(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135943
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸着材、二酸化炭素の吸着方法及び二酸化炭素の分離方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/18 20060101AFI20220908BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20220908BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220908BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20220908BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20220908BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20220908BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20220908BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220908BHJP
【FI】
B01J20/18 A ZAB
B01J20/34 H
B01J20/28 Z
B01D53/62
B01D53/96
B01D53/04 230
B01D53/82
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015187
(22)【出願日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2021035883
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】引間 脩
(72)【発明者】
【氏名】大西 良治
(72)【発明者】
【氏名】武脇 隆彦
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA04
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4D002EA08
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4D002GB02
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4G066AA61B
4G066BA09
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4G066GA32
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC08
4G146JC27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気体中に含まれる二酸化炭素を高効率で回収できる二酸化炭素吸着材及びこれを用いた二酸化炭素の吸着方法と分離方法を提供すること。
【解決手段】コンポジット・ビルディング・ユニット(CBU)としてchaを有し、かつ積層欠陥を有するゼオライトからなる二酸化炭素吸着材である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポジット・ビルディング・ユニット(CBU)としてchaを有し、かつ積層欠陥を有するゼオライトからなる二酸化炭素吸着材。
【請求項2】
前記ゼオライトがアルミノシリケートである請求項1に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項3】
前記ゼオライトがコンポジット・ビルディング・ユニット(CBU)として、aftおよびgmeの少なくとも何れかを有する請求項1又は2に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項4】
前記ゼオライトの粉末X線回折ピーク(Cu-Kα線)のピーク位置(2θ)が7.65±0.3°、9.75±0.3°、13.0±0.2°、16.2±0.3°、17.85±0.2°、20.8±0.3°、26.1±0.2°、30.75±0.3°、34.75±0.2°である請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項5】
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3(モル比)が2~2000である請求項1~4のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項6】
前記ゼオライトの平均一次粒子径が10nm~100μmである請求項1~5のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項7】
気体を請求項1~6のいずれか1項に記載する二酸化炭素吸着材に接触させることにより、前記気体中の二酸化炭素を前記二酸化炭素吸着材に吸着させる二酸化炭素の吸着方法。
【請求項8】
前記気体中の二酸化炭素の含有量が2~65体積%であり、前記気体を前記二酸化炭素吸着材に20~50℃で接触させる請求項7に記載の二酸化炭素の吸着方法。
【請求項9】
吸着材を用いて、温度スイング式吸着ガス分離法により、気体中の二酸化炭素を分離する方法であって、前記吸着材が請求項1~6のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸着材である二酸化炭素の分離方法。
【請求項10】
前記気体中の二酸化炭素の含有量が2~65体積%である請求項9に記載の二酸化炭素の分離方法。
【請求項11】
前記温度スイング式吸着ガス分離法が二酸化炭素を20~50℃で吸着させる工程および二酸化炭素を60~100℃で脱着させる工程を有する請求項9又は10に記載の二酸化炭素の分離方法。
【請求項12】
温度スイング式吸着ガス分離法により気体中の二酸化炭素を吸着する二酸化炭素の吸着装置であって、二酸化炭素の吸着材として、請求項1~6のいずれか1項に記載する二酸化炭素吸着材を備える二酸化炭素の吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸着材及びその吸着材を用いた二酸化炭素の吸着方法と分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの一つとして排出量削減が課題とされている。そして、2016年に発効されたパリ協定に従った、二酸化炭素の排出量削減に向けての対策が急務となっている。
二酸化炭素の排出量に関しては、石炭、重油、天然ガス等を燃料とする火力発電所、製鉄所の高炉、セメント工場のキルン、製造所のボイラー等から排出されるガスには、大量の二酸化炭素が含まれている。今日、このような施設から排出されるガスを対象にして、当該ガスに含まれる二酸化炭素を分離回収し、圧縮して、圧入するという一連の二酸化炭素の分離回収貯留(Carbon dioxide Capture and Storage、CCS)技術が、化石燃料に代わる代替エネルギー開発までの繋ぎ技術として注目されている。
【0003】
この貯留技術を実用化するためには、可能な限りの低コスト化が要求される。また、現在、二酸化炭素の分離回収、圧縮、圧入の一連の工程の中では、二酸化炭素の分離回収に要するコストが二酸化炭素の分離回収貯留に係わる総コストの60%以上を占めていることから、この二酸化炭素の分離回収コストを低減するための技術開発が重要となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、ゼオライトを吸着材として用いたスイング式吸着ガス分離方法により、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を回収する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された方法において用いられているゼオライトは、GIS型ゼオライト及びMWF型ゼオライトであるが、二酸化炭素の吸着量が少ない。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、気体中に含まれる二酸化炭素を効率よく回収できる二酸化炭素吸着材及びこれを用いた二酸化炭素の吸着分離による回収方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた。その結果、特定の構造を有するゼオライトを用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]を提供する。
[1]コンポジット・ビルディング・ユニット(CBU)としてchaを有し、かつ積層欠陥を有するゼオライトからなる二酸化炭素吸着材。
[2]前記ゼオライトがアルミノシリケートである上記[1]に記載の二酸化炭素吸着材。
[3]前記ゼオライトがコンポジット・ビルディング・ユニット(CBU)として、aftおよびgmeの少なくとも何れかを有する上記[1]又は[2]に記載の二酸化炭素吸着材。
[4]前記ゼオライトの粉末X線回折ピーク(Cu-Kα線)のピーク位置(2θ)が7.65±0.3°、9.75±0.3°、13.0±0.2°、16.2±0.3°、17.85±0.2°、20.8±0.3°、26.1±0.2°、30.75±0.3°、34.75±0.2°である上記[1]~[3]のいずれかに記載の二酸化炭素吸着材。
[5]前記ゼオライトのSiO2/Al2O3(モル比)が2~2000である上記[1]~[4]のいずれかに記載の二酸化炭素吸着材。
[6]前記ゼオライトの平均一次粒子径が10nm~100μmである上記[1]~[5]のいずれかに記載の二酸化炭素吸着材。
[7]気体を上記[1]~[6]のいずれかに記載する二酸化炭素吸着材に接触させることにより、前記気体中の二酸化炭素を前記二酸化炭素吸着材に吸着させる二酸化炭素の吸着方法。
[8]前記気体中の二酸化炭素の含有量が2~65体積%であり、前記気体を前記二酸化炭素吸着材に20~50℃で接触させる上記[7]に記載の二酸化炭素の吸着方法。
[9]吸着材を用いて、温度スイング式吸着ガス分離法により、気体中の二酸化炭素を分離する方法であって、前記吸着材が上記[1]~[6]のいずれかに記載の二酸化炭素吸着材である二酸化炭素の分離方法。
[10]前記気体中の二酸化炭素の含有量が2~65体積%である上記[9]に記載の二酸化炭素の分離方法。
[11]前記温度スイング式吸着ガス分離法が二酸化炭素を20~50℃で吸着させる工程および二酸化炭素を60~100℃で脱着させる工程を有する上記[9]又は[10]に記載の二酸化炭素の分離方法。
[12]温度スイング式吸着ガス分離法により気体中の二酸化炭素を吸着する二酸化炭素の吸着装置であって、二酸化炭素の吸着材として、上記[1]~[6]のいずれかに記載する二酸化炭素吸着材を備える二酸化炭素の吸着装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気体中に含まれる二酸化炭素を効率よく回収できる二酸化炭素吸着材及びこれを用いた二酸化炭素の吸着分離による回収方法を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に何ら限定されない。
【0011】
[二酸化炭素の吸着材]
本発明の二酸化炭素吸着材は、コンポジット・ビルディング・ユニットとしてchaを有し、かつ積層欠陥を有するゼオライトからなる。コンポジット・ビルディング・ユニット(以下「CBU」と記載する。)は、International Zeolite Association(以下「IZA」と記載する。)により定められたゼオライトの構造を規定するコードである。なお、本発明のゼオライト以外の物質を含む吸着材や、ゼオライト以外の材質の部材を有する吸着材についても、本発明のCBUとしてchaを有し、かつ積層欠陥を有するゼオライトが二酸化炭素の吸着材として作用している場合は、本発明の二酸化炭素の吸着材を含むこととする。
【0012】
<ゼオライト>
ゼオライトとは、ケイ素又はアルミニウムと、酸素と、を含んで構成される、TO4ユニット(T元素は、骨格を構成する酸素以外の元素)を基本単位とする化合物である。ゼオライトは、具体的には、結晶性の多孔質であるアルミノケイ酸塩(以下「アルミノシリケート」と記載する。)、結晶性の多孔質であるアルミノリン酸塩(ALPO)、又は結晶性の多孔質であるシリコアルミノリン酸塩(SAPO)等が挙げられる。ゼオライトがアルミノシリケート、アルミノリン酸塩、シリコアルミノリン酸塩等の何れのゼオライトであるかは、後述する実施例の方法により確認することができる。
ゼオライトは、このTO4ユニットが、複数個(数個~数十個)つながった構造単位(CBU)から成り立っている。そのために、規則的なチャンネル(管状細孔)とキャビティ(空洞)を有している。
ゼオライトの構造は、上述のように、CBUで示すことができるが、X線構造解析装置(例えば、BRUKER社製卓上型X線回析装置「D2PHASER」)により得られるX線回折パターンを基に、ゼオライト構造データベース2018年版(http://www.iza-structure.org/databases/)を用いて特定することもできる。
本発明のゼオライトは、上述のように、CBUとしてchaを有することを必須とする。
【0013】
<アルミノシリケート>
本発明のゼオライトは、本発明の効果が損なわれない態様であれば、特段に限定されるものではないが、二酸化炭素の吸着材用途への適用に有利であることから、骨格構造に少なくともアルミニウム原子とケイ素原子を含むアルミノシリケートが好ましい。ゼオライトは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0014】
(シリカ/アルミナのモル比)
ゼオライトのシリカ/アルミナのモル比(SiO2/Al2O3、以下「SAR」と記載することがある。)は、本発明の効果が損なわれない態様であれば、特段に制限されるものではない。ゼオライトのSARは、気体中の水分を吸収し難く、カウンターカチオンの量を制御しやすい点では、高いことが好ましい。そこで、ゼオライトのSARは、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは3.5以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは4.5以上、最も好ましくは5以上である。SARがこれらの下限値以上であることにより、耐湿性が上がり、大気のような水分も含有する気体に用いる二酸化炭素の吸着材として好適である。
一方、ゼオライトのSARは、ゼオライトを安価に製造しやすい点では、低いことが好ましく、通常2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下である。SARが、これらの上限値以下であることにより、二酸化炭素の吸着サイトとされるカウンターカチオンの量を制御しやすく、また、ゼオライトの製造コストの点で有利である。
【0015】
(平均一次粒子径)
ゼオライトの平均一次粒子径は、熱伝導性が高くなる点では大きいことが好ましい。粒子径が大きくなることにより、界面での伝熱抵抗が下がり、熱伝導性が高くなり、温度スイング条件において、温度追随が迅速になり、素早い吸脱着が起こる。また、一方で、質量当たりの細孔外表面積が大きくなり、粒子間で気体が拡散しやすい点では小さいことが好ましい。そこで、具体的には、ゼオライトの平均一次粒子径は、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、50nm以上が更に好ましく、100nm以上が特に好ましい。また、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましく、10μm以下が特に好ましい。
なお、ゼオライトの平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による粒子の観察によって測定することができる。本発明では、ゼオライトの一次粒子径は、SEM像において、最大径となる円の直径(円相当径)とする。また、任意の10個のゼオライトの平均値を平均一次粒子径とする。
【0016】
(平均二次粒子径)
本発明のゼオライトは、多数の一次粒子が二次粒子を形成している場合がある。ゼオライトの平均二次粒子径は、熱伝導性が高くなる点では高いことが好ましい。また、一方で、ゼオライトの成型性や塗布性に優れ、取り扱いが容易である点では低いことが好ましい。そこで、具体的には、ゼオライトの平均二次粒子径は100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、500nm以上が更に好ましく、1μm以上が特に好ましい。また、1mm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましく、100μm以下が特に好ましい。
なお、ゼオライトの平均二次粒子径についても、走査電子顕微鏡(SEM)による粒子の観察によって測定することができる。
【0017】
(ゼオライトのカウンターカチオン)
ゼオライトは、通常負電荷を有し、これを中和するカウンターカチオンを有する。カウンターカチオンは、本発明の効果が損なわれない態様であれば、特段に限定されるものではない。ゼオライトのカウンターカチオンは、通常、構造規定剤;プロトン;Li、Naなどアルカリ金属イオン;Mg、Caなどのアルカリ土類金属イオン;La、Ce等の希土類元素イオン;Fe、Co、Ni等の遷移金属等があげられ、好ましくは、構造規定剤、プロトン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンである。
ゼオライトのカウンターカチオンが構造規定剤である場合には、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンに比べ、骨格が安定し、吸脱着サイクル耐久性が向上する点で好ましい。また、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンは、二酸化炭素との間の相互作用が強いため、二酸化炭素の吸着材として使用する本発明については、特に好ましい。なお、カウンターカチオンは1種類である必要はなく、プロトンとNaイオン、NaイオンとKイオンといったように複数のカチオンを含んでもよい。
以上のように、ゼオライトとしては、as-made(構造規定剤含有型)、プロトン型、アルカリ金属型、アルカリ土類金属型であることが好ましい。なお、構造規定剤とは、ゼオライトの製造で用いるテンプレートのことである。
【0018】
(ゼオライト構造の熱膨張係数)
ゼオライト骨格は負の熱膨張係数を有し、加熱すると収縮する特性を有する。これは骨格内に空隙を有することから、体積の膨張を伴う結合の縦振動より、体積の収縮を伴う結合の横振動が優位になることが原因である。ゼオライトの熱膨張係数は、例えば350℃以上の温度にて脱水した後に、乾燥空気下にて各温度で測定したXRDから格子定数を求め、その変位を計算することで算出することができる。
なお、ここで、「XRD」とは、X線回折法(X-ray diffraction)を意味する。
【0019】
(CBUごとの熱膨張係数)
幾つかの種類のゼオライト構造と、それぞれを形作るCBU、およびXRDから求めた熱膨張係数を表1に示す。なお、ここでは、熱膨張係数として体積膨張係数の値を用いて比較する。代表的なゼオライト種と比較して、CHA型の体積膨張係数が最も負に大きい。CBU種の比較から、この大きな負の体積膨張係数は、CBUとしてchaを有することに起因していると考えられる。そして、後述するとおり、熱膨張係数が負に大きいゼオライトは、二酸化炭素の脱着機能に優れると考えらえる。
すなわち、本発明のゼオライトは、CBUとしてchaを有するために、二酸化炭素の吸脱着能に優れ、二酸化炭素吸着材として好適であると考えられる。なお、FAUはフォージャサイト型、LTAはA型ゼオライト、MFIはZSM-5としても知られるゼオライトである。
【0020】
【0021】
<積層欠陥>
本発明のゼオライトは積層欠陥を有することが特徴である。ここでいう積層欠陥を有するゼオライトとは、通常のゼオライト構造を形成する周期構造の一部が並び違いし、異なる周期構造を持つゼオライトの層が単層~複数層挿入されていることをいう。積層欠陥を有する構造はIZAのホームページ内のIntergrowth familiesを参照することができる(http://asia.iza-structure.org/iza-SC/intergrowth_table.html)。
積層欠陥を有するゼオライトは、積層欠陥部分に格子欠陥を多く有することが知られている。そこで、これらの欠陥が空隙として作用することで、積層欠陥を有するゼオライトの熱膨張係数は負に大きくなると考えられる。熱膨張係数が負に大きければ、温度スイング吸脱着プロセスを想定した高温での脱離において、構造が大きく収縮して吸着していたガスを効率よく脱着することが期待される。このことから、二酸化炭素吸着材としては積層欠陥を有するゼオライトを用いるのが好ましい。
以上のように、ゼオライトの熱膨張係数が負に大きい方が、温度スイング吸脱着プロセスを想定した高温での脱離において、構造が大きく収縮して吸着していたガスを効率よく脱着することが期待される。積層欠陥を有するゼオライトの中でも、CBUとしてchaを有する本発明に係るゼオライトは、二酸化炭素吸着材として特に好ましいと考えられる。
なお、積層欠陥を有する本発明のゼオライトは、CBUとして、aftおよびgmeの少なくとも何れかを有することが好ましい。
【0022】
ゼオライトが積層欠陥を有することは、粉末X線回折ピーク(Cu-Kα線)から判断することができる。具体的には、CBUとしてchaを有し、積層欠陥を有するゼオライトの粉末X線回折ピーク位置(2θ)は、7.65±0.3°、9.75±0.3°、13.0±0.2°、16.2±0.3°、17.85±0.2°、20.8±0.3°、26.1±0.2°、30.75±0.3°、34.75±0.2°に現れることが好ましく、7.65±0.2°、9.75±0.2°、13.0±0.1°、16.2±0.2°、17.85±0.1°、20.8±0.2°、26.1±0.15°、30.75±0.2°、34.75±0.1°に現れることがより好ましい。
【0023】
<ゼオライトの製造方法>
本発明のゼオライトの製造方法について、以下に記載する。
本発明のゼオライトの製造方法は、原料組成物を水熱合成する工程を有する。
また、本発明のゼオライトの製造方法は、シリカ源、アルミニウム源及びアルカリ金属を含む原料ゲルを調製する工程、シリカ源、アルミニウム源、アルカリ金属化合物及び有機構造規定材を水熱合成することにより前駆体組成物を製造する工程、前記原料ゲルと前記前駆体組成物を、前駆体組成物中のケイ素原子/原料ゲル中のケイ素原子がモル比で、0.01以上1.00以下となるように混合することにより原料組成物を調製する工程、および得られる混合物を10~240℃で水熱合成する工程を有する。
本発明のゼオライトの製造方法は、原料の一部を予め前駆体組成物としておくことにより、各原料が適度に溶解し、結晶核を生成していくことにより、構造欠陥を生じやすくすることができる。
【0024】
(原料ゲルの調製)
本発明のゼオライトの製造方法に用いる原料組成物に含まれる原料ゲルは、シリカ源、アルミニウム源、アルカリ金属を含む化合物を用いて調製する。原料ゲルの調製には、本発明の効果を大幅に阻害しない限り、更にアルカリ土類金属を含む化合物、有機構造規定材、種晶などのこれら以外の成分を用いてもよい。
【0025】
<<原料等>>
シリカ源は、ゼオライトを構成するケイ素原子になる原料化合物のことを言う。シリカ源としては、ヒュームドシリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチルなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、ヒュームドシリカおよびコロイダルシリカが取扱い易く反応性が高いので好ましい。
【0026】
アルミニウム源は、ゼオライトを構成するアルミニウム原子になる原料化合物のことを言う。アルミニウム源は、通常、擬ベーマイト、ギブサイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド;水酸化アルミニウム;アルミナゾルおよびアルミン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、及び擬ベーマイトが取り扱い易く反応性が高い点で好ましい。
【0027】
アルカリ金属を含む化合物は、NaOH、KOHなどのアルカリ金属の水酸化物、などを用いることができる。アルカリ金属の種類は特に限定されず、通常Na、K、Li、Rbが挙げられ、好ましくはNaおよびKである。また、アルカリ金属を含む化合物は2種類以上を併用してもよい。
また、アルカリ土類金属を含む化合物を用いてもよい。アルカリ土類金属を含む化合物としては、Ca(OH)2などを用いることができる。アルカリ土類金属の種類は特に限定されず、通常Ca、Mg、Sr、Baが挙げられる。また、アルカリ土類金属を含む化合物は2種類以上を併用してもよい。
【0028】
ゼオライトの合成に用いられる有機構造規定材としては、通常、アミン類、4級アンモニウム塩類などが用いられる。例えば、CHA型のアルミノシリケートを合成する場合には、米国特許第4544538号明細書、米国特許公開第2008/0075656号明細書に記載の有機テンプレートが好ましいものとして挙げられる。なお、得られるゼオライトの組成によっては、有機構造規定材は必ずしも必要ではない。
【0029】
原料ゲルの調製には、種晶を用いてもよい。種晶としては、通常ゼオライトを用いる。種晶は、製造されるゼオライトがアルミノシリケートであれば、同じくアルミノシリケートのゼオライトが好ましく、CBUとしてd6rが含まれるアルミノシリケートのゼオライトがより好ましい。種晶には、その一部としてアモルファス成分を含んでいてもよい。また、種晶として用いるゼオライトは、有機構造規定材を含むものでもよいし、含まないものでもよい。種晶となるゼオライトの製造方法は、特に限定されず、本発明のゼオライトの製造方法により製造されたものであってもよく、他の方法、例えばオートクレーブ等を用いて一般的なバッチ方式で製造されたものであってもよい。種晶の量としては、種晶として結晶化を促す効果が発現しやすい点では多いことが好ましい。また、一方で、種晶の溶解がしやすく、種晶として機能しやすい点では少ないことが好ましい。そこで、原料組成物に含まれるシリカ源に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、一方で、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0030】
(前駆体組成物の製造)
本発明のゼオライトの製造方法に用いる原料組成物に含まれる前駆体組成物は、シリカ源、アルミニウム源、アルカリ金属化合物及び有機構造規定材を水熱合成することにより製造する。
前駆体組成物の製造には、本発明の効果を大幅に阻害しない限り、更にアルカリ土類金属を含む化合物などのこれら以外の成分が含まれていてもよい。ここで、用いられる原料としては、上述の原料ゲルの調製において用いた原料等と同様のものを用いることができる。
前駆体組成物を製造する水熱合成の温度は、ゼオライトの結晶化が開始されやすい点では低いことが好ましい。また、一方で、原料等が十分に溶解しやすい点では高温であることが好ましい。そこで、前駆体組成物を製造する水熱合成温度は、通常、室温(10℃)以上、好ましくは50℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、また、一方で、通常、150℃以下、好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。なお、2つ以上の温度帯で順を追って水熱合成を行ってもよい。
【0031】
(原料組成物の調製)
原料組成物の調製は、上述の原料ゲルと前駆体組成物を混合することにより行う。原料ゲルと前駆体組成物は、前駆体組成物中のケイ素原子/原料ゲル中のケイ素原子がモル比で、0.01以上1.00以下となるように混合する。このモル比は、前駆体組成物を用いることにより構造欠陥が生じやすい点では高いことが好ましい。また、一方で、前駆体組成物を製造する手間とコストを軽減できる点では低いことが好ましい。そこで、このモル比は、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、特に好ましくは0.05以上、最も好ましくは0.10以上とする。また、上限は通常1.00程度である。
【0032】
(原料組成物の水熱合成)
本発明のゼオライトは、上述の原料組成物を水熱合成することにより製造することができる。原料組成物の水熱合成温度は、構造欠陥が生じやすい点では低温で行うことが好ましい。また、一方で、反応が進行しやすい点では高温とすることが好ましい。そこで、原料組成物の水熱合成温度は、通常、10℃以上、好ましくは50℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、また、一方で、通常240℃以下、好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下とする。
【0033】
<<カチオン交換>>
本発明のゼオライトの製造方法は、更に、上述の水熱合成により得られるゼオライトのカチオン型を交換する工程を有していてもよい。また、先述の前駆体組成物を製造する工程についても、水熱合成により得られるゼオライトのカチオン型を交換する工程を有していてもよい。
水熱合成により得られるゼオライトは、必要に応じて、得られたゼオライトを、所望のカチオン型へカチオン交換することができる。カチオン交換は、以下に限定されないが、例えば、NH4NO3、LiNO3、NaNO3、KNO3、RbNO3、CsNO3、Be(NO3)2、Ca(NO3)2、Mg(NO3)2、Sr(NO3)2、Ba(NO3)2などの硝酸塩、或いはこれらの硝酸塩に含まれる硝酸イオンに代えて、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオンとした塩、および硝酸や塩酸などの酸を用いて行うことができる。カチオン交換の温度は、一般的なカチオン交換の温度であれば特に限定されないが、通常、10℃以上、100℃以下である。また、アンモニウム型ゼオライトは、該ゼオライトを焼成することによりプロトン型ゼオライトに変換することもできる。
【0034】
[二酸化炭素の吸着方法]
本発明の二酸化炭素の吸着方法は、気体を上述の吸着材に接触させることにより、気体中の二酸化炭素を二酸化炭素の吸着材に吸着させる。この方法は、二酸化炭素の含有量が2~65体積%である気体に適用することが好ましく、3~60体積%である気体に適用することがより好ましく、4~55体積%である気体に適用することがさらに好ましい。二酸化炭素の含有量が上記範囲であると、二酸化炭素が効率的を吸着させることができる。
また、二酸化炭素を吸着させる際の温度は、20~50℃の範囲とすることが好ましく、25~45℃とすることがより好ましく、30~40℃とすることがさらに好ましい。
【0035】
[二酸化炭素の分離方法]
本発明の二酸化炭素の吸着材は、二酸化炭素の吸着能が高く、かつ高温で二酸化炭素を脱着させる能力が高い。したがって、本発明の二酸化炭素の吸着材を用いて、温度スイング式吸着ガス分離法を用いることにより、効率的に気体中の二酸化炭素を分離することができる。
気体中の二酸化炭素の含有量及び二酸化炭素を吸着させる際の温度は、上述の二酸化炭素の吸着させる場合と同じ範囲が同じ理由により好ましい。また、二酸化炭素の脱着時の温度は、60~100℃とすることが好ましい。
【0036】
<二酸化炭素の吸着装置>
本発明の二酸化炭素の吸着装置は、温度スイング式吸着ガス分離法により気体中の二酸化炭素を吸着する装置である。そして、ここで、二酸化炭素の吸着材として、上述の本発明の二酸化炭素吸着材を備えている。
図4は、温度スイング式吸着ガス分離法に好適なガス吸着装置10の模式図である。温度スイング式吸着ガス分離法では、通常、ガスの吸着時の温度より脱着時の温度を高くすることにより、低温時の吸着量と高温時の吸着量の差を利用してガスの分離を行う。
原料タンク11に貯蔵された二酸化炭素を含む原料ガスは、精製手段12を経て、除塵、除湿、脱硫、脱硝が行われ、吸着材を充填した容器13に導入される。ガス導入が完了したら上流のバルブを閉じ、下流のバルブを開けて二酸化炭素が除去された残留ガスを除去する。次に二酸化炭素タンク14に回収された二酸化炭素をヒーター15で加熱し、二酸化炭素を吸着した容器13に導入し、吸着材を加熱して二酸化炭素を脱離、除去する。除去した二酸化炭素は二酸化炭素タンク14に回収される。
なお、ガス吸着装置の運転条件としては特に限定されず、種々公知の条件を採用して本実施形態のガス分離方法を実施することができる。
【0037】
本実施形態のガス分離方法において、分離対象となる原料ガスは二酸化炭素を含むものであれば、特に限定されず、例えば、水蒸気、炭化水素、メタン、窒素、一酸化炭素、水素、ヘリウム及びアルゴンなどが含まれていてもよい。
【実施例0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
<二酸化炭素の吸着量の測定>
(前処理)
二酸化炭素の吸着量の測定に先立ち、各実施例及び比較例で調製されたゼオライトを測定セルに50mg充填し、前処理装置(BELPREP vaII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定セル内を10Paで400℃、5時間加熱真空脱気処理し、測定前の前処理を行った。
(吸着量の測定)
吸着ガスとして二酸化炭素を使用した定容量ガス吸着法により、前処理後のゼオライトについて、温度30℃における吸着等温線を測定した。測定には、ガス吸着装置(Belsorp miniII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、平衡圧力0kPaから102kPaまでの各平衡圧力における二酸化炭素吸着量を測定した。
同様の測定を温度80℃においても行った。その後、得られた30℃、15kPaおよび85℃、102kPaの二酸化炭素吸着量の値から有効吸着量を計算した。具体的には、30℃、15kPaの二酸化炭素吸着量の値から85℃、102kPaの二酸化炭素吸着量の値を引いた値をその試料の有効吸着量の値とした。
【0039】
<XRD測定>
X線構造解析装置(BRUKER社製の卓上型X線回析装置「D2PHASER」)を用いてX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンを、ゼオライト構造データベース(http://www.iza-structure.org/databases/)を用いて解析した。ここで、X線回折の測定条件は、以下のとおりとした(表2)。
【0040】
【0041】
<組成分析>
ゼオライトの組成分析(アルミノシリケートであることの確認とそのSAR)は、以下のように行った。ゼライトを塩酸水溶液に加熱溶解させた後、株式会社堀場製作所製のICP分析装置(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置)「ULTIMA 2C」を用いて、ケイ素原子とアルミニウム原子の含有量(質量%)を求めた。
【0042】
実施例1
(前駆体組成物1)
容器に、有機構造規定材(SDA;Structural Directing Agent)としてセイケム社製の35質量%テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAOH)水溶液25.2g、水酸化アルミニウムとして協和化学工業株式会社製の「キョーワード200s(アルミナ含有量54.3質量%)」1.88g、キシダ化学株式会社製の1モル/LのNaOH水溶液1g、シリカとして日本アエロジル株式会社製の「AEROSIL200」3gを順次加えた。得られた混合物の組成およびモル比は、SiO2:Al2O3:NaOH:TEAOH:H2O=1:0.2:0.02:1.2:19.3であった。この混合物を均一になるまで混合した後、得られた混合物を耐圧容器に入れ、静置条件下で、50℃のオーブンで12時間、100℃のオーブンで48時間にわたり水熱合成を行った。ここで得られた液体を前駆体組成物1とする。
【0043】
(原料ゲル1)
別の容器に、キシダ化学株式会社製の水酸化ナトリウム1g、水酸化アルミニウムとして協和化学工業株式会社製の「キョーワード200s」1.13g、シリカとして日産化学株式会社製のコロイダルシリカ「スノーテックス40」7.5g、脱塩水13.5gを順次加えた。得られた混合物の組成およびモル比は、SiO2:Al2O3:NaOH:H2O=1.0:0.12:0.5:20.0であった。この混合物を均一になるまで混合することにより原料ゲル1を調製した。
【0044】
(原料組成物1)
原料ゲル1に前駆体組成物1を、(前駆体組成物中のケイ素原子/原料ゲル中のケイ素原子)のモル比が0.1となるように2.9g加え、さらに混合した。ここで得られた混合物を原料組成物1とする。
【0045】
(ゼオライト1)
原料組成物1を耐圧容器に入れ、静置条件下で、140℃のオーブンで120時間にわたり水熱合成を行った。吸引濾過および脱塩水による洗浄を行った後に、乾燥させた。得られた粉末をXRDで測定した結果、
図1に示すXRDパターンチャートを示し、表3に示すピークを有することが分かった。IZAのIntergrowth familiesとの照合から、得られた粉末が積層欠陥を有し、CBUとしてchaを有するゼオライトであることが確認された。この粉末を空気流通下で、500℃、4時間焼成することにより、SDAであるTEAOHを除去し、積層欠陥を有するゼオライト1を得た。
ゼオライト1の二酸化炭素の吸着量は、30℃、15.7kPaにおいて4.81mmol/gであり、80℃、101.6kPaにおいて4.48mmol/gであった。したがって、ゼオライト1の有効吸着量は、0.33mmol/gであった(表7)。
【0046】
実施例2
(前駆体組成物2)
容器に、キシダ化学株式会社製の水酸化ナトリウム0.08g、有機構造規定材(SDA;Structure Directing Agent)としてセイケム社製の35質量%テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAOH)水溶液50.49g、東京化成工業株式会社製のアルミニウムイソプロポキシド4.09g、東京化成工業株式会社製のテトラエチルオルソシリケート(TEOS)20.83gを順次加えた。得られた混合物の組成およびモル比はSiO2:Al2O3:NaOH:TEAOH:H2O=1:0.1:0.02:1.2:18.3であった。この混合物を均一になるまで混合した後、得られた混合物を耐圧容器に入れ、静置条件下で、50℃のオーブンで12時間、100℃のオーブンで48時間にわたり水熱合成を行った。ここで得られた液体を前駆体組成物2とする。
【0047】
(原料ゲル2)
別の容器に、キシダ化学株式会社製の水酸化ナトリウム1.37g、水酸化アルミニウムとして協和化学工業株式会社製の「キョーワード200s」1.32g、シリカとして日産化学株式会社製のコロイダルシリカ「スノーテックス40」10.44g、脱塩水21.5gを順次加えた。得られた混合物の組成およびモル比は、SiO2:Al2O3:NaOH:H2O=1.0:0.1:0.5:22.0であった。この混合物を均一になるまで混合することにより原料ゲル2を調製した。
【0048】
(原料組成物2)
原料ゲル2に前駆体組成物2を、(前駆体組成物中のケイ素原子/原料ゲル中のケイ素原子)のモル比が0.1となるように4.0g加え、さらに混合した。ここで得られた混合物を原料組成物2とする。
【0049】
(ゼオライト2)
原料組成物2を耐圧容器に入れ、15rpmの回転条件下で、140℃のオーブンで72時間にわたり水熱合成を行った。吸引濾過および脱塩水による洗浄を行った後に、乾燥させた。得られた粉末をXRDで測定した結果、
図2に示すXRDパターンチャートを示し、表4に示すピークを有することが分かった。すなわち、実施例1と同様にして、得られた粉末が積層欠陥を有し、CBUとしてchaを有するゼオライトであることが確認された。
この粉末を空気流通下で、500℃、4時間焼成することにより、SDAであるTEAOHを除去し、積層欠陥を有するゼオライト2を得た。
ゼオライト2の二酸化炭素の吸着量は、30℃、16.6kPaにおいて3.60mmol/gであり、80℃、102.4kPaにおいて3.23mmol/gであった。得られたゼオライト2の有効吸着量は、0.37mmol/gであった(表7)。
【0050】
比較例1
容器に、キシダ化学株式会社製の水酸化カリウム6.0gと、脱塩水120.0gと、日揮触媒化成株式会社製のFAU型ゼオライトであるUSY(7)12.0gを順次加えた。得られた混合物の組成及びモル比は、SiO
2:Al
2O
3:KOH:H
2O=1:0.14:0.57:41.8であった。この混合物を均一になるまで混合した後、得られた混合物を耐圧容器に入れ、15rpmの回転条件下で、100℃のオーブンで24時間にわたり水熱合成を行った。吸引濾過および脱塩水による洗浄を行った後に、乾燥させた。得られた粉末に対しXRD測定を行ったところ、構造欠陥を有さないCHA構造であることが分かった(K-CHA)。
キシダ化学株式会社製の硝酸アンモニウムおよび脱塩水を用いて調製した1モル/Lの硝酸アンモニウム水溶液に5質量%の得られたK-CHA粉末を加え、80℃で2時間にわたり撹拌し、吸引濾過および脱塩水による洗浄を行った。同様の作業を3回繰り返すことにより、カチオンがアンモニウムイオンに交換されたCHA(NH
4-CHA)型ゼオライトを得た。続いて、キシダ化学株式会社製の硝酸ナトリウムおよび脱塩水を用いて調製した1モル/Lの硝酸ナトリウム水溶液に5質量%のNH
4-CHA型ゼオライトを加え、80℃で2時間にわたり撹拌し、吸引濾過および脱塩水による洗浄を行った。同様の作業を3回繰り返した後、空気流通下で600℃、2時間にわたり焼成することにより、カチオンがナトリウムイオンに交換されたCHA(Na-CHA)型ゼオライト3を得た。得られた粉末をXRDで測定した結果、
図5に示すXRDパターンチャートを示し、Na-CHA型ゼオライトであることが確認できた。
得られたゼオライト3の二酸化炭素の吸着量は、30℃、15.4kPaにおいて5.12mmol/gであり、80℃、102.2kPaにおいて4.87mmol/gであった。したがって、得られたゼオライト3の有効吸着量は、0.25mmol/gであった(表7)。
【0051】
実施例3
(種晶1)
容器に、キシダ化学株式会社製の水酸化カリウム4.514g、脱塩水89.7gと、日揮触媒化成株式会社製のFAU型ゼオライト「USY(7)」8.957gを順次加えた。得られた混合物の組成及びモル比は、SiO2:Al2O3:KOH:H2O=1.0:0.14:0.57:41.8であった。この混合物を均一になるまで混合した後、得られた混合物を耐圧容器に入れ、15rpmの回転条件下で、100℃のオーブンで24時間にわたり水熱合成を行った。吸引濾過および脱塩水による洗浄を行った後に、乾燥させた。ここで得られた粉末を種晶1とする。
【0052】
(原料ゲル3)
別の容器に、キシダ化学株式会社製の水酸化ナトリウム1.960g、水酸化アルミニウムとして協和化学工業株式会社製の「キョーワード200s」1.888g、シリカとして日産化学株式会社製のコロイダルシリカ「スノーテックス40」14.9g、脱塩水30.8gを順次加えた。得られた混合物の組成およびモル比は、SiO2:Al2O3:NaOH:H2O=1.0:0.10:0.5:22.0であった。この混合物を均一になるまで混合することにより原料ゲル3を調製した。
【0053】
(原料組成物3)
原料ゲル3に種晶1を、(種晶/原料ゲル中のSiO2)の質量比が0.05となるように0.3g加え、さらに混合した。ここで得られた混合物を原料組成物3とする。
【0054】
(ゼオライト4)
原料組成物3を耐圧容器に入れ、静置条件下で、140℃のオーブンで120時間にわたり水熱合成を行った。吸引濾過および脱塩水による洗浄を行った後に、乾燥させた。得られた粉末をXRDで測定した結果、
図3に示すXRDパターンチャートを示し、表5に示すピークを有することが分かった。すなわち、実施例1と同様にして、得られた粉末が積層欠陥を有し、CBUとしてchaを有するゼオライト(ゼオライト4)であることが確認された。
ゼオライト4の二酸化炭素の吸着量は、30℃、15.0kPaにおいて5.65mmol/gであり、85℃、101.3kPaにおいて5.23mmol/gであった。得られたゼオライト4の有効吸着量は、0.42mmol/gであった(表7)。
【0055】
実施例4
(原料ゲル4)
容器にキシダ化学株式会社製の水酸化ナトリウム2.06g、脱塩水39.6g、東ソー株式会社製のFAU型ゼオライト「HSZ-350HUA」(SiO2/Al2O3=10.9)6.943gを順次加えた。得られた混合物の組成およびモル比は、SiO2:Al2O3:NaOH:H2O=1.0:0.09:0.5:22.0であった。この混合物を均一になるまで混合することにより原料ゲル4を調製した。
【0056】
(ゼオライト5)
原料ゲル4を耐圧容器に入れ、静置条件下で、160℃のオーブンで48時間にわたり水熱合成を行った。吸引濾過および脱塩水による洗浄を行った後に、乾燥させた。得られた粉末をXRDで測定した結果、
図4に示すXRDパターンチャートを示し、表6に示すピークを有することが分かった。すなわち、実施例1と同様にして、得られた粉末が積層欠陥を有し、CBUとしてchaを有するゼオライト(ゼオライト5)であることが確認された。
ゼオライト5の二酸化炭素の吸着量は、30℃、15.2kPaにおいて3.11mmol/gであり、85℃、102.9kPaにおいて2.36mmol/gであった。得られたゼオライト5の有効吸着量は、0.75mmol/gであった(表7)。
【0057】
比較例2
容器に、キシダ化学株式会社製の水酸化ナトリウム1.5g、水酸化カリウム1.0g、キシダ化学株式会社製のアルミン酸ナトリウム1.0g、シリカとして日産化学株式会社製のコロイダルシリカ「スノーテックス40」14.9g、脱塩水10.0gを順次加えた。得られた混合物の組成及びモル比は、SiO
2:Al
2O
3:NaOH:KOH:H
2O=1.0:0.06:0.51:0.15:10.6であった。この混合物を均一になるまで混合した後、得られた混合物を耐圧容器に入れ、静置条件下で、140℃のオーブンで168時間にわたり水熱合成を行った。吸引濾過および脱塩水による洗浄を行った後に、乾燥させた。得られた粉末をXRDで測定した結果、
図6に示すXRDパターンチャートを示し、ERI構造とOFF構造が積層して形成された積層欠陥を有するT型ゼオライト(ゼオライト6)であることが確認された
得られたゼオライト6の二酸化炭素の吸着量は、30℃、14.9kPaにおい2.62mmol/gであり、85℃、102.4kPaにおいて2.48mmol/gであった。得られたゼオライト6の有効吸着量は、0.14mmol/gであった(表7)。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
本発明により、工場や自動車排ガス中等に含まれる二酸化炭素を効率的に分離回収することができる。分離回収した二酸化炭素は、例えば、圧縮して、輸送の後、圧入するという一連の二酸化炭素分離回収貯留(Carbon dioxide Capture and Storage、CCS)技術に供することができるため、大気中への二酸化炭素の排出量を減らすことができ、地球温暖化の問題を解消する有力な手段の一つとすることができる。