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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136458
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】液晶表示装置及び液晶プロジェクタ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1335 20060101AFI20220913BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20220913BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220913BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/13357
G02F1/13 505
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036080
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】日下部 裕一
(72)【発明者】
【氏名】金澤 勝
(72)【発明者】
【氏名】古屋 正人
(72)【発明者】
【氏名】相澤 忠
【テーマコード(参考)】
2H088
2H149
2H291
2H391
【Fターム(参考)】
2H088EA12
2H088EA16
2H088MA01
2H149AA17
2H149AB02
2H149DA02
2H149DA12
2H149FC10
2H291FA56X
2H291FA56Z
2H291FA60X
2H291FA60Z
2H291FA62X
2H291FA62Z
2H291FA65X
2H291FA65Z
2H291FA67X
2H291FA67Z
2H291FA86X
2H291FA86Z
2H291LA21
2H291LA27
2H291MA11
2H291NA43
2H391BA12
2H391EA22
2H391EA26
2H391EA28
2H391EA29
(57)【要約】
【課題】色シェ-ディングを抑制できる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】レーザ光源2を用いた液晶プロジェクタ1用の液晶表示装置3であって、所望の画像を表示する液晶素子9と、レーザ光源2から液晶素子9までの光路上に位置し、各場所の屈折率が異なる位相分散板4とを備え、位相分散板4は、レーザ光源2からのレーザ光が入射する入射面に半球状の凸部を有し、各場所に入射するコヒーレント光の位相を分散させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光源を用いた液晶プロジェクタ用の液晶表示装置であって、
所望の画像を表示する液晶素子と、
前記コヒーレント光源から前記液晶素子までの光路上に位置し、各場所の屈折率が異なる位相分散板と、
を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記位相分散板は、屈折率が異なる部材で形成したことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記位相分散板は、所定の屈折率を有する板状部材に、前記板状部材と異なる屈折率の微小部材を所定領域に配置したことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記位相分散板は、前記コヒーレント光源からのコヒーレント光が入射する入射面に半球状の凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記位相分散板は、前記コヒーレント光源からのコヒーレント光が入射する入射面に半円柱状の凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の液晶表示装置と、
前記液晶表示装置の位相分散板にコヒーレント光を出射するコヒーレント光源と、
を備えることを特徴とする液晶プロジェクタ。
【請求項7】
前記コヒーレント光源は、前記位相分散板に対して、斜め方向から前記コヒーレント光を出射することを特徴とする請求項6に記載の液晶プロジェクタ。
【請求項8】
前記コヒーレント光源は、レーザ光を出射するレーザ光源であることを特徴とする請求項7に記載の液晶プロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光源を用いた液晶プロジェクタ用の液晶表示装置、及び、その液晶プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクタの分野では、コヒーレント光源としてレーザ光源が使用されている(例えば、非特許文献1)。これにより、コヒーレント光源を使用した液晶プロジェクタでは、広色域化・高輝度化が可能となり、その性能が改善されている。その一方、液晶プロジェクタでは、コヒーレンス性を有するレーザ光同士が干渉することによる画像妨害が問題となっている。
【0003】
まず、具体的な画質妨害の例とその発生原因について説明する。この液晶プロジェクタでは、RGBの液晶素子からの出射光の強度が場所毎に異なるため、図12に示すように場所により色味が大きく異なってしまう。このような画質妨害は、コヒーレント光源で発生するものであり、色シェーディングと呼ばれる。
【0004】
ここでは、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)と呼ばれる反射型液晶素子で説明する。図13に示すように、液晶プロジェクタで用いる液晶素子9は、ガラス層90と、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極91と、液晶層92と、TFT(Thin Film Transistor)などが実装された基板93とを備える。この液晶素子9では、ガラス層90に入射した入射光(レーザ光)が、透明電極19及び液晶層92を通過し、その一部が液晶層92と基板93との境界である反射面94で反射される。そして、液晶素子9では、この反射光と入射光との干渉の影響を出射光が受けるので、色シェーディングが発生する。
なお、透過型液晶素子の場合、反射面94が存在せずに入射光は液晶層92を通過して出射するが、反射型液晶素子と同様、その一部が反射して入射光と干渉するので色シェーディングが発生する。
【0005】
以下、数式を用いて、色シェーディングを説明する。入射光fは、振幅1で周波数ωの正弦波として、(1)式で表される。反射光fは、入射光fが厚さLLCDの液晶層92を通ることで位相が変化すると共に、反射率Rが乗算されたものとして、(2)式で表される。出射光fは、入射光fと反射光fの和として、(3)式で表される。ここで、反射率Rは、波長をλ、液晶層92の屈折率をnLCD、透明電極91の屈折率をnITOとすると、(4)式で表される。
【0006】
【数1】
【0007】
出射光fの強度(輝度)Fは、(3)式とその共役項を掛け合わせたものなので、(5)式で表される。
【0008】
【数2】
【0009】
ここで、前記した項目がどの程度の値になるか一例を記す。屈折率nLCD,nITOをそれぞれ1.5,2.0とすると、反射率Rが0.15となる。液晶層92の厚さは数μmであるが、液晶素子9全体では±10%程度の厚さのムラがある(例えば、中央と周辺で厚さが10%程度異なる)。さらに、波長λが0.5μm程度であることから、(5)式のcosの項は、-1~+1の値をとる。このように、出射光fの強度Fが(6)式に示す範囲を取り得ることから輝度の大きな差となって表れ、色シェ-ディングが発生する。
【0010】
【数3】
【0011】
なお、コヒーレント光源でなければ、入射光fと反射光fとの位相が全く非相関になるため、(3)式の加算が成立しない。この場合、出射光fの強度F`は、(7)式に示すように、入射光fと反射光fとの振幅和で一定になるので、色シェ-ディングが発生しない。ここで、(7)式では出射光fの強度F`が入射光の強度より大きいが、Rの項が入射光を反射して戻すことを意味するので、外部へ出ていく出射光fの強度F`が入射光の強度と略同じになる。
【0012】
【数4】
【0013】
以上のように、液晶素子9内部での微小な反射と、液晶素子9の厚さのムラとにより、コヒーレント光の干渉が輝度の大きな差に結び付き、色シェ-ディングが発生する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】“第26回:ビクター独自デバイス「D-ILA」の実力は?~ホームシアター参入第1弾「DLA-HX1D」~”,[online],[令和2年10月30日検索],インターネット<URL:https://av.watch.impress.co.jp/docs/20031010/dg26.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記したように、色シェ-ディングは、コヒーレント光の干渉と、液晶素子内部での微小な反射と、液晶素子の厚さのムラとの組合せで発生する。従って、前記した原因のどれか1つでも解消できれば、色シェ-ディングを抑制できる。
【0016】
そこで、本発明は、色シェ-ディングを抑制できる液晶表示装置、及び、液晶プロジェクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明に係る液晶表示装置は、コヒーレント光源を用いたプロジェクタ用の液晶表示装置であって、所望の画像を表示する液晶素子と、位相分散板と、を備える構成とした。
【0018】
かかる構成によれば、位相分散板は、コヒーレント光源から液晶素子までの光路上に位置し、各場所の屈折率が異なる。これにより、液晶表示装置は、位相分散板の各場所に入射するコヒーレント光の位相を分散させるので、コヒーレント光源からの入射光と液晶素子内部の反射光との干渉を軽減し、色シェ-ディングを抑制できる。
【0019】
また、前記課題を解決するため、本発明に係る液晶プロジェクタは、前記した液晶表示装置と、コヒーレント光源と、を備える構成とした。
【0020】
かかる構成によれば、コヒーレント光源は、液晶表示装置の位相分散板に対して、斜め方向からコヒーレント光を出射する。これにより、プロジェクタは、コヒーレント光源からの入射光と液晶素子内部の反射光との干渉を軽減し、色シェ-ディングを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、色シェ-ディングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態において、色シェ-ディングの発生を説明する説明図である。
図2】第1実施形態において、入射光の広がりを説明する説明図である。
図3】第1実施形態において、入射光の位相差の確率分布の一例を示すグラフである。
図4】第1実施形態において、入射光とコントラストとの関係の一例を示すグラフである。
図5】第1実施形態に係る液晶プロジェクタの構造を示す模式図である。
図6】第1実施形態における位相分散板の断面図である。
図7】第1実施形態における位相分散板の平面図である。
図8】第1実施形態において、位置差毎の確率分布を示すグラフである。
図9】第1実施形態において、位置差とコントラストとの関係を示すグラフである。
図10】第2実施形態における位相分散板の斜視図である。
図11】第3実施形態における位相分散板の断面図である。
図12】従来の液晶プロジェクタで発生した色シェーディングの一例を示す画像である。
図13】従来の液晶素子の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0024】
(第1実施形態)
[色シェ-ディング抑制の原理]
図1を参照し、各実施形態に係る液晶プロジェクタの構成を説明する前に、色シェ-ディングを抑制する原理について説明する。
従来の液晶素子9では、図13に示すように、入射光fが液晶層92に垂直方向で入射するので、その反射光fも同じく垂直方向になり、入射光fと反射光fとが干渉する。
【0025】
図1に示すように、ガラス層90に対して入射光fI1が角度θで斜めに入射した場合、入射光fI1の反射光fR1は、位置差dだけずれた位置の入射光fI2と干渉する。なお、角度θは、入射光fI1が液晶層92に入射する角度である。
ここで、図1の角度θ,θ、位置差dの関係は、(8)式で表される。また、入射光fI1(f)が(1)式で表される場合、入射光fI2が(9)式で表される。
【0026】
【数5】
【0027】
単に入射光fI1,fI2が斜めに入射するだけであれば、(2)式と同様の反射光fR1と(9)式で表される入射光fI2との干渉になり、結果も(5)式と変わらない。しかし、入射光fI1,fI2の位相が各場所で異なる場合、反射光fR1と入射光fI2とが非相関となり、(6)式で表される色シェ-ディングを抑制できる。つまり、各場所の屈折率を変えることで入射光fの位相を分散させる手段を用いれば、色シェ-ディングを抑制できる。以後、このような手段を位相分散板4(図5)と呼ぶ。
【0028】
さらに入射光fの入射角について検討する。レーザ光自体は、ほぼ平行光の状態で長距離伝搬が可能である。しかし、レーザ光源95を液晶プロジェクタの光源として用いる場合、図2に示すように、液晶素子9のサイズに合わせてレーザ光を照射するため、コリメーションレンズ96を通すことが多い。この場合、レーザ光は、ある一定範囲の角度で液晶素子9に入射することになる。つまり、液晶プロジェクタの光源として用いる場合、レーザ光は、完全な平行光ではなく、ある程度の広がりを有することから、斜め方向の成分を有する。
【0029】
このように、入射光fの広がりは、入射光fを斜めにしたのと同様の効果を有する。入射光fの広がりは、液晶プロジェクタの設計により異なるが、例えば、±5~10°である。図3には、後記する位相分散板4において、入射光fの広がりを5°としたときの位相差の確率分布を図示した。また、図4には、後記する位相分散板4において、入射光fを0~5°傾けたときのコントラストを図示した。図3及び図4に示すように、入射光fの傾きが0°の場合でも入射光fの広がりによって、コントラストを約1/2.5程度に軽減できる。以上より、入射光fの広がりを考慮すると、入射光fを傾けることは必須でなく、位相分散板4を用いればよい。
【0030】
[液晶プロジェクタ]
図5を参照し、第1実施形態に係る液晶プロジェクタ1について説明する。ここで、X軸が水平方向、Y軸が垂直方向、Z軸が奥行き方向を表す。
図5に示すように、液晶プロジェクタ1は、レーザ光源2と、液晶表示装置3とを備える。また、液晶表示装置3は、位相分散板4と、液晶素子9とを備える。なお、液晶素子9は、従来と同様のため、説明を省略する(図13参照)。
【0031】
レーザ光源2は、位相分散板4にレーザ光を出射するものである。本実施形態では、レーザ光源2は、位相分散板4に対して、斜め方向からレーザ光を出射する。このレーザ光源2は、従来の液晶プロジェクタで利用されている一般的なレーザ光源と同様のものである。
【0032】
位相分散板4は、レーザ光源2から液晶素子9までの光路上に位置し、各場所の屈折率が異なるものである。前記したように、位相分散板4は、各場所の屈折率が異なることで、レーザ光源2から各場所に入射するレーザ光の位相を分散させる。また、位相分散板4は、透明であることは言うまでもない。なお、図5では、図面を見やすくするため、位相分散板4を液晶素子9から離して図示したが、位相分散板4を液晶素子9(正確には、ガラス層90)の上に設置してもよい。
【0033】
<位相分散板>
図6及び図7を参照し、位相分散板4を詳細に説明する。
図6及び図7に示すように、位相分散板4は、レーザ光源2からのレーザ光が入射する入射面に半球状の凸部40を有する。例えば、位相分散板4は、アクリルや透明セラミック等の透明部材の平面に、2次元状に半球状の凸部40を整列させたようなパターンが形成されている。また、全ての凸部40が、同一サイズ及び同一形状である。
【0034】
なお、凸部40は、完全な半球状である必要がなく、連続的に厚さが異なっていれば、全てが同一形状でなくともよい。また、凸部40は、図7に示すように、規則的に並んでいる必要もない。また、凸部40の個数も特に制限されない。
【0035】
位相分散板4の屈折率をn、凸部40の半径をrとする。従って、X軸方向で隣接する凸部40の間隔が2・rとなり、Y軸方向で隣接する凸部40の間隔が√3・rとなる。なお、図7では、凸部40は、樽積状で並んでいるが、縦横に整列してもよい(Y軸方向の間隔も2・r)。
【0036】
レーザ光が位相分散板4に垂直に入射した場合、その位相差の最大値φMaxは、(10)式で表される。なお、λは、レーザ光の波長を表す。
【0037】
【数6】
【0038】
レーザ光が位相分散板4に斜めに入射した場合、互いに干渉する入射光fI1,fI2の位相φ,φが異なっている。液晶層92を通過することで生じる位相をφLCDとすると、入射光f及び反射光fは、(1)式及び(2)式の代わりに、(11)式及び(12)式で表される。
【0039】
【数7】
【0040】
出射光fの強度(輝度)Fは、(5)式の代わりに、(13)式で表される。
【0041】
【数8】
【0042】
(13)式において、cos項内部の位相φLCDも位相差(φ-φ)も位相分散板4の場所により変化するが、位相φLCDは、液晶層92の厚みに依存するため、微小領域では一定として考える。例えば、液晶素子9の素子サイズが20mm程度の場合、液晶層92の厚さのムラによる位相差(φ-φ)は、通常1~2波長程度のサイズになる。従って、液晶素子9の上で1mm以下の微小領域では、位相差(φ-φ)の大きさがほぼ一定と考えることができる。これに対し、位相差(φ-φ)は、凸部40の大きさや位置により、ランダムに変化させることができる。ここでφ=(φ-φ)となる確率分布をP(φ)とすると(φ=0~2π)、出射光fの強度Fの期待値FOeは、(14)式で表される。
【0043】
【数9】
【0044】
(14)式は、位相φLCDの関数と考えられる。位相φLCDを変化させたときの期待値FOeの最大値と最小値との比Cが、液晶層92の厚さのムラにより生じるコントラストとなり、(15)式で表される。
【0045】
【数10】
【0046】
例えば、図5の位相分散板4において、半球状の凸部40の半径r=1.5μm、屈折率n=1.5、レーザ光の波長λ=500nm、反射率R=1.5、位置差d=0.1~0.3μmの条件で考える。このときの確率分布P(φ)及びコントラストを図8及び図9に示す。ここで、位置差d=0.1~0.3μmは、液晶層92の厚さが3μmのときに空気中での入射角度1.6~5.0°に相当する。位相分散板4を使用しないときのコントラストCOMaxは、(16)式で表される。位置差d=0.3μmのとき、前記した条件であれば、位相分散板4によりコントラストを1/3程度に軽減し、色シェーディングを抑制できる。
【0047】
【数11】
【0048】
なお、位相分散板4では、入射光fと反射光fとが干渉する範囲を考慮して、この範囲で位相差(φ-φ)の大きさが1波長以上になるように、位相分散板4における凹凸のサイズ(つまり、凸部40の半径r)を定めればよい。ここで、位相分散板4では、入射光fの広がり、入射角θ及び位相分散板4の屈折率に応じて、入射光fと反射光fとの位相差が決まるので、その位相差の最大値が1波長以上になるように半径rで凸部40を設ければよい。
【0049】
[作用・効果]
以上のように、第1実施形態に係る液晶プロジェクタ1は、液晶素子9にレーザ光が斜めに入射すると共に、位相分散板4を備えることで、液晶素子9内部におけるレーザ光の干渉を軽減し、色シェ-ディングを抑制できる。
さらに、液晶プロジェクタ1は、微小な範囲で光の位相を変化させるので、レーザ光で生じるスペックルパターンを軽減できる。
【0050】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る液晶プロジェクタ1Bについて、第1実施形態と異なる点を説明する。
図5に示すように、液晶プロジェクタ1Bは、位相分散板4の代わりに、位相分散板4Bを備える。なお、位相分散板4B以外の各手段は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0051】
位相分散板4Bは、レーザ光源2からのレーザ光が入射する入射面に半円柱状(半円筒状)の凸部41を有する。例えば、位相分散板4Bは、アクリルや透明セラミック等の透明部材の平面に、水平方向に半円柱状の凸部41を整列させたようなパターンが形成列されている。また、全ての凸部41が、同一サイズ及び同一形状になっている。
【0052】
なお、凸部41は、完全な半筒状である必要がなく、連続的に厚さが異なっていれば、全てが同一形状でなくともよい。また、凸部41は、図10に示すように、規則的に並んでいる必要もない。また、凸部41の個数も特に制限されない。
【0053】
[作用・効果]
以上のように、第2実施形態に係る液晶プロジェクタ1Bは、第1実施形態と同様、位相分散板4Bを備えることで、色シェ-ディングを抑制できる。
さらに、液晶プロジェクタ1Bは、微小な範囲で光の位相を変化させるので、レーザ光で生じるスペックルパターンを軽減できる。
【0054】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係る液晶プロジェクタ1Cについて、第1実施形態と異なる点を説明する。
図5に示すように、液晶プロジェクタ1Cは、位相分散板4の代わりに位相分散板4Cを備える。なお、位相分散板4C以外の各手段は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0055】
位相分散板4Cは、屈折率が異なる部材で形成したものである。本実施形態では、位相分散板4Cは、所定の屈折率を有する板状部材42と、この板状部材42と異なる屈折率の微小部材43を所定領域に配置している。例えば、位相分散板4Cでは、Z軸方向から位相分散板4Cを見たときの全体面積のうち、板状部材42を上面視した際、微小部材43を含まない領域の面積が30%以下となるように微小部材43を配置する。
【0056】
ここで、位相分散板4Cでは、屈折率nの板状部材42に屈折率nの微小部材43を高さrで配置したこととする。レーザ光が位相分散板4Cに垂直に入射した場合、その位相差の最大値φMaxは、(17)式で表される。
【0057】
【数12】
【0058】
また、微小部材43は、Z軸方向から位相分散板4Cを見たとき、厚さが等しい部分の長さ又は幅のうち、小さい方のサイズが液晶素子9の1画素サイズ以下となる。例えば、微小部材43は、長方形の板状であれば、長さ又は幅が1画素サイズ以下である。また、微小部材43は、楕円体状であれば各場所で厚さが異なるのでサイズが特に制限されない。また、微小部材43は、図11に示すように1層に限られず、2層以上であってもよい。また、微小部材43は、その形状が特に制限されず、楕円体状でなくともよい。
【0059】
板状部材42及び微小部材43は、透明で屈折率が異なればよい。例えば、板状部材42及び微小部材43の材料としては、アクリルなどの透明樹脂(例えば、屈折率1.5)と、透明セラミック(例えば、屈折率1.8)との組み合わせがある(参考文献1)。
参考文献1:特願2003-557428号公報
【0060】
[作用・効果]
以上のように、第3実施形態に係る液晶プロジェクタ1Cは、第1実施形態と同様、位相分散板4Cを備えることで、色シェ-ディングを抑制できる。
さらに、液晶プロジェクタ1Cは、微小な範囲で光の位相を変化させるので、レーザ光で生じるスペックルパターンを軽減できる。
さらに、液晶プロジェクタ1Cは、屈折率nの溶剤中に屈折率nの微小な粒子を溶かして固形化すれば位相分散板4Cを製造できるので、製造が容易になるという利点がある。
【0061】
以上、本発明の各実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0062】
前記した第1,第2実施形態では、位相分散板の入射面に半球状又は半円柱状の凸部を有することとして説明したが、これに限定されない。例えば、位相分散板は、その入射面に半球状又は半円柱状の凹部を有してもよい。この場合も、液晶表示装置は、色シェ-ディングを抑制できる。
【0063】
前記した第1,第2実施形態では、凸部の形状が半球状又は半円柱状であることとして説明したが、これに限定されない。例えば、位相分散板は、山状や階段状の凸部を有してもよい。
【0064】
前記した各実施形態では、コヒーレント光源が、レーザ光を出射するレーザ光源であることとして説明したが、これに限定されない。つまり、コヒーレント光源は、コヒーレント光を出射できるものであればよい。例えば、コヒーレント光源として、スーパールミネッセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)光源があげられる。
【0065】
前記した各実施形態では、レーザ光源が、位相分散板に対して、斜め方向からレーザ光を出射することとして説明したが、これに限定されない。つまり、レーザ光源は、位相分散板に対して、垂直にレーザ光を出射してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,1B,1C 液晶プロジェクタ
2 レーザ光源(コヒーレント光源)
3 液晶表示装置
4,4B,4C 位相分散板
40,41 凸部
42 板状部材
43 微小部材
9 液晶素子
90 ガラス
91 透明電極
92 液晶層
93 基板
図1
図2
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