(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135386
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】酢酸含有飲食品
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20220908BHJP
【FI】
A23L2/38 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035156
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 可南子
(72)【発明者】
【氏名】彦田 清花
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LG01
4B117LK06
4B117LK08
(57)【要約】
【課題】果汁の香りや甘味が十分に感じられる酢酸含有飲食品を提供すること。
【解決手段】果汁と、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分とを含有する、酢酸含有飲食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果汁と、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分とを含有する、酢酸含有飲食品。
【請求項2】
(A)酢酸メンチルを含有し、該酢酸メンチルの含有量が、0.00001~1000ppbである、請求項1に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項3】
(B)ジヒドロアクチニジオリドを含有し、該ジヒドロアクチニジオリドの含有量が、0.00001~1000ppbである、請求項1又は2に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項4】
(C)シネオールを含有し、該シネオールの含有量が、0.00001~70ppbである、請求項1~3のいずれか1項に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項5】
(D)カンファーを含有し、該カンファーの含有量が、0.01~15ppbである、請求項1~4のいずれか1項に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項6】
前記酢酸含有飲食品中の酢酸の含有量に対する(A)酢酸メンチルの含有量の比率(酢酸メンチル(ppb)/酢酸(w/v%))が、0.00005~5300である、請求項1~5のいずれか1項に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項7】
前記酢酸含有飲食品中の酢酸の含有量に対する(B)ジヒドロアクチニジオリド)ジヒドロアクチニジオリドの含有量の比率(ジヒドロアクチニジオリド(ppb)/酢酸(w/v%))が、0.00005~5300である、請求項1~6のいずれか1項に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項8】
前記果汁が、りんご類、ベリー類、トロピカルフルーツ類、ブドウ類、モモ類、柑橘類、メロン類、梨類、サクランボ類から選ばれる1種又は2種以上の果実由来の果汁である、請求項1~7のいずれか1項に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項9】
(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分が、該成分を含む植物素材の抽出物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項10】
酢酸と果汁を含む原料に、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分を、下記の含有量で配合することを含む、酢酸含有飲食品の製造方法。
(A)酢酸メンチル:0.00001~1000ppb
(B)ジヒドロアクチニジオリド:0.00001~1000ppb
(C)シネオール:0.00001~70ppb
(D)カンファー:0.01~15ppb
【請求項11】
(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分が、該成分を含む植物素材の抽出物である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
酢酸と果汁を含む原料に、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分を、下記の含有量で配合することを含む、酢酸含有飲食品における果汁の香りと甘味を向上させる方法。
(A)酢酸メンチル:0.00001~1000ppb
(B)ジヒドロアクチニジオリド:0.00001~1000ppb
(C)シネオール:0.00001~70ppb
(D)カンファー:0.01~15ppb
【請求項13】
(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分が、該成分を含む植物素材の抽出物である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁の香りと甘味が向上した酢酸含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
果汁を含有する飲食品は、香料や香料代替成分、甘味成分を添加して、果汁の香りや甘味を向上させる検討がされてきた。例えば、特許文献1には、ハーブ抽出物としてミント抽出物及びルイボス抽出物の少なくとも一方を柑橘果汁とともに使用することによって、柑橘果実本来の果汁感が向上した柑橘果汁含有飲料が記載されている。特許文献2には、りんご果汁と、カモミール抽出物及びレモンマートル抽出物の少なくとも一方と、ハチミツとを含む容器詰果汁含有飲料が開示されており、当該飲料は、香料を含まなくても十分な果汁感を有し、特有の光劣化が抑制されることが報告されている。特許文献3には、果実成分及び甘味を有する基剤を含有する果汁含有飲料に、メントールなどの清涼感物質及び3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールなどの冷感剤物質を含有させることにより摂取時及び摂取後にくどい甘味を残さず、さっぱり感が持続的に与えられ、嗜好性が高い果汁含有飲料が報告されている。特許文献4には、ハーブエキス及びスクラロース、更に、有機酸メントールエステルを含有させることによって、ハーブの独特の臭味を抑えたハーブ含有飲料が提案されている。
【0003】
一方、酢酸は、調味成分として、またその静菌作用等を目的として飲食品に利用されている。また、近年では、健康志向の高まりと共に、内臓脂肪低減作用、血圧低下作用、食後の血糖値上昇抑制作用、疲労回復等の酢酸の健康上有用な作用を期待して、食酢を原料とする様々な飲食品やサプリメントなどを積極的に摂取するという意識が高まっている。なかでも、食酢飲料は、健康上有用な酢酸を簡便に摂取できる健康ドリンクであり、りんごやブルーブリー等の果汁を加えて飲みやすくした食酢飲料が開発されているが、食酢の酸味が強く、果汁の甘味や香りが十分に感じられず、嗜好性において必ずしも満足できないところがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-115303号公報
【特許文献2】特開2019-10072号公報
【特許文献3】特開2005-143461号公報
【特許文献4】特開2002-306142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、酸味が強い食酢が含有されていても、果汁の香りや甘味が十分に感じられる酢酸含有飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、酢酸含有飲食品において、果汁とともに、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分を配合することによって、まろやかな酸味とともに、果汁の香りや甘味が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)果汁と、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分とを含有する、酢酸含有飲食品。
(2)(A)酢酸メンチルを含有し、該酢酸メンチルの含有量が、0.00001~1000ppbである、(1)に記載の酢酸含有飲食品。
(3)(B)ジヒドロアクチニジオリドを含有し、該ジヒドロアクチニジオリドの含有量が、0.00001~1000ppbである、(1)又は(2)に記載の酢酸含有飲食品。
(4)(C)シネオールを含有し、該シネオールの含有量が、0.00001~70ppbである、(1)~(3)のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
(5)(D)カンファーを含有し、該カンファーの含有量が、0.01~15ppbである、(1)~(4)のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
(6)前記酢酸含有飲食品中の酢酸の含有量に対する(A)酢酸メンチルの含有量の比率(酢酸メンチル(ppb)/酢酸(w/v%))が、0.00005~5300である、(1)~(5)のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
(7)前記酢酸含有飲食品中の酢酸の含有量に対する(B)ジヒドロアクチニジオリドの含有量の比率(ジヒドロアクチニジオリド(ppb)/酢酸(w/v%))が、0.00005~5300である、(1)~(6)のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
(8)前記果汁が、りんご類、ベリー類、トロピカルフルーツ類、ブドウ類、モモ類、柑橘類、メロン類、梨類、サクランボ類から選ばれる1種又は2種以上の果実由来の果汁である、(1)~(7)のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
(9)(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分が、該成分を含む植物素材の抽出物である、(1)~(8)のいずれか1項に記載の酢酸含有飲食品。
(10)酢酸と果汁を含む原料に、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分を、下記の含有量で配合することを含む、酢酸含有飲食品の製造方法。
(A)酢酸メンチル:0.00001~1000ppb
(B)ジヒドロアクチニジオリド:0.00001~1000ppb
(C)シネオール:0.00001~70ppb
(D)カンファー:0.01~15ppb
(11)(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分が、該成分を含む植物素材の抽出物である、(10)に記載の製造方法。
(12)酢酸と果汁を含む原料に、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分を、下記の含有量で配合することを含む、酢酸含有飲食品における果汁の香りと甘味を向上させる方法。
(A)酢酸メンチル:0.00001~1000ppb
(B)ジヒドロアクチニジオリド:0.00001~1000ppb
(C)シネオール:0.00001~70ppb
(D)カンファー:0.01~15ppb
(13)(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分が、該成分を含む植物素材の抽出物である、(12)に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸味が強い食酢が含有されていても、果汁の香りや甘味が十分に感じられる酢酸含有飲食品が提供される。本発明の酢酸含有飲食品は、酸味の強い酢酸を含有していても、鋭い酸味がなく、まろやかな酸味で、また、果実本来の香りと甘味を有するため、酸味と甘味と風味のバランスが良く、嗜好性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の酢酸含有飲食品は、果汁と、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分を含有する。成分(A)~(D)は、1種でもよいが、2種以上の場合は、(B)と(C)、(B)と(D)、(A)と(B)と(C)、又は(B)と(C)と(D)が好ましい。
【0010】
本発明において、「果汁の香り」とは、果実本来がもつ香り及び果実本来がもつ甘い香りを意味し、具体的には、飲食品を口に含んだ直後の果汁のトップノート、果汁らしい芳醇で甘い香りをいう。また、「果汁の甘味」とは、果汁含量の高い飲料(高果汁飲料)のような濃厚でコクのある味及び果実本来が持つ自然な甘さを意味し、具体的には、無果汁又は果汁含量の低い果汁由来に比べて味に厚みがあり、舌に残らない自然な甘味をいう。
【0011】
本発明の酢酸含有飲食品中の各成分の濃度は、その成分の配合量が明らかである場合(例えば、酢酸含有飲食品が精製された各成分を混合することにより得られたものである場合等)はその配合量及び酢酸含有飲食品の容量から算出することができ、その成分の配合量が不明である場合は、後述の参考例に記載の方法に従って又は準じて算出することができる。なお、本明細書中の「ppb」は、質量濃度(w/w)を意味する。
【0012】
(果汁)
本発明において「果汁」とは、果実の搾汁液又は抽出等によって得られる果実の液部をいい、果実を裏ごし又はすりおろし処理したピューレ、おろしであってもよい。本発明の液状調味料に使用する果汁としては、例えば、りんご類、ベリー類(ストロベリー、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、クランベリー、カシス等)、柑橘類(レモン、ゆず、すだち、ライム、みかん、オレンジ、グレープフルーツ、ハッサク、カラマンシー、カボス、ダイダイ等)、トロピカルフルーツ類(キウイ、パイナップル、マンゴー、マンゴスチン、アセロラ、アボカド、ドラゴンフルーツ、パッションフルーツ、バナナ、パパイア、グアバ、ライチ、ココナッツ、ナツメヤシ等)、ブドウ類(マスカット等)、モモ類(桃、杏子(アプリコット)等)、メロン類(メロン、スイカ等)、梨類(梨、西洋梨等)、サクランボ類(桜桃、スイートチェリー等)、ザクロ、ウメ等の果実に由来する果汁が挙げられる。これらの果汁は、一種又は二種以上を用いることができる。また、上記果汁は、凍結、濃縮、還元等の加工を行った後に用いることもできる。
【0013】
本発明の酢酸含有飲食品中の果汁含有率(ストレート果汁換算)は、特に制限されるものではないが、本発明の酢酸含有飲食品の果汁の香りと甘味を十分に得られる効果の観点、調製の容易さ、果汁添加の利点(爽やかな香りの付加等)を得るという観点から、例えば0.1質量%以上700質量%以下、0.2質量%以上80質量%以下、0.5質量%以上30質量%以下である。該含有量の上限又は下限は、上記範囲からさらに低い値又は高い値であることができ、これらの値は、例えば1質量%、2質量%、3質量%、5質量%、10質量%、30質量%、50質量%、100質量%、200質量%、300質量%、400質量%、500質量%、600質量%である。なお、果汁含有率(ストレート果汁換算)とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100%としたときの質量%濃度をいい、例えば酢酸含有飲食品が飲料である場合、飲料に配合される果汁の含有率(質量%)に、果汁の濃縮倍率を乗じて算出することができる。例えば、濃縮倍率が5倍であるリンゴ果汁を飲料に10質量%で配合した場合には、果汁含有率(ストレート換算)は50質量%となる。また、各果汁の濃縮倍率は、例えば、JAS規格(果実飲料の日本農林規格 平成25年12月24日農林水産省告示第3118号)に示される各種果実のストレート果汁の糖用屈折計示度の基準又は酸度の基準に基づいて、換算することができる。
【0014】
((A)酢酸メンチル)
酢酸メンチル(系統名:2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノールアセタート
、英文表記:Menthyl acetate)は、環式モノテルペンであり、分子式C12H22O2(分子量:198.306)を有し、CAS登録番号は16409-45-3である。
【0015】
本発明の酢酸含有飲食品が酢酸メンチルを含有する場合、酢酸メンチルの由来は、飲食品に適する由来である限り特に限定されず、例えば、添加されるフレーバー等の製剤由来(本発明の酢酸含有飲食品の酢酸メンチルが該製剤に含まれる酢酸メンチル)であることもできるし、飲食品に配合される調味料、食品原料等の由来(本発明の酢酸含有飲食品の酢酸メンチルが調味料、食品原料等に含まれる酢酸メンチル)であることもできる。酢酸メンチルが、食品原料等の由来の場合、酢酸メンチルを含む植物素材の抽出物が好ましい。ここで、酢酸メンチルを含む植物素材としては、例えば、ペパーミントなどが挙げられる。酢酸メンチルの抽出物は、上記の酢酸メンチルを含有する植物素材を溶媒に添加し、静置した後、ろ過を行うことによって調製できる。あるいは、上記の酢酸メンチルを含有する植物素材を添加した溶媒を特定の温度に加熱した後静置する、又は、攪拌しながら一定温度で保持することによっても調製できる。ここで、抽出に用いる溶媒としては、水、エタノール、または水-エタノールの混合溶媒が挙げられる。抽出溶媒のpHは、酸性から中性、具体的には、3~7が好ましい。溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えば上記酢酸メンチルを含む植物素材(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であればよいが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。酢酸メンチルの抽出物は、そのまま本発明の酢酸含有飲食品に用いることができるが、必要に応じて濃縮処理、熱風乾燥、蒸気乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理、分離精製処理、脱色処理等に供して、濃縮物や乾燥物等にしたものを用いてもよい。
【0016】
本発明の酢酸含有飲食品が酢酸メンチルを含有する場合、酢酸メンチルの含有量は、果汁らしい香りと甘味が十分に得られる効果の観点等から、0.00001~1000ppbが好ましく、0.00001~1.0ppbがより好ましく、0.00001~0.2ppbがさらに好ましい。
【0017】
本発明の酢酸含有飲食品が酢酸メンチルを含有する場合、酢酸含有飲食品中の酢酸の含有量に対する(A)酢酸メンチルの含有量の比率(酢酸メンチル(ppb)/酢酸(w/v%)は、0.00005~5300が好ましく、0.00005~5.0がより好ましく、0.00005~1.0がさらに好ましい。
【0018】
((B)ジヒドロアクチニジオリド)
ジヒドロアクチニジオリド(系統名:(R)-5,6,7,7a-テトラヒドロ-4,4,7a-トリメチルベンゾフラン-2(4H)-オン、英文表記:Dihydroactinidiolide)は、環式モノテルペンであり、分子式C11H16O2(分子量:180.247)を有し、CAS登録番号は17092-92-1である。
【0019】
本発明の酢酸含有飲食品がジヒドロアクチニジオリドを含有する場合、ジヒドロアクチニジオリドの含有量は、果汁らしい香りと甘味が十分に得られる効果の観点等から、0.00001~1000ppbが好ましく、0.00001~1.0ppbがより好ましく、0.00001~0.5ppbがさらに好ましい。
【0020】
本発明の酢酸含有飲食品がジヒドロアクチニジオリドを含有する場合、酢酸含有飲食品中の酢酸の含有量に対する(B)ジヒドロアクチニジオリドの含有量の比率(ジヒドロアクチニジオリド(ppb)/酢酸(w/v%))は、0.00005~5300が好ましく、0.00005~100がより好ましく、0.00005~10がさらに好ましく、0.00005~2が特に好ましい。
【0021】
本発明の酢酸含有飲食品がジヒドロアクチニジオリドを含有する場合、ジヒドロアクチニジオリドの由来は、飲食品に適する由来である限り特に限定されず、例えば、添加されるフレーバー等の製剤由来(本発明の酢酸含有飲食品のジヒドロアクチニジオリドが該製剤に含まれるジヒドロアクチニジオリド)であることもできるし、飲食品に配合される調味料、食品原料等の由来(本発明の酢酸含有飲食品のジヒドロアクチニジオリドが調味料、食品原料等に含まれるジヒドロアクチニジオリド)であることもできる。ジヒドロアクチニジオリドが、食品原料等の由来の場合、ジヒドロアクチニジオリドを含む植物素材の抽出物が好ましい。ここで、ジヒドロアクチニジオリドを含む植物素材としては、例えば、ペパーミント、フェヌグリーク、カモミール、クミン、アップルミント、タイムなどが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ジヒドロアクチニジオリドの抽出物の調製は、前記の酢酸メンチルと同様の方法及び条件にて行えばよい。
【0022】
((C)シネオール)
シネオール(系統名:1,3,3-トリメチル-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン、英文表記:1,8-Cineole)は、モノテルペン環状エーテルであり、分子式C10H18O(分子量:154.25)を有し、CAS登録番号は470-82-6である。本発明において、シネオールは、1,8-シネオールを指すが、単にシネオールと記載する。
【0023】
本発明の酢酸含有飲食品がシネオールを含有する場合、シネオールの含有量は、果汁らしい香りと甘味が十分に得られる効果の観点等から、0.00001~70ppbが好ましく、0.1~70ppbがより好ましく、1.0~70ppbがさらに好ましい。
【0024】
本発明の酢酸含有飲食品がシネオールを含有する場合、シネオールの由来は、飲食品に適する由来である限り特に限定されず、例えば、添加されるフレーバー等の製剤由来(本発明の酢酸含有飲食品のシネオールが該製剤に含まれるシネオール)であることもできるし、飲食品に配合される調味料、食品原料等の由来(本発明の酢酸含有飲食品のシネオールが調味料、食品原料等に含まれるシネオール)であることもできる。シネオールが、食品原料等の由来の場合、シネオールを含む植物素材の抽出物が好ましい。ここで、シネオールを含む植物素材としては、例えば、ペパーミント、フェヌグリーク、カモミール、クミン、アップルミント、ローレル、シナモン、ローズマリー、タイム、ナツメグなどが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シネオールの抽出物の調製は、前記の酢酸メンチルと同様の方法及び条件にて行えばよい。
【0025】
((D)カンファー)
カンファー(系統名:1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、英文表記:Camphor)は、モノテルペンケトンであり、分子式C10H16O(分子量:152.23)を有し、CAS登録番号は76-22-2である。
【0026】
本発明の酢酸含有飲食品がカンファーを含有する場合、カンファーの含有量は、果汁らしい香りと甘味が十分に得られる効果の観点等から、0.01~15ppbが好ましく、0.01~10ppbがより好ましく、0.02~10ppbがさらに好ましい。
【0027】
本発明の酢酸含有飲食品がカンファーを含有する場合、カンファーの由来は、飲食品に適する由来である限り特に限定されず、例えば、添加されるフレーバー等の製剤由来(本発明の酢酸含有飲食品のカンファーが該製剤に含まれるカンファー)であることもできるし、飲食品に配合される調味料、食品原料等の由来(本発明の酢酸含有飲食品のカンファーが調味料、食品原料等に含まれるカンファー)であることもできる。カンファーが、食品原料等の由来の場合、カンファーを含む植物素材の抽出物が好ましい。ここで、カンファーを含む植物素材としては、例えば、カモミール、アップルミント、コリアンダーなどが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。カンファーの抽出物の調製は、前記の酢酸メンチルと同様の方法及び条件にて行えばよい。
【0028】
(酢酸)
本発明において、酢酸とは、酢酸分子(CH3COOH)と酢酸イオン(CH3COO-)をいい、酢酸の含有量とは、これらを合計した濃度をいう。本発明の酢酸含有飲食品中の酢酸の含有量は特に制限はないが、酢酸の存在下で本発明の作用効果を奏するために0.02w/v%以上であればよく、好ましくは0.02~15w/v%、より好ましくは0.02~10w/v%、さらに好ましくは0.02~8w/v%、さらにより好ましくは0.02~7w/v%、とりわけ好ましくは0.04~6w/v%、特に好ましくは0.05~5w/v%である。なお、本発明の酢酸含有飲食品における酢酸の由来は、飲食品に適する由来である限り特に限定されず、例えば、食品添加物由来(本発明の酢酸含有飲食品の酢酸が該食品添加物に含まれる酢酸)であることもできるし、飲食品に配合される調味料、食品原料等の由来(本発明の酢酸含有飲食品の酢酸が調味料、食品原料等に含まれる酢酸)であることもできる。
【0029】
(酢酸含有飲食品)
本発明の酢酸含有飲食品は、前記の果汁を含有し、かつ酢酸を含有する飲食品であれば特に限定はされない。酢酸を含有する飲食品としては、具体的には、食酢又は食酢を原料に用いて製造される飲食品が挙げられる。
【0030】
上記食酢には、米や麦などの穀物や果汁を主原料として生産される醸造酢と、氷酢酸や酢酸の希釈液に砂糖等の調味料を加えるか、又はそれに醸造酢を加えた合成酢があり、本発明においてはいずれも使用できる。醸造酢としては、例えば、穀物酢(米酢、玄米酢、黒酢、粕酢、麦芽酢、はと麦酢、大豆酢等)、果実酢(リンゴ酢、ブドウ酢、白ブドウ酢、柑橘(レモン、柚子、カボス、オレンジ、ミカン、シークワーサー、グレープフルーツ等)酢、マンゴー酢、イチゴ酢、ブルーベリー酢、ザクロ酢、モモ酢、ウメ酢、パイナップル酢、カシス酢、ラズベリー酢、ワイン酢、バルサミコ酢等)、エタノールを原料とした酢酸発酵によって製造される酒精酢、中国酢、シェリー酢などが挙げられ、また、合成酢としては、氷酢酸又は酢酸を水で適宜希釈したものなどが挙げられる。これらの食酢は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0031】
食酢を原料に用いて製造される飲食品のうち、飲料としては、食酢飲料(穀物酢飲料、果実酢飲料、果汁配合食酢飲料等)、食酢を配合した各種飲料[乳製品含有飲料(例えば乳及びその加工品である脱脂粉乳や全脂粉乳、濃縮乳、ヨーグルト、生クリーム、練乳、バター、脱脂乳、クリームパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー等の乳成分を含む飲料)、野菜飲料(例えばトマト、ニンジン、かぼちゃ等のジュース、スムージー、青汁等)、清涼飲料水(例えばスポーツドリンク、レモネード等のエード、果実風味ドリンク)、炭酸飲料、ゼリー飲料、穀物飲料(例えば米、豆乳、アーモンドを主原料とする穀物飲料類等)、茶系飲料(例えば紅茶、ウーロン茶、緑茶、黒茶、抹茶、ジャスミン茶、ローズヒップ茶、カモミール茶、ほうじ茶等)、コーヒー飲料、酒(例えばビール、発泡酒等のビールテイスト飲料、果実酒、日本酒等の醸造酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ等の蒸留酒、蒸留酒に糖類等の副原料を混合するリキュール等の混成酒、さらにこれら酒類に果汁やフレーバー、炭酸ガス等を加えたカクテル、フィズ、チューハイ等)]等が挙げられる。上記のなかでも、果汁配合食酢飲料が好ましく、配合される果汁としては、前記のりんご類、ベリー類、トロピカルフルーツ類、ブドウ類、モモ類、柑橘類、メロン類、梨類、サクランボ類から選ばれる1種又は2種以上の果実由来の果汁が用いられる。なかでも、リンゴ、ブルーベリー、ラズベリー、ライチ、マンゴー、ブドウ、モモ、ウメ、ザクロの果汁が好ましい。飲料の形態は、濃縮タイプであっても良く、適当な飲料で希釈してから、飲用に供される。推奨される希釈倍率は、例えば1.1~50倍、好ましくは2~20倍、より好ましくは3~12倍、さらに好ましくは4~8倍である。
【0032】
また、本発明の酢酸含有飲食品として、飲料以外では、デザート用ソース類(ストロベリーソース、ブルーベリーソース、アップルソース、ラズベリーソース、ザクロソース等のフルーツソース、キャラメルソース、カスタードソース、チョコレートソース)、ジャム類(イチゴジャム、リンゴジャム、ブドウジャム、イチジクジャム、ブルーベリージャム、ラズベリージャム、ブラックベリージャム、マンゴージャム等)、スプレッド類(クリーム、チーズスプレッド、マーガリン、ファットスプレッド等)、菓子類(ゼリー、プディング、ババロア、ムース等)、冷菓(アイスクリーム、シャーベット、スムージー等)、調味酢(ポン酢、ポン酢醤油、甘酢、酢の物用調味酢、すし飯用調味酢、酢漬け(例えばピクルス等)用調味液等)、マヨネーズ、チャツネ、マスタード、ドレッシング類(ノンオイルドレッシング、分離ドレッシング、乳化ドレッシング等)、たれ類(ゴマだれ等のゴマ含有調味料、焼肉だれ等)、調理用ソース類(ウスターソース、ケチャップ、オイスターソース、サルサソース、サンバルソース、チリソース等)、つゆ類(めんつゆ、鍋つゆ等)、たれ類(焼肉のたれ、ゴマだれ等のゴマ含有調味料等)、各種メニュー用調味料(米飯用調味料、中華用調味料、煮物用調味料、納豆用調味料等)、発酵飲食品(漬け物、キムチ、ヨーグルト、乳酸菌飲料、発酵乳飲料等)、食酢配合調理食品(寿司、酢の物、サラダ、酢豚、酢漬け等)等が挙げられる。
【0033】
本発明の対象となる酢酸含有飲食品としては、上記のような一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は健康増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などを表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品、ならびに科学的根拠に基づいた機能性について消費者庁長官に届け出た内容を表示できる機能性表示食品が含まれる。また特別用途食品には、特定の対象者や特定の疾患を有する患者に適する旨を表示する病者用食品、高齢者用食品、乳児用食品、妊産婦用食品等が含まれる。ここで、飲食品に付される特定の保健の効果や栄養成分の機能等の表示は、製品の容器、包装、説明書、添付文書などの表示物、製品のチラシやパンフレット、新聞や雑誌等の製品の広告などにすることができる。
【0034】
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
【0035】
本発明の酢酸含有飲食品は、飲食品の種類に応じて、他の原料を含有することができる。他の原料としては、水、糖類(砂糖、麦芽糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、黒糖、はちみつ、水あめ、デキストリン、ラクトース、ガラクトースや、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類等)、フレーバー(エステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、フラン類、炭化水素類、含窒素化合物類、含硫化合物類等)、食塩、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、酸味料、風味原料、旨味調味料、酒類、油脂類、香辛料、香辛料抽出物、香味オイル、粘度調整剤、安定剤、着色料、カルシウム塩、具材等が挙げられる。これら他の原料の組み合わせ及び含有量は、特に限定はされず、飲食品の種類に応じて適宜設定することができる。
【0036】
(酢酸含有飲食品の製造方法)
本発明によればまた、酢酸と果汁を含む原料に、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分を、所定の含有量で配合することを含む、酢酸含有飲食品の製造方法、及び、酢酸含有飲食品における果汁の香りと甘味を向上させる方法が提供される。
【0037】
酢酸と果汁を含む原料に、(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、及び(D)カンファーから選ばれる1種又は2種以上の成分を配合するタイミングは、特に限定されない。該タイミングとしては、例えば飲食品の製造時、飲食品の製造後、喫食前等が挙げられる。酢酸及び(A)~(D)の成分の由来は飲食品に適する由来である限り特に限定されず、これらの成分は、例えばフレーバー等の製剤、食品添加物、調味料、食品原料等に由来するものである。酢酸と果汁を含む原料に、(A)~(D)の成分を配合した後は、必要に応じて、成分が飲食品中にできるだけ均一に分散されるように、混合することが好ましい。
【実施例0038】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(参考例)
以下の試験例において、サンプル中の酢酸の含有量、香気成分(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、(D)カンファーの含有量の測定は、以下の通り行った。
【0040】
(1)酢酸の含有量の定量方法
サンプルは、酢酸の濃度が100mg%付近になるように超純水で希釈し、以下の条件に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、酢酸のピーク面積を分析した。また、超純水で希釈した100mg%の酢酸を、標準サンプルとして同様に分析し、外部標準法により各サンプルの酢酸の含有量を算出した。
・測定機器:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、機種LC-10ADVP)
・移動相(1)4mMp-トルエンスルホン酸水溶液、流速0.9mL/min
・移動相(2)4mMp-トルエンスルホン酸、80μMEDTAを含む16mMBis-Tris水溶液、流速0.9mL/min
・カラム:Shodex KC810P+KC-811×2(昭和電工社製)
・カラム温度:50℃
・検出:電気伝導度検出器CDD―10AVP(島津製作所社製)
【0041】
(2)香気成分(A)酢酸メンチル、(B)ジヒドロアクチニジオリド、(C)シネオール、(D)カンファーの含有量の定量方法
各成分の分析定量は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC/MS)を用いて行った。
【0042】
まず、サンプルを、以下の条件下で固相マイクロ抽出法(SPME)に供することにより、サンプル中の香気成分を分離濃縮した。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー:StableFlex 50/30μm、DVB/Carboxen/PDMS(SUPELCO社製)
・揮発性成分抽出装置:PAL3 RSI120(CTC Analytics社製)
・予備加熱:40℃15分間
・揮発性成分抽出:80℃、20分間
・吸着:10分間
・脱着時間:10分間
【0043】
次に、固相マイクロ抽出法により分離濃縮されたサンプルの各香気成分について、ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従ってガスクロマトグラフ分析を行った。
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent 7890B GC System(Agilent Technologies社製)
・GCカラム:DB-WAX(Agilent Technologies社製)、長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm
・キャリア:Heガス、ガス流量1.0mL/分間
・温度条件:40℃で3分間保持→250℃まで10℃/分ずつ昇温→250℃で10分間保持
【0044】
<質量分析条件>
・測定機器:Agilent 7000C GC/MS Triple Quad(Agilent Technologies社製)
・イオン化方式:EI(イオン化電圧70eV)
【0045】
下記に示す各成分の確認イオン(m/z)に基づいて各香気成分のピークを特定し、ピーク面積を求めた。得られた各香気成分のピーク面積から、各サンプルに含まれる各香気成分の濃度を算出した。
(A)酢酸メンチル:m/z=138
(B)ジヒドロアクチニジオリド:m/z=180
(C)シネオール:m/z=154
(D)カンファー:m/z=152
【0046】
[実施例1]香気成分含有量と酢酸含有量の関係
(試験例1)(A)酢酸メンチルと(B)ジヒドロアクチニジオリドの含有量の影響/酢酸含有量一定
(1)試験品の調製
(A)酢酸メンチル(2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノールアセタート、CAS登録番号:16409-45-3)又は(B)ジヒドロアクチニジオリド(系統名;(R)-5,6,7,7a-テトラヒドロ-4,4,7a-トリメチルベンゾフラン-2(4H)-オン、CAS登録番号:17092-92-1)をそれぞれ1質量%となるようにエタノールに添加し、十分に攪拌して(A)酢酸メンチル又は(B)ジヒドロアクチニジオリドのエタノール溶液を調製した。
【0047】
りんご果汁(青森県りんごジュース株式会社製、王林果汁;以下の試験例において用いる「りんご果汁」は本製品と同じ)20質量%、砂糖4.2質量%、玄米酢(酸度6.1%)3.3質量%に対し、(A)酢酸メンチル又は(B)ジヒドロアクチニジオリドを表1に記載の含有量となるように前記エタノール溶液を加え、全体を100質量%となるように水を加えて混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品1~9を調製した。また、上記りんご果汁、砂糖、玄米酢を水に混合した液((A)又は(B)のエタノール溶液の添加なし)をコントロールとした。
【0048】
調製した試験品における成分(A)、(B)の含有量を参考例に従って測定した。
【0049】
(2)官能評価試験
(1)で調製した試験品について、下記分析型官能評価専門パネラー6名により、「果汁の甘味」、「果汁の厚み」、「果汁の香り」、「果汁の甘い香り」の4項目を評価した。
【0050】
(分析型官能評価専門パネラー)
分析型官能評価専門パネラーは、味や香りに関する判定能力が、下記の識別試験(I)及び識別試験(II)により担保された専門パネラーである。
識別試験(I):味質識別試験
五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨味:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
識別試験(II):
濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
【0051】
(評価方法)
官能評価は、(i)サンプルの提示、(ii)官能評価項目のすり合わせ、(iii)試し評価・キャリブレーション、(iv)本評価の順に行った。
(i)サンプルの提示
官能評価におけるパネラーのバイアス(偏り)を排除し、評価の精度を高めるために、サンプル提供を次の通りに設定した。100mL用ペットボトルに充填密閉したサンプルを常温(25℃)にした。評価に関しては、評価毎に上記容器から20mLプラスチックカップに計量スプーンで小さじ1杯(約5mL)程度移し、各パネラーに提示した。その際、サンプルの試験区番号や内容物の情報はパネラーに知らせず、各試験区のサンプルをランダムに提示した。
【0052】
(ii)官能評価項目のすり合わせ
評価を実施するにあたり、パネラー全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネラーが共通認識を持つようにした。総合評価についても、官能評価の結果をもとに基準化できるように、パネラー全体で事前に協議した上で設定した。
【0053】
(iii)試し評価・キャリブレーション
いくつかの果汁含有量の異なるサンプルを用いて、各評価項目について評価基準の訓練を行った。訓練に際しては、パネラー自身の評価結果を伝えることで、繰り返し評価における再現性を確認させた。
【0054】
(iv)本評価
上記の訓練により各パネラーの評価基準の妥当性を担保した後、試験品及びコントロールを用いて官能評価を行った。評価は具体的には次のようにして行った。サンプルを100mLペットボトルに充填密閉し、上記容器から20mLプラスチックカップに評価毎に計量スプーンで小さじ1杯(約5mL)程度移し、直後にカップに直接鼻を近づけて臭いをかいで果汁の香り及び果汁の甘い香りを評価し、また、計量スプーンで小さじ1杯(約5mL)分程度液を口に含み、果汁の厚み及び果汁の甘味を評価した。鼻腔から香りが消えたら次のサンプルの評価を行った。また、サンプルを口に含んだ後は、蒸留水を口に含み、口内における風味を十分に消した後、次のサンプルの評価を行った。
【0055】
(評価基準)
官能評価は、上記の分析型官能評価専門パネラー6名にて、下記の評価基準により行った。評価項目毎の評価点の算出は、6名の評価を加重平均し、小数点2位以下を四捨五入した。総合評価は、各評価項目の評価点を加重平均し、平均値が5点評価の中間点である3点を合格点(効果あり)とし、3点以上4点未満を良好な効果があるものとし、4点以上4.5点未満がより良好な効果があるものとし、4.5点以上を最も良好な効果があるものとした。また、各評価項目の評価点で1項目でも評価点が3点未満となったものは不合格とした。
【0056】
<果汁の香り:果実本来がもつ香り>
5:コントロールと比較して果汁の香りをトップノートから強く感じる。
4:コントロールと比較して果汁の香りをトップノートからやや強く感じる。
3:コントロールと比較して同程度果汁の香りをトップノートから感じる。
2:コントロールと比較して果汁の香りのトップノートがやや弱い。
1:コントロールと比較して果汁の香りのトップノートが弱い。
【0057】
<果汁の甘い香り:果実本来がもつ甘い香り>
5:コントロールと比較して果汁の甘い香りを強く感じる。
4:コントロールと比較して果汁の甘い香りをやや強く感じる。
3:コントロールと比較して同程度果汁の甘い香りを感じる。
2:コントロールと比較して果汁の甘い香りをやや弱く感じる。
1:コントロールと比較して果汁の甘い香りを弱く感じる。
【0058】
<果汁の厚み:高果汁飲料のような濃厚な味>
5:コントロールと比較して果汁由来の厚みを強く感じる。
4:コントロールと比較して果汁由来の厚みをやや強く感じる。
3:コントロールと比較して同程度果汁由来の厚みを感じる。
2:コントロールと比較して果汁由来の厚みをやや弱く感じる。
1:コントロールと比較して果汁由来の厚みを弱く感じる。
【0059】
<果汁の甘味:果実本来が持つ自然な甘さ>
5:コントロールと比較して果汁由来の甘味を強く感じる。
4:コントロールと比較して果汁由来の甘味をやや強く感じる。
3:コントロールと比較して同程度果汁由来の甘味を感じる。
2:コントロールと比較して果汁由来の甘味をやや弱く感じる。
1:コントロールと比較して果汁由来の甘味を弱く感じる。
【0060】
各試験品中の成分(A)、(B)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、
(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
表1に示されるように、(A)酢酸メンチル又は(B)ジヒドロアクチニジオリドをそれぞれ0.00001~1000ppbの範囲で含有し、また、酢酸の含有量に対する酢酸メンチルの含有量の比率(酢酸メンチル(ppb)/酢酸(w/v%))、酢酸の含有量に対するジヒドロアクチニジオリドの含有量の比率(ジヒドロアクチニジオリド(ppb)/酢酸(w/v%))をそれぞれ0.00005~5300の範囲にすることにより、果汁の香り、果汁の甘い香り、果汁の厚み、果汁の甘味を向上させる効果が認められた(試験品1~9)。
【0063】
(試験例2)酢酸含有量の影響/香気成分含有量一定
50℃に調整した水97質量%にペパーミント(CSペパーミントp66、S&B社製)3質量%を添加し、50℃で5分間保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、抽出液a(ペパーミント抽出液)を得た。
【0064】
表2に示す配合割合(質量%)で、抽出液a、りんご果汁、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品10~13を調製した。また、抽出液を添加していないものをコントロールとした(以降の各試験例において同じ)。
【0065】
調製した試験品における成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0066】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
表2に示されるように、ペパーミント抽出液を添加することによって、(A)酢酸メンチル及びジヒドロアクチニジオリドを一定量含有し、酢酸含有量が0.05~1.00(w/v%)の範囲である試験品において、果汁の香り、果汁の甘い香り、果汁の厚み、果汁の甘味を向上させる効果が認められた(試験品10~13)。
【0069】
[実施例2]ハーブの種類の検討
(試験例3-1)
50℃に調整した水97質量%にペパーミント(CSペパーミントp66、S&B社製)3質量%を添加し、50℃で5分間保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、抽出液a(ペパーミント抽出液)を得た。
【0070】
表3-1に示す配合割合(質量%)で、抽出液a、りんご果汁、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品14~19を調製した。
【0071】
調製した試験品における成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0072】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表3-1に示す。
【0073】
【0074】
(試験例3-2)
50℃に調製した水97質量%にフェヌグリーク(S&B社製)3質量%を添加し、50℃で5分間保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、抽出液b(フェヌグリーク抽出液)を得た。
【0075】
表3-2に示す配合割合(質量%)で、抽出液b、りんご果汁、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品20~24を調製した。
【0076】
調製した試験品における成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0077】
各試験品中の成分(A)~(D)成分の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表3-2に示す。
【0078】
【0079】
(試験例3-3)
50℃に調製した水97質量%にカモミール(日本緑茶センター(株)社製)3質量%を添加し、50℃で5分間保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、抽出液c(カモミール抽出液)を得た。
【0080】
表3-3に示す配合割合(質量%)で、抽出液c、りんご果汁、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品25~29を調製した。
【0081】
調製した試験品中の成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0082】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表3-3に示す。
【0083】
【0084】
(試験例3-4)
50℃に調製した水97質量%にクミン((株)富沢商店社製)3質量%を添加し、50℃で5分間保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、抽出液d(クミン抽出液)を得た。
【0085】
表3-4に示す配合割合(質量%)で、抽出液d、りんご果汁、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品30~34を調製した。
【0086】
調製した試験品中の成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0087】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表3-4に示す。
【0088】
【0089】
(試験例3-5)
50℃に調製した水97質量%にアップルミント(マルサン萩間茶(株)社製)、ローレル(ヱスビー食品(株)社製)、シナモン(ヱスビー食品(株)社製)、ローズマリー(株式会社コネクト社製)、ルイボス((株)菱和園社製)をそれぞれ3質量%添加し、50℃で5分間保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、抽出液e(アップルミント抽出液)、抽出液f(ローレル抽出液)、抽出液g(シナモン抽出液)、抽出液h(ローズマリー抽出液)、抽出液i(ルイボス抽出液)を得た。
【0090】
表3-5に示す配合割合(質量%)で、抽出液e~i、りんご果汁、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品35~39を調製した。
【0091】
調製した試験品中の成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0092】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表3-5に示す。
【0093】
【0094】
表3-1~3-5に示されるように、ルイボス抽出液(試験品39)以外は、いずれも各ハーブ抽出液の添加により、果汁の香り、果汁の甘い香り、果汁の厚み、果汁の甘味を向上させる効果が認められた(試験品14~38)。
【0095】
[実施例3]ハーブの種類、果汁の種類の検討
(試験例4-1)
50℃に調製した水97質量%にタイム(ヱスビー食品(株)社製)、ナツメグ((株)富沢商店社製)、コリアンダー(ヱスビー食品(株)社製)をそれぞれ3質量%を添加し、50℃で5分間保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、抽出液j(タイム抽出液)、抽出液k(ナツメグ抽出液)、抽出液l(コリアンダー抽出液)を得た。
【0096】
表4-1に示す配合割合(質量%)で、抽出液a~e、j~l、ブルーベリー果汁(マルカイコーポレーション(株)社製)又はラズベリーピューレ((株)カーギルジャパン社製)、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品40~47を調製した。
【0097】
調製した試験品中の成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0098】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表4-1に示す。
【0099】
【0100】
(試験例4-2)
表4-2に示す配合割合(質量%)で、抽出液a(ペパーミント抽出液)、果汁(ブルーベリー果汁(マルカイコーポレーション(株)製)、ライチ5倍濃縮果汁(株式会社カーギルジャパン社製)、マンゴー4.5倍濃縮果汁(高砂香料工業(株)製))、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品48~50を調製した。
【0101】
調製した試験品中の成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0102】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表4-2に示す。
【0103】
【0104】
表4-1、4-2に示されるように、ハーブ抽出液の種類、果汁の種類、及びそれらの組み合わせを変更しても、ハーブ抽出液の添加により、果汁の香り、果汁の甘い香り、果汁の厚み、果汁の甘味を向上させる効果が認められた(試験品40~50)。また、これらのハーブ抽出液を添加した試験品では成分(A)~(D)の1種又は2種以上が所定量含有されることが確認できた。
【0105】
[実施例4]抽出条件の検討
(試験例5)温度及び時間
表5に記載の温度に調整した水97質量%にペパーミント(CSペパーミントp66、S&B社製)3質量%を添加し、表5に記載のそれぞれの温度、時間で保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、各抽出条件の抽出液を得た。
【0106】
表5に示す配合割合(質量%)で、各抽出条件の抽出液、りんご果汁、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品51~58を調製した。
【0107】
調製した試験品中の成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0108】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表5に示す。
【0109】
【0110】
表5に示されるように、ハーブの抽出温度が5~100℃、抽出時間が5~240分の範囲で、いずれも果汁の香り、果汁の甘い香り、果汁の厚み、果汁の甘味を向上させる効果が優れていた(試験品51~58)。
【0111】
(試験例6)抽出溶媒のpH
50℃にそれぞれ調整した抽出溶媒[水97質量%(pH6.5)、水92質量%と黒酢(酸度6%)5質量%の混合液(pH4.1)、水87質量%と黒酢(酸度6%)10質量%の混合液(pH3.6)、水47質量%と黒酢(酸度6%)50質量%の混合液(pH3.4)、又は水酸化ナトリウム(関東化学株式会社、食品添加物)0.1ml/L水溶液97質量%(pH12.3)]に、ペパーミント(CSペパーミントp66、S&B社製)3質量%を添加し、50℃で5分間保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、各抽出条件の抽出液を得た。
【0112】
表6に示す配合割合(質量%)で、各抽出条件の抽出液、りんご果汁、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品59~63を調製した。
【0113】
調製した試験品中の成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0114】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表6に示す。
【0115】
【0116】
表6に示されるように、ハーブの抽出に用いる溶媒のpHが酸性から中性の場合(試験品59~62)に、アルカリ性の場合(試験品63)に比べて、果汁の香り、果汁の甘い香り、果汁の厚み、果汁の甘味を向上させる効果が優れていた。
【0117】
(試験例7)抽出溶媒のアルコール濃度
50℃にそれぞれ調整した抽出溶媒[水97質量%(100%水)、水76質量%と95%エチルアルコール21質量%の混合液(20%アルコール)、水44質量%と95%エチルアルコール53質量%の混合液(50%アルコール)、水13質量%と95%エチルアルコール84質量%の混合液(80%アルコール)]に、ペパーミント(CSペパーミントp66、S&B社製)3質量%を添加し、50℃で5分間保持し、次に水浴により室温(25℃)まで冷却した後、ろ紙(No.2、ADVANTEC社製)を用いて濾過し、各抽出条件の抽出液を得た。
【0118】
表7に示す配合割合(質量%)で、各抽出条件の抽出液、りんご果汁、砂糖、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品64~67を調製した。
【0119】
調製した試験品中の成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0120】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表7に示す。
【0121】
【0122】
表7に示されるように、ハーブの抽出に用いる溶媒は、水単独のほうが(試験品64)、水とアルコールの混合液(試験品65~67)よりも、果汁の香り、果汁の甘い香り、果汁の厚み、果汁の甘味を向上させる効果が優れていた。
【0123】
[実施例5]高甘味度甘味料との比較
(試験例8)
表8に示す配合割合(質量%)で、抽出液a、りんご果汁、砂糖、スクラロース(三栄源エフエフアイ社製 砂糖に対する甘味度約600倍)、玄米酢(酸度6.1%)、及び水を混合し、100mL容量のペットボトルに充填し、試験品68~70を調製した。
【0124】
調製した試験品中の成分(A)~(D)の含有量を参考例に従って測定し、官能評価を試験例1と同様にして行った。
【0125】
各試験品中の成分(A)~(D)の含有量(ppb)、酢酸含有量(w/v%)、(A)/酢酸、(B)/酢酸、及び官能評価結果を表8に示す。
【0126】
【0127】
表8に示されるように、高甘味度甘味料(スクラロース)を用いた場合、甘味は強いものの、最後の方まで下に残る人工的な甘味であり、所望の甘味ではなかった(試験品69、70)。