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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135952
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220908BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220908BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220908BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220908BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B27/36 102
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019661
(22)【出願日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2021033430
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 理恵
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AH06
4F100AH06A
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AK51
4F100AK51A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB05
4F100CB05B
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ67
4F100EJ67A
4F100EJ86
4F100GB32
4F100HB31
4F100HB31C
4F100JK06
4F100JL13
4F100JL13B
4F100JN01
4J004AB01
4J004CA06
4J004CE01
4J004DB02
4J004FA08
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA05
(57)【要約】
【課題】印刷層の密着性に優れた粘着フィルムを提供する。
【解決手段】基材11と、基材11の片面に積層された粘着層12とを備える粘着フィルム10であって、基材11は、シランカップリング剤を含有するポリウレタン樹脂からなることを特徴とする粘着フィルム10である。基材11の粘着層12とは反対側の面には、印刷層15を形成することができる。粘着層12の基材11とは反対側の面には、被着体20を貼合することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の片面に積層された粘着層とを備える粘着フィルムであって、
前記基材は、シランカップリング剤を含有するポリウレタン樹脂からなることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項2】
前記基材における前記シランカップリング剤の含有量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して0.1~2重量部であることを特徴とする請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記シランカップリング剤として、有機官能基としてエポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、有機官能基としてアクリル基を有する第2のシランカップリング剤とを含み、前記第1のシランカップリング剤と、前記第2のシランカップリング剤との重量比は、0.5:1~1:0.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂が、架橋剤で架橋されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂が、ポリカーボネート系ポリウレタンであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記基材の前記粘着層とは反対側の面に、カバーフィルムを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記基材の前記粘着層とは反対側の面に、印刷層が形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記粘着層の前記基材とは反対側の面に、剥離フィルムを有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記粘着層の前記基材とは反対側の面に、被着体のガラスが貼合されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の表面を保護したり、表面に装飾を施したりする等の目的で、粘着フィルムが使用されている。
例えば、特許文献1には、ポリ塩化ビニルフィルムを基材として、アクリル系粘着剤から形成された粘着層を積層した加飾成形用フィルムを用いることにより、三次元曲面部にも柔軟に追従できることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、自動車の塗装鋼板表面上に貼着するための粘着シートにおいて、基材がポリカーボネート系ポリウレタンからなる硬質層とポリエステル系ポリウレタンからなる軟質層とを含み、粘着剤層がカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー等を共重合成分とするアクリル系粘着剤から形成されることが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、ポリエステル系またはポリカーボネート系のポリウレタン樹脂の無延伸フィルムよりなる基材の一面に粘着剤層を積層し、基材の他面に、装飾表示層を設けた薄膜マーキングシートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6577380号公報
【特許文献2】特許第4886969号公報
【特許文献3】特開2003-295769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
物品の表面に使用される粘着フィルムでは、基材に対する印刷等により、加飾を施す場合がある。特許文献1には、ポリ塩化ビニルフィルムに可塑剤を添加することにより、3次元曲面への貼り付けを容易とする伸びと、加飾成形用の印刷性に優れるとの記載がある。しかし、有機塩素系化合物を使用することから、用途が制限されるおそれがある。
【0007】
特許文献2には、小石等の物体が跳ね上げられて車体を損傷させる現象であるチッピングに対して、車体を保護するため、粘着シートを貼着する記載があるが、粘着シートに印刷等を施す記載はない。
特許文献3には、基材の他面に金属蒸着、印刷、箔押し等により装飾表示層を形成することが記載されているが、装飾表示層を形成した上には、透明樹脂を塗布して保護層(トップコートクリヤー層)を形成することが好ましいとされている。
【0008】
印刷層の上に保護層を形成すれば、印刷層の剥離等を効果的に抑制することができる。しかし、保護層を形成する工程が煩雑である。また、物品の種類等によっては、透明樹脂を塗布する工程が容易に実施できない場合がある。基材に対する印刷層の密着性を向上するためには、基材上の印刷層が形成される面に、プライマー等の易接着層を設けることも考えられる。しかし、易接着層を形成する工程が煩雑である。また、物品の種類等によっては、易接着層を形成する工程が容易に実施できない場合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、印刷層の密着性に優れた粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、基材と、前記基材の片面に積層された粘着層とを備える粘着フィルムであって、前記基材は、シランカップリング剤を含有するポリウレタン樹脂からなることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0011】
前記基材における前記シランカップリング剤の含有量は、前記ポリウレタン樹脂の100重量部に対して0.1~2重量部であってもよい。より好ましくは0.2~1.0重量部であってもよい。
前記シランカップリング剤として、有機官能基としてエポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、有機官能基としてアクリル基を有する第2のシランカップリング剤とを含み、前記第1のシランカップリング剤と、前記第2のシランカップリング剤との重量比は、0.5:1~1:0.5であってもよい。重量比は0.7:1~1:0.7であってもよい。
【0012】
前記ポリウレタン樹脂が、架橋剤で架橋されていてもよい。
前記ポリウレタン樹脂が、ポリカーボネート系ポリウレタンであってもよい。
前記基材の前記粘着層とは反対側の面に、カバーフィルムを有してもよい。
前記基材の前記粘着層とは反対側の面に、印刷層が形成されていてもよい。
前記粘着層の前記基材とは反対側の面に、剥離フィルムを有してもよい。
前記粘着層の前記基材とは反対側の面に、被着体のガラスが貼合されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷層の密着性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】粘着フィルムの一例を示す断面図である。
図2】粘着フィルムを貼合した被着体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0016】
図1に、粘着フィルムの一例を示す。粘着フィルム10は、基材11と、基材11の片面に積層された粘着層12とを備える。基材11の粘着層12とは反対側の面は、印刷等の加飾が可能な加飾面11aとなっている。粘着層12の基材11とは反対側の面は、物品等への貼合が可能な粘着面12aとなっている。
【0017】
基材11は、シランカップリング剤を含有するポリウレタン樹脂から形成されている。これにより、加飾面11aに印刷等の加飾を施す場合にも、基材11に対する加飾の密着性を改善することができる。
【0018】
ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物を主体とする樹脂であれば特に限定されず、公知のポリウレタン樹脂から適宜選択して用いることができる。基材11が1種のポリウレタン樹脂を含有してもよく、2種以上のポリウレタン樹脂を含有してもよい。
【0019】
ポリオールとしては、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル系ポリオール、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ラクトン系ポリオール等が挙げられる。ポリオールは、1分子に2個の水酸基を有するジオールでもよく、1分子に3個の水酸基を有するトリオールでもよい。ポリオールが4個以上の水酸基を有してもよい。
【0020】
ポリイソシアネートとしては、1分子に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートでもよく、1分子に3個のイソシアネート基を有するトリイソシアネートでもよい。ポリイソシアネートが、4個以上のイソシアネート基を有してもよい。ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0021】
少なくとも1種以上のジオールと、少なくとも1種以上のジイソシアネートとを反応させることにより、線状のポリウレタン樹脂を得ることができる。ポリオールの少なくとも一部として、1分子に3個以上の水酸基を有する化合物を用いたり、ポリイソシアネートの少なくとも一部として、1分子に3個以上のイソシアネート基を有する化合物を用いたりすることにより、架橋構造のポリウレタン樹脂を得ることができる。架橋されたポリウレタン樹脂を用いると、飛散防止フィルム等の機械的強度や耐久性が要求される粘着フィルム10の場合にも、基材11の機械的強度や耐久性を向上することができる。
【0022】
イソシアネート基に対して未反応の水酸基を有するポリウレタン樹脂に対し、架橋剤として、ポリイソシアネートを反応させることにより、ポリウレタン樹脂を架橋させることができる。イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂に対し、架橋剤として、ポリオールを反応させても、ポリウレタン樹脂を架橋させることができる。ポリウレタン樹脂に対する架橋剤は、ポリイソシアネートやポリオールに限定されるものではなく、ポリウレタン樹脂の有する水酸基やイソシアネート基等の官能基に対して反応することが可能な適宜の架橋剤を使用してもよい。架橋剤の割合は、適宜設定することが可能であるが、例えば、ポリウレタン樹脂100重量部に対して、架橋剤5~20重量部が挙げられる。ポリウレタン樹脂は上記のいずれも使用できるが、ポリカーボネート系ポリウレタンであってもよい。その場合には、相対的に耐久性に優れる利点を有する。
【0023】
基材11の厚さは特に限定されないが、例えば、30~150μm程度が挙げられる。基材11の厚さは、100μm以下がより好ましく、80μm以下がさらに好ましい。基材11を形成する方法としては、特に限定されず、インフレーション成形、押出成形、溶液キャスト、熱プレス、カレンダー成形、切削などが挙げられる。
【0024】
例えば、溶液キャストにより基材11を形成する場合は、溶剤に溶解したポリウレタン樹脂を所定の塗布面に塗布した後、溶剤を乾燥させることにより、ポリウレタン樹脂をフィルム状に形成することができる。溶剤としては、特に限定されないが、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤などが挙げられる。
【0025】
熱可塑性または溶剤可溶性を有するポリウレタン樹脂をフィルム状に形成した後で、ポリウレタン樹脂に添加した架橋剤を反応させることにより、ポリウレタン樹脂を架橋させてもよい。これにより、基材11の形成に適した加工性と、基材11の用途に適した耐久性を両立しやすくなる。
【0026】
水分等に対する耐久性の観点からは、加水分解性の低いポリカーボネート系またはポリエーテル系のポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。溶液キャスト等における塗工性、生産性の観点からは、架橋前のポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万~10万程度が好ましく、2.5万~6万程度であってもよい。架橋後のポリウレタン樹脂のゲル分率は、50~90%程度が好ましく、70~80%程度が好ましい。
【0027】
実施形態の基材11は、シランカップリング剤を含有する。(C)シランカップリング剤としては、1分子中に、少なくとも1つの有機官能基と、少なくとも1つの加水分解性基を有する化合物が挙げられる。加水分解性基としては、ケイ素原子に結合した、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。有機官能基としては、エポキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ビニル基、アミノ基、イソシアネート基、酸無水物基などが挙げられる。以下の説明では、アクリロキシ基またはメタクリロキシ基を総称して、(メタ)アクリロキシ基という場合がある。
【0028】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジアルコキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリアルコキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジアルコキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルアルコキシシラン等が挙げられる。
ビニル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、p-スチリルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0030】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリアルコキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリアルコキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジアルコキシシラン等が挙げられる。
イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-イソシアネートプロピルトリアルコキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジアルコキシシラン等が挙げられる。
酸無水物基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-(トリアルコキシシリル)プロピルコハク酸無水物、3-(メチルジアルコキシシリル)プロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0031】
シランカップリング剤の割合は、適宜設定することが可能であるが、例えば、ポリウレタン樹脂100重量部に対して、シランカップリング剤0.1~2重量部が挙げられる。基材11が2種以上のシランカップリング剤を含有してもよい。その場合、2種以上のシランカップリング剤の合計量がポリウレタン樹脂100重量部に対して0.1~2重量部であってもよい。シランカップリング剤の有機官能基は、印刷インキに含まれる樹脂の種類に応じて、選択することが好ましい。
【0032】
前記エポキシ基を有するシランカップリング剤、および、アミノ基、ウレイド基、および/またはイソシアヌレート基を有するシランカップリング剤は、熱硬化インキの密着性を高める効果が相対的に高い。また、前記(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤、およびビニル基を有するシランカップリング剤は、UV硬化インキの密着性を高める効果が相対的に高い。
【0033】
前記シランカップリング剤として、有機官能基としてエポキシ基を有する第1のシランカップリング剤と、有機官能基としてアクリル基を有する第2のシランカップリング剤とを含んでいてもよい。この場合には、熱硬化インキに対しても、また、UV硬化インキに対しても密着性を高めることができ、汎用性を高めることができる。前記第1のシランカップリング剤と、前記第2のシランカップリング剤との重量比は0.5:1~1:0.5であってもよい。この場合には、熱硬化インキに対しても、また、UV硬化インキに対してもバランスよく密着性を高めることが可能となる。前記第1のシランカップリング剤と、前記第2のシランカップリング剤との重量比は0.7:1~1:0.7であってもよい。
【0034】
基材11は、必要に応じて、着色剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤等の添加剤が添加されていてもよい。基材11は、着色剤等を添加しない場合、高い透明性を付与することができる。基材11の透明性としては、例えば、全光線透過率90%以上、ヘイズ2%以下が挙げられる。
【0035】
粘着層12は、粘着剤から形成されている。粘着剤は、特に限定されず、粘着フィルム10が貼合される物品等に応じて、公知の粘着剤から適宜選択して用いることができる。粘着層12は、基材11と接するように積層されてもよい。基材11と粘着層12との間に他の層が介在してもよい。透明性、耐候性等の観点からは、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が挙げられる。
【0036】
アクリル系粘着剤としては、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート等の主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレート等のコモノマー、あるいは、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N-メチロールメタクリルアミドなどの官能性モノマーを共重合したアクリル系ポリマーを用いた粘着剤が挙げられる。アクリル系ポリマーの粘着力を向上するため、ポリイソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能性エポキシ化合物、金属キレート化合物等の架橋剤を用いて架橋させてもよい。
【0037】
ポリエステル系粘着剤としては、ジカルボン酸等のポリカルボン酸と、ジオール等のポリオールとを重縮合させて得られるポリエステル系ポリマーを用いた粘着剤が挙げられる。ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。ジオールとしては、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリエーテルグリコール等が挙げられる。ポリエステル系ポリマーの粘着力を向上するため、ポリイソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能性エポキシ化合物、金属キレート化合物等の架橋剤を用いて架橋させてもよい。
【0038】
粘着層12を形成する方法は特に限定されないが、粘着剤(ポリマー)と架橋剤を含有する粘着剤組成物を基材11に塗布した後、養生(エージング)により粘着剤を架橋剤で架橋して粘着層12を形成してもよい。架橋剤の割合は、適宜設定することが可能であるが、例えば、粘着剤100重量部に対して、架橋剤1~10重量部が挙げられる。基材11以外のシート状に粘着剤を塗布し、乾燥させた後、粘着層12を基材11上に転写させてもよい。基材11と粘着層12との間に他の層が介在してもよく、基材11と粘着層12とが互いに接していてもよい。
【0039】
粘着層12の厚さは特に限定されないが、例えば、10~50μm程度が挙げられる。粘着層12は、常温(5~35℃の範囲内)でタック性を有してもよく、常温より高い温度でタック性を有してもよい。
【0040】
基材11および粘着層12を含む粘着フィルム10の厚さは特に限定されないが、例えば、40~200μm程度が挙げられる。ここで、粘着フィルム10の厚さには、下記のカバーフィルム13および剥離フィルム14の厚さが含まれない。粘着フィルム10の厚さは、100μm以下がより好ましい。
【0041】
加飾面11aを保護するため、粘着フィルム10は、基材11の粘着層12とは反対側の面に、カバーフィルム13を有してもよい。カバーフィルム13としては、特に限定されないが、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、セロファンフィルム、紙、樹脂ラミネート紙、金属箔、樹脂ラミネート金属箔、金属蒸着樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0042】
カバーフィルム13は、不透明あるいは半透明でもよいが、透明性が高いカバーフィルム13を用いる場合、カバーフィルム13を剥がさなくても、加飾面11aの状態を目視で容易に確認することができるので、好ましい。カバーフィルム13が無延伸の樹脂フィルムまたは延伸された樹脂フィルムであってもよい。カバーフィルム13は、加飾面11aに接する側の面に、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤などの剥離剤の層を有してもよい。カバーフィルム13が、加飾面11aに接する側の面に、剥離剤を有しなくてもよい。
【0043】
粘着面12aを保護するため、粘着フィルム10は、粘着層12の基材11とは反対側の面に、剥離フィルム14を有してもよい。剥離フィルム14としては、特に限定されないが、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、セロファンフィルム、紙、樹脂ラミネート紙、金属箔、樹脂ラミネート金属箔、金属蒸着樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0044】
剥離フィルム14は、不透明あるいは半透明でもよいが、透明性が高い剥離フィルム14を用いる場合、剥離フィルム14を剥がさなくても、粘着面12aの状態を目視で容易に確認することができるので、好ましい。剥離フィルム14が無延伸の樹脂フィルムまたは延伸された樹脂フィルムであってもよい。剥離フィルム14は、粘着面12aに接する側の面に、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤などの剥離剤の層を有してもよい。剥離フィルム14が、粘着面12aに接する側の面に、剥離剤を有しなくてもよい。
【0045】
図2に、粘着フィルム10を貼合した被着体20の一例を示す。基材11には印刷層15が形成されており、粘着層12には被着体20が貼合されている。基材11に印刷層15を形成する工程と、粘着層12に被着体20を貼合する工程の順序は限定されないが、基材11に印刷層15を形成した後で、粘着層12に被着体20を貼合することが好ましい。粘着フィルム10を被着体20に適合する寸法に裁断する工程を有してもよい。基材11に対する印刷は、粘着フィルム10の裁断前に実施することが好ましい。
【0046】
粘着フィルム10の加飾面11aは、上述の基材11から形成されているため、プライマー等の易接着層を設けなくても、容易に印刷層15を密着させることができる。加飾面11aを保護するためにカバーフィルム13を設けた場合は、印刷前にカバーフィルム13が除去される。基材11を形成した後、加飾面11aにカバーフィルム13を設けることなく、印刷層15を形成してもよい。
【0047】
印刷層15を形成する方法は、特に限定されないが、グラビア印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の印刷方式が挙げられる。印刷層15は、加飾面11aの全面に形成されてもよいし、加飾面11aの一部の領域に形成されてもよい。印刷層15を2層以上重ね合わせてもよい。加飾面11aの異なる領域に、異なる印刷層15を形成してもよい。加飾面11aには、印刷層15以外の加飾を施してもよい。他の加飾層としては、例えば、スパッタ等による金属蒸着層などが挙げられる。
【0048】
印刷層15を形成するためのインキは、顔料、染料等の着色材と、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、特に限定されないが、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、環化ゴム等が挙げられる。インキは、水、有機溶剤、植物油などの溶剤を含有してもよい。印刷後は、溶剤の揮発やインキの硬化等によりインキを乾燥させることができる。インキの乾燥を促進するため、加熱、紫外線照射等を実施してもよい。
【0049】
粘着フィルム10を被着体20に貼合する前に、粘着層12から剥離フィルム14が除去される。これにより、粘着層12を介して、粘着フィルム10を被着体20に貼合することができる。被着体20は、表示面、筐体等にガラスを用いた電子機器であってもよい。被着体20において粘着層12に接する面の材質は、特に限定されないが、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられる。被着体20は、粘着フィルム10の貼合される面が平面状である物品に限らず、曲面部を有する物品であってもよい。
【0050】
粘着フィルム10を被着体20に貼合する方法は特に限定されないが、加圧、吸引等を用いて、粘着層12を被着体20に密着させればよい。加圧方式としては、ロール部材、棒状部材、板状部材等の機械方式でもよく、液体または気体等の流体を用いた圧力媒体方式でもよい。粘着フィルム10を被着体20に仮に付着させた後、周囲から液体の圧力を作用させて等方的に加圧することが好ましい。圧力媒体が温水であってもよい。吸引方式としては、真空を用いて粘着フィルム10と被着体20との間の空気を吸引する方式が挙げられる。
【0051】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例0052】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0053】
(実施例1)
ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、商品名ダイフェラミン(登録商標)MAU8288A、重量平均分子量5万)100重量部、架橋剤としてTDI系ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名コロネート(登録商標)L-45E)10重量部、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM-403)0.2重量部および3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM-5103)0.2重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して、実施例1の基材を作製した。
【0054】
(実施例2および3)
実施例1と同様の製造方法により、各シランカップリング剤の添加量のみを表1に記載したように変更して、実施例2および3の基材を作製した。
【0055】
(実施例4)
ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂(東ソー株式会社製、商品名ニッポラン(登録商標)5199、重量平均分子量3万)100重量部、架橋剤としてHDI系ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名コロネート(登録商標)LHX)4重量部、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM-403)0.5重量部および3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM-5103)0.5重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して、実施例4の基材を作製した。
【0056】
(実施例5および6)
実施例1と同様の製造方法により、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM-403)のみを使用し、かつ、表1に記載した添加量に変更して、実施例5および6の基材を作製した。
【0057】
(実施例7および8)
実施例1と同様の製造方法により、シランカップリング剤として3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM-5103)のみを使用し、かつ、表1に記載した添加量に変更して、実施例7および8の基材を作製した。
【0058】
(比較例1)
ポリウレタン溶液にシランカップリング剤を添加することなく、上記のポリカーボネート系のポリウレタン樹脂100重量部および架橋剤10重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して、比較例1の基材を作製した。
【0059】
(比較例2)
市販の熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂(TPU)フィルム(大倉工業株式会社製、商品名:シルクロン(登録商標)SNY97、厚さ80μm)を所定の寸法にカットして、比較例2の基材を作製した。
【0060】
(評価方法)
UV硬化インキ(アクリル系)および熱硬化インキ(エポキシ系)を同一の基材の異なる領域に用いて、基材に印刷を施した。UV硬化インキ(アクリル系)としては、藤倉化成株式会社製、商品名:VB2979Uを用い、評価インキ原液を乾燥厚さが5μmとなるように25μmの厚さの剥離フィルムに塗布し、120℃で1分乾燥した。乾燥後の印刷層を基材のウレタン面にラミネートし、ウレタン面側からメタルハライドランプ(積算光量1000mJ/cm)でUV照射した。硬化後、剥離フィルムを剥がして印刷層を形成した。
【0061】
熱硬化インキ(エポキシ系)としては、セイコーアドバンス株式会社製、商品名:RUX-710ブラックを用い、その原液100重量部にセイコーアドバンス株式会社製、商品名:RUX硬化剤を2重量部加えて、均一になるまで攪拌し、減圧脱泡して評価用インキとした。この評価インキをウレタン面に乾燥厚さが5μmとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥した。
【0062】
次に、前記二種の印刷を行った直後の基材を対象として、初期密着性をJIS K5400に規定された碁盤目試験法に従って次のように評価した。各印刷層の表面に前記碁盤目試験法に基づいて100マスの切り込みを入れ、カットした印刷層の表面に約50mmの長さで付着するようにセロハン粘着テープをはりつけ、消しゴムでこすって印刷層にテープを付着させた。テープを付着させてから1~2分後にテープの端を持って印刷層面に直角に保ち、瞬間的にひきはがし、印刷の剥がれたマス数を数えた。印刷直後の碁盤目試験法により、100マス中の剥がれたマス数がAの場合に「A/100」と表2に記載した。
【0063】
熱水試験後の密着性については、初期密着性と同様にして基材に印刷を施した印刷物を作製し、80℃の熱水中に30分間浸漬した後、熱水から取り出した基材を対象として、前記碁盤目試験法により印刷層の剥がれを試験した。
【0064】
(評価結果)
表2に、実施例1~8および比較例1~2の基材の評価結果を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示すように、初期密着性については、実施例1~8および比較例1~2のいずれの基材でも、UV硬化インキおよび熱硬化インキの各印刷層に剥がれがなかった。
実施例1~4の基材では、熱水試験後でも、UV硬化インキおよび熱硬化インキのいずれの印刷層にも剥がれがなかった。
実施例5および6の基材では、UV硬化インキの印刷層が熱水試験後に全マス剥がれた。実施例5の基材では、熱硬化インキの印刷層は熱水試験後でも剥がれがなかったが、シランカップリング剤が少ない実施例6の基材では、熱硬化インキの印刷層が熱水試験後に若干剥がれた。
実施例7および8の基材では、熱硬化インキの印刷層が熱水試験後に全マス剥がれた。実施例7の基材では、UV硬化インキの印刷層は熱水試験後でも剥がれがなかったが、シランカップリング剤が少ない実施例8の基材では、UV硬化インキの印刷層は熱水試験後に若干剥がれた。
比較例1~2の基材では、熱水試験後にUV硬化インキおよび熱硬化インキのいずれの印刷層にも全マスの剥がれが確認された。
【0068】
(粘着フィルムの製造方法)
実施例1の基材(厚さ60μm)の片面に、ポリエステル系粘着剤またはアクリル系粘着剤を用いて、粘着層を形成することができる。例えば、乾燥後の厚さが20μmとなるように架橋剤および溶剤を含有する粘着剤を基材に塗布した後、溶剤を乾燥させ、さらに養生(エージング)により粘着剤を架橋させてもよい。実施例2~8も実施例1と同様に粘着層を形成することができる。
【符号の説明】
【0069】
10…粘着フィルム、11…基材、11a…加飾面、12…粘着層、12a…粘着面、13…カバーフィルム、14…剥離フィルム、15…印刷層、20…被着体。
図1
図2