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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136218
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】形状測定機及び測定力調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
G01B5/20 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119229
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2018064819の分割
【原出願日】2018-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】寺門 幸宏
(57)【要約】
【課題】測定子の先端部の変位量を測定するセンサを用いて測定力を測定し得る、形状測定機及び測定力調整方法を提供する。
【解決手段】第一アーム(42)に取り付けられ、測定子(20)の変位量に対応する検出信号を出力するセンサ(46)と、測定子へ測定力を付与する測定力付与部(54)と、第一アームと連結される第二アーム(60)と、第一アームを付勢した際に、第一アームに連結された第二アームの回転を規制する規制部(62)と、規制部を用いて第二アームの位置を規制し、第一アームを付勢して第二アームを撓ませた状態において導出された基準測定力とセンサの検出値との関係を記憶する記憶部(208)と、記憶部を参照して、センサの検出値に基づいて測定対象の測定力を算出する測定力算出部(206)と、測定対象の測定力の情報を出力する測定力情報出力部(210)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転支点で回転可能に支持された第一アームの先端側に取り付けられた測定子を被測定物に対して移動させて、前記被測定物の形状を測定する形状測定機であって、
前記第一アームに取り付けられ、前記測定子の変位量に対応する検出値を取得するセンサと、
前記第一アームに取り付けられ、前記第一アームの回転方向へ前記第一アームを付勢して、前記測定子に測定力を付与する測定力付与部と、
前記第一アームの先端と反対側の基端側に連結された第二アームと、
前記第二アームを規制する規制部と、を備え、
前記センサは、前記第一アームを付勢することにより前記第二アームの位置を前記規制部で規制した状態で前記検出値を取得する、形状測定機。
【請求項2】
前記センサは、前記第二アームが撓んだ状態で前記検出値を取得する、請求項1に記載の形状測定機。
【請求項3】
前記測定力付与部において前記第一アームに取り付けられた一端と反対側の他端に取り付けられ、前記測定子に付与する測定力を調整する測定力調整機構を備える、請求項1又は2に記載の形状測定機。
【請求項4】
前記測定力調整機構は、前記検出値と前記測定力との関係に基づいて、前記測定力を前記測定子の目標測定力に調整する、請求項3に記載の形状測定機。
【請求項5】
前記測定力付与部は、付勢部材であり、
前記測定力調整機構は、前記測定力付与部の張力を可変させて、前記測定力を調整する、請求項3又は4に記載の形状測定機。
【請求項6】
回転支点で回転可能に支持された第一アームと前記第一アームの先端と反対側の基端側に連結された第二アームとを備え、前記第一アームの先端側に取り付けられた測定子を被測定物に対して移動させて、前記被測定物の形状を測定する形状測定機に適用される前記測定子に付与する測定力の調整方法であって、
前記測定子を交換し、
前記第一アームを付勢することにより第二アームの位置を規制して検出値を取得し、
前記検出値と前記測定力との関係と取得した前記検出値とに基づいて前記測定力を算出し、
前記測定子に付与する前記測定力を前記測定子の目標測定力に調整する、測定力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の形状を測定する形状測定機及び測定力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定子を備えた検出器を被測定物の表面に沿って移動させ、測定子の先端部の変位量を電気信号に変換してコンピュータ等の演算処理装置に読み取ることで、被測定物の表面粗さ、及び被測定物の輪郭等の形状を測定する形状測定機が知られている。形状測定機では、先端部に測定子を備えるスタイラスを付勢して、測定子の先端部の触針を被測定部の表面に接触させる。
【0003】
従来の測定力を調整する機構を備えていない検出器では、測定力はスタイラスの質量、及びスタイラスの長さに依存する。そうすると、スタイラスを交換した場合、スタイラスの交換前後で測定力が変化してしまう。また、従来の検出器は測定力を測定する機構を備えていないため、測定力を測定する場合、別途、加重計等を準備する必要がある。
【0004】
特許文献1は、測定子に付与される測定力を検出する測定力検出手段を備える表面追従型測定機が記載されている。同文献に記載の表面追従型測定機は、測定子の先端部の変位量を検出する変位検出手段とは別に、測定力を検出する測定力検出手段を備える。測定力検出手段は、歪みゲージの検出信号に基づいて測定力を検出している。
【0005】
特許文献2は、測定力を検出する手段を備えた表面追従型測定機が記載されている。同文献に記載の表面追従型測定機は、スタイラスと触針との間に圧電素子を挿入し、圧電素子の出力電圧に基づいて、測定力を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3273026号公報
【特許文献2】特許第5009564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、及び特許文献2に記載の表面追従型測定機はいずれも、測定子の先端部の変位量を検出する機構とは別に、測定力を検出する機構を備えている。そうすると、検出器の大型化、及び検出信号を処理する回路の複雑化などに起因するコストアップが問題となる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、測定子の先端部の変位量を測定するセンサを用いて測定力を測定し得る、形状測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0010】
第1態様に係る形状測定機は、回転支点を用いて回転可能に支持された第一アームの先端側に備えられた測定子を被測定物に対して移動させて、被測定物の形状を測定する形状測定機であって、第一アームに取り付けられ、測定子の変位量に対応する検出信号を出力するセンサと、第一アームの回転方向へ第一アームを付勢して、測定子へ測定力を付与する測定力付与部と、第一アームのセンサの取付位置よりも第一アームの基端側の位置において、第一アームと連結される第二アームと、第一アームを付勢した際に、第一アームに連結された第二アームの回転を規制する規制部と、規制部を用いて第二アームの位置を規制し、第一アームを付勢して第二アームを撓ませた状態において導出された基準測定力とセンサの検出値との関係を記憶する記憶部と、記憶部を参照して、センサの検出値に基づいて測定対象の測定力を算出する測定力算出部と、測定力算出部を用いて算出された測定対象の測定力の情報を出力する測定力情報出力部と、を備えた形状測定機である。
【0011】
第1態様によれば、第二アームの位置を規制し、第二アームを撓ませた状態において、センサの検出信号を取得する。基準測定力とセンサの検出値との関係を参照して、測定子の変位量を検出するセンサの検出値から測定子に付与される測定対象の測定力を算出し、測定対象の測定力の情報を出力する。これにより、測定子の変位量を検出するセンサを用いて、測定子に付与される測定力を測定し得る。
【0012】
測定子の構成例として、被測定物に接触させる触針、及び触針が取り付けられるスタイラスを備える構成が挙げられる。
【0013】
センサの構成例として、第一アームに取り付けられ、第一アームの変位に応じて可動する可動子、及び可動子の変位を電気信号に変換する電気信号変換部を備える構成が挙げられる。
【0014】
第2態様は、第1態様の形状測定機において、第二アームの先端部は、第一アームの基端部に連結され、規制部は、第二アームの基端部を規制する位置に配置される構成としてもよい。
【0015】
第2態様において、測定子の移動範囲の端に第一アームを停止させた状態で第二アームの位置を規制する規制部を配置し得る。
【0016】
第3態様は、第1態様又は第2態様の形状測定機において、センサは、第一アームにおける回転支点の位置よりも、第一アームの基端側の位置に取り付けられる構成としてもよい。
【0017】
第3態様によれば、センサは、第一アームの基端側の位置の変位量に応じた検出信号を出力し得る。
【0018】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか一態様の形状測定機において、センサは、差動変圧器型センサである構成としてもよい。
【0019】
第4態様によれば、差動変圧器型センサを用いて、測定子の変位量を電気信号に変換し得る。
【0020】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか一態様の形状測定機において、規制部は、第二アームと接触して第二アームの位置を規制するストッパ部材を備える構成としてもよい。
【0021】
第5態様によれば、第二アームをストッパ部材と接触させることで、第二アームの位置を規制し得る。
【0022】
第6態様は、第1態様の形状測定機において、センサは、第一アームにおける回転支点の位置よりも、第一アームの先端側の位置に取り付けられるスケール型センサである構成としてもよい。
【0023】
第6態様によれば、スケール型センサを用いて、第二アームの撓みに応じた検出信号を出力し得る。
【0024】
第7態様は、第6態様の形状測定機において、第二アームは、第一アームにおけるスケール型センサと回転支点との間に連結される取付部材を介して、第一アームと連結される構成としてもよい。
【0025】
第7態様において、第一アームと同様の剛性を有する取付部材が好ましい。取付部材は、同一の材料を適用し得る。
【0026】
第8態様は、第7態様の形状測定機において、第二アームは、取付部材から第一アームの先端側に向かう方向に沿って配置され、規制部は、第二アームの先端部を規制する位置に配置される構成としてもよい。
【0027】
第8態様において、第一アームと第二アームとを平行に配置してもよい。
【0028】
平行は、非平行のうち、平行とみなし得る実質的な平行が含まれてもよい。
【0029】
第9態様は、第1態様から第8態様のいずれか一態様の形状測定機において、測定力算出部を用いて算出された測定対象の測定力を表示する表示部を備え、測定力情報出力部は、測定対象の測定力の情報を表示部へ出力する構成としてもよい。
【0030】
第9態様によれば、オペレータ等は、表示部に表示された測定力を把握し得る。
【0031】
第10態様は、第9態様の形状測定機において、測定力算出部を用いて測定された測定力に基づき、測定子に付与される測定力を調整する測定力調整部を備えた構成としてもよい。
【0032】
第10態様によれば、測定力を目標の測定力に調整し得る。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、第二アームの位置を規制し、第二アームを撓ませた状態において、センサの検出信号を取得する。基準測定力とセンサの検出値との関係を参照して、測定子の変位量を検出するセンサの検出値から測定子に付与される測定力を算出し、測定力の情報を出力する。これにより、測定子の変位量を検出するセンサを用いて、測定子に付与される測定力を測定し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は粗さ測定機の全体構成図である。
図2図2は測定子、及び変位検出器の概略構成図である。
図3図3は基準測定力測定の模式図である。
図4図4は下限検出値測定の模式図である。
図5図5は下限検出値と測定力との関係を示すグラフである。
図6図6は信号処理部の構成例を示すブロック図である。
図7図7はスタイラスを交換した際の測定力調整方法の手順を示すフローチャートである。
図8図8はストッパの変形例に係る変位検出器の概略構成図である。
図9図9はセンサの変形例に係る変位検出器の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。本明細書では、先に説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、説明を適宜省略することとする。
【0036】
[粗さ測定機の全体構成]
図1は粗さ測定機の全体構成図である。同図に示した粗さ測定機10は、定盤12、支柱14、X軸駆動部16、変位検出器18、測定子20、入力装置22、及び表示装置24を備える。また、粗さ測定機10は図示しない制御装置を備える。図1に図示した符号52は係合機構を表す。なお、粗さ測定機10は、形状測定機の一例に相当する。
【0037】
定盤12は、被測定物であるワークが載置される。定盤12のワークが載置される面は、X軸方向、及びY軸方向と平行なXY平面である。定盤12はZ軸方向に伸びる支柱14が立設される。
【0038】
支柱14は、X軸駆動部16がZ軸方向に移動自在に取り付けられる。X軸駆動部16は、変位検出器18がX軸方向に移動自在に取り付けられる。変位検出器18は、測定子20が着脱自在に取り付けられる。
【0039】
入力装置22は、制御装置へ指示を表す信号を送信する。図1には、入力装置22としてキーボードを図示する。表示装置24は、制御装置から送信される表示信号が表す測定結果等を表示する。
【0040】
図示しない制御装置は、規定のインターフェイスを介して入力装置22と接続される。また、制御装置は、規定のインターフェイスを介して表示装置24と接続される。制御装置は、コンピュータを適用し得る。すなわち、制御装置は、プロセッサ、メモリ、記憶装置、及び入出力コントローラを備え得る。
【0041】
[変位検出器の構成]
図2は測定子、及び変位検出器の概略構成図である。図2に示した変位検出器18は、検出アーム42、スタイラス44、及び差動変圧器型センサ46を備える。検出アーム42は、筐体48に係合されるアーム回転支点40に回転可能に支持される。なお、図2では、筐体48を模式的に図示した。
【0042】
図2に示した矢印線は、検出アーム42の回転方向を表す。また、検出アーム42は第一アームの一例に相当する。
【0043】
検出アーム42の先端部42Aは、スタイラス44の基端部44Bが連結される。検出アーム42とスタイラス44とは図1に示した係合機構52を用いて連結される。図2では、係合機構52の図示を省略する。
【0044】
なお、本明細書における先端部は、先端から一定距離の領域を表す。本明細書における基端部は、基端から一定距離の領域を表す。一定距離の例として全長の四分の一以下の距離が挙げられる。先端は、触針50の側の端としてもよい。基端は先端の反対側の端とし得る。
【0045】
スタイラス44の先端部44Aは、触針50が取り付けられる。スタイラス44、及び触針50は、図1に示した測定子20を構成する。
【0046】
変位検出器18は、付勢部材54、及び測定力調整機構56を備える。図2では、付勢部材54としてコイルばねを図示した。付勢部材54の一方の端は、検出アーム42に取り付けられる。付勢部材54の他方の端は、測定力調整機構56に取り付けられる。付勢部材54は測定力付与部の一例に相当する。
【0047】
測定力調整機構56は、検出アーム42に取り付けられた付勢部材54の伸び量を可変させる機構である。測定力調整機構56は、付勢部材54の張力を可変させて、測定力を可変させる。
【0048】
測定力調整機構56は、付勢部材54の基端位置を昇降させる昇降機構、及び昇降機構を駆動するモータを備えてもよい。測定力調整機構56は、昇降機構、及びモータを一体化したリニアアクチュエータを備えてもよい。モータ、及リニアアクチュエータは制御装置から送信される指令信号に基づいて制御し得る。測定力調整機構56は、測定力調整部の一例に相当する。
【0049】
変位検出器18は、検出器アーム60、及びストッパ62を備える。検出アーム42の基端部42Bは、検出器アーム60が連結される。ストッパ62は、スタイラス44の下限位置までスタイラス44を下ろした際に、撓みが生じていない検出器アーム60と接触する位置に配置される。検出器アーム60は第二アームの一例に相当する。ストッパ62は規制部の一例、及びストッパ部材の一例に相当する。
【0050】
[表面粗さの測定]
粗さ測定機10を用いてワークの表面粗さの測定を行う場合、定盤12の上に載置されたワークの表面に、一定の測定力を付与した触針50を接触させる。この状態で、X軸駆動部16を用いてX軸方向に沿って測定子20を移動させる。ワークの表面の形状に応じて触針50がZ軸方向に変位する。変位検出器18は、触針50の変位に応じた電気信号を出力する。
【0051】
図示しない制御装置は、変位検出器18から出力された電気信号に基づいて、ワークの表面粗さの測定値を算出する。制御装置は、表示装置24を用いて測定値を表示し得る。表示装置24は表示部の一例に相当する。
【0052】
[基準測定力と下限検出値との関係の導出]
以下の手順に従い、基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を導出する。基準測定力Fは基準となるスタイラス44を用いて測定される。基準となるスタイラス44は、使用頻度が最も高いスタイラス44など、任意のスタイラス44を適用し得る。
【0053】
〔基準測定力Fの測定〕
図3は測定力測定の模式図である。図3に示すように、検出器アーム60とストッパ62とが非接触の状態で、荷重計70を用いて触針50の先端の荷重を測定する。荷重計の測定値を力に換算した値が基準測定力Fである。
【0054】
基準測定力Fは、検出器アーム60がストッパ62と接触し、かつ検出器アーム60が撓んでいない状態で測定してもよい。
【0055】
図3に示した符号Lは、基準測定力Fの測定に使用されるスタイラス44の全長を表す。スタイラス44の全長は、スタイラス44の触針50の取付位置からアーム回転支点40までの距離が適用される。後述する任意のスタイラス44の全長も同様である。
【0056】
〔下限検出値の測定〕
図4は下限検出値測定の模式図である。下限検出値Dは、スタイラス44の下限位置における差動変圧器型センサ46の検出値である。
【0057】
基準測定力Fを測定した後に、スタイラス44の下限位置へスタイラス44を移動させる。検出器アーム60がストッパ62に当たり、基準測定力Fに応じて検出器アーム60が撓む。差動変圧器型センサ46の検出値は、検出器アーム60の撓み量に応じ変化する。この状態における差動変圧器型センサ46の検出値を下限検出値Dとする。基準測定力Fと下限検出値Dとを測定データとして記憶する。
【0058】
次に、測定力調整機構56を用いて基準測定力Fを変える。図3に示すように荷重計70を用いて基準測定力Fを測定する。その後、スタイラス44の下限位置へスタイラス44を移動させて、下限検出値Dを測定する。基準測定力Fと下限検出値Dとを測定データとして記憶する。
【0059】
この手順を繰り返して、規定数の基準測定力Fと下限検出値Dとの測定データを取得し、記憶する。規定数の基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を導出するにあたり、規定数は3以上の整数が適用される。
【0060】
図4における二点鎖線は、スタイラス44の下限位置にスタイラス44に下げた状態において、検出器アーム60がストッパ62と接触し、かつ検出器アーム60が撓んでいない状態を表す。
【0061】
また、図4における実線は、スタイラス44の下限位置にスタイラス44に下げた状態において、検出器アーム60がストッパ62と接触し、かつ検出器アーム60が撓んでいる状態を表す。なお、図4では、図2、及び図3に図示した、符号42A、符号42B、符号44A、及び符号44Bの図示を省略した。
【0062】
図5は測定力と下限検出値との関係を示すグラフである。図5に図示した符号100、符号102、符号104、符号106、符号108、及び符号110は、基準測定力Fごとの下限検出値Dを表す。
【0063】
図5に示すように、基準測定力Fごとの下限検出値Dの測定データを用いて、基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を示す直線112が導出される。図5に示した直線112に代わり、下限検出値Dをパラメータとする基準測定力Fのテーブルを導出してもよいし、下限検出値Dをパラメータとする基準測定力Fの関数を導出してもよい。
【0064】
〔信号処理部の構成〕
図6は信号処理部の構成例を示すブロック図である。図5に示した基準測定力Fと下限検出値Dとの関係は、図6に示した信号処理部200を用いて導出し、記憶することが可能である。信号処理部200は測定力算出部の一例に相当する。
【0065】
信号処理部200は、センサ信号入力部202、測定力入力部204、演算部206、記憶部208、及び出力部210を備える。センサ信号入力部202は差動変圧器型センサ46から検出値を表すセンサ信号を取得する。センサ信号入力部202は差動変圧器型センサ46から出力されるセンサ信号を入力可能な電気回路を適用可能である。
【0066】
測定力入力部204は、基準測定力Fを表す電気信号を取得する。測定力入力部204は、基準測定力Fを表す信号を入力可能な電気回路を適用可能である。演算部206は、センサ信号と、基準測定力Fを表す電気信号とを信号処理して、例えば、図5に示した直線112等の基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を導出する。
【0067】
演算部206は、基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を参照し、検出器アーム60の撓み量に応じた差動変圧器型センサ46の検出値を用いて、測定対象の測定力Fを導出し得る。演算部206は、基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を導出する導出処理部、及び測定対象の測定力Fを算出する測定力算出部を備えてもよい。演算部206は、測定力算出部の構成要素の一例に相当する。
【0068】
演算部206は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含む構成を適用可能である。
【0069】
記憶部208は、演算部206を用いて導出された基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を記憶する。記憶部208は、半導体メモリ等の各種データを非一時的に記憶する記憶素子を適用可能である。
【0070】
出力部210は、記憶部208に記憶されている基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を参照して導出された測定対象の測定力Fの情報を出力する。出力部210は、記憶部208に記憶されている基準測定力Fと下限検出値Dとの関係の情報を出力してもよい。基準測定力Fと下限検出値Dとの関係の情報の例として、図5に示したグラフが挙げられる。
【0071】
出力部210は、測定対象の測定力Fを表す電気信号を出力する電気回路を適用可能である。例えば、出力部210を介して、表示装置24へ測定対象の測定力Fを表す映像信号を送信してもよい。表示装置24は、送信された映像信号に基づき、測定対象の測定力Fを表示し得る。出力部210は、測定力情報出力部の一例に相当する。
【0072】
図6に示した信号処理部200は、プロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスを備えたコンピュータを適用可能である。
【0073】
図1に示した粗さ測定機10は、基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を記憶する記憶部を備える。粗さ測定機10は、信号処理部200を備えてもよい。信号処理部200は図示しない制御装置に具備されてもよい。測定力と下限検出値との関係は、変位検出器18の製造検査の際に導出され、記憶されてもよい。
【0074】
[スタイラス交換後の測定力の調整方法]
上記した基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を用いて、スタイラス44が交換された後のスタイラス44について、目的の測定力を得ることが可能である。以下に、スタイラス交換後の測定力の調整方法を示す。
【0075】
図7はスタイラスを交換した際の測定力調整方法の手順を示すフローチャートである。図7に手順を示す測定力測定方法は、制御装置を用いて測定力測定プログラムを実行して実現し得る。
【0076】
スタイラス変更工程S10では、スタイラス44が交換される。スタイラス変更工程S10の後に、下限検出値測定工程S12へ進む。
【0077】
下限検出値測定工程S12では、下限検出値Dを測定する。すなわち、スタイラス44を下限位置へ移動させ、差動変圧器型センサ46の検出値を取得する。下限検出値測定工程S12の後に、測定力算出工程S14へ進む。
【0078】
測定力算出工程S14では、交換後のスタイラス44における測定力Fが算出される。まず、図5に示した基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を用いて、下限検出値測定工程S12において測定された下限検出値Dを基準測定力Fに変換する。下限検出値Dに対応する基準測定力Fを用いて、交換後のスタイラス44における測定対象の測定力Fが算出される。
【0079】
交換後のスタイラス44の全長をLとした場合の、交換後のスタイラス44における測定対象の測定力Fは、以下の式1を用いて表される。
【0080】
F=(L/L)×F …式1
測定力算出工程S14の後に、判定工程S16へ進む。測定力算出工程S14の後に、表示装置24を用いて測定力を表示する表示工程を実行してもよい。判定工程S16では、測定力算出工程S14において算出された測定対象の測定力Fが、交換後のスタイラス44の測定力の目標値と一致しているか否かを判定する。
【0081】
判定工程S16において、測定力算出工程S14において算出された測定対象の測定力Fが、交換後のスタイラス44の測定力の目標値と一致していない場合はNo判定となる。なお、ここでいう一致とは、規定の範囲内の誤差を有する場合が含まれてもよい。
【0082】
すなわち、判定工程S16において、測定力算出工程S14において算出された測定対象の測定力Fが、交換後のスタイラス44の測定力の目標範囲から外れている場合にNo判定としてもよい。No判定の場合、測定力調整工程S18へ進む。
【0083】
測定力調整工程S18では、測定力の目標値に対応する下限検出値Dとなるように、図2に示した測定力調整機構56を用いて測定対象の測定力Fが調整される。測定力調整工程S18の後に、下限検出値測定工程S12へ進み、判定工程S16においてYes判定となるまで、下限検出値測定工程S12から測定力調整工程S18までの各工程が繰り返し実行される。
【0084】
一方、判定工程S16において、測定力算出工程S14において算出された測定対象の測定力Fが、交換後のスタイラス44の測定力の目標値と一致している場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、測定力測定方法は終了される。
【0085】
[作用効果]
上記の如く構成された粗さ測定機10、及び測定力測定方法によれば、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0086】
〔1〕
検出アーム42の基端部に連結された検出器アーム60、及びスタイラス44の下端位置において、検出器アーム60の位置を規制するストッパ62を備える。検出器アーム60の撓みに応じた差動変圧器型センサ46の検出値を取得する。予め記憶されている基準測定力Fと下限検出値Dとの関係を参照して測定対象の測定力Fが導出される。これにより、測定子20の変位量を検出する差動変圧器型センサ46を用いて、測定子20に付与される測定力の測定が可能である。
【0087】
〔2〕
表示装置24を用いて測定された測定対象の測定力Fを表示する。これにより、オペレータ等はスタイラス44ごとの測定力を把握し得る。
【0088】
〔3〕
測定力調整機構56を備える。下限検出値Dを測定しながら測定対象の測定力Fを調整する。これにより、測定対象の測定力Fを目標とする測定力に調整することが可能である。
【0089】
[検出器アームの変形例]
図2に示した検出器アーム60は、検出アーム42と同一の材料を適用可能である。すなわち、検出器アーム60は、検出アーム42の基端部42Bを延長して構成することが可能である。検出アーム42の基端部42Bを延長する場合、差動変圧器型センサ46との接続部よりも基端側が検出器アーム60として機能する。
【0090】
検出器アーム60は、検出アーム42と異なる材料を用いてもよい。検出器アーム60は、検出アーム42と比較して、撓みやすい材料を適用し得る。検出アーム42と検出器アーム60との連結は連結部材を用いてもよい。
【0091】
検出器アーム60は、部分的に撓みやすい材料を用いてもよい。例えば、検出アーム42との連結部分側に撓み易い材料を用いてもよい。
【0092】
検出器アーム60は、検出アーム42と同一の形状を適用してもよい。同様の形状とは、厳密には異なる形状であるものの、実質的に同一の形状とみなし得る場合が含まれてもよい。検出アーム42と異なる形状を適用してもよい。検出器アーム60の形状の一例として、円柱、及び四角柱等が挙げられる。
【0093】
[ストッパの変形例]
図8はストッパの変形例に係る変位検出器の概略構成図である。図8に示した変位検出器18Aは、図2に示した検出器アーム60に代わり、検出器アーム60Aを備える。また、ストッパ62に代わり、ストッパ62Aを備える。
【0094】
図8に示した検出器アーム60Aは、磁性体が適用される。また、ストッパ62Aは、コイルを用いた電磁石が適用される。すなわち、図8に示した変位検出器18Aは、磁力を用いて検出器アーム60Aがストッパ62Aの位置に固定される。換言すると、ストッパ62Aは、検出器アーム60Aの位置を規制する。
【0095】
図8に示した変位検出器18Aは、スタイラス44の上限位置にスタイラス44を移動させて、差動変圧器型センサ46の検出値を取得する。
【0096】
ストッパ62Aを移動させるストッパ移動部を備え、スタイラス44の上限位置から下限位置の間の任意の位置において検出器アーム60の位置を規制し、検出器アーム60を撓ませた状態の差動変圧器型センサ46の検出信号を取得してもよい。
【0097】
[センサの変形例]
図9はセンサの変形例に係る変位検出器の概略構成図である。図9は、輪郭形状測定機への適用例である。図9に示した変位検出器18Bは、図2に示した差動変圧器型センサ46に代わり、スケール型センサ46Bを備える。
【0098】
また、変位検出器18Bは、図2に示した検出器アーム60に代わり検出器アーム60Bを備え、かつ、ストッパ62に代わりストッパ62Bを備える。
【0099】
スケール型センサ46Bは、アーム回転支点40よりも検出アーム42の先端側の位置に取り付けられる。検出器アーム60Bは、取付部材63を介して検出アーム42に取り付けられる。取付部材63は、検出器アーム60Bの基端部に連結される。
【0100】
検出アーム42における検出器アーム60Bの取付位置は、アーム回転支点40よりも検出アーム42の先端側の位置であり、かつ、スケール型センサ46Bの位置よりも検出アーム42の基端側の位置である。
【0101】
取付部材63は、検出アーム42と同様の剛性を有することが好ましい。同様の剛性は、同一の作用効果を得ることが可能な範囲を表す。例えば、検出アーム42と同一の材料を適用し得る。検出アーム42と検出器アーム60Bとは平行に配置してもよい。平行は、非平行のうち、平行とみなし得る実質的な平行を含み得る。
【0102】
ストッパ62Bは、検出器アーム60Bの先端部と接触する位置に配置される。ストッパ62Bは、スケール型センサ46Bを固定する固定部材47に取り付けられる。
【0103】
変位検出器18Bは、図2に示した測定力調整機構56に代わり、測定力調整機構56Bを備える。測定力調整機構56Bは、錘57A、ネジ57B、及びフレーム57Cを備える。錘57Aは、ネジ57Bを用いて、検出アーム42に沿って移動自在に支持される。ネジ57Bは、フレーム57Cを用いて検出アーム42に取り付けられる。
【0104】
測定力調整機構56Bは、ネジ57Bを動作させて錘57Aの位置を調整可能である。測定力調整機構56Bは、錘57Aの位置に応じて検出アーム42、及びスタイラス44の全体の重心位置を変化させることで、測定力の調整が可能となっている。測定力調整機構56Bは、測定力付与部の一例、及び測定力調整部の一例に相当する。
【0105】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0106】
10…粗さ測定機、18…変位検出器、18A…変位検出器、18B…変位検出器、20…測定子、24…表示装置、40…アーム回転支点、42…検出アーム、42A…先端部、42B…基端部、44…スタイラス、46…差動変圧器型センサ、46B…スケール型センサ、50…触針、54…付勢部材、56…測定力調整機構、60…検出器アーム、60A…検出器アーム、60B…検出器アーム、62…ストッパ、62A…ストッパ、62B…ストッパ、200…信号処理部、206…演算部、208…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9