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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136273
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20220908BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20220908BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20220908BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A61F13/15 140
A61F13/496
A61F13/532 200
A61F13/533 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120812
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2020068488の分割
【原出願日】2020-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】植田 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】大村 夏美
(72)【発明者】
【氏名】横市 綾
(57)【要約】
【課題】空気の流れをコントロールして、冷感効果を向上させるパンツ型吸収性物品を提供することにある。
【解決手段】互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、トップシートと、吸収性コアと、バックシートとを備えた吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌側面を覆うように設けられた外装体と、を有するパンツ型吸収性物品であって、揮発性を有する冷感剤が前記吸収性本体に塗布されており、前記バックシートは、透湿性を有し、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられており、前記冷感剤が塗布されている塗布領域の非肌側には、前記冷感剤を備えていることを想起させるための想起表示が、外部から視認可能に設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
トップシートと、吸収性コアと、バックシートとを備えた吸収性本体と、
前記吸収性本体の非肌側面を覆うように設けられた外装体と、
を有するパンツ型吸収性物品であって、
揮発性を有する冷感剤が前記吸収性本体に塗布されており、
前記バックシートは、透湿性を有し、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられており、
前記冷感剤が塗布されている塗布領域の非肌側には、前記冷感剤を備えていることを想起させるための想起表示が、外部から視認可能に設けられている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記外装体は、胴回り部を備え、
前記胴回り部は、前記吸収性本体の長手方向の両端よりも前記長手方向の外側に、前記左右方向に伸縮可能な複数の弾性部材を有し、
前記前後方向に見て、前記胴回り部と前記吸収性本体の前記長手方向の両端部とが重なる重複部分の剛性と、前記吸収性本体の前記長手方向の両端よりも前記長手方向の外側の部分の剛性とを比較した場合に、前記重複部分の剛性の方が大きい
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記外装体は、前記左右方向に伸縮可能な複数の弾性部材を有する胴回り部を備え、
前記前後方向に見て、前記吸収性本体の長手方向の両端部と、前記複数の弾性部材の少なくとも一部とが重なる部分を有する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、トップシートと、吸収性コアと、バックシートとを備え、
前記吸収性本体の長手方向の両端部は、少なくとも前記トップシート側から前記バックシートに向かってエンボスすることにより形成されたエンボス部を前記左右方向に間欠的に有している
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、着用者の股下に対向する股下部の前記左右方向の中央部において、
前記吸収性本体の長手方向に伸縮可能な中央弾性部材を有し、
前記前後方向に見て、前記中央弾性部材の少なくとも一部が前記冷感剤と重なっている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
請求項5に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記パンツ型吸収性物品を前記上下方向に伸長させた状態において、
前記パンツ型吸収性物品の前記前後方向の前側における前記中央弾性部材の前記上下方向の長さが、前記パンツ型吸収性物品の前記前後方向の後側における前記中央弾性部材の前記上下方向の長さよりも短い
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
液吸収性の吸収性本体と、
前記吸収性本体の非肌側面を覆うように設けられた外装体と、
を有するパンツ型吸収性物品であって、
揮発性を有する冷感剤が前記吸収性本体に塗布されており、
前記吸収性本体の前記左右方向の両側部に設けられ、前記吸収性本体の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた防漏壁を有し、
前記吸収性本体の前記長手方向の両端部において、
前記左右方向の両側部では、前記防漏壁が前記吸収性本体に肌側から重なっており、
前記左右方向の中央部では、前記防漏壁と前記吸収性本体とが重なっておらず、
前記冷感剤が塗布されている塗布領域の非肌側には、前記冷感剤を備えていることを想起させるための想起表示が、外部から視認可能に設けられている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記冷感剤が、前記吸収性本体の少なくとも長手方向の中央部に塗布されている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記パンツ型吸収性物品を前記上下方向に伸長させた状態において、
前記吸収性本体の前記前後方向の前側における前記上下方向の寸法が、前記吸収性本体の前記前後方向の後側における前記上下方向の寸法よりも小さい
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、前記吸収性本体の長手方向に沿って延在する一対の圧搾部を有する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項11】
請求項10に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記一対の圧搾部は、前記吸収性本体の前記長手方向に間欠的に配置されている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、前記吸収性本体の長手方向に沿った液吸収性の吸収性コアを有し、
前記吸収性コアの前記長手方向の両端部の厚みは、前記吸収性コアの前記長手方向の中央領域の厚みよりも薄い
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項13】
請求項12に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性コアの前記中央領域には、周囲よりも厚みが厚い中高部が設けられている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項14】
請求項13に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記前後方向における後側は、着用者の背側に対応し、
前記吸収性コアは、前記中高部よりも前記後側に、周囲よりも厚みが厚い後方中高部を有している
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項15】
請求項1から12の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、前記吸収性本体の長手方向に沿った液吸収性の吸収性コアを有し、
前記吸収性コアは、前記吸収性コアの坪量が周囲よりも低い複数の低坪量部、或いは、前記吸収性コアの坪量がゼロである複数のスリット部を有し、
前記複数の低坪量部或いは前記複数のスリット部は、前記吸収性コアの長手方向及び前記左右方向に沿って延在し、前記吸収性コアを複数の区画に分ける
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項16】
請求項1から15の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体の長手方向の端部において、前記外装体と貼り合わされている前記左右方向の貼り合わせ長さは、前記吸収性本体の前記長手方向の中央部において、前記外装体と貼り合わされている前記左右方向の貼り合わせ長さよりも長い
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項17】
請求項7から16の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、液吸収性の吸収性コアを有し、
前記吸収性コアは、長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記左右方向の幅が狭い括れ部を有する、
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項18】
請求項1から17の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体がポリマーシートからなる
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項19】
請求項18に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記ポリマーシートには、前記ポリマーシートの長手方向に延在する、ポリマーが存在しない一対のポリマー非存在域が設けられている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項20】
請求項1から19の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
一対の脚回り開口部を有し、
前記一対の脚回り開口部の前記上下方向の上半分において、前記一対の脚回り開口部それぞれに沿った湾曲弾性部材を有する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項21】
請求項1から20の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体には、改質剤が塗布されており、
前記前後方向に見て、前記改質剤と前記冷感剤とが重なる重複領域と、前記改質剤と前記冷感剤とが重ならない非重複領域とを有する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項22】
請求項1から21の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記外装体を構成するシート材、或いは、前記吸収性本体のうちの着用者の肌に接触する肌側シートは、コットン繊維を有するシートである
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項23】
請求項1から12、16から22の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体には、前記左右方向の中央部、且つ、前記パンツ型吸収性物品の前記前後方向の少なくとも後側において、前記吸収性本体の長手方向に延び、且つ、非肌面側から圧搾された中央圧搾部が設けられている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項24】
請求項1から12、16から22の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、前記吸収性本体の長手方向に沿った液吸収性の吸収性コアを有し、
少なくとも着用者の股下に対向する股下部において、前記吸収性コアの前記左右方向の両側部には、周囲よりも厚みが厚い部分が設けられている、
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
液吸収性の吸収性コアを備えた吸収性本体と、着用者等が感じる不快感を低減するための冷感剤、温感剤、或いは香料等を含む吸収性物品は、既によく知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、パンツ型吸収性物品(パンツ型着用物品)のウエスト域の外表面や内表面等に揮発性の香料を設けることによって、排泄物由来の不快な臭気を低減させる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、温感剤が内包された水崩落性のマイクロカプセルを吸収性物品の表面シートに配することにより、体液排泄時等のタイミングで、吸収体の肌対向面側に設けられた凹陥部を介して温感剤を拡散させつつ、吸収体を加熱することなく着用者の冷感の知覚に起因する不快感を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-102612号公報
【特許文献2】特開2019-187963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたパンツ型吸収性物品においては、開口縁部を含む胴回りに対応する領域に香料(揮発性物質)が塗布されているが、胴回りは不織布によって構成されていることが多く、揮発性を有する冷感剤等を塗布しても、吸収性物品の非肌面側に冷感剤が抜けてしまう虞がある等、冷感剤の空気の流れをコントロールすることは容易ではない。
【0007】
また、特許文献2の下着に貼り付けて使用する吸収性物品に温感剤又は冷感剤を塗布した場合、下着と身体との間に隙間が出来やすく、温感剤や冷感剤によって刺激を与えるべき場所をコントロールすることや、製品のどの部分から温感又は冷感成分を含む空気を逃がすかなど、空気の流れをコントロールすることは困難である。
【0008】
本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、空気の流れをコントロールして、冷感効果を向上させるパンツ型吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための主たる発明は、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、トップシートと、吸収性コアと、バックシートとを備えた吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌側面を覆うように設けられた外装体と、を有するパンツ型吸収性物品であって、揮発性を有する冷感剤が前記吸収性本体に塗布されており、前記バックシートは、透湿性を有し、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられており、前記冷感剤が塗布されている塗布領域の非肌側には、前記冷感剤を備えていることを想起させるための想起表示が、外部から視認可能に設けられていることを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気の流れをコントロールして、冷感効果を向上させるパンツ型吸収性物品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るパンツ型吸収性物品1の概略斜視図である。
図2】第1実施形態に係る、展開状態におけるパンツ型吸収性物品1の平面図である。
図3】吸収性本体20の平面図である。
図4A図4Aは、図3のA-A線に沿った吸収性本体20の断面模式図である。
図4B図4Bは、図3のB-B線に沿った、吸収性本体20と外装体10とを含む断面模式図である。
図5図5は、冷感剤26と、吸収性本体20及び外装体10とを接合する接合領域Qとの配置について説明する平面図である。
図6】吸収性本体20のうちのトップシート24、吸収性コア22、及びシート25aを接合する接合領域Qbを説明する図である。
図7】第1実施形態に係る吸収性コア22の変形例を示す断面図である。
図8】第1実施形態に係る吸収性コア22の別の変形例を示す図である。
図9】第2実施形態に係るパンツ型吸収性物品1の概略斜視図である。
図10】第2実施形態に係る、展開かつ伸長状態のパンツ型吸収性物品1を肌側から見た概略平面図である。
図11図10中のA-A概略断面図である。
図12】第2実施形態に係る、展開かつ伸長状態のパンツ型吸収性物品1を非肌側から見た概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、液吸収性の吸収性本体と、前記左右方向に伸縮性を有する胴回り部を備え、前記吸収性本体の非肌側面を覆うように設けられた外装体と、を有するパンツ型吸収性物品であって、揮発性を有する冷感剤が前記吸収性本体に塗布されており、前記吸収性本体の長手方向の両端部は、前記前後方向に見て、前記吸収性本体を構成する少なくとも一つの本体側端部シート部と、前記外装体を構成する少なくとも一つの外装体側シート部とを有し、前記胴回り部を前記左右方向に伸張させた状態において、前記本体側端部シート部と前記外装体側シート部のうち、前記前後方向に隣接しているシート部同士を接合する接合領域が、前記左右方向に間欠的に設けられていることを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
【0013】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、冷感効果が得られている吸収性本体の長手方向の両端部において、接合されている領域と接合されていない領域を設けることで左右方向に剛性差が生じる。胴回り部が左右方向に収縮することで、当該剛性差によって凹凸の皺が発生し、凹凸の皺の間から空気が流れ易くなる。吸収性本体は湿気を帯びた空気が溜まりやすく、そのような湿気が過度に溜まると冷感効果を阻害する虞があるが、膣口付近には密着により冷感効果を与えつつ、そのような湿気を帯びた空気を逃すことで、冷感効果を向上させることができる。
【0014】
また、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、トップシートと、吸収性コアと、バックシートとを備えた吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌側面を覆うように設けられた外装体と、を有するパンツ型吸収性物品であって、揮発性を有する冷感剤が前記吸収性本体に塗布されており、前記バックシートは透湿性を有し、前記吸収性コアよりも非肌側に設けられていることを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
【0015】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、冷感効果が得られている吸収性本体部分は、湿気を帯びた空気が溜まりやすいが、透湿性を有するバックシートが吸収性コアの非肌側に設けられていることで、溜まった湿気がバックシートを通って吸収性本体から抜け易く、さらにバックシートから外装体を通って厚さ方向(前後方向)に湿気を外に逃がすことができる。それにより、冷感効果を向上させる。
【0016】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記外装体は、胴回り部を備え、前記胴回り部は、前記吸収性本体の長手方向の両端よりも前記長手方向の外側に、前記左右方向に伸縮可能な複数の弾性部材を有し、前記前後方向に見て、前記胴回り部と前記吸収性本体の前記長手方向の両端部とが重なる重複部分の剛性と、前記吸収性本体の前記長手方向の両端よりも前記長手方向の外側の部分の剛性とを比較した場合に、前記重複部分の剛性の方が大きいことが望ましい。
【0017】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、胴回り部のみの部分(所謂、吸収性本体の長手方向の外側部分)の剛性の方が小さいため、胴回り部のみの部分は弾性部材の収縮により細かい皺が形成され易い。弾性部材の収縮により発生する凹凸(皺)の大きさが、「胴回り部と吸収性本体との重複部分」>「胴回り部のみ」の関係であることから、吸収性本体部分で大きな空気の流れを形成し、長手方向の両端よりも外側では小さい空気の流れを形成して、冷感を含む空気の流れを制御できる。また、上下方向の上側に向かって湿気を外に逃がす空気の流れを作ることができ、より冷感効果が向上する。
【0018】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記外装体は、前記左右方向に伸縮可能な複数の弾性部材を有する胴回り部を備え、前記前後方向に見て、前記吸収性本体の長手方向の両端部と、前記複数の弾性部材の少なくとも一部とが重なる部分を有することが望ましい。
【0019】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収性本体の長手方向の両端部と弾性部材とが重なることで、吸収性本体の長手方向の両端部に凹凸がより形成され易くなり、空気が抜け易くなる。これにより、上下方向の上側へ湿気をより逃がし易くなり、冷感効果が向上する。
【0020】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、トップシートと、吸収性コアと、バックシートとを備え、前記吸収性本体の長手方向の両端部は、少なくとも前記トップシート側から前記バックシートに向かってエンボスすることにより形成されたエンボス部を前記左右方向に間欠的に有していることが望ましい。
【0021】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、エンボスを施すことにより、吸収性本体の長手方向の両端部はより凹凸がつきやすくなり、空気が抜け易くなる。
【0022】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、着用者の股下に対向する股下部の前記左右方向の中央部において、前記吸収性本体の長手方向に伸縮可能な中央弾性部材を有し、前記前後方向に見て、前記中央弾性部材の少なくとも一部が前記冷感剤と重なっていることが望ましい。
【0023】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、中央弾性部材が長手方向に収縮することにより、膣口と冷感剤が塗布された吸収性本体との距離が近づくため、吸収性本体と身体とが密着し、冷感剤が身体と触れ易くなる。
【0024】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記パンツ型吸収性物品を前記上下方向に伸長させた状態において、前記パンツ型吸収性物品の前記前後方向の前側における前記中央弾性部材の前記上下方向の長さが、前記パンツ型吸収性物品の前記前後方向の後側における前記中央弾性部材の前記上下方向の長さよりも短いことが望ましい。
【0025】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、前側(腹側)は中央弾性部材を短くすることで縮まずにフラットに保て、お腹にフィットさせるようにし、後側(背側)は長くすることで臀部の溝に合わせて吸収性本体を密着させる。密着性が向上することで、冷感剤の効果を感じ易くなる。
【0026】
また、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、液吸収性の吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌側面を覆うように設けられた外装体と、を有するパンツ型吸収性物品であって、揮発性を有する冷感剤が前記吸収性本体に塗布されており、前記吸収性本体の前記左右方向の両側部に設けられ、前記吸収性本体の長手方向に伸縮する弾性部材を備えた防漏壁を有し、前記吸収性本体の前記長手方向の両端部において、前記左右方向の両側部では、前記防漏壁が前記吸収性本体に肌側から重なっており、前記左右方向の中央部では、前記防漏壁と前記吸収性本体とが重なっていないことを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
【0027】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、鼠径部において、太ももに防漏壁が当たることで左右方向から空気を抜けにくくさせ、長手方向に移動する空気の流れを作る。吸収性本体の長手方向の端部は、左右方向の中央部に吸収性本体と防漏壁との重なりがないことから、長手方向に抜けようとする空気は、当該中央部から抜け易くなる。臀部や下腹部の部分に空気の流れが起きることで、着用者は冷感効果を感じ易くなる。
【0028】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記冷感剤が、前記吸収性本体の少なくとも長手方向の中央部に塗布されていることが望ましい。
【0029】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、冷感を与えたい部位と対向する長手中央部に冷感剤を塗布することで、着用者は、装着直後から冷感効果を得ることができる。
【0030】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記パンツ型吸収性物品を前記上下方向に伸長させた状態において、前記吸収性本体の前記前後方向の前側における前記上下方向の寸法が、前記吸収性本体の前記前後方向の後側における前記上下方向の寸法よりも小さいことが望ましい。
【0031】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、背側の吸収性本体の長さの方が長いことで、寝姿勢のときに肌と吸収性本体とが密着する部分が多くなり、揮発した冷感剤が逃げにくく、背中側の冷感効果を維持し易くなる。反対に、前側(腹側)が短いことで腹側から空気を逃がして通気性を確保する。
【0032】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、前記吸収性本体の長手方向に沿って延在する一対の圧搾部を有することが望ましい。
【0033】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、一対の圧搾部により、吸収性本体に左右方向から力が加わった時に一対の圧搾部間にある吸収性本体を膣口に押し当てることができ、冷感効果を増幅させることができる。
【0034】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記一対の圧搾部は、前記吸収性本体の前記長手方向に間欠的に配置されていることが望ましい。
【0035】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、圧搾部が長手方向に連続的に配置されていると、着用者の動きに追従しにくくなる虞があるが、間欠的に配置されることで部分的に変形し易くなり、身体の動きに合わせて吸収性本体が追従し易くなる。それにより、吸収性本体を押し当てた状態を維持しやすくなり、冷感効果を保持できる。
【0036】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、前記吸収性本体の長手方向に沿った液吸収性の吸収性コアを有し、前記吸収性コアの前記長手方向の両端部の厚みは、前記吸収性コアの前記長手方向の中央領域の厚みよりも薄いことが望ましい。
【0037】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、コアの長手方向両端部の厚みが薄いことで、その部分に身体との隙間が出来やすくなり、長手方向の外側に空気が流れ易くなる。また、厚みが薄い部分は、前は下腹部、後ろは臀部に当たり、そのような部分に空気の流れができることで、冷感効果を感じ易くなる。
【0038】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性コアの前記中央領域には、周囲よりも厚みが厚い中高部が設けられていることが望ましい。
【0039】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、膣口と当たる部分における吸収性コアの厚みが厚いため、冷感が周囲よりも漏れにくくなり、空気の流れを作り易くなる。
【0040】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記前後方向における後側は、着用者の背側に対応し、前記吸収性コアは、前記中高部よりも前記後側に、周囲よりも厚みが厚い後方中高部を有していることが望ましい。
【0041】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、後方中高部は、着用者の臀部に対向する部分であり、後方中高部によって、吸収性本体と臀部とのフィット性を向上できる。よって、漏れを防止でき、また後方中高部の厚さによって冷感が周囲よりも漏れにくくなり、臀部にも冷感効果を与えることができる。
【0042】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、前記吸収性本体の長手方向に沿った液吸収性の吸収性コアを有し、前記吸収性コアは、前記吸収性コアの坪量が周囲よりも低い複数の低坪量部、或いは、前記吸収性コアの坪量がゼロである複数のスリット部を有し、前記複数の低坪量部或いは前記複数のスリット部は、前記吸収性コアの長手方向及び前記左右方向に沿って延在し、前記吸収性コアを複数の区画に分けることが望ましい。
【0043】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収性コアを複数の区画に分けることで、着用者の動きに対して必要な区画だけに沿ってコアを変形することが可能となり、身体の動きに追従し易くなる。そのような複数の区画が低坪量部或いはスリット部によって形成されることで、変形時に空気の流れが生じ、冷感作用が発現し易くなる。
【0044】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体の長手方向の端部において、前記外装体と貼り合わされている前記左右方向の貼り合わせ長さは、前記吸収性本体の前記長手方向の中央部において、前記外装体と貼り合わされている前記左右方向の貼り合わせ長さよりも長いことが望ましい。
【0045】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収性本体の長手方向の中央部は股下部であり、股下部で吸収性本体が外装体に貼り合わされていない部分は、吸収性本体が肌側に立ち上がり易くなる。吸収性本体の立ち上がりによって左右方向からの空気の抜けを低減し、臀部や腹側へ空気が抜けやすくなる。
【0046】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、液吸収性の吸収性コアを有し、前記吸収性コアは、長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記左右方向の幅が狭い括れ部を有することが望ましい。
【0047】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収性コアの左右方向の幅が狭い部分(括れ部)は股間部に対応し、防漏壁が立ち上がり易くなる。左右方向への空気の抜けを低減させ、臀部や腹部へ空気が抜けやすくなる。
【0048】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体がポリマーシートからなることが望ましい。
【0049】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、ポリマーシートは高吸収性であり、膣口や臀部の湿気を取りつつ、冷感剤が膣口等に作用し、冷感効果を高めることができる。
【0050】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記ポリマーシートには、前記ポリマーシートの長手方向に延在する、ポリマーが存在しない一対のポリマー非存在域が設けられていることが望ましい。
【0051】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、ポリマーがある領域とない領域とで剛性差ができるため、ポリマー非存在域が身体の動きに追従して変形することで、フィット性が向上する。
【0052】
かかるパンツ型吸収性物品であって、一対の脚回り開口部を有し、前記一対の脚回り開口部の前記上下方向の上半分において、前記一対の脚回り開口部それぞれに沿った湾曲弾性部材を有することが望ましい。
【0053】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、脚回り開口部に沿って弾性部材が配置されているため、身体の動きに追従して脚回りのフィット性が向上する。湾曲弾性部材が、インナーから空気が抜けるのを低減し、冷感効果を維持できる。
【0054】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記冷感剤が塗布されている塗布領域の非肌側には、前記冷感剤を備えていることを想起させるための想起表示が、外部から視認可能に設けられていることが望ましい。
【0055】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、装着時に、着用者は冷感効果が得られる位置を視覚的に確認できる。
【0056】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体には、改質剤が塗布されており、前記前後方向に見て、前記改質剤と前記冷感剤とが重なる重複領域と、前記改質剤と前記冷感剤とが重ならない非重複領域とを有することが望ましい。
【0057】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、改質剤により経血を吸収体に引き込み易くなり、また、揮発性の冷感剤に対して膜を作る役割を果たすため、重複領域においては、冷感剤の作用をコントロールできる。また、膜を作ることで、非重複領域から発現してきた冷感作用のある空気や、吸収性本体と身体との間の湿気が吸収性本体側に入り込みにくくなり、空気(湿気)が身体と吸収性本体との間を通って抜けやすくなる。
【0058】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記外装体を構成するシート材、或いは、前記吸収性本体のうちの着用者の肌に接触する肌側シートは、コットン繊維を有するシートであることが望ましい。
【0059】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、湿気を含みやすいコットン繊維があることにより、揮発した冷感剤を含む空気の逃げ道をコントロールし、コットン繊維を有するシート部分で冷感効果の発現を高める。
【0060】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体には、前記左右方向の中央部、且つ、前記パンツ型吸収性物品の前記前後方向の少なくとも後側において、前記吸収性本体の長手方向に延び、且つ、非肌面側から圧搾された中央圧搾部が設けられていることが望ましい。
【0061】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、中央圧搾部の部分が肌側に突出することで臀部に吸収性本体を当てることができ、身体と吸収性本体との距離が狭まることから、吸収性本体に塗布されている冷感剤の効果を向上させることができる。
【0062】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、前記吸収性本体の長手方向に沿った液吸収性の吸収性コアを有し、少なくとも着用者の股下に対向する股下部において、前記吸収性コアの前記左右方向の両側部には、周囲よりも厚みが厚い部分が設けられていることが望ましい。
【0063】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収性コアが幅方向(左右方向)の両側部に凸部(厚みが厚い部分)を有することにより、冷感剤が幅方向から逃げてしまうことを低減でき、下腹部及び臀部に冷感剤を移行させ易くし、空気の流れをコントールする。
【0064】
===第1実施形態===
第1実施形態に係る冷感剤を備えた吸収性物品の一例として、後述する冷感剤26を備えたパンツ型吸収性物品1について説明する。なお、以下の説明では生理用の吸収性物品1について説明するが、本実施形態の吸収性物品1には、例えば、大人用、乳児用のおむつ等も含まれており、生理用に用途が限定されるものではない。
【0065】
<吸収性物品1の基本構成>
【0066】
図1は、第1実施形態に係るパンツ型吸収性物品1の概略斜視図であり、図2は、第1実施形態に係る、展開状態におけるパンツ型吸収性物品1の平面図である。
【0067】
図1に示すパンツ型状態において、吸収性物品1は、互いに交差する「上下方向」と「左右方向」と「前後方向」を有している。そして、図1における紙面の縦方向を上下方向として紙面の上側(下側)を上下方向の「上」(「下」)とし、左右方向においては、紙面の左側(右側)を左右方向の左(右)とする。また、前後方向においては、着用する際に着用者の腹側となる方を「前側」とし、着用者の背側となる方を「後側」とする。
【0068】
図2に示す吸収性物品1の展開状態(パンツ型吸収性物品1がパンツ型に成形される前の平面上に広がった状態)において、吸収性物品1は、互いに交差する「長手方向」と「左右方向(幅方向)」と「厚さ方向」とを有している。そして、図2における紙面の縦方向を長手方向として、紙面の上側(下側)を長手方向の「前(腹側)」(「後(背側)」)とし、長手方向と紙面上で直交する方向を幅方向として紙面の左側(右側)を幅方向の左(右)とする。また、長手方向及び幅方向(左右方向)と直交する方向(紙面を貫通する方向)を厚さ方向とし、厚さ方向においては、着用者の肌と当接する側を「肌側」、その逆側を「非肌側」とする。
【0069】
なお、本実施の形態に係る平面図(例えば、図2)は、対象物の伸長状態を示している。ここで「伸長状態」とは、吸収性物品1が備える各弾性体(例えば、後述する股下糸ゴム30、伸縮性シート12(伸縮フィルムに相当)等)を伸長させることにより、平面図に示す部材を皺なく伸長させた状態である。例えば、図2においては、吸収性物品1を構成する後述する外装体10と吸収性本体20の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことをいう。そして、非伸長状態であって、各弾性体が自然に収縮して平面図に示す部材等に皺等が生じている状態のことを「自然状態」という。
【0070】
第1実施形態に係る吸収性物品1は、外装体10と、液吸収性の吸収性本体20とを備えており、以下では、先ず、吸収性物品1をパンツ型に生成する過程について説明する。そして、吸収性本体20については、後に項を設けて説明する。
【0071】
外装体10は、図2に示すように、展開状態において、平面視で略砂時計形状をしている。つまり、長手方向の中央部が幅方向の内側へ窪んでおり、この窪んだ部分は、パンツ型に成形されると、図1に示す一対の脚回り開口部1bを形成する。
【0072】
また、外装体10は、長手方向において吸収性物品1の中心に位置する中心線CLより前側にあって着用者の腹側に当てられる前側外装体10f(腹側の胴回り部に相当)と後側にあって着用者の背側に当てられる後側外装体10b(背側の胴回り部に相当)を有している。そして、前側外装体10f(後側外装体10b)は、前側(後側)の端部において幅方向に沿った胴回り前端部10ff(胴回り後端部10bf)と、左右の両端部に設けられた長手方向に沿った前側接合部10fe(後側接合部10be)(共に図2の平面図の右下がり斜線部分)を有している。
【0073】
また、第1実施形態に係る外装体10は、外装体10の形状をした左右方向にほぼ伸縮性の無い非伸縮性シート14と、非伸縮性シート14の肌側面の一部に積層され、左右方向に伸縮性を有する伸縮性シート12(前側伸縮性シート12f及び後側伸縮性シート12b)と、を備えている。また、非伸縮性シート14の一部は、長手方向(上下方向)において吸収性本体20の外側端20etよりも外側に延出され、長手方向の所定位置10etにおいて長手方向の内側かつ厚さ方向の肌側に折り返され、非伸縮性シート14及び吸収性本体20の肌側に積層された状態で接合されている。以下、非伸縮性シート14が折り返されている部分を折り返し部分15とも呼び、非伸縮性シート14が折り返された所定位置10etを外装体10の上端10etとも呼ぶ。
【0074】
なお、折り返し部分15が、非伸縮性シート14とは異なるシート部材でも良い。すなわち、折り返し部分15は、非伸縮性シート14を上端10etにて折り返すことによって形成されるのではなく、非伸縮性シート14とは別体の不織布等のシート部材によって形成されていても良い。
【0075】
また、吸収性物品1は、伸縮性シート12によって左右方向に伸縮性を有しているので、自然状態において、折り返し部分15及び非伸縮性シート14の表面には、上下方向に沿った皺が形成される。
【0076】
吸収性物品1をパンツ型に生成する過程においては、先ず、展開状態の外装体10が厚さ方向において吸収性本体20の非肌側面を覆うように重ねて配置され、展開状態の吸収性物品1を生成する。つまり、吸収性本体20の非肌側の面を接合面とし、当該接合面を展開状態の外装体10の所定の位置に載置して接合する。
【0077】
そして、展開状態の吸収性本体20と外装体10が、長手方向に折り曲げられる。すなわち、図2に示す長手方向の中心線CLを折り目として、前側外装体10fの肌側と、後側外装体10bの肌側と、が向かい合わせになるように、吸収性本体20と外装体10が、長手方向に折り曲げられる。
【0078】
そうしたら、外装体10の前側接合部10feと後側接合部10beが近づくので、左右の前側接合部10feと後側接合部10beをそれぞれ接合する。
【0079】
つまり、外装体10の左右両端部が長手方向に沿って接合されるので、外装体10の胴回り前端部10ffと胴回り後端部10bfが外装体10の上側に胴回り開口部1aを形成する。
【0080】
パンツ型吸収性物品1は、外装体10が着用者の胴回りに当接して、主に外装体10の左右方向への伸縮(身体への締め付け)により、着用時に落下しないような構成である。したがって、外装体10に接合された吸収性本体20は、着用者の股下部(吸収性本体20が着用時に着用者の肌に当接する部分であり、下腹部から股間部を介して臀部(おしり)の仙骨部に至る部分)に当接した状態で外装体10により上下方向に支持される。
【0081】
すなわち、吸収性物品1は、腹部、背中部、及び股下部を備え、胴回り開口部1a、及び一対の脚回り開口部1bが形成されたパンツ型であり、外装体10の有する伸縮性シート12等により、着用時に落下しないように支持されている。
【0082】
なお、「当接」とは、当たり接していることを意味し、部材の少なくとも一部が着用者に当接していれば、当該部材は着用者に当接している状態となる。例えば、外装体10のうちの伸縮する部分が着用者と接して、伸縮しない部分が着用者と接していない状態は、外装体10が着用者に当接している状態である。
【0083】
また、前述した吸収性本体20と外装体10等を接合する接合方法としては、例えば、接着剤、ヒートシール、超音波シール、これらの組み合わせ等、公知の接合方法を例示できる。
【0084】
また、図2(及び後述する図4B)に示されるように、外装体10の非肌側面には、後処理テープ60が設けられている。後処理テープ60は、上下方向に長い略矩形状のテープ状の部材(テープ部材)であり、上下方向(長手方向)の一方側が外装体10に固定されており、上下方向(長手方向)の他方側に粘着部を有している。粘着部には粘着剤が塗布されており、吸収性物品1の使用前には、後処理テープ60の一部が、粘着部を内側にして折り畳まれており、粘着部が外部に露出しないようにして粘着面を保護している。
【0085】
使用後の吸収性物品1を廃棄する際には、吸収性本体20が内側になるように上下方向に丸めた吸収性物品1に対して、折り畳まれている後処理テープ60を伸ばしながら引っ張って粘着部を露出させ、該粘着部側を吸収性物品1に巻き回す。これにより、吸収性物品1を丸めた状態に保持することが可能となり、吸収性物品1の内部(吸収性本体20)に付着した排泄物等を外部に漏出させることなく吸収性物品1を廃棄することができる。
【0086】
<吸収性本体20について>
次に、吸収性本体20について図3及び図4を用いて説明する。図3は、吸収性本体20の平面図であり、図4Aは、図3のA-A線に沿った吸収性本体20の断面模式図であり、図4Bは、図3のB-B線に沿った、吸収性本体20と外装体10とを含む断面模式図である。図4Bでは、吸収性本体20と外装体10との接合状態を分かり易くするために、外装体10を含んだ断面図としている。
【0087】
吸収性本体20は、生理用の吸収性物品であり、例えば生理用ナプキンである。第1実施形態に係る吸収性本体20は、図3に示すように、展開かつ伸長状態における長手方向(すなわち吸収性本体20の長辺方向)が吸収性物品1の上下方向に沿った平面視略長方形状である。そして、図4Aに示すように、吸収性本体20は、長手方向(上下方向)に沿った吸収性コア22と、吸収性コア22よりも肌側に配置されたトップシート24と、吸収性コア22よりも非肌側に配置されたバックシート25と、を有している。また、吸収性本体20の所定の領域には、後述する冷感剤26が設けられている。
【0088】
吸収性コア22は、液体吸収性素材が所定の形状に成形されたものであり、本実施の形態においては、平面視で略矩形状(図2)、断面視で長手方向の中央部が凸部形状(図4Bに示す、後述する中高部22na)に成形されている。液体吸収性素材としては、パルプ繊維等の液体吸収性繊維に高吸収性ポリマー(所謂SAP)等が含有されたものを例示できる。なお、吸収性コア22は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシート部材(コアラップシート22a)によって、外周面が覆われていても良い。
【0089】
トップシート24は、着用時において着用者の肌に接触し得る液透過性のシート部材であり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等により形成される。また、トップシート24は2層以上の構成であっても良い。例えば、トップシート24の非肌側にトップシート24とほぼ同等の機能及び構成を有するシート部材であるセカンドシート(図4Aでは不図示)を有していても良い。
【0090】
バックシート25は、吸収性コア22に吸収された経血等の排泄液が外部に漏れ出すことを抑制するための液不透過性且つ透湿性のシート25aと、当該シート25aの非肌側に配置された液透過性のシート25bと、を備えた二層構造で形成されている。液不透過性且つ透湿性のシート25aとしては、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルム等が用いられ、液透過性シート25bとしては、例えば柔軟性を有する不織布等が用いられる。なお、トップシート24及びバックシート25の大きさは、いずれも吸収性コア22の全体を覆う大きさである。
【0091】
後述する冷感剤26が設けられている吸収性本体20は、湿気を帯びた空気が溜まりやすい部分であるが、バックシート25が透湿性を有するシート25aを備え、且つ、当該バックシート25が吸収性コア22の非肌側に設けられていることで、溜まった湿気がバックシート25を通って吸収性本体20から抜け、さらに外装体10を通って厚さ方向(前後方向)に湿気を外に逃がし易くなる。それにより、冷感剤26による冷感効果を向上させることができる。
【0092】
また、バックシート25のうち液透過性シート25bは、幅方向において吸収性本体20の両端20esよりも外側まで延出した延出部25cを有している。延出部25cは、吸収性本体20の幅方向における両端20esにおいて、支点50Bを折れ曲がり起点として厚さ方向の肌側に折り曲げられ、トップシート24よりも肌側に位置する頂点50Sにて非肌側に折り返されることにより、立体ギャザー50を形成している(図4A参照)。立体ギャザー50の頂点50Sには吸収性本体20の長手方向に沿った糸ゴム等の立体ギャザー弾性部材51が長手方向に伸長した状態で配置されており、吸収性物品1の着用時には、該立体ギャザー弾性部材51が発現する伸縮性によって頂点50Sが着用者の肌側に起立する。これにより、立体ギャザー50は排泄液等の横漏れを抑制するための防漏壁として機能する。
【0093】
また、厚さ方向において液不透過性シート25aと液透過性シート25bとの間には、長手方向に伸縮可能な股下糸ゴム30(以下、中央弾性部材30ともいう)が設けられている。股下糸ゴム30は、図3及び図4Aに示すように、吸収性本体20の左右方向(幅方向)の中央部において、下腹部が当接する前側から股間部を介して臀部が当接する後側に至るまで設けられている。
【0094】
また、吸収性本体20(吸収性コア22)の肌側には、吸収性本体20の長手方向に沿って延在する複数の圧搾部40が形成されている。圧搾部40は、着用者が吸収性物品1を着用した際に、吸収性本体20が着用者の身体に沿って変形するように(変形の折り目となるように)設けられており、図4Aに示すように、吸収性本体20(吸収性コア22)の肌側において、肌側から非肌側へ窪んだ凹部形状をしている。圧搾部40の凹部形状は、例えば、吸収性本体20(吸収性コア22)を肌側から圧搾することにより形成されており、吸収性コア22の密度がその周囲の密度よりも高い高密度部であって圧搾溝となっている。
【0095】
吸収性本体20のうち、厚さ方向におけるトップシート24と吸収性コア22との間には、揮発性を有する冷感剤26が設けられており、第1実施形態においては、トップシート24の非肌側面に塗布されている。
【0096】
また、図3に示すように、冷感剤26は、吸収性本体20の幅方向(短手方向)に所定の間隔を空けて、吸収性本体20の長手方向の前端から後端まで連続した長手方向に沿った複数の冷感剤塗布領域26p(ハッチングで示す部分)に塗布される。したがって、吸収性本体20の幅方向において隣接する冷感剤塗布領域26p同士の間には、長手方向に沿った冷感剤26が塗布されていない非塗布領域26nが設けられる。
【0097】
上述の冷感剤26は、揮発性の物質であり、例えば、皮膚の神経にある受容体活性化チャネル(TRPM8)に作用するものが好ましい。このような冷感剤として、例えば、メントール(例として、l-メントール)及びその誘導体(例えば、乳酸メンチル)、サリチル酸メチル、カンファー、キュウリエキス、植物(例えば、ミント、ユーカリ、ナツメグ)由来の精油等が挙げられる。また、冷感剤は、気化熱により周囲の温度を下げるものであってもよい。このような冷感剤として、例えば、アルコール、例えば、メタノール及びエタノールが挙げられる。
【0098】
尚、上述の冷感剤26と同様の冷感成分を内包する水崩壊性のマイクロカプセル等を吸収性物品に塗布することで冷感作用を発現させる製品もあるが、その場合、尿や経血等の水分がマイクロカプセルを崩壊させる程度に直接マイクロカプセルと接触しない場合に冷感作用が発現しないため、本発明においては、冷感剤を直接、吸収性物品1を構成する資材に塗布している。
【0099】
尚、冷感剤26の冷感剤塗布領域26Pは、上述の位置に限らず、冷感剤26は、吸収性本体20の少なくとも長手方向の中央部に塗布されていればよい。長手方向の中央部は、膣口等の排泄口と対向する位置であり、冷感を与えたい部位と対向する長手方向の中央部に冷感剤26を塗布しておくことで、着用者は、装着直後から冷感効果を得ることができる。
【0100】
<接合領域Q>
図5は、冷感剤26と、吸収性本体20及び外装体10とを接合する接合領域Qとの配置について説明する平面図である。先ず、図3の吸収性本体20の平面図に示すように、吸収性本体20と外装体10とを接合するときには、ホットメルト接着剤等の接着剤をΩ形状に塗布した接合領域Q(Qa)を、吸収性本体20の長手方向に沿って、左右方向(幅方向)に所定の間隔Qnを空けて間欠的に設けている。図5では、そのように左右方向に間欠的に接合領域Qaが設けられている吸収性本体20を外装体10に配置した状態を示している。ここで、吸収性本体20の長手方向の両端部20eにおける接合領域Qaについて詳説すると、図4B及び図5に示すように、両端部20eは吸収性コア22が存在しない領域であり、厚さ方向(着用時の前後方向)に見て、吸収性本体20を構成するバックシート25(液透過性シート25b)と外装体10を構成する伸縮性シート12との間に接合領域Qaが配置されている。バックシート25(液透過性シート25b)と伸縮性シート12とは、両端部20eにおいて厚さ方向に隣接しており、そのように厚さ方向に隣接しているバックシート25と伸縮性シート12同士を接合する接合領域Qaが左右方向に間欠的に設けられている(図3及び図5参照)。尚、接着剤の塗布パターンは、上述のΩ形状に限らす、スパイラル形状、ストライプ形状等の任意の塗布パターンを適用できる。
【0101】
吸収性本体20の長手方向の両端部20eには、冷感剤26が塗布されていることで冷感効果が得られる部分であり、そのような両端部20eにおいて外装体10と接合されている領域(接合領域Qa)と接合されていない領域(Qn)とを設けることで、左右方向に剛性差が生じる。すなわち、接合領域Qは、接合されていない領域と比較して剛性が大きくなり、接合されていない領域(Qn)は、それよりも剛性が小さい領域となる。そして、前側外装体10f(後側外装体10b)が自然状態において左右方向に収縮することで、当該剛性差によって凹凸の皺が発生し、該凹凸の皺の間から空気が流れ易くなる。吸収性本体20は、経血等を吸収することから湿気を帯びた空気が溜まりやすく、そのような湿った空気が過度に溜まると冷感効果を阻害し易くなる。しかし、膣口付近は吸収性本体20を密着させることにより冷感効果を与えつつ、両端部20eに形成させる凹凸の皺の間からそのような湿気を帯びた空気を逃すことで、冷感効果を向上させることができる。
【0102】
また、吸収性本体20の長手方向の両端部20eに接合領域Qa(Q)を左右方向に間欠的に設けることは、上述のバックシート25(液透過性シート25b)と伸縮性シート12とを接合する場合だけに限らず、別のシート部材同士によっても可能である。すなわち、吸収性本体20の長手方向の両端部20eは、厚さ方向(着用時の前後方向)に見て、吸収性本体20を構成する少なくとも一つの本体側端部シート部と、外装体10を構成する少なくとも一つの外装体側シート部とを有している。本体側端部シート部は、前述のバックシート25(液透過性のシート25b)の他に、液不透過性且つ透湿性のシート25a及びトップシート24のそれぞれのうち、厚さ方向に見て両端部20eと重なる部分が相当する。外装体側シート部は、前述の伸縮性シート12の他に、非伸縮性シート14のうちの、厚さ方向に見て両端部20eと重なる部分が相当する。
【0103】
前側外装体10f(後側外装体10b)を左右方向に伸張させた状態において、そのような本体側端部シート部及び外装体側シート部のうち、両端部20eにて厚さ方向に隣接しているシート部同士を接合する接合領域Qが、左右方向に間欠的に設けられることで、同様の効果を奏することができる。図6は、吸収性本体20のうちのトップシート24、吸収性コア22、及び、バックシート25(シート25a)を接合する接合領域Qbを説明する図である。尚、図6の断面図(右図)は、図6の平面図(左図)のB-B線に沿った断面図である。吸収性本体20を外装体10に接合する前に、吸収性コア22をトップシート24とバックシート25との間に挟んだ状態で、吸収性本体20が形成される。図6では、トップシート24の非肌側面にホットメルト接着剤等の接着剤をΩ形状に塗布することで接合領域Q(Qb)が設けられている。また、該接合領域Q(Qb)は、吸収性本体20の長手方向に沿って、左右方向(幅方向)に所定の間隔Qnを空けて間欠的に設けられている。図6の断面図に示すように、該接合領域Qbによって、厚さ方向において隣接するトップシート24と吸収性コア22とが接合されている。また、吸収性本体20の長手方向の両端部20eは、吸収性コア22が存在しない領域であり、本実施形態では、当該領域において、厚さ方向に隣接しているトップシート24とバックシート25(シート25a)とが接合領域Qbによって接合されている。該両端部20eにおいても、接合領域Qbは左右方向に間欠的に設けられていることから、該両端部20eには左右方向に剛性差が生じる。すなわち、接合領域Qaと同様に、接合領域Qbは、接合されていない領域(Qn)と比較して剛性が大きくなり、接合されていない領域(Qn)は、それよりも剛性が小さい領域となる。このように接合された吸収性本体20が、パンツ型吸収性物品1に成形された際には、伸縮性を有する前側外装体10f(後側外装体10b)が自然状態において左右方向に収縮し、当該剛性差によって吸収性本体20の両端部20eに凹凸の皺が発生し易くなる。該凹凸の皺から湿気を帯びた空気を逃がし易くし、吸収性本体20に塗布されている冷感剤26の効果を向上させる。
【0104】
また、本発明の効果を確認すべく、上述の接合領域Qが、本実施形態のように間欠的に設けられた場合と、連続的に設けられた場合との涼感の評価を行い、評価結果を下記表1に示した。実施例1は、Ω状の塗布パターンで接着剤を塗布することにより、トップシート24とバックシート25との接合領域Q(Qb)を幅方向(左右方向)に間欠的に設けた吸収性物品1である。また、比較例1は、コーターを用いて接着剤を塗布することで、トップシート24とバックシート25との接合領域Qを幅方向(左右方向)に連続的に設けた吸収性物品1である。また、実施例2は、Ω状の塗布パターンで接着剤を塗布することにより、外装体10と吸収性本体20との接合領域Q(Qa)を幅方向(左右方向)に間欠的に設けた吸収性物品1である。比較例2は、コーターを用いて接着剤を塗布することで、外装体10と吸収性本体20との接合領域Qを幅方向(左右方向)に連続的に設けた吸収性物品1である。尚、全ての吸収性物品1において、冷感剤は、吸収性本体20のトップシート24の非肌側面に均一に塗布されている。各吸収性物品1を10名の被験者に使用してもらい、装着から一時間後における、下腹部から膣口、及び、膣口から臀部までの涼感の評価を下記5段階のスコア評価で評価し、その平均スコアを算出した。
5:非常に冷たい
4:かなり冷たい
3:適度に冷たい
2:やや冷たい
1:感じない
【0105】
【表1】
【0106】
涼感評価において、実施例1の平均スコアは3.8であり、比較例1の平均スコア2.9よりも良好な結果が得られた。これにより、トップシート24とバックシート25との接合領域Q(Qb)を幅方向に連続的に設けた方が、使用者はより冷たさを感じられるといえる。また、実施例2の平均スコアは3.8であり、比較例2の平均スコア3.2よりも良好な結果が得られた。これにより、外装体10と吸収性本体20との接合領域Q(Qa)を幅方向に間欠的に設けた方が、使用者はより冷たさを感じられるといえる。
【0107】
以上により、吸収性物品1の吸収性本体20の長手方向の両端部20eにおいて、厚さ方向に隣接しているシート同士を接合する接合領域を左右方向に間欠的に設けることで、冷感剤26による冷感効果を向上させることができる。
【0108】
また、図3に示すように、吸収性本体20の長手方向の両端部20eは、少なくともトップシート24側からバックシート25に向かってエンボス加工を施すことによって形成されたエンボス部31を左右方向に間欠的に有している。エンボス加工を施すことにより、吸収性本体20の長手方向の両端部20eはより凹凸がつきやすくなり、当該凹凸から空気が抜け易くなる。揮発した冷感剤が該凹凸を抜けて上下方向に移動し、着用者は冷感効果をより感じ易くなる。
【0109】
また、第1実施形態に係る吸収性物品1は、図3及び図4A等に示すように、着用者の股下に対向する股下部の左右方向の中央部において、吸収性本体20が長手方向に伸縮可能な中央弾性部材30(股下糸ゴム30)を有しており、厚さ方向に見て、中央弾性部材30が冷感剤塗布領域26pと重なっている。各中央弾性部材30が長手方向に収縮することにより、膣口と冷感剤26が塗布された吸収性本体20との距離が近づくため、吸収性本体20と身体とが密着し、冷感剤塗布領域26pが身体と触れ易くなる。それにより、着用者は、冷感作用を感じ易くなる。尚、第1実施形態では、中央弾性部材30の全てが冷感剤塗布領域26pと重なっているが、これに限らず、中央弾性部材の少なくとも一部が重なっていればよい。
【0110】
図2に戻り、長手方向において吸収性物品1の中心に位置する中心線CLを基準に見て、吸収性物品1の長手方向の前側(所謂、中心線CLで二つ折りした際の前後方向の前側)における中央弾性部材30の長手方向(上下方向)の長さL1は、吸収性物品1の長手方向の後側(所謂、中心線CLで二つ折りした際の前後方向の後側)における中央弾性部材30の長手方向(上下方向)の長さL2よりも短くなっている(L1<L2)。前側である腹側は、中央弾性部材30を短くすることで必要以上に長手方向に収縮せずに平面に保ち易くなり、それにより着用者の腹部にフィットさせるようにする。一方で、後側である背側は中央弾性部材30を長くすることで臀部の溝に合わせて吸収性本体20をより密着させることができる。密着性が向上することで、着用者は冷感効果を感じ易くなる。
【0111】
また、図3及び図4Aに示すように、第1実施形態に係る吸収性物品1は、吸収性本体20の左右方向の両側部に立体ギャザー(防漏壁)50が設けられている。そして、吸収性本体20の長手方向の両端部20eにおいて、左右方向の両側部では、当該立体ギャザー50が吸収性本体20に肌側から重なっており、左右方向の中央部では、立体ギャザー50と吸収性本体20とは重なっていない。着用者の鼠径部においては、太ももに立体ギャザー50が当たることで左右方向から空気を抜けにくくさせ、長手方向に移動する空気の流れを作る。吸収性本体20の長手方向の端部20eでは、左右方向の中央部に吸収性本体20と立体ギャザー50との重なりがないことから、長手方向に抜けようとする空気は、端部20eの左右方向の中央部から抜け易くなる。当該中央部から、前側であれば着用者の下腹部、後側であれば着用者の臀部に空気の流れが起きることで、揮発した冷感剤を含む空気が下腹部や臀部まで到達し、着用者は冷感効果を感じ易くなる。
【0112】
また、第1実施形態に係る吸収性物品1は、図2に示すように、吸収性物品1の長手方向の中央に位置する中心線CLを基準に見て、吸収性本体20の長手方向の前側(着用時の前後方向の前側)における長手方向(上下方向)の寸法L3が、吸収性本体20の長手方向の後側(着用時の前後方向の後側)における長手方向(上下方向)の寸法L4よりも小さく(短く)なっている(L3<L4)。背側の吸収性本体20の寸法(L4)の方が長いことで、着用者が寝姿勢のときに、肌と吸収性本体20とが密着する部分が多くなり、揮発した冷感剤が逃げにくく、背中側の冷感効果を維持し易くなる。反対に、前側(腹側)の吸収性本体20の寸法(L3)が短いことで、腹側から空気を逃がして通気性を確保する。
【0113】
同様に、吸収性本体20の吸収性コア22についても、吸収性物品1の長手方向の中央に位置する中心線CLを基準に見て、吸収性コア22の長手方向の前側における長手方向(上下方向)の寸法L5が、吸収性コア22の長手方向の後側における長手方向(上下方向)の寸法L6よりも小さくなっている(L5<L6)。それにより、着用者が寝姿勢のときに、肌と吸収性コア22とが密着する部分が多くなり、揮発した冷感剤が逃げにくく、背中側の冷感効果を維持し易くなる。反対に、前側(腹側)の吸収性コア22の寸法(L3)が短いことで、腹側から空気を逃がし易くなり、通気性を確保する。
【0114】
また、第1実施形態に係る吸収性本体20には、上述のように、少なくとも一対の圧搾部40が設けられており、該少なくとも一対の圧搾部40により、吸収性本体20は変形し易くなる。具体的には、吸収性本体20に左右方向から力が加わった時に、一対の圧搾部40間にある吸収性本体20が身体側に折り曲がり易くなり、膣口に押し当てることができる。それにより、吸収性本体20が身体に密着し、吸収性本体20に設けられている冷感剤26の冷感効果を増幅させることができる。
【0115】
また、図3に示すように、一対の圧搾部40は、吸収性本体20の長手方向に間欠的に配置されている。仮に、圧搾部40が、長手方向に連続的に配置されている場合、吸収性本体20が変形し易くなるものの、着用者の足の動きには追従しにくくなる虞がある。しかし、圧搾部40を長手方向に間欠的に配置することで、吸収性本体20が部分的に変形し易くなり、着用者の足の動きに合わせて吸収性本体20が追従し易くなる。それにより、吸収性本体20を膣口に押し当てた状態を維持しやすくなり、冷感効果を保持できる。
【0116】
また、図6の断面図に示すように、吸収性コア22の長手方向の両端部22eの厚みは、長手方向の両端(前端、後端)に向かって厚みが薄くなっている。つまり、両端部22eの厚みは、両端部22eよりも長手方向の内側の厚み(例として、図6の断面図の厚みD1)よりも薄く、また、吸収性コア22の長手方向の中央領域にある中高部22naの厚み(D2)よりも薄くなっている。吸収性コア22の長手方向の両端部22eの厚みが薄いことで、その部分に身体との隙間が出来やすくなり、長手方向の外側に空気が流れ易くなる。また、両端部22eは、前側は着用者の下腹部、後側は臀部に対向しており、そのような部分に空気の流れができることで気化した冷感剤の成分を着用者が感じ易くなる。
【0117】
また、図4Bの断面図に示すように、吸収性コア22の長手方向の中央部である中央領域において、周囲よりも厚みが厚い中高部22naが設けられている。吸収性コア22の長手方向の中央領域は、膣口と対向する部分であり、当該領域における吸収性コア22の厚みが厚いことで、冷感作用が周囲よりも漏れにくくなる。中高部22naは、吸収性コア22の少なくとも左右方向の中央部に設けられていればよく、中高部22naと身体が密着し易いことから、吸収性本体20に溜まる空気は中高部22naよりも厚みが薄い部分(つまり、中高部22naよりも長手方向の外側部分、左右方向の外側部分)を通って流れることとなる。結果として中高部22naにより空気の流れを作り易くなる。尚、このような中高部22naを有する吸収性コアは、本実施形態のような単層構造に限らず、上層コアと、上層コアよりも厚さ方向の非肌側に配置された下層コアを有する2層構造であってもよい。
【0118】
図7は、第1実施形態に係る吸収性コア22の変形例を示す断面図である。図7の変形例に示すように、吸収性コア22は、長手方向において、中高部22naよりも後側(背側)に、周囲よりも厚みが厚い後方中高部22kaを有していてもよい。後方中高部22kaは、着用者の臀部に対向する部分であり、後方中高部22kaによって、吸収性本体20と臀部とのフィット性を向上できる。それにより、経血が漏れるのを防止できるだけでなく、後方中高部22kaの厚みによって冷感効果が周囲よりも逃げにくくなり、臀部の冷感効果を維持できる。
【0119】
図8は、第1実施形態に係る吸収性コア22の別の変形例を示す図である。図8の変形例における吸収性本体20の吸収性コア22は、吸収性コア22の坪量が周囲よりも低い複数の低坪量部55を有している。尚、低坪量部55は、吸収性コア22の坪量がゼロであるスリット部55であってもよい。当該複数の低坪量部55(或いは複数のスリット部55)は、吸収性コア22の長手方向及び左右方向に沿って延在しており、吸収性コア22を複数の区画56に分けている。また、冷感剤26は、複数の低坪量部55(スリット部55)の少なくとも一部と厚さ方向に重なるように塗布されている。尚、図8の変形例では、低坪量部55を吸収性コア22の長手方向の前側には設けていないが、これに限らず、吸収性コア22の任意の位置に部分的に設けても、全面に設けてもよい。複数の吸収性コア22を複数の区画56に分けることで、着用者の動きに対して必要な区画(56)だけに沿って吸収性コア22を変形することが可能となり、身体の動きに追従し易くなる。そのような複数の区画56が低坪量部55或いはスリット部55によって形成されることで、変形時に空気の流れが生じ、冷感作用が発現し易くなる。
【0120】
また、冷感剤26が塗布された冷感剤塗布領域26p(ハッチングで示す部分)は、左右方向に延在している低坪量部55(若しくはスリット部55)を跨いで設けられていることが好ましい。これにより、着用者の身体の動きに追従した吸収性本体20の変形に併せて、冷感剤26が着用者の皮膚の受容体活性化チャネル(TRPM8)を連続的に刺激しやすくなり、冷感剤26の効果を向上させることができる。また、吸収性本体20には、中央弾性部材30が設けられており、剛性が低い低坪量部55(若しくはスリット部55)において中央弾性部材30が収縮することにより、会陰部や臀部に対するフィット性が向上し、冷感効果をさらに高めることができる。
【0121】
また、図5に戻り、第1実施形態においては、吸収性本体20と外装体10とを接合する際、 吸収性本体20の長手方向の端部20eと外装体10とが貼り合わされている左右方向の長さ(貼り合わせ長さW1とする)は、吸収性本体20の長手方向の中央部と外装体10とが貼り合わされている左右方向の長さ(貼り合わせ長さW2とする)よりも長くなっている(W1>W2)。吸収性本体20の長手方向の中央部は着用者の股下部に対向し、股下部で吸収性本体20が外装体10に貼り合わされていない部分が形成されることで、吸収性本体20のうち、そのように貼り合わされていない部分は肌側に立ち上がり易くなる。吸収性本体20の立ち上がりによって左右方向から空気が抜けることを低減し、長手方向への空気の流れを形成し、着用者の臀部や腹部へ空気が移動しやすくなる。
【0122】
また、第1実施形態の外装体10は、製品の長手方向の中央における左右方向の長さ(W3とする)が吸収性本体20の左右方向の長さよりも長くなっているが、製品の長手方向の中央部において、外装体10の長さW3を、吸収性本体20の左右方向の長さよりも短くしてもよい。そうすることによって、長手方向の中央における貼り合わせ長さW2を、端部20eにおける貼り合わせ長さW1よりも短くすることができ、上述と同様の効果を奏することが可能となる。
【0123】
また、第1実施形態にかかる吸収性本体20は、液体吸収性素材からなる吸収性コア22をコアラップシート22aで覆い、さらに、トップシート24とバックシート25によって吸収性コア22を覆っている構成であるが、これに限らず、吸収性本体20は、不織布等の二枚のシートにSAP(高吸水性ポリマー)が挟まれたポリマーシートから構成されてもよい。高吸収性であるポリマーシートによって、歩行や運動によって膣口付近や臀部に生じた湿気を積極的に取り、ムレを軽減することで、冷感剤26による冷感効果を高めることができる。
【0124】
また、上述のポリマーシートには、ポリマーシートの長手方向に延在する、SAPが存在しない一対のポリマー非存在域が設けられていてもよい。高吸水性ポリマーが存在する領域と存在しない領域とによってポリマーシートに剛性差ができるため、剛性が小さいポリマー非存在域が身体の動きに追従して変形することで、吸収性本体20のフィット性が向上する。
【0125】
===第2実施形態===
以下において、他の実施形態について説明する。第2実施形態は、主に、外装体10が伸縮性シート12を有さず、不織布等からなる二枚のシート(後述する肌側シート11と非肌側シート14)の間に弾性部材(後述する腹側弾性部材13a、背側弾性部材13b、腹側脚回り弾性部材16a、背側脚回り弾性部材16b等)を有する点で第1実施形態と異なる。なお、以下においては、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。また、第1実施形態と同様の部分は同じ番号を付しており、特に説明のない部分は、第1実施形態と同様である。
【0126】
図9は、第2実施形態に係るパンツ型吸収性物品1の概略斜視図である。図10は、第2実施形態に係る、展開かつ伸長状態のパンツ型吸収性物品1を肌側から見た概略平面図である。図11は、図10中のA-A概略断面図である。
【0127】
第2実施形態に係る吸収性物品1の外装体10は、図10に示すように、長手方向において腹側胴回り部10fと、背側胴回り部10bと、股下部10mとを有する。腹側胴回り部10fは、第1実施形態の前側外装体10fの一部であり、背側胴回り部10bは、第1実施形態の後側外装体10bの一部であり、腹側胴回り部10fと背側胴回り部10bとの間に股下部10mが設けられている。
【0128】
第2実施形態に係る外装体10は、図11に示すように、肌側シート11と、肌側シート11の非肌側に配置される非肌側シート14とを有する。第2実施形態において、肌側シート11及び非肌側シート14は、例えば、スパンボンド不織布、SMS不織布(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド不織布)などによって形成できる。また、長手方向における非肌側シート14の外側端(上端)は、肌側に折り返される。非肌側シート14の当該折り返し部分は、長手方向における肌側シート11の一端(外側端)を包み込んでいる。なお、長手方向における非肌側シート14の外側端(上端)は、折り返さない構成であってもよい。また、外装体10は、股下部10mにおいて、長手方向の中央部が左右方向の内方に凹んだ凹み部10cを有している。
【0129】
図10に示すように、外装体10の腹側胴回り部10f(背側胴回り部10b)には、左右方向に伸縮可能な糸ゴム等の複数の腹側弾性部材13a(背側弾性部材13b)が、上下方向に並んで設けられている。腹側及び背側弾性部材13a、13bは、それぞれ左右方向に伸長した状態で肌側シート11と非肌側シート14との間に挟まれて設けられており、当該腹側及び背側弾性部材13a、13bにより、腹側胴回り部10f及び背側胴回り部10bには、左右方向の伸縮性が付与される。
【0130】
また、外装体10には、複数の腹側脚回り弾性部材16a及び複数の背側脚回り弾性部材16bが肌側シート11と非肌側シート14との間に設けられている。腹側及び背側脚回り弾性部材16a、16bは、少なくとも一部が外装体10の凹み部10cに沿って湾曲して配置されている。具体的には、腹側脚回り弾性部材16a(背側脚回り弾性部材16b)は、腹側胴回り部10f(背側胴回り部10b)の左右方向の両端部から、腹側胴回り部10f(背側胴回り部10b)の長手方向の内側且つ左右方向の内側に向かって斜め下方に湾曲し、左右方向の中央部においても、長手方向の内側且つ左右方向の内側に向かって湾曲している。第2実施形態では、背側脚回り弾性部材16bは、左右方向の中央部において、外装体10の長手方向の中央CLを超えて、腹側に湾曲している部分を有する。腹側及び背側脚回り弾性部材16a及び16bは、例として、複数の糸ゴムや、伸縮性を有する帯状の弾性シート等であってもよく、伸長された状態で、ホットメルト接着剤等の接着剤によって接合固定されている。
【0131】
また、腹側及び背側脚回り弾性部材16a、16bは、図9のパンツ型吸収性物品1の状態においては、一対の脚回り開口部1bの上下方向の上半分において、一対の脚回り開口部1bそれぞれに沿った湾曲弾性部材16a、16bともいう。脚回り開口部1bに沿ってそのような湾曲弾性部材16a、16bが配置されることで、吸収性物品1が脚の動きに追従し易くなり、脚回りのフィット性が向上する。また、湾曲弾性部材16a、16bによって身体にフィットすることによって吸収性本体20から空気が抜けるのを低減し、冷感剤26による冷感効果を維持できる。
【0132】
第2実施形態に係る吸収性本体20の吸収性コア22は、図10に示すように、長手方向の両端部の間に、当該両端部よりも左右方向の幅が狭い括れ部22cを有している。吸収性コア22の左右方向の幅が狭い部分(括れ部22c)は着用者の股間部に対応し、当該股間部における幅を狭めることで立体ギャザー50が立ち上がり易くなる。これにより、左右方向へ空気が逃げることを低減させ、長手方向への空気の流れを作り、着用者の臀部や腹部へ空気が抜けやすくなる。尚、吸収性コア22は、括れ部22cを有する形状に限らず、例えば、平面視略矩形形状等でも良い。
【0133】
第2実施形態に係るバックシート25は、吸収性コア22を非肌側から覆う液不透過性のシートである。バックシート25の幅方向の寸法は、吸収性コア22よりも充分大きく、幅方向の両端部が、吸収性本体20の左右方向の端部20eeをなす位置を折り返し位置として、左右方向の中央側(内側)に折り返される。また、コアラップシート22aとバックシート25との間には、液不透過性の防漏シート等をさらに設けてもよい。
【0134】
また、第2実施形態の吸収性物品1においては、サイドシート28によって、厚さ方向の肌側に起立可能な一対の立体ギャザー50が形成されている(図11)。一対の立体ギャザー50は、厚さ方向に見て吸収性本体20の左右方向の両側部に長手方向に沿って設けられ(図10)、長手方向に伸縮する複数の弾性部材51を備えている。第2実施形態に係る立体ギャザー50は、サイドシート28の左右方向外側の部位から形成されている。サイドシート28は、トップシート24よりも左右方向の外側に延出するようにトップシート24の肌側から重ねられ、接合部28Aで長手方向に沿ってトップシート24の左右方向の端部と接合されている。そして、接合されていない左右方向の外側に延出している部分が、支点28S1を折れ曲がり起点として厚さ方向の肌側、且つ左右方向の内側に向かって折り返されることにより、立体ギャザー50を形成している。すなわち、トップシート24の左右方向の端部に接合された接合部28Aが立体ギャザー50の基端部として機能し、当該基端部(28A)よりも更に左右方向の先端側の部分が自由端部として起立可能となる。一対の立体ギャザー50には、吸収性本体20の長手方向に沿った糸ゴム等の複数の弾性部材51が長手方向に伸長した状態で固定されており、吸収性物品1の着用時には、該弾性部材51が発現する長手方向の伸縮性によって自由端部が着用者の肌側に起立する。
【0135】
また、本実施形態では、トップシート24の肌側には立体ギャザー50が設けられているため、トップシート24の左右方向の中央は肌と直接接触するが、左右方向の外側では、折り重なったサイドシート28を介して肌と接触することとなる。トップシート24と直接接触する部分は、冷感効果を早く実感でき、また、サイドシート28と肌とが接触する部分では、冷感を時間差で皮膚に届けることができ、冷感効果の持続性が向上する。
【0136】
また、第2実施形態の腹側胴回り部10f(背側胴回り部10b)は、図10に示すように、吸収性本体20の長手方向の両端20etよりも長手方向の外側に、複数の腹側弾性部材13a(背側弾性部材13b)を有している。そして、厚さ方向(着用時の前後方向)に見て、腹側胴回り部10f(背側胴回り部10b)と吸収性本体20の長手方向の両端部20eとが重なる重複部分の剛性と、吸収性本体20の長手方向の両端20etよりも長手方向の外側の部分の剛性とを比較した場合に、上述の重複部分の剛性の方が大きい。吸収性本体20の長手方向の両端20etよりも長手方向の外側の部分は、腹側胴回り部10f(背側胴回り部10b)の資材(肌側シート11及び非肌側シート14)のみが存在する部分である。よって、吸収性本体20が重なる重複部分と比較して剛性が小さくなるため、腹側胴回り部10f(背側胴回り部10b)のみの部分は各腹側弾性部材13a(背側弾性部材13b)の収縮により細かい皺が形成され易く、重複部分は、それよりも大きな皺が形成され易い。これにより、吸収性本体20との重複部分で大きな空気の流れを形成し、長手方向の両端20etよりも外側では小さい空気の流れを形成することとなり、揮発した冷感剤26を含む空気の流れをコントロールし易くなる。
【0137】
また、図10に示すように、第2実施形態の吸収性物品1では、厚さ方向(紙面を貫通する方向)に見て、吸収性本体20の長手方向の両端部20eと、複数の腹側弾性部材13a(背側弾性部材13b)の少なくとも一部とが重なる部分を有している。吸収性本体20の長手方向の両端部20eと腹側弾性部材13a(背側弾性部材13b)とが重なることで、腹側弾性部材13a(背側弾性部材13b)が左右方向に収縮したときに、吸収性本体20の長手方向の両端部20eに凹凸がより形成され易くなり、空気が抜け易くなる。これにより、吸収性本体20に溜まった湿気を上下方向の上側へより逃がし易くなり、冷感効果が向上する。
【0138】
図12は、第2実施形態に係る、展開かつ伸長状態のパンツ型吸収性物品1を非肌側から見た概略平面図である。図12に示すように、冷感剤26が塗布されている塗布領域26p(図10)の非肌側には、冷感剤26を備えていることを着用者に想起させるための想起表示70が外部から視認可能に設けられている。このような想起表示70により、吸収性物品1の装着時に、着用者は冷感効果が得られる位置を視覚的に確認することができる。
===その他の実施形態===
【0139】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0140】
上述の実施形態では、トップシート24として液透過性の不織布等を用いていたが、これに限定されるものではない。例えば、トップシート24は、ポリエチレン等からなるフィルムでもよく、また、多数の開孔を有していてもよい。トップシート24が多数の開孔を有することで、当該開孔から揮発した冷感剤を含む空気が抜け、着用者はより冷感効果を感じやすくなる。
【0141】
また、本発明の外装体10を構成するシート材(上述の伸縮性シート12、非伸縮性シート14、肌側シート11、及び非肌側シート14)、或いは、吸収性本体20のうちの着用者の肌に接触する肌側シート(上述のトップシート24)は、コットン繊維を有するシートでもよい。湿気を含みやすいコットン繊維があることにより、揮発した冷感剤26を含む空気の逃げ道をコントロールし易くなり、コットン繊維を有するシート部分で冷感効果の発現を高めることができる。
【0142】
また、本発明の吸収性本体20のトップシート24の肌側面には、経血を引き込み易くするような血液改質剤等の改質剤が塗布されていてもよい。血液改質剤としては、例えば、ポリオキシプロピレングリコール系化合物等を用いることができる。そして、厚さ方向(着用時の前後方向)に見て、そのような改質剤と冷感剤26とが重なる重複領域と、改質剤と冷感剤26とが重ならない非重複領域とを有することが好ましい。改質剤により経血を吸収性コア22に引き込み易くなり、また、改質剤は、揮発性の冷感剤26に対しては膜となる役割を果たすため、重複領域においては、冷感剤26の作用をコントロールすることができる。また、そのような膜によって、非重複領域から発現してきた冷感作用のある空気や、吸収性本体20と身体との間の湿気が吸収性本体20側に入り込みにくくなり、空気(湿気)が身体と吸収性本体20との間を通って抜けやすくなる。
【0143】
上述の実施形態では、吸収性本体20の肌側には、肌側から非肌側へ窪んだ凹部形状である複数の圧搾部40が形成されていたが、これに限定されるものではない。吸収性本体20には、左右方向の中央部、且つ、吸収性物品1の前後方向(長手方向)の少なくとも後側(背側)において、吸収性本体20の長手方向に延び、且つ、非肌面側から圧搾された中央圧搾部(不図示)が設けられていてもよい。当該中央圧搾部は、吸収性本体20の左右方向の中央部に非肌側から圧搾加工することで形成された、非肌側から肌側に凹んだ凹部領域である。当該凹部領域によって、着用した際に吸収性本体20が肌側に突出し易くなる。吸収性本体20の中央圧搾部の部分が肌側に突出することで臀部に吸収性本体20を当て易くなり、身体と吸収性本体20との距離が狭まることから、吸収性本体20に塗布されている冷感剤26の効果を向上させることができる。
【0144】
また、上述の第1実施形態では、吸収性コア22が中高部22naを有していたが、これに限定されるものではない。吸収性物品1のうち、少なくとも着用者の股下に対向する股下部において、吸収性コア22の左右方向の両側部に、周囲よりも厚みが厚い部分が設けられていてもよい。吸収性コア22が左右方向の両側部に凸部(厚みが厚い部分)を有することにより、冷感剤26が左右方向から逃げてしまうことを低減できる。その結果、吸収性コア22の長手方向への空気の流れを作り易くする。長手方向への空気の流れにより、着用者の下腹部及び臀部に冷感剤26を移行させ易くする。
【0145】
また、上述の実施形態におけるトップシート24としては、液透過性の不織布を用いることができるが、当該不織布は、熱伸長繊維等を用いて形成された凹凸を含む凹凸不織布であってもよい。凹凸不織布の凹凸は、吸収性本体20の長手方向及び左右方向それぞれに交差する方向に延在する格子状の窪み部と、該窪み部で囲まれた領域に形成された複数の凸部とによって形成することができる。そのような凹凸を有する不織布により、吸収性本体20の長手方向の両端部20eには、より凹凸が形成され易くなり、吸収性本体20に溜まった湿気が該凹凸から抜け易くなる。
【符号の説明】
【0146】
1 パンツ型吸収性物品、1a 胴回り開口部、1b 脚回り開口部、
10 外装体、10b 後側外装体、背側胴回り部、
10be 後側接合部、10bf 胴回り後端部、
10c 凹み部、10f 前側外装体、腹側胴回り部、10m 股下部、
10et 長手方向の所定位置、上端、
10fe 前側接合部、10ff 胴回り前端部、
10m 股下部
11 肌側シート
12 伸縮性シート、12b 後側伸縮性シート、12f 前側伸縮性シート、
13a 腹側弾性部材、13b 背側弾性部材、
14 非伸縮性シート、非肌側シート
15 折り返し部分
16a 腹側脚回り弾性部材、湾曲弾性部材
16b 背側脚回り弾性部材、湾曲弾性部材
20 吸収性本体
20e 長手方向の端部、20ee 左右方向の端部
20es 幅方向における両端、20et 長手方向の両端、外側端
22 吸収性コア、22a コアラップシート
22c 括れ部、22e 長手方向の両端部
22ka 後方中高部、22na 中高部
24 トップシート、25 バックシート
25a 液不透過性シート、25b 液透過性シート
25c 延出部、26 冷感剤
26n 非塗布領域、26p 冷感剤塗布領域
27 弾性部材、28 サイドシート、28A 基端部、28S1 支点
30 中央弾性部材、股下糸ゴム
31 エンボス部
40 圧搾部
50 立体ギャザー(防漏壁)
50B 支点、50S 頂点
51 弾性部材
55 低坪量部、スリット部
55 スリット部
56 複数の区画
60 後処理テープ
70 想起表示
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
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図12