピングの時系列変化にそれぞれヒルベルト変換等を適用して位相を求め、左右の位相差の時系列変化を算出する。その左右位相差の時系列変化の標準偏差を算出したもので良い。
【0033】
図4は、解析手段13による脳の病巣部位出力のプロセスを示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、管理者または管理装置からの実行要求を入力部が受け付けたタイミングや、入力部22が所定の検査に対する被検体の行動の結果である検査結果を受け付けたタイミング等、所定のタイミングで実行されてよい。まず、解析手段13は、検査結果保持部12から、検査結果を読み出す(ステップS401)。
【0034】
次に、解析手段13は、検査-脳状態関連情報保持部11が保持する検査―脳状態関連情報を照会し、脳の病巣部位の三次元確率マップを作成する(ステップ402)。図5は脳の病巣部位の三次元確率マップの一例を示したものである。本実施形態では、三次元確率マップを例として説明するが、脳の状態がわかるマップであればマップの形式は他の形式であってもよい。三次元の脳モデル(表面)36に、脳の病巣部位である確率が高確率の領域38と低確率の領域39を異なる方法(例えば、ハッチングのパターン、色の違い、濃淡の違い)で表示する。ここでは2種類の確率の三次元分布を示したが、連続的な確率値を色の濃淡や色等でマッピングしても良く、脳モデルの表面に限らず、三次元の脳モデル(内部)37においても三次元的に領域をマッピングしてもよい。
【0035】
三次元確率マップを作成する際には、例えばあるスコアに対応する、脳病巣部位をデータベース(検査―脳状態関連情報)の中から参照し、各被検体の実際の脳病巣部位をマップ(逆投影)する。これをデータベースに含まれる全被検体に対して行い、あるスコアに対応する被検体の一部または全ての脳病巣部位を各々重ね合わせて標準脳(例えば、MNI(Montreal Neurological Institute)座標系)上にマップしたときの頻度情報を算出し、その頻度情報を三次元の脳モデル(標準脳)にマップしたものでもよい。さらに、標準脳にマップした情報を、各被検体においてMRIやCTであらかじめ取得した脳画像上にマップしたものでもよい。これにより、あるスコアに対応する複数の被検体に高確率で共通する脳病巣部位(高頻度でみられた脳病巣部位)を、三次元の脳モデルにおいて高確率の領域38で表示するなど、脳病巣部位の頻度情報に対応する三次元確率マップを表示できる。ここで、あるスコアに対応する被検体とは、必ずしも同じスコアの被検体に限定する必要はなく、スコアが同じ範囲(所定の範囲)にある被検体や、スコアの特徴が同じ傾向にある被検体であってもよく、所定の基準であるスコアに対応する被検体が選択される。また、データベースに含まれる被検体の数が多いほど、確率マップの精度が高まることが期待される。さらに、各被検体の脳画像上に確率マップを表示することで、各被検体に関するより明確なフィードバックが可能となる。ここで、各被検体の脳画像とは、標準脳構造を各被検体の脳構造情報および座標系に応じて変換したものであってもよい。
【0036】
次に、解析手段13は、所定の検査結果を読み込んだかを判定する(ステップS403)。ステップS403がNOの場合、ステップS401へ移動する。これにより、所定の検査結果として、例えば指タッピングの検査結果やCATの検査結果等、対象の被検体の検査結果が複数ある場合、其々の検査毎に三次元確率マップが作成される。
【0037】
ステップS403がYESの場合、複数の病巣部位の3次元確率マップを重みづけ加算により重ね合わせ、脳の重症部位を特定する(ステップS404)。表示方法は図5(3次元確率マップの表示例)に示すような方法で良く、重症部位を強調して表示すればよい。ここで、脳の重症部位とは、各検査結果に対応する1または複数の病巣確率マップを用いて算出された、高確率の脳病巣部位を示している。
【0038】
次に、脳状態出力部は、脳の重症部位を示す3次元データを作成し、出力する(ステップS405)。なお、脳状態出力部は、S402で三次元確率マップを出力してもよい。また、本フローチャートにおいて、S403、S404、S405のステップは、必ずしも実行しなくてもよい。このように、本フローチャートにおいて、一部のステップを実行しなくてもよいし、また追加のステップを実行したりしてもよい。
【0039】
図6に、脳病巣と予備・残存機能確率マップ作成時のデータの流れを簡易的に示した図を示す。生体計測92の結果、検査93の結果、介入94の結果となるスコア95や介入情報を、入力部22が受け付け、検査結果保持部12に記録する。ここで、生体計測92とは例えば指タッピングであり、検査93は例えばCAT等である。スコア95とは医療的な介入もしくは治療行為等を行う場合の、介入の程度を表すレベル等の情報である。
【0040】
また、検査-脳状態関連情報は、例えば1または複数の被検体について、生体計測92の結果(例えば生体信号等)、検査93の結果、介入94の結果となるスコア95や介入情報等の少なくとも一部または全部と、各々の被検体の脳状態とが関連づけられた情報であってもよい。
【0041】
解析手段13は、対象の被検体について、生体計測92の結果、検査93の結果、スコア95もしくはレベルの情報等を入力として、検査-脳状態関連情報保持部11に保持されるデータベース(DB)を検索することにより、各々の生体情報(検査結果)から得られる脳病巣マップ41を推定する。
【0042】
脳病巣マップ41の一例としては、図5に示すような脳の病巣部位の三次元確率マップである。脳病巣マップ41の作成方法の例としては、図4で説明した方法と同様である。例えば、検査-脳状態関連情報において、対象の被検体の検査結果(生体計測92の結果、検査93の結果、スコア95や介入情報等)と対応する検査結果(同じまたは同等の検査結果、あるいは同じまた似た傾向の検査結果)をもつ被検体を1または複数選択し、選択された1または複数の被検体の脳病巣位置を標準脳(例えば、MNI(Montreal Neurological Institute)座標系)上で重ね合わせてマップすることにより、脳病巣マップ41が作成されてもよい。
【0043】
また、脳活動マップ42は、例えば、対象の被検体において推定される脳病巣部位のうち、脳機能(左手動作など)に関する生体計測92の結果や介入情報から、脳活動が期待される脳部位や介入が影響を与えて活動することが期待される脳部位を、脳部位―脳機能データベース51や介入―脳部位データベース54より推定し、脳モデルにマップすることで作成してもよい。
【0044】
この脳活動マップ42は、実際に脳活動を脳画像計測で測定したものではなく、文献や生体計測結果等から取得されるDBにより推定されるものであってもよい。脳活動マップ42において、活動が期待されると推定された脳部位が、推定される脳病巣と同時に表示される場合に、本実施形態では予備・残存機能の部位と呼ぶことがある。
【0045】
検査-脳状態関連情報保持部11が記憶するデータベースとしては、臨床検査及び生体信号のレベルに応じた脳病巣の確率マップ(検査・生体信号―脳病巣データベース50)、生体情報に関連する脳機能に関連した活動部位を保存する脳部位―脳機能データベース51、介入により影響を与え、活動することが期待される脳部位を保存する介入―脳部位データベース54、脳機能-リハビリデータベース52を含むものである。
【0046】
解析手段13は、これらの情報を用いて、複数の脳病巣マップ41及び脳活動マップ42を作成し、さらにこれらのマップを融合することにより、脳病巣と予備・残存機能の部位を示す融合マップ43を作成することができる。脳状態出力部は、病巣マップ41、脳活動マップ42、融合マップ43の一部または全部について、被検体状態表示部17等に出力することができる。以下、病巣マップ41、脳活動マップ42、融合マップ43などの脳状態を示すマップを、脳マップ34と呼ぶことがある。脳状態出力部で出力される脳状態は、解析手段13で推定された脳病巣部位と脳の予備・残存機能部位の情報を含んでいてもよい。これにより、脳病巣部位、予備・残存機能の可視化により脳状態を簡便に把握する情報処理システムを提供できる。
【0047】
図7に、脳病巣と予備・残存機能の部位を示す融合マップ43の一例を示す。例えば、病巣と推定される領域であって、かつ生体信号もしくは介入のスコアから脳活動が期待される領域の場合には、予備・残存機能部位45と表示され、それ以外の場所は病巣部位44と表示される。
【0048】
この予備・残存機能の表示により、実際に病巣となっており、当該病巣部位が担うべき機能を代替部位が担っている可能性について知ることが可能となるという効果がある。また、本推定を経時的に行った場合に、病巣部位及び予備・残存機能部位の表示を経時的に行うことで、どの部位がリハビリもしくは治療により変化したのか、効果が可視化され、医療スタッフや患者に的確で即時のフィードバックを行うことが可能になる。リハビリプログラムの最適化を効率的に行うことができるようになる等の効果がある。
【0049】
脳状態出力部は、脳病巣と予備・残存機能の部位を示す融合マップ43を出力することに加え、病巣部位に関連する脳機能の情報や、推奨リハビリプランをレポートとして出力しても良い。
【0050】
脳状態出力部は、脳部位-脳機能データベース51等を用いて、病巣部位に関連する脳機能の情報として、例えば、左手動作、言語機能、痛み、抑制機能、注意機能、という情報を出力する。脳状態出力部は、脳機能-リハビリデータベース52等を用いて、所定の脳機能(例えば患者の予備・残存機能の部位が担っている機能)を訓練するための推奨リハビリプランとして、日々のプラン、月間のプラン、自己訓練プラン、推奨治療のような情報を出力するようにする。この際、脳状態出力部は、脳機能-リハビリデータベース52に含まれる実際のリハビリ記録等の頻度情報を出力してもよい。
【0051】
図8に、介入-脳部位データベース(以下、脳部位データベースと呼ぶ場合がある)54、脳部位-脳機能データベース(以下、脳機能データベースと呼ぶ場合がある)51、脳機能-リハビリデータベース(以下、リハビリデータベースと呼ぶ場合がある)52に含まれる情報の一例を示す。
【0052】
脳部位データベース54は、例えば、介入情報と介入が影響を与える脳部位を関連付けた情報を含む。図8の脳部位データベース54の例では、介入(歩行訓練)に対して期待される活動領域として運動野、介入(言語訓練)に対して期待される活動領域として言語野、等の情報が保持されている。脳部位データベース54や脳機能データベース51は、各種文献情報や生体計測等により構築される。
【0053】
脳機能データベース51は、所定の脳部位に対応する脳機能の種類に関連する情報が保持される。図8の脳機能データベース51の例では、右側運動野であれば、対応する機能として左手動作、等があげられている。記憶部である検査-脳状態関連情報保持部11は、脳部位と脳機能とを関連づける脳機能データベース51を保持する。
【0054】
リハビリデータベース52には、所定の脳機能(例えば、発話機能、左側運動機能)に対して、当該脳機能を訓練するための具体的なリハビリプログラムの例(例えば、言語訓練、歩行訓練)が保存されている。リハビリデータベース52は、過去の経験や文献、データベース等から作成する。このようなデータベースを豊富に保持、もしくは利用可能な状態に置くことにより、図7に示す脳病巣と予備・残存機能の融合マップ43の作成をより高精度化することができ、それによるリハビリプログラム提案を適切に行うことが可能となる。記憶部である検査-脳状態関連情報保持部11は、脳機能と当該脳機能に関する脳部位を訓練するためのリハビリプログラムとを関連付けるリハビリデータベース52を保持する。
【0055】
このプロセスにより、脳を測定しないで脳状態を容易に知ることができ、リハビリ、服薬等の治療の効果を可視化できる。これにより、リハビリや治療方針の改良、及び患者とその家族のモチベーションアップにつながるという効果がある。
【0056】
また、リハビリ、服薬等の治療の効果とリハビリプログラム等の関係を含むデータベースを保持すれば、脳状態に合わせて最適なリハビリプログラムを生成できるため、リハビリに伴う医師、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士等の医療スタッフの作業負担を低減できるという効果がある。
【0057】
さらに、リハビリ、服薬等による治療後も、一定期間毎に本発明により脳状態を可視化することで、進行および再発の見逃しを防ぐことができるという効果がある。
【0058】
次に、図9に、実施形態のデータの流れを簡易的に示した図を示す。解析手段13が、検査結果保持部12に格納されるCAT等の検査結果と、検査-脳状態関連情報保持部11で保持される検査―脳状態関連情報とを比較し、例えばパターンマッチングや機械学習の推論手法を用いて、脳病巣部位(例えば脳の欠損部位や予備・残存機能部位等)を推定し、脳マップ34(図14参照)を構成する。脳状態出力部は、脳マップ34の一例として、逆投影した脳画像により、脳病巣部位を示す脳の3次元座標データを出力し、被検体状態表示部17に表示するように制御することができる。
【0059】
脳の欠損部位や予備・残存機能が把握されると、解析手段13は、図8に示した脳機能データベース51を参照し、前記推定された脳病巣部位(例えば脳の欠損部位や予備・残存機能部位等)から、当該脳病巣部位に関連する脳機能を特定する。脳状態出力部は、特定された脳機能から、リハビリデータベース52を参照して、当該特定された脳機能に関連付けられたリハビリプログラムを出力する。
【0060】
脳状態出力部は、解析手段13により簡易な検査により推定された脳の欠損部位や予備・残存機能部位と、特定したリハビリプログラムの情報を、被検体状態表示部17に同時にまたは別々に表示させることができる。
【0061】
解析手段13は、検査-脳状態関連情報保持部11で保持される検査-脳状態関連情報と脳機能データベース51に基づいて、被検体の検査結果から、脳機能の活動が低下している脳部位もしくは脳の異常部位を推定する。また、脳状態出力部は、推定された脳機能の活動が低下している脳部位もしくは脳機能に異常がある脳部位を、脳モデル上に表示するよう制御する。
【0062】
入力部22は、リハビリ結果を日常動作(ADL:ACTIVITY Of Daily Living)の指標であるFIM(Functional Independence Measure)等の指標として、リハビリデータベース52に入れることでデータベースを更新する。
【0063】
脳状態出力部は、簡易な検査により推定された脳の欠損部位とリハビリプログラムを、被検体状態表示部17に表示させることができる。被検体に定期的にリハビリプログラムを実施させ、情報処理システム1を用いて脳マップの経時的な変化を確認することで、リハビリプログラムの効果を確認することができる。
【0064】
解析手段13は、対象の被検体について、被検体が検査した時間を含む検査結果と、当該検査結果から推定した脳の病巣部位とを関連づけて、検査結果保持部12に記録する。検査結果保持部12は、対象の被検体について、最新の検査で推定された脳の病巣部位だけでなく、過去の検査で推定された脳の病巣部位を保持してもよい。
【0065】
解析手段13は、対象の被検体に対して行われた、異なるタイミングでの所定の検査の検査結果から、検査-脳状態関連情報に基づいて、其々の脳状態を推定する。脳状態出力部は、推定された其々の脳状態、または脳状態の時間変化を出力する。ここで、異なるタイミングでの所定の検査とは、例えば、対象の被検体に対して、あるリハビリプログラム実施後に行われた検査と、当該リハビリプログラム実施前に行われた検査であってもよい。これにより、当該リハビリプログラムの実施前後における脳状態の時間変化を、被検体状態表示部17への表示(出力)により可視化でき、患者や医療スタッフが当該リハビリプログラムの効果を確認できる。脳状態出力部は、前述の異なるタイミングの間に行われたリハビリプログラムの情報を、推定された其々の脳状態、または脳状態の時間変化とともに出力してもよい。
【0066】
また、脳状態出力部は、脳状態の推定に必要な所定の検査(認知テスト等)を出力する機能を有する。例えば、検査-脳状態関連情報保持部11に脳状態の推定に必要な所定の検査の情報をあらかじめ記憶しておき、脳状態出力部は、この情報を参照することで、リハビリ効果を確認するためのCAT等の必要な所定の検査について、被検体状態表示部17等に出力してもよい。脳機能データベース51は、ウェブ上で利用可能なものや、座標とキーワードの関連を示したテーブルのようなものであってもよい。
【0067】
図10は、図1に示した情報処理システムに、生体データ取得部61、特徴量抽出部62を加えた場合の情報処理システムを示す図である。特徴量抽出部62は、CPU23により構成され、生体データ取得部61は、入力部22により構成される。
【0068】
生体データ取得部61において生体データを取得し、特徴量抽出部62において生体データから特徴量を抽出し、検査結果保持部12が生体データ及び特徴量を検査結果として保持する。ここでの特徴量とは、例えば指タッピング装置を使用する場合には移動距離、指運動のエネルギー、指の接触時間、指タッピングの間隔、指タッピングの位相、等を含み、指タッピングの画像を使用する場合には、指タッピングの速度、指タッピングのタイミングのばらつき、指タッピングの距離のばらつき、等を含むものである。
【0069】
解析手段13において、検査結果を用い、検査-脳状態関連情報保持部11が保持する検査‐脳状態関連情報から脳病巣部位等の脳状態を推定し、脳状態出力部が推定結果を出力する。そして、推定脳状態保持部14が脳状態の推定結果を保持する。
【0070】
図11は、検査-脳状態関連情報学習部72を含む情報処理システム1の構成例を示す図である。図1に示した情報処理システムは、検査結果と脳状態とを関連づけた情報のデータベースを保持する検査-脳状態関連情報データベース保持部71と、検査-脳状態関連情報学習部72をさらに有する。検査結果と脳状態とを関連づけた情報の一例として、図3に示すような検査-脳状態関連情報と同じまたは同等の情報であってもよく、脳画像等の情報を含んでいてもよい。
【0071】
情報処理システム1の制御部は、検査-脳状態関連情報学習部72を備える。検査-脳状態関連情報学習部72は、検査-脳状態関連情報データベース保持部71が保持する検査結果と脳状態との関連を含むデータベースを用いて、検査結果と脳状態の関係を学習する。検査-脳状態関連情報保持部11は、検査-脳状態関連情報学習部72の学習結果を保持する。検査-脳状態関連情報データベース保持部71はメモリ21により構成され、検査-脳状態関連情報学習部72は、CPU23により構成される。
【0072】
検査-脳状態関連情報学習部72は、検査-脳状態関連情報データベース保持部71が保持する検査結果と脳状態との関連を含むデータベースを用いて、検査結果(例えばスコア)と脳病巣部位との関係を学習することにより、同じ脳病巣部位がある複数の被検体に共通する検査結果の特徴(例えばスコアの傾向)等を抽出可能であり、学習結果としてこの特徴を検査-脳状態関連情報保持部11に記録する。そして、解析手段13は、ある被検体の検査結果から脳状態を推定する際、学習結果となる特徴と同じ特徴をもつか否かを判定し、同じ特徴をもつ場合は、同じ脳病巣部位があると推定可能である。このような学習を行うことにより、脳状態の推定精度の向上が期待できる。また、あらかじめ学習しておき、その学習結果を基に推定を行うことで、脳状態の推定にかかる時間の短縮化が可能である。
【0073】
入力部22は、臨床データベース91、検査93の結果、脳機能データベース51の情報を受け付ける。臨床データベース91、脳機能データベース51は、例えば外部記憶手段に格納されていてもよい。
【0074】
臨床データベース91は、CAT検査や質問紙による検査、指タッピング検査等の簡易運動計測検査と構造MRI(Magnetic Resonance Imaging)やCT(Computed Tomography)検査等の病巣部位の情報を含むものであり、検査-脳状態関連情報データベース保持部71に検査結果と脳状態の関連情報(検査-脳状態関連情報)として記憶される。検査-脳状態関連情報データベース保持部71は、入力部22で入力された脳画像を保持する。
【0075】
検査93の結果となる検査結果は、検査結果保持部12に記録される。
【0076】
脳機能データベース51は、各々の脳部位及び脳座標に対して、どのような機能が対応しているかの対応関係を含むものであり、検査-脳状態関連情報保持部11に脳部位と脳機能の関連情報として記録される。
【0077】
図12は、指タップパフォーマンスに基づく脳画像提示の際の特徴量抽出画面の例を示す図である。脳状態出力部は、検査指示に関する情報を示す検査表示部31を含む画面を、被検体状態表示部17に表示する。図12の例では、両手で指タッピングするように指示する。情報処理システム1は、情報処理システム1と接続するカメラによる指タッピングについての撮影画像(撮影情報)を入力部22で受け付けると、検査結果保持部12に当該撮影情報を記録する。脳状態出力部は当該撮影情報を示す撮影情報表示部32を含む画面を、脳状態表示部24に表示し、被検体に対してうまく指タッピングできているかフィードバックする。
【0078】
さらに、検査結果保持部12は特徴量を過去の検査分も含めて記録している。そして、脳状態出力部は、当該記録された特徴量を用いて、時系列の特徴量を示す特徴量表示部33を含む画面を被検体状態表示部17に表示する。ここでは、人差し指、親指の先端座標を右手(R)、左手(L)それぞれで時系列に表示している。
【0079】
図13は、指タップパフォーマンスに基づく脳画像提示の例を示す図である。解析手段13は、例えば、指タッピングのスピード、左右の大きさのバランスの良さ、左右の位相差のばらつきを用いて、それぞれの特徴量の大小等を判定し、その判定に基づいて脳病巣の有無を推定する。脳状態出力部は、それぞれの特徴量の判定結果を示す特徴量判定結果表示部35を含む画面を、被検体状態表示部17に表示する。脳状態出力部は、判定の結果、各特徴量に関する各スコアが所定の基準より悪い場合に、対応する脳部位が脳病巣である確率を、推定された脳マップ34上に表示する。この際、脳状態出力部は、検査-脳状態関連情報保持部11に保持される検査・生体信号―脳病巣データベース50等の情報を利用する。ここでは脳病巣部位を表示する例を示したが、脳病巣部位に限らず、予備機能部位や残存機能部位を表示したり、脳病巣部位と予備・残存機能部位の融合マップ43を表示するように構成しても良い。
【0080】
解析手段13は、病巣確率を指標化したものを算出してマップすることで、脳マップ34を作成する。解析手段13は、所定の検査として複数の検査がある場合に、それぞれの検査から推定される病巣確率を基に、重ね合わせで脳マップ34を作成してもよい。また、検査-脳状態関連情報学習部72は、全検査のパターンを、あらかじめ学習しておき、学習結果を検査-脳状態関連情報に反映してもよい。このように、複数の検査結果を組み合わせることで、より高精度のマップを構築可能となる。検査・生体信号―脳病巣データベース50には、行動計測・解析指標(特徴量)に対応して、脳構造、血液成分、実際の脳画像、脳病巣位置、リハビリプログラムの履歴、リハビリに対応したスタッフの情報等が含まれ、それらの要因がどのように行動指標等に影響するかを解析できるようになっている。
【0081】
図14は、左右指タッピング時の総移動距離算出により脳病巣位置を推定するフローを簡易的に示したものである。特徴量表示部33に示されるように、情報処理システム1と接続するカメラによる指タッピングについての撮影画像(撮影情報)を生体データ取得部61が受け付けると、特徴量抽出部62は、撮影画像から、左右指タッピング時の親指―人差し指間の距離を算出する(ステップS1601)。解析手段13は、そこから左右の各々の総移動距離を算出する(ステップS1602)。解析手段13は、この特徴量である左右の各々の総移動距離の大小等を所定の基準で判定し、その判定に基づいて脳病巣の有無を推定する。例えば極端に左手の総移動距離が小さい等の場合に、右側運動野の機能欠損が推定される。このような推定は、検査-脳状態関連情報保持部11に保持される検査・生体信号―脳病巣DB50から導かれる(ステップS1603)。
【0082】
本実施形態は単純な例を示したが、複数の脳部位が関連する場合等においても、情報処理システム1は、データベース検索による脳マップ逆投影により脳病巣の推定位置を確率マップとして出力することが可能である。
【0083】
本実施形態によれば、簡易な検査(紙、タブレット等で実施可能な認知テスト)と病巣位置、梗塞位置等の脳病態との関連に関するデータベースを、例えば、検査―脳状態関連情報保持部11が持っておき、機械学習等により、簡易検査から脳病態を推定(結果から原因への逆投影)可能な状態とする。
【0084】
また、簡易な検査によって脳の異常個所と、介入(リハビリ)等による効果を、同時に表示することができる。
【0085】
1つまたは複数の簡易テストの複数種類のパラメータから、脳の病巣部位を解析手段13が推定する。解析手段13は、確率マップの重ね合わせ等から脳の病巣部位を推定できる。
【0086】
解析手段13は、推定された病巣に対して、「欠損疑いのある機能」をデータベース(neurosynth等の文献データベース)から求めてもよい。また、解析手段13は、病巣外の部位が担う「残存が期待される機能」を前記データベースから求めてもよい。情報処理システム1は、その機能(欠損疑いのある機能)に関する簡易な検査を提供する。解析手段13は、その検査のテスト成績に応じて、「残存機能」を推定する。リハビリ前後で検査を行う場合は、検査間に行ったイベント(リハビリプログラムなど)もデータベースとして検査結果保持部12に保持しておき、解析手段13や検査-脳状態関連情報学習部72により、検査結果の変化量とリハビリプログラムの関係の評価(相関解析、主成分分析、機械学習等)を行い、どのリハビリプログラムがどの脳機能改善に効果があったのかを可視化してもよい。患者リハビリ時間、業務拘束時間を同様に取得して検査結果保持部12に記録し、解析手段13や検査-脳状態関連情報学習部72で解析することで、医療従事者の負担をスコア化して可視化してもよい。なお、脳状態出力部が、例えば被検体状態表示部17に画面を出力することで可視化される。
【0087】
可視化の結果は、3次元の脳病巣・脳欠損マップ(脳マップ)に限定されず、例えば各脳領域における体積のような数値データ(スコア)でも良い。脳マップの表示方法に、活動量に応じた濃淡を加えても良い。
【0088】
本実施形態の情報処理システム1は、必ずしも脳を計測しなくても、簡易なテストを用いて脳の重症部位もしくは梗塞(病巣)位置・残存機能を推定し、出力することができる。また、本実施形態では、解析手段13により推定された脳状態が脳状態保持部14に保持される。
【0089】
また、本実施形態の情報処理システム1は、解析手段16により、被検体状態表示部17に被検体の回復予測に係る情報を表示させることもできる。この処理は、脳状態-状態・介入関連情報保持部15に保持される脳状態-状態関連情報と、推定脳状態保持部14に保持される脳状態と、を用いて行われる。次に、被検体の回復予測に関する説明をする。
【0090】
先ず、図15を参照しながら、脳状態-状態関連情報について説明する。図15は、脳状態-状態関連情報の一例を示す図である。脳状態-状態関連情報は、脳状態-状態介入関連保持部15に保持され、図15に示すように、複数の被検体の回復前と回復後(この例では、入院時と退院時)における、脳損傷度および症状スコアをまとめたデータである。この脳状態-状態関連情報は、脳損傷度テーブルと症状スコアテーブルを含む。ここで、脳損傷度は、脳領域(area)ごとに評価されており、この例では、百分率に基づく値が格納されている。なお、数値が高いほど、損傷の度合いが高いことを示す。その一方で、症状スコアは、一つの過程の検査の結果に基づく、当該検査の総合的な点数であり、点数が高いほど良好であることを示す。そして、症状スコアテーブルには、それぞれ異なる過程の検査(図15では、testと記載)ごとに、症状スコアが格納されている。なお、検査(test)は、被検体の心身の状態に関する(すなわち、第2の検査に関する)。従って、症状スコアは、第2の検査結果に基づくデータであり、症状スコアは、例えば、標準化された質問紙による抑うつ傾向、意欲低下傾向等のスコアや、医師による問診の結果や、リハビリにおけるADL(Activity of Daily Living)のスコアの改善度、などで評価される。
【0091】
なお、図15の例は、入院前後の患者が被検体とされたデータであるが、脳状態-状態関連情報は、被検体の回復前後について適切に評価されたデータであればよく、被検体は、入院患者に限定されない。例えば、被検体は、リハビリ施設を定期的に利用する者であってもよい。
【0092】
解析手段16は、上記で説明した脳状態-状態関連情報を用いて、回復予測する処理を行う。次に、回復予測する処理の一例について、図16を参照しながら説明する。図16は、被検体の回復予測を表示する処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【0093】
解析手段16は、脳状態-状態介入関連保持部15から脳状態-状態関連情報の症状スコアテーブルを読み出す(S601)。そして、解析手段16は、症状スコアテーブルにおける症状スコアを用いてデータ駆動型分析(例えば、適宜のクラスタリング)を実施し、回復傾向の観点(つまり、回復前後における症状スコアの変化のパターン)で分類された複数のグループを生成する(S602)。これにより、被検体の回復傾向が異なる複数のグループが生成され、一つのグループには、回復傾向が類似する複数の被検体が属する。
【0094】
本実施形態では、S602の処理において、解析手段16は、被検体の回復傾向が異なる3つのグループ(グループ1~グループ3)を生成する。すなわち、解析手段16は、回復前の症状スコアと回復後の症状スコアの差が大きい被検体(つまり、回復傾向が良好であり、顕著な回復が見られた被検体)が属するグループ1を生成する。解析手段16は、回復傾向があまりなく、回復前と回復後の症状スコアの差が小さい被検体が属するグループ3を生成する。解析手段16は、回復前後の症状スコアの差がグループ1の場合とグループ3の場合の中間的であり、回復傾向が概ね良好であり、回復が見られた被検体が属するグループ2を生成する。
【0095】
次に、解析手段16は、脳状態-状態介入関連保持部15から脳状態-状態関連情報の脳損傷度テーブルを読み出す(S603)。そして、解析手段16は、S602で生成したそれぞれのグループに属する被検体の脳領域を特定する(S604)。詳細には、解析手段16は、グループに属する被検体の脳損傷度(回復前であり、この例では、入院時の脳損傷度)を脳損傷度テーブルから取得する。そして、解析手段16は、グループ内のそれぞれの被検体の間で共通する脳領域(脳損傷が認められる脳領域)を、適宜の手法(例えば、データマッチング処理)を用いて特定する。
【0096】
次に、解析手段16は、脳領域-グループテーブルを作成する(S605)。図17を参照しながら、脳領域-グループテーブルの一例について説明する。図17は、脳領域-グループテーブルの一例を示す図である。
【0097】
図17に示すように、脳領域-グループテーブルは、S604で特定した被検体の脳領域がどのグループに対応するのかについて、まとめたデータである。図17の例では、特定した脳領域を画像により示すデータが格納されているが、これに代えて又は加えて、特定した脳領域の脳損傷度(数値)のデータが格納されていてもよい。また、脳領域に対応するグループを識別する情報に加えて、回復前後の症状スコアに関するレーダーチャートが解析手段16により生成され格納されてもよい。なお、レーダーチャートは、脳領域-グループテーブルに格納されず(つまり、脳領域-グループテーブルから省略されてもよく)、後述するS606で生成されてもよい。
【0098】
ここで、レーダーチャートについて説明する。レーダーチャートの数値は、検査(すなわち、症状スコアテーブルにおけるtest)に対応しており、図17の例では、15種類の検査が示されている。レーダーチャートは、症状スコアの大きさを示す。すなわち、レーダーチャートの中心から外側に向かうに従って、症状スコアの値が大きくなる。また、レーダーチャート上の点線により、回復前の症状スコアの大きさが示され、レーダーチャート上の実線により、回復後の症状スコアの大きさが示されている。
【0099】
なお、レーダーチャートにおいて、図17の例では、15種類の検査が示されているが、検査の種類は、症状スコアテーブルに含まれる検査から適宜に選択することができる。また、レーダーチャートにおける症状スコアの大きさは、適宜の手法によって決定される。症状スコアの大きさは、例えば、グループに属する各被検体の症状スコアの平均値とされてもよい。例えば、testAに関する症状スコアの大きさは、グループに属する各被検体のtestAの平均値とされてもよい。
【0100】
解析手段16は、推定脳状態保持部14から脳状態を読み出す。そして、解析手段16は、脳領域-グループテーブルを参照して、推定脳状態保持部14から読み出した脳状態に近い脳領域のグループを脳領域-グループテーブルから選定し、選定したグループに対応するレーダーチャートを回復予測として被検体状態表示部17に表示する(S606)。なお、脳領域-グループテーブルにレーダーチャートが格納されていない場合、解析手段16は、選定したグループに対応するレーダーチャートを生成して表示する。
【0101】
解析手段16は、レーダーチャートに加えて、被検体の回復傾向について説明するメッセージを被検体状態表示部17に表示させてもよい。メッセージは、例えば、現在の状態を説明する文章と、今後の回復の見込みを説明する文章と、により構成されていてもよい。被検体状態表示部17には、例えば、「あなたの脳は図の状態にあり身体機能は今は良好ではありませんが図のように回復の見込みがあります。」というメッセージと、画像(該メッセージの図に対応する、被検体の脳マップおよびレーダーチャート)と、が表示されてもよい。
【0102】
なお、本実施形態では、解析手段16は、3つのグループを生成したが、回復傾向を適切に分類することができればよく、例えば、4つ以上のグループを生成してもよい。また、上記の処理では、S606で推定脳状態保持部14から脳状態を読み出していたが、これよりも前に脳状態を読み出してもよい。
【0103】
脳状態-状態関連情報には、新たな被検体のデータが加えられてもよく、例えば、複数の被検体のデータが集められたタイミングなどで、脳状態-状態関連情報が更新されてもよい。そして、解析手段16は、更新された脳状態-状態関連情報を用いて、処理(S601~S606)を行ってもよい。
【0104】
ここで、レーダーチャートにおける症状スコアの大きさが、グループに属する各被検体の症状スコアの平均値とされている場合、解析手段16は、データ駆動型分析によらない方法により、新たな被検体のデータを既存のグループに割り当てることができる。そして、解析手段16は、脳状態-状態関連情報の更新に応じて、脳状態-グループテーブルを更新してもよい。次に、解析手段16による割り当て処理について説明する。
【0105】
レーダーチャート上での各症状スコアは、各被検体の平均値で表現されている。従って、それぞれの症状スコアは、バラつきを考慮した確率密度分布として考えることができる。そこで、解析手段16は、レーダーチャート上での症状スコアと、新たな被検体のデータ(症状スコア)と、の類似度を評価する。なお、類似度の評価方法については、特に限定されないが、例えば、下記の方法とすることができる。
【0106】
すなわち、解析手段16は、症状スコアの確率密度分布に、新たな被検体の症状スコアを入力し、平均値との距離(すなわち、確率密度分布の中心からの距離)を算出する。なお、確率密度分布の症状スコアと新たな被検体の症状スコアは、同一の検査(test)に関する。
【0107】
解析手段16は、算出した距離を用いて、平均値周りでの確率密度の総和を積分により求める。すなわち、解析手段16は、平均値からの距離をσaとしたときに、-σaから+σaの範囲で積分を行い、積分値を求める。解析手段16は、一のグループにおいて、全ての症状スコアについて同様の処理を行い、全ての症状スコアの積分値を求める。なお、平均値からの距離が小さいほど類似性が高い(すなわち、新たな被検体の症状スコアが平均値に近くなっている)ので、積分値が小さいほど類似性が高い。そして、解析手段16は、全ての症状スコアの積分値を集計し、集計結果を求める処理を行う。
【0108】
解析手段16は、上記の処理を全てのグループについて行う。そして、解析手段16は、各グループでの集計結果(積分値が集計された値)を比較して、最も値が小さいグループを選定し、選定したグループに新たな被検体を割り当てる。このようにして、解析手段16は、新たな被検体を既存のグループに割り当てる処理を行う。
【0109】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、回復予測に加えて、適切な介入メニュー(すなわち、リハビリメニュー)を出力する情報処理システムについて説明する。なお、上記の実施形態において説明した内容については省略することがある。
【0110】
本実施形態では、介入メニューテーブルが脳状態-状態・介入関連情報保持部15に保持され、解析手段16は、介入メニューテーブルを用いた処理を行う。先ず、図18を参照しながら、介入メニューテーブルについて説明する。図18は、介入メニューテーブルの一例である。
【0111】
図18に示すように、介入メニューテーブルは、回復前から回復後(本実施形態では、入院時から退院時まで)に、複数の被検体に対して介入を実行した場合における、介入の効果を示すデータとなっている。介入メニューテーブルにおいて、介入(x1、x2・・・xn)は、それぞれ構成が異なるリハビリメニューを示しており、介入メニューテーブルには、複数の被検体に対して、回復前から回復後までに行った介入の回数が格納されている。効果(x1、x2・・・xn)は、介入(x1、x2・・・xn)の結果により、どの程度の回復が認められたかについて評価したパラメータであり、介入メニューテーブルにおいて、効果(x1、x2・・・xn)は、それぞれの被検体への介入(x1、x2・・・xn)ごとに格納されている。なお、介入メニューテーブルは、適宜のタイミング(例えば、新たな被検体のデータが集計されたタイミング)で、更新されてもよい。
【0112】
本実施形態での解析手段16の処理の一例について説明する。図19は、効果の高い介入メニューを表示する処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【0113】
本実施形態では、第1実施形態における解析手段16の処理(S601~S605)と同様の処理を行う。すなわち、解析手段16は、症状スコアテーブルを用いて、回復傾向が異なる複数(本実施形態では、3つ)のグループを生成し、脳損傷度テーブルを用いて、それぞれのグループに属する被検体の脳領域を特定し、脳領域-グループテーブルを作成する(S701)。
【0114】
次に、解析手段16は、介入メニューテーブルを読み込む。そして、解析手段16は、脳領域-グループテーブルにおいて各グループに属する被検体にとって効果が高い介入(リハビリメニュー)を、介入メニューテーブルから取得する。ここで、解析手段16は、脳領域-グループテーブルにおけるグループごとに、効果の高い介入を取得する(S702)。
【0115】
解析手段16は、適宜の手法に基づいて、介入メニューテーブルから効果の高い介入を評価して取得すればよい。解析手段16は、例えば、効果の大きさを定量評価して、効果の大きさが所定値以上の代表的な介入を、介入メニューテーブルから取得してもよい。また、解析手段16は、介入の回数も考慮して、介入の回数が所定値以下であり、且つ、効果の大きさが所定値以上の介入を取得してもよい。
【0116】
解析手段16は、下記のような方法により、効果の高い介入を取得してもよい。すなわち、解析手段16は、(1)介入メニューテーブルにおける被検体を第1実施形態での処理と同様の観点(つまり、症状スコアに基づく回復傾向の観点)で分類して、回復傾向の観点で分類された複数のグループを生成する。解析手段16は、(2)生成したグループに属する各被検体を参照して、効果の高い介入をグループごとに取得する。ここで、解析手段16は、適宜に手法に基づいて、効果の高い介入を取得すればよい。解析手段16は、例えば、効果の大きさが所定値以上の代表的な介入を取得してもよい。また、解析手段16は、各被検体に対して所定値以上の効果となるのが最も多くなる介入を取得してもよい。また、解析手段16は、介入の回数も考慮して、介入の回数が所定値以下であり、且つ、効果の大きさが所定値以上の介入を取得してもよい。
【0117】
解析手段16は、推定脳状態保持部14から脳状態を読み出す。そして、解析手段16は、脳領域-グループテーブルを参照して、推定脳状態保持部14から読み出した脳状態に近い脳領域のグループを脳領域-グループテーブルから選定し、選定したグループに対応する介入を被検体状態表示部17に表示する(S703)。なお、解析手段16は、選定したグループに対応するレーダーチャートを脳領域-グループテーブルから取得して、または、選定したグループに対応するレーダーチャートを生成して、介入に加えて回復予測を示すレーダーチャートを被検体状態表示部17に表示させてもよい。
【0118】
また、解析手段16は、被検体の回復傾向と介入について説明するメッセージを表示させてもよい。メッセージは、例えば、現在の状態を説明する文章と、今後の回復の見込みを説明する文章と、介入の情報と、により構成されていてもよい。被検体状態表示部17には、例えば、「あなたの脳は図の状態にあり身体機能は今は良好ではありませんが図のように回復の見込みがあります。介入Xnを日々実行すると良いでしょう。」というメッセージと、画像(該メッセージの図に対応する、被検体の脳マップおよびレーダーチャート)と、が表示されてもよい。なお、ここで介入Xnは、S703で取得した介入である。また、リハビリスタッフ向けのメッセージ(例えば、介入Xnを実行させてください。というメッセージ)が表示されてもよい。
【0119】
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、脳状態の推定に加えて、脳状態以外の状態(例えば、精神状態や内臓感覚)も推定することができる情報処理システムについて説明する。なお、上記の実施形態において説明した内容については省略することがある。
【0120】
本実施形態では、行動検査テーブルが検査-脳状態関連情報保持部11に保持され、脳損傷度情報が検査-脳状態関連情報保持部11に保持される。解析手段13は、行動検査テーブルと、脳損傷度情報と、を用いた処理を行う。
【0121】
行動検査テーブルには、所定の検査に対する複数の被検体の心身(つまり、精神や身体)の状態の結果(第2の検査結果)が格納される。行動検査テーブルには、検査結果がスコア化されたデータ(行動検査スコア)が格納される。行動検査スコアは、例えば、不安スコア、うつスコア、ストレススコアなどを含んでもよい。
【0122】
脳損傷度情報は、複数の被検体について、脳領域ごとに脳損傷度が数値(例えば、百分率)で評価されたデータである。詳細には、脳損傷度情報は、AAL(Automated Anatоmical Labeling)法により116領域に分割されて脳領域ごとの脳損傷度が評価されたデータとされており、データベース化されている。なお、脳損傷度情報は、116領域分の脳領域(area)のデータが含まれる、上記の第2実施形態で説明された脳損傷度テーブルとされてもよい。
【0123】
次に、解析手段13の処理について、図20を参照しながら説明する。図20は、脳状態を推定する処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【0124】
解析手段13は、検査-脳状態関連情報保持部11から行動検査テーブルを読み出す(S801)。そして、解析手段13は、行動検査スコアにデータ駆動型分析(例えば、クラスタ分析)を実施して、各被検体の行動検査スコアを複数のグループに分類する(S802)。解析手段13は、例えば、不安スコアとストレススコアの観点から4つのグループを生成する。この場合、解析手段13は、スコアの大小関係を利用して、不安スコアが高く且つストレススコアが高いグループと、不安スコアが高く且つストレススコアが低いグループと、不安スコアが低く且つストレススコアが高いグループと、不安スコアが低く且つストレススコアが低いグループと、を生成する。
【0125】
解析手段13は、脳損傷度情報を読み出す(S803)。そして、S802で分類した各グループに属する被検体について、脳損傷が認められる脳領域を特定する(S804)。なお、本実施形態では、S802で4つのグループに分類しているので、各グループに対応する4つの脳領域(Z1~Z4)が特定される。ここで、脳損傷が認められる脳領域を特定する処理は、一例として、下記のように実行される。
【0126】
すなわち、不安障害やストレス障害(つまり、第2の検査に関する症状)は、ある特定の脳領域の損傷に関係することが知られている。一例として、脳領域に含まれる右ローランド弁蓋部は、感情処理に関係する部位として知られており、この部位の損傷により、感情処理が不調になることが考えられる。従って、S802で分類したグループ内の各被検体は、共通する脳領域に損傷が発生している可能性が高いと考えられる。
【0127】
そこで、解析手段13は、グループ内の各被検体の脳損傷が認められる共通の脳領域を特定する。グループ内において脳領域を特定する方法は、適切に実行することができれば特に限定されない。解析手段13は、例えば、グループに属する各被検体について脳損傷度が閾値よりも高い共通の脳領域を抽出して、脳損傷度が一定値よりも高い共通の脳領域を特定してもよい。なお、このようにして特定された脳領域(本実施形態では、Z1~Z4)を、「脳損傷領域」と呼ぶことがある。
【0128】
解析手段13は、検査結果保持部12から被検体の検査結果(第1の検査に係る検査結果)を読み出す(S805)。ここで、被検体の脳状態は、第1実施形態の場合と同様の処理により求められてもよいが、本実施形態では、解析手段13は、被検体の脳状態に含まれる損傷が認められる脳領域と、脳損傷領域と、の比較を行い、被検体の脳状態に、脳損傷領域に対応する脳領域があるかどうかについて判定する。そして、対応する脳損傷領域がある場合、解析手段13は、対応する脳損傷領域を選定し、推定脳状態保持部14には、該脳損傷領域の情報を含んだ脳状態が保持される(S806)。
【0129】
ところで、上述したように、不安障害やストレス障害(つまり、第2の検査結果に基づく症状)は、ある特定の脳領域の損傷に関係することが知られている。そのため、推定された脳状態に脳損傷領域が含まれる場合、第2の検査結果に関する不調があると考えることができる。
【0130】
そこで、推定された脳状態に脳損傷領域が含まれる場合、脳状態以外の状態が脳状態出力部から出力されてもよい。例えば、被検体の脳状態に脳損傷領域が含まれ、該脳損傷領域に右ローランド弁蓋部が含まれる場合、被検体の感情処理に不調があることが出力されてもよい。また、右ローランド弁蓋部は、内臓感覚の状態(例えば、腸の状態)に関連する部位としても知られている。そこで、内臓感覚の状態に不調があることも出力されてもよい。そして、一例として、出力された結果のメッセージが、被検体状態表示部17に表示されてもよい。
【0131】
従って、本実施形態によれば、対象者の脳状態に基づいて、対象者の精神に関する状態や対象者の身体に関する状態を推定することができ、脳状態に基づいて、脳状態以外の対象者の状態を推定することができる。
【0132】
以上の実施形態に記載した内容に代表される本発明の全ての考え方は脳以外、例えば生体の状態検査及び状態把握に適用しても良いことは言うまでも無い。本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0133】
1:情報処理システム、
11:検査-脳状態関連情報保持部、
12:検査結果保持部、
13:解析手段、
14:推定脳状態保持部、
15:脳状態-状態・介入関連情報保持部、
17:被検体状態表示部、
21:メモリ、
22:入力部、
31:検査表示部、
32:撮影情報表示部、
33:特徴量表示部、
50:検査・生体信号―脳病巣データベース、
51:脳部位―脳機能データベース、
52:脳機能―リハビリデータベース、
54:介入―脳部位データベース、
61:生体データ取得部、
62:特徴量抽出部、
71:検査―脳状態関連情報データベース保持部、
72:検査-脳状態関連情報学習部、
91:臨床データベース、
94:介入。
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