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  • 特開-情報処理装置および情報処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135621
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/06 20090101AFI20220908BHJP
【FI】
H04W24/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035553
(22)【出願日】2021-03-05
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】工藤 理一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 馨子
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
(72)【発明者】
【氏名】守倉 正博
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正寛
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD20
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】より高精度な無線通信品質の予測を可能とする。
【解決手段】基地局3と端末5との間で行われる無線通信に関する無線通信情報を予測する情報処理装置1である。情報処理装置1は、少なくとも端末5の位置情報を含む端末情報を収集する端末情報生成部11と、端末情報から無線通信情報を求めるシミュレーションモデルを用いて、端末情報から無線通信情報の予測値を求めるシミュレーションモデル12と、端末情報と当該端末情報に対応する無線通信情報の予測値の実測値からのずれとの間の関係性を機械学習により学習したギャップモデルを用いて、端末情報から無線通信情報の予測値の実測値からのずれを求めるギャップモデル13と、無線通信情報の予測値とずれを用いて無線通信情報を算出して出力する出力部14を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と端末との間で行われる無線通信に関する無線通信情報を予測する情報処理装置であって、
少なくとも前記端末の位置情報を含む端末情報を収集する収集部と、
端末情報から無線通信情報を求めるシミュレーションモデルを用いて、前記端末情報から無線通信情報の予測値を求めるシミュレーション部と、
端末情報と当該端末情報に対応する無線通信情報の予測値の実測値からのずれとの間の関係性を機械学習により学習したギャップモデルを用いて、前記端末情報から前記ずれを求めるギャップ算出部と、
前記無線通信情報の予測値と前記ずれを用いて無線通信情報を算出して出力する出力部を備える
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記シミュレーションモデルは、基地局と端末が存在する通信エリアを模擬するデジタル空間を構築し、電波伝搬の影響をシミュレートすることで、位置情報を含む端末情報を入力すれば、無線通信情報を出力するモデルである
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記シミュレーションモデルは、端末情報と無線通信情報との間の関係性を機械学習により学習することで、位置情報を含む端末情報を入力すれば、無線通信情報を出力するモデルである
情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置であって、
端末情報と無線通信情報を訓練データとして、端末情報を入力すると無線通信情報を出力する前記シミュレーションモデルを機械学習により生成するシミュレーションモデル生成部を備える
情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理装置であって、
基地局と端末が存在する通信エリアを模擬するデジタル空間を構築し、電波伝搬の影響をシミュレートして求められた無線通信情報を前記訓練データとして用いる
情報処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の情報処理装置であって、
別の通信エリアで取得された端末情報と当該端末情報に対応する無線通信情報を前記訓練データとして用いる
情報処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の情報処理装置であって、
端末情報と前記シミュレーションモデルを用いて前記端末情報から求めた無線通信情報の予測値の実測値からのずれを訓練データとして、端末情報を入力すると無線通信情報の予測値の実測値からのずれを出力するギャップモデルを機械学習により生成するギャップモデル生成部を備える
情報処理装置。
【請求項8】
基地局と端末との間で行われる無線通信に関する無線通信情報を予測する情報処理方法であって、
コンピュータによる、
少なくとも前記端末の位置情報を含む端末情報を収集するステップと、
端末情報から無線通信情報を求めるシミュレーションモデルを用いて、前記端末情報から無線通信情報の予測値を求めるステップと、
端末情報と当該端末情報に対応する無線通信情報の予測値の実測値からのずれとの間の関係性を機械学習により学習したギャップモデルを用いて、前記端末情報から前記ずれを求めるステップと、
前記無線通信情報の予測値と前記ずれを用いて無線通信情報を算出して出力するステップを有する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なデバイスがインターネットにつながるInternet of things(IoT)の実現が進んでいる。例えば、自動車、ドローン、および建設機械車両など様々な機器が無線により接続されつつある。無線通信規格としても標準化規格IEEE802.11で規定される無線LAN、Bluetooth(登録商標)、LTEや5Gによるセルラー通信、IoT向けのLow Power Wide Area(LPWA)通信、車通信に用いられるElectronic Toll Collection System(ETC)、Vehicle Information and Communication System(VICS)、ARIB-STDT109など、サポートする無線規格も発展しており、今後の普及が期待されている。
【0003】
様々な用途で無線通信が使われる一方、サービスによっては、無線通信品質の要求条件を必ずしも満たすことができないことが問題となっている。このため、予め、地図情報を用いて、位置に対応して、受信電力などの無線通信品質を予測し、このような通信品質の要求条件を満たさない点を明らかにしたり、そのような条件での影響を受けないように別の基地局に通信先を変更したり、冗長回線を用いたり、その場所を開始したりする方法が検討されている。深層学習など統計的予測手法を用いた受信電力予測手法は非特許文献1に提案されており、さらに、計算機シミュレーションを用いて、受信電力予測モデルの学習における学習データ不足を解消する手法は非特許文献2において提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Imai, K. Kitao, and M. Inomata,“Radio Propagation Prediction Model Using Convolutional Neural Networks by Deep Learning”, Proc. EuCAP, pp1-5, Krakow, Jun. 2019
【非特許文献2】M. Iwasaki, T. Nishio, M. Morikura, and K. Yamamoto,“Transfer Learning-Based Received Power Prediction with Ray-tracing Simulation and Small Amount of Measurement Data,” in Proc. IEEE VTC Fall, Oct. 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存手法では、少数の無線通信情報の実測値を用い、ある地点の無線通信品質の値を直接予測していたが、予測すべき値のレンジが広いため、ときに大きな予測誤差が発生する可能性があった。例えば、無線通信情報として受信電力を例に挙げると、基地局に近い位置と通信エリアの端では、10の6乗以上、状況によってはさらに大きな電力差が生まれることが起こりうる。通信エリア全体における無線通信情報を直接予測するモデルを作ると、予測対象となる値のレンジの大きさが予測精度を高めるための大きな弊害となりうる。スループットやパケット到来遅延についても、同様にレンジが広く成りうる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、より高精度な無線通信品質の予測を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の情報処理装置は、基地局と端末との間で行われる無線通信に関する無線通信情報を予測する情報処理装置であって、少なくとも前記端末の位置情報を含む端末情報を収集する収集部と、端末情報から無線通信情報を求めるシミュレーションモデルを用いて、前記端末情報から無線通信情報の予測値を求めるシミュレーション部と、端末情報と当該端末情報に対応する無線通信情報の予測値の実測値からのずれとの間の関係性を機械学習により学習したギャップモデルを用いて、前記端末情報から前記ずれを求めるギャップ算出部と、前記無線通信情報の予測値と前記ずれを用いて無線通信情報を算出して出力する出力部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より高精度な無線通信品質の予測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の情報処理装置を含む通信システムの全体構成の一例を示す図である。
図2図2は、機械学習によりシミュレーションモデルを生成する様子の一例を示す図である。
図3図3は、機械学習によりギャップモデルを生成する様子の一例を示す図である。
図4A図4Aは、通信エリア内の無線通信情報の予測値の一例を示す図である。
図4B図4Bは、通信エリア内のいくつかの点における無線通信情報の実測値の一例を示す図である。
図4C図4Cは、予測値と実測値のずれの一例を示す図である。
図5図5は、情報処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、屋外環境の予測RSSIの計算結果の一例を示す図である。
図7図7は、屋内環境の予測RSSIの計算結果の一例を示す図である。
図8図8は、屋外環境でのRSSIの予測精度評価結果の一例を示す図である。
図9図9は、屋内環境でのRSSIの予測精度評価結果の一例を示す図である。
図10図10は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0011】
図1は、本実施形態の情報処理装置1を含む通信システムの全体構成の一例を示す図である。図1に示す通信システムは、情報処理装置1、基地局3、および端末5を備える。基地局3と複数台の移動可能な端末5との間で無線通信が行われる。情報処理装置1と基地局3とはネットワークを介して通信可能に接続される。基地局3が情報処理装置1の機能を備えてもよい。
【0012】
情報処理装置1は、端末5それぞれの端末情報を収集し、端末情報から基地局3と端末5との間の無線通信に関する情報(以下、無線通信情報と称する)を予測して出力する。基地局3は、例えば、情報処理装置1から出力された無線通信情報に基づき、通信品質が改善されるように基地局3または端末5を制御する。
【0013】
端末情報は、端末5それぞれに関する情報であり、少なくとも基地局3の通信エリア内における端末5の位置情報を含む。端末情報は、端末5の向き、動き、種類、または端末を保持するもの(人、ロボット、あるいは車両など)の情報を含んでもよい。端末情報は、基地局3に接続されたカメラなどのセンサ31で得られる情報から端末5を認識して生成されてもよいし、端末5のそれぞれが備える位置推定機能、センサ機能、または登録情報を用いて生成されてもよい。基地局3は、複数台のセンサ31を接続してもよいし、複数種類のセンサ31を接続してもよい。端末5のそれぞれで端末情報を生成する場合、端末情報は無線通信を介して基地局3へ送信されてもよい。
【0014】
無線通信情報は、基地局3と端末5の間の無線通信の電波伝搬の状態に起因する無線チャネル情報であり、例えば、電波減衰情報、無線チャネルにおける受信信号電力、信号対雑音電力比、信号対干渉雑音電力比、Received Signal Strength Indication(RSSI)、Received Signal Reference Quality(RSRQ)、パケット誤り率、到達ビット数、ビット誤り率、単位時間あたり到達ビット数、パケット到達遅延時間、誤り訂正技術の設定、通信端末利用者契約情報、これらの値の微分情報、および、これらの値から計算式を用いて算出される指標である。
【0015】
図1に示す情報処理装置1は、端末情報生成部11、シミュレーションモデル12、ギャップモデル13、出力部14、シミュレーションモデル生成部15、およびギャップモデル生成部16を備える。
【0016】
端末情報生成部11は、処理対象の端末5に関する情報を収集して端末情報を生成し、端末情報をシミュレーションモデル12とギャップモデル13に入力する。端末情報生成部11は、センサ31が取得した情報から端末情報を生成してもよいし、端末5が取得した情報から端末情報を生成してもよい。処理対象の端末5が複数台のときは、処理対象の端末5のそれぞれについて端末情報を生成する。端末情報生成部11は、基地局3または端末5から受信した情報をそのまま端末情報としてもよい。
【0017】
シミュレーションモデル12は、端末情報から無線通信情報を求めるシミュレーションモデルを用いて、端末情報から無線通信情報の予測値を求める。
【0018】
例えば、シミュレーションモデル12は、基地局3と端末5が存在する通信エリアを模擬するデジタル空間を構築し、レイトレース法または有限差分時間領域(FDTD)法などにより電波伝搬の影響をシミュレートし、端末5の端末情報に対して受信電力、電波減衰、信号対雑音電力比、信号対干渉雑音電力比、スループット、遅延などの無線通信情報を算出する。シミュレーションモデル12は、単に、端末情報に対して計算式を用いて無線通信情報を算出してもよい。
【0019】
あるいは、シミュレーションモデル12は、端末情報を入力情報、無線通信情報をターゲット情報として、端末情報と無線通信情報との間の関係性を機械学習により学習したシミュレーションモデルを利用してもよい。図2に、シミュレーションモデル生成部15によるシミュレーションモデルの機械学習の一例を示す。シミュレーションモデルの学習には、任意の機械学習アルゴリズムを用いることができる。シミュレーションモデル生成部15は、少なくとも端末5の位置情報を含む端末情報と無線通信情報のデータセットを訓練データとして入力し、機械学習により、端末情報と無線通信情報との間の関係性をモデル化したシミュレーションモデルを生成する。無線通信情報には、任意の端末情報に対して、基地局3と端末5とが存在する通信エリアを模擬するデジタル空間において電波伝搬の影響をシミュレートして算出したものを用いることができる。
【0020】
訓練データとして用いる無線通信情報をシミュレーションで算出しなくても、基地局3とは別の基地局が端末と無線通信することで得られた無線通信情報と端末情報のデータセットを訓練データとして用いてもよい。つまり、別の通信エリアで測定された無線通信情報の実測値と端末情報のデータセットを訓練データとして用いてもよい。このように他の基地局でのデータを用いることは、類似の構造的特徴を持つ通信エリアのデータを選択することでより効率的なデータとして利用できる。
【0021】
ギャップモデル13は、端末情報と当該端末情報に対応する無線通信情報の予測値の実測値からのずれとの間の関係性を機械学習により学習したモデルを保持し、端末情報を入力すると、無線通信情報の予測値の実測値からのずれを出力する。
【0022】
図3に、ギャップモデル生成部16によるギャップモデルの機械学習の一例を示す。ギャップモデルの学習には、任意の機械学習アルゴリズムを用いることができる。ギャップモデルを生成する際には、端末情報と端末情報に対応する無線通信情報の実測値を用意する。具体的には、通信エリア内で基地局3と端末5との間で実際に無線通信を行って無線通信情報を測定し、測定時の端末情報と無線通信情報の実測値を記録する。端末情報をシミュレーションモデル12に入力して無線通信情報の予測値を得て、予測値の実測値からのずれを求める。ギャップモデル生成部16は、端末情報と無線通信情報の予測値の実測値からのずれのデータセットを訓練データとして入力し、機械学習により、端末情報と予測値のずれとの間の関係性をモデル化したギャップモデルを生成する。
【0023】
ここで図4Aないし図4Cを参照し、ずれの算出について具体例を用いて説明する。図4Aは、通信エリアをグリッドで分割し、グリッドそれぞれに対応する位置情報(端末情報)をシミュレーションモデル12に入力して得られた各グリッドのRSSI(無線通信情報)の予測値を示す。図4Bは、通信エリア内のいくつかの地点において測定したRSSIの実測値を示す。図4Cは、予測値と実測値のずれを示す。RSSIの予測値は通信エリア内のすべての条件で取得できるのに対し、RSSIの実測値は実際に端末がその条件で取得する必要があり、必ずしも十分に集まらないため、図4Bに示したように一部のデータのみとなる。実測値の得られた条件(グリッド)では、図4Cに示すように予測値と実測値のずれが得られる。ギャップモデル生成部16は、ずれの得られるグリッドとそのグリッドにおけるずれの値を訓練データとしてギャップモデルを学習する。図4Cに示すずれが得られたグリッドだけでなく、その周辺のグリッドも従来技術によりデータ拡張して訓練データを増やしてギャップモデルを学習してもよい。
【0024】
出力部14は、シミュレーションモデル12で求めた無線通信情報の予測値とギャップモデル13で求めたずれを用いて無線通信情報を算出して出力する。
【0025】
次に、図5のフローチャートを参照し、情報処理装置1の動作について説明する。なお、シミュレーションモデルとギャップモデルは生成されているものとする。シミュレーションモデルとギャップモデルの双方がないと情報処理装置1は無線端末情報を求められない。そこで、ギャップモデルについても予めシミュレーションにより生成される異なるデータや、基地局3以外の基地局の異なる通信エリアで取得されたデータを用いて生成してもよい。ギャップモデルは、オンライン学習などを用い、少しずつ改善していくこともできる。
【0026】
ステップS11にて、端末情報生成部11は、端末情報を取得する。端末情報は、シミュレーションモデル12とギャップモデル13のそれぞれに入力される。
【0027】
ステップS12にて、シミュレーションモデル12は、保持するモデルを用いて、端末情報から無線通信情報の予測値を求める。
【0028】
ステップS13にて、ギャップモデル13は、保持するモデルを用いて、端末情報から予測値のずれを求める。
【0029】
ステップS14にて、出力部14は、無線通信情報の予測値と予測値のずれを用いて無線通信情報を算出して出力する。
【0030】
次に、図6ないし図9を参照し、本実施形態の効果を屋外環境および屋内環境で確認した結果を説明する。
【0031】
実験には、基地局3として無線LAN基地局(IEEE802.11ac)を用い、端末5を複数の地点に設置し、無線通信情報としてRSSIを測定し、通信エリア内のRSSIをどの程度の誤差で予測できるかを評価した。
【0032】
シミュレーションモデル12には、伝搬シミュレーションとしてレイトレースシミュレータを用い、3Dの地図情報を予め用意し、3Dの地図内における任意の端末位置に対するRSSIを計算した。具体的には、屋外環境での評価は、256m×256mの通信エリアを1m×1mのグリッドに分割し、レイトレーシング法により予測RSSIを計算した。搬送波周波数は5.64GHz、送信電力を21dBmとした。基地局の高さを14m、端末の高さを1mとし、建物の素材をコンクリート、地面をアスファルト、最大反射波数を2回、回析波を3とした。屋内環境の評価は、39m×46mの通信エリアを50cm×50cmのグリッドに分割し、レイトレーシング法により予測RSSIを計算した。建物の材質はコンクリート、最大反射数を6回、回析波を2とした。その他の点は屋外環境と同じである。図6,7に、屋外環境と屋内環境の予測RSSIの計算結果を示す。図中の黒い部分は建物または障害物である。通信エリア全体で予測RSSIが得られていることが分かる。
【0033】
通信エリア内のいくつかのグリッドでRSSIを測定し、測定時の端末の位置(グリッド)と実測RSSIを得た。ギャップモデル生成部16にグリッドと予測RSSIのずれ(予測RSSI-実測RSSI)を訓練データとして入力し、ニューラルネットワークによる深層学習により、端末情報としてグリッドを与えると予測RSSIのずれを出力するギャップモデルを構築した。訓練データを増やすため、実測RSSIを得たグリッドだけでなく、その周辺のグリッドも従来技術によりデータ拡張してギャップモデルを構築した。
【0034】
図8は、屋外環境でのRSSIの予測精度評価結果である。図8では、RSSIの実測値と予測値の間のMean Square Error(MSE)を示している。棒グラフの左から順に、従来方法(データ拡張無し)、提案方法(データ拡張無し)、従来方法(データ拡張あり)、提案方法(データ拡張あり)となっている。
【0035】
提案方法では、上記のように、ニューラルネットワークによる深層学習により、端末の位置と予測RSSIの実測RSSIからのずれとの間の関係性から、位置を入力するとずれを出力するギャップモデルを生成した。端末情報として端末の位置をシミュレーションモデル12とギャップモデル13の双方に入力し、シミュレーションモデル12で得られた予測RSSIにギャップモデル13で得られたずれを加算した値を予測結果とした。
【0036】
従来方法では、ニューラルネットワークによる深層学習により、端末の位置とシミュレーションで得られた予測RSSIとの間の関係性から、位置を入力するとRSSIを推論する深層学習モデルを生成した。端末情報として端末の位置を深層学習モデルに入力し、得られたRSSIを予測結果とした。
【0037】
従来方法のニューラルネットワークの基本的な構成は提案方法で用いたものと同等のものである。すなわち従来方法の深層学習モデルと提案方法のギャップモデルの違いは、ギャップモデルのほうが出力するターゲット情報のレンジが狭いことにある。
【0038】
図8から、データ拡張の有無にかかわらず、提案方法は、従来方法と比べて、RSSIの実測値と予測値の間のMSEが下がっており、ギャップモデルを構成することによる特性改善が見られる。また、データ拡張を行い、測定点のサンプルが増えるほど、効果が大きいことが分かる。
【0039】
図9の屋内環境での結果も同様であり、データ拡張ありなしいずれの場合でも、RSSIの予測誤差のMSEを低減できることが示された。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の情報処理装置1は、少なくとも端末5の位置情報を含む端末情報を収集する端末情報生成部11と、端末情報から無線通信情報を求めるシミュレーションモデルを用いて、端末情報から無線通信情報の予測値を求めるシミュレーションモデル12と、端末情報と当該端末情報に対応する無線通信情報の予測値の実測値からのずれとの間の関係性を機械学習により学習したギャップモデルを用いて、端末情報から無線通信情報の予測値の実測値からのずれを求めるギャップモデル13と、無線通信情報の予測値とずれを用いて無線通信情報を算出して出力する出力部14を備える。本実施形態によれば、ギャップモデル13が予測するずれのレンジを低く抑えることができるので、通信エリア全体における無線通信情報を直接予測するモデルを用いた場合と比べて、より高精度な無線通信品質の予測が可能となる。
【0041】
上記説明した情報処理装置1には、例えば、図10に示すような、中央演算処理装置(CPU)901と、メモリ902と、ストレージ903と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、情報処理装置1が実現される。このプログラムは磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1…情報処理装置
11…端末情報生成部
12…シミュレーションモデル
13…ギャップモデル
14…出力部
15…シミュレーションモデル生成部
16…ギャップモデル生成部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10