IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人北海道大学の特許一覧 ▶ 日本特殊陶業株式会社の特許一覧

特開2022-136442エタノール除去用触媒、及びそれを備えたエチレン検出センサユニット
<>
  • 特開-エタノール除去用触媒、及びそれを備えたエチレン検出センサユニット 図1
  • 特開-エタノール除去用触媒、及びそれを備えたエチレン検出センサユニット 図2
  • 特開-エタノール除去用触媒、及びそれを備えたエチレン検出センサユニット 図3
  • 特開-エタノール除去用触媒、及びそれを備えたエチレン検出センサユニット 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136442
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】エタノール除去用触媒、及びそれを備えたエチレン検出センサユニット
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/03 20060101AFI20220913BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B01J29/03 M
G01N27/416 311G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036052
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】福岡 淳
(72)【発明者】
【氏名】中島 清隆
(72)【発明者】
【氏名】喜田 真史
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA02A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB07
4G169CD08
4G169CD10
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EB01
4G169FA02
4G169ZA43A
4G169ZA43B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
【課題】妨害ガスであるエタノールを確実かつ安全に除去し、エチレンガス濃度の検出精度を向上させたエタノール除去用触媒、及びそれを備えたエチレン検出センサユニットを提供する。
【解決手段】メソポーラスシリカにMn,Fe,Ni,Cu及びCoの群から選ばれる一種以上の金属を担持されてなるエタノール除去用触媒40である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラスシリカにMn,Fe,Ni,Cu及びCoの群から選ばれる一種以上の金属を担持されてなるエタノール除去用触媒。
【請求項2】
前記金属は、Mn及びFeの群から選ばれる一種以上である請求項1記載のエタノール除去用触媒。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエタノール除去用触媒と、
被測定ガス中のエチレンガス濃度を検出するガスセンサと、を備え、
前記エタノール除去用触媒は、前記被測定ガスが流れる流路において前記ガスセンサよりも上流側に配置されて前記被測定ガス中のエタノールを除去するエチレン検出センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンガス濃度を検出するエタノール除去用触媒、及びそれを備えたエチレン検出センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
青果物から発生するエチレンガスは、過熟成を引き起こして青果物の商品価値を下げてしまうため、エチレンガス濃度を検出して濃度を管理することが重要である。
エチレンガス濃度を検出するガスセンサとしては、一般に電気化学式センサや、半導体式センサ等が用いられるが、輸送、保管中にストレスを受けた青果物からエタノールガスが発生すると、妨害ガスとなってエチレンガス濃度の検出精度を低下させる。
そこで、エチレンガスセンサである電気化学セルの上流側に、水、アルコール等を含む極性溶媒のトラップを設けて妨害ガスであるエタノール等を除去する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-514845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術の場合、エタノールを除去するトラップが液体であるため、青果物の輸送、保管中に液漏れして青果物の品質に影響する可能性がある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、妨害ガスであるエタノールを確実かつ安全に除去し、エチレンガス濃度の検出精度を向上させたエタノール除去用触媒、及びそれを備えたエチレン検出センサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のエタノール除去用触媒は、メソポーラスシリカにMn,Fe,Ni,Cu及びCoの群から選ばれる一種以上の金属を担持されてなる。
このエタノール除去用触媒によれば、メソポーラスシリカに担持した金属により、被測定ガス中のエチレンをほとんど除去せずに、妨害ガスであるエタノールを選択的に除去できる。
又、触媒は固体であるので、液体の場合のように液漏れすることが抑制されエタノールを確実かつ安全に除去できる。
【0006】
本発明のエタノール除去用触媒において、前記金属は、Mn及びFeの群から選ばれる一種以上であってよい。
このエチレン検出センサユニットによれば、エタノールの選択的除去能が最も優れる。
【0007】
本発明のエチレン検出センサユニットは、請求項1又は2記載のエタノール除去用触媒と、被測定ガス中のエチレンガス濃度を検出するガスセンサと、を備え、前記エタノール除去用触媒は、前記被測定ガスが流れる流路において前記ガスセンサよりも上流側に配置されて前記被測定ガス中のエタノールを除去する。
【0008】
このエチレン検出センサユニットによれば、メソポーラスシリカに担持した金属により、被測定ガス中のエチレンをほとんど除去せずに、妨害ガスであるエタノールを選択的に除去し、エチレンガス濃度の検出精度を向上できる。
又、触媒は固体であるので、液体の場合のように液漏れすることが抑制されエタノールを確実かつ安全に除去できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、妨害ガスであるエタノールを確実かつ安全に除去し、エチレンガス濃度の検出精度を向上させたエチレン検出センサユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エチレン検出センサユニットの構成を示す図である。
図2】触媒効果の評価装置を示す模式図である。
図3】各金属による触媒の効果を示す図である。
図4】メソポーラスシリカの模式図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1を参照し、本発明の実施形態に係るエチレン検出センサユニットについて説明する。
図1はエチレン検出センサユニット100の構成を示す図である。
エチレン検出センサユニット100は、円形のガス取り込み口10hを有する筐体10と、図1(a)の拡大断面図に示すように、筐体10の内部に配置されるシリコン等の基板20と、筐体10の内部で基板20の表面に配置されてエチレンガス濃度を検出する電気化学式センサ(ガスセンサ)30と、電気化学式センサ30に対向しつつ、電気化学式センサ30とガス取り込み口10hとの間に配置される触媒40と、基板20の他方の面に対向して筐体10内に配置される図示しないファン(送風手段)とを備える。
なお、ガス取り込み口10hから筐体10の内部に向かって円筒状の囲い10sが延びており、電気化学式センサ30及び触媒40は囲い10sの内部に配置されている。又、囲い10sの端部は基板20の表面に接している。
そして、ファンは、被測定ガスGがガス取り込み口10hから触媒40から筐体10を通って電気化学式センサ30へ流れるような向きに送風し、囲い10sは被測定ガスGが流れる流路を形成している。電気化学式センサ30に接触した被測定ガスGは、基板20の孔を通って筐体10の外に排出される。
【0012】
電気化学式センサ30は、白金や金などの電極表面でエチレンガスが酸化されて生じる電子が、対極に移動することにより生じる電流に基づき、エチレンガス濃度を検出する。
但し、電気化学式センサ30は、電極の表面でエタノールが酸化されて生じる電子が、対極に移動することにより生じる電流によっても電流値が変化するため、エタノールはエチレンガス濃度の検出に影響を与える。
【0013】
図4に示すように、触媒40は、メソポーラスシリカにMn,Fe,Ni,Cu及びCoの群から選ばれる一種以上の金属Mを担持してなり、被測定ガス中のエタノールを吸着除去する。メソポーラスシリカは、均一な細孔(メソ孔)を有するシリカ(SiO)である。
上記金属Mは、メソポーラスシリカの細孔を含む表面に析出し、メソポーラスシリカの細孔構造によって金属と被測定ガスとの接触面積が増大する。
特に、上記金属Mとして、Mn,Fe及びNiの群から選ばれる一種以上が好ましく、Mn及びFeの群から選ばれる一種以上がさらに好ましい。
触媒40は、例えばメソポーラスシリカに、上記金属の塩化物、硝酸塩等を含浸後、乾燥及び焼成して形された粉末が容器内に充填されてなる。
【0014】
又、触媒40は、被測定ガスGが流れる流路において電気化学式センサ30よりも上流側側に配置される。
ここで、「被測定ガス側」とは、エチレン検出センサユニット100に外部から導入された被測定ガスGは所定の流れに沿って電気化学式センサ30に到達するが、その流れにおいて電気化学式センサ30よりも上流側である。本例では、この流れは、ファン50によって形成される筐体10の一端(図1の左側)から他端への向きであるが、これに限定されない。
【0015】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
ガスセンサはエチレンガス、エタノールガスを検出することができるものであれば、電気化学式センサにかえて、公知の半導体式センサ、接触燃焼式センサなどが使用できる
エチレン検出センサユニットの構成、触媒の形態も限定されない。
【実施例0016】
(触媒の調製)
メソポーラスシリカ粉末を、それぞれIr,Mn,Rh,Fe,Co,Cu,Ni,及びAgの塩化物、の水溶液に含浸した。
なお、表1、図2の「wt%」は、メソポーラスシリカに対する金属の担持量である。
含侵後のメソポーラスシリカを、真空乾燥し、酸素雰囲気下で200℃、2時間焼成した。次いで、水素雰囲気下で200℃、2時間還元焼成し、触媒を得た。
【0017】
(評価)
図2に示す評価装置で、触媒によるエチレンとエタノールの除去の有無の評価を行った。ここで、図2の装置では、温度30℃、60%RHに加湿した主ガス(酸素21%、残部窒素)に、それぞれ30ppmのエタノールガス又は10ppmのエチレンガスを加えたものを、ガス流量400ml/minで触媒槽(触媒を120mg充填)に通し、触媒通過後のガス中のエチレンガス濃度をセンサ槽内の電気化学式センサ30で測定した。
【0018】
なお、上記各金属をそれぞれ担持した触媒を触媒槽にセットし、主ガスをバイパスA,Bに通して(エタノールガス及びエチレンガスを加えず、加湿槽及び触媒槽を通さない)乾燥主ガスを1時間センサ槽内に流通した。その後、エタノールガス又はエチレンガスを加え、加湿槽及び触媒槽を通した主ガスを1時間センサ槽内に流通させ、センサ測定(本測定)を行った。
又、エタノールガス又はエチレンガスを加え、加湿槽を通したが、触媒槽を通さずにバパスBを通した主ガスを1時間センサ槽内に流通させ、センサ測定(ブランク)を行った。
次に、別の金属を担持した触媒を触媒槽にセットしたときには、同様に乾燥主ガスを1時間センサ槽内に流通して流路を洗浄した後、上述のようにセンサ測定(本測定)及びセンサ測定(ブランク)を行った。
【0019】
各触媒測定時、触媒無し(バイパス流通時)のセンサ出力を100とし、センサ測定(本測定)時のセンサ出力を規格化し、以下の式で触媒の効果を示した。
式:触媒の効果=100-(センサ測定(本測定)時のセンサ出力規格値)
数値が高いほど、その成分(エタノール又はエチレン)が触媒槽で除去されたことを表す。又、数値がマイナスは、エチレン又はエタノールと、大気中の元素とが触媒により化学反応することで生じた生成物を、ガスセンサが検出したためと考えられる。
【0020】
表1、及び図3に各触媒の効果を示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1、及び図3から明らかなように、Mn、Fe、Ni、Cu、Coはエチレンをほとんど除去せずに、エタノールを選択的に除去したことがわかった。
これにより、Mn、Fe、Ni、Cu、又はCoをメソポーラスシリカに担持した触媒を用いれば、妨害ガスであるエタノールを除去し、エチレンガス濃度の検出精度を向上できる。
又、本実施形態の触媒は固体であるので、液体の場合のように液漏れすることが抑制されエタノールを確実かつ安全に除去できる。
特に、Mn、Fe、又はNiをメソポーラスシリカに担持した触媒はエタノールの選択的除去能が優れ、Mn、又はFeをメソポーラスシリカに担持した触媒はエタノールの選択的除去能が最も優れた。
【符号の説明】
【0023】
10s 流路
30 電気化学式センサ(ガスセンサ)
40 触媒
100 エチレン検出センサユニット
G 被測定ガス
図1
図2
図3
図4