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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135924
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】サージ抑制回路及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220908BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20220908BHJP
   H02P 25/16 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02P27/06
H02P25/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000819
(22)【出願日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2021035125
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】駒野 晴保
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA19
5H505BB05
5H505CC01
5H505DD03
5H505HA01
5H505HA05
5H505HA10
5H505HA16
5H505HB02
5H505MM02
5H505PP02
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770KA05Z
5H770LA01Z
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】電力ロスを抑制しながらもサージ電圧を抑制することが可能なサージ抑制回路、及びこれを備えた回転電機を提供する。
【解決手段】サージ抑制回路4は、スイッチング回路1と回転電機3とが電線ケーブル2を介して接続された回転電機装置1に用いられる。サージ抑制回路4は、回転電機3の接続線路33~34のそれぞれにアノードが接続された上側ダイオード411~413と、接続線路33~35のそれぞれにカソードが接続された下側ダイオード421~423と、上側ダイオード411~413のそれぞれのカソードが接続された上側線路401と、下側ダイオード421~423のそれぞれのアノードが接続された下側線路402と、上側線路401と下側線路402との間に接続された電圧保持回路5とを備える。電圧保持回路5は、接続線路33~35のサージ電圧により電荷を蓄える蓄電部51と、蓄電部51の電荷を放電させる放電部52とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と回転電機とが複数の導電体を有する導電路を介して接続された回転電機装置に用いられ、前記複数の導電体と前記回転電機の複数層の巻線とを接続する複数の接続線路に発生するサージ電圧を抑制するサージ抑制回路であって、
前記複数の接続線路のそれぞれにアノードが接続された複数の上側ダイオードと、前記複数の接続線路のそれぞれにカソードが接続された複数の下側ダイオードと、前記複数の上側ダイオードのそれぞれのカソードが接続された上側線路と、前記複数の下側ダイオードのそれぞれのアノードが接続された下側線路と、前記上側線路と前記下側線路との間に接続された電圧保持回路とを備え、
前記電圧保持回路は、前記サージ電圧により電荷を蓄える蓄電部と、前記蓄電部の電荷を放電させる放電部とを有する、
サージ抑制回路。
【請求項2】
前記蓄電部は、前記上側線路と前記下側線路との間に接続されたコンデンサである、
請求項1に記載のサージ抑制回路。
【請求項3】
前記放電部は、前記上側線路と前記下側線路との間に前記蓄電部と並列に接続された放電抵抗器を有する、
請求項1又は2に記載のサージ抑制回路。
【請求項4】
前記放電部は、前記上側線路側がカソードとなる少なくとも一つの定電圧ダイオードを有し、前記放電抵抗器と前記定電圧ダイオードとが直列に接続されている、
請求項3に記載のサージ抑制回路。
【請求項5】
前記蓄電部と前記放電抵抗器との時定数が、前記複数のスイッチング素子がスイッチングされるスイッチング周期よりも長い、
請求項3又は4に記載のサージ抑制回路。
【請求項6】
前記複数の上側ダイオードのそれぞれのカソードと前記蓄電部との間、及び前記複数の下側ダイオードのそれぞれのアノードと前記蓄電部との間の少なくとも何れかに、前記蓄電部への突入電流を抑制する突入電流抑制抵抗器が接続されている、
請求項1乃至5の何れか1項に記載のサージ抑制回路。
【請求項7】
前記複数の導電体は、複数の電線であり、
前記電圧保持回路の一部が、前記複数の電線をシールドするシールド導体を介して電気的に接地されている、
請求項1乃至6の何れか1項に記載のサージ抑制回路。
【請求項8】
複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路に複数の導電体を有する導電路を介して接続される回転電機であって、
複数層の巻線を有する回転電機本体と、前記複数の導電体と前記複数層の巻線とを接続する複数の接続線路と、前記複数の接続線路に発生するサージ電圧を抑制するサージ抑制回路とを備え、
前記サージ抑制回路は、前記複数の接続線路のそれぞれにアノードが接続された複数の上側ダイオードと、前記複数の接続線路のそれぞれにカソードが接続された複数の下側ダイオードと、前記複数の上側ダイオードのそれぞれのカソードが接続された上側線路と、前記複数の下側ダイオードのそれぞれのアノードが接続された下側線路と、前記上側線路と前記下側線路との間に接続された電圧保持回路とを備え、
前記電圧保持回路は、前記サージ電圧により電荷を蓄える蓄電部と、前記蓄電部の電荷を放電させる放電部とを有する、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージ抑制回路、及びこれを備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と回転電機とを有する回転電機装置が、車両の駆動装置を含む様々な用途に用いられている。スイッチング回路の代表的なものは、直流電圧をスイッチングして交流電流を発生させるインバータであり、回転電機の代表的なものは、三相交流モータである。スイッチング回路とモータとは、複数の電線を有する電線ケーブルによって接続される。
【0003】
このような回転電機装置は、回転電機の巻線のリアクタンスが大きいため、電線ケーブルと回転電機とのインピーダンスを整合させることが難しく、電線ケーブルのインピーダンスと回転電機のインピーダンスとの差が大きい場合には、回転電機の入力端においてインピーダンス不整合による反射が発生し、大きなサージ電圧が発生してしまう。そして、このサージ電圧が過大となると、回転電機において放電が発生すること等に起因する損傷が発生するおそれがある。
【0004】
特許文献1には、インピーダンス不整合による反射によってサージが発生することを抑制するためのサージ抑制回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-283755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6は、特許文献1に記載されたサージ抑制回路の一つを示す回路図である。図6において、三相交流モータ7は、N磁極711及びS磁極712を有する回転子71と、U相、V相、及びW相の巻線721,722,723を有する固定子72とを有している。固定子72には、第1乃至第3の接続線路81,82,83を介して三相交流電流が供給される。
【0007】
サージ抑制回路9は、第1の抵抗器911と第1のコンデンサ912とが直列に接続された第1の直列回路91と、第2の抵抗器921と第2のコンデンサ922とが直列に接続された第2の直列回路92と、第3の抵抗器931と第3のコンデンサ932とが直列に接続された第3の直列回路93とを有している。第1乃至第3の直列回路91~93は、それぞれの一端が第1乃至第3の接続線路81,82,83に接続され、それぞれの他端が第4の接続線路84を介してインバータの中性点Nに接続される。
【0008】
このようなサージ抑制回路9は、第1乃至第3の接続線路81,82,83に発生するサージ電圧が第1乃至第3のコンデンサ912,922,932によって吸収されるものの、U相電圧、V相電圧、及びW相電圧によっても第1乃至第3のコンデンサ912,922,932が充放電されるので、第1乃至第3の抵抗器911,921,931での消費電力が大きくなり、大きな電力ロスが生じてしまう。また、第1乃至第3の抵抗器911,921,931が高温となるため、放熱のためのフィンやファンなどの冷却構造が大掛かりになる。
【0009】
そこで、本発明は、電力ロスを抑制しながらもサージ電圧を抑制することが可能なサージ抑制回路、及びこれを備えた回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と回転電機とが複数の導電体を有する導電路を介して接続された回転電機装置に用いられ、前記複数の導電体と前記回転電機の複数層の巻線とを接続する複数の接続線路に発生するサージ電圧を抑制するサージ抑制回路であって、前記複数の接続線路のそれぞれにアノードが接続された複数の上側ダイオードと、前記複数の接続線路のそれぞれにカソードが接続された複数の下側ダイオードと、前記複数の上側ダイオードのそれぞれのカソードが接続された上側線路と、前記複数の下側ダイオードのそれぞれのアノードが接続された下側線路と、前記上側線路と前記下側線路との間に接続された電圧保持回路とを備え、前記電圧保持回路は、前記サージ電圧により電荷を蓄える蓄電部と、前記蓄電部の電荷を放電させる放電部とを有する、サージ抑制回路を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るサージ抑制回路及び回転電機によれば、電力ロスを抑制しながらも、サージ電圧を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る回転電機装置の構成を示す回路図である。
図2】(a)は、スイッチング回路側におけるU相の電圧波形の一例である。(b)は、U相接続線路における電圧波形の一例である。(c)は、サージ抑制回路を有しない場合のU相接続線路における電圧波形の一例である。
図3】第1の変形例を示す回路図である。
図4】第2の変形例を示す回路図である。
図5】第3の変形例を示す回路図である。
図6】従来のサージ抑制回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る回転電機装置の構成例を示す回路図である。この回転電機装置100は、複数のスイッチング素子のスイッチングによって直流交流変換を行うスイッチング回路1と、電線ケーブル2と、電線ケーブル2によってスイッチング回路1と接続された回転電機3とを備えている。回転電機装置100は、例えば電気自動車やハイブリッド車に搭載され、回転電機3が車両の駆動源として用いられる。
【0014】
本実施の形態において、回転電機3は三相交流モータであり、トルクを発生する力行モード、及び電力を回生する回生モードの両モードで使用される。力行モードでは、スイッチング回路1から回転電機3に三相交流電流が出力される。回生モードでは、回転電機3からスイッチング回路1に三相交流電流が出力される。力行モードでは、スイッチング回路1がインバータとして機能し、直流電圧のスイッチングによって三相交流電流を発生させる。以下、スイッチング回路1がインバータとして機能する場合について、詳細に説明する。
【0015】
スイッチング回路1は、第1乃至第6のスイッチング素子111~116と、第1乃至第6のスイッチング素子111~116にそれぞれ並列に接続された第1乃至第6のダイオード121~126とを有している。第1乃至第6のスイッチング素子111~116は、第1のスイッチング素子111と第2のスイッチング素子112、第3のスイッチング素子113と第4のスイッチング素子114、及び第5のスイッチング素子115と第6のスイッチング素子116がそれぞれ直列に接続され、これらの直列回路が上側母線13と下側母線14との間に並列に接続された三相ブリッジ構造で接続されている。
【0016】
上側母線13には、バッテリー等の直流電源6が接続され、下側母線14は電気的に接地されている。回転電機3が車両の駆動源として用いられる場合、直流電源6の出力電圧は、例えば500~1000Vである。
【0017】
第1乃至第6のスイッチング素子111~116は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFETであり、PWM制御を行う制御装置10から出力されるオンオフ信号によってオン(導通)状態とオフ(遮断)状態とが切り替わる。第1乃至第6のスイッチング素子111~116のスイッチング周波数は、例えば10kHzである。
【0018】
また、スイッチング回路1は、U相出力線15、V相出力線16、及びW相出力線17を有しており、U相出力線15が第1のスイッチング素子111と第2のスイッチング素子112との間に、V相出力線16が第3のスイッチング素子113と第4のスイッチング素子114との間に、W相出力線17が第5のスイッチング素子115と第6のスイッチング素子116との間に、それぞれ接続されている。
【0019】
電線ケーブル2は、U相電線21、V相電線22、及びW相電線23と、これらの電線21~23をシールドするシールド導体24とを有している。U相電線21、V相電線22、及びW相電線23は、例えば撚線からなる芯線が絶縁体で被覆された絶縁電線であり、シールド導体24は、例えば複数の素線を格子状に編み合わせた編組線である。電線ケーブル2は、「導電路」の一形態であり、電線21~23は、「複数の導電体」の一形態である。その他の形態として、導電体は、板状のバスバーであってもよい。また、その他の形態として、導電体は、断面円形状の単線からなる芯線が絶縁体で被覆された単線電線であってもよい。電線21~23は、可撓性を有し、単線電線は、可撓性を有しない(電線21~23よりも屈曲しにくい)。
【0020】
U相電線21、V相電線22、及びW相電線23は、スイッチング回路1側の接続部201を介して、スイッチング回路1のU相出力線15、V相出力線16、及びW相出力線17にそれぞれ接続されている。シールド導体24は、スイッチング回路1側で電気的に接地されている。接続部201は、例えばコネクタあるいは端子台である。
【0021】
回転電機3は、回転電機本体30と、サージ抑制回路4とを有している。回転電機本体30は、N磁極311及びS磁極312を有する回転子31と、U相巻線321、V相巻線322、及びW相巻線323を有する固定子32とを有している。
【0022】
また、回転電機3は、U相接続線路33、V相接続線路34、及びW相接続線路35を有している。U相接続線路33、V相接続線路34、及びW相接続線路35は、U相巻線321、V相巻線322、及びW相巻線323と、電線ケーブル2のU相電線21、V相電線22、及びW相電線23とをそれぞれ接続している。これにより、回転電機3とスイッチング回路1とが電線ケーブル2を介して接続されている。U相接続線路33、V相接続線路34、及びW相接続線路35と、電線ケーブル2のU相電線21、V相電線22、及びW相電線23とは、それぞれ回転電機3側の接続部202を介して接続されている。接続部202は、例えばコネクタあるいは端子台である。
【0023】
サージ抑制回路4は、U相巻線321、V相巻線322、及びW相巻線323の端部で電圧が反射することによって発生するサージ電圧を抑制する。このような電圧の反射は、電線ケーブル2と回転電機本体30の固定子32とのインピーダンス不整合に起因して発生する。U相接続線路33、V相接続線路34、及びW相接続線路35には、電圧の反射により、最大で直流電源6の出力電圧の約2倍の電圧が発生する。
【0024】
サージ抑制回路4は、U相接続線路33にアノードが接続された第1の上側ダイオード411と、V相接続線路34にアノードが接続された第2の上側ダイオード412と、W相接続線路35にアノードが接続された第3の上側ダイオード413と、U相接続線路33にカソードが接続された第1の下側ダイオード421と、V相接続線路34にカソードが接続された第2の下側ダイオード422と、W相接続線路35にカソードが接続された第3の下側ダイオード423とを有している。
【0025】
また、サージ抑制回路4は、第1乃至第3の上側ダイオード411~413のそれぞれのカソードが接続された上側線路401と、第1乃至第3の下側ダイオード421~423のそれぞれのアノードが接続された下側線路402と、上側線路401と下側線路402との間に接続された電圧保持回路5と、電圧保持回路5への突入電流を抑制する第1及び第2の突入電流抑制抵抗器431,432とを有している。
【0026】
電圧保持回路5は、U相接続線路33、V相接続線路34、及びW相接続線路35に発生するサージ電圧により電荷を蓄える蓄電部51と、蓄電部51の電荷を放電させる放電部52とを有している。蓄電部51は、コンデンサである。図1の図示例では、蓄電部51として単一のコンデンサを示しているが、複数のコンデンサを直列又は並列もしくは直並列(直列及び並列)に接続して蓄電部51を構成してもよい。このコンデンサとしては、耐電圧が高いセラミックコンデンサを好適に用いることができる。ただし、電荷を蓄えられるものであれば、コンデンサ以外の蓄電デバイスを蓄電部51として用いてもよい。
【0027】
本実施の形態では、放電部52が、上側線路401と下側線路402との間に蓄電部51と並列に接続された放電抵抗器521と、放電抵抗器521と直列に接続された定電圧ダイオード(ツェナダイオード)522とを有している。図1の図示例では、三つの定電圧ダイオード522が直列に接続されているが、定電圧ダイオード522の数は、定電圧ダイオード522の降伏電圧(ツェナー電圧)に応じて適宜変更することができる。定電圧ダイオード522は、上側線路401側がカソードとなり、下側線路402がアノードとなるように接続される。
【0028】
第1の突入電流抑制抵抗器431は、第1乃至第3の上側ダイオード411~413のそれぞれのカソードと蓄電部51との間に接続されている。第2の突入電流抑制抵抗器432は、第1乃至第3の下側ダイオード421~423のそれぞれのアノードと蓄電部51との間に接続されている。より具体的には、上側線路401と蓄電部51の正極との間に第1の突入電流抑制抵抗器431が接続され、下側線路402と蓄電部51の負極との間に第2の突入電流抑制抵抗器432が接続されている。第1及び第2の突入電流抑制抵抗器431,432の抵抗値は、それぞれ例えば10Ωである。
【0029】
なお、第1の突入電流抑制抵抗器431及び第2の突入電流抑制抵抗器432の何れかを省略してもよい。第1の突入電流抑制抵抗器431及び第2の突入電流抑制抵抗器432の何れかを省略しても、蓄電部51への突入電流を抑制することができる。つまり、第1乃至第3の上側ダイオード411~413のそれぞれのカソードと蓄電部51との間、及び第1乃至第3の下側ダイオード421~423のそれぞれのアノードと蓄電部51との間との何れかに、突入電流抑制抵抗器が接続されていればよい。
【0030】
電圧保持回路5は、その一部が電気的に接地されている。本実施の形態では、電線ケーブル2のシールド導体24を介して、蓄電部51の負極側が電気的に接地されている。電圧保持回路5の一部が電気的に接地されていることにより、電圧保持回路5の動作をより安定化させることができる。また、電線ケーブル2のシールド導体24によって電圧保持回路5を接地することにより、スイッチング回路1と回転電機3との間の配線(アース線)が増えることを防ぐことができる。
【0031】
蓄電部51と放電抵抗器521との時定数は、スイッチング回路1の第1乃至第6のスイッチング素子111~116がスイッチングされるスイッチング周期よりも長い。これにより、少なくとも一つのスイッチング周期よりも長い時間にわたり、蓄電部51によってサージ電圧を適切に吸収することができる。蓄電部51の静電容量は、例えば1μFであり、放電抵抗器521の抵抗値は、例えば300kΩである。
【0032】
図2(a)は、スイッチング回路1側の接続部201におけるU相の電圧波形の一例である。図2(b)は、U相接続線路33における電圧波形の一例である。また、図2(c)は、サージ抑制回路4を有しない場合のU相接続線路33における電圧波形の一例である。図2(a)~(c)において、横軸は時間軸であり、縦軸は電圧を示している。また、縦軸におけるVDCは、直流電源6の出力電圧である。
【0033】
サージ抑制回路4を有しない場合には、電線ケーブル2と回転電機本体30の固定子32とのインピーダンス不整合により、U相接続線路33におけるU相巻線321側の端部でスイッチング回路1からの電圧が反射し、図2(c)に示すように大きなサージ電圧が発生する。しかし、本実施の形態では、サージ抑制回路4により、図2(b)に示すようにサージ電圧が抑制される。これにより、サージ電圧による回転電機3における損傷の発生を防ぐことが可能となる。
【0034】
また、本実施の形態では、蓄電部51の両端部の電圧を越える大きさのサージ電圧が発生したときにのみ、蓄電部51に電荷が蓄えられる。このため、例えば図4に示した従来例のように、相間電圧によってコンデンサの充放電が頻繁に行われることがなく、電力ロスを大きく低減することができる。すなわち、本実施の形態によれば、電力ロスを抑制しながらも、サージ電圧を抑制することが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態では、放電抵抗器521に複数の定電圧ダイオード522が直列に接続されているので、蓄電部51の両端部の電圧が複数の定電圧ダイオード522の降伏電圧よりも高い値に維持される。これにより、放電抵抗器521で消費される電力をさらに低減することができる。
【0036】
[実施の形態の変形例]
次に、第1乃至第3の変形例に係る回転電機3A,3B,3Cについて、図3乃至図5を参照して説明する。なお、図3乃至図5において、図1を参照して説明したものと共通する構成部品については、図1に付したものと共通する符号を付して重複した説明を省略する。
【0037】
図3に示す第1の変形例に係る回転電機3Aは、電圧保持回路5Aの構成が第1の実施の形態と異なっている。電圧保持回路5Aは、蓄電部53と放電抵抗器54との並列回路によって構成されており、放電抵抗器54が放電部となっている。なお、電圧保持回路5Aに定電圧ダイオードは接続されていない。蓄電部53は、例えばコンデンサであり、その静電容量は、上記の実施の形態の蓄電部51の静電容量よりも小さく、例えば100nFである。放電抵抗器54の抵抗値は、上記の実施の形態の放電抵抗器521の抵抗値よりも大きく、例えば500kΩである。
【0038】
図4に示す第2の変形例に係る回転電機3Bは、サージ抑制回路4Bが上記の実施の形態における第1の突入電流抑制抵抗器431を有していない。一方、電圧保持回路5Bが突入電流抑制抵抗器55を有している。電圧保持回路5Bは、突入電流抑制抵抗器55及び蓄電部56の直列回路と、放電部としての放電抵抗器57との並列回路によって構成されている。放電抵抗器57の抵抗値は、例えば25Ωである。蓄電部56の静電容量及び放電抵抗器57の抵抗値は、それぞれ例えば100nF、500kΩである。
【0039】
図5に示す第3の変形例に係る回転電機3Cは、上記の実施の形態における第1及び第2の突入電流抑制抵抗器431,432に替えて、サージ抑制回路4Cが第1乃至第6の突入電流抑制抵抗器441~446を備えている。第1乃至第3の突入電流抑制抵抗器441~443は、第1乃至第3の上側ダイオード411~413のカソードと上側線路401との間にそれぞれ接続されている。第4乃至第6の突入電流抑制抵抗器444~446は、第1乃至第3の下側ダイオード421~423のアノードと下側線路402との間にそれぞれ接続されている。第1乃至第6の突入電流抑制抵抗器441~446の抵抗値は、それぞれ例えば25Ωである。
【0040】
回転電機3Cの電圧保持回路5Cは、図3に示す第1の変形例の電圧保持回路5Aと同様に、蓄電部58と、放電部としての放電抵抗器59との並列回路によって構成されている。蓄電部58の静電容量及び放電抵抗器59の抵抗値は、第1の変形例と同様に、それぞれ例えば100nF、500kΩである。
【0041】
これら第1乃至第3の変形例に係る回転電機3A,3B,3Cによっても、上記の実施の形態と同様に、電力ロスを抑制しながらも、サージ電圧を抑制することが可能となる。
【0042】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0043】
[1]複数のスイッチング素子(111~116)を有するスイッチング回路(1)と回転電機(3,3A,3B,3C)とが複数の導電体(電線21~23)を有する導電路(電線ケーブル2)を介して接続された回転電機装置(1)に用いられ、前記複数の導電体(電線21~23)と前記回転電機(3)の複数層の巻線(321,322,323)とを接続する複数の接続線路(33,34,35)に発生するサージ電圧を抑制するサージ抑制回路(4,4B,4C)であって、前記複数の接続線路(33,34,35)のそれぞれにアノードが接続された複数の上側ダイオード(411~413)と、前記複数の接続線路(33,34,35)のそれぞれにカソードが接続された複数の下側ダイオード(421~423)と、前記複数の上側ダイオード(411~413)のそれぞれのカソードが接続された上側線路(401)と、前記複数の下側ダイオード(421~423)のそれぞれのアノードが接続された下側線路(402)と、前記上側線路(401)と前記下側線路(402)との間に接続された電圧保持回路(5,5A,5B,5C)とを備え、前記電圧保持回路(5,5A,5B,5C)は、前記サージ電圧により電荷を蓄える蓄電部(51,53,56,58)と、前記蓄電部(51,53,56,58)の電荷を放電させる放電部(52,54,57,59)とを有する、サージ抑制回路(4,4B,4C)。
【0044】
[2]前記蓄電部(51,53,56,58)は、前記上側線路(401)と前記下側線路(402)との間に接続されたコンデンサである、上記[1]に記載のサージ抑制回路(4,4B,4C)。
【0045】
[3]前記放電部(52,54,57,59)は、前記上側線路(401)と前記下側線路(402)との間に前記蓄電部(51,53,56,58)と並列に接続された放電抵抗器(521,54,57,59)を有する、上記[1]又は[2]に記載のサージ抑制回路(4,4B,4C)。
【0046】
[4]前記放電部(52)は、前記上側線路(401)側がカソードとなる少なくとも一つの定電圧ダイオード(522)を有し、前記放電抵抗器(521)と前記定電圧ダイオード(522)とが直列に接続されている、上記[3]に記載のサージ抑制回路(4)。
【0047】
[5]前記蓄電部(51,53,56,58)と前記放電抵抗器(521,54,57,59)との時定数が、前記複数のスイッチング素子(111~116)がスイッチングされるスイッチング周期よりも長い、上記[2]乃至[4]の何れかに記載のサージ抑制回路(4,4B,4C)。
【0048】
[6]前記複数の上側ダイオード(411~413)のそれぞれのカソードと前記蓄電部(51,53,56,58)との間、及び前記複数の下側ダイオード(421~423)のそれぞれのアノードと前記蓄電部(51,53,56,58)との間の少なくとも何れかに、前記蓄電部(51,53,56,58)への突入電流を抑制する突入電流抑制抵抗器(431,432,441~446)が接続されている、上記[1]乃至[5]の何れかに記載のサージ抑制回路(4,4B,4C)。
【0049】
[7]前記電圧保持回路(5,5A,5B,5C)の一部が、前記複数の導電体は、複数の電線(21~23)であり、前記複数の電線(21~23)をシールドするシールド導体(24)を介して電気的に接地されている、上記[1]乃至[6]の何れかに記載のサージ抑制回路(4,4B,4C)。
【0050】
[8]複数のスイッチング素子(111~116)を有するスイッチング回路(1)に複数の導電体(電線21~23)を有する導電路(電線ケーブル2)を介して接続される回転電機(3,3A,3B,3C)であって、複数層の巻線(321,322,323)を有する回転電機本体(30)と、前記複数の導電体(電線21~23)と前記複数層の巻線(321,322,323)とを接続する複数の接続線路(33~35)と、前記複数の接続線路(33~35)に発生するサージ電圧を抑制するサージ抑制回路(4,4B,4C)とを備え、前記サージ抑制回路(4,4B,4C)は、前記複数の接続線路(33,34,35)のそれぞれにアノードが接続された複数の上側ダイオード(411~413)と、前記複数の接続線路(33,34,35)のそれぞれにカソードが接続された複数の下側ダイオード(421~423)と、前記複数の上側ダイオード(411~413)のそれぞれのカソードが接続された上側線路(401)と、前記複数の下側ダイオード(421~423)のそれぞれのアノードが接続された下側線路(402)と、前記上側線路(401)と前記下側線路(402)との間に接続された電圧保持回路(5,5A,5B,5C)とを備え、前記電圧保持回路(5,5A,5B,5C)は、前記サージ電圧により電荷を蓄える蓄電部(51,53,56,58)と、前記蓄電部(51,53,56,58)の電荷を放電させる放電部(52,54,57,59)とを有する、回転電機(3)。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0052】
1…スイッチング回路
100…回転電機装置
111~116…第1乃至第6のスイッチング素子
2…電線ケーブル
21…U相電線
22…V相電線
23…W相電線
24…シールド導体
3,3A,3B,3C…回転電機
30…回転電機本体
321…U相巻線
322…V相巻線
323…W相巻線
33…U相接続線路
34…V相接続線路
35…W相接続線路
4,4B,4C…サージ抑制回路
411~413…第1乃至第3の上側ダイオード
421~423…第1乃至第3の下側ダイオード
431…第1の突入電流抑制抵抗器
432…第2の突入電流抑制抵抗器
441~446…第1乃至第6の突入電流抑制抵抗器
5,5A,5B,5C…電圧保持回路
51,53,56,58…蓄電部
52…放電部
521…放電抵抗器
522…定電圧ダイオード
54,57,59…放電抵抗器
55…突入電流抑制抵抗器
図1
図2
図3
図4
図5
図6