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特開2022-136413フィルター部材の前処理方法及びオニウム塩化合物溶液の製造方法
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  • 特開-フィルター部材の前処理方法及びオニウム塩化合物溶液の製造方法 図1
  • 特開-フィルター部材の前処理方法及びオニウム塩化合物溶液の製造方法 図2
  • 特開-フィルター部材の前処理方法及びオニウム塩化合物溶液の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136413
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】フィルター部材の前処理方法及びオニウム塩化合物溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220913BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20220913BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20220913BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20220913BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20220913BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20220913BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20220913BHJP
   B01D 27/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 648F
B01D39/16 C
B01D61/14 500
B01D65/02
B01D71/32
B01D71/64
B01D71/26
B01D27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036007
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】野呂 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】清家 吉貴
(72)【発明者】
【氏名】東野 誠司
【テーマコード(参考)】
4D006
4D019
4D116
5F157
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA21
4D006HA71
4D006HA91
4D006JA53C
4D006JA58C
4D006JA67C
4D006KA01
4D006KB14
4D006KC02
4D006KC07
4D006KC16
4D006KD28
4D006KD30
4D006KE12R
4D006KE28R
4D006KE30R
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA22
4D006MC22
4D006MC28
4D006MC30
4D006MC58
4D006PA01
4D006PB20
4D006PC01
4D019AA03
4D019BA13
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4D116RR01
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4D116RR06
4D116RR07
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4D116RR19
4D116UU01
4D116VV30
5F157BE33
5F157BE54
5F157BE58
5F157BE69
5F157BF39
5F157BF59
5F157BF72
5F157CC01
5F157CF04
5F157CF60
5F157CF74
5F157CF99
5F157DB03
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】 迅速かつ簡便な方法で、パーティクルを大きく低減した、優れた薬液を得ることができるフィルターとすることができるフィルター部材の前処理方法と、パーティクルを大きく低減した、優れた半導体デバイス製造用処理用薬液の製造方法を提供する。
【解決手段】 フィルター部材を、アルコールに浸漬した後水で洗浄する工程を2回以上繰り返した後オニウム塩化合物溶液で洗浄することを特徴とするフィルター部材の前処理方法、及び前記前処理を行ったフィルター部材を用いてろ過するオニウム塩化合物溶液の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルター部材を、アルコールに浸漬した後水で洗浄する工程を2回以上繰り返すことを含む、フィルター部材の前処理方法。
【請求項2】
フィルター部材を、フィルター部材のろ過表面積当たり0.1~10mL/cmのアルコールに3~72時間浸漬する、請求項1に記載の前処理方法。
【請求項3】
水による洗浄が、フィルター部材に超純水を通水することによる洗浄である、請求項1又は2に記載の前処理方法。
【請求項4】
フィルター部材の材質が、ポリオレフィン、フッ素樹脂又はポリイミドである、請求項1~3のいずれか1項に記載の前処理方法。
【請求項5】
フィルター部材を、アルコールに浸漬した後水で洗浄する工程を2回以上繰り返した後に更に、オニウム塩化合物含有溶液で洗浄することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の前処理方法。
【請求項6】
オニウム塩化合物溶液による洗浄が、フィルター部材のろ過面積当たりの通液量0.5~1mL/cmとなるようにフィルター部材にオニウム塩化合物溶液を通液することによる洗浄である、請求項5に記載の前処理方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によって前処理したフィルター部材を用いてオニウム塩化合物溶液をろ過することを含む、オニウム塩化合物溶液の製造方法。
【請求項8】
前処理したフィルター部材が孔径1nm~2000nmのカートリッジフィルターである、請求項7に記載のオニウム塩化合物溶液の製造方法。
【請求項9】
オニウム塩化合物溶液がオニウム塩化合物濃度0.1~50質量%の水溶液である、請求項7又は8に記載のオニウム塩化合物溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター部材の前処理方法及びオニウム塩化合物溶液の製造方法に関する。詳しくは、パーティクルを大きく低減した、優れた薬液を得ることができるフィルター部材とする、フィルター部材の前処理方法、及びパーティクルを大きく低減した、優れたオニウム塩化合物溶液の製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、洗浄、またはエッチングを行うための半導体用処理液が種々の工程に用いられている。近年、メモリセルや、ロジックデバイスの微細化が進められており、半導体デバイスの歩留まり低下、及び欠陥の原因となる半導体処理液中の有機不純物及び金属不純物を含むパーティクルの低減への要求が厳しくなっている。そのため、半導体処理液、及び半導体処理液に用いる原料に含まれるパーティクルを低減することが重要視されている。また、特に近年、添加剤として種々のオニウム塩が次世代製造プロセス用の半導体処理液での使用が検討されている。尚、パーティクルは一般的に液中パーティクルカウンター等によって検出・計測されており、本発明におけるパーティクルは、光散乱方式の液中パーティクルカウンターによって検出・計測されたものである。
【0003】
有機不純物や金属不純物が低減された薬液を得るためには、一般に被精製物をフィルターでろ過することが行われている。フィルターは、被精製物をろ過するフィルター部材とハウジングから成り、工業的に使用されるフィルター部材は、樹脂製繊維をコアに巻き付けて成形したものや、樹脂膜に微小な細孔を形成させたものが一般的である。いずれのフィルター部材であっても、繊維間にできた隙間や膜に形成された細孔に液体を通過させ、通過できない粗大粒子などを除去することができる。しかしながら、フィルター部材は、製造起因と思われる有機不純物を有していることがあり、フィルター部材の洗浄が十分にできていない場合、フィルター使用時にフィルター部材から溶出しパーティクルとして検出される。
【0004】
特許文献1には、有機残渣抑制方法が開示されており、有機成分等の、フィルター部材が含有する不純物が薬液に持ち込まれないようにフィルター部材を使用前に洗浄してから使用することが記載されている。フィルター部材の洗浄方法として、不純物含有量の少ない、蒸留精製した有機溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はイソプロピルアルコール等)にフィルター部材を一週間以上浸漬する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/054291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のフィルター部材の洗浄方法では、一週間以上と有機溶剤に浸漬する時間が極めて長いことが問題であった。また、本発明者らが、特許文献1の手法で洗浄したフィルター部材を用いてオニウム塩化合物溶液のろ過を検討した結果、得られたオニウム塩化合物溶液中のパーティクル低減が十分でないことが明らかとなった。
【0007】
従って、本発明の目的は、迅速かつ簡便な方法で、パーティクルを大きく低減した、優れた薬液を得ることができるフィルターとすることができるフィルター部材の前処理方法、及びパーティクルを大きく低減した、優れたオニウム塩化合物溶液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ろ過に用いるフィルター部材をアルコールに浸漬後に水洗浄を行うことを複数回繰り返すことにより上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
即ち、第一の本発明は、フィルター部材をアルコールに浸漬した後水で洗浄する工程を2回以上繰り返すことを含む、フィルター部材の前処理方法である。
【0010】
第一の本発明において、フィルター部材を、フィルター部材のろ過表面積当たり0.1~10mL/cmのアルコールに3~72時間浸漬することが好ましい。
【0011】
水による洗浄は、フィルター部材に超純水を通水することによる洗浄が好ましい。
【0012】
フィルター部材の材質は、ポリオレフィン、フッ素樹脂又はポリイミドであることが好ましい。
【0013】
また、フィルター部材をアルコールに浸漬した後水で洗浄する工程を2回以上繰り返した後に更に、オニウム塩化合物溶液で洗浄することが好ましい。
【0014】
オニウム塩化合物溶液による洗浄は、フィルター部材のろ過面積当たりの通液量0.5~1mL/cmとなるようにフィルター部材にオニウム塩化合物溶液を通液することによる洗浄が好ましい。
【0015】
第二の本発明は、第一の本発明の前処理方法によって前処理したフィルター部材を用いてオニウム塩化合物溶液をろ過することを含む、オニウム塩化合物溶液の製造方法である。
【0016】
前処理したフィルター部材は孔径1nm~2000nmのカートリッジフィルターであることが好ましい。
【0017】
また、オニウム塩化合物溶液はオニウム塩化合物濃度0.1~50質量%の水溶液であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、迅速かつ簡便に半導体処理用の薬液のろ過に用いるフィルター部材を前処理できる。また、該前処理したフィルター部材を用いてろ過することで、オニウム塩化合物溶液等の半導体処理用の薬液を、パーティクルを大きく低減した、優れた薬液とすることができる。
【0019】
本発明の前処理方法により、フィルター部材を、ろ過して得られる薬液がパーティクルを大きく低減した、優れた薬液とすることができるフィルター部材とすることができる理由は明らかではないが、次のように推測している。即ち、フィルター部材は、製造起因と思われる有機不純物を有していることがあるが、本発明の前処理によりフィルター部材の有機不純物が十分に除去され、ろ過後の薬液のフィルター部材由来の有機不純物が減少し、そのことにより、パーティクルカウンターで検出・計測されるパーティクルが減少すると推測している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のオニウム塩化合物溶液の製造方法に用いる製造装置の模式図である。
図2】実施例1と比較例1のパーティクル数を比較した図である。
図3】実施例2と比較例2のパーティクル数を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0022】
<フィルター部材の前処理方法>
尚、本発明においてフィルター部材とは、前記したようにフィルターを用いて被精製物をろ過する際に実際にろ過する部材のことである。
【0023】
本発明は、フィルター部材をアルコールに浸漬した後に水で洗浄を行う工程を2回以上行うことを含むフィルター部材の前処理方法である。本発明の前処理方法によれば、ろ過をした際にろ過後のオニウム塩化合物溶液中に含まれるフィルター部材由来のパーティクルを大きく低減した、優れたオニウム塩化合物溶液を得ることができる。
【0024】
本発明の前処理方法においてフィルター部材の孔径としては特に制限されず、被精製物のろ過用として通常使用される孔径であればよい。より微小なパーティクルまで低減した薬液が得られる点で、2000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、20nm以下が最も好ましい。また、実用的なろ過速度が得られる点で孔径は1nm以上であることが好ましい。
【0025】
尚、本明細書において、フィルター部材の孔径とはイソプロパノールのバブルポイント法によって決定される孔径を意味する。
【0026】
バブルポイント法とは、JISK3832、ASTMF-316で規定されている、フィルターの最大孔径の孔を決定する方法である。フィルターを液体(本発明においてはイソプロパノール)につけ、下側から空気の圧力を上げていくとある値に達した時に、最初に最大孔径の孔から気泡が発生する。このときの圧力をバブルポイントと呼び、最大孔径はこのバブルポイントの圧力から決定される。
【0027】
本発明で使用するフィルター部材の様態としては特に制限されないが、簡易に脱着できるカートリッジフィルターが好ましく、カートリッジフィルターの例としてフィルター部材とハウジングが一体となったカプセルフィルター、またフィルター部材がハウジングから取り外し可能なプリーツフィルター、デプスフィルター、ワインドフィルターが挙げられる。
【0028】
フィルター部材の材料としては特に制限されないが、重合体である場合、ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;ポリイミド;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等、及びこれらの誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
フィルター部材の細孔構造としては特に制限されず、被精製物中に含有される不純物の形態により適宜選択すればいい。フィルター部材の細孔構造とは、孔径分布、フィルター部材中の細孔の位置的な分布、及び細孔の形状等を意味し、典型的にはフィルター部材の製造方法により異なる。
【0030】
本発明の前処理方法においてアルコールの種類としては、特に制限はされないが、不純物が少ないことが好ましく、中でも金属不純物濃度が10ppb未満である電子工業用であることが好ましい。アルコールとしては、水との親和性が比較的良いイソプロピルアルコールが好ましい。イソプロピルアルコールが有するヒドロキシ基が水と水素結合をする為、水との親和性が良く、水で洗浄を行う際に使用する水の量を少なくすることができる。また、価格が他アルコールよりも安く金属不純物濃度を抑えたイソプロピルアルコールが流通していることから、イソプロピルアルコールを使用することが好ましい。
【0031】
本発明の前処理方法において水は、特に制限されないが、不純物が少ないことが好ましく、電気抵抗率が0.1MΩ・cm以上が好ましく、15MΩ・cm以上の超純水がさらに好ましく、18MΩ・cm以上が特に好ましい。
【0032】
本発明の前処理における、フィルター部材をアルコールに浸漬した後に水で洗浄を行う工程では、まず、フィルター部材をアルコールに浸漬する。フィルター部材をアルコールに浸漬する方法は、フィルター部材の様態により異なる。例えばカプセルフィルターの場合、フィルター部材とハウジングが一体となっている為、ハウジング内にアルコールを送液ポンプ等により注入することによりフィルター部材をアルコールに浸漬し、封入することにより行えばよい。また、フィルター部材とハウジングが別々となっているフィルターの場合、アルコールが満たされた容器に対してフィルター部材を浸漬し、封入すればよい。
【0033】
この時、フィルター部材の全体がアルコールに接触していることが好ましい。フィルター部材の全体がアルコールに接触しない場合には、アルコールに接触していない部分には実質的に前処理がなされない。そのような溶媒に接触しない部分が多ければ多いほどろ過して得られる薬液中のパーティクルが大きく低減しないので、フィルター部材の全体がアルコールに接触していることが好ましい。
【0034】
本発明の前処理において、浸漬時のアルコール量は特に制限されない。ろ過して得られる薬液中のパーティクル低減の効率から、フィルター部材のろ過表面積あたり0.1~10mL/cmであることが好ましい。また、浸漬時の温度は特に制限されないが5℃以上で行うことが好ましい。
【0035】
本発明の前処理において、カプセルフィルターのハウジング内へのアルコール注入時の流速は特に制限されない。ろ過して得られる薬液中のパーティクル低減の効率から、SV=10以上100以下であることが好ましい。尚、SVとは、フィルター部材を通過する空間速度(1/h)を表す。
【0036】
本発明の前処理において、フィルター部材中にアルコールを浸漬する時間は、特に限定されないが、過度に短いと本発明の効果が十分発揮されないので、3時間以上が好ましく、72時間以内であることが好ましく、15時間以上72時間以内で行うことが特に好ましい。
【0037】
アルコールに浸漬した後のフィルター部材は水で洗浄する。フィルター部材とハウジングが一体となっているカプセルフィルターの場合、送液ポンプ等を用いてアルコールを注入、封入しているハウジング内に水を通液し、洗浄を行えばよい。
【0038】
フィルター部材とハウジングが別々となっているフィルターの場合、容器中にアルコールに浸漬していたフィルター部材を容器から取り出し、ハウジングに接続後に上記同様の操作で、水を通液し、洗浄を行えばよい。
【0039】
洗浄に用いる水の量は特に制限されないが、ろ過表面積あたり0.2mL/cm以上通液することが好ましく、アルコールへの浸漬に用いたアルコールが除去されればよい。また、注入時の流速は特に制限されない。ろ過して得られる薬液中のパーティクル低減の効率から、SV=10以上100以下であることが好ましい。
【0040】
通水する水の温度は特に制限されないが5℃以上で行うことが好ましい。また、屈折率計等で通水した水の屈折率を測定し、アルコールが含まれていないことを確認し、水による洗浄を終了することが好ましい。
【0041】
本発明の前処理方法においては、フィルター部材をアルコールに浸漬し、その後水で洗浄することを1サイクルとする上記の工程を2回以上繰り返す。ろ過して得られる薬液中のパーティクル低減する必要があることから2回以上5回以下が好ましい。
【0042】
本発明の前処理方法においては、前処理したフィルター部材をオニウム塩化合物溶液の製造に用いる場合、フィルター部材をアルコールに浸漬した後に水で洗浄を行う工程を2回以上繰り返した後に更に、オニウム塩化合物溶液で洗浄することが好ましい。理由は定かではないが、オニウム塩化合物溶液で洗浄を行うことによって、パーティクルをより低減することができる。
【0043】
フィルター部材の洗浄に用いるオニウム塩化合物溶液(以下、洗浄用オニウム塩化合物溶液ともいう。)のオニウム塩化合物濃度は0.1~50質量%であることが好ましい。また、洗浄用オニウム塩化合物溶液は水溶液であることが好ましい。
【0044】
オニウム塩化合物は、アンモニウム塩であることが好ましい。
【0045】
アンモニウム塩としては、下記式(1)
・X (1)
(式中、R,R,R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていても良い。Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、次亜塩素酸イオン又は次亜臭素酸イオンである。)
で示されるアンモニウム塩を例示することができる。
【0046】
式(1)で示されるアンモニウム塩において、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は直鎖状の炭素数1~20のアルキル基であることが好ましい。これらはそれぞれ同一であっても、異なっていても良い。アルキル基は、置換基としてヒドロキシ基を有していてもよい。
【0047】
直鎖状の炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基等の無置換の炭素数1~16のアルキル基;ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ-n-プロピル基、ヒドロキシ-i-プロピル基、ヒドロキシ-n-ブチル基、ヒドロキシ-i-ブチル基、ヒドロキシ-sec-ブチル基、ヒドロキシ-tert-ブチル基等のヒドロキシ基で置換された炭素数1~4のアルキル基等を挙げることができる。
【0048】
さらに好ましくは、R、R、R及びR全てが水素である。
【0049】
Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、塩素原子、臭素原子、次亜塩素酸イオン又は次亜臭素酸イオンであることが好ましい。
【0050】
本発明において好適に使用される式(1)で示されるアンモニウム塩を具体的に示せば、塩化アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜臭素酸テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、臭化ブチルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられる。中でも、塩化アンモニウム、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜臭素酸テトラメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムがさらに好ましく、塩化アンモニウム、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜臭素酸テトラメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが好ましく、塩化アンモニウムが特に好ましい。
【0051】
また、前処理したフィルター部材を半導体処理用のオニウム塩化合物溶液の製造に用いる場合、アンモニウム塩化合物は金属不純物濃度の低いものを用いることが好ましい。洗浄用オニウム塩化合物溶液の調製に用いるアンモニウム塩化合物中の金属不純物濃度は、10ppb以下が好ましく、前処理したフィルター部材が半導体処理用のオニウム塩化合物溶液の製造で用いられる点で1ppb以下がさらに好ましい。アンモニウム塩化合物を精製して用いる場合、その精製方法は特に限定されないが、再結晶法等が挙げられる。
【0052】
洗浄用オニウム塩化合物溶液は、上記オニウム塩化合物を水等の溶媒に溶解することで調製できる。オニウム塩化合物溶液の調製方法は特に制限されず、容器中でオニウム塩化合物と溶媒とを混合し、オニウム塩化合物を溶解させればよい。洗浄用オニウム塩化合物溶液としてオニウム塩化合物水溶液を調製する場合、溶媒の水として不純物が少ないものを用いることが好ましい。そのような不純物の少ない水は、電気抵抗率が0.1MΩ・cm以上であることが好ましく、15MΩ・cm以上の超純水がさらに好ましく、18MΩ・cm以上が特に好ましい。
【0053】
なお、洗浄用オニウム塩化合物溶液は、後述する、前処理したフィルター部材を用いてオニウム塩化合物溶液を製造する際のろ過対象とするオニウム塩化合物溶液と同じであることが好ましい。
【0054】
洗浄用オニウム塩化合物溶液による洗浄は、フィルター部材を、アルコールに浸漬した後水で洗浄する工程を2回以上繰り返した後、水を洗浄用オニウム塩化合物溶液に替え、引き続きフィルター部材に対して、洗浄用オニウム塩化合物溶液を送液ポンプにより注入し、通液すればよい。
【0055】
この時、フィルター部材の全体が洗浄用オニウム塩化合物溶液に接触していることが好ましい。フィルター部材の全体が洗浄用オニウム塩化合物溶液に接触しない場合には、洗浄用オニウム塩化合物溶液に接触していない部分には実質的に前処理がなされない。そのような洗浄用オニウム塩化合物溶液に接触しない部分が多ければ多いほどフィルター部材からの有機不純物の除去が不十分となり、ろ過して得られるオニウム塩化合物溶液中のパーティクルが大きく低減しないので、フィルター部材の全体が洗浄用オニウム塩化合物溶液に接触していることが好ましい。
【0056】
本発明による前処理において、必要なオニウム塩化合物溶液はフィルター部材のろ過表面積あたりの通水量が、0.5~1mL/cmであることが好ましい。また、通液時の流速は特に制限されない。ろ過して得られる薬液中のパーティクル低減の効率から、SV=10以上100以下であることが好ましい。
【0057】
温度は特に制限されないが5℃以上で行うことが好ましい。5℃以下で行う場合、オニウム塩化合物溶液が凝固する可能性がある為、5℃以上で行う必要があるのである。
【0058】
<オニウム塩化合物溶液の製造方法>
本発明の第二の態様は、前記前処理方法によって前処理したフィルター部材を用いてオニウム塩化合物溶液をろ過することを特徴とするオニウム塩化合物溶液の製造方法である。前記前処理方法によって前処理したフィルター部材を用いてろ過対象とするオニウム塩化合物溶液をろ過することによって、パーティクルを大きく低減した、優れたオニウム塩化合物溶液を製造することができる。
【0059】
本発明の製造方法において、適用できるオニウム塩化合物溶液について説明する。
【0060】
本発明の製造方法は、半導体用処理液そのものではなく、その原料に適用することもできる。すなわち、半導体用処理液として用いられるオニウム塩化合物溶液だけでなく、半導体用処理液の原料となるオニウム塩化合物溶液を製造する目的としても、本発明の製造方法を用いることができる。本発明においてオニウム塩化合物溶液とは、オニウム塩化合物を含む溶液であり、オニウム塩化合物以外の成分を含んでいてもよい。
【0061】
本発明の製造方法によりオニウム塩化合物溶液をろ過する時期は特に限定されない。例えば、半導体用処理液として容器に充填する場合、半導体用処理液を容器に充填する前、容器から半導体用処理液を取り出して使用する前に本発明の方法を用いることができる。さらには、一度使用された半導体用処理液を再生して再利用する場合にも、本発明の製造方法を用いることができる。
【0062】
ろ過対象とするオニウム塩化合物溶液のオニウム塩化合物濃度は0.1~50質量%であることが好ましい。また、オニウム塩化合物溶液は水溶液であることが好ましい。
【0063】
オニウム塩化合物は、アンモニウム塩であることが好ましい。
【0064】
アンモニウム塩としては、下記式(2)
・X (2)
(式中、R,R,R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていても良い。Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、次亜塩素酸イオン又は次亜臭素酸イオンである。)
で示されるアンモニウム塩を例示することができる。
【0065】
式(2)で示されるアンモニウム塩において、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は直鎖状の炭素数1~20のアルキル基であることが好ましい。これらはそれぞれ同一であっても、異なっていても良い。アルキル基は、置換基としてヒドロキシ基を有していてもよい。
【0066】
直鎖状の炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基等の無置換の炭素数1~16のアルキル基;ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ-n-プロピル基、ヒドロキシ-i-プロピル基、ヒドロキシ-n-ブチル基、ヒドロキシ-i-ブチル基、ヒドロキシ-sec-ブチル基、ヒドロキシ-tert-ブチル基等のヒドロキシ基で置換された炭素数1~4のアルキル基等を挙げることができる。
【0067】
さらに好ましくは、R、R、R及びR全てが水素である。
【0068】
Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、塩素原子、臭素原子、次亜塩素酸イオン又は次亜臭素酸イオンであることが好ましい。
【0069】
本発明において好適に使用される式(2)で示されるアンモニウム塩を具体的に示せば、塩化アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜臭素酸テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、臭化エチルトリメチルアンモニウム、臭化ブチルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられる。中でも、塩化アンモニウム、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜臭素酸テトラメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム塩、臭化デシルトリメチルアンモニウム塩、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム塩、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム塩、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムがさらに好ましく、塩化アンモニウム、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜臭素酸テトラメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが好ましく、塩化アンモニウムが特に好ましい。
【0070】
また、アンモニウム塩化合物溶液を半導体処理用に用いる場合、アンモニウム塩化合物は金属不純物濃度の低いものを用いることが好ましい。用いるアンモニウム塩化合物中の金属不純物濃度は、10ppb以下が好ましく、半導体用薬液で用いられる点で1ppb以下がさらに好ましい。アンモニウム塩化合物を精製して用いる場合、その精製方法は特に限定されないが、再結晶法等が挙げられる。
【0071】
ろ過対象とするオニウム塩化合物溶液は、上記オニウム塩化合物を水等の溶媒に溶解することで調製できる。オニウム塩化合物溶液の調製方法は特に制限されず、容器中でオニウム塩化合物と溶媒とを混合し、オニウム塩化合物を溶解させればよい。ろ過対象とするオニウム塩化合物溶液としてオニウム塩化合物水溶液を調製する場合、溶媒の水として不純物が少ないものを用いることが好ましい。そのような不純物の少ない水は、電気抵抗率が0.1MΩ・cm以上であることが好ましく、15MΩ・cm以上の超純水がさらに好ましく、18MΩ・cm以上が特に好ましい。
【0072】
本発明の製造方法で用いられるフィルター部材の孔径は、ろ過する液体の使用目的、種類、含まれる成分、除去すべき不純物の大きさなどに応じて任意のものを用いることができる。例えば、一般的な半導体用処理液からパーティクルを効率的に除去するためにはフィルター部材の孔径が2000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、20nm以下が最も好ましい。また、実用的なろ過速度が得られる点で孔径は1nm以上であることが好ましい。
【0073】
オニウム塩化合物溶液の前記前処理方法により前処理したフィルター部材によるろ過は、ろ過対象とするオニウム塩化合物溶液を、送液ポンプ等を用いてフィルター部材に供給すればよい。前処理したフィルター部材としては、フィルター部材をアルコールに浸漬した後に水で洗浄を行う工程を2回以上繰り返した後に更に、オニウム塩化合物溶液で洗浄することにより前処理したフィルター部材を用いることが好ましい。
【0074】
フィルター部材は、2つ以上連結して用いてもよい。その場合、それぞれ異なる孔径のフィルター部材を用いることが好ましい。製造タンクから送られるオニウム塩化合物溶液が最初に通過するフィルター部材の孔径は、100nm以上2000nm以下であることが好ましく、オニウム塩化合物溶液が最後に通過するフィルター部材の孔径が20nm以下であることが好ましい。
【0075】
本発明のオニウム塩化合物溶液の製造方法において、被精製物のオニウム塩化合物溶液は、一回のろ過で、フィルター部材のろ過表面積あたり0.2~30mL/cm・回、通液することが好ましく、所定のパーティクル数となる様にろ過を繰り返せば良い。
【0076】
例えば、オニウム塩化合物溶液中の30nm以上のパーティクル数を100個/mL以下にしたい場合、ろ過表面積あたり1~20mL/cm通液することを繰り返すことが好ましい。
【0077】
図1に、本発明のオニウム塩化合物溶液の製造方法に用いる典型的な製造装置の模式図を示す。製造装置は、製造タンク1とハウジング中にフィルター部材を備えたろ過装置2を有しており、上記それぞれのユニットは、管路で接続されている。
【0078】
図1において、ろ過対象とするオニウム塩化合物溶液は製造タンク1に貯留される。製造タンク1に貯留されたオニウム塩化合物溶液は、管路中に配置された送液ポンプ3により製造タンク1から管路を経由して、フィルター部材を備えるろ過装置2へと送られ、ろ過される。ろ過されたオニウム塩化合物溶液は製造タンク1に戻る。このように、図1で示した製造装置では、ろ過対象とするオニウム塩化合物溶液を循環させることで所定のパーティクル数となるようにろ過を繰り返すことができる。
【0079】
製造タンクの接液部の材質としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂(PCTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(PCTFE)、及びフッ化ビニル樹脂(PVF)からなる群により選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0080】
製造タンクは、オニウム塩化合物溶液の製造前にその内部が洗浄されることが好ましい。洗浄に用いる液体としては、超純水あるいは、上記薬液そのもの、又は、上記薬液を希釈したものが好ましい。
【0081】
管路の接液部の材質としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂(PCTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(PCTFE)、及びフッ化ビニル樹脂(PVF)からなる群により選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0082】
上記薬液を送液する方法としては、パーティクルを低減した窒素、アルゴン等の不活性ガスで圧送する方法と、接液部から金属不純物の溶出しない材質を有する送液ポンプで送液する方法が挙げられる。
【0083】
送液ポンプの接液部の材質としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂(PCTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(PCTFE)、及びフッ化ビニル樹脂(PVF)からなる群により選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0084】
オニウム塩化合物溶液の製造は、それに付随する、容器の開封、容器及び装置の洗浄、容器の収容並びに、分析等は、全てクリーンルームで行うのが好ましい。クリーンルームは、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス4以上の清浄度のクリーンルームが好ましい。具体的には、ISOクラス1、ISOクラス2,ISOクラス3、ISOクラス4のいずれかを満たすのが好ましい。
【0085】
上記精製方法により製造された薬液は、直ちに使用してもよいし、容器に収容されて使用時まで保管してもよい。このような容器と、容器に収容された薬液とを合わせて薬液収容体という。保管された薬液収容体からは、薬液が取り出されて使用される。
【0086】
上記薬液を保管する容器としては、半導体デバイス製造用途向けに、容器内のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないのが好ましい。
【0087】
容器の材質としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂(PCTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(PCTFE)、及びフッ化ビニル樹脂(PVF)からなる群により選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0088】
容器は、溶液を収容前にその内部が洗浄されることが好ましい。洗浄に用いる液体としては、超純水あるいは、上記薬液そのもの、又は、上記薬液を希釈したものが好ましい。
【実施例0089】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0090】
なお、本実施例において、薬液のパーティクル低減性能の評価方法は光散乱方式の液中パーティクルカウンター(KS-19F;リオン社製)を用いた方法であり、評価手順は実施例に記載したとおりである。
【0091】
[実施例1]
(フィルター部材の前処理)
液体をろ過するフィルター部材として、Entegris社製Torrento X 1500(材質:PTFE、孔径10nm、膜表面積1900cm、全長約9.7cmのカプセルフィルター(フィルター部材サイズ全長約9.7cm、外径約7.1cm))を準備してアルコールの浸漬を行った。アルコールを、カプセルフィルターに送液ポンプを用いて注入したのち封入し、下記条件で浸漬を行った。浸漬後、超純水(電気抵抗率18MΩ・cm)により、下記条件で洗浄を行い、もう1回アルコール浸漬、水による洗浄を繰り返し行い、屈折率を測定してアルコールが含まれないことを確認した後、オニウム塩水溶液により下記条件で洗浄を行った。前処理には、34時間6分要した。
【0092】
・前処理条件
アルコールへの浸漬
アルコール:イソプロピルアルコール
アルコール浸漬量:400mL、ろ過表面積あたり:0.2mL/cm
注入時の流速:SV=85
アルコール浸漬時間:17時間
アルコール浸漬温度:25℃
水による洗浄
水:超純水(電気抵抗率18MΩ・cm)
水洗浄量:1000mL、ろ過表面積あたり:0.5mL/cm
洗浄時の流速:SV=85
洗浄時間:2分
オニウム塩化合物溶液による洗浄
洗浄用オニウム塩化合物溶液:5質量%塩化アンモニウム水溶液(950mLの超純水(電気抵抗18MΩ・cm)と50gの塩化アンモニウムを混合して調製)
オニウム塩化合物溶液洗浄量;1000mL、ろ過表面積あたり:0.5mL/cm
通液時の流速:SV=85
洗浄時間:2分
【0093】
(オニウム塩化合物溶液の製造)
950mLの超純水(電気抵抗18MΩ・cm)と50gの塩化アンモニウムを混合し、ろ過対象とするオニウム塩化合物溶液として塩化アンモニウム水溶液1000mLを調製した。
【0094】
調製した塩化アンモニウム水溶液1000mLを製造タンクに入れ、前処理を行ったフィルター部材を用いて図1に示す製造装置で循環濾過を行い、塩化アンモニウム水溶液を製造した。製造装置の材質、送液ポンプの接液部の材質、製造の条件については以下に示す。
【0095】
ろ過装置の材質
製造タンク:ポリエチレン樹脂
管路:四フッ化エチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)
送液ポンプの接液部の材質:フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)
製造条件
オニウム塩化合物溶液:5質量%塩化アンモニウム水溶液
オニウム塩化合物溶液製造量:1000mL
流速:SV=85
循環回数:20回、ろ過表面積あたり:10mL/cm
【0096】
循環ろ過中のオニウム塩化合物溶液について、10回、15回、20回循環した後の粒径30nm以上及び70nm以上のパーティクル数(個/mL)を測定した。評価結果を図2に示す。パーティクル数の測定は、リオン社製パーティクルカウンターKS-19Fを用いてカウントし、パーティクル数とした。
【0097】
[実施例2]
(フィルター部材の前処理)
液体をろ過するフィルター部材として、Entegris社製Optimizer DEV-L(材質:PE、孔径10nm、膜表面積4500cm、全長約17.5cmのカプセルフィルター(フィルター部材サイズ全長約17.5cm、外径約7.1cm))を用い、実施例1と同様の薬液でフィルター部材の前処理を行った。前処理には、34時間10分要した。前処理で用いたアルコールへの浸漬、水による洗浄、及びオニウム塩化合物溶液による洗浄の条件を以下に示す。
【0098】
・前処理条件
アルコールへの浸漬
アルコール:イソプロピルアルコール
アルコール浸漬量:700mL、ろ過表面積あたり:0.15mL/cm
注入時の流速:SV=45
アルコール浸漬時間:17時間
アルコール浸漬温度:25℃
水による洗浄
水:超純水(電気抵抗率18MΩ・cm)
水洗浄量:1000mL、ろ過表面積あたり:0.2mL/cm
洗浄時の流速:SV=45
洗浄時間:2分
オニウム塩化合物溶液による洗浄
洗浄用オニウム塩化合物溶液:5質量%塩化アンモニウム水溶液(2850mLの超純水(電気抵抗18MΩ・cm)と150gの塩化アンモニウムを混合して調製)
オニウム塩化合物溶液洗浄量;3000mL、ろ過表面積あたり:0.6mL/cm
通液時の流速:SV=45
洗浄時間:6分
【0099】
(オニウム塩化合物溶液の製造)
前処理を行ったフィルター部材を用いて図1に示す製造装置で実施例1と同様の方法で循環濾過を行い。塩化アンモニウム水溶液を製造した。製造条件については以下に示す。また、評価結果を図3に示す。
【0100】
製造条件
オニウム塩化合物溶液:5質量%塩化アンモニウム水溶液
オニウム塩化合物溶液製造量;1000mL
流速:SV=45
循環回数:20回、ろ過表面積あたり:4mL/cm
【0101】
[比較例1]
フィルターの前処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして塩化アンモニウム水溶液の製造を行い、製造した塩化アンモニウム水溶液の評価を行った。評価結果を図2に示す。
【0102】
[比較例2]
フィルターの前処理を行わなかった以外は実施例2と同様にして塩化アンモニウム水溶液の製造を行い、製造した塩化アンモニウム水溶液の評価を行った。評価結果を図3示す。
【0103】
図2に示した通り、フィルターの前処理を行った実施例1はフィルターの前処理を行わなかった比較例1よりも、15回以上循環ろ過を行った際に粒径30nm以上及び70nm以上何れの粒子径のパーティクル数も少なかった。
【0104】
図3に示した通り、フィルターの前処理を行った実施例2はフィルターの前処理を行わなかった比較例2よりも、15回以上循環ろ過を行った際に粒径30nm以上及び70nm以上何れの粒子径のパーティクル数も少なかった。
【符号の説明】
【0105】
1:製造タンク
2:ろ過装置
3:送液ポンプ
図1
図2
図3