(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135407
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】植物性蛋白の非膨化押出成形物を含む食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20220908BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220908BHJP
A23J 3/00 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23L5/00 M
A23L5/00 A
A23J3/00 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035193
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】塚原 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】田辺 優希
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B035LC03
4B035LE05
4B035LE17
4B035LE20
4B035LG12
4B035LG19
4B035LG32
4B035LG33
4B035LG49
4B035LK01
4B035LK15
4B035LP02
4B035LP07
4B035LP25
4B035LP32
4B035LP43
4B035LP59
4B042AC05
4B042AD36
4B042AK08
4B042AK11
4B042AK13
4B042AK17
4B042AP04
4B042AP05
4B042AP07
4B042AP18
4B042AP19
4B042AP23
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、植物由来の蛋白材料を用いて、肉のようなジューシー感や食感を食品に付与する技術を提供することである。
【解決手段】冷凍状態にある植物性蛋白の非膨化押出成形物を液体に浸漬させて解凍する工程を含む、食品の製造方法が提供される。本発明によれば、肉のようなジューシー感や食感を食品に付与することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍状態にある植物性蛋白の非膨化押出成形物を液体に浸漬させて解凍する工程を含む、食品の製造方法。
【請求項2】
植物性蛋白が、大豆由来の植物蛋白を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
冷凍状態にある植物性蛋白の非膨化押出成形物の水分率が50~70質量%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
浸漬させる液体の温度が5~100℃である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記食品が、肉のような食感を有する食品である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
解凍した植物性蛋白の非膨化押出成形物を加熱調理する工程をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
解凍した植物性蛋白の非膨化押出成形物を加熱調理する前に、加圧脱水する工程をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
冷凍状態にある植物性蛋白の非膨化押出成形物を液体に浸漬させて解凍する工程を含む、食品の食感向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性蛋白の非膨化押出成形物を含む食品に関する。特に本発明は、植物性蛋白の非膨化押出成形物から、肉のようなジューシー感および食感を有する食品を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品の分野において、大豆蛋白などの植物性蛋白が広く利用されており、近年では、生活習慣病予防などの健康への配慮から、積極的に利用される傾向にある。植物性蛋白は、「植物性たん白の日本農林規格」としてJAS規格に規定されており、植物性蛋白の原材料は、大豆粉、脱脂大豆粉、小麦粉、小麦グルテンなどから選ばれるものとされている。
【0003】
植物性蛋白は、その性状に基づいて、粉末状植物性蛋白、ペースト状植物性蛋白、粒状植物性蛋白、繊維状植物性蛋白などに分類されるところ、粒状大豆蛋白は、挽肉加工食品などの食肉加工食品に、肉粒感の付与、肉汁の流出抑制、加熱歩留り向上などの目的のため使用されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、大豆蛋白を膨化して得られた組織状蛋白を用いることによって加工食品にジューシー感を付与することが記載されている。また、特許文献2には、粒状大豆蛋白を用いて加工食品に肉のような食感を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-235461号公報
【特許文献2】特開2018-126094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の粒状大豆蛋白素材を配合して得られた加工食品は、喫食時において、肉特有の食感に近いものを有していたが、肉の食感とは異なる部分もあり、さらに、肉特有の食感に近い食感を付与することが求められている。また、肉の代替品として植物性蛋白を使用する場合、食感だけでなく、ジューシー感を感じられることも重要である。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、植物由来の蛋白材料を用いて、肉のようなジューシー感および食感を有する食品を製造する技術を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
植物性蛋白の非膨化押出成形物は、水分が高いため冷凍して流通ないし保管されることが多く、自然解凍してから加熱調理することが推奨されている。しかしながら、自然解凍してから加熱調理すると、ジューシー感に乏しく、また、ほぐれにくく硬い食感の食品となってしまう。
【0009】
上記課題について鋭意検討したところ、植物性蛋白の非膨化押出成形物について、液体に浸漬して解凍することによって、肉のような食感を有しながらもジューシーでほぐれやすく、風味に優れた食品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
これに限定されるものではないが、本発明は、下記の発明を包含する。
[1] 冷凍状態にある植物性蛋白の非膨化押出成形物を液体に浸漬させて解凍する工程を含む、食品の製造方法。
[2] 植物性蛋白が、大豆由来の植物蛋白を含む、[1]に記載の方法。
[3] 冷凍状態にある植物性蛋白の非膨化押出成形物の水分率が50~70質量%である、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 浸漬させる液体の温度が5~100℃である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記食品が、肉のような食感を有する食品である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 解凍した植物性蛋白の非膨化押出成形物を加熱調理する工程をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 解凍した植物性蛋白の非膨化押出成形物を加熱調理する前に、加圧脱水する工程をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 冷凍状態にある植物性蛋白の非膨化押出成形物を液体に浸漬させて解凍する工程を含む、食品の食感向上方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、植物性蛋白の非膨化押出成形物から、肉のような食感を有しながらもジューシーでほぐれやすい食感を有する食品を製造することができる。また、本発明によって製造した食品は、原料である植物由来の風味が感じられないため、肉の代替食として優れた風味を有しているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実験1で調理した食品の外観写真である。
【
図2】
図2は、実験2で調理した食品の外観写真である。
【
図3】
図3は、実験3で調理した食品の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明においては、植物性蛋白を膨化させずに押出成形したものを使用する。従来、植物性蛋白を膨化させた粒状大豆蛋白などが代替肉として使用されることがあったが、肉特有の食感に近いものを有していたものの、肉の食感とは異なる部分もあり、肉特有の食感により近い食感が求められていた。本発明で使用する植物性蛋白の非膨化押出成形物は、植物性蛋白を膨化させずに押出成形したものであり、肉のような食感を有する。
【0014】
植物性蛋白の非膨化押出成形物は、水分が高いこともあり冷凍して流通ないし保管されるところ、自然解凍してから調理すると、ジューシー感に乏しく、また、ほぐれにくく硬い食感となってしまう。本発明においては、冷凍されている植物性蛋白の非膨化押出成形物を自然解凍するのではなく、液体に浸漬させて解凍することによって、ジューシーでほぐれやすく、肉のような食感を有する食品を製造することができる。また、液体に浸漬させて解凍することによって、植物性蛋白の原料である大豆などに起因する臭いが低減されるため、本発明によって製造した食品は、その風味も優れたものとなる。
【0015】
本発明において、冷凍された植物性蛋白の非膨化押出成形物を解凍する際に用いる液体は特に制限されないが、水性の液体であることが好ましく、水や調味液であることがより好ましい。解凍する際に植物性蛋白の非膨化押出成形物を浸漬する液体について、その温度は特に制限されないが、1℃以上であることが好ましく、5℃以上、10℃以上とすることもできる。また、100℃以下であることが好ましく、90℃以下、80℃以下とすることもできる。解凍時間は特に制限されないが、例えば、1分間~3日間(72時間)とすることができ、2分間~24時間がより好ましく、3分間~10時間や4分間~5時間としてもよい。より具体的には、60℃以下においては30分~72時間浸漬することが好ましく、60℃以上においては1~30分浸漬することが好ましい。
【0016】
本発明においては、液体中で解凍した後、植物性蛋白の非膨化押出成形物を水洗いしたり、加圧脱水したりしてもよい。加圧脱水の方法は特に制限されず、手で絞ったり、重石を用いたり、遠心脱水機や圧搾脱水機などの装置を用いることができる。
【0017】
本発明において、冷凍された植物性蛋白の非膨化押出成形物を解凍する際に用いる液体として、調味液を用いる場合、その組成などは特に制限されない。調味液は、種々の調味料や添加物を含有することができ、例えば、料理酒、ワイン、清酒、梅酒等の酒類、穀物酢、果実酢、合成酢などの食酢、醤油、味噌、みりん、麹、ソース類発酵乳、コチュジャン、魚醤、食塩、たんぱく加水分解物、糖質、澱粉類、甘味料、酸味料、うまみ調味料(アミノ酸、核酸等)、着色料、香料、ミネラル類、ビタミン類、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、静菌剤などを挙げることができる。
【0018】
調味液は各種食材を含有していてもよく、香辛料、香味野菜、ハーブなどを適宜使用することができる。例えば、胡椒、パプリカ、バジル、山椒、わさび、とうがらしなどのハーブ及び香辛料類、くるみ、ゴマ、松の実、アーモンドなどの種実類、ツナ、ホタテ、かつおぶしなどの魚介類、ベーコン、コンビーフ、ハム等の加工肉製品類、卵類、しそ、しょうが、セロリー、たまねぎ、トマト、にんじん、にんにく、ねぎ、パセリ、ピーマン、ピクルス、みょうが、しその実等の香味野菜類、うめ、オリーブ、グレープフルーツ、すだち、りんご、レモン、みかんの果実類の実及びその果汁、しいたけ、マッシュルーム、きくらげ等のきのこ類、コンブやわかめなどの藻類、天然エキス、酵母エキス、肉エキス、魚介類エキス、野菜エキスなどのエキス類が挙げられる。
【0019】
調味液は食用油脂を含んでいてもよく、食用油脂は、植物性油脂、動物性油脂、加工油脂、粉末油脂などのいずれであってもよい。例えば、大豆油、菜種油、キャノーラ油、コーン油、ひまわり油、紅花油、とうもろこし油、綿実油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、オリーブ油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂、魚脂、アザラシ脂、藻類脂などを単独または組み合わせて使用することができる。また、品質改良によって低飽和化された油脂、水素添加油脂、グリセリンと脂肪酸のエステル化油、エステル交換油、分別油脂なども適宜使用することができる。さらに、遺伝子組換えの技術を用いて品種改良した植物から抽出したものであってもよい。
【0020】
本発明においては、上記のようにして解凍した植物性蛋白の非膨化押出成形物を食品に含有させることで、肉のようなジューシー感や食感を食品に付与することができる。本発明によれば、食品のジューシー感や食感をより改良することが可能であり、例えば、食肉加工食品に含有させることで、肉特有の食感により近い食感を食品に付与することができる。したがって、一つの態様において本発明は、食品の食感改良方法である。
【0021】
本発明を適用可能な食品は特に制限されないが、例えば、食肉加工食品や水産加工食品などの加工食品が挙げられる。
本発明に係る食品は、畜肉や魚肉などの肉類を含んでいなくてもよいし、含んでいてもよい。肉類を含まない食品に対して本発明を適用し、食品に肉のような食感を付与すれば、ビーガンやベジタリアンなどに適した食品とすることができる。
【0022】
本発明によって解凍した植物性蛋白の非膨化押出成形物は、適宜、加熱調理を行って喫食することができる。加熱調理の方法は特に限定されないが、例えば、焼き、炒め、蒸し、煮込み、燻製、油ちょう、電子レンジ調理、レトルト調理などを挙げることができる。加熱調理の際は、植物性蛋白の非膨化押出成形物のみを加熱調理してもよいし、野菜、果物、海藻類、きのこ類、畜肉類、魚介類、麺類、米飯、調味料、香辛料、乳製品、卵、澱粉、穀粉などの任意の材料とともに加熱調理してもよい。例えば、野菜、調味料、香辛料などとともに炒めて野菜炒めにしたり、煮込んでシチューにしたり、たれをつけて焼成し、照焼きにしたり、オーブンで焼成して乾燥させ、さきいかやホタテ貝柱やジャーキーのような食品にしたり、パン粉やバッター液などの衣をつけて油ちょうし、天ぷら、から揚げ、カツなどにすることができる。また、本発明によって解凍した植物性蛋白の非膨化押出成形物と、任意の材料とを混合し、任意の形状に成形したり、パン粉やバッター液などの衣をつけたり、包餡食品用皮やベーカリー生地などで包んだり、ケーシングに充填したりすることで、ハンバーグ、ミートボール、メンチカツ、つみれ、つくね、ナゲット、ハム、ソーセージ、練り物(蒲鉾、ちくわなど)、餃子、焼売、春巻き、中華まん、カレーパンなどの加工食品を製造することもできる。
【0023】
本発明によって解凍した植物性蛋白の非膨化押出成形物を含む食品は、喫食可能な状態まで調理した後に冷凍して保管してもよいし、調理途中の段階で冷凍することで半調理品の形態とすることもできる。本発明によって得られた食品は、喫食の際に、良好な肉様の食感を有している。
【0024】
植物性蛋白の非膨化押出成形物
本発明に係る植物性蛋白の非膨化押出成形物は、植物性蛋白を押出成形したものであり、肉のような食感を有する。従来、挽肉代替素材として使用されてきた粒状大豆蛋白素材は、膨化されているためスポンジ状の内部構造を有しているのに対し、本発明に係る植物性蛋白の押出成形物は、押出成形によって一つの方向に配向した層状構造を有しており、このような配向した構造によって肉の筋繊維のような食感が実現される。また、本発明に係る植物性蛋白の押出成形物は膨化されていないため、肉のようなしっかりとしたかみ応えを実現することができる。
【0025】
本発明に係る非膨化押出成形物は、好ましい態様において水分率が30~80質量%であり、40~75質量%や50~70質量%であってもよい。このような水分率であると、肉のような硬さとかみ応えを実現しやすく、より肉のような繊維感を感じやすい。非膨化押出成形物の水分率は、押出成形する際に水を添加して調整することができ、また、醤油など調味料、着色料など含む水溶液などを用いて水分率を調整することもできる。
【0026】
本発明にかかる非膨化押出成形物は、植物性蛋白に、必要に応じて澱粉類や多糖類などを添加して二軸押出機などを用いて、膨化しないように押出すことによって製造することができる。
【0027】
前記非膨化押出成形物は、原料全体の蛋白質含有量が、固形分中の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上や70質量%以上とすることもできる。蛋白質含有量が少なすぎると、押出成形によって一方向に配向した層状構造を実現しにくくなる場合がある。本発明に用いる植物性蛋白は、大豆、小麦、菜種、エンドウ豆、ソラ豆、ひよこ豆などの植物に由来する蛋白を好適に使用することができ、植物性蛋白は、酵素などによって処理されていてもよい。また、1種類の植物性蛋白を使用してもよいし、複数の植物性蛋白を使用してもよい。大豆由来の蛋白としては、例えば、脱脂大豆粉、含脂大豆粉、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、豆乳粉末などを原料として使用することができ、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、脱脂大豆粉が特に好ましい。
【0028】
前記非膨化押出成形物は、澱粉類や多糖類、食用油脂、食物繊維、色素、調味料、香料、乳化剤、有機酸類、塩類、ビタミン類などの副材料を含有していてもよく、これら副材料は、1種のみを単独で用いることもでき、2種以上を使用してもよい。澱粉類としては、例えば、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、またこれらの加工澱粉などが挙げられ、多糖類としては、例えば、プルラン、アラビアガム、グアガム、キサンタンガム、ジェランガム、ヘミセルロースなどを挙げることができる。
【0029】
本発明においては、植物性蛋白を膨化させずに押し出すことができれば、公知の押出成形機を制限なく使用することができる。好ましい態様において、本発明に係る非膨化押出成形物は、冷却できるようなダイを有する押出機を用いて成形することができる。例えば、二軸の押出機を使用する場合、バレルの加熱温度はバレル前半部の温度が40~120℃、バレル後半部の温度が140~180℃になるように調整することができ、段階的に昇温することが好ましい。また、圧力は、冷却ダイ直前の圧力が0~50kg/cm2となるように調整することができ、35kg/cm2以下や20kg/cm2以下であることが好ましい。スクリューは、ニーディングディスク、リバースエレメントなどを適宜組み合わせて使用することができる。好ましい態様において押出機は、原材料供給口、バレル内をスクリューにおいて原材料を送り、混合、圧縮、温度調整機構を有し、さらに先端バレルに装着されたダイを有する。
【0030】
冷却条件は押出した際に膨化しないような条件を適宜設定すればよいが、冷却ダイから押し出された直後の押出成形物の温度が90℃以下となるように冷却すると好ましく、70℃以下や50℃以下となるように冷却することもできる。冷却ダイは水冷などによって冷却することができ、冷却水の温度、流量などは押出機のサイズや種類、原料処理量などにより適宜調整することができる。また、使用する冷却ダイの大きさに特に制限はなく、流路長や内径は押出機のサイズや種類、原料処理量などにより適宜調整することができる。植物性蛋白を膨化しないよう押出成形することによって、一方向に配向した層状構造が形成され、肉のような繊維感が感じられることになる。
【0031】
非膨化押出成形物を冷凍状態とする方法は特に制限されず、エアーブラスト方式、リキッド方式、コンタクト方式、液化ガス方式などから適宜選択することができ、急速凍結しても緩慢凍結してもよい。また、使用する装置は特に制限されず、連続式でもバッチ式でもよい。例えば、コンベア式、ラック式のトンネル型フリーザーや、スパイラルフリーザーなどを用いることができる。また、冷凍状態とする前に、殺菌などのためにレトルト殺菌などの加熱処理をしてもよく、保管などのために冷蔵してもよい。
植物性蛋白の非膨化押出成形物は、包装容器に収容して保管してもよく、真空包装やガス置換包装などを行うこともできる。包装容器としては、例えば、トレー状、パック状、カップ状、袋状などの形態が挙げられ、紙、樹脂、金属など適宜素材を選択すればよい。また、缶詰や瓶詰にしてもよい。
【0032】
本発明においては、冷凍状態にある植物性蛋白の非膨化押出成形物を、液体に浸漬させて解凍することによって、肉のような繊維感を増強し、さらにジューシー感やほぐれ感を食品に付与することができる。本発明によれば、加工食品の食感をより改良することが可能であり、肉特有の食感により近い食感を加工食品に付与することができる。したがって、一つの態様において本発明は、加工食品の食感改良材である。本発明に係る食感改良材は、肉を含有する加工食品に使用して肉のような食感を増強することもできるし、また、肉を含有しない加工食品に使用して肉のような食感を加工食品に付与することもできる。
【実施例0033】
本発明を具体例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本明細書において濃度などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0034】
実験1:鶏のたれ焼き様食品
大豆蛋白の非膨化押出成形物として、ベジタリアンブッチャージャパン社のNo chicken chunks(水分率:約68%)を使用した。冷凍されている非膨化押出成形物200gを浸漬液(水または調味液)に浸漬させ、下表に示す条件で処理して解凍した。ただし、サンプル1-1は、冷凍されている非膨化押出成形物を浸漬液に浸漬させずに、冷蔵庫内(5℃)で自然解凍させた(比較例)。また、サンプル1-7は、解凍後に水洗いしてから、浸漬前の重量と同程度となるまで、手で水を絞った。なお、本実験で使用した調味液(たれ)は、醤油、みりん、砂糖を50質量部ずつ混合して調製した。
【0035】
解凍した非膨化押出成形物150gを調味液150gと混合してから、フライパンで5分間焼成した(
図1)。ただし、調味液に浸漬させて解凍したサンプル1-10については、フライパンで焼成する際に調味液は使用しなかった。
【0036】
調理後の鶏のたれ焼き様食品について、食感、ほぐれ感、ジューシー感、味のしみ込みを官能評価した。官能評価は、訓練された5名のパネルが合議し、下記の基準に基づいて実施した。
■食感(肉のような繊維感)
5(非常に良好):肉類を原料とした食品と非常に近い食感で、繊維感が強い
4(良好 ):肉類を原料とした食品と近い食感で、繊維感がある
3(やや良好 ):肉類を原料とした食品とやや近い食感で、繊維感が多少感じられる
2(やや悪い ):肉類を原料とした食品とはやや異なる食感であり、繊維感が弱い
1(非常に悪い):肉類を原料とした食品とは異なる食感であり、繊維感がない
■ほぐれ感
5(非常に良好):肉類を原料とした食品と非常に近いほぐれ感である
4(良好 ):肉類を原料とした食品と近いほぐれ感である
3(やや良好 ):肉類を原料とした食品とやや近いほぐれ感である
2(やや悪い ):肉類を原料とした食品とはやや異なり、あまりほぐれない
1(非常に悪い):肉類を原料とした食品とは異なり、ほぐれ難い
■ジューシー感
5(非常に良好):噛んだ際の肉汁感が非常に強い
4(良好 ):噛んだ際の肉汁感が強い
3(やや良好 ):噛んだ際に肉汁感がある
2(やや悪い ):噛んだ際に肉汁感があまりない
1(非常に悪い):噛んだ際に肉汁感が全くない
■味のしみこみ方
5(非常に良好):内部まで調味液が非常に良く浸透している
4(良好 ):内部まで調味液が良く浸透している
3(やや良好 ):内部まで調味液が浸透している
2(やや悪い ):内部まで調味液が浸透しきっていない
1(非常に悪い):内部まで調味液が浸透していない
【0037】
【0038】
冷凍されている非膨化押出成形物を浸漬液に浸漬して解凍するとは、自然解凍した場合(サンプル1-1)と比較して、食感、ほぐれ感、ジューシー感、味のしみこみ方が良好であった。
【0039】
また、サンプル1-6とサンプル1-7を比較すると、浸漬後にいったん浸漬液を脱水処理することによって、調味液が内部まで浸透しやすくなり、ほぐれ感、ジューシー感、味のしみこみ方が優れたものとなった。
【0040】
実験2:チキンカツ様食品
大豆蛋白の非膨化押出成形物として、ベジタリアンブッチャージャパン社のNo chicken chunks(水分率:約68%)を使用した。冷凍されている非膨化押出成形物200gを浸漬液(水または調味液)に浸漬させ、実験1と同様に処理して解凍した。ただし、サンプル2-1は、冷凍されている非膨化押出成形物を浸漬液に浸漬させずに、冷蔵庫内(5℃)で自然解凍させた(比較例)。また、調味液は、下表に示す原材料を煮込んで調製した。
【0041】
【0042】
解凍した非膨化押出成形物150gを調味液150gに5℃にて4時間浸漬させた後、調味液をきってから、小麦粉、卵液、パン粉の順で衣を付着させ、170℃で4分間油ちょうした(
図2)。ただし、調味液に浸漬させて解凍したサンプル2-9については、解凍した非膨化押出成形物を再び調味液に浸漬させることはせず、小麦粉、卵液、パン粉をつけて油ちょうした。
【0043】
調理後のチキンカツ様食品について、食感、ほぐれ感、ジューシー感、味のしみこみ方を、実験1と同様にして評価した。
【0044】
【0045】
冷凍されている非膨化押出成形物を浸漬液に浸漬して解凍すると、自然解凍した場合(サンプル2-1)と比較して、食感、ほぐれ感、ジューシー感、味のしみこみ方が良好であった。
【0046】
実験3:ジャーキー様食品
大豆蛋白の非膨化押出成形物として、ベジタリアンブッチャージャパン社のNo chicken chunks(水分率:約68%)を使用した。冷凍されている非膨化押出成形物200gを浸漬液(水または調味液)に浸漬させ、実験1と同様に処理して解凍した。ただし、サンプル3-1は、冷凍されている非膨化押出成形物を浸漬液に浸漬させずに、冷蔵庫内(5℃)で自然解凍させた(比較例)。また、調味液は、実験2と同様にして調製した。
【0047】
解凍した非膨化押出成形物150gを調味液150gに5℃にて4時間浸漬させた後、調味液をきってから、スチームコンベクションオープン(SSC-C06DC、マルゼン)を用いて120℃にて60分間焼成した(
図3)。ただし、調味液に浸漬させて解凍したサンプル3-9については、解凍した非膨化押出成形物を再び調味液に浸漬させることはせず、オーブンを用いて焼成した。
【0048】
調理後のジャーキー様食品について、食感、ほぐれ感、ジューシー感、味のしみこみ方を、実験1と同様にして評価した。
【0049】
【0050】
冷凍されている非膨化押出成形物を浸漬液に浸漬して解凍すると、自然解凍した場合(サンプル3-1)と比較して、食感、ほぐれ感、ジューシー感、味のしみこみ方が良好であった。