(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136188
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、封止用フィルム及び封止構造体
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220908BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/22
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118529
(22)【出願日】2022-07-26
(62)【分割の表示】P 2020147496の分割
【原出願日】2016-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2015172851
(32)【優先日】2015-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 裕介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野村 豊
(72)【発明者】
【氏名】荻原 弘邦
(72)【発明者】
【氏名】金子 知世
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 正也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
(57)【要約】
【課題】優れた熱伝導率を有する硬化物を得ることが可能な樹脂組成物、及び、その硬化物を提供すること。
【解決手段】熱硬化性成分及び無機充填材を含有する樹脂組成物であって、無機充填材が酸化アルミニウムを含み、無機充填材の含有量が、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として72質量%以上である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性成分及び無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
前記無機充填材が酸化アルミニウムを含み、
前記無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として72質量%以上である、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化物、封止用フィルム及び封止構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の軽薄短小化に伴って、電子部品装置(半導体装置等)の小型化及び薄型化が進んでいる。半導体素子(シリコンチップ等の半導体チップ)とほぼ同じ大きさの半導体装置を用いる形態、又は、半導体装置の上に半導体装置を積む実装形態(パッケージ・オン・パッケージ)が盛んに行われており、今後、電子部品装置の小型化及び薄型化が一段と進むと予想される。
【0003】
半導体素子の微細化が進展し、端子数が増加してくると、半導体素子上にすべての外部接続端子(外部接続用の端子)を設けることが難しくなる。例えば、無理に外部接続端子を設けた場合、端子間のピッチが狭くなると共に端子高さが低くなり、半導体装置を実装した後の接続信頼性の確保が難しくなる。そこで、電子部品装置の小型化及び薄型化を実現するために、新たな実装方式が多々提案されている。
【0004】
例えば、半導体ウエハを個片化して作製された半導体素子を、適度な間隔を有するように再配置した後、固形又は液状の樹脂(封止樹脂)を用いて半導体素子を封止し、半導体素子の外側において半導体素子を封止する封止部分上に外部接続端子を設けることができる実装方法、及び、これを用いて作製される半導体装置が提案されている(例えば、下記特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3616615号公報
【特許文献2】特開2001-244372号公報
【特許文献3】特開2001-127095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、被封止体を封止する封止部(封止樹脂の硬化物)の熱伝導率が低い場合、放熱性が悪い。そのため、低い熱伝導率は、装置の劣化の進行、装置の発火等の原因となる。この場合、被封止体上の封止部の厚み(封止厚み)を薄膜化することで放熱性を上げることが考えられる。しかしながら、例えばPoP(Package on Package)のようなパッケージ形態では、通常別々に実装しているCPUとメモリーとを積み重ねることで実装面積を縮小できるというメリットがある一方で、装置全体の厚みが増すことから放熱性の低下が懸念されやすい。そのため、封止部の厚みを薄膜化することにより放熱性を向上させることには限界がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、優れた熱伝導率を有する硬化物を得ることが可能な樹脂組成物、及び、その硬化物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記樹脂組成物を用いた封止用フィルム及び封止構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の封止用樹脂組成物(フィルム状エポキシ樹脂組成物等)の硬化物の熱伝導率は1.2W/m・K程度である。これに対し、本発明者らは、熱硬化性成分と、酸化アルミニウムを含む特定量の無機充填材と、を含有する樹脂組成物を用いることで、優れた熱伝導率を有する硬化物を得ることが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明に係る樹脂組成物は、熱硬化性成分及び無機充填材を含有する樹脂組成物であって、無機充填材が酸化アルミニウムを含み、無機充填材の含有量が、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として72質量%以上である。
【0010】
本発明に係る樹脂組成物によれば、優れた熱伝導率を有する硬化物を得ることが可能であり、例えば、2.5W/m・Kを超える熱伝導率(好ましくは、2.7W/m・K以上の熱伝導率)を有する硬化物を得ることができる。封止用樹脂組成物の硬化物の熱伝導率を向上させることができれば、当該樹脂組成物の硬化物を含む封止部を備える電子部品装置(半導体装置等)の放熱性が向上し、装置の劣化の進行、装置の発火等を抑制できる。特に、本発明に係る樹脂組成物によれば、厚みを増したパッケージ形態(PoP等)で課題となる放熱性を向上させることができる。本発明に係る樹脂組成物によれば、樹脂組成物の埋め込み性を確保しつつ、優れた熱伝導率を有する硬化物を得ることができる。
【0011】
前記熱硬化性成分は、熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0012】
前記熱硬化性成分は、硬化剤を更に含んでいてもよい。前記硬化剤は、フェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
前記熱硬化性成分は、硬化促進剤を更に含んでいてもよい。前記硬化促進剤は、イミダゾール化合物を含むことが好ましい。
【0014】
25℃で液状のエポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。
【0015】
前記無機充填材の含有量は、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、93質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
前記無機充填材の平均粒子径は、0.01~25μmであることが好ましく、0.01~10μmであることがより好ましい。
【0017】
前記無機充填材における酸化アルミニウムの含有量は、50質量%以上であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物は、溶剤を更に含有してもよい。
【0019】
本発明に係る硬化物は、本発明に係る樹脂組成物の硬化物である。
【0020】
ところで、通常、半導体素子等の電子部品の封止(パッケージ方法における封止工程)は、半導体装置等の電子部品装置を製造する際の終盤に行われることが多い。この場合の実装方法では、電子部品を封止して作製した封止構造体(封止成形物)に対して、外部接続端子を配置するための配線、及び、外部接続端子を形成する工程が実施される。
【0021】
従来の実装方法では、複数の電子部品(半導体素子等)を封止して得られる封止構造体をダイシングして複数の電子部品装置(半導体装置等)を得る場合がある。この場合、再配置される電子部品が多いほど、一度の工程で作製可能な電子部品装置が増えることになる。そこで、封止構造体を大きくする検討が行われている。現状は、例えば、配線形成に半導体製造装置を使用するため、封止構造体はウエハ形状に成形されており、ウエハ形状の大径化が進む傾向がある。さらに、より大判化が可能であり且つ半導体製造装置よりも安価なプリント配線板製造装置等の使用が可能となるように、封止構造体のパネル化も検討されている。
【0022】
電子部品の封止には、固形又は液状の樹脂封止材を金型で成形するモールド成形が使用される場合がある。例えば、ペレット状の樹脂封止材を溶融させ、金型内に樹脂を流し込むことで封止するトランスファーモールド成形が使用される場合がある。しかしながら、トランスファーモールド成形では、溶融させた樹脂を流し込んで成形するため、大面積を封止しようとする場合、未充填部が発生する可能性がある。そこで、近年、予め金型又は被封止体に樹脂封止材を供給してから成形を行うコンプレッションモールド成形が使用され始めている。コンプレッションモールド成形では、樹脂封止材を金型又は被封止体に直接供給するため、大面積の封止でも未充填部が発生しにくい利点がある。
【0023】
コンプレッションモールド成形では、トランスファーモールド成形と同様に、固形又は液状の樹脂封止材が用いられる。しかしながら、被封止体が大型化した場合、液状の樹脂封止材では、液流れ等が発生し被封止体上への均一供給が困難となる場合がある。また、樹脂を被封止体上に均一に供給する必要があるため、固形の樹脂封止材としては、従来のペレット状の樹脂ではなく、顆粒又は粉体の樹脂封止材が使用される場合がある。しかしながら、顆粒又は粉体の樹脂封止材では、樹脂封止材を金型又は被封止体上に均一に供給することは難しく、また、顆粒又は粉体であるため、樹脂封止材が発塵原となり、装置又はクリーンルームの汚染が懸念される。
【0024】
また、モールド成形では、樹脂を金型内で成形するため、封止構造体を大型化するには、金型の大型化が必須となる。しかしながら、金型の大型化には、高い金型精度が求められることから技術面での難易度が上がると共に、金型の製造コストが大幅に増加する。
【0025】
これに対し、本発明に係る樹脂組成物は、被封止体を封止する封止用フィルムとして、フィルム状であってもよい。本発明に係る封止用フィルムは、本発明に係る樹脂組成物を含む。この場合、樹脂の被封止体上への均一供給及び発塵の低減が可能である。また、モールド成形のみならず、金型(高圧力用の金型等)を必要としない成形方法(ラミネート、プレス等)による封止が可能な埋め込み能を得ることができる。
【0026】
本発明に係る封止用フィルムにおいて溶剤の含有量は、0.2~1.5質量%であることが好ましい。被封止体(例えば、半導体素子等の電子部品)の埋め込みに重要なフィルム状の樹脂組成物の最低溶融粘度は、溶剤(有機溶剤等)の含有量が多いほど低下する。これは、溶剤がフィルム状の樹脂組成物の流動性を高めるためと考えられる。また、適度な量の溶剤は、フィルム状の樹脂組成物に粘りを与え、フィルム状の支持体からの剥離、フィルム状の樹脂組成物自体の割れ等を防止しやすい。これらの効果は、溶剤が0.2~1.5質量%であるときに、他の不具合を生じることなく最大限発揮しやすい。
【0027】
本発明に係る封止用フィルムの厚さは、20~250μmであることが好ましい。
【0028】
本発明に係る封止構造体は、被封止体と、当該被封止体を封止する封止部と、を備え、前記封止部が、本発明に係る樹脂組成物の硬化物を含む。前記被封止体は、電子部品であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、優れた熱伝導率を有する硬化物を得ることが可能な樹脂組成物、及び、その硬化物を提供することができる。また、本発明によれば、前記樹脂組成物を用いた封止用フィルム及び封止構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】封止構造体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【
図2】実施例で埋め込み性を評価するために用いたシリコンチップの配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書中において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書中に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本明細書中において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0032】
「液状エポキシ樹脂」は、25℃で液状のエポキシ樹脂である。「25℃で液状」とは、E型粘度計で測定した25℃における粘度が400Pa・s以下であることを指す。
【0033】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0034】
<樹脂組成物及び硬化物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱硬化性成分及び無機充填材を含有する樹脂組成物である。熱硬化性成分としては、(A)熱硬化性樹脂(硬化剤に該当する化合物を除く)、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤等が挙げられる。熱硬化性成分は、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含むことなく、熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。本実施形態に係る樹脂組成物は、熱硬化性成分に加えて(D)無機充填材を含有しており、(D)無機充填材は、酸化アルミニウムを含んでいる。本実施形態に係る樹脂組成物は、ワニス状であってもよく、フィルム状(封止用フィルム)であってもよい。本実施形態に係る硬化物は、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物である。
【0035】
(熱硬化性成分)
[(A)成分:熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、熱硬化性ポリイミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、優れた熱伝導率を有する硬化物が得られやすい観点から、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、25℃で液状のエポキシ樹脂、及び、25℃で液状ではないエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0036】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のグリシジル基を有する樹脂であれば特に制限なく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールG型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(ヘキサンジオールビスフェノールSジグリシジルエーテル等)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールPH型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等)、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂(ビキシレノールジグリシジルエーテル等)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等)、これらの樹脂の二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型のグリシジルエーテル、ビスフェノールS型のグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン等が挙げられる。
【0038】
市販のエポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の「EXA-4700」(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、「エピクロンHP-4032」及び「EXA-4750」(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製の「NC-7000」(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製の「EPPN-502H」(トリスフェノールエポキシ樹脂)等の、フェノール類と、フェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);DIC株式会社製の「エピクロンHP-7200H」(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製の「NC-3000H」(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;DIC株式会社製の「エピクロンN-660」、「エピクロンN-690」、「エピクロンN-740」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)及び「N500P-1」(オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製の「EOCN-104S」等のノボラック型エポキシ樹脂;日産化学工業株式会社製の「TEPIC」等のトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート;DIC株式会社製の「エピクロン860」、「エピクロン900-IM」、「エピクロンEXA―4816」及び「エピクロンEXA-4822」、旭チバ株式会社製の「アラルダイトAER280」、東都化成株式会社(新日鉄住金化学株式会社)製の「エポトートYD-134」、「YD-8125」及び「YDF8170」、ジャパンエポキシレジン株式会社(三菱化学株式会社)製の「jER834」、「jER872」、「jER807」、「jER815」、「jER825」、「jER827」、「jER828」、「jER1001」、「jER1004」、「jER1007」及び「jER1009」、住友化学株式会社製の「ELA-134」、ダウケミカル社製の「DER-330」、「DER-301」及び「DER-361」等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン株式会社(三菱化学株式会社)製の「jER806」等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス株式会社製の「ナデコールDLC301」等の脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
熱硬化性樹脂の含有量は、優れた流動性が得られやすい観点から、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上が更に好ましく、4質量%以上が特に好ましく、5質量%以上が極めて好ましく、10質量%以上が非常に好ましく、15質量%以上がより一層好ましい。熱硬化性樹脂の含有量は、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0040】
樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物である場合、エポキシ樹脂の含有量は、優れた熱伝導率を有する硬化物が得られやすい観点から、熱硬化性樹脂の総質量を基準として、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。エポキシ樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂の総質量を基準として100質量%であってもよい。
【0041】
液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましく、7質量%以上が極めて好ましく、9質量%以上が非常に好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルムのタック性が過剰に高まることを抑制しやすい観点、及び、エッジフュージョンを抑制しやすい観点から、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、13質量%以下が更に好ましい。
【0042】
液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、熱硬化性樹脂の総質量を基準として、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルムのタック性が過剰に高まることを抑制しやすい観点、及び、エッジフュージョンを抑制しやすい観点から、熱硬化性樹脂の総質量を基準として、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂の総質量を基準として100質量%であってもよい。
【0043】
樹脂組成物が(A)成分(エポキシ樹脂等)、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する場合、液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、(A)~(D)成分の総質量を基準として、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましく、7質量%以上が極めて好ましく、9質量%以上が非常に好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルムのタック性が過剰に高まることを抑制しやすい観点、及び、エッジフュージョンを抑制しやすい観点から、(A)~(D)成分の総質量を基準として、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、13質量%以下が更に好ましい。
【0044】
[(B)成分:硬化剤]
硬化剤としては、特に限定されないが、フェノール系硬化剤(フェノール樹脂等)、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤などが挙げられる。(A)成分がエポキシ樹脂を含む場合、(B)硬化剤としては、グリシジル基と反応する官能基を1分子中に2個以上有する化合物であれば特に制限なく用いることができる。このような硬化剤としては、フェノール樹脂、酸無水物等が挙げられる。硬化剤としては、優れた熱伝導率を有する硬化物が得られやすい観点から、フェノール樹脂が好ましい。硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
フェノール樹脂は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する樹脂であれば、特に制限なく公知のフェノール樹脂を用いることができる。フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、ビフェニル骨格型フェノール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、キシリレン変性ナフトール樹脂等が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。ナフトール類としては、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。
【0046】
市販のフェノール樹脂としては、DIC株式会社製の「フェノライトLF2882」、「フェノライトLF2822」、「フェノライトTD-2090」、「フェノライトTD-2149」、「フェノライトVH-4150」及び「フェノライトVH4170」、三井化学株式会社製の「XLC-LL」及び「XLC-4L」、新日鉄住金化学株式会社製の「SN-100」、「SN-300」、「SN-395」及び「SN-400」、エア・ウォーター株式会社製の「SKレジンHE910」、旭有機材工業株式会社製の「PAPS-PN2」(分子量分布集約型ノボラック樹脂)、群栄化学工業株式会社製の「ELP40」等が挙げられる。
【0047】
硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂の硬化性に優れる観点から、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、1~20質量%が好ましく、2~15質量%がより好ましく、3~10質量%が更に好ましい。
【0048】
エポキシ樹脂と硬化剤(フェノール樹脂等)との配合比率として、エポキシ樹脂のグリシジル基の当量(エポキシ当量)と、硬化剤におけるグリシジル基と反応する官能基(フェノール性水酸基等)の当量(フェノール性水酸基当量等)との比率(エポキシ樹脂のグリシジル基の当量/硬化剤におけるグリシジル基と反応する官能基の当量)は、0.7~2.0が好ましく、0.8~1.8がより好ましく、0.9~1.7が更に好ましい。前記比率が0.7以上又は2.0以下である場合、未反応のエポキシ樹脂及び/又は未反応の硬化剤が残存しにくく、所望の硬化物特性が得られやすい。
【0049】
[(C)成分:硬化促進剤]
硬化促進剤としては、特に制限なく用いることができるが、アミン系の硬化促進剤及びリン系の硬化促進剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。硬化促進剤としては、特に、優れた熱伝導率を有する硬化物が得られやすい観点、誘導体が豊富である観点、及び、所望の活性温度が得られやすい観点から、アミン系の硬化促進剤が好ましく、イミダゾール化合物、脂肪族アミン及び脂環族アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、イミダゾール化合物が更に好ましい。イミダゾール化合物としては、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の市販品としては、四国化成工業株式会社製の「2P4MZ」及び「1B2MZ」等が挙げられる。
【0050】
硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)及び硬化剤(フェノール樹脂等)の合計量を基準として、下記の範囲が好ましい。硬化促進剤の含有量は、充分な硬化促進効果が得られやすい観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましい。硬化促進剤の含有量は、封止用フィルムを製造する際の工程(例えば塗工及び乾燥)中、又は、封止用フィルムの保管中に硬化が進行しにくく、封止用フィルムの割れ、及び、溶融粘度の上昇に伴う成形不良を防止しやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、硬化促進剤の含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.3~1.5質量%が更に好ましい。
【0051】
((D)成分:無機充填材)
無機充填材は、酸化アルミニウム(酸化アルミニウム粒子等)を含む。酸化アルミニウムを含む無機充填材の市販品としては、住友化学株式会社製の「AA-1.5」、デンカ株式会社製の「DAW20」等が挙げられる。
【0052】
無機充填材は、酸化アルミニウム(酸化アルミニウム粒子等)以外の構成材料を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物は、酸化アルミニウムと、酸化アルミニウム以外の構成材料とを含む粒子を含有していてもよく、酸化アルミニウム粒子と、酸化アルミニウム以外の成分を含む粒子とを含有していてもよい。
【0053】
無機充填材における酸化アルミニウムの含有量は、熱伝導率の向上効果に更に優れる観点から、無機充填材の総質量を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。酸化アルミニウムの含有量は、無機充填材の総質量を基準として100質量%であってもよい。
【0054】
酸化アルミニウム以外の構成材料としては、従来公知の無機充填材に含まれる構成材料が使用でき、特定のものに限定されない。酸化アルミニウム以外の構成材料としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。シリカを含む無機充填材としては、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ等が挙げられる。酸化アルミニウム以外の構成材料としては、表面改質等により、樹脂中の分散性の向上効果、及び、ワニス中での沈降抑制効果が得られやすい観点、並びに、比較的小さい熱膨張率を有することから所望の硬化物特性が得られやすい観点から、シリカが好ましい。シリカを含む無機充填材の市販品としては、株式会社アドマテックス製の「SC2500-SXJ」、「SC5500-SXE」及び「SC2050-KC」等が挙げられる。酸化アルミニウム以外の構成材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
無機充填材は、表面改質されていてもよい。表面改質の手法は特に限定されない。処理が簡便であり、官能基の種類が豊富であり、所望の特性を付与しやすい観点から、シランカップリング剤を用いた表面改質が好ましい。
【0056】
シランカップリング剤としては、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が挙げられる。
【0057】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n-オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン(フェニルアミノシラン等)等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
無機充填材の平均粒子径は、無機充填材の凝集を抑制しやすく、無機充填材の分散が容易である観点から、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。無機充填材の平均粒子径は、ワニス中で無機充填材が沈降することが抑制されやすく、均質な封止用フィルムを作製しやすい観点から、25μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。これらの観点から、無機充填材の平均粒子径は、0.01~25μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましく、0.1~10μmが更に好ましく、0.3~5μmが特に好ましく、0.5~5μmが極めて好ましい。無機充填材の平均粒子径は、10~18μmであってもよい。
【0059】
樹脂組成物の流動性に優れる観点から、互いに異なる平均粒子径を有する複数の無機充填材を組み合わせて用いることが好ましい。無機充填材の組み合わせの中でも、最も大きい平均粒子径が15~25μmであることが好ましい。平均粒子径が15~25μmの無機充填材と、平均粒子径が0.5~2.5μmの無機充填材と、平均粒子径が0.1~1.0μmの無機充填材と、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0060】
「平均粒子径」とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径であり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。組み合わせた各無機充填材の平均粒子径は、混合時の各無機充填材の平均粒子径から確認できると共に、粒度分布を測定することで確認することができる。
【0061】
無機充填材の含有量(酸化アルミニウムを含む無機充填材、及び、酸化アルミニウムを含まない無機充填材の合計量)は、熱伝導率を向上させる観点、及び、被封止体との熱膨張率の差によって封止構造体(例えば、半導体装置等の電子部品装置)の反りが大きくなることが抑制されやすい観点から、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として72質量%以上である。無機充填材の含有量は、熱伝導率を更に向上させる観点、及び、封止構造体の反りが大きくなることが更に抑制されやすい観点から、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、72.5質量%以上が好ましく、73質量%以上がより好ましい。無機充填材の含有量は、封止用フィルムの作製の際の乾燥工程において封止用フィルムが割れてしまうことが抑制されやすい観点、及び、封止用フィルムの溶融粘度の上昇により流動性が低下することが抑制され、被封止体(電子部品等)を充分に封止しやすい観点から、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、93質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましく、84.5質量%以下が特に好ましく、81質量%以下が極めて好ましく、80質量%以下が非常に好ましい。これらの観点から、無機充填材の含有量は、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、72~93質量%が好ましく、72~90質量%がより好ましく、72~85質量%が更に好ましく、72~84.5質量%が特に好ましく、72.5~81質量%が極めて好ましく、73~80質量%が非常に好ましい。
【0062】
酸化アルミニウムを含む無機充填材(酸化アルミニウム粒子等)の含有量は、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として、下記の範囲であることが好ましい。酸化アルミニウムを含む無機充填材の含有量は、熱伝導率を更に向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。酸化アルミニウムを含む無機充填材の含有量は、充分な埋め込み性を確保しやすい観点から、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
【0063】
((E)成分:溶剤)
本実施形態に係る樹脂組成物は、(E)溶剤を含有してもよく、(E)溶剤を含有していなくてもよい。溶剤としては、従来公知の有機溶剤を使用できる。有機溶剤としては、無機充填材以外の成分を溶解できる溶剤が好ましく、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、テルペン類、ハロゲン類、エステル類、ケトン類、アルコール類、アルデヒド類等が挙げられる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
溶剤としては、環境負荷が小さい観点、並びに、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)及び硬化剤(フェノール樹脂等)を溶解しやすい観点から、エステル類、ケトン類及びアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。その中でも、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)及び硬化剤(フェノール樹脂等)を特に溶解しやすい観点から、ケトン類が好ましい。溶剤としては、室温(25℃)での揮発が少なく、乾燥時に除去しやすい観点から、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0065】
((F)成分:エラストマー)
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、(F)エラストマー(可とう剤)を含有してもよい。エラストマーは、分散性及び溶解性に優れる観点から、ポリブタジエン粒子、スチレンブタジエン粒子、アクリル系エラストマー、シリコーンパウダ、シリコーンオイル及びシリコーンオリゴマからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
エラストマーが粒子状である場合、エラストマーの平均粒子径に特に制限はない。eWLB(Embedded Wafer-Level Ball Grid Array)用途では、半導体素子間を埋め込む必要があることから、封止用フィルムをeWLB用途に用いる場合には、エラストマーの平均粒子径は、50μm以下であることが好ましい。エラストマーの平均粒子径は、エラストマーの分散性に優れる観点から、0.1μm以上であることが好ましい。
【0067】
エラストマーの市販品としては、ナガセケムテックス株式会社製の「HTR280」等が挙げられる。また、市販のエラストマー成分の中には、エラストマー単体ではなく、予め液状樹脂(例えば、液状エポキシ樹脂)中に分散しているものもあるが、問題なく用いることができる。このような市販品としては、株式会社カネカ製の「MX-136」及び「MX-965」等が挙げられる。
【0068】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、他の添加剤を更に含有することができる。このような添加剤の具体例としては、顔料、染料、離型剤、酸化防止剤、表面張力調整剤等を挙げることができる。
【0069】
<封止用フィルム>
本実施形態に係る封止用フィルムは、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。本実施形態に係る封止用フィルムは、本実施形態に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して得られ、本実施形態に係る樹脂組成物からなる態様であってもよい。本実施形態に係る封止用フィルムは、例えば、半導体デバイスの封止、プリント配線板に配置された電子部品の埋め込み等に用いることができる。
【0070】
封止用フィルムの厚さ(膜厚)は、塗工時における面内の厚みのバラつきを抑制しやすい観点から、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上が更に好ましく、100μm以上が特に好ましい。封止用フィルムの厚さは、塗工時に深さ方向で一定の乾燥性が得られやすい観点から、250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下が更に好ましい。これらの観点から、封止用フィルムの厚さは、20~250μmが好ましく、30~250μmがより好ましく、50~200μmが更に好ましく、100~150μmが特に好ましい。また、封止用フィルムを複数枚積層して、厚さ250μmを超える封止用フィルムを製造することもできる。
【0071】
封止用フィルムにおける無機充填材(酸化アルミニウムを含む無機充填材、及び、酸化アルミニウムを含まない無機充填材の合計量)の含有量は、封止用フィルムの総質量(溶剤の質量を除く)に対して、下記の範囲であることが好ましい。無機充填材の含有量は、熱伝導率を更に向上させる観点、及び、封止構造体の反りが大きくなることが抑制されやすい観点から、72質量%以上が好ましく、72.5質量%以上がより好ましく、73質量%以上が更に好ましい。無機充填材の含有量は、封止用フィルムの溶融粘度の上昇により流動性が低下することが抑制され、被封止体(電子部品等)を充分に封止しやすい観点から、93質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましく、84.5質量%以下が特に好ましく、81質量%以下が極めて好ましく、80質量%以下が非常に好ましい。これらの観点から、無機充填材の含有量は、72~93質量%が好ましく、72~90質量%がより好ましく、72~85質量%が更に好ましく、72~84.5質量%が特に好ましく、72.5~81質量%が極めて好ましく、73~80質量%が非常に好ましい。
【0072】
封止用フィルムに含まれる溶剤(有機溶剤等)の含有量は、封止用フィルムの総質量(溶剤の質量を含む)に対して、下記の範囲であることが好ましい。溶剤の含有量は、封止用フィルムが脆くなり封止用フィルムの割れ等の不具合が生じること、及び、最低溶融粘度が高くなり、埋め込み性が低下することを抑制しやすい観点から、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、0.7質量%以上が極めて好ましい。溶剤の含有量は、封止用フィルムの粘着性が強くなりすぎて取扱い性が低下する不具合、及び、封止用フィルムの熱硬化時における溶剤(有機溶剤等)の揮発に伴う発泡等の不具合を抑制しやすい観点から、1.5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。これらの観点から、溶剤の含有量は、0.2~1.5質量%が好ましく、0.3~1質量%がより好ましく、0.5~1質量%が更に好ましく、0.6~1質量%が特に好ましく、0.7~1質量%が極めて好ましい。
【0073】
本実施形態に係る封止用フィルムは、具体的には、次のようにして作製することができる。
【0074】
まず、本実施形態に係る樹脂組成物の構成成分((A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、(E)溶剤等)を混合することでワニス(ワニス状樹脂組成物)を作製する。混合方法は、特に限定されず、ミル、ミキサ、攪拌羽根を使用できる。溶剤(有機溶剤等)は、封止用フィルムの材料である樹脂組成物の構成成分を溶解及び分散してワニスを調製するため、又は、ワニスを調製することを補助するために用いることができる。塗工後の乾燥工程で溶剤の大部分を除去することができる。
【0075】
このようにして作製したワニスを、支持体(フィルム状の支持体等)に塗布した後、熱風吹き付け等によって加熱乾燥することで、封止用フィルムを作製することができる。塗布(コーティング)方法としては、特に限定されないが、例えば、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の塗工装置を用いることができる。
【0076】
フィルム状の支持体としては、高分子フィルム、金属箔等を用いることができる。高分子フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム等のビニルフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;アセチルセルロースフィルム;テトラフルオロエチレンフィルムなどが挙げられる。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0077】
支持体の厚さは、特に限定されるものではないが、作業性及び乾燥性に優れる観点から、2~200μmが好ましい。支持体の厚さが2μm以上である場合、塗工時に支持体が切れる不具合、ワニスの重さで支持体がたわむ不具合等を抑制しやすい。支持体の厚さが200μm以下である場合、乾燥工程において、塗工面及び裏面の両面から熱風が吹きつけられる場合に、ワニス中の溶剤乾燥が妨げられる不具合を抑制しやすい。
【0078】
支持体上に形成された封止用フィルム上に、封止用フィルムの保護を目的とした保護層を配置してもよい。保護層を形成することで、取扱い性が向上し、巻き取りした場合に、支持体の裏面に封止用フィルムが張り付くといった不具合を回避することができる。
【0079】
保護層としては、高分子フィルム、金属箔等を用いることができる。高分子フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム等のビニルフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;アセチルセルロースフィルム;テトラフルオロエチレンフィルムなどを例示することができる。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等を例示することができる。
【0080】
上述のように作製した封止用フィルムは、封止用フィルムに対して被封止体(被埋め込み対象)を向かい合った状態に配置する工程と、封止用フィルムを加熱して溶融させ、圧力を加えて被封止体を埋め込む工程と、加熱により、埋め込み能を有する封止用フィルムを熱硬化させる工程と、によって封止用フィルムの硬化体を得ることにより封止構造体(例えば、半導体装置等の電子部品装置)を製造することに用いることができる。
【0081】
<封止構造体>
本実施形態に係る封止構造体は、被封止体と、当該被封止体を封止する封止部と、を備え、封止部が、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物(本実施形態に係る封止用フィルムに含まれる樹脂組成物の硬化物等)を含む。封止構造体としては、電子部品装置等が挙げられる。電子部品装置は、電子部品と、当該電子部品を封止する封止部と、を備え、封止部が、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物を含む。電子部品としては、半導体素子;半導体ウエハ;集積回路;半導体デバイス;SAWフィルタ等のフィルタ;センサ等の受動部品などが挙げられる。半導体ウエハを個片化することにより得られる半導体素子を用いてもよい。電子部品装置は、電子部品として半導体素子又は半導体ウエハを備える半導体装置;プリント配線板等であってもよい。本実施形態に係る封止構造体は、複数の被封止体を備えていてもよい。複数の被封止体は、互いに同一の種類であってもよく、互いに異なる種類であってもよい。
【0082】
次に、本実施形態に係る封止用フィルムを用いた電子部品装置の製造方法について説明する。ここでは、電子部品が半導体素子である場合について説明する。
図1は、封止構造体の製造方法の一実施形態として、電子部品装置である半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。本実施形態に係る製造方法は、被封止体(被埋め込み対象)として、仮固定材40を有する基板30上に複数の半導体素子20を並べて配置する工程(
図1(a))と、支持体1と、支持体1上に設けられた封止用フィルム2と、を備える支持体付き封止用フィルム10を半導体素子20に対向させた後、半導体素子20に封止用フィルム2を加熱下で押圧(ラミネート)することにより、封止用フィルム2に半導体素子20を埋め込む工程(
図1(b))と、半導体素子20が埋め込まれた封止用フィルム2を硬化させて硬化物2aを得る工程(
図1(c))と、を備える。本実施形態においては、ラミネート法によって半導体素子20を封止用フィルム2によって封止した後、封止用フィルム2を熱硬化することで、硬化物2aに埋め込まれた半導体素子20を備える封止構造体(電子部品装置)が得られているが、封止構造体をコンプレッションモールドにより得てもよい。
【0083】
ラミネート法に使用するラミネータとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ロール式、バルーン式等のラミネータが挙げられる。ラミネータは、埋め込み性に優れる観点から、真空加圧が可能なバルーン式であってもよい。
【0084】
ラミネートは、通常、支持体の軟化点以下で行う。ラミネート温度は、封止用フィルムの最低溶融粘度付近であることが好ましい。ラミネート時の圧力は、埋め込む被封止体(例えば、半導体素子等の電子部品)のサイズ、密集度等によって異なる。ラミネート時の圧力は、例えば、0.2~1.5MPaの範囲であってもよく、0.3~1.0MPaの範囲であってもよい。ラミネート時間は、特に限定されるものではないが、20~600秒であってもよく、30~300秒であってもよく、40~120秒であってもよい。
【0085】
封止用フィルムの硬化は、例えば、大気下又は不活性ガス下で行うことができる。硬化温度(加熱温度)は、特に限定されるものではなく、80~280℃であってもよく、100~240℃であってもよく、120~200℃であってもよい。硬化温度が80℃以上であれば、封止用フィルムの硬化が充分に進み、不具合の発生を抑制することができる。硬化温度が280℃以下である場合は、他の材料への熱害の発生を抑制することができる傾向にある。硬化時間(加熱時間)は、特に限定されるものではなく、30~600分であってもよく、45~300分であってもよく、60~240分であってもよい。硬化時間がこれらの範囲である場合、封止用フィルムの硬化が充分に進み、より良好な生産効率が得られる。また、硬化条件は、複数の条件を組み合わせてもよい。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【実施例0087】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0088】
封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を得るためのワニス状エポキシ樹脂組成物(ワニス)の成分として以下の成分を用いた。
【0089】
(A)成分;熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)
A1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:jER806、エポキシ当量:160g/eq、25℃にて液状を示すエポキシ樹脂)
A2:ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EXA-4750、エポキシ当量:182g/eq、25℃にて液状を示さないエポキシ樹脂)
A3:ポリブタジエンエラストマー粒子含有ビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社カネカ製、商品名:MX-136、液状エポキシ樹脂の含有量:75質量%、エラストマー粒子の含有量:25質量%、エポキシ当量:226g/eq、エラストマー粒子の平均粒子径:0.1μm、25℃にて液状を示すエポキシ樹脂を含む成分)
A4:シリコーンエラストマー粒子含有エポキシ樹脂(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂及びビスフェノールA型液状エポキシ樹脂の混合物。株式会社カネカ製、商品名:MX-965、液状エポキシ樹脂の含有量:75質量%、エラストマー粒子の含有量:25質量%、25℃にて液状を示すエポキシ樹脂を含む成分)
A5:オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:N500P-1、エポキシ当量:201g/eq、25℃にて液状を示さないエポキシ樹脂)
A6:柔軟性骨格含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:エピクロンEXA-4816、エポキシ当量:403g/eq、25℃にて液状を示すエポキシ樹脂)
【0090】
(B)成分;硬化剤(フェノール樹脂)
B1:フェノールノボラック樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PAPS-PN2、フェノール性水酸基当量:104g/eq、25℃にて液状を示さないフェノール樹脂)
B2:アルキルフェノールノボラック型樹脂(群栄化学工業株式会社製、商品名:ELP40、フェノール性水酸基当量:140g/eq)
【0091】
(C)成分;硬化促進剤
C1:2-フェニル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2P4MZ)
C2:1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:1B2MZ)
【0092】
(D)成分;無機充填材
D1:酸化アルミニウム粒子(住友化学株式会社製、商品名:AA-1.5、平均粒子径:1.5μm)
D2:酸化アルミニウム粒子(デンカ株式会社製、商品名:DAW20、平均粒子径:20μm)
D3:シリカ粒子(株式会社アドマテックス製、商品名:SC2500-SXJ、フェニルアミノシラン処理、平均粒子径:0.5μm)
D4:シリカ粒子(株式会社アドマテックス製、商品名:SC5500-SXE、フェニルアミノシラン処理、平均粒子径:1.6μm)
D5:シリカスラリ(株式会社アドマテックス製、商品名:SC2050-KC、シリコーンオリゴマ処理、平均粒子径:0.5μm、メチルイソブチルケトン溶剤カット(シリカフィラの含有量:70質量%))
【0093】
(E)成分;溶剤
E1:メチルエチルケトン
【0094】
(F)成分;エラストマー
F1:高分子エラストマー(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR280、エポキシ変性線状エラストマー)
【0095】
<封止用フィルムの作製>
(実施例1)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を172g入れた。無機充填材D1を542g前記容器に加えた後、撹拌羽根で無機充填材D1を分散して分散液を得た。この分散液に、熱硬化性樹脂A1を48g、熱硬化性樹脂A2を12g、硬化剤B1を38g加えて撹拌した。硬化剤B1が溶解したことを確認した後、硬化促進剤C1を0.8g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#200メッシュ(開口75μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物を下記フィルム状の支持体上に下記条件で塗布して、フィルム厚が100μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を支持体上に作製した。
・塗布ヘッド方式:コンマコーター
・塗布及び乾燥速度:1m/分
・乾燥条件(温度/炉長):110℃/3.3m、130℃/3.3m、140℃/3.3m
・フィルム状の支持体:38μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム
【0096】
封止用フィルムにおける支持体とは反対側に保護層(12μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム)を配置することにより封止用フィルムの表面を保護した。なお、下記の各評価においては、支持体及び保護層を剥離した上で評価を行った。以下の実施例及び比較例についても同様である。
【0097】
(実施例2)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を141g入れた。無機充填材D1を493g前記容器に加えた後、撹拌羽根で無機充填材D1を分散して分散液を得た。この分散液に、熱硬化性樹脂A1を88g、熱硬化性樹脂A2を22g、硬化剤B1を70g加えて撹拌した。硬化剤B1が溶解したことを確認した後、硬化促進剤C1を1.4g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#200メッシュ(開口75μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物をフィルム状の支持体上に実施例1と同様に塗布して、フィルム厚が100μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0098】
(実施例3)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を114g入れた。無機充填材D1を401g前記容器に加えた後、攪拌羽根で無機充填材D1を分散して分散液を得た。この分散液に、熱硬化性樹脂A1を48g、熱硬化性樹脂A2を12g、硬化剤B1を38g加えて撹拌した。硬化剤B1が溶解したことを確認した後、硬化促進剤C1を0.8g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#200メッシュ(開口75μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物をフィルム状の支持体上に実施例1と同様に塗布して、フィルム厚が100μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0099】
(実施例4)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を149g入れた。無機充填材D1を423g前記容器に加えた後、無機充填材D3を104g加えて、攪拌羽根で無機充填材D1及びD3を分散して分散液を得た。無機充填材D1及びD3の平均粒子径は1.0μmであった。この分散液に、熱硬化性樹脂A1を48g、熱硬化性樹脂A2を12g、硬化剤B1を38g加えて撹拌した。硬化剤B1が溶解したことを確認した後、硬化促進剤C1を0.8g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#200メッシュ(開口75μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物をフィルム状の支持体上に実施例1と同様に塗布して、フィルム厚が100μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0100】
(比較例1)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を96g入れた。無機充填材D1を328g前記容器に加えた後、攪拌羽根で無機充填材D1を分散して分散液を得た。この分散液に、熱硬化性樹脂A1を144g、熱硬化性樹脂A2を36g、硬化剤B1を114g加えて撹拌した。硬化剤B1が溶解したことを確認した後、硬化促進剤C1を2.3g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#200メッシュ(開口75μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物をフィルム状の支持体上に実施例1と同様に塗布して、フィルム厚が100μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0101】
(比較例2)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を4629g入れた。無機充填材D3を6622g前記容器に加えた後、攪拌羽根で無機充填材D3を分散して分散液を得た。この分散液に、熱硬化性樹脂A1を680g、熱硬化性樹脂A2を240g、熱硬化性樹脂A3を202g、熱硬化性樹脂A4を78g、硬化剤B1を711g加えて撹拌した。硬化剤B1が溶解したことを確認した後、硬化促進剤C1を15g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#200メッシュ(開口75μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物をフィルム状の支持体上に実施例1と同様に塗布して、フィルム厚が100μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0102】
(比較例3)
比較例1の塗布及び乾燥速度を1m/分から0.5m/分へ変更した以外は、比較例1と同様にしてフィルム厚が100μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0103】
(実施例5)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を83g入れた。無機充填材D5を151g前記容器に加えた後、無機充填材D2を660g、及び、無機充填材D4を53g加えて、攪拌羽根で無機充填材D2,D4及びD5を分散して分散液を得た。無機充填材D2,D4及びD5の平均粒子径は16μmであった。この分散液に、熱硬化性樹脂A5を34g、熱硬化性樹脂A6を11g、硬化剤B2を28g加えて撹拌した。硬化剤B2が溶解したことを確認した後、エラストマーF1を7g、硬化促進剤C2を0.5g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#150メッシュ(開口106μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物をフィルム状の支持体上に実施例1と同様に塗布して、フィルム厚が125μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0104】
(実施例6)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を83g入れた。無機充填材D5を98g前記容器に加えた後、無機充填材D2を430g、及び、無機充填材D4を34g加えて、攪拌羽根で無機充填材D2,D4及びD5を分散して分散液を得た。無機充填材D2,D4及びD5の平均粒子径は18μmであった。この分散液に、熱硬化性樹脂A5を21g、熱硬化性樹脂A6を7g、硬化剤B2を17g加えて撹拌した。硬化剤B2が溶解したことを確認した後、エラストマーF1を8g、硬化促進剤C1を0.14g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#150メッシュ(開口106μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物をフィルム状の支持体上に実施例1と同様に塗布して、フィルム厚が125μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0105】
(実施例7)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を83g入れた。無機充填材D3を68.6g前記容器に加えた後、無機充填材D2を463g、及び、無機充填材D4を34.3g加えて、攪拌羽根で無機充填材D2,D3及びD4を分散して分散液を得た。無機充填材D2,D3及びD4の平均粒子径は18μmであった。この分散液に、熱硬化性樹脂A5を18.3g、熱硬化性樹脂A6を4.6g、硬化剤B2を14.4g加えて撹拌した。硬化剤B2が溶解したことを確認した後、エラストマーF1を5.6g、硬化促進剤C1を0.11g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#150メッシュ(開口106μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物をフィルム状の支持体上に実施例1と同様に塗布して、フィルム厚が125μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0106】
(実施例8)
10Lのポリエチレン容器に有機溶剤E1を83g入れた。無機充填材D3を68.6g前記容器に加えた後、無機充填材D2を463g、及び、無機充填材D4を34.3g加えて、攪拌羽根で無機充填材D2,D3及びD4を分散して分散液を得た。無機充填材D2,D3及びD4の平均粒子径は18μmであった。この分散液に、熱硬化性樹脂A5を17.9g、熱硬化性樹脂A6を4.5g、硬化剤B2を14g加えて撹拌した。硬化剤B2が溶解したことを確認した後、エラストマーF1を6.4g、硬化促進剤C1を0.11g加えて更に1時間撹拌して混合液を得た。この混合液をナイロン製#150メッシュ(開口106μm)でろ過し、ろ液を採取してワニス状エポキシ樹脂組成物を作製した。塗工機を使用してこのワニス状エポキシ樹脂組成物をフィルム状の支持体上に実施例1と同様に塗布して、フィルム厚が125μmの封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)を作製した。
【0107】
<評価>
(1)封止用フィルムの硬化物の熱伝導率A
下記条件で、実施例1~8及び比較例1~3の封止用フィルム(厚さ:100μm又は125μm)の両面を銅箔でラミネートし、両面銅箔付き封止用フィルムを得た。
・ラミネータ装置:株式会社名機製作所製の真空加圧ラミネータ、商品名「MVLP-500」
・ラミネート温度:90℃
・ラミネート圧力:0.5MPa
・真空引き時間:30秒
・ラミネート時間:40秒
【0108】
得られた両面銅箔付き封止用フィルムを、下記条件で硬化し、銅箔付きエポキシ樹脂硬化体を作製した。
・オーブン:エスペック株式会社製、商品名「SAFETY OVEN SPH-201」
・オーブン温度:140℃
・加熱時間:120分
【0109】
作製した銅箔付きエポキシ樹脂硬化体の銅箔をエッチングにより除去し、エポキシ樹脂硬化体(封止用フィルムの硬化物)を得た。得られたエポキシ樹脂硬化体を1cm角にカットし、下記装置を用いて熱拡散率を測定した。
・熱拡散率測定装置:ネッチ(NETZSCH)社製の商品名「LFA447」(キセノンフラッシュアナライザー)
【0110】
また、得られたエポキシ樹脂硬化体の比重を下記比重計にて測定した。
・比重計:アルファミラージュ社製の商品名「SD200L」
【0111】
また、得られたエポキシ樹脂硬化体の比熱を下記条件の示差走査熱量測定にて求めた。
・示差走査熱量測定装置:TAインスツルメントジャパン社製の商品名「Q-200」
・試験条件:25℃、10分(一定)→25~60℃(10℃/min)→60℃、10分(一定)
【0112】
得られた熱拡散率、比重及び比熱を用いて、下記式(1)により熱伝導率を求めた。
熱伝導率=熱拡散率×比重×比熱・・・(1)
【0113】
そして、下記評価基準に基づいて熱伝導率を評価した。実施例1~4の結果を表1に示す。なお、実施例5~8の熱伝導率は実施例1~4と同等(評価:A)であり、例えば、実施例5の熱伝導率は2.73W/m・Kであった。
「A」:熱伝導率>2.5W/m・K
「B」:熱伝導率≦2.5W/m・K
【0114】
(2)封止用フィルムの硬化物の熱伝導率B
実施例5~8の封止用フィルム(厚さ125μm)をそれぞれ4枚重ね、ハンドプレスを用いて下記条件で厚さ500μmの積層フィルムを作製した。
・ハンドプレス装置:株式会社井元製作所製の商品名「BIG HEART」
・ハンドプレス成形温度:140℃
・ハンドプレス成形時間:30分
・成形荷重:20kN
【0115】
得られた厚さ500μmの積層フィルムを下記条件で硬化し、エポキシ樹脂硬化体(封止用フィルムの硬化物)を作製した。
・オーブン:エスペック株式会社製の商品名「SAFETY OVEN SPH-201」
・オーブン温度:140℃
・加熱時間:90分
【0116】
得られたエポキシ樹脂硬化体を1cm角にカットし、熱抵抗率測定器を用いて温度傾斜法によりエポキシ樹脂硬化体の熱伝導率を測定した。そして、下記評価基準に基づいて熱伝導率を評価した。結果を表2に示す。
「A」:熱伝導率>2.5W/m・K
「B」:熱伝導率≦2.5W/m・K
【0117】
(3)封止用フィルムの溶剤含有量
得られた封止用フィルムを5cm角の試料に切り出した。この試料を予め質量を測定したアルミニウムカップに入れて、試料が入ったアルミニウムカップの質量を測定した。次いで、試料をアルミニウムカップに入れたまま、180℃のオーブンで10分間加熱した後、室温(25℃)にて10分間放置した。次いで、試料が入ったアルミニウムカップの質量を再度測定した。次いで、試料が入ったアルミニウムカップの質量の測定値(加熱前及び加熱後)から、別途測定したアルミニウムカップの質量を差し引いて、加熱前及び加熱後の封止用フィルムの質量をそれぞれ求めた。そして、加熱前の封止用フィルムの質量から加熱後の封止用フィルムの質量を差し引いた値を、加熱前の封止用フィルムの質量で除して得られる割合を溶剤含有量として得た。結果を表1及び表2に示す。
【0118】
(4)埋め込み性
厚さ100μm又は125μmの封止用フィルムをそれぞれ4枚重ね、厚さが400μm又は500μmである積層フィルムを得た。以下の手順で、積層フィルムを用いて、8インチサイズのeWLBパッケージを作製した。
図2は、本測定におけるシリコンチップの配置図を示す。まず、
図2に示すように、SUS板50上に、厚さ350μmのシリコンチップ(7.3mm角シリコンチップ60、及び、3mm角シリコンチップ70)を配置した。次いで、積層フィルムを直径20cmの円状に切り出し、前記シリコンチップの上に載せた。次いで、コンプレッションモールド装置(アピックヤマダ株式会社製、商品名:WCM-300)を用いて、下記条件でシリコンチップを封止して封止体(封止構造体)を得た。
・コンプレッションモールド成形温度:140℃
・コンプレッションモールド圧力:2.5MPa
・コンプレッションモールド時間:10分
【0119】
次いで、作製した封止体を下記条件で加熱することにより硬化し、硬化体を作製した。これにより、eWLBパッケージを得た。
・オーブン:エスペック株式会社製の商品名「SAFETY OVEN SPH-201」
・オーブン温度:140℃
・加熱時間:120分
【0120】
作製した硬化体の埋め込み性を下記評価基準に基づいて評価した。結果を表1及び表2に示す。
「A」:ボイドなく埋め込みでき、表面が平滑であるもの
「B」:ボイドが一部に見られ、表面が平滑であるもの
「C」:ボイドが見られ、表面の平滑に劣るもの
【0121】
【0122】
【0123】
<評価結果>
表1及び表2に示したように、熱硬化性成分及び無機充填材を含有する樹脂組成物におおいて、無機充填材が酸化アルミニウムを含み、無機充填材の含有量が、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として72質量%以上である場合、硬化物の熱伝導率に関して優れた効果を得られることが分かる。表1に示した実施例4から、無機充填材がシリカを含む場合であっても、硬化物の熱伝導率に関して優れた効果を得られることが分かる。
【0124】
以上の結果から、熱硬化性成分及び無機充填材を含有する樹脂組成物において、無機充填材が酸化アルミニウムを含み、無機充填材の含有量が、樹脂組成物の総質量(溶剤の質量を除く)を基準として72質量%以上である場合に、硬化物の熱伝導率に関して優れた効果が得られ、埋め込み性に優れることが分かった。
1…支持体、2…封止用フィルム、2a…硬化物、10…支持体付き封止用フィルム、20…半導体素子、30…基板、40…仮固定材、50…SUS板、60…7.3mm角シリコンチップ、70…3mm角シリコンチップ。